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荒井文法さん

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座右の銘 | ヒッグス粒子ダイエット |
投稿済みの記事一覧
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1008号室
18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:155
「いらっしゃいませー」
「すいません、四月から大学行く関係で、アパート探しているんですけど、ネッ」
「あ、新入生の方ですねー?」
「はい、そ」
「おめでとうございますー! どちらの大学ですか?」
「法治大学なんですけど、ぼ」
「わあすごい! 私もそういうとこ行ってみたかったですー」
「あの」
「お部屋ですよねー、どうぞこちらへ、パソ・・・
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超能力青年ヨシオ
18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:200
決して、彼女のあとをつけていたわけじゃない。偶然だ。だから、彼女が五〇四号室の玄関を開けて中に入っていくのを見たのも偶然だ。
大学生になって初めての一人暮らし。憧れのトーキョー。田舎で二十年間を過ごしてきた僕は、何をするにもワクワクして、どこを見ても人がいて、毎日鼻血が出そうなくらい興奮して夜も眠れないから、当たり前のように、あっという間に、夜型人間へ移行していた。
一に・・・
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紅い秋桜
18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:154
一ヶ月に一度、彼の爪を切ってあげる。
窓際にはコスモス。今日、私が摘んできた花が花瓶に生けられている。
彼がコスモスを好きかどうかは知らない。知る術もない。
窓から差し込んでいる夕陽が、ピンクのコスモスを紅く染めている。
彼の爪は伸びるのが遅い。爪だけでなく、髪もそうだ。彼が植物状態だからだと思っているが、医師や看護師に質問したことはない。そんな質・・・
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ミィコ
18/10/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:207
僕の名前はイルヴェライザス。
お母さんが付けてくれた名前。
僕の一生の宝物。
お母さんとは、おっぱいを飲まなくなった頃に会わなくなっちゃった。お母さんはおっちょこちょいだから、きっと迷子になってしまったんだと思う。いつか迎えに行ってあげるんだ。お母さん喜ぶだろうなあ。
お母さんに会わなくなった頃から、親切な人が僕に食べ物をくれるようになった。とても・・・
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フゥコ
18/10/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:171
私の名前はリルクレィト。
父が付けて下さった誇り高き名前です。
父も母も由緒ある血筋です。私はその末裔ですから、父や母の血筋を貶めるような行いを慎まなければなりません。
両親は厳粛さと優しさを併せ持ち、日頃の私を見守って下さいました。二人から学ぶべきものは多く、二人は私の師であり、目標でもあります。
私がまだ年端も行かない子供だった頃、とあるお客様・・・
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猫に恨みはないけれど、涙滴る川になる
18/10/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:217
名前? んなもんねえよ。
物心ついたときにゃもう独りよ。誰も頼れねえ。周りは恐ろしいものだらけ。一瞬気を抜けばやられちまう。食事を獲るつもりが逆に獲られたり、地面に置かれてるごちそうを喰って口から泡吹いたり、ぶら下がってるごちそうに噛み付いて檻の中に閉じ込められたり、そういう奴を何人も見てきた。
分かるか? 名前なんてもんは平和ボケした奴らの遊び道具さ。今この瞬間に死んじ・・・
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明衣(あかは)の星
18/10/05 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:333
「人間と機械の違いは、何だと思う?」
大きな瞳を窓の外に向けながら、同僚のシルフが言った。シルフの大きな瞳か一瞬だけ輝く。
「ずいぶん古典的な質問だね。一考に値する論理でも思い付いた?」
僕の言葉を聞いたシルフは、大きな瞳を僕に向けた。シルフの瞳の表面に、僕が映っている。僕の目は、どこにあるか分からないくらい小さい。
「人間は、ここ・・・
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新・文メイド
18/09/27 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:218
「あなたの予想死亡時刻まで、あと一年、三ヶ月、十四日、二時間、三十五分、四十二秒です、博士」
自ら開発したAIに、自分の寿命を宣告される気分は格別だった。
