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3

格闘技いうたら、プロレスやろ!

12/09/10 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:3196

「格闘技いうたら、プロレスやろ」
 父は懐かしそうに目を細めた。酒をやめなければ体に悪いと何度言っても聞かない。うるさく注意すると、上目使いに「これ一杯だけで終わるから」とか「息子と飲む酒は格別だから今夜だけは許してくれよ」なんて言い出す。私はその言葉に弱い。同居をしようと言っても父は頑として首を縦に振らない。それどころか、「たまに会うから酒も美味いんだ」と笑ってごまかす始末で、いつも話をは・・・

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地平線に祈る

13/01/20 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:3196

そこを寺というのは勇気がいった。
しかし、そこは紛れもなく寺なのだ。

インドで日本人観光客向けのガイドを初めて4年が過ぎたが、それは初めての要望だった。
「仏教発祥のころのような寺が見たい」。
学生のバックパッカーが個人でガイドを雇うなどと、無駄に金をかけたのは、ツアーやガイドブックでは知りえない現地情報を求めてのことだったのだな、と合点はいった。
だが、観光・・・

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志集タイガー見世物小屋

12/03/31 コメント:2件 mokugyo 閲覧数:3194

 愚かな高校生の太郎君に、新宿通の先生、伸縮魚園(しんしゅくぎょえん)先生が新宿の思い出を語ってくれるよ。

「おはようございまーっす!先生、今日は新宿について教えてくれるって話じゃないッスかー」
「うるせーバカ野郎ー!お前みてえな青二才が興味もっていい場所じゃねえんだ新宿は!ホームレスのブルーシートを横目で見つつ足早に歩いて『明日は我が身か』とおびえながら満員電車に体を押し込む・・・

3

ツ−トモ (1999文字)

13/03/03 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3192


 コートのポケットに左手を入れ、右手で吊革を握ってる。ぶら下がったような瑛太、混んだ電車の揺れに身を任せている。
 毎朝繰り返される通勤地獄、だが慣れてしまえば気怠くもあり、夜の続きか睡魔が襲ってくる。しかし、勤務先の駅までにはしっかりと目覚めなければならない。しかも心地よくだ。
 そのためには瑛太なりの拘りがある。それは七輛目の後方部、奥から三つ目の吊革辺りに自分のスペースを・・・

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ダンゴ虫学級

14/11/13 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:3192

 僕は懸命に足を動かす、短足でゆっくりとしたものだが足取りは力強い。ここは快適、あいつもあの子も、行ったり来たり。同じ道のようで、みな違う線を描いている。平等を味わうことは心地良いと知った。全て世は事もなく、あるのは、絵の具で塗りたくられた山と海のみ。
 ◇ 
 転校生の平安君は、黒板の前にヌーと立ったまま、下を向いたままだ。初めから苛めの対象だって僕にはピンときた。僕も苛められてきた・・・

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女は呪われ豚になる。

15/05/03 コメント:4件 草愛やし美 閲覧数:3191

 わけわかんない、今朝目覚めると部屋中に異様な臭いが漂っていたの。食べ物の腐敗臭、あたしは飛び起き辺りを見回した。何てことベッドの周りに残飯が散らばっている。誰がこんないたずらをしたの──いえ、これはいたずらなどというものじゃないわ。明らかに誰かの嫌がらせに違いない。あたしは吐き気を覚え慌てて洗面所に走った。鏡の中のあたしの顔を見て再びびっくりした。顔中何かこびりついている、特に口の周りや鼻にべっ・・・

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歸(とつぐ)―ある印判師の初恋―

15/02/22 コメント:10件 滝沢朱音 閲覧数:3191

 左平が座敷に上がると、既に座っていた僧衣の男は居住まいを正し礼をした。
「恐れ多い……お顔をお上げ下さいませ、沢彦(たくげん)様」
 沢彦宗恩。昇竜の勢いの武将・織田信長の師である彼は、かつて京の妙心寺にいた僧だ。印章を作る篆刻(てんこく)職人の左平とは、若き日に友誼を結んだ仲であった。
 その沢彦が都を去って早や幾年月。ここ尾張へ招かれた左平は、歴史に名高い『天下布武』印の作・・・

