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笛地静恵さん

SM小説家。妄想家。言葉遊び師。 三和出版『女神の愛』「女神帝國盛衰記」連載中 他

出没地 神田神保町
趣味 読書(泉鏡花) レコード鑑賞(グレン・グールド)
職業 教育関係
性別 男性
将来の夢 歌集、句集をだすこと。
座右の銘 永遠の未完成、これ完成(宮沢賢治)

投稿済みの記事一覧

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貸本屋《四季》

16/09/03 コメント:2件 笛地静恵 閲覧数:1060

 貸本屋《四季》の返却日だ。
 手元にあるのが、手塚治虫の『0マン』の第二巻だ。今日、かえさないと、えんたい料をとられる。忘れてはならない。
 高い山を左手に見ながら、木の橋をわたった。半ズボンからのびた足が短い。距離が遠く感じる。渡し守の姿が、上流に小さく見える。黒く細長い船だ。
 橋の向うは、別の小学校の学区だ。緊張してしまう。いんねんをつけられて、細い路地にさそいこまれるか・・・

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北半球の幽霊

16/08/15 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:814

 あたしは、いやいやでした。両親には仕事があります。夏期休暇中のあたしが、接待役の中心にならざるをえないからです。極寒の異国で、大過なく過ごしてもらわなければなりません。ホスト・ファミリーの責任です。
 せめてもの礼儀として、日本の国の花である桜の色のドレスを来て出むかえました。南半球人の少女は、野蛮なでかいだけの熊。そう思われるのはいやでした。スカートの裾と同じ高さに、彼の顔がありました。・・・

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クリトルリトル

16/08/01 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:927

 女の子たちは、この異様な世界で生きのびるために、何らかの特殊能力を持っています。あたしはクリトルリトルに高温に熱した槍をつきさしました。愛好さんの弓矢が爆発しました。
 隊列を組んで進行していきました。
 遠征隊の総勢は五名です。もっと人数が欲しかったのです。が、学校の防御も必要です。危険に満ちた世界です。学校の桜の下の木の墓標は、五柱に増えていました。
 あたしたちも、もう小・・・

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中野プルーパード

16/07/18 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:939

 ようやく外出許可が下りた。中野駅に降りたつ。昨夜は興奮状態で、あまり寝ていない。ふらふらする。胸が、どきどきする。興奮状態だ。正面のモール街に入る。すぐに《中野プルーパード》だと思っていた。が、そうではなかった。奥へ。奥へ。入っていく。
 《中野プルーパード》にいけば、なんでもある。そう耳にした。花水木しげるの貸本漫画を買う。高価というのはわかっている。資金は用意してある。
 階段を・・・

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飛礼祭

16/07/04 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:705

 左右の翼への力の入れ方は、均等でなければならない。頭ではわかっている。しかし、どうしてもできない。八転九倒している。このままでは、みなに迷惑をかけてしまう。飛礼祭は八日後だ。
 オナガは、何もかも投げ出したい気分だった。やめる。そう言いたかった。しかし、口に出せない。みんなの気持ちがわかるからだ。
 いつかはできる。そのときを待っている。頭上の光輪をふるわせて、びんびんと伝わってくる・・・

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第七人工島

16/06/20 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:996

 こづかいがない。こまった。だが腹が減った。穴あき銅貨一枚。これで頼みこもう。地世さんなら何とかしてくれる。どこかにそんな甘えがあった。この前も並盛を大盛りにしてくれたではないか。
 月彦の下校の道は、人工林の中を突っ切っていく。近道になる。やきそば屋ができた。板を張り合わせた掘っ立て小屋。《クラーク亭》という。看板が大きく出ている。  
 近くで大工事が実施されていた。道路を作ってい・・・

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怪獣ソバ屋

16/06/06 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:892

 銀色のがいこつが、ソバをすすっている。夜泣きソバ屋。骨の上を赤い血が流れている。赤ちょうちんの、ろうそくの火がまるい。ソバは、どろどろにとけた怪獣たちだった。はしでつまんでいる。骨の口に入れている。
 ずぞぞぞぞ。
 すすりこんでいる。かんではいない。まるのみにしている。ぞっとする。
 しろがねの眼窩にともった陰火。悦楽をしめして光っている。殺すことを楽しんでいやがる。ソバの汁・・・

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綿雨金魚

16/05/23 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:754

 ぼくは、夜店の茣蓙の前から立ちあがれませんでした。欲しいものばかりだったのです。人工の月の光が明るい小惑星帯の夜です。
 メンコには、大鵬も、柏戸も、力道山も、豊登もありました。召還すれば、強いものたちばかりです。すべて地球製です。印刷もあせていません。ぴかぴかしています。 
 複雑にからみあった、銀色の木星産の知恵の輪がありました。何匹もの金属の蛇が、苦しそうにからまりあっています・・・

