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誘蛾灯

14/02/24 コメント:17件 朔良 閲覧数:2949

 網膜に焼き付く青白い光。
 ジジジ…と低い唸りを漏らす誘蛾灯の無慈悲な輝きに魅せられて、ぱちんと命が爆ぜる。



 ガラス張りのカフェに冬の光が差し込む。スマホから着信音が響いて十分。そわそわと視線を泳がせる奈緒子さんを見て潮時を悟る。意地悪はこのくらいでやめておこう。
「先輩、どうしたんです? 何か心配事でも?」
「う、うんん、そんなんじゃないの」・・・

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ホームスイートホーム

12/09/23 コメント:12件 そらの珊瑚 閲覧数:2947

「家族にならへん?」突然話しかけられて僕はびっくりした。というのもこの駅に住むようになってから一ヶ月、人に話しかけられるのは初めてのことだったから。同時にとても嬉しかった。その言葉の意味はよく分からなかったけれど。
「僕の事、見えるの? お、おば、いや、おねえさん」
「気ィ遣わんでええよ。僕から見たらしじゅうって立派なおばはんやろ。私、茜。茜色って知ってる? 夕焼けの色っていう意味や」・・・

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幻のオリンピック

12/08/29 コメント:0件 高橋螢参郎 閲覧数:2945

1980年5月。俺の最後の夏は始まる前から終わりを告げられた。
ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻を受け、西側諸国はこの夏のモスクワオリンピックをボイコットした。アメリカの子分である日本もその例には漏れず、俺の100m走代表選手の内定は事実上取り消された。
それでも俺は、今日も市営グラウンドの端っこで独りウォーミングアップを続けていた。腿を上げ、腱を伸ばし、少しでも速く走るというその一点・・・

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気持ちよく酔った夜、かれらは

12/03/21 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2944

アキラはとなりの男性客をちらとうかがった。

カウンターに彼がついてすぐ、その客が座った。
ひじとひじがふれあう間にいながらふたりは、しばらくのあいだだんまりをつづけた。
このきまづい沈黙から解放されようとおもってアキラは、グラスの酒を空けた。2杯、3杯………
みると、となりの客もおなじように、アルコールを流し込んでいる。

そのうちふわふわした気分になっ・・・

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へたれ新婚さん奮戦記

13/05/17 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:2944

 新婚旅行から帰って、すぐ月曜日が来て相方が新居から会社へ出かけた。いよいよ本当の新婚生活が始まったのだ。相方の帰宅時間に合わせて夕飯を作る。初めての夕飯のメニューは、ハンバーグ、相方の大好きなメニューと聞いて決めていた。大きなハンバーグをこねこねしてハート型にまとめる。焼き加減や付け合せなど細心の注意を払いかなりの時間をかけて作った。
 焼いている間に、どんどんハンバーグは膨らみ、ハートな・・・

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美しく、したたかに

15/07/27 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:2941

 世の中に『美人薄命』という言葉がある。
 美しい女性は得てして寿命が短く、容貌が衰えない内に死んでしまうという意味だが、実は美人で長命な方もたくさんいる。

 いつか時空モノガタリのテーマが【 美女 】になったら、この女性のことを知って欲しいと思っていました。
 その女性の名は常盤御前(ときわごぜん)、あの有名な源義経(みなもとのよしつね)の生母に当る人です。
 常・・・

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夢を叶える空港

15/01/23 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2935

「じいちゃんは日本の田舎で米作ってます」
 そう言おうと思ったが強張った口から声が出てこない。頭の中が真っ白で、Grandpaしか出てきやしない。とにかく、気持ちをわかってもらわなくては。ここしかないんです──I do my best here!