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巻頭歌に踊らされ

16/07/10 コメント:9件 デヴォン黒桃 閲覧数:3189

 

 〜巻頭歌

 胎児よ

 胎児よ

 何故躍る

 母親の心がわかって

 おそろしいのか



「はあ、成る程、三大奇書と云われる中の一つ、夢野久作先生のドグラマグラで御座いますな。巻頭歌」

 男は、カフェで見かけた女に、下心タップリで声を掛けた所、コレを知ってるか? と問われた・・・

1

龍ちゃんプール

12/08/23 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:3186

 鬱蒼と茂る木々、一帯にムーンと熱気が籠もってる。
 それでも良樹は全身に汗を噴き出させながら、道なき道を前へと進む。多分もう少しだろう、目指すポイントに辿り着けるのは。

 それは十日ほど前のことだった。ネット内の航空写真で遊んでいた時に見つけたのだ、満々と水を湛(たた)えた青い泉を。山あいを細い清流がくねくねと縫っていた。それはそのそばにあった。
 だが拡大してみると、・・・

5

一重白彼岸枝垂桜 ( ひとえ しろ ひがん しだれざくら )

14/01/12 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3178

 夜の闇を打ち割るように、ライトアップされた一本の枝垂れ桜がある。老木だが、浮かび上がった姿は艶(あで)やかで、時折吹き来る夜風にひらひらと花びらを散らす。
 花木洋介は空(くう)に舞う一片(ひとひら)を掴み取り、ベンチに腰を下ろす。それから缶ビールをシュパッと開け、ゴクゴクと。これでやっと喉の渇きを潤すことができた。そしてブツブツと。
「知恵理さん、今年も会いに来ましたよ。いつも妖艶・・・

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馬「昨日、助けていただいた馬です。」 俺「う、馬が喋った!?」

14/02/03 コメント:15件 平塚ライジングバード 閲覧数:3175

馬「ヒヒーン。ヒヒーン。」
俺「遅ぇよ!!喋れるのは分かってんだよ。」
馬「すまんウマ。お騒がせしたウマ。」
俺「急に変な語尾をつけなくていいから!!で、何の用?」
馬「昨日助けていただいたお礼をしにまいりました。」
俺「え…!?俺、馬なんか助けた覚えないんだけど。」
馬「ええと…。昨日、誰かを助けたりしませんでしたか?」
俺「敢えていうなら、電車の中でお・・・

6

五月の空と燕とエール

13/05/16 コメント:11件 そらの珊瑚 閲覧数:3174

 ゴールデンウィークが終わると、急に気温が上がり、ここ数日はまるで夏のような陽気だった。

 電車の中には、ゆるやかな冷房が入っているようだが、もあっとした空気が漂っている。嫌な冷や汗がじっとりと吹き出してくる。
 男は目をぎゅっとつぶり、耐えていた。ガタンガタンと揺れる振動が、おのれの腹と連動し、次第に大きくなる痛みに。入社して二ヶ月弱、他の新入社員が一人、また一人と契約をあげ・・・

1

プリンセスと自転車

12/07/28 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:3169

 亮介は駅から事業所までの近道を急いでいる。
 朝一番の会議までに資料を作成しておかなければならない。しかし、そんな慌ただしい中で思うのだった。
「今朝も彼女とすれ違うかな?」

 彼女とは、多分事業所近くに住む女性だろう。年の頃は二十五歳前後。
 きっとOLなのだろう、いつも亮介が事業所へと徒歩で向かっている時に、自転車を走らせ、軽快に駅へと飛ばしていく。
 ・・・

5

小指立て夕子

13/03/24 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3168


 これは作り話? それとも実話?

