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桜車窓

17/03/24 コメント:0件 ナマケモノ 閲覧数:32

 車窓の外で、桜吹雪が舞っていた。
「春ですねぇ」
 桜の花びらを眺めながら、婦人は口を開く。
 柔らかな陽光が彼女の霧髪と、笑顔を照らしていた。向かいに座る僕は、曖昧に笑ってみせる。僕と婦人しかいない車両には、電車の駆動音が広がるばかりだ。
 突然話しかけられても、どう返していいのやら。それとも、先ほどから婦人を観察していたことがバレてしまったのかもしれない。線路脇に植え・・・

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カツサンドの味

17/03/23 コメント:0件 雪見文鳥 閲覧数:25

「黄色い道みたい」
 初めてその絵を見た時、私はそう呟いた。丸い月が、黄色く柔らかい光で夜の海を照らす様子が、水彩画独特のタッチで柔らかく描かれてあった。田舎町の小さな展覧会で、他にも色々な絵が飾られてあるのに、私はその絵の前から動けなくなってしまった。当時7歳だった私は、誰が描いたのかも分からないその絵を、まるでスケッチでもするかのように見つめ続けた。

 目の前に、水張りを済・・・

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宇宙服

17/03/23 コメント:0件 笹山美保乃 閲覧数:64

 都会の街に、ある老人がおりました。その老人はいつも、傍目からは奇妙な色のスーツを着ていることで、街の人々には有名でした。
 奇妙な色とは、形容しがたい色でした。黒に白、赤、青、黄、茶、それからアイリス、メドゥーズ、アランブラ、モーブ、ヘイズ、それからそれから海松茶、錆鉄御納戸、黒紅、象牙、蘇芳…とにかくありとあらゆる色んな色が点々と、星のように散りばめられたスーツを老人は着て、街の歩行者天・・・

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父と私の在来線帰省

17/03/23 コメント:0件 こあら 閲覧数:34

新幹線を降り改札を出て目をあげると、父が立っていた。
「あぁ、ありがとう」
私はぼそっと言って、駅の出口へと歩き出す。
「おぉ、佐奈枝。今日はそっちじゃない」
父はオレンジ色の切符を差し出しながら言った。
「今日は在来線で帰るぞ」

父と私は、人気のない車両の四人掛けボックス席に、斜めに向き合う形で座っていた。
私の実家は、新幹線の駅から電車で三十分・・・

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こみさき駅

17/03/23 コメント:0件 甘水 甘 閲覧数:41

 僕は転勤のため5日前に引越しをした。
 引越し先はとある小さな町だ。大きな都市へのアクセスは少々悪いが、町の人々は優しいし、不便はない。とてもいい町だ。
 しかし、1つだけ気になっていることがある。それは、通勤時に見る謎の駅のことだ。
 僕の職場は今の住居から2駅先にある(本当はもっと近くに部屋を借りたかったけど、何故か今の住居しか借りられなかった)。だから当然仕事に行くために・・・

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すべてのわざには時がある

17/03/23 コメント:0件 ぴっぴ 閲覧数:30

渋谷で降りようと思っていた。薄氷の下はマグマではないか、それくらいに東京の夏は蒸し暑い。人は汗ばんだ肌をお互い触れないように距離に気を使いながら電車に揺られている。五反田あたりで赤い服を着た若い女の子が隣に座ってきた。札幌では若い男の隣に若い女の子は座りたがらないものだ、しかし東京は気にしないで座ってくる。それが上京した時に感じたことだった。東京では当たり前なのだと思いながらも、恋人のように見られ・・・

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無人電車

17/03/23 コメント:2件 かわ珠 閲覧数:58

「……は?」
 目が覚めると、周りには誰もいなかった。窓の外は真っ暗で、この電車が今どこを走っているのかわからない。
「寝過ごしちゃったか……」
 大きく伸びをして、頭を掻く。そして、あくびを一つして、ようやく頭が回転し始める。仕事帰りのスーツ姿のままだったせいか、左肩が痛い。今、この電車はどこを走っているのか確認しなければ。ドアの上の車内案内表示に目を向ける。
「あれ……・・・

