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1

さかなや書店

12/11/09 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2867

「いらっしゃ〜ぃ、そこのお兄さん、今日は新鮮だよ! やっと世に出たミステリー、現代夢幻物語というお魚だ! ノルウェイとはちと違う、不思議な味だよ。さあお兄さん、ワンコインで一匹どうだい?」

 たまの休日、高見沢一郎は遅めの昼食を取ろうと、アパートから一駅向こうの商店街に出掛けてきた。そしてこんな威勢のよいかけ声で、店の前に立つオカンから呼び止められた。そのお母さんは前掛けをし、鉢巻き・・・

2

週末は、とんかつマジック

12/05/25 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2866

「明日はとっておきの手品、とんかつマジックを見せよう」
 ある週末の前の日、突然お父さんがそう宣言をしました。テレビを見ていた子供たちは驚いた顔をして振りかえってお父さんを見ました。
「何? 何なのお父さん、とんかつマジックってなぁに?」
「とんかつを食べにいくぞー」
 一斉に子供たちは歓声をあげます。
「やった〜〜とんかつだ!」
「とんかつ、とんかつ、凄いよお・・・

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アゲインエレベーター

12/11/10 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2861

 男はベッドに横たわっている妻を車椅子に乗せると、そっと病院を出た。誰にも見られなかったことは、男にとってラッキーだった。医師の許可なしに、意識不明の妻を外へ連れ出すなんて許されるはずがないだろう。追いかけて来る者がいないかと、何度も後ろを振り返りながら、男は駐車場へと急いだ。車を走り出させ男は、ほっと安堵した。ハンドルを握る男の手は、冷や汗でじっとりと濡れている。
「安全運転だね、綾子、も・・・

2

瓶ビール

12/03/28 コメント:1件 Minakami 閲覧数:2860

 あれは誰だったろうか。名前なんかもとから知らなかっただろう。小太りの中年だった。青い作業服を着ていたから、きっと派遣の労働で知り合った男で、作業が終わった後一杯誘われたのだろう。派遣労働の現場でタイムテーブルは存在こそすれ、ないようなものだった。大体の場合において大袈裟に早く終わるかまたは深夜まで残業をこなして終電を逃すかであり、規定の時間ちょうどに終わる現場なんて滅多になかった。

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ランドセルを忘れた私

15/04/02 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:2860

 薄ぼんやりした、存在感の希薄な子でした。
 貧乏の子だくさん、もう子どもは要らないと思っていた夫婦なのに、残念ながら誕生してしまった五番目の命が私です。
 ご飯さえ食べさせれば、勝手に育つだろう。そんな動物を飼うような感覚で育てられ、物心つく前から上の姉たちのオモチャだった。
 幼稚園は家庭の事情とやらで通園しなかった私は、いきなり小学校から団体生活が始まります。すでに日常が家・・・

0

12/05/29 コメント:4件 AIR田 閲覧数:2856

男性は生涯で二度結婚することが出来た。
一度目は山から落ちる冷たい風と川の石。
二度目はビルの隙間から吹く風と道の石。

 「結婚して下さい」
  この言葉は過去に男性が女性に言ったことに間違いはないが、
「結婚して下さい」
  今その言葉を向けられた相手は道端に落ちているただの石だった。
&・・・

9

浅草の寅

13/04/22 コメント:18件 泡沫恋歌 閲覧数:2854

てやんでぃ! おいらは三代続いた浅草生まれの野良猫だぜぃ!
『浅草の寅』と言えば、この辺りでは知らない者はいねぇー。爺さんの代から、浅草寺から花やしきにかけてはおいらの縄張りだ。今日も子分をひき連れてシマの見回りに出掛けるぜぃ! 
おや? 雷門の下に見慣れない猫がいるぞ。
「やいやい! てめぇ、どこのシマのもんだぁ?」
子分のクロがいきなり脅しをかけた。
「あっ! ゴ・・・