「ただいまよりS−1グランプリを開催します」
 地下室のステージに立つ仕立屋銀次、明治のスリの大親分が宣言した。
 会場には歴代のスリ名人たちが一堂に会している。
「みんな、普段の腕前を発揮して、競おうぜ!」
 ケッパーの梅ジイが気合いを入れる。ケッはケツ、尻のこと。またパーは財布の隠語。その名前通り、ケッパーの梅ジイ・・・

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プールの底

12/08/06 コメント:14件 泡沫恋歌 閲覧数:3167

「あたち、菜々美四歳、ひまわり保育園のタンポポ組だよ」
 クルッとした瞳の大きな女の子だった。プールサイドでは人目を惹く色の白さで、ひとりぼっちでいるが気になって声をかけた。
 この夏、僕は水泳部の仲間たちと遊園地内にあるプールの監視人のアルバイトをしていた。平日はさほどでもないが、土日は家族連れでプールは賑わっている。
「お母さんやお父さんと一緒じゃないのかい?」
「菜々・・・

4

未来巡りは山手線外回りで

14/08/04 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3167

 耕介は家業を継いで欲しいという父の願いを振り切り、10年前都会で働き始めた。しかし、現実はそう甘いものではなかった。それでも朝から晩までこま鼠のように頑張ってきた。その原動力は父に対する男の意地だったのかも知れない。
 そして最近のことだ、母が電話で、父が病に伏せたという。さらに、そろそろ初孫の顔を見せてくれないかと漏らした。
 今の暮らしでは、結婚なんてほど遠い。しかし、母の言葉は・・・

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心の傘

12/04/19 コメント:0件 さとる 閲覧数:3166

彼は毎日毎日、うんざりしていた。
上司に叱られ、同期に嫌みを言われ、時には有ること無いこと悪口を言われ続けていたのだ。
心無い言葉の雨は冷たく、彼の心を容赦なく冷やし、濡らしていった。
それでも、毎日生きていた。
けれど彼も人間だから、時に愚痴をこぼすこともある。
今日は彼の友人が、愚痴の嵐の犠牲者だ。
友人には悪いと思いながらも、愚痴は止まらない。
けれ・・・

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迷子になった私

13/06/08 コメント:18件 泡沫恋歌 閲覧数:3164

 私は四歳の時に迷子になったことがある。
 それは引っ越しした日のことだった。荷物の整理に追われる両親や引っ越しの片付けを手伝う兄や姉たちは忙しく、誰も私と遊んでくれなかった。
 役に立たない四歳児は、みんなから忘れ去られて退屈し切っていた。

 そこは初めての町だった。
 前に住んでいたところは近くに大きな川があったけど、駅から遠くて不便な場所だった。お父さんの仕事・・・

4

酒の音

13/07/15 コメント:7件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:3164

 あのときはまだ、昭和だったかな。
 ぼくはせまいアパート住まいで、部屋には風呂がなくていつも、近くの銭湯にかよっていたときのことだ。工場の仕事が終わって、一汗ながしにいく風呂は最高で、ときどき入れ墨した人が横に入っていることもあったけど、肌と肌のふれあいの場だから、それもしかたがない。
 銭湯の帰りにはかならず、たちよるところがあった。労働で油にまみれた体を洗いおとして、さっぱりした・・・

0

カラス

12/04/21 コメント:0件  閲覧数:3160

大粒の雨が降り注ぐ都会の午後。

私は、とある雑居ビルの屋上にいた。
何をするでもなく、ただぼんやりと通りを行き交う人々の姿を眺めていた。
雨の日にここから眺める景色は、この上なく美しい。
アスファルトの上を色とりどりの傘の列が右へ左へ流れていく。
まるで花が咲いているようだ。
晴れた日には決して見ることができない光景だ。
私はこの景色が好きだった。・・・

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前を向くライオン

13/04/22 コメント:10件 青海野 灰 閲覧数:3159

黄金の鬣を靡かせて、太く逞しい前脚を岩にかけ、その獅子は唸る様な声で言う。

――これから初めて獲物を追うお前に、狩りの心得を教える。

はい。お願いします。

――まず我々は強くなどない。他の生命を奪わなくては生きることさえ適わない、血と肉の定めに縛られた、悲しい生き物だ。それを忘れるな。

はい。

――我々が奪い喰らおうとしている命・・・

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【 怪談 】時雨番傘

13/08/03 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3158

「おや、こな所で雨宿りでありんすか」
 いきなり漆黒の闇から女の声がした。
 男は薬の行商を生業にする者で、山を越えて街道沿いの宿場まで商いに行った帰りであった。客の家で商いの話しが終わると膳が出されて、酒を呑み交わし寛いでいたら、すっかり遅くなってしまった。
 山道を帰る途中で陽が沈み、あたりは真っ暗闇になった。折からの時雨(しぐれ)に提灯も点かず、一寸先も見えない、この暗闇に・・・

