鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。  そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。  主はテーマに沿った個別物語ですが、他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。  その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2016.03.01 ただ今、22話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。    これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。 ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2016.03.01 ただ今、連載40__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。  本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。  詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                               よろしくお願いします。              

出没地 京都 三条大橋
趣味 チン料理、インスタ向け写真徘徊
職業 無機質作家
性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.
 

投稿済みの記事一覧

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鬼デカのギャンブル ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく) ── 第22話

16/02/27 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:183

 場末の飲み屋街、その路地裏で初老の男が鋭利な刃物で心臓を一突きされ、殺された。
 被害者は死の淵で数メートル這ったのだろう、一夜明け新聞配達員が朝陽に照り返す血糊の線の先に、その死体を発見した。110番通報があり、すぐに百目鬼刑事と芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事に、出署前に現場へ直接向かえと緊急命令が発せられた。当然二人は指令に従い、駆け付けた。すると出勤時間前だというのに事件現場には野・・・

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こっから峠

16/02/14 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:203

 現代人は生きて行くために必死。そのため日々多忙だ。
 そして人たちが行き交う町は、人間どもの五欲が絡み合い、結果として喜怒哀楽が交錯し、いつも喧噪だ。
 そのせいもあってか、人は疲労し切っている。そしてそこからの逃亡、もっと自分の生き方を受け入れてくれる、あるいは合致した世界はないものかと探し始める。
 ご多分に漏れずサラリーマンの洋介も、嫁、金、やり甲斐ある仕事に飢えている状・・・

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失恋は時に ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく) ── 第21話

16/01/17 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:225

 高台にある公園の桜が、朝の鋭角に射し来る光に、意外にも淡いピンクの輪郭をぼんやりと浮き上がらせてる。そんな逆光の先で、女が一人フェンスに指を絡ませて、血みどろになり息絶えていた。
 第一発見者は近所のご老人、いや愛犬だ。毎朝のこと、爺さんはこの公園まで散歩に来て、犬と戯れる。しかし、今朝は違っていた。リードから解き放たれた犬が一目散にフェンスに向かって駈けて行く。そして、こちらに来てくれと・・・

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フォト奇人、増殖中!

15/11/29 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:402

 フォト奇人、シルバー世代に増殖中!
 電車内の中吊り広告、その週刊誌の見出しを見た達也、うーん確かに、と深く頷く。なぜなら最近身の回りの同世代に起こってる状況、それが映像となり、次から次へと浮かんで来たからだ。
 例えば斜め前に住む奥さん、お茶の先生だけあって、いつもシャキッとしている。だけど最近身の振る舞いがちょっとおかしい。
 半年前に退職したダンナと今は気楽な二人暮らし。・・・

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秘宝・意到筆随(いとうひつずい)の壺

15/11/15 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:427

「あ〜あ、まったくダメだ!」
 早起きし、朝日に映える紅葉の中を散策しても、昼に新蕎麦をズルズルッとすすり上げても…。
 夜に四分六のちょっと濃いめの焼酎お湯割りに、南高梅を二つ落として呷ってみても…。
 あとは酔い醒ましにと、四十度の柚子風呂に浸かったとしても、ただただ浮かぶのは黄色い柚子の皮だけ。
「こん畜生、ストーリーなんて、ぜんぜん浮かんでこないや!」
 ふー・・・

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こんなに曖昧になっても、一つだけ

15/10/31 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:403

 それはまさに――奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の…、そんな時節のことでした。私は一人山寺巡りをし、身体が汗ばんだ状態で里へと下りて来ました。すると藁葺きの家の庭に真っ赤に熟した柿が一杯なってるじゃないですか。
 お腹も空き、喉も渇いていましたので、ちょっと失礼しますと一つもぎ取って、ガブリとかぶり付きました。
「シブッ!」
 それは見事に渋柿だったわけでして、私はペッペッと皮を吐・・・

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実家、もう何も後悔しないぞ!

15/10/15 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:490

 実家の草刈りに取り掛かり、10分も経っていない。それなのにガーガーと回転する刃を止め、一郎はよっこらせと庭石に腰掛けた。それからだ、いかにも自虐的に「2メートル進んで、もうクタクタ。俺は根性なしだ」と吐き、ペットボトルの茶をゴクゴクと飲む。
 それにしてもこの現実をあらためて直視すれば、この空き家で何年も草と戦ってきた。だが雑草はお構いなしに生えてくる。そしてヤツらは勢いよく伸び続け、やが・・・

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沖縄に鯛焼き、イーヤーサーサー、イーヤーサーサー!

15/10/03 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:417

 那覇空港のターミナルビルの外へと出ると、本土は冬だというのに、いきなりムッとした熱気が襲ってきました。見上げると、紺碧の空に白い雲がモコモコと立ち上がってます。ああ、ここは夏だ、と再認識した時です、「直樹、こっちだよ!」と、駐留米軍からの払い下げなのでしょうか、ブルブルと車体を震わす旧型4WD車、その運転席から浩二が手を振ってきました。
 私は駆け寄り、キャリーバッグを後部座席へと放り投げ・・・

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もしあなたなら、どんなアニメを作りますか?

15/09/15 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:505

 男二人が額を突き合わせ、アニメ月刊誌を読んでいる。
 一人はアニメ制作会社の社長、もう一人は企画部長。そして真剣に目を通しているページは、読者からの意見欄だ。そこへ秘書が入って来る。
「業界新聞の記者の方が投稿記事に対してのコメントを頂きたいと、今受付に見えてます。どう致しましょうか?」と指示を仰ぐ。
 社長は没頭し過ぎているのか顔も上げずに、「10分ほど待ってもらってくれ」と・・・

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妖怪祭り ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/09/04 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:638

 季節は秋、ヤマボウシが赤い実をつける頃、町を貫く川の上流へと足を踏み入れてみよう。最初に水しぶき立つ滝に行き至る。
 そこで耳を澄ましてごらん。ケラケラと、水音がまるで女の笑い声のように聞こえてくるから。どうやら口紅をべっとりと塗った朱唇の大女、淫婦の霊の倩兮女(けらけらおんな)が水浴びしてるようだ。ボケッと眺めてると、遊んでくんなましと滝壺に引きずり込まれるから気を付けよう。
 そ・・・

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風は何色?

15/08/20 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:592

 誠実そうで、なかなかのイケメン。そんな男が、まるで判で捺したような毎日、夕方六時にはきっちりと勤めから帰ってくる。
 時間は充分ありそう。だが女の影はない。むろんデートに出掛けるところを見たことがない。三十歳前の割には、ちょっと気楽に暮らしすぎじゃない。
 これが同じアパートに住む者たちの、高池陽馬に対する印象だ。誰かなんとかしてやれよ、とのお節介な声も聞こえてくる。
 しかし・・・

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漢字一文字の旅 連載40

15/08/11 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:450


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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罠々(わなわな)バトルフィールド

15/08/04 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:707

 給与はそこそこ、福利厚生はまあまあ。サービス残業はなく、やりがいが持てる成長企業。こんな記事がリクルート誌に載っていた。
 俺は、人生を賭ける会社はここだと確信し、入社試験を受けた。そして運良く合格。ホント嬉しかったぜ。
 ところがだ、これがとんでもない会社だったんだよ。
 社是は『人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり』。これってパクリだろ。だけどなんとなく、何が何・・・

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女鬼(おんなおに)の罠 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/07/28 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:729

『台風直撃下、社長・桐坂一郎氏、公園で刺殺される!』
 夕刊にこんな見出しが躍る。そして記事には…。
 昨夜都心を襲った大型台風、その暴風雨の中、桐坂氏は自宅から3キロメートル離れた公園で、鋭利な刃物により刺し殺された。
 第一発見者は公園の管理人。台風が去り、朝方見回ったところ、倒木の脇で俯せる男を発見。救急車を呼ぶが、すでに死亡していた。
 男性は大企業の社長・桐坂一郎・・・

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漢字一文字の旅 連載39

15/05/16 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:577


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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男の嫉妬に、女の嫉妬が絡む時 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/03/15 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:996

 朝一番、エレベーターが開けば、男性が血みどろに。
 そして女性は首を絞められていた!

 なんと地獄絵図的な見出しか。昼食時、サラリーマンたちはこのニュースに縮み上がる。
 その内容とは…
 優良企業がこぞってオフィスを構える某ビルディング、そこには6本のエレベーターがある。
 その内の3本、A〜C機は地下から20階までの各階停止、残りの3本のD〜F機は1階か・・・

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四神倶楽部 渋谷をワサビ谷に変えよう! の巻

15/03/01 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:1021

 四神倶楽部のリーダーは、私、高瀬川龍斗が務めさせてもらってます。しかし、その切っ掛けが、いつも男を悩殺する貴咲佳那瑠と、キュートなミッキッコこと風早美月子に、アンタ、男でしょ、やんなさいよ、と追い込まれてのものですから、実態は心配した通りアッシー、メッシー、ミツグ君です。
 これでは身が持たず、そこでイケメン部下の悠太を引きずり込んで、日本を守るための活動を秘密裏に続けて参りました。

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上司に気に入られるための3つの心得 プラス1

15/02/19 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:1126

 サラリーマンの皆様、毎日滅私奉公のお勤めご苦労様です。さて今日は、満身創痍で頑張ってるのに評価されない、そんな不満を持つ貴方への特別講習、テーマ『上司に気に入られるための3つの心得 プラス1』です。

 花井吉男は最前列の席で、必死の形相をして司会者の開会挨拶に耳を傾けてる。なぜなら、上司とは反りが合わず、昇進も遅れ、もうボロボロなのだ。そこで一念発起、ライバルたちをキャッチアップす・・・

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歴詩(連載6) 真田幸村・大坂夏の陣

15/02/13 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1226

 ほんの七月(ななつき)ほど前に 大坂冬の陣
 真田幸村は 城の南方に築いた 真田丸から
 怒濤の攻撃
 そして徳川方は 惨敗した

 戦が終わり 和議を結んだ
 徳川が 外堀を埋める
 一方豊臣は 内堀を、と

 いかにも 老いた家康は焦っていた
 あっと言う間に、内堀まで埋めてしまったのだ
 難攻不落の大坂城が、これで――裸城に・・・

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妄想新説・本能寺の変

15/02/08 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1316

 天正10年(1582年)6月2日の未明、本能寺の変は起こった。轟々と燃え盛る炎の中で織田信長は自害したと言われている。
 しかし、明智光秀は燻る焼け跡でくまなく遺骨を探した。されど見つからなかった。
 謀反を起こした光秀にとって、信長に代わり天下を取ることが第一義。このままここに留まってるわけにはいかない。この後光秀は電光石火に京を治め、残党を追捕し、近江平定を行った。
 6月・・・

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魔王殺しの連鎖 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/02/05 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1148

 夏の始まりだというのに、森林公園の月が異様に青い。そして木々の葉がざわざわと揺れる。多分悪霊が息を吹き掛けたのだろう。
 その紺青の闇を破るかのように、激切なピアノの三連符が響き渡る。
「いよいよ始まったか」
 噴水の縁に立つ霧花圭は野外舞台へと振り返った。その動作に間髪入れず、甲高いテノールの歌声が――
 ♪ Wer reitet so spät durch ・・・

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漢字一文字の旅 連載38

15/01/28 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:713

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどを・・・

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アベノミクス――さそり座からの訪問者

15/01/21 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1195

 アベノミクス、その成長戦略の一つが観光立国になること。2020年には訪日外国人を現在の2倍の2千万人にすると目標を掲げてます。
 その効果か、羽田空港の年間旅客数が飛躍的に増加し、空港勤務者は大忙しです。航空管制官の私も例外ではありません。
 そんなてんてこ舞いの中、信じられないことが起こりました。

 朝まだき刻限に…
「Tokyo Tower, Scorpio ・・・

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タットケー!