 つい数日前の僕はニートだった。地方とはいえ、国立大学を卒業したのに何度目かの公務員試験に失敗。そこから悶々とするニートの日々が始ま・・・

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【 天孫降臨 】御一行

14/10/06 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:2934

 これは昔々の神話の世界、登場するのは日本の神々です。

 高天原(たかまがはら)というところに神様たちが暮らしておりました。一番偉いのは太陽神の天照大御神(あまてらすおおみかみ)という女神です。弟は須佐之男命(すさのおのみこと)といいますが、暴れん坊で乱暴狼藉の限りを尽くします。そのせいで姉のアマテラスは天岩戸(あまのいわと)に隠れてしまいました。太陽を失い世界は真っ暗闇になり、邪悪・・・

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ダンゴ虫学級

14/11/13 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:2934

 僕は懸命に足を動かす、短足でゆっくりとしたものだが足取りは力強い。ここは快適、あいつもあの子も、行ったり来たり。同じ道のようで、みな違う線を描いている。平等を味わうことは心地良いと知った。全て世は事もなく、あるのは、絵の具で塗りたくられた山と海のみ。
 ◇ 
 転校生の平安君は、黒板の前にヌーと立ったまま、下を向いたままだ。初めから苛めの対象だって僕にはピンときた。僕も苛められてきた・・・

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雛の日

13/02/28 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2933

 雛の日が、巡ってきた。一人娘、雛の生まれた日だ。だが、今年の雛の日に、娘はいない。僅か十歳で逝ってしまった。長く生きることが叶わないとわかっていた……そのはずだった。だが、この空しさはどうすることもできなかった。胸が痛く、心は空っぽだったが、それでも、何とか耐え、私は生活していた。
 去年の雛の日、私たち夫婦は、病院から雛を連れて帰った。雛人形が飾られている居間を見た雛は、たいそう喜んだ。・・・

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太陽のせい ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/03/22 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:2928

 女流ミステリー作家・胡蝶乱舞が新幹線こだま号で絞殺された。このニュースで世間は大騒ぎとなっている。
 胡蝶は、例えば執筆しようとする殺人事件、それは現実に可能か、また論理性があるかを徹底的に検証すると言われている。そのせいか根強い人気がある。
 反面、胡蝶が抱えるストレスは大きく、今回気晴らしにと、京都駅午後2時05分発のこだま662号に乗り、熱海温泉へと一人向かった。
 新幹・・・

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ラヴァーズ コンチェルト

12/12/03 コメント:17件 そらの珊瑚 閲覧数:2925

 暗い海の上に白い月が浮かんでいた。ゆるやかなレールが海岸線に沿って伸びている。アオイを乗せているこの夜汽車が進むみちのりがそこにあった。
 ──あれは未来なのだ。
 人もこんなふうに進むべきレールが見えればどんなに楽か。

 トンネルに入ると車窓は鏡になる。四十女がそこに居た。ステージ用の濃い化粧を落としてみれば、それなりにくたびれた素顔があって、ほんの少し失望する。

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大雪山伝奇 雪女と雪ん子

12/10/13 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2922

 雪ん子は雪女の娘、雪女が愛した男との間にできた子。だが、彼女が愛した男は人間だった。素性を知られた雪女は愛する男の元を去らねばならなかった。
 雪女は北国に聳えるふるさと大雪山に戻り赤子を産んだ。大雪山は雪神の支配する国があった。雪女の父でもある雪神は雪を操る雪族の当主だ。雪ん子と名づけられたその娘は、人間にも雪族にも属さない子ゆえ、そこに住むことは叶わない運命にあった。雪女は、生まれてす・・・

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とんかつは和洋折衷

12/06/06 コメント:0件 リンメイ 閲覧数:2922

 摩天楼の立ち並ぶ新宿。
 大都会東京の中でも特に都会らしい場所だ。
 そんな摩天楼のひとつ新宿NSビル。その中に「とんかつ伊勢」はあった。
 週末の夕食時なのでお店は混雑していた。
「愛ちゃん、こっちだよ」
 メガネをかけてヒョロリとした青年が、店に入った私を見つけて手を振る。
 彼の名は正一君。一応、私の彼氏だ。
「ごめん、おそくなっちゃった」
・・・