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携帯電話を忘れないでね

13/01/13 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3158


「ねえ、亮介、私はA社の秘書、あなたは競争相手のB社の営業部長でしょ。寡占状態にある会社の社員がこのように密会してるって、しかもホテルのベッドの中よ。これって法的にも……罪を犯してることになるんでしょ?」
 阿沙子は、髪を撫でる亮介の手を振り払いながら、ボソボソと呟いた。
「ああ、立ち話しだけでも、価格カルテルの疑いで睨まれるぜ。独占禁止法違反だよ」
 こう言い切った滝川・・・

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鳶に油揚げ

14/02/07 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3155

「お父さん、紹介するよ」
 慶太がリビングでくつろいでいると、背後から息子の拓夢が声を掛けてきた。えっと振り返ると、若い女性が息子に寄り添い立っている。
「花瀬玲奈と申します」
 ペコリと頭を下げ、長い髪をかき上げながら面(おもて)を上げた。端正な顔立ちに緊張が窺える。慶太はこの様子から察し、息子がやっと生涯の伴侶を見付けたのかと。
「拓夢ったら、お嬢さまを突然お連れするも・・・

1

みな様へ、 犬一匹からのご挨拶

12/10/09 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3154

 初めまして。
 僕は犬一匹です。
 せっかくの機会、この場を借りて、みな様へちょっとだけですが、ご挨拶申し上げます。


 僕がこの家に住み出して、随分と歳月が流れました。
 そう、それは10年前です。生まれたての僕はダンボールの箱に入れられて、公園に捨てられていたのです。当時、幼なかったエッコとヨックンがクンクンと泣いていた僕を家に連れて帰ってくれました。<・・・

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箱庭舞台

15/03/10 コメント:6件 四島トイ 閲覧数:3151

 人混みの向こうに戸柿氏の小さな背中が見え隠れする。
 おかっぱ頭で髪が跳ねる。短いながらも残像を錯覚させる早足。ダブルのウエストコートが加速機能を備えた高機能装備のように見える。
 途切れ途切れに甲高い声が耳に届く。
「エキストラだからと甘くみたのか」
 そんなことありません、と喘ぐように雑踏を掻き分ける。
 冬の平日。午後の日差しが視界を白く霞め、原色のチラつく街・・・

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国際宇宙人会議(笑)

13/11/10 コメント:16件 泡沫恋歌 閲覧数:3149

 【 宇宙人は存在するか、否か?】

 
 この疑問は昔からテレビや雑誌で数多く取り上げられてきましたが、未だかつて、その結論が出ていません。
 どうでもいいようで、実はとっても気になる疑問なのです。(作者・談)

                   *                 

 アメリカ、ニューメキシコ州に住む平凡な農夫、ボブ・オズワ・・・

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減らないラーメン

13/05/31 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:3148


 仕事の第一線から退いた高見沢一郎、今は妻の夏子と穏やかに、いやそれなりに波瀾万丈に暮らしている。
 そんなある日、長女の真奈美が可愛い孫娘、愛沙を連れて、還暦夫婦の陣中見舞いにと遊びに来てくれた。

「お父さん、お母さんに我がまま言ったらダメよ」
「おいおい、いきなり注意かよ、そんなの陣中見舞いにならないよ」
 ちょっと不愉快な昼前だったが、「グランパ、ラー・・・

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アバドン・グール・ガール

15/03/15 コメント:9件 クナリ 閲覧数:3147

夜明けが近づくと、吐き気がする。
私と世界を優しく閉ざしていた蓋が開き、今日も空はあの、暴力的な青へと変わる。
鳥が啼き出す。
一声ごとに、私の内臓が鈍く重く、下腹部へ落ちて行く。