15/01/18 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1117

万感胸に迫る、お薦め珍名スポットを訪ねてみませんか?

国内
 ヤリキレナイ川       北海道由仁町
 南蛇井(なんじゃい)    群馬県富岡市
 シャックリ川        三重県名張市
 トロントロン        宮崎県川南町

海外
 アンポンタン(Anne Pontan)フランス
 オデンの森(Odenwald)   ドイツ・・・

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人面蜂(じんめんばち)

15/01/08 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1110

 駿(すぐる)は長い一日の業務を終え、オフィスを出た。すでに12時半、今から走れば終電に間に合う。しかし、そのエネルギーは残っていない。
「今夜はホテルに泊まるから」 妻の夏希に連絡を入れた。
 こんなことはよくあること、夏希は「あら、そうなの」と返し、「明日は帰ってきてよ、由佳の学校のことで相談したいから」と必要時のみの出番を要請する。
 駿には二人の娘がいる。長女は来年中学、・・・

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あいうえおの館 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

15/01/03 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1265

 梅の花がちらほらと咲き始めた。時節は春間近、気持ちが少々華やぐ。それは犬とて同じこと。鎖から解き放たれた柴犬が、以前から余程気になる物があったのだろう、『あいうえおの館』と呼ばれる小さなアパートの、裏手にある雑木林に一目散に駆けて行った。
 しばらくして、犬はドヤ顔で、骨一本銜えて戻って来た。鶏にしては太過ぎる。飼い主はびっくりし、交番へと届けた。

『お手柄ワンちゃん、好物の・・・

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漢字一文字の旅 連載37

15/01/01 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:789


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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葛の裏風(くずのうらかぜ)

14/12/22 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1052

 客先訪問を終えた一樹、コンビを組む同期のカズラから、ちょっと道草していかない、と誘われた。
 カズラは若いながらも凄腕の営業部員。今まで就業時間中にサボるなんて見たことがない。しかし珍しいことがあるものだ。
 一樹は生真面目だが、口べた、セールスに向かないスタッフ。もちろん自分でもわかってる。そのため、顧客との良好な関係作りが求められる部署から早く抜け出したい。しかし、入社後三年は営・・・

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喪失させられるか、妻の殺意を

14/12/16 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:912

「好きなことをするよりも、嫌いなことをしない方が、私は幸せよ」
 これは妻の志乃が最近呟いた言葉です。
 二十歳そこそこで結婚し、すぐに始まった子育て。やがて私は単身赴任となり、妻は一人で家庭を守ってきてくれました。
 その間、嫌なことが一杯あったことでしょう。やっとそれらを乗り越えて還暦に。残された年を数えれば、こんな主張も納得できます。
 しかしながら妻が言い放った「嫌・・・

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不条理を愛した妻たち ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/12/06 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1095

 神は時として、むご過ぎる夫婦の縁を結ばせてしまうものだ。
 ここに凛太郎と光輝、そしてラリと綾音という男女4人がいた。大手企業に入社し、同期として出会ってしまった。
 凛太郎は体育会系、ガッツがあり、なかなかの好青年だ。ただ野心家で、もちろん社長になることが夢だった。
 一方、光輝は男にしては色白、少しひ弱に見える。だが、その分人を押しのけてという印象はなく、ペットにしてみたい・・・

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お別れチョコ

14/11/27 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:1151

「もう別れましょ!」
 妻のミライが、またもや発しました。
 外から戻り、ちょっと手を洗うのを忘れただけなのに、バイ菌を持ち込まないで! と噛み付かれ、とどめは離婚要求の「もう別れましょ!」です。
 結婚10年、このセリフ、もう何回耳にしたことでしょう。しかし振り返れば、それは新婚時代から始まりました。そう、あれは忘年会の夜でした。ちょっと酔っ払って、流行りの歌を、いわゆる上機嫌・・・

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悲しい別れの果てに、死亡保険金 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/11/22 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1158

「今朝、夫を訪ねたら、このような姿で…」
 第一発見者の高峰和花(わか)が百目鬼刑事に涙をみせた。それでも百目鬼は「最後に会われたのは、いつですか?」と声のトーンを上げた。すると和花は「今日は月曜日、そう、先週の水曜日の夜でしたわ、ここで一緒に夕食を取りました」と別居生活が後ろめたいのか、年甲斐もなくはにかみながら答えた。

 百目鬼は知っている。なぜなら署を出る前に、部下の芹凛・・・

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漢字一文字の旅 連載36

14/11/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:653

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
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四神倶楽部 24時間32分の巻

14/11/05 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1037

「明日の1日の長さは24時間32分となります。みな様、時計を合わせてください」
 ニュースキャスターからのこんな案内を聞き、私はTVのスイッチを切りました。
 それにしても毎日1分のペースで、1日の時間が伸びて行く。言い換えれば、その分地球の自転が遅くなっているということ。このペースだと、あと4年弱で地球の回転は止まってしまいます。
 また宇宙へと目を遣ると、惑星は太陽との引力の・・・

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猛スピード『X』

14/10/27 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:956

 生物か、否、UFOか?
 その物体は新幹線のぞみ号を猛スピードで追い越して行く!

 帰宅途中の花瀬純一、スマホでニュースをチェックしていたら、こんな見出しが目に飛び込んできた。新幹線より速いヤツって、What?
 指先で記事を拡大させる。

 関西から東へと向かうのぞみ234号、午後4時前に関ヶ原辺りを走行する。最近、その車窓から奇妙な物体が確認されている。・・・

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もし、これが夢ならば…

14/10/19 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1086

 ジリリーン、遅巻幸介は心地よい朝の眠りを破られ、腹立たしい。そのせいか、すぐさま目覚まし時計に手を伸ばし、ブツリと切った。それから寝返りを一つ打ち、後は仕事仕事、会社に行かねばと気合いを入れてベッドから抜け出す。
 まだ薄暗く肌寒い。それでも42度の朝シャンでシャキッと目覚め、ビジネススーツを身に纏い、アパートを飛び出す。朝食は会社近くの喫茶店でトーストを囓るつもりだ。
 幸介は運良・・・

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漢字一文字の旅 連載35

14/10/15 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:585


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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第3話 埋蔵金  魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

14/10/13 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:596

 妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)が小学3年生の時でした。ガキンチョ6人、海釣りに連れて行ってもらいました。その日は快晴、船はポンポンポンと煙をたなびかせ、1時間ほど走ったでしょうか、漁場へと着き、釣り糸を垂れました。そこはまさに入れ食いでした。
 だけどすぐにお腹が空いてきて、みんなフラフラ状態に。そんな時、まだ元気が残っていた安渡玲(あんどれ)が「おかしな島があるぞ!」と声を張り上げまし・・・

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二つの戸籍を持つ男

14/10/06 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:975

 人それぞれの人生には原点があるもの。そして歳を重ね、たとえそれが辛い場所にあるとしても、ふと訪ねてみたくなるものだ。サラリーマンの押木貴史もその一人と言える。
 振り返れば、うらみ/つらみ/ねたみ/そねみの四つの『み』が渦巻く出世競争の中で、貴史は業務に励み、やっと役員となれた。
 それでも最近思うのだった、もし杉村幸夫のままだったとしたら、こうはなってなかっただろうと。

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午前4時の通り雨 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/09/28 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1175

 朝まだきにザァーと通り雨。それが止み、東の山際に朱の太陽が昇り始める頃、女がヒラヒラと落ちて来た。しかし、衝撃は強いものだ、タワーマンションの屋外は血の海に。
 早朝に出勤する人たちはあっと声を詰まらせた。そして後退りをし、反射的に屋上を見上げる。

 演技派女優の折鶴蘭子、朝陽に飛翔!
 女流写真家でもある蘭子は、岸演出の超大作ミュージカル「舞い降りたものは」のヒロイン・・・

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四神倶楽部 以津真天(いつまで)の巻

14/09/26 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1276

 京都は魔界都市、その由来は1200年前に遡ります。
 当時疫病が蔓延し、世の中はまるで呪われたかのようでした。この状態から抜け出すため、桓武天皇は北の玄武、南の朱雀、東の青龍、西の白虎の四神によって守られた四神相応の地、山背国(やましろのくに)に遷都しました。そして魑魅魍魎の侵入を防ぐため結界を張りました。
 しかし妖怪たちはこの結界をすり抜け、洛中を好き勝手に徘徊する始末。それは今・・・

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最近の噂話 『穴』

14/09/21 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1054

 母子家庭で育った善行(よしゆき)、少年時代は貧しかった。その貧乏から抜け出すために、いや、母に楽な暮らしをと田舎を飛び出し、都会で働き始めた。
 しかし、世間はそう甘くはなかった。どれだけ身を粉にして働いても貯金は易々とは貯まらない。それが辛抱できず、悪の道へと。
 元々甘いマスクにスラリと背が高い。まず善行は行き遅れた女性を狙って、「君の一生、僕に守らせてください」、こんな殺し文句・・・

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青春からの卒業

14/09/12 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1103

「一生をかけて、杏奈を守ります!」
 壇上から健太が声を張り上げた。この宣言に、ホームルームの全員は黙り込んだ。それからどよめきがワアーと起こった。
 杏奈はショートカットに涼やかな瞳を持つ美少女。その上、学年トップを争う優等生ときてる。男子生徒たちからはアジアンビューティと呼ばれ、憧れの的だ。
 一方健太の方はテニスコートでボールを追い掛けるだけの普通の生徒。この格の違いにより・・・

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漢字一文字の旅 連載34

14/09/07 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:785


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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閻魔大王に捧げる詩

14/09/01 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1104

 彼は誰時の雷雨で
 冷涼な渓流は真っ黒に

 そんな朝
 夫への
 息子への
 そして屍となった娘への
 私の腐敗した――愛を投げ捨てて

 逃げよう!
 詩人と名乗る男と

 山間で小さな温泉宿を営んでいた父が他界した。宿を引き継ぐため都会から戻ってきた幸吉、遺品整理をしていて、この母の置き手紙を見付けた。

・・・

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漢字一文字の旅 連載33

14/08/29 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:650


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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告白の続きを

14/08/24 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1138

 大輔は通勤帰りに書店に立ち寄った。その支払い時に、並べられてあるイベントパンフを手に取ってみる。
 ――新進気鋭の女流画家・花井ミツ子の個展開催――
 これを目にした大輔の身体に緊張が走る。なぜならミツ子は初恋の人。そして今も恋心を抱いている。
 ――運命に翻弄された過去を捨て、私は未来へと踏み出したい。キャンバスに、そんな思いをぶつけてきました。――
 開催にあたっての・・・

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招き猫神社 (告白物語)

14/08/16 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1152

 みな様、こんにちは。今回投稿の機会を頂きまして、最近あった私の告白物語を紹介させてもらいます。
 おっと申し遅れました、私は山根古珠夫(やまねこたまお)と言います。
 ――安い給与で 女房が持てず それでもオモロク 生きてやる――
 これは1年前の私の心情を都々逸調に表現したものです。このようにちょっと斜に構えた二流サラリーマンでした。しかし、それ以上に捻れなかったのは、実は珍・・・

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漢字一文字の旅 連載32

14/08/11 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:536


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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未来巡りは山手線外回りで