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名の有る人

12/04/04 コメント:2件 T・F 閲覧数:2852

 お通夜のような店内で、禿頭の店主は深い息を漏らした。どうしたもんかと悩んでいると、一組のカップルが入ってきた。店主は緊張のせいか、腕を絡める若い彼らに、「い、いらっしゃい!」と歯切れの悪い挨拶をかけてしまった。
 カップルは店内を見渡した。偶然立ち寄った居酒屋の中は案外広く、一目見て分かるほどの満室で、繁盛しているように見える。ただ、活気が無いのが不可解だった。これは座れないなと判断し、互・・・

6

老いてもなお虎

13/04/25 コメント:9件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:2851

 相方の上原が、就職を機にアルバイトを辞めることになった。
 そして、その代わりに店長が連れてきたのは、どう見ても定年を過ぎた男性だった。




「前にも教えたと思うんですけど、弁当を温めるときはソースを外してくださいね」

「そうやったな、すまんすまん」

 口では謝罪を述べつつも、反省の色無しという具合に笑顔で応じる赤松さんを見てい・・・

2

颯太の夏休み

13/07/30 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2846


 夏という字に、悪魔の魔、ちょっと恐ろしい名前を持った夏魔(なつま)。彼女は颯太のオフィスで働く優秀な派遣スタッフだ。服装も髪色もいつもツートンカラー。いかにも派手で活発そうだが、その外見に反し、立ち居振る舞いはおしとやか。もちろん口数は少ない。
 コミュニケーションは社内メールのやりとりと、流し目だけでこなす。そんなミステリアスな夏魔に恋心を抱いてしまった颯太、断られて元々、夏休み・・・

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歴詩(連載6) 真田幸村・大坂夏の陣

15/02/13 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2846

 ほんの七月(ななつき)ほど前に 大坂冬の陣
 真田幸村は 城の南方に築いた 真田丸から
 怒濤の攻撃
 そして徳川方は 惨敗した

 戦が終わり 和議を結んだ
 徳川が 外堀を埋める
 一方豊臣は 内堀を、と

 いかにも 老いた家康は焦っていた
 あっと言う間に、内堀まで埋めてしまったのだ
 難攻不落の大坂城が、これで――裸城に・・・

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At the night of Christmas

12/03/20 コメント:0件 南リンゴ 閲覧数:2842

 アンチクリスマス!
 いつからケイケンなクリスチャンになったんだ、俺のプロスティチュート達は。この季節になると女どもは思いつく限りの贅沢な暴言を吐く。俺はベッドが温かければそれでいい。
 今年の冬は寒い。ダークグレーのロングコートも値段のわりには役に立たない。天にまします我らの父よ、イエスは飯屋にも必要ないこの国で俺は何に救いを求めればいい?
 こんな日でもミスフォーチュンテラ・・・

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京都伏見 酒蔵情話

12/05/27 コメント:1件 草愛やし美 閲覧数:2839

 
 母が亡くなって1年法事のため私は実家へやって来た。母は昔から丈夫な人で家族みんな病気とは無縁の人だとばかり思ってきた。病に気づいた時はもう手遅れで家族はみんな悔やんだがどうしようもできなかった。
 私は隣の県に嫁いだが、母は私のことを心配してくれた。嫁ぎ先が兼業農家だったため嫁である私は年中農作業に駆り出された。
「都会育ちのあんたに田植えなんかできるん? 腰はどない、無理・・・

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恋の落人

12/06/20 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:2839

「ここ耶馬溪町の雲八幡神社で行われる河童祭りには、およそ300年の歴史があります。
源氏に敗れた平家の落人の妄念が河童となって悪さをしていたため、その霊を鎮めるために始まったのが・・・」
 レポートをしながら切ない気分がこみ上げてきた。戦に敗れて逃げてきた落人か・・・。
まるで私みたい。すっかり結婚する気でいたディレクターの彼氏を後輩アナウンサーに略奪された。実際には彼が若い娘に・・・

1

水族館

12/07/07 コメント:15件 汐月夜空 閲覧数:2838

「やっぱりここに居たんですね、館長」
 辺りを照らすのは水上の従業員用通路と通路に五メートル幅に埋め込まれたブルーライトのみ。その仄暗い明りの中を加賀美は靴音を大きく鳴らさないようにゆっくりと歩いていく。以前館長がここに居た時に、蛍光灯を全部点けて駆け足で近づいて、普段は温厚な館長に信じられないほど怒られたのは記憶に新しかった。
 ――ここ、とは夜の水族館のガラス通路だ。館長は一日の仕・・・