私の遺伝子パターン、生活習慣、身体状況、病歴、環境などのデータから判断された死亡予想時刻。誤差は、前後一週間といったところだろう。
現在の医療技術であれば、私の癌が完治する可能性もある。しかし、AIであ・・・
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リムーバブル・スネイク
18/09/24 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:203
父が亡くなってから三年後、実家の処分を決意した私は、飛行機とレンタカーを利用しながら片道六時間かけて、家財処分のため実家を訪れた。
父の葬儀から何も変わらず、埃だけが積もった家の中は、生まれてから十八年間を過ごした宝物のような記憶と、その記憶が確実に風化していく事実を改めて私に思い出させる。何百年も昔に盛者必衰という言葉を生み出した先人たちへの畏敬の念と、その先人たちもまた私と同じような・・・
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認知外クラック
18/09/03 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:305
メトロノームのように単純作業を繰り返す親指が、タイムラインを弾き落とし続ける。
見飽きたプロフィール画像と、どこかで読んだことがあるような文字列がザァザァと降っていく。
一瞬、見覚えのないプロフィール画像と、物騒な文字が見えた気がして、タイムラインを戻してみると、知り合いがリツイートしたものが現れた。
※
●山●美 @●●t●s●●●・・・
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言論の自由を絆す会
18/08/21 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:285
「もうほんと、チ●ポ法、まじ勘弁っす。意味分からないっすよね」
二人の男が食事している狭い部屋、否、本来は広い部屋なのだが、膨大な書類が床に雑然と積まれているため、床面積の二十五パーセントしか空いていない部屋で、眼鏡をかけている男が、唇をミミズのように踊らせながら言った。男の口の中では、コンビニ弁当から移された様々な食べ物が渾然一体であるが、その様子を説明しようとすれば、都の迷惑・・・
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知見調査士
18/08/20 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:296
あの凄惨な事件をきっかけに制定された悪名高き知見担保法(通称なんだけどね。正式名称は「知見の信頼性を担保するために講ずる調査に関する法律」。蔑称、チ●ポ法……)であれば、たくさんの人が知ってると思うけれど、片や『知見調査士』のことになると、知らない人が途端に多くなる。一応、国家資格なんだけどね……。
誰でもネットが使えるようになって、わざとじゃないにしても、嘘の情報を拡散すること・・・
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永代供養
18/08/05 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:238
風呂敷の包みを広げると、中に札束が三つ入っていた。
「これで、永代供養をお願いします」
札束を持ってきた老年の男性が口だけを動かしながら言った。男性の声は周りの蝉の声に掻き消されて、男性の周囲一メートルくらいに近付かなければ、何を言っているのか聞き取れない。もっとも、男性の周囲にいるのは私だけであるが。
「そうですか……。えぇと、あの、私が言うのもあれなんですが、・・・
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カタオモイ
18/08/01 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:320
青い空で輝く銀色の雲が、高く、大きく、空に広がっている。
暑い空気と喧しい蝉音に包まれながら、網戸越しにその光景を眺めていた。
とっくに見飽きてしまったテレビが笑い声をコソコソ上げている。
じっとり汗が滲み続け、身体が溶けてしまいそうな気がする。
体に触れるものすべてが疎ましくて、エアコンの風が不快で、エアコンは消してしまった。
自分の心も消してし・・・
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ジュンズ・ブライド
18/08/01 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:432
六月に結婚式する奴の気が知れない、そう思う人が多いことくらいはもちろん分かっている。
昔はジューンブライドという言葉があって、憧れの結婚式の代名詞みたいになっていたみたいだけど、ただでさえ雨で外出したくないのに、窮屈で動きづらい高価なドレスを着て、ジメジメした暑い中を、汗と雨の化粧崩れに怯えながら歩くというのが信じられない。
そんな時期に、私は結婚式を開催する。
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「着地するとき、何を考えてる?」
コーチに問われて、少しだけ考える振りをした。
「何も、考えてないです」
僕の答えを聞いても、コーチの顔は相変わらずの表情で、何を思っているのか把握できない。僕とコーチは暫く無言で向き合ったままだった。
「そうかぁ……」
コーチは自分の顎を指先で掻きながら、空気と一緒に言葉を吐き出した。