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5

偏頭痛の男

14/11/08 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3039

 石田君は今日も機嫌が悪い。
 苦虫を噛み潰したように眉間に縦皺ができている。大声で話し掛けようものなら、険しい顔で睨みつけられる。
 石田君は偏頭痛持ちである。
 一週間の半分は頭痛に悩まされている。時に雨が降りそうな天気では気圧が下がるので、特に酷いという。激痛に嘔吐することもあるらしい。
「もう、俺に効く鎮痛剤はこれしかないんだ」
 薬剤師のいる薬局でしか買えな・・・

3

フォールティア

12/07/25 コメント:0件 kou 閲覧数:3030

さあ、鐘が鳴る、鐘が鳴る。ツールドフランス第21ステージ、パリ・シャンゼリゼも残り一周」実況が興奮し、「笠原、笠原来い。抜け」と解説者が解説を放棄し私情を挟んだ。
「先頭集団に日本人の笠原!笠原が所属するチーム名は『フォールティア』ラテン語で勇気<Gース笠原はレース前、記者団から低迷するチームに秘策はありますか?と問われ、大丈夫ですよ。勇気って連鎖しますから。それに勇気っていい言葉ですよ・・・

0

12/05/29 コメント:4件 AIR田 閲覧数:3028

男性は生涯で二度結婚することが出来た。
一度目は山から落ちる冷たい風と川の石。
二度目はビルの隙間から吹く風と道の石。

 「結婚して下さい」
  この言葉は過去に男性が女性に言ったことに間違いはないが、
「結婚して下さい」
  今その言葉を向けられた相手は道端に落ちているただの石だった。
&・・・

6

眼鏡をかけた、頭が良くない小学生のディアレクティークに身を寄せて

15/05/01 コメント:9件 クナリ 閲覧数:3025

 高校二年の秋の合唱際を控えたある日のHR。先生が、
「バイオリンが弾ける人はいない? 今度の歌では、ピアノに加えてバイオリンも演奏に欲しいの」
とクラスに呼びかけた。
 首を縮めている私の後ろで、誰かが声を上げた。
「村瀬さんが昔やってました」
 ふざけんな、と叫びたくなる。
「村瀬さん、そうなの。じゃあお願い。ピアノは前に決めた通り、杉村君ね」
 杉村・・・

8

アゲインエレベーター

12/11/10 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:3024

 男はベッドに横たわっている妻を車椅子に乗せると、そっと病院を出た。誰にも見られなかったことは、男にとってラッキーだった。医師の許可なしに、意識不明の妻を外へ連れ出すなんて許されるはずがないだろう。追いかけて来る者がいないかと、何度も後ろを振り返りながら、男は駐車場へと急いだ。車を走り出させ男は、ほっと安堵した。ハンドルを握る男の手は、冷や汗でじっとりと濡れている。
「安全運転だね、綾子、も・・・

1

コノ世界カラ架空ガ消エタ理由

13/03/16 コメント:2件 汐月夜空 閲覧数:3023

 黄昏色に染まった世界をチーコとシリエが歩く。
 草原を抜け、入り組んだ森を抜け、一本の大樹のふもとを目指して。
 二人は懸命に歩みを進めていく。
 いつからだろう。チャポン、チャポン、とチーコの腰元に下がるひょうたんの音だけが二人の空間を満たしているのは。
 会話らしい会話なんてとっくの昔になくなっていた。どちらかがよろけたり、転んだりしない限り、チーコとシリエは言葉も交・・・

8

夜に光る三白眼

14/07/18 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3021

まだ、夜が明けきれない真っ暗な街の中。

自転車のペダルを漕いで、自分は朝刊を配るアルバイトをしていた。
――後、三十分もすれば朝日が昇るだろうか? 
なんだか小雨も降ってきて、早く朝刊を配り終えて家へ帰りたい。
真っ暗な街はいいようもなく不気味で、仄暗い路街灯だけが頼りなのだ。