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Third Car・前日譚

17/03/22 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:61

 斉藤宗二はきちんと整えた白髪と手入れの行き届いた口髭が印象的な紳士で、どんなに空いていてもシートに腰をかけず、三両車の扉から入ってすぐのつり革につかまり六駅間を過ごす。
 若い頃はアカペラバンドに所属し、彼の担当はバスだった。
 腹に響く低音と完璧なピッチは今も健在だが、いかんせん披露する場がない。
 一度、雑誌で募集していたアカペラバンドに参加したが、宗二の完璧なベースは彼ら・・・

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電車デート

17/03/22 コメント:0件 田中あらら 閲覧数:70

「危険!使用禁止!」の看板のたてられた壊れた吊り橋を渡ろうとする人はいない。それにとっくに見た目にも渡れないことがわかるほど朽ちていた。かつて吊り橋は、隣の村に行く近道であり、それが唯一の道だった。10kmあまり下流に橋ができ、車社会となってからは使われることが少なくなり、朽ちていくままになった。
 下流の橋の横には鉄橋があり、3両編成の黄色い電車が走っている。全線20kmの小さな路線は、旅・・・

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わらいもの、それから

17/03/22 コメント:0件 秋 ひのこ 閲覧数:56

『ううう、顔だけ良くてすみませんんん』
 アイドル顔負けの童顔をくしゃくしゃに歪め、半泣きで決め台詞。スタジオがどっと笑う。「失敗芸人」として一気に躍り出た「ムーちゃん」の顔が画面いっぱいに映る。
「ムーちゃん昔からああだったもんね」
「ムーちゃんがいたから笑いが絶えなかったな」
 同窓会という名目で頻繁に集まる地元の飲み会で、20年来の元級友たちは懐かしそうにムーちゃんこ・・・

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day break

17/03/21 コメント:0件 黒丞 閲覧数:65

『アナタの失敗買取ります。』
そんないかにも怪しくて胡散臭いサービスがスタートして早十年。この世界には『失敗』がなくなった。
試験や就職活動で泣きを見ることもなければ、恋愛だって思った通りに成就してしまう。とっても理想的で、素敵な世界になったというわけだ。
失敗の買取りシステムはとても簡単。ネット環境があれば誰でも申し込み可能だ。ホームページの所定のフォームから、自分が予測する最・・・

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喜び一番

17/03/21 コメント:0件 木野太景 閲覧数:63

 三月の暖かいある日、まだ十代の若い女性が、駅前広場のベンチの前でしゃがんでいた。春の風が吹くと、彼女の長い髪は自由に踊り、髪の結び目に添えられたアネモネの花飾りも一緒に揺れた。彼女は顔にかかる髪を鬱陶しそうに手で払いながら、地面の上の何かを探していた。
 数分前まで、彼女は嬉しかった。大学が休みの間に新しい春服や靴を少し揃えようと街で買い物をしていたら、あと一点しかない素敵なワンピースに出・・・

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くるくるホットケーキ

17/03/21 コメント:0件 ハギムー 閲覧数:53

 いつだったかホットケーキは回って食べるべきだと考えたことがある。
 お皿に乗っていたそれがふと、月に見えたのだ。それなら私はそれを食べることで月を欠けさせていく存在。月が欠けるのは地球が回るからで、じゃあ今それを目の前にして私が回らないわけにはいかないと昔考え付いた。
 そして今数年振りにホットケーキを目の前にして考えることはいつぞやのそれと全く同じだった。
 前に座る夫に続き・・・

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ダイヤ泥棒

17/03/21 コメント:0件 ゆえむ 閲覧数:64

僕は電車が嫌いだ。

電車はいつも、僕から大事なもの持ち去っていく。僕だけを、このホームに置き去りにして。

幼少の頃、父は単身赴任で僕の元を去った。その後父は直ぐに事故で死んだ。二度と会えることは無かった。
嫌に軽快な音を立てた自動ドアが閉まる。父の笑顔と、僕の泣き顔がドア1枚で隔てられて。あいつは持っていってしまった。僕の大切を。