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再生は、喪失の中で

13/10/12 コメント:8件 クナリ 閲覧数:2837

睡眠薬なしでは眠れなくなってから、どれくらい経つだろう。
二十代も終わろうとしている今、働きもせず、私は狭いアパートの隅で、虫のように暮らしていた。
水商売をしていた頃には堅気じゃないお客も来て、時には物騒な都市伝説を教えてくれもした。
「人殺しが死ぬ間際には、走馬灯の中に必ず自分の殺した奴が出て来るんだと」
刺激的だったのは、話ばかり。
今は荒れた畳の上に転がり、カ・・・

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わたしは罠にかからない

15/08/05 コメント:6件 梨子田 歩未 閲覧数:2835

‐ぽきっ、ぽきっ
 冷凍のインゲンは、少し力を加えただけで気持ちよく折れる。
 朝の弁当作りに冷凍食品は欠かせない。最近では、野菜の冷凍も種類が充実してきて、カボチャ、ブロッコリー、インゲンなどは、お弁当に彩りを添えるのに重宝する。
 お弁当に入れるにはインゲンは少し長いので、解凍前のインゲンを半分に折っていく。
 共働きの我が家では、弁当作りはわたしの役割だ。そういうこと・・・

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水底で、両手いっぱいの野ばら

14/10/26 コメント:12件 クナリ 閲覧数:2833

死体そっくりに育つ野ばらの話を、聞いたことがあるだろうか。
使用人の息子だった僕を、領主の娘のマルエルがこっそり庭園の片隅へ連れて行き、その野ばらを見せてくれた時、僕らは十三歳だった。
マルエルは、知り合いの魔女から教えてもらったのだと言って、壊れた石垣の付け根から伸びる、その野ばらを指差した。
なお、僕はその魔女とやらを見知っていたが、ただの変わり者の老女である。
野ばら・・・

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コーヒー、一杯分の幸せ。

12/11/24 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:2829

 夕凪で窓のカーテンは微動だにしない。西日のあたるキッチンのテーブルで千秋はコーヒーを飲んでいた。
「今日は忙しかったなぁー」
 フーと溜息をついてテーブルに頬づえをつく。
 今日はスーパーの売り出しだった。まだ新米の千秋はレジの前に並ぶ客の多さに目が回りそうだった。その上、商品の値引きを忘れて中年の女性客にしつこく文句を言われて辟易した。

 今年、三十二歳になる主・・・

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記念日スイーツ

13/11/13 コメント:25件 草愛やし美 閲覧数:2828

 私は、ケーキを焼いている、スポンジケーキだ。さっき、クッキーも焼けた。香ばしい匂いがキッチンに漂よっている。


 夫に三か月前、離婚を言い渡された。その夜、夫に何を言ったかよく覚えていない。たぶん、罵ったのだろう。夫に女の影を感じてから、もう一年以上になる。夫は、その夜から、平気な顔をして夜遅く帰ってくるようになった。居直ったのだろう。離婚の理由を散々問いただしたが、愛がなく・・・

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子別れ

14/11/19 コメント:11件 そらの珊瑚 閲覧数:2826

 彼女は生まれたばかりの命をそっと抱きしめて眠っている。

 去年は、命を産み出すことは出来なかった。それは自然の摂理だ。受精卵を孵すか、孵さないかは、母体の栄養状態によるところが大きい。

 去年はすべてのものが足りなかった。雨が少なかった乾いた森は、秋になっても木の実が極端に少なかった。通年だったら遡上する鮭で、川が埋まるほどであるのに、去年は一日待っていても、せいぜい・・・