前方から、透明のビニール傘を差した若い男が歩いてくる。

こん・・・

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ふられた女にふる雨は

12/04/21 コメント:2件 デーオ 閲覧数:3020

 いまいましい雨だ。意地でも止むまいとでも思っているように、降り続ける。
 この雨が振られた私に優しく涙をさそう筈、本当は泣いてしまうシチュエーションなのに、悔しさがいつまでもおさまらない。

「ごめん! あなたとずうっと付き合って行く自信が無いんです。ボクにはもったいなさ過ぎます。あなたなら、ボクよりずうっといい男が見つかりますよ」

 ボクだってぇ、あの顔で、あの・・・

6

隣りの小豆洗い

14/12/18 コメント:9件 みや 閲覧数:3017

高校受験を間近に控え受験勉強という名目の夜更かしをしている僕の耳に、お隣の家からまたあの音が聞こえてきた。

ショキショキ ショキショキ ザー ショキショキ ショキショキ ザー

また来てくれたんだ、と僕は嬉しくなって自分の部屋から飛び出した。

初めてその音を聞いたのは、お隣の家が引っ越ししてすぐの事だった。
お隣には80歳くらいのおばあちゃんと娘さん夫・・・

9

幻の蝶々

14/10/12 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3012

 平凡な家庭のリビングに油彩画を飾る。
 マリ・タチバナという世界的に有名な画家の作品で、これが遺作となった。
 パリのアトリエで、この絵を描き上げ、絵筆を握ったまま眠るように彼女は死んでいた。外傷はなく自然死だと報道された。
 そして日本にいる私の元へ、この絵を届けて欲しいとメモが残されていた。マリ・タチバナのエージェントは方々手を尽くして、やっと私を探し出した。
 この・・・

4

サーカス婚

13/03/13 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:3012


「どうしたいの?」
 愛莉の手に力を込め、智也は訊いた。しかし、ブライダル・プランナーが自信たっぷりにまくし立てる。
「最近、スマ婚や楽婚が流行ってますが、当社が開発しましたサーカス婚、これがお二人の門出としてお値打ちですよ」
 智也は横槍にムッとしたが、ここは冷静に。
「マキコさんでしたよね。それって何がお値打ちなんですか?」
 こう確認すると、マキコ姉さん・・・

5

海耳

15/05/16 コメント:6件 くにさきたすく 閲覧数:3012

「大丈夫だよ。もう慣れた」
 息子はぶすっとしている。小学校に上がったばかりだから仕方のない事なのかもしれないが、母親としては気が気じゃない。
「何を言っているの。重い病気だったらどうするの? 耳が聞こえなくなってもいいの?」
「でも何か怪しい」
「変なこと言わないの。やっと見つけたお医者さんなんだから」
 私は息子の手を引いて古びた木造家屋の扉を開けた。

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君の袖

12/04/03 コメント:1件 南リンゴ 閲覧数:3010

「ちーまーきー食べ食べー兄さんがー」
 高見がのん気に『背くらべ』を歌いながら、ヨモギを摘んでザルに入れている。その隣で、眠そうな石塚が同じくヨモギを摘んでいる。
 本日は晴天なり。太陽はまだ東側を上っている。春だ春だとついさっきまで騒いでいたのに、暦の上ではもう立夏だ。額に汗がにじむ。
 ゴールデンウィークの真っただ中、何が悲しくて大学生3人が河川敷でヨモギ摘みをしているのかと・・・

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記念日スイーツ

13/11/13 コメント:25件 草愛やし美 閲覧数:3010

 私は、ケーキを焼いている、スポンジケーキだ。さっき、クッキーも焼けた。香ばしい匂いがキッチンに漂よっている。


 夫に三か月前、離婚を言い渡された。その夜、夫に何を言ったかよく覚えていない。たぶん、罵ったのだろう。夫に女の影を感じてから、もう一年以上になる。夫は、その夜から、平気な顔をして夜遅く帰ってくるようになった。居直ったのだろう。離婚の理由を散々問いただしたが、愛がなく・・・

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消灯させない

12/05/18 コメント:0件 isoco 閲覧数:3007

 お賽銭箱の前で、幽霊に声をかけられた。
 初対面の幽霊である。それなのに、久しぶり、会いたかったよ、などという。メガネをかけた薄い顔立ちをした男性だ。身の危険を感じ、即座に逃げようとするも肩をつかまれた、はずなのに彼の手は私の体を通過した。彼は透けているのである。