高校生の頃。大好き・・・

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真矢の決断

17/03/21 コメント:2件 田中あらら 閲覧数:57

聡子の話
 私の理想は、夫が生活や将来の不安がないぐらい十分に稼いでくることが基本である。そのために私はサポートをする。共通の趣味である美術館やコンサートに行った後、洒落たレストランで食事をし、たまには遠くに旅行する。穏やかに言葉を交わし、微笑み合う生活だ。
 今の私といえば、生活を支えるための仕事をしている。夫が起業して社長夫人でいられた時期もあったが、ほんのいっときだった。娘の教育・・・

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キンセンカの花束をあなたに

17/03/20 コメント:0件 黒猫千鶴 閲覧数:143

 大きな花束を抱いて、屋上に続く階段を一つずつ上がって行く。革靴が音を立てる度に、嫌な声が再生された。

『こんなことも出来ないのか!』

 怒鳴る上司の声。

『これもやっておいて』

 仕事を押し付ける先輩の声。
 僕を非難する声が響く。直せと言われたから直したのに、文句を言われる。どうして、また意見を変えるんだよ。疑問をぶつけても答えても・・・

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回想電車

17/03/21 コメント:0件 おかず 閲覧数:73

 目の前の青年は白くて冷たい手で私の腕を引きながら歩いている。見たことのない寂れた商店街の中をわき目も触れずに進んでいる。私は今、自分の名前を探している。彼岸から此岸に帰るためになくした名前を取り返しに行くのだ。
 ここに来たのは数時間前、電車で寝過ごして車掌に起こされた。降りてみれば見知らぬ廃墟が広がっていた。誰もいない街を彷徨い、おいしそうなにおいに誘われて店に入ったところで彼に会った。・・・

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「グリーンゲートの少年たち」第7話・しおり〜最終話・おわりに(旅の果て)

17/03/20 コメント:0件 ちほ 閲覧数:49

 夏休みが終わっても、ここグリーンゲートの木々は緑に溢れ、街の中央に流れる川は穏やかだった。春に星流学院高等部に転入したばかりの鳴海は、あと半月もすれば秋の嵐が来ると友人から聞いていた。穏やかに見えて、激しさを見せつけてくると。でも、水も空気も綺麗だから、ここに療養に来る者もずいぶんと多い。
 窓から顔を出してグリーンゲートについて考えていると、玄関からお手伝いのあやちゃんと桃ちゃんが出かけ・・・

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17/03/20 コメント:0件 笹山美保乃 閲覧数:105

 長かった夏が、ようやく終わりを迎えた頃。昼夜の気温差が開きはじめ、高くなっていく空の下、蝉のがなりたてる声は減っていき、桜の葉が色づき始めた頃。
 私は暮らしているところから程近い公園に来ていた。週に一回、その公園の隅に佇む東洋風の質素な四阿あずまやの腰掛に座って、色々なことを考えたり、考えなかったりするのが私の習慣だった。私は生まれつき脚が悪かった。四阿のすぐ西側には広い湖があり、東側に・・・

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銀河、大爆発

17/03/20 コメント:0件 ハギムー 閲覧数:66

 一つ歯車が狂うと運命は連続的にあらぬ方向へ向かってしまう。例えば『電車で絶対女性が隣に座らない』という運命を持った男がここにいる。もし女子高生でも隣に座ろうものならそれは銀河が爆発するほどの運命の狂いだ。
 だから男は電車では絶対に席に座らないと決めていた。銀河が爆発してはいけないと。
 電車が駅に着き一人女性が乗車する。女学生で、男は読んでいる本で視界を覆った。男は学生が苦手であっ・・・

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タヌキ電車

17/03/20 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:38

 通勤ラッシュの喧騒が過ぎたのは数時間前で駅を行き交う人々の足取りはのんびりとしていた。ホームで一人の青年が電車を待っている。青年は先程から近くにいる人々にチラチラと盗み見されていた。
 盗み見は失礼な行為だ。皆、解っている。けど、つい見てしまうのだ。青年はそれ程に見目麗しい。
 ホワイトブロンドの髪の毛、南国の海のような青い瞳、スラリとした身体つき、女性も羨む白い肌である。美形の外国・・・