1

コノ世界カラ架空ガ消エタ理由

13/03/16 コメント:2件 汐月夜空 閲覧数:2922

 黄昏色に染まった世界をチーコとシリエが歩く。
 草原を抜け、入り組んだ森を抜け、一本の大樹のふもとを目指して。
 二人は懸命に歩みを進めていく。
 いつからだろう。チャポン、チャポン、とチーコの腰元に下がるひょうたんの音だけが二人の空間を満たしているのは。
 会話らしい会話なんてとっくの昔になくなっていた。どちらかがよろけたり、転んだりしない限り、チーコとシリエは言葉も交・・・

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戯曲 バレンタインデー殺人事件

13/01/22 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:2919

夕焼けに赤く照らされた放課後の教室。
中央に机と椅子が置かれている。うつ伏せて学生服の男が死んでいる。机の上には丸いアーモンドチョコレートが散乱していた。
三人の女生徒たちが死んだ男の周りを囲うように立っている。

女生徒たち:キャー! 
 悲鳴をあげる。その声に舞台の袖からインバネスコートに鹿撃ち帽を被った探偵が現れる。
探偵:みなさん、落ち着いてください!<・・・

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ふられた女にふる雨は

12/04/21 コメント:2件 デーオ 閲覧数:2915

 いまいましい雨だ。意地でも止むまいとでも思っているように、降り続ける。
 この雨が振られた私に優しく涙をさそう筈、本当は泣いてしまうシチュエーションなのに、悔しさがいつまでもおさまらない。

「ごめん! あなたとずうっと付き合って行く自信が無いんです。ボクにはもったいなさ過ぎます。あなたなら、ボクよりずうっといい男が見つかりますよ」

 ボクだってぇ、あの顔で、あの・・・

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君の袖

12/04/03 コメント:1件 南リンゴ 閲覧数:2914

「ちーまーきー食べ食べー兄さんがー」
 高見がのん気に『背くらべ』を歌いながら、ヨモギを摘んでザルに入れている。その隣で、眠そうな石塚が同じくヨモギを摘んでいる。
 本日は晴天なり。太陽はまだ東側を上っている。春だ春だとついさっきまで騒いでいたのに、暦の上ではもう立夏だ。額に汗がにじむ。
 ゴールデンウィークの真っただ中、何が悲しくて大学生3人が河川敷でヨモギ摘みをしているのかと・・・

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スーパーハッカー五十嵐 誠司の完全なる世界

14/09/27 コメント:14件 夏日 純希 閲覧数:2912

俺の名前は五十嵐 誠司。世界屈指のスーパーハッカー。27歳既婚。
決め台詞は「This is my perfect world(これが俺の完全なる世界だ)!」。

ただいまハッキング中である。え、何をって?
俺の生死にも関わる最重要機密情報。つまり、

 妻の日記である。

ハッキングとは、ネットワーク経由でするものというイメージのあんた。
甘・・・

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しあわせー!

13/02/14 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2911


 バリバリバリ……、ドカーン!
 朝方の薄暗い部屋に霹靂(かみとき)の電光が走り、天鼓(てんく)が轟き渡る。近くで落雷したのだろう。
「ウッセイなあ」
 ベッドの中で、高見沢一郎は不機嫌に独り唸り、重い瞼を開けた。
 そして……ギョッ!
 口から心臓が飛び出すほど驚いた。
 ベッドの脇に、一人の男が……立っているではないか。
 さらに高見沢は度肝を・・・

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フォールティア

12/07/25 コメント:0件 kou 閲覧数:2907

さあ、鐘が鳴る、鐘が鳴る。ツールドフランス第21ステージ、パリ・シャンゼリゼも残り一周」実況が興奮し、「笠原、笠原来い。抜け」と解説者が解説を放棄し私情を挟んだ。
「先頭集団に日本人の笠原!笠原が所属するチーム名は『フォールティア』ラテン語で勇気<Gース笠原はレース前、記者団から低迷するチームに秘策はありますか?と問われ、大丈夫ですよ。勇気って連鎖しますから。それに勇気っていい言葉ですよ・・・

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象列車

13/06/03 コメント:10件 そらの珊瑚 閲覧数:2906

 名古屋の東山動物園に四頭の象がやってきたのは、みぞれがちらつくそれは寒い冬であった。

 象たちの名前は「キーコ」「アドン」「マカニー」「エルド」という。丁度名古屋に興行に来ていた木下サーカスからもらいうけたのだった。
 象たちとの別れを惜しむ象使いの少女たちは、自分の上着を脱ぎ象にかけてやる。

