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悠真さん

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投稿済みの記事一覧

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咄嗟の他人行儀

19/06/07 コメント:0件 悠真 閲覧数:54

 電車が停車したことを体で感じ、ドアが開いたことを耳で知る。開いていた文庫本から一瞬だけ目を離し、窓ガラス越しにまだ降りる駅ではないことを確認。その目は再び文庫本に戻って文字を追う。
「もしかして、津村さん?」
 顔を上げると、数年前に別れた彼が立っていた。
「いいえ、違います」津村は咄嗟に否定してしまった。どうしていいかわからず、視線を落として本の世界に逃げる。
 しかし・・・

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その男、盲目につき

19/06/06 コメント:0件 悠真 閲覧数:53

 早く食べ終わったので、何をするでもなく席に着いたままぼんやりしていると、トレイを持ったマキさんが視界に割り込んできた。
「やあ。ここ、いい?」
 僕が返事するより先に、マキさんは椅子を引いて向かいの席に座った。トレイの皿には野菜と果物しかない。
「ダイエットですか?」
「人聞きが悪いな。私がダイエットを必要とする体をしているように見えるかね」マキさんは顎を引いて、顔を斜め・・・

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放棄した彼女を放置した僕

19/05/21 コメント:0件 悠真 閲覧数:64

 今になって思えば、あれは初恋で、一目惚れに分類されるものだったのだろう。
 二年前の春。中学生から高校生に肩書きが変わった四月。初めは気もそぞろだったが、一週間もすれば中学校と変わらない雰囲気が形成された。そんな中、僕は一人の女子を意識するようになる。決して外見に魅かれたわけではない。それもそのはず。彼女はおしゃれ要素が皆無の、どこか古さを感じさせる丸メガネをかけていて、伸びるままに任せた・・・

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卵かけご飯の作り方

19/05/19 コメント:0件 悠真 閲覧数:57

 母のペンが進まなくなった。
 兄は春から一人暮らしをする。そんな兄が一人でも自炊できるように、母はよく作る料理のレシピをノートにまとめて兄に持たせようと考えたのだそうだ。それには私も賛成した。兄は不器用ではない。作り方がわかれば、きっと上手くするはずだ。
 初めは思いつくままに様々なレシピを書き起こしていたのだが、次第にエスカレート。わざわざ書き起こさなくてもいいと思えるようなものま・・・

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夜空に浮かぶ実家

19/04/14 コメント:0件 悠真 閲覧数:115

 機内にいる人は皆、金持ちだと考えてよい。概ね人生において成功者に分類される人々だ。
 目的地は同じ。目的も同じ。
「失礼かもしれませんが、お仕事は何を?」私はたまたま隣合っただけで初対面にも関わらず、隣席の男性に話しかけた。「答えたくなければ構いません。私はアパレル関係の会社で、デザインをしています」
 機内で初めて会った人と言葉を交わすことは珍しくない。電子端末の持ち込みは禁・・・

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こいつが座って俺が立つまで

19/04/13 コメント:0件 悠真 閲覧数:103

 今日の日替わりランチはヒレカツ定食だった。
「お疲れ様です」
 二人席の空いていた向かいに腰掛けてきたのは、同じ部署の後輩社員だった。
「お疲れ」
 軽く挨拶して、俺はメインのヒレカツ、その最後の一切れを、口の中に放り込む。
「いやー、気づけばもう今年も終わりですね。先輩は年末年始、どうされるんですか」
「俺は今年も神社かな」
 咀嚼しながら俺は答える。・・・

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履歴で繋がるその路は

19/03/21 コメント:1件 悠真 閲覧数:144

 決意表明のように連絡先から実家の番号は削除していたが、母からであろう着信履歴からいつでも連絡できる状態だった。
 何がしたいのか言わず強引に家を出た私が、心配で仕方ないのだろう。悪いとは思っているが、話せるような将来の展望を持っているわけではなかった。
 時間を持て余していたからか、冬の寒さと静けさが寂しさを助長させたのか、ただの気まぐれか、私はその履歴から実家にかけていた。
・・・

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期日迫りし悩める乙女

19/03/17 コメント:2件 悠真 閲覧数:165

 彼の誕生日が目前に迫り、いよいよ万策尽きたので、思い切って訊いてみた。
 何か欲しいもの、ある?
「うーん、特にない」
 というわけで無駄でした。それどころかお前のセンスに任せる、期待してるって暗に言われた気がするのですが、余計にハードルが上がってませんか、気のせいですか。
 家族の誕生日は気恥ずかしくて何もしてこなかった親不孝者。ヘンナコ扱いされて誕生日を祝い合えるほど・・・

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おくれるマシン

19/03/17 コメント:1件 悠真 閲覧数:165

 博士が作ったそれは、過去の同座標に紙を送れるというだけの代物で、タイムマシンとして満足のいかない出来だった。だがここまで時間をかけ過ぎた。自分の寿命がもう持たないことは明白だ。そこで博士はタイムマシンの設計図を過去へ送ることにした。それさえあれば、三年ほどで作れるはずだ。博士は、今が三年後だという嘘のメッセージと、データから紙に落とした設計図をマシンにスキャンしていく。

「博士、こ・・・

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余計なプレゼント

19/03/17 コメント:2件 悠真 閲覧数:301

 食器類が片付けられた夜のテーブル。テーブルの上には一つの紙袋。紙袋を挟んで向かい合うように座る二人。二人は夫婦。
「あなた、ゲームなんてしないでしょう」口を開いたのは女。「どうして受け取ったの?」
 紙袋の中身は最新のゲーム機だった。空気が重たいのは、それが男の同僚である女性からの贈り物だと知れたからだった。
 仕事から帰宅した男が下げていた紙袋を見て、それどうしたの、と女が問・・・

