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風宮 雅俊さん

テーマに沿った物語を、どのくらいのレベルで書けるかな? と言う事で登録してみました。 アマゾンの電子書籍キンドルで作品出してます。こちらも宜しくお願いします。 ツイッター: @tw_kazamiya
出没地 | 鎮守の杜 |
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趣味 | |
職業 | |
性別 | 男性 |
将来の夢 | 世界一周の船旅で、船室に籠って小説を書く事 |
座右の銘 |
投稿済みの記事一覧
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小惑星探査
18/12/24 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:100
「高度八百メートル」
探査機のフラットなアクセントで高度の報告がされた。ヘッドマウントディスプレイの視野いっぱいには小惑星表面が映し出され、視野の隅には探査機の状態を表す各種モニターが表示されていた。
この小惑星、正確には地球の二番目の衛星『ルナツー』であった。ルナツーは三年前に発見され各国の観察の結果、天文学的に奇妙な特徴を示す事が分かっていた。
まず、『永遠の新・・・
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地雷。そして、託された希望
18/12/24 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:103
カチ
右足の靴底が捉えた硬い物体、微かに聞えたスイッチ音。
今、自分の置かれている状況の全てを理解した。国境までの二百メートル、追っ手を撒いたのではなく果てしなく広がる地雷原に追い込まれたのであった。
この幅五百メートルの地雷原は国際社会には国防を謳っているが住民が逃げ出さないようにするために敷設したものだった。
右足に体重を掛けながら足元・・・
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え?・・・マジか
18/11/22 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:150
「え?・・・マジか」
周りの視線が集まる。
「何でもないです。クレームのメールじゃないです」
事務所に広がった緊張が安堵に変わると、それぞれの仕事に戻っていった。
今は、仕事中だ。人目を引くような事は慎まないといけない。あくまでも仕事中だ。仕事中は仕事をしなくてはいけない。がしかし、頭の中は推敲をしていてもばれない・・・。そもそも、隣では書類を作成する振りをし・・・
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ひみつ
18/10/22 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:163
休日で賑わう、ショッピングモール。行き交う親子連れもみんなウィンドウショッピングを楽しんでいる。
!
ベビーカーを押しながら来る夫婦・・・・。そう、あの時はまだ子供だった。他に説明出来る言葉はなかった。
〜 ・ 〜
中学校の生活に慣れてくると、小学校の時と女子との距離感が違う事に誰もが気付くようになっていた。・・・
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「そう、しよう」
18/09/24 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:154
『さようなら』
船首が切り開く海に広がる白い軌跡、無音の洋上を波の音が進んで行く。朝日はなんて美しいんだろう。
デッキのあちらこちらには老夫婦。私と同じように朝日を見つめている。なかには、わき腹を小突かれている人もいる。
やっと一つの区切りを迎える事ができた。十年分の自分にご褒美。こんな清々しい朝を迎えられたのは、心地の良い夫婦生活を・・・
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◆※▽
18/08/20 コメント:5件 風宮 雅俊 閲覧数:337
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マイノリティ
18/08/20 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:216
彼女は、今日は欠席している。たぶん今週は来ないだろう。もしかしたら、そのまま辞めてしまうかもしれない。彼女は▼◇Φ▽だから・・・・
「ねぇ、知ってる? 彼女▼◇Φ▽なんだってよ」
隣の席のA子に訊いた。
「知ってる、知ってる。彼女、今まで▼◇Φ▽だって事を隠していたんでしょ」
さすが、A子。情報が早い。
「うそ・・・、▼◇Φ▽なのに私たちの中にいたの?」・・・
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ストーカー彼女
18/07/23 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:253
彼女の朝は早い。だから、僕の朝はもっと早い。
午前六時三十九分
高層マンション上層階の廊下に到着。望遠レンズの付いた一眼レフを構えると、マンションから北西方向距離百五十メーター先にあるアパートのカーテンの閉まった窓を狙う。
午前六時四十分
イヤホーンに鳴り響く目覚まし時計の音。ベッドの軋む音。一歩、二歩、三歩、四歩、五歩。カーテンが勢いよく開く音と・・・
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本音