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再会

17/03/20 コメント:0件 かわ珠 閲覧数:63

 雨は、止まない。
 車両の窓を叩きながら、水滴は後方へと流れていく。
 1/fゆらぎで走る電車の座席は心地よくて、今にも眠ってしまいそう。まるで歪んだ鏡の中に迷い込んでしまったかのように視界が揺れている。
 そして、夢か現かの境界線上で、私はその言葉を耳にした。
「久し振りだね」
 と。
 とても優しく、穏やかな響き。
 けれども、その声に聞き覚えはなく・・・

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トロイメ・トレイン

17/03/20 コメント:0件 しーた 閲覧数:62

 彼女は夢を見ている。綺麗で、孤独な夢を。
 真っ暗な、何もない病室。視界の端で、カーテンが静かに揺れている。首を向けると窓が開いている。のっそり起き上がって窓に近づくと、窓の向こうにぼんやりと輝く道が続いている。彼女は一歩、足を踏み出した。
 夜空に向かって道を歩いていく。しばらくして、道は途切れた。眼下には、暗闇の中に広がる見知った街。辺りには輝く星が散りばめられている。吹いた風が・・・

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さよなら電車

17/03/19 コメント:0件 陽野あたる 閲覧数:58

 タタン、タタ……ンっ……
 規則正しく刻まれる、車輪がレールを滑り枕木を食む音。小刻みに身体を揺らす振動も、背後から差し込む橙色の暖かな西日も、心地いい眠気を連れて来る。
 古びて少し毛羽立った長いソファーには、向かいの席も含めて他の誰も乗ってはいない。隣の車輌にも、そのまた隣の車輌にも。時折緩いカーブに合わせて、吊革だけが揺れている。
 当然だ。
 誰もがちゃんと途中の・・・

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疑問符の忘れ物

17/03/19 コメント:0件 一ノ瀬 冬霞 閲覧数:50

  【初恋の欠片】

     【?】

【過去の夢】

        ……etc.



午前一時。終着駅に到着した最終列車が格納庫へ向かう為に動き出した。
それを確認した駅員が駅舎の見回りをしていると、ホームに転がる疑問符の忘れ物【?】を発見した。

(【上司への愚痴】よりはましか……)

苦笑いを浮・・・

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かみきりインザモーニング

17/03/19 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:111

 黄緑色のカーテンを、ユリが勢い良く左右へと開く。
 カーテンレールから流れるシャッという小気味良い音は、夢から帰ってきたばかりの僕の体と心をシャンとさせた。
 ベランダに繋がる大きな窓。そこから広がる景色が朝を告げる。名も知らぬ山々を遠くに眺めながら伸びをしていると、ユリが古新聞を何枚か広げた。
「これ被ってね。髪の毛おちるから」ゴミ袋の底の部分を半円形にチョキチョキ。お手製の・・・

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呪い

17/03/19 コメント:2件 くまなか 閲覧数:103

 さくらの飛沫を浴び、ビールが詰まって重いスーパーの袋を持ち替えながら、僕は”お母さんは大丈夫だから、将来お嫁さんがきたらうんと大事にしてあげて”最期に聞いた母の言葉を思い出していた。時刻は午後の四時、待ち合わせは午前十時だったはずだ。幾ら女性が身支度に時間がかかるといっても、流石にドタキャンだろう。十二時を超えた辺りから携帯を一時間に一度鳴らすも”おかけになった電話は電波の届かないところに……”・・・

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絶滅危惧種

17/03/19 コメント:0件 冷雨 閲覧数:90

これは、ちょっとした奇話である。

経験した者はいるのでは、と思う。その程度のことだ。
誰しもが経験しているようでしていないようなこと。

誰しもが聞いたことがある“痴漢”
それは下劣な行為であり卑猥であり、犯罪である。
その言葉一つを表そうとするなら低レベルで罪に似通うそれらを連ねるだろう。

強いていうなら犯罪であり、すれば逮捕される。

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「またね」

17/03/19 コメント:2件 ちりぬるを 閲覧数:132

 周囲の喧噪に掻き消されそうな声で「やっぱりやめようか」と今日子が言い出したのは舞浜の二つ前の駅で止まった時だった。
「水族館にしよう」
 人の間を縫うようにして電車を降りる彼女を慌てて追いながら僕は溜め息をつく。彼女のこういう所が嫌いだった。
 大学を卒業し、地元で就職が決まった彼女とそれをきっかけに別れる事になり、今日が最後の思い出作りのデートだった。あれほど行きたいと言って・・・