「元気でね」
「いつまでも忘れないよ」
「今まで、ありが・・・

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火祭り

12/06/15 コメント:3件 そらの珊瑚 閲覧数:2905

 再会というものは、どこか運命めいた香りが漂うものである。
 曜子が小椋と再会したのは、高校の同窓会であった。卒業してから二十年もたてば、男女ともそれなりに変わる。スポーツマンでモテていた男の子の頭髪が無残に薄くなっていたり、白雪姫のように美しかった女の子がすっかり太ったおばちゃん風になっていたり。 自分はどう見えているんだろう。
 それを知るのはちょっと怖い気がした。年より若いと言わ・・・

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迷人(めいじん)

13/06/07 コメント:11件 yoshiki 閲覧数:2904

 俺はその日いつものようにパソコンに向かっていた。ウェブの小説サイトに短編を掲載するのが俺の楽しみだった。しかしそう簡単に作品は出来ず、悩んだり、苦しんだりするのはいつもの事だった。やっと書けそうになって、画面に向かいキーボードに指を乗せると、いきなり肩をこずかれて俺は不愉快そうに振り返った。瞬間、俺は天井を突き抜けるくらいに驚いた。いや、本当に驚きすぎて心臓が口から飛び出てしまいそうだった。俺は・・・

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目玉焼き騒動記

15/04/20 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:2903

 騒動の発端はテーブルの上の目玉焼きから始まった。

 父は顔を洗うと朝食のテーブルに着く。献立は、ご飯、みそ汁、サラダ、そして目玉焼きだった。突然、父が大声を出した。
「おいっ、俺の目玉焼きが片目しかないぞ!」
 目玉焼きが大好きな父は、二個玉子を使った両目の目玉焼きを毎朝必ず食べている。それが、今朝は片目の目玉焼きが皿に乗っていたのだ。
「会社の健康診断でコレステ・・・

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アバドン・グール・ガール

15/03/15 コメント:9件 クナリ 閲覧数:2902

夜明けが近づくと、吐き気がする。
私と世界を優しく閉ざしていた蓋が開き、今日も空はあの、暴力的な青へと変わる。
鳥が啼き出す。
一声ごとに、私の内臓が鈍く重く、下腹部へ落ちて行く。

登校の支度は、無心になれば楽だった。
けれど、全ての準備が終わりに向かうと、思考能力が戻って来る。
お腹の中が腐り落ちる感覚が、繰り返す。
これが、いつまで続くのだろう・・・

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どこかへ消えたいちごゼリー

13/06/21 コメント:7件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:2901

 四時間目の終了のチャイムとともに、クラス一腕白な太一が声を挙げた。
「きょうの給食、なにが出るかな!」
 すかさず委員長の有紀が答える。
「ごはん、牛乳、春雨スープ、八宝菜、……そしていちごゼリーよ」
「いちごゼリー!」
 五年一組の教室中の男子一同が、有紀の答えを聞いて歓声を上げる。
「そう、いちごゼリー。今日は入学おめでとう献立だから」
「いらない奴・・・

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自転車で駆け抜けた恋

12/07/09 コメント:7件 櫻田 麻衣 閲覧数:2901

 大学生活の4年間を過ごした町は、都会育ちの私にとって驚くほど田舎だった。

 バスは1時間に1本しかなく、電車を使うためにはそのバスにさらに1時間ほどもゆられなければならなかった。交通費だって恐ろしく高額だった。友人の大半は原付か車を所有していたが、当時の私は人生の中でも最大級に貧乏だったのでそれも叶わず、どこへ行くのにも先輩から譲り受けたぼろぼろの自転車を愛用していた。