18/07/13 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:314
「ねぇ、豊彦くん。『あとがき』ばかり読んでいて面白いの?」
私の彼は同じ文学部。そして今年から同じゼミ。
「面白いよ」
ぽつりと言うと、『あとがき』に目を戻す。
豊彦くんは興味の湧いた作者を見つけると、初版日順に作品一覧を作る。同じ題名でも単行本や文庫本、出版社が違うもの、改稿したものを丹念に調べて作成する。良くある事が絶版になっている本。その時には近くの図書館から一・・・
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大河物語「地球」
18/06/25 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:343
最後まで読んで頂きありがとうございます。そして、本当にごめんなさい。
大河物語「地球」は、今までの大河物語の話の展開が遅い、個性的なキャラがない、エピソードも成長性もないと言われていた事を反省して、書き始めた物語です。
そのためエピソードが多く先が読めない展開にするために、キャラ立ちした登場人物を多く配置しました。何をしでかすか分からないおバカキャラを要所に配置しました。各・・・
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晩夏のホーム
18/06/18 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:497
乗り継ぎ駅のホームに辿り着くと、人もまばらになっていた。夜の九時を過ぎビジネスマンも塾帰りの中学生も疲れた顔でホームに佇んでいた。時折、暑さの残る乾いた風が人の間を縫いながら吹いていた。
ふと見ると、どこか懐かしい長椅子が置いてあった。電車通学の中学時代に、こんな感じの椅子に座っては本を読んでいた。今では、酔っ払い対策で一人掛けの椅子ばかりになったと思っていた。
長椅子に座り込む・・・
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お笑い予選
18/05/28 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:446
テレビ局内の小ホールには、予選出場者と同じくらいの人数が観客席に詰め掛けていた。予選参加者は出番待ちに緊張していた。観客席側も一言一句聞き逃すまいと緊張していた。
「これより、第二十三回、お笑い大会の予選を行います。予選に先立ち、第二十三回より昨今の放送事故を防ぐ為に関連団体の方に審査の協力をお願いしております。よろしくお願いいたします」
司会は観客席にお辞儀をした。
「では・・・
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PM2.5
18/05/01 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:438
「今日は天気が良いのに、霞んでみえるね」
背広の男は、富士が見える筈の方角を見ながら言った。
「黄砂です」
制服の男は言った。
「春だね」
眼下の葉桜を見ながら背広の男は言った。
「そんな風流な物ではありません。この時期になると敵の攻撃によりたくさんの国民が犠牲になっております」
制服の男は分厚いファイルを片手に、直立不動だった。
「ホントに・・・
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海月の気持ち、大王具足虫の気持ち
18/05/01 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:463
太陽の光がキラキラと光る。
穏やかな風が波頭を撫でていく。
波間を漂う海月は、波に合わせて傘を開き・・・、傘を閉じる。
明確に存在する、波と言う天井。そして、果てしない深淵。どこまでも続く、限りの無い底。
海月は思った。
光のない深淵の彼方に底はあるのだろうか。誰も見た事がない底が存在するのだろうか。
そして、海月は波間に漂っていた。
・・・
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なごり雪
18/04/02 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:469
春が来た。待ち遠しかった春が来た。ついに春が来た。
春の日差しを受け、真っ直ぐに切り立つ雪の壁が滝の様に融けている。始めて勝利したこの喜び。長かった戦いの日々がここに終焉する。
「頑張った。俺」
「耐え抜いた。俺」
「これで、冬鬱とはおさらばだ」
頬を伝う涙が陽の光に輝いていた。
毎年の雪かき。戦いでしかなかった。雪かきをしても、気が付くとうず高く積もっ・・・
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ゴミ置き場
18/04/02 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:407
今日も休み、世間は朝から騒がしい。子供たちは賑やかに学校に通っていく。大人たちは眠そうな顔で駅に向かっている。どちらの姿も自分にとっては昔の話だ。今は悠悠自適の年金暮らし・・・・のはずだった。厚生年金とは別の企業年金がある大手に入社したのに、企業戦士危うきに近づかずで無事に定年まで辿り着いたのに。
定年日、妻は置手紙一つで通帳と印鑑を持って友達とクルージングに出掛けてしまった。半年は戻っ・・・
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クラス会
