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橘 聰さん

出没地
趣味
職業 講師
性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの記事一覧

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燃える霊魂

16/08/27 コメント:2件 橘 聰 閲覧数:753

 リング上で対峙する二人の大男。一人の表情は曲見の能面を模したマスクの下に隠れていてうかがい知れない。もう一人はマスクをしていない。二人の大男は逆水平チョップと前蹴りの応酬をしていた。肉を打つ音がジムに響く。
 信は呆然と二人を見ながら、ここに至るきっかけを思い出していた。


 坂崎信は祟られてしまった。おそらく、借金を苦にした男が妻子を道連れに心中するという事件が起きた・・・

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「おべんとうばこ」の中身は何?

16/07/17 コメント:0件 橘 聰 閲覧数:723

 研究室で読書をしていると、ノックの音が聞こえた。入ってきたのは高橋君。私が担当しているゼミの4年生だ。
「先生、お時間よろしいでしょうか? 卒論のテーマでちょっとご相談が」と言い、1枚の紙を差し出してきた。見るとそこには『おべんとうばこのうた』という題名と歌詞が書かれていた。「これっくらいの、おべんとうばこに」で始まる有名な童謡だ。
「これを卒論で取り上げようと思いまして」
「・・・

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猫の本質

16/04/24 コメント:0件 橘 聰 閲覧数:783

 「猫の言葉、売ります」。ぶらっと入った裏路地の一角、そんな看板がひっそりと出ていた。猫専門のペットショップのようで、猫が入ったケージがいくつも置いてあり、「マイケル」やら「ゆうき」と名前らしき文字が書かれたプレートが添えられている。しかし、「ごはん」や「いとくず」というのは、名前としていかがなものだろう。
「猫をお探しで?」
 店主と思しき男性が話しかけてきた。一見、ごく一般的な中年・・・

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黒水族館の“展示品”

16/03/29 コメント:2件 橘 聰 閲覧数:825

「黒水族館(ブラック・アクアリウム)?」
 大学の食堂で昼食を摂っているとき、一緒に食べていたタカハシがそんな話題を切り出してきた。
「何だいそりゃ?」
「海とか川とか湖とか、そういう水場に関係した事件や事故の資料が展示されている場所って話だな。ほら、ロンドンの黒博物館(ブラック・ミュージアム)、あれと同じようなもの」
 確かにロンドン警視庁内には、犯罪の証拠品や写真が保管・・・

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Once More 映画泥棒

16/03/23 コメント:0件 橘 聰 閲覧数:851

 新月の晩、都内某所(23区内ではない)の四つ辻に一人の少女が佇んでいた。時計の針が午前2時を指した時、少女は静かに、だがはっきりと闇に向かって声をかけた。
「映画泥棒さん、祖父の映画を……『炎の追跡者』を盗んでください」

 映画泥棒とは、ビデオカメラの頭部を持ち奇怪な動きをする男のことではない。あれは「カメラ男」である。カメラは録画の道具であって泥棒そのものではない。では、録・・・

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賭博仙人と才三の話

16/02/12 コメント:1件 橘 聰 閲覧数:1541

 賭博を極めて仙人になった男がいるという。人は彼を賭博仙人と呼ぶ。胡散臭い話ではあるが、そんな話を信じ、数年に及ぶ調査と探索の末、仙人の庵にたどり着き、弟子入りをした男がいた。彼の名は高倉才三。己の才覚の無さ、何より優柔不断な精神を何とかしたいと思い、賭博仙人に弟子入りしたのだ。伝説の存在であった仙人を見つけるという“賭け”に勝ったことは、才三にとっては密かに誇らしいことであった。

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どこでお茶を沸かす?

16/02/09 コメント:6件 橘 聰 閲覧数:1548

 「僕はへそでお茶を沸かしてみたいです。」
 幼稚園のお誕生会での「大きくなったらやってみたいことは?」という問いに対して、僕はそう答えた。園に置いてあった『かんようく・ことわざ絵本』に載っていたその慣用句が妙にデタラメで面白かったのだ。そして折よく「やってみたいこと」を聞かれたので、自分としてはまったく当然の流れとしてその一文を言ったわけだ。ちなみに、一緒に絵本を読んだテツ君は「顔から火を・・・

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思いを伝える物質

16/01/29 コメント:3件 橘 聰 閲覧数:860

20××年9月11日 赤川竜平
 一人の物書きとして、一度くらいは純文学に挑戦してみたいと思うのだが、いざ取り掛かるとなるとどうしたものか分からない。私小説とは似て非なる純文学。美、芸術性をひたすら追求すること……。文学における芸術性とは何だ?

20××年9月20日 赤川竜平
 どうも、文学という枠組みに囚われてはいけないように思う。まず「芸術性」の何たるかを吟味した後、・・・

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情報表示法の制定過程と純文学の危機

16/01/26 コメント:5件 橘 聰 閲覧数:1441

 体に入る食べ物に何が入っているのか、安全かどうか、安全と言いきれないならどこまでが許容範囲なのか……。消費者意識の高まりとともに、そういった情報を得て可能な限り自身の手でリスク管理したいという要求が出てくるのは至極当然の流れであり、「食品表示法」という法律がかつて制定された。
 そして消費者意識は次の段階に入る。体が摂取するものの成分を知った後は心が摂取する様々な情報の成分を知りたくなった・・・

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アルスアマトリア 外典 虚無の章

16/01/14 コメント:2件 橘 聰 閲覧数:796

 私はある本を探している。しかし、インターネット、その他もろもろの手段を使っても、未だ手掛かりすらつかめていない。ならばそんな本はそもそも存在しないのではないかと思うかもしれない。しかし確かにその本は存在している。私は若い頃に一度その本に出会ったことがある。

 あれは晴れた夏の日、恋人に振られてしまった翌日のことだ。そのとき私は前日の別れ話を思い返しながらやり場のない思いを抱えていた・・・

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奇人で何が悪い?

15/11/20 コメント:0件 橘 聰 閲覧数:790

「ねぇ、田山さん、奇人らしいよ」
「え、そうなの?」
 あれは・・・、春に入社した新人の工藤明と富沢花か。あいつらにも俺の正体がばれたってわけね。まぁ、隠してる訳じゃないけどよ。しかし、鬱陶しいったらないな。俺のことをちょっと知ると、どいつもこいつも奇人奇人と小声で伝え合う。コソコソコソコソと腹が立つ。
 まぁ、鬱陶しいとは言っても、面と向かって「君、奇人なんだって?」とか言って・・・

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速さと重さとカーブ

15/11/19 コメント:2件 橘 聰 閲覧数:1072

 駅前のタクシー乗り場で空車のタクシーに乗り込む。
「K区民センターまで。」
 行き先を運転手に告げてシートに寄りかかり、今日の仕事について、頭の中で確認する。大丈夫、話すべきことはほぼ頭に入っているし、簡単なメモも用意した。必要と思われる各種資料も鞄の中だし、配布資料については先日手配してある。万事いつも通りだ。
 一通り確認を終えて意識を外に向けたところで丁度タクシーが止まっ・・・

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