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スペース・エレベーター・ガール

12/11/12 コメント:1件 野村レトリクス 閲覧数:2826

 西暦二〇六一年。

 百年前、ガガーリンが大気圏外を旅行した。
 九十八年前にはテレシコワも続いた。
 アルツターノフが天のケーブルカーという概念を新聞で発表したのは百一年前だ。

 スタンバイ。

 彼女は自分の制服をチェックしながらインカムで乗船ブリッジに連絡する。壁のパネルに触れる。目の前のハッチが開く。
 彼女はハッチをくぐって外に出・・・

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現実的な異世界譚

15/03/09 コメント:8件 るうね 閲覧数:2824

 将来、何になりたい?
 そんな質問に、子供の頃の僕は必ずこう答えていた。
 ――異世界に行って勇者になりたい!
 当時読んでいた漫画やゲームの影響だとは思うが、まあ幼い回答である。
 それでもあの頃は、本気でそう思っていた。
 自分は大人になったら異世界に行って、勇者になるのだ、と。
 だが、いつしかその夢も薄れ、小学校を卒業する頃には、現実の中に埋没してしま・・・

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マジン都市伝説

13/11/02 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2823

 僕はお金が欲しい。ずっと悩み死にたいとさえ考えた。だけど、あることを知って僕は、立ち直った。新しい道を歩むために、僕にはお金が必要なんだ。しかも、親に内緒で貯めなくては。コンビニバイトだけではそうたいした額は稼げない。そんな時、ネットで『ときそら物語』を知った。テーマに沿った物語を書きうまくいけば賞金が貰える。凄いこれって僕は叫んだ。文章を書くのは昔から好きだったから投稿を始めた。けど、みんな凄・・・

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悲劇のバレンタインデー

13/01/22 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:2822

 ――外は淡い水色の雪景色だった。地上の濁った大気が天界で清められ、雪となって地面に降り注いでいた。
 刑務所の屋根が薄っすらと白んでいる。丈高い塀には有刺鉄線が張り巡らされていた。
 刑の執行日であった。牧師が独房に入り囚人は最後のひとときを迎えようとしている。
「思い残す事はありませんか」
 初老の牧師が落ち着いた口調で囚人に語りかけた。囚人はただぼんやりと壁を見つめて・・・

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ヴィルトゥス

12/11/12 コメント:2件 高橋螢参郎 閲覧数:2821

奴隷メムノンはその日も大型闘技場の地下で、歯車を回していた。
彼らの回す歯車は昇降機を動かし、剣闘士や猛獣といった、ありとあらゆる暴力をコロッセオの舞台へと送り出すのだ。
学や富こそないにしろ、それでも奴隷としては幸せな部類だ。命のやり取りに晒されはしないし、日に何度かの試合のあるまでは、待機させられている事の方が多かった。
呑気に談笑する他の奴隷を尻目に、メムノンは独り悩んでい・・・

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永遠の海よ

12/07/11 コメント:16件 そらの珊瑚 閲覧数:2821

 僕たちを乗せたあの自転車は、どこへ消えてしまったのだろうか。
       
        ◇
 
 僕たちは海辺の町で育ったおさななじみだった。小さい頃は磯に出て、カニを採ったり潮だまりに取り残された小魚を採ったりして共に遊んだものだった。
 小学校へ進級してからはどちらともなく距離を置くようになった。『男女七才にして席を同じゆうせず』という言葉があったように、・・・

4

昇神の儀

13/08/06 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2821


「ただ今から新設備の竣工式を執り行います。一同ご起立願います」
 本日の司会を担当する庶務課長から第一声があり、竣工式が開始された。
「神前に向かって、拝礼願います」
 出席者全員は「拝礼!」と言う掛け声と同時に祭壇に向かって厳粛に頭を垂れた。
「直れ! ご着席下さい」
 祭壇に一番近い席にゆっくりと腰を下ろした高見沢一郎、その表情には安堵した胸の内が伺われる・・・

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君のファンクラブ

14/02/18 コメント:21件 泡沫恋歌 閲覧数:2820

「君のファンクラブ作ったから!」
「はあ?」
 私、高瀬未菜(たかせ みな)高校二年生、容姿は並。放課後の教室で、いきなり幼馴染の同級生章太(しょうた)そんなことを言われた。
「ファンクラブって? 私ってば普通の女子高生だよ。――で、メンバーは誰?」
「B組の伊藤誠と俺」
「たった二人?」
 伊藤君とは吹奏楽部で一緒だけれど、特に意識したことない相手だった。