 一万円札をお賽銭箱にいれ、再生させたい者の名前を唱えながらお参りすると、その死者を蘇らせることができる。ここは・・・

9

ドッペルゲンガー【もう一人の私】

12/12/18 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:3006

 高校3年のある一時期、私には身に覚えの無いことで注意を受けたことが続いた。
その内容には奇妙な共通点があった。
それは、本来私が居るはずのない所に私が居る、というもので、事の始まりは生活指導の先生に呼び出されたことだった。
放課後、指導室に呼び出され訪れた私に先生は「お前みたいに今まで問題なんか起こしたことない奴が、珍しいことをしたもんだな。」と不思議そうに話し始めた。
・・・

13

転がる宝石のように!

14/06/05 コメント:21件 草愛やし美 閲覧数:3006

 悦子は、先程から洗面所に閉じ籠っている。鏡の前で、しきりに顔の表情を変えていく。大きく口を目いっぱい開け、「あいうえおー」喉の奥まで見えるようにと手鏡を持つ手にも自然と力が篭る。口角を引き締める美容法だ。これを毎日やれば豊齢線など、への河童だと心に言い聞かせる。鏡の中の自分の顔の老いに気づいてもう何年になるだろう。若い頃、自画自賛できるほど、綺麗だった。道をゆけば、振り返る男もいた――はず、そう・・・

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恋よりカツサンド!

14/11/03 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:3003

 4時間目終了のチャイムと共に教室から飛び出して、学校食堂へ続く渡り廊下を猛スピードで走っていた。
《早くいかないと売り切れる!》先生に廊下を走るなと注意されても今だけはきけない。――全力疾走するアタシです!
 月に一度の食堂のおばさん『気まぐれカツサンド』の売り出し日なのだ。
 限定10食、お一人様1パック限り、値段は280円と激安、大人気ですぐに売り切れる。販売は不特定で食堂・・・

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君のファンクラブ

14/02/18 コメント:21件 泡沫恋歌 閲覧数:3002

「君のファンクラブ作ったから!」
「はあ?」
 私、高瀬未菜(たかせ みな)高校二年生、容姿は並。放課後の教室で、いきなり幼馴染の同級生章太(しょうた)そんなことを言われた。
「ファンクラブって? 私ってば普通の女子高生だよ。――で、メンバーは誰?」
「B組の伊藤誠と俺」
「たった二人?」
 伊藤君とは吹奏楽部で一緒だけれど、特に意識したことない相手だった。

5

再生は、喪失の中で

13/10/12 コメント:8件 クナリ 閲覧数:3001

睡眠薬なしでは眠れなくなってから、どれくらい経つだろう。
二十代も終わろうとしている今、働きもせず、私は狭いアパートの隅で、虫のように暮らしていた。
水商売をしていた頃には堅気じゃないお客も来て、時には物騒な都市伝説を教えてくれもした。
「人殺しが死ぬ間際には、走馬灯の中に必ず自分の殺した奴が出て来るんだと」
刺激的だったのは、話ばかり。
今は荒れた畳の上に転がり、カ・・・

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愛妻は…自己中の女神さま?

13/08/10 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:3001


「あと一時間くれない?」
 大輝の愛妻、美月がねだってきた。
 たまの休日、二人でゆっくりと美術館巡りをするつもりだった。それが朝起きてみると、美月が急にデパートに行きたいと言う。
 こんな予定変更はいつものこと、大輝は慣れている。それにしても、デパート滞在一時間のつもりがさらに一時間追加、そしてプラス一時間、なんと三時間目に突入しつつある。
 最初美月のショッピン・・・

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その灰が轍(わだち)に降り積もるまで

16/02/29 コメント:8件 滝沢朱音 閲覧数:3001

 幽霊が去ったあとには、塩をうんと濃く溶かした水を作ることにした。それを鉄階段の錆びた部分にかける。お清めにもなるし、塩分は錆を進行させるらしいから一石二鳥。ロシアン・ルーレットだ。