登校の支度は、無心になれば楽だった。
けれど、全ての準備が終わりに向かうと、思考能力が戻って来る。
お腹の中が腐り落ちる感覚が、繰り返す。
これが、いつまで続くのだろう・・・

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千円カット

12/06/16 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:3146

入口の看板の、『カット千円』にひかれて平太は、その散髪屋に入っていった。
この値段だというのに、店に客の姿がない。
広くもない店内が、妙にがらんとしてうつった。
千円という安価さからおそらく、愛想もサービスもなにもない、ただ芝生を刈るように髪を切るだけのところにちがいない。
もどろうかと平太が足をかえしかけたとき、奥のカーテンから一人の女性があらわれた。
「いらっしゃ・・・

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ラベンダーの風

12/07/01 コメント:0件  閲覧数:3145

 夏休みになったら都会を離れる旅にでたいと思った。群馬の「ラベンダーパークアルバイト募集」の広告を見てから、ただの旅行ではなく、働いてみようと思った。勤務日数は約1カ月の住み込み。私は玉原山荘にお世話になることになった。仕事はインフォメーション係で、ラベンダーの大きな畑の前に建てられた小屋で情報提供や案内をすることになった。夏はラベンダーを楽しんでもらって、冬にはスキー場になるこのパークの魅力をた・・・

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心の味

12/11/26 コメント:6件 汐月夜空 閲覧数:3142

「……実に不思議だ」
「どういたしましたか、山田さん」
 小春日和のことだった。
 ぱちぱちと静かな音を立てる暖炉横のカウンター席に腰を下ろし、いつものようにカフェ『雫』特製のサイフォン式コーヒーを口にしてから、私は唸るように積年の思いを口にした。
 気品を感じる見事な動作でシルバースプーンを磨いていた若いマスターはそれを聞いて、穏やかに私に微笑みながら尋ねた。
「い・・・

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コンビニ 「ハイ、ハニー!」

12/09/28 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3141

「いらっしゃー、まっせー」
 ふらりと立ち寄った高見沢一郎に、コンビニ特有の挨拶が飛んでくる。そして弁当を取り上げレジへと。
「あたためますか?」
「うん、あっためて」
 コンビニ定番の会話だ。
 それからプラスチック袋を手にし、外へと出る。そこに若者たちが物憂げにたむろしている。別段驚くことではない。日常化した風景だ。
 だが、彼らの横を通り過ぎる時にふと思い・・・

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ホームスイートホーム

12/09/23 コメント:12件 そらの珊瑚 閲覧数:3141

「家族にならへん?」突然話しかけられて僕はびっくりした。というのもこの駅に住むようになってから一ヶ月、人に話しかけられるのは初めてのことだったから。同時にとても嬉しかった。その言葉の意味はよく分からなかったけれど。
「僕の事、見えるの? お、おば、いや、おねえさん」
「気ィ遣わんでええよ。僕から見たらしじゅうって立派なおばはんやろ。私、茜。茜色って知ってる? 夕焼けの色っていう意味や」・・・

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目玉焼き騒動記

15/04/20 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:3141

 騒動の発端はテーブルの上の目玉焼きから始まった。

 父は顔を洗うと朝食のテーブルに着く。献立は、ご飯、みそ汁、サラダ、そして目玉焼きだった。突然、父が大声を出した。
「おいっ、俺の目玉焼きが片目しかないぞ!」
 目玉焼きが大好きな父は、二個玉子を使った両目の目玉焼きを毎朝必ず食べている。それが、今朝は片目の目玉焼きが皿に乗っていたのだ。
「会社の健康診断でコレステ・・・

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花簪(はなかんざし)

15/06/12 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3138

 お鈴は数えで十二歳のときに廓に売られた。 
 商いに失敗した親の借金の形に、器量良しのお鈴が家族の犠牲となった。
 吉原に売られたお鈴は、禿(かむろ)から始まり、振袖新造になった。姉女郎の元で三味線や舞いの稽古を積んで、芸事でも一目置かれるようになり、初見世のお開帳で破瓜の血を流し十六で女となり、今年十九で座敷持ちの鈴音太夫(すずねだゆう)と呼ばれ、吉原でも売れっこの花魁である。