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赤い傘と彼岸花

16/08/17 コメント:6件 デヴォン黒桃 閲覧数:2819

 
「刑事さん、ドウカ聞いて下さい。アノ八月の半ばに起きたひき逃げ事件の犯人は私で御座います。ドウヤラ私は呪われて仕舞ったのか、頭がオカシク成って仕舞ったのか定かでは御座いませんが、居ても立っても居られなく成り、出頭した次第で御座います。アノ日は雨が降って居りまして、月は群雲が掛かっており、暗い夜で御座いました。言い訳しても致し方御座いませんが、視界が悪かったので御座います。ソコへ急に、赤い・・・

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暑中はがき

12/07/26 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:2818

 車のエンジンを止めて、ドアを開けると外は真夏だった。
 喧しい蝉の鳴き声と焼け付くような強い日差しでいっぺんに汗が噴き出した。美咲は三日振りに自宅のある郊外のマンションに帰ってきた。ここのところ仕事が忙しく、会社近くのビジネスホテルで寝泊まりしていた。通勤時間を惜しんで仕事に打ち込んだ。
 美咲は中堅のインテリア照明会社に勤めている。都心に大型ホテルがオープンするので、その建物内の照・・・

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三十路目前グラビアアイドル

15/05/04 コメント:2件 夏川 閲覧数:2817

 人生とは時間切れの連続だ。
 納期、待ち合わせ、締切、終電――誰もが時間切れを体験し、積み重ね、そしていつかは人生の時間切れを迎える。
 私も今、迫りくる時間切れと戦っている最中であった。





「ハァ……やっぱ厳しいよ、もう三十路目前だもん」

 真っ白な手帳片手にため息を吐くマネージャー。私は彼を奮い立たせようと肩を強めにたたく・・・

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純金の名古屋巻き

13/06/03 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2811

 男は、さきほどから、喫茶店のテーブルに置かれた皿と睨めっこをしたまま微動だにしない。皿に盛られているのは「あんかけスパゲッティ」、最近、有名になりつつある名古屋B級グルメの一つだ。今朝、喫茶店の開店と同時に入ってきた男は、モーニング全種類を注文した。ウエイトレスは、後から、連れが来るものと思って注文した品を運んで行った。
 ここは、名古屋駅傍の、とある喫茶店。名古屋名物のモーニングで有名な・・・

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廃駅

12/09/09 コメント:5件 郷田三郎 閲覧数:2810

 目の前を轟音を伴って赤い電車が通り過ぎてゆく。
 運転手には寂れたホームの上、線路ぎりぎりまで前に出ている私など目に入らない様だ。
 風圧が私の頬を弄り髪を崩すが電車は速度を落す素振りさえ見せはしない――。

 その日は朝から酷く忙しい日だった。正確には前週末から忙しさは継続していて、週が明けて三日が過ぎた木曜になっても事態の収束がいつになるのか、私には想像がつかなかった・・・

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珈琲牛乳のおもいで

12/11/20 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:2808

 のれんをくぐると、入口はふたつに別れている。

 男湯と女湯。そこで仕分けされるのは、もちろん生物学的な男と女に基づくものだが、母親に連れられた小さな男の子というものは、女湯に入ることを許された稀有な存在かもしれない。というか、母親のおまけのようなものだったのだろう。
 
 いつものように、その日も母に連れられて女湯の脱衣所に入る。番台には背中を丸くしたおばさんが座ってい・・・

3

とんかつ山のたぬきさん

12/06/09 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2808

 僕は今日もこの『とんかつ伊勢』にやって来た。この席だった、この奥まった席に初めて僕はタヌ吉と向かい合って座った。向かい側のタヌ吉の緊張した顔が今でも思いだされる。もちろん人間に化けていたけれど……、その化け方のうまさには感心させられた。タヌ吉は上ロースかつ定食を頼んだ。二人で向かい合ってとんかつが来るのを待った。