「鉄は、錆びたほうがむしろ安定する。そのままだと極めて不安定な物質なんだ」
 黒沢はそう言いながら、黒板に『酸化鉄』と書く。あたしは最前列の席に座りながらノートも取らず上の空で、右手は頬杖をつき、・・・

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失敗メガネ

17/03/26 コメント:3件 ササオカタクヤ 閲覧数:2999

僕はある日、友人から不思議なメガネを貰った。
「このメガネ、お前にやるよ。このメガネは不思議なメガネでさ、かけるとこの先の未来が見える代物なんだ」
友人がくれたメガネは未来が見えるメガネ。未来といっても失敗する未来だけが見える不思議なメガネだった。
失敗する未来を事前に確認することで、失敗しない未来に向かうことができる。まさに夢のような道具を僕は手に入れた。
ただこんな夢の・・・

9

浅草の寅

13/04/22 コメント:18件 泡沫恋歌 閲覧数:2999

てやんでぃ! おいらは三代続いた浅草生まれの野良猫だぜぃ!
『浅草の寅』と言えば、この辺りでは知らない者はいねぇー。爺さんの代から、浅草寺から花やしきにかけてはおいらの縄張りだ。今日も子分をひき連れてシマの見回りに出掛けるぜぃ! 
おや? 雷門の下に見慣れない猫がいるぞ。
「やいやい! てめぇ、どこのシマのもんだぁ?」
子分のクロがいきなり脅しをかけた。
「あっ! ゴ・・・

7

死者からのサプライズ

13/06/27 コメント:17件 光石七 閲覧数:2998

 小堂探偵事務所に一人の女性が訪ねてきた。
「小堂君、久しぶり」
いきなり君付けで呼ばれ、小堂は当惑した。
「失礼ですが、どこかでお会いしましたか?」
カッコ悪いと思いながらも、小堂は聞き返さざるを得なかった。
「私です。Y高校で同じクラスだった、今川結衣です」
「えっ、今川さん?」
確かにそんな名前の女子が同級生にいたが、まるで印象が違う。
「わか・・・

8

蘇るベートーベン

15/01/30 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:2998

「セラ、僕はベートーベンを蘇らせるのに成功したんだ」
「嘘、二百五十年も前の人だよ」
「あれほどの才能を持ちながら、五十六歳で死んだベートーベンは、死亡前に難聴の原因を調べるため、自分の解剖を依頼していたのさ。ヨハン・ワグナーという医師がベートーベンの家で解剖をやった、だから、遺体は残ったってことさ」
 ケンは手元にある本を読み始めた。

「1827年、難聴に苦しみ続・・・

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老いてもなお虎

13/04/25 コメント:9件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:2997

 相方の上原が、就職を機にアルバイトを辞めることになった。
 そして、その代わりに店長が連れてきたのは、どう見ても定年を過ぎた男性だった。




「前にも教えたと思うんですけど、弁当を温めるときはソースを外してくださいね」

「そうやったな、すまんすまん」

 口では謝罪を述べつつも、反省の色無しという具合に笑顔で応じる赤松さんを見てい・・・

4

昇神の儀

13/08/06 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2997


「ただ今から新設備の竣工式を執り行います。一同ご起立願います」
 本日の司会を担当する庶務課長から第一声があり、竣工式が開始された。
「神前に向かって、拝礼願います」
 出席者全員は「拝礼!」と言う掛け声と同時に祭壇に向かって厳粛に頭を垂れた。
「直れ! ご着席下さい」
 祭壇に一番近い席にゆっくりと腰を下ろした高見沢一郎、その表情には安堵した胸の内が伺われる・・・

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しあわせー!