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とんかつ日和

12/05/28 コメント:0件 そらの珊瑚 閲覧数:3136

 直子に割り当てられた場所は運良く窓際であった。新宿の病院とはいえ、窓から咲き始めた桜が見える。ひと通り下着やら湯のみやら身の回りのものを備え付けの小さなロッカーに納めていると、弟が、お世話になります、と同室の人にあいさつをしながらやってきた。
「わりかしいい眺めだね」
「桜はあんまり好きじゃないけど」
「まあ、そう言うなよ。寝ながら花見なんて贅沢な話だよ」
 五年前に末期・・・

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座る男と隣の女

13/10/21 コメント:4件 タック 閲覧数:3134

 女は苛立っていた。男がまるで話す素振りを見せないのである。

 光源がテレビのみの、真っ暗な部屋の中、男は女に構う事なく、胸糞の悪いニュースを眺め続けている。女が二の腕に触れるも、男の反応は無く、空しい冷たさが、返答として翻るだけである。
 
 もう、飽きたのかしら。女は考える。

 男との同棲を決意してから、まだ幾ばくも経ってはいない。半ば狂乱のうちに実行し・・・

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雪の降る日の物語

13/12/05 コメント:17件 そらの珊瑚 閲覧数:3131

 ルチアは約束通り、仕事が終わってアントニーの下宿を訪ねた。ドアを開けると、油絵の具の匂いが揮発されて漂ってくる。脱いだダッフルコートを壁のフックにかけた。
 
 壁という壁には作品の数々が所狭しと立てかけてある。彼の描く風景はなぜかみな雪景色で、ルチアにとって馴染みのある絵ばかり。それが今夜はどこかよそよそしくそっぽを向いているように感じるのはなぜだろう。
「夕食まだだろう。座・・・

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スーパーハッカー五十嵐 誠司の完全なる世界

14/09/27 コメント:14件 夏日 純希 閲覧数:3123

俺の名前は五十嵐 誠司。世界屈指のスーパーハッカー。27歳既婚。
決め台詞は「This is my perfect world(これが俺の完全なる世界だ)!」。

ただいまハッキング中である。え、何をって?
俺の生死にも関わる最重要機密情報。つまり、

 妻の日記である。

ハッキングとは、ネットワーク経由でするものというイメージのあんた。
甘・・・

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吊るし雛

13/02/12 コメント:5件 クナリ 閲覧数:3121

ある日の夕方、中学二年生の私が母と二人暮らししているアパートに帰ってくると、ドアの下に小包が置いてあった。
母はパートからまだ戻っていなかったので、ドアの鍵を開けてから茶色の紙で包まれたそれを抱えて部屋に入る。
小包の不自然さに気づいたのは、ミニキッチンのテーブルにそれを置いた時だった。
送り状がなく、差出人の名前もない、のっぺらぼうだ。
危険物だったらどうしようと思いつつ・・・

0

下仁田ネギとパスタの素敵な関係

12/06/25 コメント:3件 ゆうか♪ 閲覧数:3120

「殿、お味はいかがでございましょうか」
「うむ、これはなかなかの味じゃのう。で、どこで摂れたネギじゃ?」
「はい、こちらは地元の下仁田で摂れたものにござりまする」家老が自慢げに答えた。
「ほほう、これは下仁田のネギであったか」
「御意」
「この何とも言えぬ甘さは癖になるのう。今後も城内の料理にはこれを使うが良いぞ」
「ははぁ〜」
 これを機に、下仁田のネギ・・・

8

誘蛾灯

14/02/24 コメント:17件 朔良 閲覧数:3120

 網膜に焼き付く青白い光。
 ジジジ…と低い唸りを漏らす誘蛾灯の無慈悲な輝きに魅せられて、ぱちんと命が爆ぜる。



 ガラス張りのカフェに冬の光が差し込む。スマホから着信音が響いて十分。そわそわと視線を泳がせる奈緒子さんを見て潮時を悟る。意地悪はこのくらいでやめておこう。
「先輩、どうしたんです? 何か心配事でも?」
「う、うんん、そんなんじゃないの」・・・