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エレベーター・ガール

12/10/25 コメント:4件 メラ 閲覧数:2901

 地下二階の駐車場から十一階の屋上まで、エレベーターは、僕の指先一つでどこにでも運んでくれる。人もまばらな火曜日の、午前十時四十五分。僕の好きな時間帯だ。でも両開きのドアが開くと、そこのは早くもエレベーター・ガールが乗っていた。
 僕は子供の頃からエレベーターが好きだった。エレベーターが上昇する時のあの感覚。重力を感じ、大きな力でちっぽけな自分が、無機質に運ばれて行くあの安心感。そしてまた下・・・

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君の知らない黒歴史

13/07/29 コメント:10件 平塚ライジングバード 閲覧数:2899

ああ、もう何でだろう。自分のことが嫌になる。軽蔑する。
僕の大大大好きな人が隣にいる。それなのに。それなのに。
「体調でも悪いの?」
心配してくれてる。
一言も喋れない僕に、彼女は優しい言葉を投げかけてくれてる。
でも、言えない。
「大腸が悪いんです。」なんて言えない。
「漏れそうなんです。」なんて絶対に言えない。
もう嫌だ。本当に嫌だ。帰る方向が・・・

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ナリヒラの夢

16/09/05 コメント:8件 黒谷丹鵺 閲覧数:2897

他人は僕の容姿をうらやむ。
僕の出自をうらやむ。
歌の才をうらやむ。
帝のおぼえめでたきこともうらやむ。

しかしながら僕は僕自身の汚らわしさを厭うていた。

欲望のままに僕を愚弄するもう一人の僕。
心にもない甘い言葉を紡いで女房や姫君を口説き、身も心も根こそぎ喰らい尽くして屍のようにしてしまう。
そのあいだ、僕は閉じこめられて震えながら僕の所・・・

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娘のアルバイト

12/09/28 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:2895

『いらっしゃいませー』
 コンビニに入ると店員が挨拶をしてくれる。
 ハキハキした明るい声で家では聴いたこともない。娘がコンビニでアルバイトしている。近所なので仕事の帰りに私もそのコンビニを利用していた。
 カウンターの中の娘は私の姿を確認したら、一瞬「ん?」って顔で、途端にムッとした表情になる。失礼ね、お母さんだってお客だよ!
 買い物カゴを持って、娘のいるレジで精算する・・・

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金魚

13/05/30 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:2894

 千秋(ちあき)がキッチンのテーブルでコーヒーを飲んでいると、玄関の方でガチャとドアが開く音がした。その後、ガチャガチャと鍵をキーケースにしまう音が……夫の和哉(かずや)が会社から帰って来たようだ。
 今年、三十二歳になる主婦千秋の家族は、夫の和哉と子どもは五歳と三歳のやんちゃ盛りの男の子がふたり。夫は真面目な性格だが全く面白みもない。不幸というほどでもないが、満たされない、物足りない、何と・・・

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箱庭舞台

15/03/10 コメント:6件 四島トイ 閲覧数:2894

 人混みの向こうに戸柿氏の小さな背中が見え隠れする。
 おかっぱ頭で髪が跳ねる。短いながらも残像を錯覚させる早足。ダブルのウエストコートが加速機能を備えた高機能装備のように見える。
 途切れ途切れに甲高い声が耳に届く。
「エキストラだからと甘くみたのか」
 そんなことありません、と喘ぐように雑踏を掻き分ける。
 冬の平日。午後の日差しが視界を白く霞め、原色のチラつく街・・・

4

サーカス婚

13/03/13 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2892


「どうしたいの?」
 愛莉の手に力を込め、智也は訊いた。しかし、ブライダル・プランナーが自信たっぷりにまくし立てる。
「最近、スマ婚や楽婚が流行ってますが、当社が開発しましたサーカス婚、これがお二人の門出としてお値打ちですよ」
 智也は横槍にムッとしたが、ここは冷静に。
「マキコさんでしたよね。それって何がお値打ちなんですか?」
 こう確認すると、マキコ姉さん・・・

2

ピエロ

13/03/01 コメント:4件 名無 閲覧数:2889

なんて綺麗なピエロだろう。
降りかかるように落ちるナイフを事も無げに
ジャグリングする。足の下には大きな玉。そ
れが危うげもなく規則的に揺れている。まる
でスポットライトのように太陽の光がピエロ
だけを包んで、落ちた影さえ洗練された動き
を真似ているようにみえた。喧騒に包まれた
サーカス場で、掻き消されもせず聴こえてく
る笛の音は一体どこから流れて・・・