13/02/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2997


 バリバリバリ……、ドカーン!
 朝方の薄暗い部屋に霹靂(かみとき)の電光が走り、天鼓(てんく)が轟き渡る。近くで落雷したのだろう。
「ウッセイなあ」
 ベッドの中で、高見沢一郎は不機嫌に独り唸り、重い瞼を開けた。
 そして……ギョッ!
 口から心臓が飛び出すほど驚いた。
 ベッドの脇に、一人の男が……立っているではないか。
 さらに高見沢は度肝を・・・

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恋の落人

12/06/20 コメント:0件 tahtaunwa 閲覧数:2993

「ここ耶馬溪町の雲八幡神社で行われる河童祭りには、およそ300年の歴史があります。
源氏に敗れた平家の落人の妄念が河童となって悪さをしていたため、その霊を鎮めるために始まったのが・・・」
 レポートをしながら切ない気分がこみ上げてきた。戦に敗れて逃げてきた落人か・・・。
まるで私みたい。すっかり結婚する気でいたディレクターの彼氏を後輩アナウンサーに略奪された。実際には彼が若い娘に・・・

1

さかなや書店

12/11/09 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:2991

「いらっしゃ〜ぃ、そこのお兄さん、今日は新鮮だよ! やっと世に出たミステリー、現代夢幻物語というお魚だ! ノルウェイとはちと違う、不思議な味だよ。さあお兄さん、ワンコインで一匹どうだい?」

 たまの休日、高見沢一郎は遅めの昼食を取ろうと、アパートから一駅向こうの商店街に出掛けてきた。そしてこんな威勢のよいかけ声で、店の前に立つオカンから呼び止められた。そのお母さんは前掛けをし、鉢巻き・・・

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恋はラーメンの味

13/05/20 コメント:17件 光石七 閲覧数:2991

 夫が夕食は外で食べようと言うので、娘を呼びに2階へ上がった。声をかけようとしたが、中から何やら音がする。ガタッ、ドン、チャッ――。
「あーん、どれにしよ? 全然決まんないよお……」
娘の困ったような声が聞こえてきた。私は思わず微笑んでしまった。明日、娘はボーイフレンドと初デートに行くらしい。行先は水族館。きっとどの服を着ていくか、迷っているのだろう。時代は変わっても、好きな人のために・・・

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純金の名古屋巻き

13/06/03 コメント:5件 草愛やし美 閲覧数:2989

 男は、さきほどから、喫茶店のテーブルに置かれた皿と睨めっこをしたまま微動だにしない。皿に盛られているのは「あんかけスパゲッティ」、最近、有名になりつつある名古屋B級グルメの一つだ。今朝、喫茶店の開店と同時に入ってきた男は、モーニング全種類を注文した。ウエイトレスは、後から、連れが来るものと思って注文した品を運んで行った。
 ここは、名古屋駅傍の、とある喫茶店。名古屋名物のモーニングで有名な・・・

2

クラスメイトは孤独に歌い

13/09/25 コメント:4件 タック 閲覧数:2989

 商店街は空気さえも色を失ったようだった。無味乾燥なシャッターが景色の多くを占め、活気を生む声も人々の行き交いも無く、悲しい静寂だけが、荒涼とした場を満たしている。崩壊に向かっているのが分かりながらどうにもできない、そんな諦観に、壊れかけの街は包まれていた。
 細々と、僅かに残り続ける古くからの店。その一つである肉屋に向かう最中、ひどく音割れのした時代遅れのポップスが耳に入った。さびれた雰囲・・・

2

瓶ビール

12/03/28 コメント:1件 Minakami 閲覧数:2988

 あれは誰だったろうか。名前なんかもとから知らなかっただろう。小太りの中年だった。青い作業服を着ていたから、きっと派遣の労働で知り合った男で、作業が終わった後一杯誘われたのだろう。派遣労働の現場でタイムテーブルは存在こそすれ、ないようなものだった。大体の場合において大袈裟に早く終わるかまたは深夜まで残業をこなして終電を逃すかであり、規定の時間ちょうどに終わる現場なんて滅多になかった。

9

モーツアルトは聞きたくない

14/02/07 コメント:19件 朔良 閲覧数:2985

 うん。もう駄目だ。終わりにしよう。僕はモーツアルトにはなれない。

 再生の終わったDVDの静止画面を眺めながら、僕は眼鏡をはずして手の甲で目をこすった。
 終わりにすると決めたくせに未練がましく、「夏の演奏会、一緒にやらね?」と匠から渡された音楽ファイルを開く。
 流れてきたのは皮肉にもモーツアルトだった。

