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砂東 塩さん

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投稿済みの記事一覧

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風船のものがたり

19/01/27 コメント:4件 砂東 塩 閲覧数:321

 自転車の空気入れで、ぼくは赤い風船を膨らませていた。シュウッ、シュウッっと行き場をなくした空気は赤色のゴムを押し広げ、その色は徐々に白く薄くなっていく。
「風船なんか売れるものか。夢を売ってるつもりか」
 目の前にひとりの少年が立っていた。道行く人の目がぼくに向けられた。
「そんなもの誰も買いやしない。この美しい街並みに、子どもだましの代物は似つかわしくない」
 見苦しい・・・

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猫が木に登ったのは運命か

19/01/19 コメント:1件 砂東 塩 閲覧数:358

 運命について考えようと思う。
 運命という言葉を持ち出すとき、人は何かしらの困難を抱えている。運命、そう信じるからこそ一歩踏み出せる。運命、そう思うからこそ諦めもつく。今日のぼくはなかなか素敵なことで「運命」に想いを巡らせている。
 放課後に図書委員の集まりがあり、いつもより遅く学校を出た。田舎だから列車の本数は少ない。ぼくはダッシュで約一キロ走るか、それとも今から二時間近く暇を潰す・・・

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海風の部屋

18/09/11 コメント:1件 砂東 塩 閲覧数:410

 レースのカーテンが揺れていた。
 もとは真っ白だったその布は、柔らかく風を纏いゆらゆらと乳白色の陰影を浮かべ、くすんだ色が経た時の長さを感じさせた。
 窓を開けたのはいつぶりだろう。
 閉ざされた扉の向こうに、この部屋はずっとあり続けていた。

 姉は美しい人だった。
 真白なカーテンの脇に立ち、ゆるりと吹き込んだ風がその髪をかきあげ、陽を透かし、ふと彼女が私・・・

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Mからの逃走

18/08/16 コメント:0件 砂東 塩 閲覧数:291

 片想い病。友人たちは純菜のことをそう言った。
 竹を割ったような性格の彼女は、気になる相手ができると躊躇わず距離を縮めた。友情なのか愛情なのか曖昧ではあったが、下ネタ話にも平気で加わるざっくばらんな気安さに好感を抱く男もいた。そして、純菜みずから「好き」と相手に宣言するのは、決まってその相手に別の女が現れたときだった。
「失恋しちゃった」
 泣き腫らした目を化粧でごまかし、純菜・・・

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木曜日の紫苑

18/07/20 コメント:0件 砂東 塩 閲覧数:477

 最終ページに栞をはさみ、本を閉じた。
 気持ちは本の世界をさまよったままで、なんとなしにまたそのページを開き、続きを捲る。あるのは奥付ばかりで、出版年が二十一年前だったことに胸のもやもやがわずかに軽くなった。僕の生まれた年だ。
 ページを繰り、ラスト三ページを読み返す。もやもやが再燃した。
「なに? その本、面白くなかったの?」
 そう言った友人が我がもの顔で占拠するシン・・・

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ノラの寝床

18/07/12 コメント:2件 砂東 塩 閲覧数:710

 茜がその日に見たのは、ふつうの青い青い空だった。
 雨など降りそうになく、そのことが少し憂鬱で、すべて放ったらかして飲みに出かけようかと考えたりもしていた。
 開け放った縁側から暑くも寒くもない穏やかな風にのせて、品のない笑い声が裏の家から聞こえてくる。ここらあたりに住む人たちは良くいえば豪快、悪くいえば野蛮という言葉が似つかわしく、喧嘩しているようなやりとりは明日の祭りの打ち合わせ・・・

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