14/08/04 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1427

入賞【 未来 】 未来総研賞

 耕介は家業を継いで欲しいという父の願いを振り切り、10年前都会で働き始めた。しかし、現実はそう甘いものではなかった。それでも朝から晩までこま鼠のように頑張ってきた。その原動力は父に対する男の意地だったのかも知れない。
 そして最近のことだ、母が電話で、父が病に伏せたという。さらに、そろそろ初孫の顔を見せてくれないかと漏らした。
 今の暮らしでは、結婚なんてほど遠い。しかし、母の言葉は・・・

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株乗りジョニーと、女神もどき

14/07/26 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1087

 ネット内の株式サイト掲示板、私のハンドルネームは――株乗りジョニー。

 正直、私の一日は、起床後夕べのニューヨークの動きを分析するところから始まる。
 午前9時には市場が開き、寄り付きをチェックし、今日のザラバの値動きを予測し、売買する銘柄を決める。この10時までの1時間、これこそ生死を決めるテンバリの時間だ。
 それを乗り越え、前引けまでは少し気が抜ける。私はこの時間・・・

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漢字一文字の旅 連載31

14/07/25 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:615

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどを・・・

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夜のささや木

14/07/12 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1098

「そろそろね」
 福夫がアパート近くの公園で夜空を見上げていると、横のベンチに座る若い女性から囁きが聞こえてきた。

 熱帯夜、どうも寝付きが悪い。気分転換にとベットから抜け出して、ふらりと出掛けてきた。
 天空の天の原には夏の大三角形、ベガ、アルタイ、デネブが輝き、それを貫き、天の川がどっかと横たわる。
 都会から見上げる宇宙は決して煌びやかなものではない。それでも・・・

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漢字一文字の旅 連載30

14/07/10 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:544


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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夜光姫 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/07/06 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1338

 都会から遠く離れた山里、夏の夜空には天の川が横たわり、地上の清流では蛍が群舞する。平家の落人たちが細々と暮らしてきたと言われる小さな集落で、殺人事件は起こった。

「この川縁で、夜に光るもの、それは蛍だけです。だけど昨夜、向こう岸の草むらでポーポーと妖しく光ったのですよ。何だろうと見に行ったら…、倒れられてました」
 第一発見者の平貴蜻蛉(ひらきかげろう)と名乗る二十歳そこそこ・・・

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第2話 赤い果実ティア  魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

14/06/30 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:564

 20歳の時、帰郷した私に、祖父の妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)がアド・ミス物語の第1話を話してくれました。それを終え、「楼恋巣(ろうれんす)、この果物を食べてごらん」と手の平に赤い果実を乗せてくれました。
「おじいちゃん、これプラム?」と尋ね、歯の先でちょっぴり囓ってみました。すると甘酸っぱくて、思わず身体がキュンと。こんな反応に祖父はニコリと笑い、「ティアという果物だよ」と教えてくれま・・・

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漢字一文字の旅 連載29

14/06/30 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:515


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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オシドリ夫婦の涙 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/06/25 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1124

「夫の蒼々(そうそう)が殺されるなんて…」
 喪服姿の女優、空恋慕(そられんぼ)が記者団を前にして言葉を詰まらせた。そしてハラハラと零れ落ちる涙、それが止まらない。それでも辛辣な質問が続く。
「蒼々さんが殺害された時間帯に、マンションに出入りした女性が防犯カメラに映ってたとか。その方は蒼々さんの愛人のようですね、ご存じでしたか?」
 こんな問いに対しても、さすが大女優、シャキッと・・・

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漢字一文字の旅 連載28

14/06/20 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:692


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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幽霊バス

14/06/18 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1174

 ひょんな拍子で、あなたがもし幽霊バスに乗ってしまったら、その後の人生は一体どうなるのでしょうか?

 じとっとした空気が肌に纏わり付き、生暖かい。だが背筋に悪寒を感じる。そんな陰鬱な夜に、幽霊バスはあなたの目の前に現れる。
 昭和時代を彷彿させる箱形で、くすんだ橙色のボディに緑のラインが伸びる。とにかく気分が悪くなる色合いだ。その上バンパーがへこみ、車体のあちこちに錆が浮き上が・・・

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ON THE ROAD ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/06/09 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1134

 今が とてつもなく 悲しくっても
 勇気を出して 一歩を踏み出そう
 ON THE ROAD
 未来への旅の途中だから

「これって、私たちのデビュー曲だったでしょ。だけど、あなたの未来への旅はここで終わるのよ」
 青酸カリ入りのワインを飲み、いまわの際にあるミライに、古都が冷たく囁いた。
「仲直りしようと、古都を誘ったのに、なぜ?」
 7年前の大・・・

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魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語  第1話 転がる石のように

14/06/03 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:729

「楼恋巣(ろうれんす)。人は信じないだろう、だけどあるんだよ、摩訶不思議な世界って」
 夏休みに帰郷した私に、祖父の妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)が優しい眼差しで、こう切り出しました。それから私の手を握り締め、「お前に話しておきたいんだ。幼稚園からずっと一緒だったヤンチャ坊主の安渡玲(あんどれ)と剣斗(けんと)、おしゃまな織美亜(おりびあ)と伽沙凛(きゃさりん)、それに麻里鈴(まりりん)、・・・

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漢字一文字の旅 連載27

14/05/31 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:622

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
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芹凛の本音 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/05/26 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1229

 現代ファションは氷河期、その原因はデジタル依存の若者たちの感性の欠落にあります。
 アパレル会社社長の江黒竜也がTV出演し、居丈高に世相を評する。まさに鼻持ちならぬ態度だ。

 そんな映像を背に、一人の男が「私が募武(ボブ)です」と自己紹介した。そして「転がる」と言い足す。
 これに美形の、されどもやつれた女が「石の」と続け、頭を下げた。それを確認し、この世のすべての不運・・・

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天上の妖精

14/05/20 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:1202

「星が煌めいているわ。ここでも宇宙が近くに見えるのね」
 陸がオフィスビルの屋上で何気なく夜空を眺めていると、背後からさりげなく囁かれた。だが、あまりにも唐突で、心臓がドキンと打つ。その驚きを隠し、陸が振り返ると、そこにはスラリと背の高い女が立っていた。

 最近世界は緊迫状態が続いている。陸は国家機密機関に勤める情報部員。昼夜を問わず情報収集に追われ、今夜も徹夜になりそうだ。そ・・・

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漢字一文字の旅 連載26

14/05/18 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:607


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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天空の城 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/05/11 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:10627

 晩秋の晴れた早朝、円山川に霧が立つ。それは但馬の山あいに立ち込め、藍白色の雲海となる。
 竹田城はそれを天へと突き破り、宙に浮かぶ。まさに天空の城だ。
 その風景を眺望できるポイントが城と対峙する立雲峡。そこからは、まさに幻想的な情景を目にすることができる。
 京田一郎は崖の上から望遠レンズで、これから現出する夢幻の窮まりを撮ろうとカメラを構えてる。
 そんな時だった。雲・・・

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漢字一文字の旅 連載25

14/05/05 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:672


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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ちょっとぉ妻と、いちおう亭主

14/05/04 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:9180

入賞【 結婚 】 未来総研賞

 このカップルは…神さまの悪戯?
 そうなのです、ほとんどの結婚が意外や意外の男と女の組み合わせ。誰も予想だにしなかった、いや、十年前には自分さえも夢にも思わなかった人と、同じ屋根の下で暮らすことになるのです。
 その動機は――もちろん好きだったからです。
 されども思い切って言わせてもらえば、イキオイとハズミで一緒になっちゃいました、ってことでしょうか。
 私の場合も思い・・・

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悦子という女 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/04/27 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:4200

 賢(まさる)は入社以来馬車馬のように働いてきた。そのため女性と知り合うチャンスがなかった。その上、安アパート暮らしは花も実もあるとは言い難く、十年も続ければ嫌になってくるものだ。
 味気ない独身生活からの脱出、そろそろ身を固めたい。賢は思い切ってパートナー紹介倶楽部なるものに入会した。
 思慮深くて、しかし、生きて行くことに大胆な女性。
 婚活サイトの希望欄にこう記入した。それ・・・

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漢字一文字の旅 連載24

14/04/22 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:678

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどを・・・

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竜宮風穴

14/04/21 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:8989

『親からもらった命、粗末にするな!』
 ここは青木ヶ原樹海、その登山道の分岐点にこんな看板が掛かってました。
「自殺しに来たんじゃないよな」
 浩二に確認すると、「直樹、お前はバカか」と否定され、私はホッとしました。
 それにしても重なり合う樹木のせいで鬱蒼とし、とんでもなく蒸し暑いです。その上に、磁鉄鉱の溶岩だらけで磁石は使い物にならず、方向を見失います。
 こんな・・・

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死の天使 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/04/15 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:8860

「私たちの再会に、乾杯!」
 藍沢蘭子の発声で始まった小さなパーティ、それは高峰秋月の個展会場での二人の再会が切っ掛けだった。
「蘭ちゃんじゃない、ホントお久しぶり。見に来てくれたのね、ありがとう」
 幻想的な日本画を得意とする秋月、最近もてはやされてる。
「得意なイマジナティブなタッチ、ますます磨きがかかってきたようね。おめでとうございます」
 蘭子は、朝靄に消え行・・・

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篠突く雨

14/04/04 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:1275

 ゴロゴロ、ドーン。
 凛太郎は心地よい眠りから無理矢理起こされた。だが、しっかりと現実に戻り切れてない。それでもすぐに、近くで雷が落ちたのだと察した。
 そういえば天気予報、未明にかけて雷を伴う豪雨があると言っていた。凛太郎はベッドからそっと抜け出し、カーテンの隙間から外を見る。暗闇の中に閃光が走り、夜の風景が白く浮き上がる。
 天気予報はアッタリー! こんなどうでも良いことに・・・

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漢字一文字の旅 連載23

14/04/04 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:672


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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七つ雨殺人事件 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/03/30 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1260

 山峡の地に七つ雨温泉がある。名の由来は一年に七回激しい雨が降るからと言われてる。その時、近くの鶯川(うぐいすがわ)は増水し、俗界の因縁を洗うがごとく流れる。
 橋を渡ると天魔堂がある。宇宙のすべての縁(えにし)を仕切る縁生魔王尊(えんしょうまおうそん)の立像があり、左右には縁戻し爺神(えんもどしじじいしん)と縁切り婆神(えんぎりばばあしん)を従えてる。
 この世の腐れ縁、人は時として・・・

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太陽のせい ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/03/22 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1575

 女流ミステリー作家・胡蝶乱舞が新幹線こだま号で絞殺された。このニュースで世間は大騒ぎとなっている。
 胡蝶は、例えば執筆しようとする殺人事件、それは現実に可能か、また論理性があるかを徹底的に検証すると言われている。そのせいか根強い人気がある。
 反面、胡蝶が抱えるストレスは大きく、今回気晴らしにと、京都駅午後2時05分発のこだま662号に乗り、熱海温泉へと一人向かった。
 新幹・・・

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漢字一文字の旅 連載22

14/03/20 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:596


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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ブラックホール

14/03/15 コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:1411

 時は西暦2314年、高度35,786kmに浮かぶ静止宇宙ステーションに招待者がやって来た。
 直径1.6kmの巨大なドーナツ型基地、毎分1回転のスピードでぐるぐると回ってる。この遠心力で地上と同じ1.0 Gの疑似重力を創出しているため、誰も違和感を感じない。人たちはその居心地良さを享受し、ホール内で談笑している。
 だが、その一時の寛ぎを割り裂くように、「ただ今より、世紀のロケット発・・・