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ビール瓶の中の美女

16/05/09 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1035

 今夜は寒い。いや、ダンボールの家に、入れてもろえた。ワンカップまで、ご馳走になった。あたたかい。えらい世話になった。
 最近、こんなに親切にされたことはない。お礼に、むかし話を聞かせよう。まだ夜は長い。日が明けるまでは、わしは眠らない。まあ、いろいろとあっての。独り言だと思って聞き流してほしい。
 ご覧のように、わしの持ち物といえば、このビール瓶一本だけじゃ。
 人の目のないあ・・・

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甘い夏の宿

16/04/25 コメント:2件 笛地静恵 閲覧数:1004

 三つ指をついた女将に挨拶をされていました。黒髪を高く豊かに結い上げていました。黒の和服が似あいます。黄色と緑青色の横縞が刺繍されていました。大きな瞳に、きりりとした眉をしていました。唇に紅をさしています。年増の美人でした。高い胸は熟した二つの果実でした。腰は細くくびれています。
「おなかが、すかれたでしょ」
 そのとおりでした。旅館の八畳間の中央。そこに置かれた漆塗りの卓には、すでに・・・

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京都大空襲

16/04/11 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:888

 出征の前夜。いきなり。くちびるを吸われました。わたくしのからだを、もとめてきました。痛みはありましたが、それ以上に喜びの方が、大きかったのです。わたくしは、十五歳になったばかりでした。ふたりとも、けして口には出しませんが、これが、この世でのさいごの契りとなるかもしれないと、思っておりました。燃えました。
 彼は、戦場に出ていきました。古い貴族の家系です。庭の桜が散り始めていました。
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月祓い師オロナC

16/03/28 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:973

 そうかい。ミンCは、この星に来たばかりかい。最初に、ことわっておくが、きつい仕事だぜ。かっこいいって、あこがれだけじゃ、やっていけない。若い子猫には、けっこういるんだ。そういうのが。おもりが、たいへんだよ。
 コン師匠の紹介状を持っているから、ことわるわけには、いかないけどよ。いろいろと、お世話に、なってるからな。百聞は、一見に如かず。現場を体験してもらおう。まあ、ついて来いよ。
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俺には霊感がない――零感ハンター

16/03/14 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:877

「海を見に行きたい」
 ヒノコが、とうとつにつぶやいた。
 さっきまで、おれのからだの下で燃えていたのに。
 午後二時をすこしすぎている。が、一度、言いだすと、とまらない。
 仕方ない。行かねばなるまい。愛車の《ブルー・タートル》号を出した。湾岸へ走らせた。海まで三十分とかからない。
「右へ」
 ヒノコの細い指が指示する。
 百里に少し足りない浜を南下した・・・

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二人の侍

16/02/29 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1085

 ギリシア様式の石造りの壮麗な映画館は、半分が海に沈んでいる。人類史へのあけぼのへの懐旧の産物である。波に、あかりが踊った。勇壮な音楽が、かかっている。
 映画館の中には、入らなかった。人間の体臭が、臭くてならない。
 夜になった。陸風が海に向かう。ここで、酒を飲んでいた方がいい。人間の数が少ない。海は始原の無垢を取り戻している。潮の香がする。俺は、外のテラスになった石の斜面で、夕食を・・・

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初恋のダイオウイカ

16/02/15 コメント:2件 笛地静恵 閲覧数:1047

 浸水している。有機軟合金の船体が軋んでいる。潜水深度を越えていた。潜水艦〈鱏713〉は、あらゆる命令を拒否した。日の本海溝へ、急速に潜航していく。
 伊賀は動かない操縦席を握りしめた。唇を噛んだ。胡麻塩の顎髭が歪む。どうすればよいか。秘密を厳守するために、地上との交信は一切、遮断されている。自分が決めるしかない。
 自爆装置の赤いボタンに指を伸ばした。止めた。待て。まだ・・・

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獏をつかまえる方法について

16/02/01 コメント:2件 笛地静恵 閲覧数:1050

 ああ、夢がさめる。
 獏が、逃げた。
 それが。いちばん思い出に、のこったことかなあ。
 うん。やっぱり、そう。
 夏休みに、獏(ばく)の茫々(ボーボー)が、逃げ出したこと。
 小屋の鍵には、夢封じの高等魔法が、三重にかかっているからねえ。鍵となる暗証番号は、あたしたち飼育係しか知らない。いくら獏でも、それらのすべてを、一晩でやぶるのは、無理だよねえ。
 いま・・・