 モーツアルトを連弾とかどんな嫌がらせだ? と毒・・・

3

ある橋の下で

13/08/19 コメント:3件 佐川恭一 閲覧数:2983

 まったくねえ、神様なんてものがいるはずないんですよ、もしいたなら、私がこんな目に遭ってる理由がわかりません。私はね、昔ちゃあんと働いてたんです、女房と一人娘がいて、慎ましくも幸せな生活を送っていたんですよ。それなのに、私が証券会社に騙されて借金背負わされると、女房は娘と逃げちまいました。私は借金がばれて会社もクビになって、まったくの無一文。毎日借金取りに来られてどうしようもなくなって、強盗に入っ・・・

5

どこかへ消えたいちごゼリー

13/06/21 コメント:7件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:2982

 四時間目の終了のチャイムとともに、クラス一腕白な太一が声を挙げた。
「きょうの給食、なにが出るかな!」
 すかさず委員長の有紀が答える。
「ごはん、牛乳、春雨スープ、八宝菜、……そしていちごゼリーよ」
「いちごゼリー!」
 五年一組の教室中の男子一同が、有紀の答えを聞いて歓声を上げる。
「そう、いちごゼリー。今日は入学おめでとう献立だから」
「いらない奴・・・

2

真希と祐子

13/02/04 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2981


「故郷のシュークリーム、もう一度食べてみたいと言ってたでしょ。だから、行ってきたら」
 なぜか突然、真希が悲しそうに囁いた。だがそれで直樹は背中を押されたのか、出掛けることにした。

 母子家庭で育った直樹、暮らしは貧しかった。それでも中学時代までは楽しかった。高校生活は味気なく、振り返りたくもない。なぜなら高校受験で直樹の心に刺が刺さってしまったからだ。
 それで・・・

3

そしてあなたに最大の裏切りを

16/09/03 コメント:4件 日向 葵 閲覧数:2981

 雨が降っていた。

 川沿いを歩く私の手には、傘の代わりに、一枚の用紙が握られている。緑の文字が印字されたその紙には、夫の名前と判が押されている。天を仰いだ。顔を叩く軽い雨粒が束となって私の頬をなぞった。脇を流れる藍鼠色の川は、うねり、荒れ狂っている。それはまるで私の心の声を代弁しているようで、思わず吸い込まれそうになる。
 ふと、土手にシロツメクサの群生を見つけた。灰色の景色・・・

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At the night of Christmas

12/03/20 コメント:0件 南リンゴ 閲覧数:2979

 アンチクリスマス!
 いつからケイケンなクリスチャンになったんだ、俺のプロスティチュート達は。この季節になると女どもは思いつく限りの贅沢な暴言を吐く。俺はベッドが温かければそれでいい。
 今年の冬は寒い。ダークグレーのロングコートも値段のわりには役に立たない。天にまします我らの父よ、イエスは飯屋にも必要ないこの国で俺は何に救いを求めればいい?
 こんな日でもミスフォーチュンテラ・・・

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颯太の夏休み

13/07/30 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2979


 夏という字に、悪魔の魔、ちょっと恐ろしい名前を持った夏魔(なつま)。彼女は颯太のオフィスで働く優秀な派遣スタッフだ。服装も髪色もいつもツートンカラー。いかにも派手で活発そうだが、その外見に反し、立ち居振る舞いはおしとやか。もちろん口数は少ない。
 コミュニケーションは社内メールのやりとりと、流し目だけでこなす。そんなミステリアスな夏魔に恋心を抱いてしまった颯太、断られて元々、夏休み・・・

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とんかつ兄弟 〜虹色のほっぺ〜

12/06/11 コメント:0件 つばきとよたろう 閲覧数:2978

 我が家には、外食する時に一つの決まりごとがあります。料理はみんな同じ品を注文するというものです。これを誰かに話すと、自分で好きな物を選べる方が良いと言われます。それはそうですが、家族みんなで同じ物を食べる。それが良いのです。一緒のものを食べることで一体感が生まれ、家族の絆が深まります。それにみんなが公平に扱えるわけです。注文した料理が運ばれてきますと、出て来た料理への感嘆とこんな言葉がときどき漏・・・