18/03/05 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:608
都心近郊の中核都市にある少しお洒落なホテル。最上階にあるイベントルームからは駅前の賑わいを見下ろす事が出来、ビジネスから披露宴まで対応していた。クラス会の会場は一番小さな部屋だったがアットホームな雰囲気を出すのに丁度よかった。
当時と変わらないクラスメイトが集まった。
「すげー、中学の時のクラス会ここでするの?」
申し合わせたように、かつての男子たちが入ってきた。<・・・
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殺しの報酬
18/02/13 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:830
今日の依頼は三十代男性の狙撃だ。写真を見る限り普通の会社員に見える。ヤクザの金に手を出せるほどの根性は感じられない。あの無防備な歩き方ではどこかの国のスパイと言う事もない。この男のどこに殺すだけの価値があるのかは分からない。ハッキリしているのは、この男を殺す依頼の前金は受取済みである事だ。俺にはそれ以上の理由は必要なかった。
スコープを覗くと二百メートル先に男がいる。距離はそれほ・・・
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天使のお仕事
18/02/08 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:728
「次の天使さん」
地上での任務を終えると、私の所で清算をするのだ。天使の任務は人々が道を迷わない様に険しい道も乗り越えられる様に、ある時は優しくある時は厳しく導き手として。また、成長を促すシチュエーションを作る役者として、人々の間に紛れ込み任務を果たすのである。
その任務は多岐に渡り、心の傷を癒すカウンセラー、戒めを与える悪党、慈悲を目覚めさせる病人などとなるのであった。しかし、天・・・
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酒場
18/01/01 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:602
仕事帰りに、新しい店を探す。趣味の無い私の唯一の楽しみだ。
なぜ、新しい店を探すのか。それは、演奏家の違いで曲の良さの引き出し方が違う。と言うイメージだ。出張先でふらりと入った酒場でそんな出会いをして以来、路地裏を彷徨っている。
以前通った時には見なかった店が開いていた。名前は『酒場』なんともストレートなネーミングだ。
薄暗い店内、広がる酒の匂い。様々な酒の匂いが・・・
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女盗賊
17/12/18 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:583
酔いが醒めると、そこは牢獄であった。
「うーん、頭が痛い。安い酒は合わないねぇ」
薄暗いなか、周りには息を殺し様子を見ている連中がいた。
「おや? なんだ、この酸っぱい臭いは。それに随分でかいネズミがいるじゃないか」
だんだんと、意識がハッキリしてくると、十畳ほどの狭い部屋の中に使い古した筆の様な連中がいた。
「新入り、静かにおし」
一段高い処に・・・
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ヴァージンロード
17/12/04 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:614
「新婦の入場です」
厳かな雰囲気の中、新婦は父親にエスコートされてヴァージンロードを一歩一歩ゆっくりと歩いてくる。漆黒の様な艶やかな髪、純白のウエディングドレスがくすんで見えてしまうほどに白く透き通る肌。参列者の誰もが見惚れてしまっていた。
一歩一歩近づく新婦を見守る新郎は、出会いから今日までの新婦との時間を思い返していた。そして、これから過ごす二人の時間と生まれ来る子供との時間を・・・
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投稿作品
17/12/04 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:651
『メールを五件、受信しました』
投稿サイトからのお知らせメールばかり五件だった。
「よし。今度の作品は本気出したよ。期日いっぱいまで練りに練って色が変わっちゃうほどに練ったからね。感動のあまりにコメントが沢山つくのは当たり前だよね」
ダンスを踊る様にマウスを滑らせて、メールソフトを開く。
『コメントが投稿されました』
『コメントが投稿されました』
『コメント・・・
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秋の大運動会
17/11/20 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:596
「紅組、白組の応援団のみなさんお疲れさまでした。これよりお昼となります。うがいと手洗いをしてからご飯を食べて下さい。次の競技は玉入れです。出場する選手は午後十二時五十分になかよし門に集合してください」
「あー・・・父兄の皆様、体育館は開放してありますのでお昼ご飯の場としてお使いください。なお、一階の教室は児童用に開放していますので父兄のご利用はお控えください」
放送係の後、先生からの・・・
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社畜
17/11/06 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:610