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獄門磔(ごくもんはりつけ)の刑 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/03/12 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1880

 町の外れに老舗料亭の廃屋がある。
 風光明媚な景観を売りにしていたが、リーマンショック後廃業となった。今では木々が館を覆い、また庭園にあるベンガラ色の獄門は朽ち、一面雑草が生い茂ってる。まさに由緒ある料亭は過去の遺物と化したと言える。それ故に危険、鉄条網が張り巡らされてる。
 こんな廃墟で、凄惨な斬首事件が起こった。所轄署は直ちに捜査に乗り出し、その第一報告書がここにある。
<・・・

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五〇〇万年前の一つの勇気

14/03/05 コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:1386

 時は今から五〇〇万年前、アフリカの大地は熱帯雨林から乾燥したサバンナへと変化しつつあった。これによりジャングルは徐々に消滅し、まるで大海に浮かんだ島々のごとく、草原に小さな森が点在する状態となっていた。
 当然、年ごとに森で採れる果実も少なくなって行った。そして森の住人の類人猿たち、不幸の宿命を背負っているのか、食料が減少してもそこから抜け出せなかった。
 されども類人猿たちは母音の・・・

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歴詩 (連載5) 「ガラシャ、時知りてこそ」

14/03/01 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:880


歴詩
 鮎風遊がこのジャンルを開拓させてもらいました。
 要は歴史を彩った男や女の熱い思いを、詩に。

 この〈自由投稿スペース〉での連載5は、戦国の世を、父の汚名を背負い悲しくも、されど激しく逝った細川ガラシャがテーマです。

少々の解説を
 永禄6年(1563年)、珠(たま)は明智光秀と妻・煕子(ひろこ)の三女と生まれる。15歳となった美姫の珠・・・

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ルリボシヤンマの奇跡

14/02/27 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1426

 生あるものはその生涯に一度だけ神から奇跡を授かる。もちろんそれは人間だけではない、すべての生きものに対してだ。
 たとえば昆虫のルリボシヤンマ(瑠璃星蜻蜒)。体長90mmのスラリとしたボディに瑠璃色の斑紋がある。ちょっと鯔背(いなせ)なイケメントンボだ。

 その一生は卵が水草に産み落とされた時から始まる。そして1ヶ月後にヤゴへと孵化し、静まりかえった沼の底で、5年間大好物のミ・・・

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漢字一文字の旅 連載21

14/02/22 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:790


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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青薔薇 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/02/21 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:1302

── 男優・神馬龍三は 自殺か、それとも? ──
 夕刊にこんな見出しが。そしてTVニュースでは、女性アナが声のトーンを高くする。

 ベテラン俳優の神馬龍三さん、長くキャスティングに恵まれなかったが、ここへ来て話題作『奇跡』の主演候補となってました。それにも関わらず、今朝マンションの寝室で亡くなられていました。
 第一発見者は妻の桜子さんと管理人です。そして桜子さんは、こ・・・

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壁の向こうの男と女 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/02/14 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:1663

 OL斬殺事件、その重要参考人として山端郁夫の取り調べが始まった。
「あなたは一流企業の重役候補。それでも部下の、いや愛人の里村綾乃を刺し殺してしまった。邪魔になったのですか?」
 慇懃無礼に問い質していた刑事、今度は「会社は首なんだよ。だから、全部吐露せ!」と頭に血を上らせ、椅子を蹴り上げた。「綾乃との縁を切るつもりはありませんでした。だから私は殺害してません」と山端は声を震わせた。・・・

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鳶に油揚げ

14/02/07 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1318

「お父さん、紹介するよ」
 慶太がリビングでくつろいでいると、背後から息子の拓夢が声を掛けてきた。えっと振り返ると、若い女性が息子に寄り添い立っている。
「花瀬玲奈と申します」
 ペコリと頭を下げ、長い髪をかき上げながら面(おもて)を上げた。端正な顔立ちに緊張が窺える。慶太はこの様子から察し、息子がやっと生涯の伴侶を見付けたのかと。
「拓夢ったら、お嬢さまを突然お連れするも・・・

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漢字一文字の旅 連載20

14/02/06 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:685


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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桜雲の山里駅

14/02/03 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:937

 カタン、コトン、……、カタン、コトン
 今は桜待つ季節。その風光る中を、心地よい響きが伝わってくる。しかし、冬の名残だろう、草原の所々には残雪が見え隠れする。 

 微睡(まどろ)みを誘う振動が、ディーゼルカーの床から座席へと……、カタン、コトン、カタン、コトン。
 たった1輌だけで、草原をゆっくりと走り行く。まるで流れ去ってしまった時間を巻き戻すかのように。
 そ・・・

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未完の曜変天目茶碗

14/01/27 コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:2059

 癌を患い、やせ細った父。私は父を見舞うため帰郷した。母に支えられて寝室から出て来た父、私を手作りの茶室へと招き入れ、一服の茶を点ててくれた。
 私は茶道の作法を知らない。それでも漆黒の茶碗の中で、泡立つ鮮やかな青緑色の薄茶(うすちゃ)をゴクゴクと飲み干した。
「祐輔はまだまだはな垂れ小僧だなあ。だけどお前には、この茶碗での一気飲みが似合ってるようだ」
 侘び寂びの感性を持たない・・・

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漢字一文字の旅 連載19

14/01/22 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:827


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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エクレウス号

14/01/19 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1434

 しゃ〜ん、しゃ〜ん、しゃ〜ん。
 馬鈴を鳴らし、草原を抜け、丘を越えて行く花嫁。
 白練帽子(しろねりぼうし)に紅裏白綸子(もみうらしろりんず)の打掛、下は白袴。その上に、赤子を背負って馬に跨がっている。どう見ても奇妙だ。
 それにしても一体どこへ行くのだろう?
 可笑しなことだが、当の本人は知らない。しかし、馬は百も承知、この道は冥府へと続いていると。

 ・・・

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一重白彼岸枝垂桜 ( ひとえ しろ ひがん しだれざくら )

14/01/12 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1721

 夜の闇を打ち割るように、ライトアップされた一本の枝垂れ桜がある。老木だが、浮かび上がった姿は艶(あで)やかで、時折吹き来る夜風にひらひらと花びらを散らす。
 花木洋介は空(くう)に舞う一片(ひとひら)を掴み取り、ベンチに腰を下ろす。それから缶ビールをシュパッと開け、ゴクゴクと。これでやっと喉の渇きを潤すことができた。そしてブツブツと。
「知恵理さん、今年も会いに来ましたよ。いつも妖艶・・・

3

奥義『再会、そして……』

14/01/04 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1435

 長い坂を登り詰めた所に、赤いトンガリ帽子の一軒家がある。その古びた洋館の住人は、一年前にリストラに合った森口翔平。
 とにかく宮仕えは懲り懲りだ。だいたい人付き合いは苦手、もちろん群れることも大嫌い。そんなことから、まるで世捨て人のごとく、偶然にも叩き売られていたこの家を購入し、移り住んだ。
 不便。しかし、この町では一番高い所にあるためか、晴れた日には青空に覆い包まれた町並みが眺望・・・

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紺碧色への求愛

14/01/02 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:829



雨も風も
そして 太陽の輝きも
時には──荒々しく

いっそう揺らめきながら

春から夏へと
季節は盛り上がり 勢いを増している

それは……三年前も同じだった

そして僕たちは
公園へと繋がる ツリー・ラインド・アベニューを
沈黙のまま歩いていた

春から夏への
雨も風も 太陽の輝きも・・・

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漢字一文字の旅 連載18

13/12/23 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:830


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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新年版・男と女の物語

13/12/23 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1556

 新(あら)たしき年の始め、ここは由緒ある──お告げ神社。
 そこに一人の女がいた。
 神殿に向かって二礼二拍手、良い出会いがありますようにと女は祈願する。
 その後深々と一礼し、拝殿から下がると、冷気が首筋を襲ってくる。女は冷えた指をゆるりと、ミッドナイトブルーのコートの襟元へと持って行き、真朱(まそお)のマフラーを巻き直した。
 こんな女の、久し振りの初詣だ。
<・・・

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夢録 (ゆめろく)

13/12/10 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1487

 夢はレム睡眠の時に見る。
 つまり一夜に4、5回起こる急速眼球運動(REM:Rapid Eye Movement)、その時右脳で視覚され、左脳により言葉が付加され、夢は認識される。
 だが明け方の最後の夢だけが記憶として残り、それ以前の夢はすべて忘失してしまう。

 その消えてしまった夢って、どんなのだろうか?
 もし、それが録画でき、再生できたら……、新たな自分を・・・

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ホワイト・クリスマス

13/12/07 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1587

 そっと開けたカーテンの間隙、その向こうに少しくすんだ風景が見える。本当は白銀の世界なのだろう。しかし、新月だった闇の中で雪はしんしんと降り、今も舞い落ちる六花(りっか)の重なりなのか、グレーぽく目に映る。
 凛太郎は、そんな雪夜の名残にふーと息を吹きかけ、ボソッと呟く。「雪だよ」と。

 ベッドの中にいる麻伊からは、興味がないのだろう、「そうなの」と、おかしみのないレスポンスし・・・

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雪の宿命を乗せて

13/11/27 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:843


 雪国の小さな田舎町、そこには一本の鉄道が通っている。
 それは南からやってきて、北の雪山へと延びていく。そんな雪国の小さな町に、今年も初雪が降り出した。雪混じりの木枯らしが吹き、外は寒い。それでも悠馬(ゆうま)は、幼い妹、美雪(みゆき)の手を引いて、町外れの鉄橋までやってきた。

「お兄ちゃん、列車がやってくるの?」
「うん、もう直ぐくるよ」
「それに、お母・・・

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漢字一文字の旅 連載17

13/11/25 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:980

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどを・・・

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電脳神エレボス

13/11/22 コメント:11件 鮎風 遊 閲覧数:1632

 譲二は晴れた日に、都心の高層ビルの屋上へと登った。
 エレベーターでなく階段を上がったため、この登ったという表現が当たっているだろう。そして息を切らせ、複雑な思いで景色を眺め入っている。
 遠くにそびえ立つスカイツリー、濃い緑に映える流線型の新国立競技場、そしてお台場に霞む選手村、それらが実に美しい。が、……。

 2020年の夏、東京オリンピックは開催されるはずだった。・・・

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歴詩 (連載4) 「京のおなご・おりょう」

13/11/16 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:877

歴詩
 鮎風遊がこのジャンルを開拓させてもらいました。
 要は歴史を彩った男や女の熱い思いを、詩に。

 この〈自由投稿スペース〉での連載4は、幕末の動乱期を駆け抜けた坂本龍馬の妻、おりょうがテーマです。

少々の解説を
 楢崎 龍(ならさきりょう)は天保12年6月6日(1841年)に侍医の楢崎将作と貞の長女として、京都市中京区柳馬場三条下ル辺りで生まれる・・・

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漢字一文字の旅 連載16

13/11/14 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:877

 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどを・・・

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進化するパスワード

13/11/07 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:862


 高見沢はメール画面を見ながら物思いに耽っている。表情は深刻そう。
 だが、その実は大した話しで悩んでいるわけではない。単に社内メールのパスワードを変更しようかと迷っているだけなのだ。
 セキュリティの観点から、定期的にパスワードの変更が会社から指示されている。

