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8

全部ぶち壊せ!

16/01/04 コメント:9件 霜月秋旻 閲覧数:3127

 消費している。僕はただ、毎日を消費して生きている。特別欲しいものは何も無い。知りたいこともない。そんなもの、あってもネットで検索すればすぐわかる。
 ぬるま湯に延々とつかっているような毎日だった。体温が、お湯の温度と共に熱を加えられることも無く段々と下がってゆく。そんな日々を、これから何十日も何十年も過ごしていかねばならない。そう思って窓の外の景色を覗いていると、突然、その男は現れた。

5

昭和映画館の……

13/01/27 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3126


 帰宅途中、幸一は書籍のリサイクル・ショップにふらりと立ち寄った。特に買いたい本はないが、何か掘り出し物でもないかと店内をうろつく。そして奥の本棚まで来て、昭和時代の写真集が目に入った。
 幸一はそれを引っ張り出し、パラパラとページを繰る。そしてその中の一枚の写真、それに目が釘付けとなる。
 セピア色の歪んだ三角形の屋根が三つ並んでる。きっと実際の色合いもくすんでいたに違いない・・・

4

溺れる心と身体とチョコレート

13/01/14 コメント:6件 クナリ 閲覧数:3125

高校二年生で迎えた二月十三日の、夜九時を回る頃。
ケーキ屋でアルバイトをしている同級生の女子からその店へ呼び出され、先輩のユイさんが酔い潰れたので送ってあげて欲しいと言われ、俺は往生した。
店のサバランを味見して昏倒した、俺達より二つ年上のユイさんは、俺の片思いの相手だった。先日のクリスマスには告白じみたこともしたけれど、結局それ以上踏み込めず、ユイさんとは親しい友達程度の関係だっ・・・

16

夜のモノガタリ

16/05/08 コメント:10件 石蕗亮 閲覧数:3123

陽が沈む
緋を纏った金が西の向こうへ行くと
東の向こうから蒼い夜の帳が降りてくる
夜はいつも恐る恐るやってくる
何故なら夜はとても臆病だから
臆病すぎて自己主張をしない
だから誰も本当の夜を知らない
誰にも知られないのは可哀想だから
ボクは夜について語ろうと思う

日中
陽を遮ると影ができる
夜は地球の影だと思う?
ちが・・・

11

野良猫のルドルフ

16/03/29 コメント:11件 泉 鳴巳 閲覧数:3112

 おれは猫だ。名前もちゃんとある。

 名はルドルフ。濡れたような艶のある毛並みが自慢の黒猫だ。
 この名前はハヅキさんという人間が付けたんだ。なんでも人間の読み物からとったそうだ。おれは名前なんて何でも良いのだけれど、しかしルドルフという響きはなんだか気に入ってもいた。

 おれは野良猫として生まれ、自分の力だけで生きてきた。野良として中堅の域に達していたおれだが、・・・

4

財布初心者

13/03/12 コメント:6件 四島トイ 閲覧数:3111

 ぱたぱたと財布を開けては閉める。寝そべる畳からは、かすかにい草の香り。落ち着かないまま頭をずらせば、大きく開かれた窓の向こうに八月の白い雲が見えた。
 車が砂利を踏む音がする。エンジン音が止んで、玄関の戸が引かれた。
「おうい。迎え行ってきたがぞお」
 兄を迎えに行っていた父の声が響く。
 来た。ぱっと立ち上がり、階段を駆け下りる。玄関では家族に出迎えられて兄が荷を下ろし・・・

10

なぜ、その子はテーブルの上で息絶えていたのだろうか?

15/04/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:3111

 五月三日、世間がゴールデンウイークで賑やかなその日、幼い姉弟の遺体が発見された。
 なぜか、姉はテーブルの上で絶命しており、弟は姉が乗ったテーブルの足元で蹲るようにして息絶えていた。腐敗が進み悪臭が漂ってきたことから同じアパートの住人が通報し、やってきた警官によって発見された。警官はその凄惨な姿に顔を背けた。

 空っぽに近い冷蔵庫の扉は開けっ放しのままで、床には調味料の瓶や容・・・

3

ツ−トモ (1999文字)

13/03/03 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3110


 コートのポケットに左手を入れ、右手で吊革を握ってる。ぶら下がったような瑛太、混んだ電車の揺れに身を任せている。
 毎朝繰り返される通勤地獄、だが慣れてしまえば気怠くもあり、夜の続きか睡魔が襲ってくる。しかし、勤務先の駅までにはしっかりと目覚めなければならない。しかも心地よくだ。
 そのためには瑛太なりの拘りがある。それは七輛目の後方部、奥から三つ目の吊革辺りに自分のスペースを・・・

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思い出

12/05/03 コメント:6件 智宇純子 閲覧数:3108

 窓から引込川が見える。もうすぐ東福寺。あとひとつ、間に合うだろうか。

 美穂子は電車に揺られながら、うっすらとJR京都駅の改札口を思い浮かべていた。
 あの日と同じ白いタートルネックのカットソーに黒のカーディガン。あの時履いていたロングスカートは去年一也にハサミで切られてしまったので、今日はベージュ色のパンツを履いてきた。