「本日の試食会では、前回賜った『歯ごたえのあるワイルドな食感がありながら口の中で蕩ける様に広がる肉汁のバランス』を改善した試作品番号171129−G4J3D1C2のハンバーガーです」
社長、副社長、取締役、取締役、取締役、営業部長、学生メインの客層なのに四十も違う連中が評価した結果が、一人負けの業績だろうに。それに、いつから営業が上から目線で評価できる身分になったんだ。売れなければ開発の所・・・
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キリ番
17/11/06 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:708
「やだぁ、今時キリ番なんていけてない」
ちょっと大きい声に周りの食事の手が一瞬止まった。どこのグループも自分たちの話をしながらも周りの話題に聞き耳を立てていた。話がつまらなそうだと分かると、自分たちの話に戻っていた。
「そうかな? でも四桁の大台を目の前にして伸び悩んでいるのよ」
「フォロワーさん、何人いるの?」
私のスマホを開いて見せた。
「960人・・・、確か・・・
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希望の呪縛
17/10/23 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:856
点と点が繋がり、今が見えた時・・・・、彼女の涙は止まらないでいる。
「私の今までの努力は無駄だったの?」
「お店を持ちたい夢に対しては『はい』です。一つ一つの努力が間違っている訳ではありません。目の前の問題に手を打っている間に道を失うのです。縁がないから、少しずつ外れていくのです」
「自分で考えてお客さんに喜んで貰う仕事をしたくて、辿り着いたのが小料理屋だったのに。頑張・・・
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デート攻略法
17/10/09 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:652
「あのー・・・、よく当たる占い師と聞いて来たんですけど・・・」
三十前の女性。ラストチャンスではないにしても、色々と意識している年ごろ。が、滲み出てしまっている。
「よくではなく、必ず当たりますよ。どうぞおかけ下さい」
テーブルの上に置いてある水晶球に釘付けになっている。
「綺麗ですね。本物ですか?」
「水晶から削り出している物ではないですが、水晶とほぼ一・・・
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魔法の財布
17/09/25 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:1030
陽射しが強くなってきても風に冷たさが残る五月。平日の昼下がりの公園には、散策を楽しんでいる観光客ぐらいしかいなかった。
老人はベンチに腰掛けると、街のざわめきを聞き入る様に目を閉じている。
老人の隣には子供が座っている。子供はただ前を見ているだけだった。
「おや、気が付かなかったよ。いつから座っているのかな?」
老人は、半分独り言の様に呟いた。
子供・・・
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感覚シェアデバイス(自由投稿版)
17/09/13 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:672
モニターアンケートで当たった『感覚シェアデバイス』を装着するとベッドに寝転び装着感を整えると、スイッチを押した。起動画面に続いて星の海に浮かぶ地球が現れるとその横にメニューが表示された。
「ようこそ、バーチャルトラベルです。お客様は本日より『冒険家コース』の選択が可能になります。免責事項をご理解の上、誓約書に『同意』のボタンを押してからお楽しみ下さい」
抑揚のない音声出力に合わせて・・・
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社長の夜逃げ
17/09/11 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:796
「警部、事件です」
「?どうした。なんのパロディーだ。絵画警察か?」
「え・・・・」
吊るしのヨレヨレの背広姿でポカンと突っ立っている。
「つまらない突っ込みを入れるから、分からないネタで返されるんだ。まあいい。それで、何がどうしてどうなった?」
「どうして、伝わらないんですか?」
そこでムキになってどうすると思うが、コイツごときに知らないと思われるのもシャ・・・
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出会い
17/08/28 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:589
「ミヨちゃん、大きくなったら結婚しようね」
レンゲソウで作った花輪を首に掛けてあげた。
「うん、トヨくんのお嫁さんになる。約束だよ」
子供の時の記憶なのか? 夢の記憶なのか? 正直なところ良く分からない。子供の頃から、ふと思い出す記憶だったからだ。でも、心のどこかでホントの記憶だと思っていた。だから、ミヨちゃんと将来結婚する事になると思っていた。
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転職の相談
17/08/14 コメント:3件 風宮 雅俊 閲覧数:577
「どうぞ、おかけ下さい」
今日のクライアントも、相談するかを悩んでいる。悩み事を相談するかで悩んでいては悩みが増えても減る事はないのに・・・・、無視して様子を見るのも面白いかな?