 高見沢は脳が固まり始めた熟年サラリーマン。そのためか、この変更作業が結構面倒。
 それ自体は単・・・

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卑弥呼が愛したスイーツ

13/11/03 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:1713

 魏志倭人伝に〈南至邪馬壹國女王之所都水行十日陸行一月〉とある。
 つまり不弥(ふみ)国、現在の福岡市箱崎を起点に南へ、いやこれは間違い。東へ海路十日、もしくは陸路一月で、女王が統治する倭国の首都・邪馬台国に着くという。
 そして、〈卑彌呼事鬼道能惑衆年已長大無夫婿有男弟佐治國自爲王以來少有見者以婢千人自侍唯有男子一人給飲食傳辭出入〉、すなわち女王・卑弥呼は鬼道の宗主。夫を持たず、高齢・・・

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漢字一文字の旅 連載15

13/10/31 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1001


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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スイーツ・カフェ [ Whats new ? ]

13/10/29 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1562

 単身赴任中の貴史、休日にブランチしようと張り切ってアパートを出た。行き先は以前から気になっているスイーツ・カフェ[Whats new ?]
 何か新しいこと、ある? って、新作スイーツでもあるのかな?
 貴史は看板を目にした時、興味を持ち、そして今日ワクワクしながら自動ドアーの前に立った。

「えっ、洋介に舞子、なんで、ここにいるんだよ!」
 カウンターの中にいる二・・・

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地下都市の国家機密

13/10/21 コメント:12件 鮎風 遊 閲覧数:1577

 ある企業のコンピューター室に勤務する藍染夏樹、上司から告げられた。社長が面談したいと。
 こうしてその夜、夏樹は高級料亭で社長と向き合うこととなった。単なる専門職にとって、こんな事態なんて考えられないこと、だが現実に。
「さっ、遠慮なく」
 社長が緊張する夏樹を気遣って気軽に声を掛けた。これに「はい」としか返せなかった夏樹に、今度は「まあ、一杯」と社長が大吟醸を奨める。そして「・・・

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都市伝説 金運パンニャ

13/10/19 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1463

 以前、「猫」のテーマで一度登場させてもらった、ビンサラ(貧乏サラリーマン)の直樹です。新たな展開を紹介させてもらいます。

 さて、学生時代に未確認生物同好会のリーダーをやっていた旧友の浩二、久し振りに出逢った時に言いました。
 山奥に──パンダ猫──がいると。
 そいつは孤独を好み、喉をゴロゴロ鳴らし、その辺を徘徊する。だけど小判には興味を示さない、とまことしやかに解説・・・

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第3巻 『これでもか物語 in 歯医者』 (日本の巻)

13/10/15 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:929


 高見沢一郎は今テクノ歯科の治療椅子に座って診察を待っている。
 その待ち時間に、ついついアメリカとメキシコの歯医者さんで起こった『これでもか』の体験をボーと思い出した。そしてその間、目の前にあるモニタ−画面では、タイタニックのシネマ映像がずっと流れ続けていた。

 高見沢がこんな時間を持て余し始めた時に、年の頃は三〇半ばの若い先生が現れ出てきた。
「まずはレントゲ・・・

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漢字一文字の旅 連載14

13/10/15 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1003


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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愛レベ判定器

13/10/10 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1552

 高見沢一郎は昼食を終え、デスクで新聞を読んでいた。その横を後輩の榊原が暗い表情でふらふらと通る。部下でもあり、「どうしたんだよ、浮かぬ顔して」と声を掛ける。
 すると、「彼女に、どれくらい愛してますか、って詰め寄られたのですよ」と半泣き状態。
「当然、死ぬほど愛してるって答えたんだろ」
 こんな高見沢の切り返しに、榊原は「そうですが」と頷いた。だがその後、沈痛な面持ちで、「あな・・・

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出てしまった最終バスを待つ女

13/10/06 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1638

 男はやっと残業を終え、オフィスを飛び出した。イケメンでもないし、高給取りでもない。これといった趣味もない。別に世の中を恨んでるわけではないが、まさに無い無い尽くしのサラリーマンだ。
「もう三十歳、彼女でもいてくれたら、もっと楽しいだろうなあ」
 恋愛のチャンスもなく、今日も今日とて男一人色もなく駅へと着いた。
 ここからアパートまで三十分、バスに乗らなければならない。時計を見れ・・・

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綾音は──(⌒-⌒)ニコニコ

13/10/02 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1684

 良樹は田舎町の小さな駅に降り立った。この町を出て十年、そこには懐かしい風景があった。しかしながら商店街へと向かう良樹は驚いた。まさにシャッター通り、かっての賑やかさはない。
 良樹は人通りのないアーケードを進み、ローズ生花店までやってきた。引き戸が半分だけ開かれてる。良樹は中へと入り、薄暗い先の部屋に向かって声を掛ける。
「来たよ、綾音!」


── お兄ちゃん、母・・・

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第2巻 『これでもか物語 in 歯医者』(メキシコの巻)

13/10/02 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:899


「ブゥエノス・タルデス」(こんにちは)
 高見沢一郎は今日オフィスの近くの歯医者の門を叩いた。
 実は日本で治療してきた奥歯のクラウン(かぶせ)が、二、三日前に外れてしまったのだ。そして、奥歯にごっぽりと穴が空いてしまっている。
 さほど痛みはないが、食事にはまことに不都合。クラウンを早く被せ直したい。
 そう思って、高見沢はメキシコ人のマネ−ジャ−に相談を持ち掛け・・・

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漢字一文字の旅 連載13

13/10/01 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:902


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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アイサと首切り半蔵

13/09/25 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1694


 黒崎半蔵は女性アイドルグループ、ヤンレディ18の地方公演を終わらせ、今会場から30キロ奥地にある山里へと車を走らせている。と言うのも、十年前トップアイドルだったアイサに会いに行くためだ。
「確かにあの時、彼女を退団させてしまったが……」
 曲がりくねった山道を運転しながらも、当時を振り返る。

 煌めくステージ上に18人の少女たちがいた。まさに活き活きと、軽快なリ・・・

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第1巻 『これでもか物語 in 歯医者』(アメリカの巻)

13/09/21 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1276


 こんにちは。
 この物語は高見沢一郎が体験した歯医者さんの物語です。

 誰でもお世話になる歯医者さん、これでもかこれでもかと攻めてきますよね。
 そんなお話しを、アメリカの巻、メキシコの巻、日本の巻、これら三つを連載で、この自由投稿スペースで順次紹介させていただきます。

 軽く読んでもらえれば光栄です。


プロローグ : これで・・・

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漢字一文字の旅 連載12

13/09/18 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:980


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、連載10で煩悩の数108漢字を終えました。
 そして、連載11より再スタートさせてもらいました。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合い・・・

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人待ち風邪

13/09/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1624


 台風の本土接近。そのためか最近の天候は荒れ模様。気温も落ちた。
 その反面、人たちは秋の訪れを実感し、猛暑続きで干上がった心も、ホッ。
 サラリーマンの颯太も同じ、まるで拷問のような夏の日々を乗り越えて、世間のみなさまと同様に、ホッ。
 こうなればジョギングの再開でもと。もちろんコースは慣れた川沿いの道、すべてから解放されてタッタッタッと気分は上々。そして何回か繰り返す・・・

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この縁へと繋がるため

13/09/10 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1610


 光司は雨戸を開ける。夜来の雨はあがり、淡々な光が一瞬に薄暗い部屋に差し込む。その目映さに逆らい庭へと目をやると、木々が色づいてきているようだ。しかし、光司はそんな季節の移ろいに特段のときめきを抱くこともなく、キッチンへと向かう。トーストをカリカリに焼き、ハムとレタスを挟む。あとは無造作にマグカップにコーヒーを注ぐ。あ〜あ、一つため息を吐いた。そして、仕方ないかと呟く。

 半・・・

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あなた待ち島 (前編)

13/09/05 コメント:3件 鮎風 遊 閲覧数:882


 晩秋の比良の山並みは、すっかり紅葉で色付いている。観光船はそれを遠くに望み、琵琶湖の北へと白波を蹴って航行して行く。
 湖上に吹く風は肌寒い。あと一ヶ月もすれば、多分初雪が降ることだろう。

 凛太郎は、京都に勤めるサラ−リ−マン。今観光船のデッキに立って、湖上遥か遠くを眺める。目の前にはさざ波打つ茫々とした湖が広がっている。
 凛太郎は冷えた空気を大きく吸い込ん・・・

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あなた待ち島 (後編)

13/09/05 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:838


 凛太郎と由奈、二人は京都の学生時代に恋に落ちた。
 しかし、凛太郎は地方から出て来た貧乏学生。由奈は京都老舗料亭の一人娘だった。当然料亭を継いで行く義務と責任がある。
 それは実らぬ恋。そして悲しい別れが……。
 由奈は最後に言った。
「今度、いつか逢えた時に、あなた待ち島に連れて行って欲しいの」
 そして、凛太郎は由奈に約束した。「あなた待ち島で、その時、・・・

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漢字一文字の旅 連載11

13/09/04 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1068


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、煩悩の数108漢字を終えました。
 この連載11より、新たに再スタートさせてもらいます。
 これからも御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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宿敵の連鎖サークル

13/09/02 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1731

「10%の売り上げ増です。これは私の率先垂範の結果です」
 洋一の上司、高木部長はこう社長に報告した。そしてニンマリと。
「どこがだよ! 全部俺が汗水流して……、俺が頑張った結果だよ」
 洋一の不平が吹き出す。されどこんなことはいつものこと。この高木野郎、‘悪代官’の汚名通り、部下の成果は容赦なく取り上げ、自分の失敗は部下に押し付ける、とんでもない上司なのだ。
 それでもこ・・・

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沙里と里沙

13/08/30 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:2042

 ステージの下手からトゥで立ち歩き、クロワゼでポーズ。左足プリエで右足前に上げ、つきさし、右足パッセしながら
……手をたたく。
 こんな動きからライモンダの第3幕ヴァリエーションは始まる。

 そしてバレリーナは無表情、いやむしろ毅然と澄ました顔。
 なぜなら──、ライモンダの婚約者・ジャンは戦地へ。その間に、異国の王子から熱烈にプロポーズをされる。帰還したジャンは決・・・

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漢字一文字の旅 連載10

13/08/21 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:941


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載10  口 笛 城 生 杏 終


10−(・・・

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女スパイ・村山たか女 (前編)

13/08/20 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1476


 幕末に、激しくも生きた一人の女性がいた。
 されど終焉は穏やかに、その生涯を閉じた。
 その女性とは……女スパイ・村山たか女。

 その波瀾万丈だった女の生き様を、一つの記録として、男の視点から書かせてもらいました。
 そして、今という時代おいて、その足跡を追い掛けた男の結論は?



──激しくも生き、されど終焉は穏やかに── (前・・・

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女スパイ・村山たか女 (後編)

13/08/20 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2286


──激しくも生き、されど終焉は穏やかに── (後編)

 高見沢は、自分勝手な主観で作成した年表、それを見ながら妄想に耽っている。
「1842年か、今から約百七、八十年前に、村山たか女、長野主膳、井伊直弼のそれぞれが異なった道を歩いてきた。そして女一人三十三歳、男二人二十七歳が赤い糸を手繰り寄せるように巡り合った。ホント不思議な縁、何か運命的なものを感じるよなあ。人の出逢・・・

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愛妻は…自己中の女神さま?