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絡糸嬢の落日。

14/12/01 コメント:8件 滝沢朱音 閲覧数:3118

久しぶりだね、直接会うの。例の新彼、その後どう? 今もエロ写メほしいとかって言う? ……へー、すごい、よく送れるね。アタシには無理だ。あ、悪口じゃないって。彼氏宛とはいえ、勇気あるなってだけ。まぁラブラブってことよね、いいじゃん、幸せそうで。

あ、気を遣わせてごめん。うん、そう。別れてはないんだけど、たぶんもう駄目。今日はそれ、ちょっと聞いてほしくてさ。

――最初はさ、・・・

5

赤い財布

13/03/16 コメント:6件 光石七 閲覧数:3115

 午後の一コマ目の講義が休講になったので、彼は学食のテーブルでレポートを書くことにした。学食のメニューは安くて美味しいので昼時はかなり混雑するが、それ以外の時間は割と空いている。遅めの昼食をとっている者もいるが、友人と雑談をしたり、学習室代わりに利用している学生が多かった。
 レポート自体はまだ期限があるしそこまで難しくはなかったが、彼は困っていた。空腹だったのだ。どこをどう間違えたのか、気・・・

3

たずねてきた北海道

12/09/17 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:3114

 ドアのそとで、大きな声がきこえた。
「こんにちは、おひまですか」
 私がその失礼な挨拶に怒りもせずにドアをあけたのは、実際死ぬほどひまをもてあましていたからにほかならない。
 玄関に、みたこともない男が立っていた。
「どちらさん?」
「北海道です」
「珍しいお名前ですね。で、ご用件は?」
「ちょっと、お話でもと思いまして」
 定年退職後、妻に先立た・・・

1

肉じゃが格闘技

12/09/12 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:3112

 格闘技とは「相手と組み合い、自分の体での攻撃・防御を行うスポーツ競技」だ。しかし、時の流れとともに、その言葉の解釈はより広がりを持って行った。相手とがっぷり四つに組んで闘う、それはなにもフィジカルなことだけではない。身体を使わずとも、真剣勝負ならば格闘技となった。
 今は2050年、そんな社会通念が定着している。その証拠に、ありとあらゆる格闘技をテーマにしたイベントが流行り、事実人気を博し・・・

6

カナリア

13/03/14 コメント:12件 そらの珊瑚 閲覧数:3110

黒々とした瞳は深い慈しみをたたえている。それをふちどる長いまつげ。白いたてがみは豊かになびき、隆々とした筋肉のついた躰。エトワルは額に白い星の模様を持つサーカスの馬だった。
 私はサーカスに置き去りにされていたという。まだほんの五歳ほどで、うっすらとその時の記憶がある。興行が終わって客達がみな帰った後、テントの隅で一人で泣いていた、みすぼらしいなりをした女の子だった。傍らに使い古された鞄。・・・

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森に住むペンギン

12/11/28 コメント:11件 そらの珊瑚 閲覧数:3109

 生き物は進化の途中で選択をする。その結果、何かを得る。それは同時に別の何かを手放すということでもある。
 生きていくとはそういうことであろう。
    ◇
 深い眠りから覚めた気分だった。覚醒してみれば世界の狭さに辟易する。出してくれよ、ここから。どうしたって、どんなことをしたってここから出なくちゃならない。うかうかしていると取り返しのつかないことになっちまう。
 ボクは・・・

2

バカタレ、ボンクラ、アホンダラ

13/01/24 コメント:1件 おでん 閲覧数:3108

 バカタレはボンクラのことが好きでした。
 でもボンクラはボンクラなので、バカタレに好意を持たれていることなど一切気がつきませんでした。
 幸運だったのは、バカタレがバカタレだったことです。ありとあらゆるアプローチをボンクラに流されようとも、自分の想いは彼女に少しずつ、確実に届いていると信じて疑いませんでした。
 そんなバカタレを、どうしても放っておけないアホンダラがいました。<・・・

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