2

一番人気

12/11/26 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2889

 サブは窓のそとの、張りついたように動かない星々をながめた。
 じっさいには彼のいる宇宙都市は時速数万キロの速度で惑星のように円運動しているのだが、広大無辺な宇宙のまえには、そんな数字はゼロにもひとしかった。
「サブ、なにぼんやりしてるの。もうじき新年があけようとしているのよ」
 やわらかな声とともに、背後から母親がちかづいてきた。その横には、妹のモモがたっている。
「わあ・・・

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消灯させない

12/05/18 コメント:0件 isoco 閲覧数:2885

 お賽銭箱の前で、幽霊に声をかけられた。
 初対面の幽霊である。それなのに、久しぶり、会いたかったよ、などという。メガネをかけた薄い顔立ちをした男性だ。身の危険を感じ、即座に逃げようとするも肩をつかまれた、はずなのに彼の手は私の体を通過した。彼は透けているのである。

 一万円札をお賽銭箱にいれ、再生させたい者の名前を唱えながらお参りすると、その死者を蘇らせることができる。ここは・・・

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雪鳴り

13/12/16 コメント:14件 そらの珊瑚 閲覧数:2885

『雪は音もなく降っていた』という記述に、この本の作者は雪国を知らないと直感的に思った。雪が降る時ほんのかすかな気配だけの音がするのだ。生まれてからずっと北の最果てと呼ばれるこの街に住み続けている私には分かる。ホントの事なんて当事者しか分からない。私は読みかけのハヤカワミステリの文庫本を閉じた。
「しばれるなぁ」
 駐在のおまわりさんだった。『この顔にピンときたら110番!』顔写真入り・・・

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ドッペルゲンガー【もう一人の私】

12/12/18 コメント:8件 石蕗亮 閲覧数:2884

 高校3年のある一時期、私には身に覚えの無いことで注意を受けたことが続いた。
その内容には奇妙な共通点があった。
それは、本来私が居るはずのない所に私が居る、というもので、事の始まりは生活指導の先生に呼び出されたことだった。
放課後、指導室に呼び出され訪れた私に先生は「お前みたいに今まで問題なんか起こしたことない奴が、珍しいことをしたもんだな。」と不思議そうに話し始めた。
・・・

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花簪(はなかんざし)

15/06/12 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:2879

 お鈴は数えで十二歳のときに廓に売られた。 
 商いに失敗した親の借金の形に、器量良しのお鈴が家族の犠牲となった。
 吉原に売られたお鈴は、禿(かむろ)から始まり、振袖新造になった。姉女郎の元で三味線や舞いの稽古を積んで、芸事でも一目置かれるようになり、初見世のお開帳で破瓜の血を流し十六で女となり、今年十九で座敷持ちの鈴音太夫(すずねだゆう)と呼ばれ、吉原でも売れっこの花魁である。

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愛妻は…自己中の女神さま?

13/08/10 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2878


「あと一時間くれない?」
 大輝の愛妻、美月がねだってきた。
 たまの休日、二人でゆっくりと美術館巡りをするつもりだった。それが朝起きてみると、美月が急にデパートに行きたいと言う。
 こんな予定変更はいつものこと、大輝は慣れている。それにしても、デパート滞在一時間のつもりがさらに一時間追加、そしてプラス一時間、なんと三時間目に突入しつつある。
 最初美月のショッピン・・・

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希望の桜

13/01/09 コメント:11件 草愛やし美 閲覧数:2876

 目の前には海の広がりが見えます。これほどまではるかな水平線を見たのはもっとずっと昔のことでした。

 あの頃まだ私は枝振りも少なく自然花芽も僅かでした。あれから何年経たことでしょう。ごく当たり前のように時代の流れを受け止めてきました。私は、北国の小さなお寺の境内に植えられた桜です。海辺の外れにポツンとあるその寺には優しい和尚様がおられました。土塀ができ私は、海を見ることはなくなりまし・・・