「わあ! うまそうじゃな」
 人間の言葉を習ったのが仙人だった・・・

1

京都【さまよえる鬼】

12/05/25 コメント:0件 そらの珊瑚 閲覧数:2804

「こわいよ、かかさま」」
「またこわいゆめをみたのね。だいじょうぶよ、かかさまがそばにいるわ」
   ◇
 小さな灯によって浮かび上がったその影に、ふたつの角があることを子はまだ気づいてはいない。
 ほんとうの鬼は、夢のなかに棲んでいるのではなく、現実のなかに棲んでいることをまだ知らない。
   ◇
 わたくしのことをお知りになりたいのですか?今はこんな姿に成り・・・

8

恋はラーメンの味

13/05/20 コメント:17件 光石七 閲覧数:2803

 夫が夕食は外で食べようと言うので、娘を呼びに2階へ上がった。声をかけようとしたが、中から何やら音がする。ガタッ、ドン、チャッ――。
「あーん、どれにしよ? 全然決まんないよお……」
娘の困ったような声が聞こえてきた。私は思わず微笑んでしまった。明日、娘はボーイフレンドと初デートに行くらしい。行先は水族館。きっとどの服を着ていくか、迷っているのだろう。時代は変わっても、好きな人のために・・・

7

死者からのサプライズ

13/06/27 コメント:17件 光石七 閲覧数:2802

 小堂探偵事務所に一人の女性が訪ねてきた。
「小堂君、久しぶり」
いきなり君付けで呼ばれ、小堂は当惑した。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
カッコ悪いと思いながらも、小堂は聞き返さざるを得なかった。
「私です。Y高校で同じクラスだった、今川結衣です」
「えっ、今川さん?」
確かにそんな名前の女子が同級生にいたが、まるで印象が違う。
「わか・・・

8

磨かれたトイレ

15/07/12 コメント:9件 草愛やし美 閲覧数:2802

 夜中、俺はトイレに立った。年を取ったせいか近頃よく夜中に目が覚める。扉を開け一歩踏み出したとたん足を掬われた。床がない、うわあー落ちる。地面に叩き付けられて死ぬと固く目を瞑った。
 だが、不思議なことにゆっくりと足が地に着いた。見渡す限りの草原だ。どこだ、ここは?呟きはすぐに悲鳴に変わった。象の大群がこちらへ向かって来る。逃げようとしたが足がもつれ倒れた。けたたましい象の雄叫びが鳴り響く、・・・

7

かげろうの語源

13/06/17 コメント:10件 平塚ライジングバード 閲覧数:2801

かげろうの語源を知っていますか。
わたしは、少しでも多くの方に彼のことを知ってもらいたいのです。そして、願っていただきたいのです。

わたしの物語は語り継がれるかもしれません。わたしの歌は詠み伝えられるかもしれません。しかし、彼についての記述だけは、嫉妬に狂った我が夫に焼かれ、完全に消失してしまったのです。

わたしは、彼の生前も死後も幸せにすることはできませんでした・・・

9

モーツアルトは聞きたくない

14/02/07 コメント:19件 朔良 閲覧数:2801

 うん。もう駄目だ。終わりにしよう。僕はモーツアルトにはなれない。

 再生の終わったDVDの静止画面を眺めながら、僕は眼鏡をはずして手の甲で目をこすった。
 終わりにすると決めたくせに未練がましく、「夏の演奏会、一緒にやらね?」と匠から渡された音楽ファイルを開く。
 流れてきたのは皮肉にもモーツアルトだった。

 モーツアルトを連弾とかどんな嫌がらせだ? と毒・・・

5

ホワイト・クリスマス

13/12/07 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2797

 そっと開けたカーテンの間隙、その向こうに少しくすんだ風景が見える。本当は白銀の世界なのだろう。しかし、新月だった闇の中で雪はしんしんと降り、今も舞い落ちる六花(りっか)の重なりなのか、グレーぽく目に映る。
 凛太郎は、そんな雪夜の名残にふーと息を吹きかけ、ボソッと呟く。「雪だよ」と。