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悲劇のバレンタインデー

13/01/22 コメント:6件 yoshiki 閲覧数:2973

 ――外は淡い水色の雪景色だった。地上の濁った大気が天界で清められ、雪となって地面に降り注いでいた。
 刑務所の屋根が薄っすらと白んでいる。丈高い塀には有刺鉄線が張り巡らされていた。
 刑の執行日であった。牧師が独房に入り囚人は最後のひとときを迎えようとしている。
「思い残す事はありませんか」
 初老の牧師が落ち着いた口調で囚人に語りかけた。囚人はただぼんやりと壁を見つめて・・・

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名の有る人

12/04/04 コメント:2件 T・F 閲覧数:2972

 お通夜のような店内で、禿頭の店主は深い息を漏らした。どうしたもんかと悩んでいると、一組のカップルが入ってきた。店主は緊張のせいか、腕を絡める若い彼らに、「い、いらっしゃい!」と歯切れの悪い挨拶をかけてしまった。
 カップルは店内を見渡した。偶然立ち寄った居酒屋の中は案外広く、一目見て分かるほどの満室で、繁盛しているように見える。ただ、活気が無いのが不可解だった。これは座れないなと判断し、互・・・

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偽りのテーブル

15/04/20 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:2970

 「いただきます」と手を合わせて、今夜も母の用意してくれた夕食を、私は食べ始める。
 しゃけの塩焼きが三人分。筑前煮も三つの小鉢に盛り付けられてテーブルの上に置かれている。ご飯茶碗も、汁椀も箸も三人分。母と娘の私と、それから父の分だ。
 ◇
 父が病気で亡くなり、一ヶ月ほど経った頃だった。母がこうして父の分まで作り始めたのは。
 最初、母は笑ってごまかした。
「いやあ・・・

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赤い傘と彼岸花

16/08/17 コメント:6件 デヴォン黒桃 閲覧数:2969

 
「刑事さん、ドウカ聞いて下さい。アノ八月の半ばに起きたひき逃げ事件の犯人は私で御座います。ドウヤラ私は呪われて仕舞ったのか、頭がオカシク成って仕舞ったのか定かでは御座いませんが、居ても立っても居られなく成り、出頭した次第で御座います。アノ日は雨が降って居りまして、月は群雲が掛かっており、暗い夜で御座いました。言い訳しても致し方御座いませんが、視界が悪かったので御座います。ソコへ急に、赤い・・・

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週末は、とんかつマジック

12/05/25 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2965

「明日はとっておきの手品、とんかつマジックを見せよう」
 ある週末の前の日、突然お父さんがそう宣言をしました。テレビを見ていた子供たちは驚いた顔をして振りかえってお父さんを見ました。
「何? 何なのお父さん、とんかつマジックってなぁに?」
「とんかつを食べにいくぞー」
 一斉に子供たちは歓声をあげます。
「やった〜〜とんかつだ!」
「とんかつ、とんかつ、凄いよお・・・

4

ヴィルトゥス

12/11/12 コメント:2件 高橋螢参郎 閲覧数:2965

奴隷メムノンはその日も大型闘技場の地下で、歯車を回していた。
彼らの回す歯車は昇降機を動かし、剣闘士や猛獣といった、ありとあらゆる暴力をコロッセオの舞台へと送り出すのだ。
学や富こそないにしろ、それでも奴隷としては幸せな部類だ。命のやり取りに晒されはしないし、日に何度かの試合のあるまでは、待機させられている事の方が多かった。
呑気に談笑する他の奴隷を尻目に、メムノンは独り悩んでい・・・

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鋭い目

13/07/01 コメント:5件  閲覧数:2965

僕の近所には探偵がいる。探偵といえば、よくテレビで華々しく活躍しているけど、僕は知っている。探偵とは、もっと地味なものだ。
実際、近所の探偵は、こじんまりとした事務所兼自宅にいて、表にでている看板も控えめな大きさで申しわけなさそうにたっている。そんな事務所にいる探偵も探偵で、見た目はどこにでもいそうな普通のおじさんだ。むしろ、昼夜かまわず、コンビニ弁当を持って帰る姿ばかりみかけるので、探偵と・・・

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