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灯油の臭い

12/09/24 コメント:6件 メラ 閲覧数:2875

 スコップを片手に、ようやく玄関のドアに辿り着いた。レールの錆びかかった引き戸を開けると、まず鼻についたのは、むせ返るような灯油の臭いだった。
 玄関には、灯油の入ったポリタンクがいくつか置いてあるが、この臭いはポリタンクからというより、壁や床、天井など、いたるところに染み付いてるものだ。
 父が亡くなってから三年、母が一人で暮らし続けていたこの家も、今は明かりが灯る事なく、雪に覆われ・・・

8

夜に光る三白眼

14/07/18 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:2875

まだ、夜が明けきれない真っ暗な街の中。

自転車のペダルを漕いで、自分は朝刊を配るアルバイトをしていた。
――後、三十分もすれば朝日が昇るだろうか? 
なんだか小雨も降ってきて、早く朝刊を配り終えて家へ帰りたい。
真っ暗な街はいいようもなく不気味で、仄暗い路街灯だけが頼りなのだ。

前方から、透明のビニール傘を差した若い男が歩いてくる。

こん・・・

0

新宿夢想物語

12/02/23 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:2874

 灰色の雲が高層ビルにかかり、そこから細かい雨が風に煽られて舞っている。 (くそっ) 鈍く瞬く点滅灯に悪態をついて歩き出した。『適正判断の結果本採用は見送りとなりました。 ご苦労様でした。』 仮採用と云う名目でふた月の試用期間を無難にこなした筈だったが、 高層ビルの若僧どもとはノリが違ったらしい。 また仕事を探さなきゃだ。(ハルク・・・)いや今は家電量販店か、横断歩道を駅側へ渡りソイ丼でも食べよう・・・

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テクマク・マヤ・コンプレックス

13/10/07 コメント:17件 平塚ライジングバード 閲覧数:2874

ナメクジに砂糖をかけるとどうなるか知っているだろうか。
想像力の足りない人間は、牧歌的な速度で地面を這う彼らに、一つまみでも二つまみでも降り注いでみればいい。
自分が行ったことの残虐さをきっと思いしるはずだ。



「私のことを蛍光ペンでなぞって!きっとあなたにとって大切な存在になるから。」
蛍池ひかりの言葉を合図に、ファン達は一斉に黄色のサイリウムを彼・・・

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真希と祐子

13/02/04 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:2872


「故郷のシュークリーム、もう一度食べてみたいと言ってたでしょ。だから、行ってきたら」
 なぜか突然、真希が悲しそうに囁いた。だがそれで直樹は背中を押されたのか、出掛けることにした。

 母子家庭で育った直樹、暮らしは貧しかった。それでも中学時代までは楽しかった。高校生活は味気なく、振り返りたくもない。なぜなら高校受験で直樹の心に刺が刺さってしまったからだ。
 それで・・・

5

偏頭痛の男

14/11/08 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:2869

 石田君は今日も機嫌が悪い。
 苦虫を噛み潰したように眉間に縦皺ができている。大声で話し掛けようものなら、険しい顔で睨みつけられる。
 石田君は偏頭痛持ちである。
 一週間の半分は頭痛に悩まされている。時に雨が降りそうな天気では気圧が下がるので、特に酷いという。激痛に嘔吐することもあるらしい。
「もう、俺に効く鎮痛剤はこれしかないんだ」
 薬剤師のいる薬局でしか買えな・・・

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絡糸嬢の落日。

14/12/01 コメント:8件 滝沢朱音 閲覧数:2868

久しぶりだね、直接会うの。例の新彼、その後どう? 今もエロ写メほしいとかって言う? ……へー、すごい、よく送れるね。アタシには無理だ。あ、悪口じゃないって。彼氏宛とはいえ、勇気あるなってだけ。まぁラブラブってことよね、いいじゃん、幸せそうで。

あ、気を遣わせてごめん。うん、そう。別れてはないんだけど、たぶんもう駄目。今日はそれ、ちょっと聞いてほしくてさ。

――最初はさ、・・・

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