「転職について悩んでいますよね。悩んでいるだけでは埒が明かないですよ」
何故、分かるのか驚いている。占い師だから分かるのか?ハッタリで言ってきているのか?また、悩んでいる。でも、ここまで来たんだから・・・
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黒板
17/07/31 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:646
「おはよう」
体育会系の部活の子は、みんな真っ黒だ。
「夏休みの宿題終わった?」
後ろの席の映美が聞いてくる。
「家でトドをやってた奴に見せる宿題はありません」
演劇部で色白なのは映美だけだ。文化祭のシナリオを考えるとか言って、炎天下の土手で発声練習している時も来ない。声量を決めるのは体力だと言う事で炎天下のグランドで陸上部と競ったりした時も来ない。そんな奴に見・・・
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二分の一 成人式
17/07/17 コメント:4件 風宮 雅俊 閲覧数:1277
「とうちゃん、作文の宿題があるんだ」
夕飯の片づけが終わって、とうちゃんが風呂に入る前に捕まえる。一日に一回のチャンスだ。
「おまえの宿題だろ?」
逃げの態勢のとうちゃんに低姿勢かつ逃げ場を与えない様に言わなくてはいけない。
「生まれた時の事を両親に訊いて書かく様に先生に言われたんだ」
「産んでないよ」
面倒くさい全開のオーラが出ている。
「とうちゃ・・・
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最後の出張
17/07/05 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:726
改札を抜け、人通りが少ない商店街を歩いて行く。使い込まれたビジネスバックと出張先のスーパーで買ったご当地商品をぶら下げて、住宅街のはずれにある我が家まで。あと、もう少しだ。
この道を歩くのはいつも暗い時間、夜が明ける前に家を出て帰りは暗くなってから。近所にどんな人が住んでいるとか考えた事がなかった。これからは挨拶ぐらいして顔見知りぐらいにはなりたいものだ。
でも、その前に女房に楽・・・
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感覚シェアデバイス
17/07/03 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:1057
モニターアンケートで当たった『感覚シェアデバイス』を装着するとベッドに寝転んだ。スイッチを押すと、起動画面に続いて星の海に浮かぶ地球とその横にメニューが表示された。
「ようこそ、バーチャルトラベルです。本日より『冒険家コース』の選択が可能になりました。免責事項をよく読んだ上、『同意』のボタンを押してからお楽しみください」
抑揚のない音声出力が免責事項を読み上げている。いよいよ、この・・・
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七つの名を持つオス猫
17/06/19 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:673
「にゃー」
静かに、窓が開いた。
「モモ、お帰り。どこに行っていたんだい、寂しかったぞ」
部屋の主が両手を出して抱き上げようとするのをすり抜けると、部屋の真ん中にある小さいテーブルの下で丸くなった。
「モモ、お腹空いたでしょ。ご飯用意するからね」
部屋の主は冷蔵庫からキャットフードを取り出すと小皿に盛り付け目の前に置いた。
「にゃー」 お腹が空いている訳で・・・
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夏の浜辺
17/06/05 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:703
もう何時間になるだろう、気が付けば宵の明星が光を放っていた。明日から始まる夏休みは二人にとって嬉しいものとは言えなかった。彼は家計を助けるために明日からバイトの掛け持ちの日々が待っていた。
彼女は厳しい父親の下でスマホを持たせてもらえなかった。だから、夏休みは二人を切り裂く辛い期間でしかなかった。
だから、辛い夏休みを乗り越えられる何かを、お互いに求めていた。
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開演
17/05/22 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:1220
「お先に失礼します」
階段を軽快に踏み鳴らして降りると、タイムカードに打刻する。そのままの勢いでエントランスまで行くと、ワンテンポ遅れて自動ドアのモーターが唸り音を上げ半分ほど開けた隙間をすり抜け雑踏の中に飛び込んだ。
そう、今日は金曜日だ。今日の為に一週間がある。金曜日だけは一番に帰る僕の事に同僚は興味があるみたいだけど、それは内緒だ。でも一度だけ答えた事がある、コンサートに行く・・・
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兼業作家の休日
17/05/08 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:700
土曜日の朝は気持ちがいい。日差しも心地よい。そよ風も心地よい。それに昨日は
早めに寝て平日のつまらない仕事の疲れはきっちり落としたからだ。