13/08/10 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1764


「あと一時間くれない?」
 大輝の愛妻、美月がねだってきた。
 たまの休日、二人でゆっくりと美術館巡りをするつもりだった。それが朝起きてみると、美月が急にデパートに行きたいと言う。
 こんな予定変更はいつものこと、大輝は慣れている。それにしても、デパート滞在一時間のつもりがさらに一時間追加、そしてプラス一時間、なんと三時間目に突入しつつある。
 最初美月のショッピン・・・

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昇神の儀

13/08/06 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1366


「ただ今から新設備の竣工式を執り行います。一同ご起立願います」
 本日の司会を担当する庶務課長から第一声があり、竣工式が開始された。
「神前に向かって、拝礼願います」
 出席者全員は「拝礼!」と言う掛け声と同時に祭壇に向かって厳粛に頭を垂れた。
「直れ! ご着席下さい」
 祭壇に一番近い席にゆっくりと腰を下ろした高見沢一郎、その表情には安堵した胸の内が伺われる・・・

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漢字一文字の旅 連載9

13/08/05 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:944


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載9  緑 虞 滅 耕 鍋 週
     結 梟 糸 嘆 ・・・

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颯太の夏休み

13/07/30 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1651


 夏という字に、悪魔の魔、ちょっと恐ろしい名前を持った夏魔(なつま)。彼女は颯太のオフィスで働く優秀な派遣スタッフだ。服装も髪色もいつもツートンカラー。いかにも派手で活発そうだが、その外見に反し、立ち居振る舞いはおしとやか。もちろん口数は少ない。
 コミュニケーションは社内メールのやりとりと、流し目だけでこなす。そんなミステリアスな夏魔に恋心を抱いてしまった颯太、断られて元々、夏休み・・・

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『愛と苦しみの果てに』(前編)

13/07/26 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1061


 洋介は今一通の招待状を読み、胸を熱くしている。
 それは啓太から突然に送られてきたもの。
 啓太の二十五歳になる娘・優香が結婚すると言う。 
 だから、その披露宴に出席して欲しいとのこと。

 二歳となった幼い優香を、そっと抱いたのは二十三年前のことだった。
 あれから現在に至るまで、啓太夫妻とは音信不通だった。それは、洋介自らがあらゆる関わりと連絡を・・・

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『愛と苦しみの果てに』(後編)

13/07/26 コメント:3件 鮎風 遊 閲覧数:947


 洋介は日本への出張からアメリカ駐在員の仕事へと戻った。だが今回、啓太には内緒で、妻の可奈子に会った。そして可奈子は幼子の優香を引き合わせてくれた。
 優香は洋介の子だと言う。それは確かなことだろう。そして、可奈子から三つのことを懇願された。
 一つ目は、この件は可奈子に任せて欲しい。
 そして二つ目は、目の前から消えて欲しい。
 さらに三つ目は、優香をいただきたい・・・

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漢字一文字の旅 連載8

13/07/24 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1179


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
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連載8  節 百 愛 文 華 沌
     嘘 飛 仙 士 ・・・

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恋冷ましの花

13/07/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:985


『恋冷ましの花』(こいさましのはな)

 暑い夏も盆が過ぎれば、そこはかとなく風が吹く。
 しかし、その風はまだまだ単なる熱気の流れ。だが徐々にわずかな清々(すがすが)しさも混じってくる。
 そんな秋の忍び寄りを感じさせてくれる八月の終わり、優也(ゆうや)は町から車を飛ばし、妻の夏帆(なつほ)と出掛けてきた。そしてこの山峡の温泉地に着いた。
 目的はこれといっ・・・

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漢字一文字の旅 連載7

13/07/09 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:999


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

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 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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連載7  乾 曜 縮 羅 薯 年
     新 龍 雪 鰒 ・・・

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歴詩 (連載3) 「醍醐の花見」

13/07/09 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1063


歴詩
 鮎風遊がこのジャンルを開拓させてもらいました。
 要は歴史を彩った男や女の熱い思いを、詩に。

 この〈自由投稿スペース〉での連載3は豊臣秀吉がテーマです。
 秀吉は亡くなる半年前に、醍醐寺で一世一代の桜蘭園遊会を開催しました。
 その時、秀吉の胸に去来したものは何なのか、それを詩にしてみました。

少々の解説を
 時は慶長三年・・・

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無慈悲な人

13/07/06 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:2151

 高瀬川亮平へ
  随分とご無沙汰ですが、元気にしてますか?
  ところで、先月、義男が他界しました。
  その生命保険の受取人は、故人の遺言で亮平です。
  受け取ってください。
                 母より

 何年ぶりかに届いた母からの手紙、実に簡潔に書かれてあった。
「そうか、ついに義男は亡くなったか」
 亮平は忸怩たる思い・・・

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淡墨桜よ、朱となり舞い上がれ!

13/06/26 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1320


 湖が遠くに望める高台に、一本の大きな桜の木がある。
 その桜は淡墨桜(うすずみざくら)と呼ばれている。
 蕾の時はピンク色。満開となれば、仄(ほの)かな朱を残すが、白の強さが際立ってくる。 
 そして花びらを、徐々に淡い墨色へと変化させ散って行く。
 そんな淡墨桜、毎年この時節ともなれば桜花爛漫と花を咲かせ、人たちを魅了してきた。そして、今年も咲き誇り、目もあやな・・・

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漢字一文字の旅 連載6

13/06/24 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1273


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

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 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

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連載6  秋 蕎 苺 青 郷 答
     絆 楽 川 探 ・・・

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僕は探偵、塩眞三朗 (しおまさぶろう)

13/06/23 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1876


 街路樹の柔らかな木漏れ日、その中をしばらく歩くと探偵社があります。そう、僕は塩眞三朗と申します。
 この自然豊かな町で生まれ育ち、一応一端の探偵になることができました。その恩返しにと、町の人たちの難題を解決するため探偵として日夜奮闘してます。
 それを評価して頂いているのか、依頼が多く、ホント身がすり切れるほど毎日が忙しいです。
 そんな僕を見て、町の人たちは冗談ぽく、・・・

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隕石でお仕置きよ

13/06/18 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1972


 今宵はにぎり寿司だよ、大トロ、それともウニ、どちらがお好み?
 こんなリッチな迷いが日常化した暮らし、それは確かにソラにとって幸せな日々だった。だが今、それに終止符を打つかどうかで迷っている。

 夫のヒラメキはITベンチャー企業の社長、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。しかし、ここに至るまでの道程(みちのり)、ソラは持ち合わせた才能、すなわちコンピューターの知識/技能を駆使し、・・・

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ヒュ−マノイド

13/06/12 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1131


 東京の御徒町(おかちまち)を、サラリ−マン高見沢一郎は少し疲れ気味でヨタヨタと歩いている。
 それもそのはず、一日の仕事を終えて、今日はここまで出掛けて来て、中古ゴルフショップを隅から隅までウロウロと見て廻った。

 最近どうもゴルフの調子がイマイチ。ここは中古品ドライバーを買い換えたい。そう思って、会社の帰りに長飛距離高弾道一本を探しに来た。
 しかし残念だ。そ・・・

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漢字一文字の旅 連載5

13/06/11 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1236


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載5  紫 滞 煕 力 想 嵌
     壺 雨 薔 遊 ・・・

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減らないラーメン

13/05/31 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:1965


 仕事の第一線から退いた高見沢一郎、今は妻の夏子と穏やかに、いやそれなりに波瀾万丈に暮らしている。
 そんなある日、長女の真奈美が可愛い孫娘、愛沙を連れて、還暦夫婦の陣中見舞いにと遊びに来てくれた。

「お父さん、お母さんに我がまま言ったらダメよ」
「おいおい、いきなり注意かよ、そんなの陣中見舞いにならないよ」
 ちょっと不愉快な昼前だったが、「グランパ、ラー・・・

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姉、そして妻と娘

13/05/29 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1132


「ねえ、お姉ちゃん、もう帰ろうよ」
「ちょっと待ちなさいよ、今帰っても、叔父さんと叔母さん、忙しいでしょ」

 葉子(ようこ)は小学四年生、拓也(たくや)は小学一年生。
 この姉と弟は、半年前から叔父さんの家にお世話になっている。
 その初めての夏に、二人は家の近くで催されている花火大会を見にきた。

 大きな川の上に広がる真夏の夜空。今そこに赤や・・・

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漢字一文字の旅 連載4

13/05/28 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:977


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載4  化 茶 涙 謎 筍 桃
     金 沙 鼠 岬 ・・・

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二郎

13/05/21 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1099


 高見沢一郎は、それはそれなりのサラリーマン。
 一日の仕事を終え、単身赴任のアパートへと帰ってきた。もちろん部屋には誰もいない。それでも高見沢は「今日の企画、もっとゴリ押しすべきだったかなあ……、おい、二郎、お前の意見は?」と声を上げ、冷蔵庫からビールを取り出した。そしてグビグビと飲み始める。

 単身赴任生活、楽しみと言えば、缶ビールを片手にテレビを観たりインターネッ・・・

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男と女の交差点

13/05/19 コメント:12件 鮎風 遊 閲覧数:2203

 日曜日の午後六時、名古屋駅の新幹線プラットホームは人たちで溢れている。そんな中に、目に涙を浮かべた一人の女性が……。
 年の頃は三〇歳前だろうか、若くて張りのある肌に、初夏をイメージさせるマーメイドブルーのワンピースを着こなしている。その洗練されたたたずまいに柔らかくカールされた髪が纏わり、いかにも都会的なセンスが窺(うかが)われる。
 そんな女がおもむろに向かいのホームに目をやり、・・・

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漢字一文字の旅 連載3

13/05/13 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1434


 旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
 脳の中でも歩ける。

 旅は道連れ、世は情け。 
 皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

 この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載3  微 車 驫 欲 肉 恋
     片 暁 鳳 裏 ・・・

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コ・ロ・シ・テ・ア・ゲ・ル

13/05/06 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2058

 白いビルと黒いビルの間に、巾六〇センチほどの犬走りがある。それは反対側の大通りへと通じている。そしてそこには少し違った世界がある。
 こんなことを知っているのは魔美(まみ)だけだった。

「遅いぞ、さっさとコーヒー入れろよ!」
 時間通り出勤してきた魔美に、高木係長から居丈高な指図が飛んできた。
 魔美はこの雑誌社に入社してまだ二ヶ月、新人だ。従って、朝から不機嫌な・・・

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歴詩 (連載2) 「静御前の涙」

13/04/30 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1445


歴詩
鮎風遊がこのジャンルを開拓させてもらいました。
要は歴史を彩った男や女の熱い思いを、詩に。

この〈自由投稿スペース〉での連載2は、日本史上一番の悲恋物語。
静御前の義経への想いを詩にしてみました。

少々の解説を
 時は1184年1月20日、義経26歳は兄・頼朝の命を受け、宇治川から攻め上がり、京で悪行を振るっていた木曾義仲31歳を討・・・

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漢字一文字の旅 連載2

13/04/30 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1227


旅はなにも距離を彷徨(さまよ)うものではない。
脳の中でも歩ける。

旅は道連れ、世は情け。 
皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。


連載2  純 穴 丼 波 麝 梅
     風 鶻 湖 石 犬 情

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『3』の欠落     (1998文字)

13/04/26 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1829


「ちょっと何か変だなあ」
 高見沢一郎はこんな独り言を吐きながら、単身赴任のアパートへと帰って来た。
 初夏の熱が籠もった部屋。まずはヨタヨタと冷蔵庫へと歩み寄り、冷え切った缶ビールを取り出す。そして命蘇生のために、グビグビと。
 とりあえずこれで一息入れて、後はパソコンの前にドサリと座り込んだ。そして「おかしなことが」と一人小首を傾げる。

 それはオフィス・・・

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漢字一文字の旅 連載1

13/04/24 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1315


旅はなにも距離を彷徨さまようものではない。
脳の中でも歩ける。

連載1からスタートし、漢字一文字を訪ねる旅をしませんか?