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赤い電車

17/03/18 コメント:0件 石田大洋 閲覧数:79

 電車に乗る。
 非常に狭い。僕は、通勤ラッシュというものがここまで熾烈な環境だったとは知らなかった。
 装甲服は通気性が悪くてジメジメするし、一応ヘルメットには通気口がついているから呼吸が苦しいなんてことはないが、どうしても視界が狭くなる。
 この間三連隊の、名前は忘れたけれど、ある人が、痴漢に間違えられて、刑務所に入れられた。
 自分ではやっていないと断固として言い張っ・・・

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流れる時間の真ん中で

17/03/18 コメント:2件 しーた 閲覧数:81

 今日、ニ00八年三月九日だけが、××の世界のすべてだった。来年度から通うはずだった高校のことも、体調の優れなかったペットのことも、毎週欠かさず見ていたドラマの内容も、この日を境に、××にとってどうでも良いものと成り果てた。
 太陽がのっそりと顔を出し始めた頃、××はゆっくりと玄関の扉を開けた。舗装されたコンクリートの地面に視線を落としながら、物憂げな表情で待ち合わせの場所へと向かう。

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失敗したなぁ

17/03/18 コメント:0件 秋澤 閲覧数:56

喉がカラカラに渇いていた。まだ夏など遠い春だというのに。空に輝くのは焦がすような日ではなく淡やかな月だというのに。
煌々と輝く月が眩しい。白い光を、彼女の白い首が反射していた。失敗した。こんなはずではなかったとわかっているのに、思わず肌の上の花弁に見とれる。ハッとして彼女を抱きかかえる。未だ身体は暖かい。けれどその身体は軟体動物のように、あるいは精巧な人形のように力なく弛緩していた。あたりを・・・

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A Whole New World

17/03/18 コメント:0件 藤光 閲覧数:62

「おれのは失敗やったなあ」
「なにがですか」
 先輩が応じるまでもなく、家保さんは話しはじめた。注がれだばかりのビールのグラスにまだ水滴はついていない。
「結婚や、ケッコン」
『よし来』の店内は客の多い割に静かで、間接照明に照らされた打ち放しのコンクリート壁も落ち着いた雰囲気を醸し出している。煮しめたような杉の一枚板の上にグラスが三つ。突き出しはオクラと豆腐の和え物だ。ぼく・・・

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トレイン・マン

17/03/18 コメント:0件 深海映 閲覧数:66

「あなたの写真はどれ? どうせまた電車なんでしょ」

 板張りの廊下にコツコツとヒールの音を響かせながら妻が笑う。
 私たちがこの小さな美術館に来たわけは、私の撮った写真が地元新聞社の主催する写真展で入賞し展示されることになったから。
 妻も写真を趣味としていて電車を撮ることもあるのだが、私みたいに電車を主役にするのではなく、主役はあくまで空や山や田園風景。
 電車は・・・

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21時半の電車に乗って帰って来てよ

17/03/17 コメント:0件 せんさく 閲覧数:50

21時、携帯の液晶画面に「1件のメッセージがあります」と表示される。
私は家事の手を止めてメッセージを開く。
そこには短く「今日も遅くなります。」とだけ書いてあった。

「定時に上がりやすいらしいから。」
学生だった頃の彼はそう言って今の会社に決めた。家から近いというのも理由の1つだったのだろう。
しかし、現実というのはそう甘くはないもので、彼は今日も残業をして・・・

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生きていたい

17/03/17 コメント:0件 リードマン 閲覧数:55

またしくじってしまった。
満足のいく人生だった筈なのに、死に際で取り乱した。
囲む家族の中で笑顔で息を引き取った。
けれど、無に帰る直前になって恐怖に負けたのだ。
そうやってまた繰り返す。