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渋い茶・・・草壁メイさんの話

16/01/18 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:822

 草壁メイさんとふたりで、旅をすることになった。
 ぼくは、いちおうはこまった顔を作った。しかし、内心はうれしかった。
 民話の「採集」という活動をしている。大学の《昔話研究会》。「語り部」と呼ぶ人たちから、民話や昔話を聞いて録音をとる。
 日本の貴重な文化遺産だ。急速に失われつつある。「語り部」が、高齢化しているからだ。 
 旅費などは、バイトをして貯める。主に夏休みなど・・・

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文學の純情(内田百閧ノ)

16/01/04 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1245



留学僧の文學は 首都長安にすまえども ひとりの友もそばになし 遣唐使船ときならぬ 嵐にあいて沈没し 仲間たちみな遭難す かれひとりのみ生き残る 黄色い風のふきすさぶ 往来の影さみしくて ためいきばかり ついている 天にむかいてそりかえる 異国のいらかみあげたり 



そのとき文のたよりあり 日本の僧に興味あり いちどあそびにこられては 異国の姫は十八歳・・・

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怪獣ジビエ

15/12/21 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:986

 怪獣を食う。
 怪獣が地球を襲う。退治される。あとに大量の肉が残る。処理に困る。その肉を食おう。そういう案を出した男がいる。先見の明があった。
 怪獣の肉は、新鮮で生命力が強い。冷凍すれば長期保存がきく。政府に承認させていた。
 その肉を使ったジビエの店が、近くにできた。創作居酒屋《怪獣W》という。Wというのは、どういう意味か。興味があった。
 ひとりではつまらない。友人・・・

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影絵屋《キリエ》

15/11/30 コメント:7件 笛地静恵 閲覧数:1817

 影絵はそりかえり、あたくしの鋏から逃げようとしました。
 影絵屋《キリエ》。
 そこでは、亡くなったひとのたましいを、うすいうすい黒い影絵に切り抜いてもらえるそうです。ただ名前と、髪や爪という、生前に体の一部だったものを持っていけばよいと、そう教わりました。どこで、だったでしょうか。夢の中の細い路地かもしれません。
 記憶をたよりに小さな駅でお猿の電車をおりました。たそがれが空・・・

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傾く前頭葉

15/11/16 コメント:2件 笛地静恵 閲覧数:1019

 ごおん。頭をぶつけました。ベッドから、ころげ落ちたのです。もともと、ねぞうは、わるい方です。でも、こんなことは、はじめてでした。
 立ち上がろうとしました。けれども、まっすぐに立てないのです。床がかたむいています。ベッドにつかまって、ようやく起き上がりました。
 部屋から飛び出していました。廊下の壁には、ロープがはられています。それをつたって、キッチンにたどりついていました。
・・・

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関節少女人形ミツセ

15/11/02 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:962

 関節人形のミツセは砂つぼのわきの赤いやしろに住んでいる。人というより物だ。肺がない。伝説の青い星との戦いの時代に製造された、戦闘と慰安用の人形だった。関節部分が分かれている。
 彼女がいるのは、砂竜が住むとして、だれもちかよろうとしない場所だ。腹が減ると、金色の砂つぼにとびこんでいく。あがってきたときには、口に鉄蠍をくわえている。火もとおさずに生のままで食う。毒のある尾のとげも残さない。<・・・

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秋の山の秘密

15/10/23 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1148

 劇団に入っている。夏の間、軽トラック一台と2tトラック二台を連ねて、日本全国津々浦々の地方巡業をこなしてきた。
 映画の脚本などもてがけている有名な脚本家の弟が、演出家と代表をつとめている。公民館などを回る。歌と踊りの入るミュージカル仕立てだった。すべての年代が楽しめる。評判は良かった。
 彼は、その美術の担当だった。大道具のたぐいを、場所の制限に合わせて、適宜、設定していく。

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竜騎士の愛

15/10/23 コメント:0件 笛地静恵 閲覧数:1067

 わたしは竜の檻に、こわごわとちかよっていきました。巨大な体が岩の天井から、ぶらさがっていました。大きな耳が、ぴんと立っています。見えない目で、にらまれていました。低い鼻の穴から、ふうふうと息を吐いています。牙をむいています。泣き出していました。皮と骨だけのお尻でころんでいました。五歳のころのことです。
 竜騎士の息子が、これではいけない。父は、そう思ったのでしょう。わたしは八歳になっていま・・・

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