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メロンソーダでよろしいですね

19/01/22 コメント:4件 悠真 閲覧数:379

 着々と客を捌く店員。
「次のお客様、どうぞー」
 呼ばれて前に出た客は注文カウンターのメニューの上で視線を泳がせる。
「この弾けるメロンソーダは何ですか?」客は尋ねた。
「何、とは?」
「他の店だとメロンソーダなんですけど、ここでは弾けるメロンソーダだったので」
「いえ、これはですね、その、他の店とは一味違うぞっていうのを、こう、名前でアピールしてるんです」<・・・

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異能力窮鼠

19/01/06 コメント:1件 悠真 閲覧数:375

 数十分前に死を覚悟したつもりだったが、いざ目前に迫ると、そんな覚悟は所詮形だけだったのだと、自分の生への執着心の強さを思い知らされるのだった。
 事実、漫画みたいに突然特殊な力に目覚めて退屈な現実から抜け出したいと言う夢想を常々抱いていた。そしてそれは叶った。どういう経緯でそうなったのか、つい先刻のことなのでまだ俺の頭が追いつけていないが、とにかく俺は能力を手にした。他の能力者と戦うトーナ・・・

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ワンシーンの代役

19/01/04 コメント:2件 悠真 閲覧数:319

 撮影は十秒にも満たない一瞬の着地シーン。映るのも腰より下の足元だけ。先輩の体調不良は心配だが、初めて本番の現場でスタントに臨める機会を得られた。後は俺がきっちりスタントを決めるのみ。
 なのだが。
 俺はすでに五回もその着地シーンの撮り直しをさせられていた。撮影のたびに建物の屋上に上がらなければならない。
 監督は先輩のスタントにかなりの信頼を置いていたようで、突然代わりに現場・・・

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回収とそれに至る道筋の試行錯誤

19/01/03 コメント:1件 悠真 閲覧数:287

 男は女を少しでも楽しませたい一心なのか、あれこれたわいもない話を繰り広げているが、女は「へえ」とか「ふうん」とたまに適当な相槌を挟むだけで、退屈しているのは明らかだった。
 二人は森の中を歩いている。歩きながらできることなど会話以外にないのだからと、男は趣味のマラソンの話を続ける。いくら女の反応が悪いからといって、ここで口を止めては負けを認めたことになるとでも思っているのか。女にしてみれば・・・

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別れの夜

18/12/24 コメント:1件 悠真 閲覧数:181

 夜になって目を覚ますと、正一が荷物整理をしていた。すでに家具は運び出されていて、それ以外の小物類をボストンバッグに詰めている最中のようだ。
「この部屋、出て行っちゃうの?」
 私が起きて来たことに気づいた正一は「うん」と短く頷く。
 否定を期待する一方で、もしかしてという不安もあった。私は「どうして?」と、そして正一の返事を待たずに「私と遊ぶの、嫌になったの?」と、半ば答えを強・・・

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母の病室

18/12/23 コメント:1件 悠真 閲覧数:171

 5階の案内板を隅から隅まで確認した結果、その場に立ち尽くすしかなかった。
 そもそも病院の館内に一人で立ち入ることが初めての経験だった。見ず知らずの場所、見ず知らずの人達。私が最も苦手とする環境だ。
 それでも。
 私は携帯電話を取り出して通話履歴を呼び出す。数十分前の母親との通話。内容はまだしっかり頭に残っていて、母の声で再生できる。
 バイクとぶつかってして怪我をした・・・

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できない思春期にいる私

18/10/27 コメント:1件 悠真 閲覧数:396

 放課後の帰り道、改札を出たところで「ゆっきー」と後ろから抱きつかれる。クラスメイトの愛菜だ。
「もう、やめてよ愛菜」と口では嫌がりながらも、それを振りほどこうとしないゆっきー。
 私は愛菜が好きじゃない。そこまで仲良くなった覚えはないのに妙に馴れ馴れしい所が苦手だ。私と距離感が決定的に違う。
「一緒に帰ろ」という愛菜の提案に、ゆっきーは「いいよ」と頷いた。
 私なら断るけ・・・

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下校中

18/10/14 コメント:0件 悠真 閲覧数:306

 ランドセルを背負った女児が、一人で歩幅小さく歩いていた。
 その後ろから徐行運転で黒い車が近づく。
「本庄ミミカちゃんだね」開けた窓に肘をかけるようにして、車から半身を出す形で男は女児に声をかけた。「お母さんから伝言があるんだ」
「え?」女児はまだ小学校低学年。目線は車内の男よりも下になるので、顔を上げなければならなかった。「お母さんから……?」
「そう」男は気の良さそう・・・

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カミカクシ

18/10/04 コメント:0件 悠真 閲覧数:321

 先生の呆気に取られた顔を見て、私は内心ほくそ笑んだ。
 今朝、始業のチャイムに重なる形で、遅刻になるかならないかくらいのタイミングで私は登校して来た。しかし教室には誰もいなかった。ほどなくして授業をするために先生が登場。だが教室には私しかいない。
 まるで神隠しのような様相。
 原因は、席に着いて正面を向いていれば自ずと目に映るその文字。
 とりあえず、先生が教室にいるこ・・・

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メモfrom私inケース

18/09/30 コメント:1件 悠真 閲覧数:374

 明日からの修学旅行に備えて私は準備していた。
 とはいえ着替えなどの生活用品は母親が勝手に用意してくれたので、後は私が個人的に持って行きたい小物類を残すのみ。
 イヤホンはいる。バスでの移動とか暇だし。机の上に置いてあるいつも使っているワイヤレスイヤホン。それに手をかけて、思い直して引っ込める。バス移動は長いし、修学旅行は一週間もある。ここは有線イヤホンのほうが安心かもしれない。ノー・・・

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