私は未だ一度も、人生を終えた事が無い。

始まりは孤独だった。
見渡す限りの暗闇の中、浮かび上がるように生まれた自分。
何も無い事よりも、誰もいない・・・

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騎士くんと電車女

17/03/17 コメント:0件 氷室 エヌ 閲覧数:89

 平日、朝八時五分。東京方面行きの電車には、当然ながら人が多い。俺が毎朝乗るのは二号車で――あいつがよく乗るのも、何故か二号車だ。
 いつものように満員の車内に滑り込み、教科書を詰め込んだリュックサックを人の迷惑にならないように足下に置く。駅を数個過ぎれば、視界に入ってくるのは人の背中や後頭部のみという状況になってしまった。
「……い、おーい。騎士くん」
 ふと、誰かが俺のことを・・・

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田園都市線は過激に走る!

17/03/17 コメント:2件 ちほ 閲覧数:63

 田舎から上京してきた私は『田園都市線』をなんと牧歌的な路線名だろうと思っていたが、現実は……なんというか……まぁ、読んでいただければお分かりいただけるでしょう。

「な……何でこんなに混んでるの?! 何かあったの?」
「うるさいぞ!」
 隣の若い男が声を荒らげる。
 私は、身体の左右を人の壁で固められ、少しも動けない。蒸し暑く濁った空気が滞る空間が、私を苛立たせる。・・・

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自業自得

17/03/17 コメント:2件 ハギムー 閲覧数:152

 K星の住人は、今、人類と交情を深めようと画策していた。
 数年前、××という研究者が、K星と酷似する環境を持つ、地球と、H星を発見し、両方に手紙を送呈した。すると、地球がそれに返事をし、これを機に交流が始まった。
 K星の住人はそれを知り、とても歓喜した。
 彼らの星は今、隕石との衝突の危機に曝されているからだ。だから彼らは、地球に移住すればどうにかなると、最終手段としての望み・・・

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初乗り運賃の旅

17/03/16 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:59

 朝の六時半、自動券売機の百四十円のボタンを押すと切符とおつりの六十円が出て来た。そして、自動改札を抜けると目的の駅の逆方向に行く電車が来るのを待った。

 今日から新中学一年生、何年も待った中学一年生。母さんとの約束だった、『大人になったら』の夢が今日叶うんだ。お弁当は持った。水筒も持った。今日の為に調べておいた電車の時間を書いた紙も持った。

 直ぐに、下り電車がホーム・・・

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プロメテウスの火

17/03/16 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:61

 みなさん、いまこそ悪しき科学技術のくびきから逃れるときです!
 産業革命からこちら、われわれは幸せになったのでしょうか? 見渡す限りの田園風景、刈り入れどきの心地よい秋の風、黄金色に輝く稲穂。古きよき日本はどこへいってしまったのでしょうか?
 それらはもはやどこにも存在しません。感受性豊かなわれわれ〈地球環境保全委員会〉と、あなたがた良識ある一般市民のみなさんの頭のなか以外にはね。<・・・

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大実験

17/03/16 コメント:0件 猫春雨 閲覧数:108

 小学校の頃、いかがわしい雑誌で得た知識で魔術を実践したのが研究の始まりかもしれない。
 その魔術が、科学に置き換えられたのはより理論的なものにすがりたかったからか。
 ともかく僕には成し遂げたい偉業があった。
 だから結果をより確かなものにするために本を読みあさり、勉学に打ち込んだ。
 でもいくら研究をしたって生まれるものは理想とはほど遠い。
 ……いや、別の研究者・・・

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望んだ失敗

17/03/16 コメント:1件 笹山美保乃 閲覧数:117

 まずはネットで情報を探る。薬か、縄か、転落か、はたまた集団か。どれをとってもリスクは避けられないし、必ず誰かに迷惑をかける。それでも、もう私には選択肢がなかった。
 最初に目をつけたのは薬だった。うまくいけば気づかぬうちに終わるらしい。だが思ったよりも量がいる。薬局では一度に多くを買うことができないし、出費もかさむ。できるだけ手元に金は残してやりたい。
 次に気になったのは転落。準備・・・