旅は道連れ、世は情け。 
皆さまからの熱い情けを受けて、御一緒に、果てることがない旅が続けられたら嬉しいです。 

この〈自由投稿スペース〉で、お付き合いのほどをよろしくお願いします。



・・・

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歴詩 (連載1) 「本能寺炎上」

13/04/24 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:1273


歴詩
鮎風遊がこのジャンルを開拓させてもらいました。
要は歴史を彩った男や女の熱い思いを、詩に。

また、「You Tube」でも順次紹介できればと思っています。

この〈自由投稿スペース〉での連載のスタートは、日本史上最大のミステリー、本能寺の変の中の織田信長を詩にしてみました。

明智光秀はなぜ謀反を起こしたのでしょうか?
野望説、・・・

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手紙復活の会

13/04/21 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2193

 滝川拓馬は郵便受けから一通の手紙を取り出した。差出人は浜崎優奈とある。
 なぜこの年になって、突然に優奈からかと思ったが、不思議なものだ、胸が高鳴るから。

 浜崎優奈、拓馬の高校時代のガールフレンドだった。というより、拓馬にとっての初恋の人。
 優奈は町の高校へと電車で通っていた。多分田舎の中学校では成績一番で通してきたのだろう。どことなくツンとすましたところがあり、と・・・

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明朝体ワールド

13/04/07 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2195


 何かが変だと思っていた大樹、雷門の大提灯を見上げたまま固まってしまった。
「節子、これって、いつもと違うよな」
 久々に休暇が取れ、婚約者の節子と浅草へと出掛けて来た。結婚を三ヶ月後に控え、幸せな家庭が築いて行けるようにと、浅草寺(せんそうじ)の本尊・観世音菩薩さまに祈願しに来たのだ。
 だが、大樹は雷門の前で突然立ち止まってしまった。節子が「提灯は、何も変わってないわ・・・

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あれこれそれ茶漬け   (1997文字)

13/03/31 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1921


 今は桜花爛漫の時節、高見沢一郎は久々に単身赴任先から自宅へと向かってる。そんな途中で、駅構内の漬け物店へと立ち寄った。
 ケイタイを掛けてきた妻の夏子から頼まれている、「あれ、買ってきて」と。
「ああ、わかった、あれな」と、その時は忙しく一応返事したが、夏子の「あれ」が何の「あれ」なのか確かではない。だが、長年連れ添った女房、およそのことはわかる。

「すいません・・・

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小指立て夕子

13/03/24 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1987


 これは作り話? それとも実話?

「ただいまよりS−1グランプリを開催します」
 地下室のステージに立つ仕立屋銀次、明治のスリの大親分が宣言した。
 会場には歴代のスリ名人たちが一堂に会している。
「みんな、普段の腕前を発揮して、競おうぜ!」
 ケッパーの梅ジイが気合いを入れる。ケッはケツ、尻のこと。またパーは財布の隠語。その名前通り、ケッパーの梅ジイ・・・

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サーカス婚

13/03/13 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:1856


「どうしたいの?」
 愛莉の手に力を込め、智也は訊いた。しかし、ブライダル・プランナーが自信たっぷりにまくし立てる。
「最近、スマ婚や楽婚が流行ってますが、当社が開発しましたサーカス婚、これがお二人の門出としてお値打ちですよ」
 智也は横槍にムッとしたが、ここは冷静に。
「マキコさんでしたよね。それって何がお値打ちなんですか?」
 こう確認すると、マキコ姉さん・・・

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ドリアン   (1998文字)

13/03/09 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2042


「高見沢君、ちょっと頼みがあるんだけどなあ」
 正月も明けたある日、高見沢一郎は上司の花木部長に話しかけられた。
「なんですか?」と問うと、「君なあ、一週間ほどマレ−シアに出張するだろ」と部長がニヤリと笑う。
 確かに支援要請を受け、出向くことになっている。高見沢が「はい」と答えると、コテコテの関西弁で花木部長がほざいた。
「ホンマのことや、俺まだ……ドリアン食べた・・・

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ツ−トモ (1999文字)

13/03/03 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1998


 コートのポケットに左手を入れ、右手で吊革を握ってる。ぶら下がったような瑛太、混んだ電車の揺れに身を任せている。
 毎朝繰り返される通勤地獄、だが慣れてしまえば気怠くもあり、夜の続きか睡魔が襲ってくる。しかし、勤務先の駅までにはしっかりと目覚めなければならない。しかも心地よくだ。
 そのためには瑛太なりの拘りがある。それは七輛目の後方部、奥から三つ目の吊革辺りに自分のスペースを・・・

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妹の郁子

13/02/20 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2207

 洋一は久し振りに実家に帰った。父は八年前、そして母は五年前に他界し、今は誰もいない。家には火の気はなく、春だというのに冷え込む。還暦をとっくに過ぎた洋一、その冷たさが身に沁みる。
「さっ、飾り始めるか」
 洋一は気合いを入れ直した。今からお雛さんを飾ろうというのだ。
 まず納屋から古い木箱を運び込んだ。そしてそろりと蓋を開けてみる。少しかび臭い。覗けば、新聞紙に包まれた大小それ・・・

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しあわせー!

13/02/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1999


 バリバリバリ……、ドカーン!
 朝方の薄暗い部屋に霹靂(かみとき)の電光が走り、天鼓(てんく)が轟き渡る。近くで落雷したのだろう。
「ウッセイなあ」
 ベッドの中で、高見沢一郎は不機嫌に独り唸り、重い瞼を開けた。
 そして……ギョッ!
 口から心臓が飛び出すほど驚いた。
 ベッドの脇に、一人の男が……立っているではないか。
 さらに高見沢は度肝を・・・

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妻チョコ

13/02/04 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:2296

 高見沢一郎は昼食を終え、デスクで寛(くつろ)いでいる。そんな時に部下の榊原がうつむき加減で通り過ぎようとした。高見沢はとりあえず上司、「おい、どうしたんだよ?」と声を掛けると、榊原は今にも泣きそうな顔をして擦り寄ってきた。
「先輩、聞いてくださいよ。実はもらっちゃったんですよ」
 いつものパッパラパーの榊原とはちと違う。「何をもらったんだよ?」と訊いてやる。
「歳を重ねた先輩に・・・

2

真希と祐子

13/02/04 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:1960


「故郷のシュークリーム、もう一度食べてみたいと言ってたでしょ。だから、行ってきたら」
 なぜか突然、真希が悲しそうに囁いた。だがそれで直樹は背中を押されたのか、出掛けることにした。

 母子家庭で育った直樹、暮らしは貧しかった。それでも中学時代までは楽しかった。高校生活は味気なく、振り返りたくもない。なぜなら高校受験で直樹の心に刺が刺さってしまったからだ。
 それで・・・

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昭和映画館の……

13/01/27 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2153


 帰宅途中、幸一は書籍のリサイクル・ショップにふらりと立ち寄った。特に買いたい本はないが、何か掘り出し物でもないかと店内をうろつく。そして奥の本棚まで来て、昭和時代の写真集が目に入った。
 幸一はそれを引っ張り出し、パラパラとページを繰る。そしてその中の一枚の写真、それに目が釘付けとなる。
 セピア色の歪んだ三角形の屋根が三つ並んでる。きっと実際の色合いもくすんでいたに違いない・・・

4

不沈戦艦・大和を、今

13/01/21 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2412


「みな様、ただ今より記者会見を開催致します」
 混雑の中、ニュース・コンファレンスが始まった。これから世間をあっと驚かす発表があるという。記者の花木拓馬は熱気ある会場の前列に陣取り、発信される情報は少したりとも取りこぼさないぞと気合いを入れ直した。壇上のプレゼンターは自己紹介をし、あとは記者団が固唾を飲む中、粛々と会見は次へと進む。

「世紀の一大プロジェクトをスタートさ・・・

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鞍馬寺のパワー

13/01/15 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:2363

 昭和七年(1932年)の秋、寛(ひろし)と志ょう(しょう)は鞍馬寺を訪ねた。もう幾度も来ているが、今回は鞍馬の門前町から入山し、貴船(きぶね)へと下りた。
 俗界から浄域への結界、その仁王門を超え、清少納言が「近うて遠きもの、くらまのつづらおりといふ道」と記した九十九折り(つづらおり)参道を登った。
 そして本殿金堂へと。ここは毘沙門天王、千手観世音菩薩、護法魔王尊の三身一体が本尊で・・・

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携帯電話を忘れないでね

13/01/13 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2101


「ねえ、亮介、私はA社の秘書、あなたは競争相手のB社の営業部長でしょ。寡占状態にある会社の社員がこのように密会してるって、しかもホテルのベッドの中よ。これって法的にも……罪を犯してることになるんでしょ?」
 阿沙子は、髪を撫でる亮介の手を振り払いながら、ボソボソと呟いた。
「ああ、立ち話しだけでも、価格カルテルの疑いで睨まれるぜ。独占禁止法違反だよ」
 こう言い切った滝川・・・

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小説大学

13/01/06 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:2044


 山々が重なり合った奥地に廃村がある。そしてそこには廃校が残った。しかし最近リフォームされ、再び開校されたようだ。
 宇田川聡(うたがわさとし)は山を超え、息を切らして学校の門をくぐった。ここで教鞭を執るつもりだ。

 不景気の煽りで、リストラに合った。次の就職先をウェブ上で探していたら、ふと見つけた。
「蘇った山の学校、ここで教え、共に学びませんか」
 こん・・・

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初春の…ああ!

12/12/15 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2330


「うーん、もうちょっと」
 男は温もりが心地よく、布団から抜けられない。さらにうつらうつらと微睡(まどろ)み、目を覚ますと昼前。やっとのことでゴソゴソと起き出した。あとはコーヒーを沸かし、こんがりと焦がしたトーストでハムを挟み囓る。元旦だというのに普段の朝と変わらない。
「初日の出を撮ってくるわ」
 妻は一眼レフカメラを抱えて、年末から行方不明。どこへ出掛けていったものや・・・

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うまんまの箸

12/12/05 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:2209

 単身赴任中の高見沢一郎、パソコンの前でコンビニ弁当を突っつきながらふと思い出した。それは幼い頃に祖父がポロリと漏らした『うまんまの箸』のこと。一体それはどんなものだろうか? ネット検索すると……。

 うまんまの箸は香木うまんまの木から作られ、それを使うとすべての食べ物が美味しいと感じられる。
 材料となるうまんまの木は森深くに育つ落葉樹。初夏に可憐な花を咲かせ、秋には真っ赤に・・・

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どこかで、こんな…『蟻 & 角砂糖』的な…クリスマス・プレゼント

12/11/29 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2508

「ありがとう」
 今宵はフランス料理のクリスマス・ディナー。涼太はシェリー酒を一口飲み、あらためて世話になってるお局さまの真奈に礼を述べた。
 だが真奈はアベリティフで口を潤しながら「うん」とだけ頷いた。そしてオードブルのフォアグラにナイフを入れながら、自虐的なことを言う。
「だけどね、私は結局……蟻みたいなものだったわ」
 涼太は真奈が唐突に吐いた言葉、蟻の意味がわからな・・・

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生滅流転 (しょうめつるてん)