パソコンを立ち上げると、朝食の準備をする。帰りがけに買った調理パンをレンジで軽く温めながら、コーヒーを淹れる。目玉焼きとかベーコンとかも用意したいけど食材を使い切る前にダメになってしまうので、冷蔵庫の中には飲み物と、氷枕しか入っていない・・・
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主文、死刑。
17/04/24 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:816
待合席の並ぶ廊下の先に、最高裁判所の第十五小法廷がある。法廷内には五人の裁判官席と検察官席、弁護人席、被告人席、法廷警備員席、あとはネットでライブ配信する為の据え付けのカメラだけである。
最高裁判所は、十五人の裁判官が起訴内容により五人若しくは十五人による合議によって判決を下す裁判所であり、ここでの判決により刑が確定する。上告される事はない。
今日も類似裁判を七件も処理し・・・
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最後の甘味倶楽部
17/04/10 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:724
そのお店、丸の内のどこかのビルにあるらしい。ある者は屋上にある店だと言う。ある者は地下にある店だと言う。どちらが本当なのか、そもそもお店があるのか噂以上の事を知っている者はいなかった。
そのお店には、こんな噂も流れている。
女人禁制の会員倶楽部で同伴も許されない。勿論、ウエイトレスなぞ一人もいない。全てウエイターだけだ。何故なら女人禁制だからだ。
会員になる条件は、臭わな・・・
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浦島太郎の怨返し
17/03/27 コメント:2件 風宮 雅俊 閲覧数:1209
竜宮城での三日三晩の宴を終え村に戻った太郎は、乙姫から貰った玉手箱を脇に抱え亀に告げた。
「当たり前の事をしただけなのに、楽しいひと時を過ごす事が出来ました。でも、亀さん今度は助けなくても良い様に、子供たちには用心して下さい」
「太郎さん、ありがとうございます。これからの事も心配してもらい、ホント良い人に助けて貰って感謝の言葉もありません」
お互いに深々とお辞儀をすると、太郎・・・
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初乗り運賃の旅
17/03/16 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:696
朝の六時半、自動券売機の百四十円のボタンを押すと切符とおつりの六十円が出て来た。そして、自動改札を抜けると目的の駅の逆方向に行く電車が来るのを待った。
今日から新中学一年生、何年も待った中学一年生。母さんとの約束だった、『大人になったら』の夢が今日叶うんだ。お弁当は持った。水筒も持った。今日の為に調べておいた電車の時間を書いた紙も持った。
直ぐに、下り電車がホーム・・・
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呑みすぎ
17/03/05 コメント:4件 風宮 雅俊 閲覧数:887
カウンターの席には、私一人。他の席には・・・、闇に埋もれる様に片隅で一人静かに酒を飲む客がいるのかも知れない。しかし、そんな事を気にする者はいない。ここに来る客は一人になる為に来るからだ。
この店では混ぜた酒は出て来ない。完成したものに手を加える必要はないからだ。毎日々々愚直に繰り返される作り手の技が積み重なる。石造りの倉の中でゆっくりと熟成する事で時代が刻み込まれていく。本物を知れば小・・・
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真っ白な羽根
17/02/15 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:807
「お嬢ちゃん、学校はどうした。ここの住人じゃないだろ? 勝手に入って来ちゃだめだ。直ぐに帰りなさい」
うちのマンションはエントランスがオートロックになっている。それなのに、見覚えのないのが入り込む時がある。
自殺者が出ると資産価値が落ちるとクレームが来るから、
『知らない人を一緒に入れない。管理組合より』
と貼り紙している。その上パトロールまでしろとは、役員を外れた奴は・・・
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自転車の練習
17/02/08 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:816
「まず、ブレーキの使い方だ。少し押すから、ブレーキをかけてごらん」
下り坂で、息子の背中を軽く押すと、自転車が進む。
「よし、ブレーキ」
掛け声と同時に、キュッと音がして停まる。息子のホッとした気持ちが後ろからでも分かる。
自分が子供の頃、学校が終わったら自転車で遊びに行く。自分の頃はそれが当たり前だった。友達と待ち合わせをして、ザリガニを捕まえに行っ・・・
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ピックアップ作品
ストローをシャボン液が垂れないように慎重に口に運ぶと、ゆっくり大きく息を吹き込んだ。
みるみる、シャボン玉が大きく膨らんでいった。
今までで一番大きく膨らんでいった。
「ママ。おっきいシャボン玉、できたぁ」
娘の喜ぶ顔に、ママは笑顔で答えた。
〜 ・ 〜
大きな物の時間はゆっくりと流れ、小さな物の時間は早く進む。