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真夏の電車の夢

17/03/16 コメント:0件 笹山美保乃 閲覧数:99

 将来の夢は――――だ。
 学校の宿題は「将来の夢」と言う題材で作文を書けというもので、僕は眼を輝かせながら何枚もの原稿用紙に夢を書き連ねた。将来の自分を想像しては顔をほころばせて、無邪気にクスクス笑った。そろそろあいつらが来る頃だろう。僕は鉛筆を学習机の上に放って、家を飛び出した。
 舗装もされていない、砂利道だらけの夏の坂道を自転車で下る。汗で貼りつくシャツの感触を拭うように、快い・・・

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ちゃんとお祝いできなくて

17/03/16 コメント:0件 こあら 閲覧数:89

今年のお母さんの誕生日には、私が美味しい料理を秘密で作ってあげる作戦をたてた。
毎日布団にもぐって、計画を立てる。メニューはハンバーグ、作り方は何度も復習した。五時半くらいに作り終わったら、次はテーブルを飾る。六時に帰るお母さんを、リビングに連れて行ってびっくりさせるんだ!流れを頭の中で確認しながら、眠りについた。

いよいよ来たこの日。友達に捕まって遅くなってしまった。走るとカ・・・

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額縁の向こう

17/03/16 コメント:0件 だらけネコ 閲覧数:105

カチッと小さな音が響く。

パイプ椅子に座って小説を読みながらパソコンを睨み付けている彼をチラリ、伺う。
パソコンの周りにはL判の写真が幾つも散らばっている。

「ねぇ。」
「なぁーにー?」

印刷機とパソコンをいじりながら、彼は間延びした声で返事をする。

「君の写真は、電車とかばかりだね。」
「そりゃー、好きですから?」
・・・

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終着駅は始発駅でもある

17/03/16 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:71

 ゴロウが目覚めるとそこは大きな駅でした。たくさんの電車が走っています。しかしただの電車ではありません。電車は空を飛んでいました。
「あ、ああ?」
 ゴロウは死んだようににごった目をしながら、絵具のついた顔をこすりました。
 美術部から逃げだし、テキトーな電車に乗ったところまでは覚えています。しかしその間の記憶がぬけ、気づくとゴロウはこの不思議な駅に立っていました。

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猫と彼女と勘違い

17/03/15 コメント:1件 深山 悠花 閲覧数:63

ちょっと待て。どうした、何が起こった?
今、目の前には、一人の女の子。どう見てもかわいい部類に入る。その彼女が、俺に向かって手紙を差し出している。「受け取ってください!」のセリフ付きだ。
 これってもしかして、告白ってやつ?いや、ありえない。だって俺は、学校でも一二を争うダサ男だよ。成績だって中の下くらい。背だってそんなに高くないし、顔だって普通じゃないだろうか。見た目に関しては、自信・・・

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虹のふもとで待ってる

17/03/15 コメント:0件 家永真早 閲覧数:123

 重く動かなかった私の体は軽くなり、見えなかった目も聞こえなかった耳もすっかり良くなった。
 私は、ひとつの風呂敷包みを抱えていた。中には滅多に食べられなかったシーバと缶詰とささみとかつおぶしにカニカマスライス、それからマタタビ、水が入っていた。今すぐに食べたかったけど、まだ今は食べちゃいけない気がして我慢した。私だって我慢ができるのだよ。
 私は後ろ足だけで立ち上がった。今ならどんな・・・

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誰も知らないぼくときみ

17/03/15 コメント:0件 黒丞 閲覧数:65

カタンカタンと揺れる車窓から、今日も青い空が透けて見えた。どうにも眠い午後2時の気怠げな雰囲気漂う車内には今日もぼくときみ以外存在しない。またひとつ枕木を超えたのだろう、カタンと電車が音を立てた。ぼくときみの間に会話は存在しない。ただ静かに静かに時間が流れるだけだ。
そもそもぼくはきみがどこの誰かも知らない。たまたまいつも同じ時間の同じ電車に乗っている女の子、という全く物語もはじまりそうにな・・・

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