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森伸さん

詩と短編小説が好きです。
出没地 | 鹿児島市立図書館 |
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趣味 | 読書と音楽鑑賞 |
職業 | |
性別 | 男性 |
将来の夢 | |
座右の銘 |
投稿済みの記事一覧
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雨上がりの虹
17/04/13 コメント:0件 森伸 閲覧数:592
営業の帰りに公園のベンチに座った。今日の営業は失敗だった。会社の新しいソフトの売り込みだったが、担当者には鼻であしらわれた。「実績のない会社とは取引はしません」と言われたのだ。雨が上がったばかりで、あたりには濡れた芝生の匂いが漂っていた。
ため息をついて、自動販売機で買ってきた微糖の缶コーヒーのブルタブを開ける。いつもブラックばかり飲んでいたのだが、今日はコーヒーの甘さを心地よく感じた。口の・・・
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姉ちゃんは桜だ
17/04/11 コメント:0件 森伸 閲覧数:626
桜の下に立つと十七で死んだ姉のことを思い出す。姉が亡くなる十日前のことだった。そこの頃には病気のために歩けなくなり、車椅子に乗っていた。桜を見たいと姉が言ったので、私は車椅子を押して、病院の庭に植えてある桜の所まで連れて行った。
風の強い日だった。無数の花びらが風に舞っていた。姉は散っていく桜をじっと見つめていた。
「桜に生まれれば良かった」姉はぽつりと言った。私は何も言えなかった。そ・・・
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菜の花電車
17/04/08 コメント:0件 森伸 閲覧数:630
最近疲れていた。電車に乗ると、乗り越してしまうことが多い。昨日は終点まで乗ってしまった。会社の仕事が忙しくて、疲労が澱のように体に溜まっている。経理事務の仕事で、神経を使うものだ。仕事を終えて会社を出るときは、目がかすんで足が重いことが多い。今日も夜の9時まで残業だった。それが終わって、各駅停車の電車に乗り込む。いつもは空いているのだが、今日は乗っている人が多い。金曜の夜だから、会社帰りに出かけた・・・
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「浦島太郎みたい」
家に帰ってきた母が言った。母は末期の乳癌だった。抗がん剤による治療がうまく行って、一時的に症状が小康状態になってので、帰宅することを許されたのだ。ふっくらとしていた頬は削げて、骨が飛び出している。髪は抗がん剤の副作用でほとんど抜けていた。
目だけが昔のままだ。茶目っ気を秘めて、きらきらしている。
離婚して実家に帰ってきた私は仕事をしながら、母と一緒に父の介護を・・・