12/11/22 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2376

「どうしたんだ?」
 悦蔵は、何かに怯えて、うずくまる紗菜に訊いた。妹は「うーうん、兄さん」とだけ答え、あとは泣きじゃくる。
 悦蔵はそんな紗菜が震わす肩越しに目撃したのだ、天にも昇る火柱を。
 炎は村の庄屋でごうごうと燃え盛っている。悦蔵は総毛立ち、めまいを覚えるほどだった。しかし妹が無性に哀れに思われ、力を込めて抱き締めた。

 悦蔵は紗菜を問い詰めなかった。なぜ・・・

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濃いコーヒーを飲む女

12/11/14 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2377

 高瀬川洋介は『送信』ボタンをクリックし、達成感でふうと息を吐いた。そして「次のお題は何かな?」とぼそぼそと呟き、後はおもむろに新着コンテストの画面に入って行った。
 そこには『コーヒー』と表記がある。
 これを目にした洋介、「コーヒーね、ちょっとなあ」と心もとない。天井を見上げ、自分自身を題材に書いてみようか、それともパスしてしまおうかと迷い始めた。

 洋介は長年のサラ・・・

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さかなや書店

12/11/09 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1907

「いらっしゃ〜ぃ、そこのお兄さん、今日は新鮮だよ! やっと世に出たミステリー、現代夢幻物語というお魚だ! ノルウェイとはちと違う、不思議な味だよ。さあお兄さん、ワンコインで一匹どうだい?」

 たまの休日、高見沢一郎は遅めの昼食を取ろうと、アパートから一駅向こうの商店街に出掛けてきた。そしてこんな威勢のよいかけ声で、店の前に立つオカンから呼び止められた。そのお母さんは前掛けをし、鉢巻き・・・

2

新エレ幹線 (遠距離恋愛)

12/10/27 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:1993

「拓馬、どうするのよ?」
 佳奈が煮え切らない拓馬にせっついた。そして拓馬は、それにいよいよ結論を出すべきだと覚悟を決めた。
「僕は佳奈と一緒に暮らしたいんだ。だから、天上界から僕が住む地底都市に移って来て欲しいのだけど……、佳奈はどうしたいの?」
 反対にこんな言葉で訊かれた佳奈は下を俯いたままでいる。そしてしばらくの沈黙の後、決意を込めて口を開いた。
「そうだわね、拓馬・・・

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チャンネル 『1059』

12/10/18 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2049

「花形博士、この世紀の大発見、ビジネスとして世に打って出たらどうでしょうか?」
 助手の河瀬は恐る恐る進言した。「うーん、どうしようかね」と、博士に少し迷いがあるのか、曖昧な返事しか返ってこない。
「そうですか。博士の場合、もし奥さんが知れば離婚問題に発展しかねませんからね。じゃ、この発見、封印してしまうのですか」
 河瀬が残念そうに表情を曇らせた。それに反し、今度は花形博士は背・・・

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みな様へ、 犬一匹からのご挨拶

12/10/09 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1951

 初めまして。
 僕は犬一匹です。
 せっかくの機会、この場を借りて、みな様へちょっとだけですが、ご挨拶申し上げます。


 僕がこの家に住み出して、随分と歳月が流れました。
 そう、それは10年前です。生まれたての僕はダンボールの箱に入れられて、公園に捨てられていたのです。当時、幼なかったエッコとヨックンがクンクンと泣いていた僕を家に連れて帰ってくれました。<・・・

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不徳な回帰

12/10/05 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1930

「課長、ちょっと困ったことがありまして……」
 部下の山路が朝っぱらから泣きついてきた。花木忠蔵はまたクレームの話しかと思い、「まずは落ち着けよ。で、どうしたんだよ?」と上司らしく聞き返した。すると山路は、今度は首をひねりながら伝える。
「実はアルバイトの変若水(おちみず)が……突然消えてしまったんですよ。どうも失踪のようでして」
 朝一番からこんな報告を受けた花木、「うーん」と・・・

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コンビニ 「ハイ、ハニー!」

12/09/28 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:1939

「いらっしゃー、まっせー」
 ふらりと立ち寄った高見沢一郎に、コンビニ特有の挨拶が飛んでくる。そして弁当を取り上げレジへと。
「あたためますか?」
「うん、あっためて」
 コンビニ定番の会話だ。
 それからプラスチック袋を手にし、外へと出る。そこに若者たちが物憂げにたむろしている。別段驚くことではない。日常化した風景だ。
 だが、彼らの横を通り過ぎる時にふと思い・・・

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再会 (駅の出会いは時空を超える)

12/09/19 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2038

 朝の通勤時間帯、駅のプラットホームは人で溢れている。愼一は今朝も急ぐ人たちに揉まれながら電車を待っている。
 しかし、そんな中にあって、愼一は電車が到着するまでの僅かなタイミングを狙って、向かいのホームを見渡してみる。
 そして今日も見つけたのだ、彼女を。

 年の頃は25歳前後だろうか、肩までの黒髪にすらりと背の高い女性。濃紺のビジネススーツを品良く着こなしている。目鼻・・・

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懐中時計 【 ブレゲ No.160 】

12/09/15 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2792

「アナタ、この古くさい時計、どこかへ売っぱらってきてちょうだい!」
 リヴカは朝から機嫌が悪い。朝食のためテーブルについた夫のアブラハムに、懐中時計を差し出し、怒鳴りだす。
 アブラハムは妻がなぜ不機嫌なのかわかっている。だから素直に、「ああ、そうするよ」と答えた。

 1ヶ月ほど前のことだった。泥棒市場で、アブラハムはこの金の輝きを持つ時計を見つけた。手にするといかにも精・・・

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肉じゃが格闘技

12/09/12 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2015

 格闘技とは「相手と組み合い、自分の体での攻撃・防御を行うスポーツ競技」だ。しかし、時の流れとともに、その言葉の解釈はより広がりを持って行った。相手とがっぷり四つに組んで闘う、それはなにもフィジカルなことだけではない。身体を使わずとも、真剣勝負ならば格闘技となった。
 今は2050年、そんな社会通念が定着している。その証拠に、ありとあらゆる格闘技をテーマにしたイベントが流行り、事実人気を博し・・・

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未確認生物 『パンダ猫』

12/09/06 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2396

「浩二、卒業してからどうしてたんだ。それで……、発見できたのかよ?」
 駅構内にある喫茶店で、私は学生時代の友人、稲瀬浩二に向かい合いズバリ尋ねました。なぜならあの頃の浩二は未確認生物探検同好会のリーダーをやっていて、よくリュックを担(かつ)ぎ山や無人島へと出掛けていたのを憶えていたからです。

 そう言えば、当時はツチノコブームでした。探検から帰ってきた浩二はその存在の可能性を・・・

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二つの祖国とオリンピック

12/08/31 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2264

 エスタジオ・ド・マラカナン、それはメイン・スタジアム。そして今、そこにはリオのカーニバルが再現され、サンバのリズムが轟き渡っている。
 南米初のブラジル・オリンピックは2016年8月5日から8月21日まで17日間開催された。そして今夜、閉会式を迎えた。

 2012年のロンドン・オリンピック以降、準備は加速されたが、なにぶんリオデジャネイロは混雑したメガシティ、そして「リオ人は・・・

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龍ちゃんプール

12/08/23 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:1868

 鬱蒼と茂る木々、一帯にムーンと熱気が籠もってる。
 それでも良樹は全身に汗を噴き出させながら、道なき道を前へと進む。多分もう少しだろう、目指すポイントに辿り着けるのは。

 それは十日ほど前のことだった。ネット内の航空写真で遊んでいた時に見つけたのだ、満々と水を湛(たた)えた青い泉を。山あいを細い清流がくねくねと縫っていた。それはそのそばにあった。
 だが拡大してみると、・・・

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父と母の高校野球

12/08/10 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2164

 遼一は母・幸子(さちこ)が一人暮らしをしていた実家に戻り、片付けをしている。そして弔いのために、母が好きだった高校野球のTVのボリュームを上げる。部屋中に歓声が轟く。そんな時に、大事そうに仕舞われてあったノートを見つけた。

 遼一はなんとなく感じ取った。それは母が遼一に伝えておきたかったことではないかと。
 遼一は拾い読みをした。そしてそこには遼一が知らない母がいたのだ。

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宇宙から見た花火

12/08/04 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:4259

「キャプテン、この星、空気もあり水もあり、我々の星によく似た惑星のようですよ」
「そうか、ラキア−、それじゃもう少し接近してみてくれ」
 時空貫通システムを使い旅をしてきた宇宙探索船。いわゆるUFOは、現在月の辺りでホバリングし、地球を窺(うかが)っている。

 彼らが住む星は50年後に大きな隕石が落ち、滅びることが判明した。
 これにより移住できる星を見つけ出せとミ・・・

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プリンセスと自転車

12/07/28 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:2032

 亮介は駅から事業所までの近道を急いでいる。
 朝一番の会議までに資料を作成しておかなければならない。しかし、そんな慌ただしい中で思うのだった。
「今朝も彼女とすれ違うかな?」

 彼女とは、多分事業所近くに住む女性だろう。年の頃は二十五歳前後。
 きっとOLなのだろう、いつも亮介が事業所へと徒歩で向かっている時に、自転車を走らせ、軽快に駅へと飛ばしていく。
 ・・・

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真夏夜の水族館

12/07/15 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2185

 梅雨は明け、本格的な夏が始まった。熱帯夜が続く。
「暑くって眠れないなあ。節電しないとダメだけど・・・・・・、えーい、クーラーの設定温度下げてみるか」
 単身赴任中の高見沢一郎、こんな独り言を吐き、ベッドからすり下りた。そしてリモコンで2℃落とし、後は冷蔵庫へと直進する。

 水分を補給しなければ、そんな強迫観念で、コップ一杯の冷茶をゴクリゴクリと飲み干した。そして片付け・・・

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群馬の地上絵

12/07/11 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2210

「今年もやっと見つけることができたか、良かったよ」
 単身赴任の圭吾(けいご)は、誰もいない部屋で感慨深く独り呟いた。そして、マグカップを手にし、冷え切ってしまったコーヒーをおもむろに口にした。その後、パソコンをパチンと閉じた。

 思い起こせば、佳奈瑠(かなる)と結婚してから二十五年の歳月が流れてしまっている。そして今年は銀婚式の年だ。
「まあ、よくぞここまで、やれてこれ・・・

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豊後国を駆け抜けた命

12/06/28 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2240

「龍馬、あしたの朝は早いぞ、もう寝ようぞ」
「はい、先生、そうしましょう」
 二十八歳の竜馬は、師と仰ぐ勝海舟に殊勝に答えた。そして、本殿の仏間から漏れくる薄明かりの中でそろりと瞼を閉じた。

 時は文久四年(1864年)、疾風怒濤の幕末だった。英、米、仏、蘭の四カ国による下関砲撃が続いていた。幕府はそれを中止させるため、勝海舟に長崎に出向き、その交渉にあたれと命を下した。・・・

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晩夏の小夜時雨 (ばんかのさよしぐれ)

12/06/17 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2844

 粒径は0.4ミリメ−トル。そして、落下速度は秒速2メ−トル。無色透明のまま、それらは真っ暗な夜空より、さあ−さあ−と。微かな音とともに複雑に、交叉しながら落ちてくる。
 主成分は紛れもなく[H2O]、だがそこに微量の窒素を含ませて・・・・・・。
 そんな天空からの、季節外れの落下物、それは晩夏の小夜時雨。無味無臭の性状のままで、その夜それが降っていた。

「ねえ、開けて」・・・

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