 ベッドの中にいる麻伊からは、興味がないのだろう、「そうなの」と、おかしみのないレスポンスし・・・

11

一見さん以外お断り

15/02/23 コメント:18件 海見みみみ 閲覧数:2797

 渋谷七不思議というウワサをご存じだろうか? 都市伝説の一つで【夜中に動き出すハチ公像】や【目が光るモヤイ像】辺りが有名だろう。
 その中でも今回は【一見さん以外お断りのバー】について語らせてもらう。

 その日、俺はどん底の気分だった。些細な事で彼女とケンカをして、別れてしまったのだ。
 独り身になって、俺の中でいかに彼女の存在が大きなものだったか思い知らされた。だが別れ・・・

5

ガジュマルは戦場で死んだ

15/10/05 コメント:11件 冬垣ひなた 閲覧数:2796

ガジュマルの枝からキジムナーの姿が消えたのは、雨季の音が訪れた頃だった。精霊が何処へ去ったのかは定かでない。
枝から髭のように垂らした褐色の気根は、幹と変わらぬ強靭さで巨木を支え、いかにも長寿の風情を漂わせていたが、枝葉はまだ若い。
この、ハイビスカスの咲き乱れる南国の島では、豊かさや幸せは、海の向こうのニライカナイからやってくるといわれていた。楽土に渡れば憂いもないだろう。
大・・・

6

隣りの小豆洗い

14/12/18 コメント:9件 みや 閲覧数:2795

高校受験を間近に控え受験勉強という名目の夜更かしをしている僕の耳に、お隣の家からまたあの音が聞こえてきた。

ショキショキ ショキショキ ザー ショキショキ ショキショキ ザー

また来てくれたんだ、と僕は嬉しくなって自分の部屋から飛び出した。

初めてその音を聞いたのは、お隣の家が引っ越ししてすぐの事だった。
お隣には80歳くらいのおばあちゃんと娘さん夫・・・

0

とんかつ兄弟 〜虹色のほっぺ〜

12/06/11 コメント:0件 つばきとよたろう 閲覧数:2793

 我が家には、外食する時に一つの決まりごとがあります。料理はみんな同じ品を注文するというものです。これを誰かに話すと、自分で好きな物を選べる方が良いと言われます。それはそうですが、家族みんなで同じ物を食べる。それが良いのです。一緒のものを食べることで一体感が生まれ、家族の絆が深まります。それにみんなが公平に扱えるわけです。注文した料理が運ばれてきますと、出て来た料理への感嘆とこんな言葉がときどき漏・・・

5

アイサと首切り半蔵

13/09/25 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2792


 黒崎半蔵は女性アイドルグループ、ヤンレディ18の地方公演を終わらせ、今会場から30キロ奥地にある山里へと車を走らせている。と言うのも、十年前トップアイドルだったアイサに会いに行くためだ。
「確かにあの時、彼女を退団させてしまったが……」
 曲がりくねった山道を運転しながらも、当時を振り返る。

 煌めくステージ上に18人の少女たちがいた。まさに活き活きと、軽快なリ・・・

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火が消えて

12/08/08 コメント:0件 野村レトリクス 閲覧数:2791

 月の夜、神殿への道をふさぐようにしつらえられた天幕の中に、ふたりの男がいる。若い兵士と中年の上官だ。彼らの部隊の任務は戦ではなく工事であり、夜警も形ばかりだ。
 ふたりは小さな机を挟んでいる。机には木の板が置かれ、赤と黒の木片がまばらに配されている。上官は身を乗り出し、板や木片をなめ回すように見る。兵士は上官の禿げた頭を見る。板の脇には灯りが置かれている。油を満たした小皿の端で小さな火が揺・・・

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風にのって

12/09/03 コメント:0件 kou 閲覧数:2790

 ハーフタイムを迎えた。
 ロンドンパラリンピック「ゴールボール」決勝 アメリカ×日本は静かに幕を開け前半終わって、2−0とビハインド。
「諦めるな」綾子は白い紙、いや、黄ばみかかった紙に刻まれている文字を見つめながら頭にその言葉を連打した。
「綾子、鈴に思いをぶつけろ」と観客席から婚約者である勇太の声が響き、綾子は声のする方に身体の向きを変え笑顔で応えた。その直後、審判員の笛が・・・

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