〈そういえば、あの日はすごく寂しい思い・・・

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ルームロンダリング

16/08/16 コメント:0件 山中 閲覧数:3108

 1LDKのマンションの一室に住み始めてから、すでに二ヶ月以上が過ぎようとしていた。都心からやや離れた閑静な住宅街の中、最寄駅まで徒歩八分と条件は悪くない。
 築四十五年とはいえリフォーム済みなので古めかしさは感じないし、近隣とのトラブルがあるわけでもないが、この部屋では数カ月ほど前に人が一人死んでいる。いわゆる事故物件と呼ばれる部屋だ。

 こうした物件は借り手が付きにくい。入・・・

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愛のサンタ♪

12/11/28 コメント:20件 泡沫恋歌 閲覧数:3103

「メリークリスマス」
 いきなり暗がりから声が聴こえて来た。僕はバイト帰りの道を一人で歩いていたが、その声は僕以外の誰かにかけたものだろうと無視して歩いた。
「ちょっと、三輪守君だよねぇ?」
「はぁ? そうだけど……誰?」
 自分の名前を呼ばれて驚いた。振り向くと若い女が立っていた。
「あたしサンタだよん」
 見れば、真っ赤なサンタ風の超ミニスカートを穿いて、頭・・・

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Tre Memoria 大分の思い出三つ

12/06/25 コメント:2件 かめかめ 閲覧数:3095

父の幼馴染が脱サラして故郷の宇佐市でうどん屋を始めたと聞き、墓参の折に立ち寄った。
当時、大分自動車道が全線開通したばかりで、それまで半日以上かかっていた道程が地元福岡から二時間でたどり着けることに感動した覚えがある。とは言っても、宇佐は、まだまだ、と言うかとんでもない田舎で、父の実家の半径2キロ以内にある店舗は雑貨屋を兼ねた古い薬局と、パーマ屋だけで飲食店は、たずねたうどん屋、一軒だけだっ・・・

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昭和日記 1964年初めての東京オリンピック その1

13/09/09 コメント:3件 草愛やし美 閲覧数:3092

 祝、2020年東京オリンピック再びあの感動を!!

 私は、ライフワークとして5年前くらいに「昭和日記」を書いていました。その中より、今回、1964年に開催されました、東京オリンピックの思い出話を自由投稿してみたいと思います。過去作ですので、文章も整っていませんが、7年後のオリンピック開催が嬉しく、2回に分けて投稿させていただきます。私が、どんな風に初めてのオリンピックを感じたかを書・・・

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女スパイ・村山たか女 (前編)

13/08/20 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:3091


 幕末に、激しくも生きた一人の女性がいた。
 されど終焉は穏やかに、その生涯を閉じた。
 その女性とは……女スパイ・村山たか女。

 その波瀾万丈だった女の生き様を、一つの記録として、男の視点から書かせてもらいました。
 そして、今という時代おいて、その足跡を追い掛けた男の結論は?



──激しくも生き、されど終焉は穏やかに── (前・・・

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宿敵の連鎖サークル

13/09/02 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3088

「10%の売り上げ増です。これは私の率先垂範の結果です」
 洋一の上司、高木部長はこう社長に報告した。そしてニンマリと。
「どこがだよ! 全部俺が汗水流して……、俺が頑張った結果だよ」
 洋一の不平が吹き出す。されどこんなことはいつものこと。この高木野郎、‘悪代官’の汚名通り、部下の成果は容赦なく取り上げ、自分の失敗は部下に押し付ける、とんでもない上司なのだ。
 それでもこ・・・

1

再会 (駅の出会いは時空を超える)

12/09/19 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:3088

 朝の通勤時間帯、駅のプラットホームは人で溢れている。愼一は今朝も急ぐ人たちに揉まれながら電車を待っている。
 しかし、そんな中にあって、愼一は電車が到着するまでの僅かなタイミングを狙って、向かいのホームを見渡してみる。
 そして今日も見つけたのだ、彼女を。

 年の頃は25歳前後だろうか、肩までの黒髪にすらりと背の高い女性。濃紺のビジネススーツを品良く着こなしている。目鼻・・・

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新エレ幹線 (遠距離恋愛)

12/10/27 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3087

「拓馬、どうするのよ?」
 佳奈が煮え切らない拓馬にせっついた。そして拓馬は、それにいよいよ結論を出すべきだと覚悟を決めた。
「僕は佳奈と一緒に暮らしたいんだ。だから、天上界から僕が住む地底都市に移って来て欲しいのだけど……、佳奈はどうしたいの?」
 反対にこんな言葉で訊かれた佳奈は下を俯いたままでいる。そしてしばらくの沈黙の後、決意を込めて口を開いた。
「そうだわね、拓馬・・・

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解説 −虚謙次郎ととんかつ屋さん

12/05/21 コメント:2件 泥舟 閲覧数:3087

言わずと知れた時空春秋大賞作家・虚(うつろ)謙次郎の受賞後最初の作品である。
選考委員として参加した私にとっても非常に楽しみであるとともに、期待を裏切るなよ、との思いを持って読ませてもらった。だが、読み終わって十分に満足している。時空春秋賞を辱めない、いやそれ以上に時空春秋賞のブランドを高める貢献しているといってもいいだろう。
上から目線的な書き出しで始めさせてもらったが、私が彼のデビ・・・

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小指立て夕子

13/03/24 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3087


 これは作り話? それとも実話?

「ただいまよりS−1グランプリを開催します」
 地下室のステージに立つ仕立屋銀次、明治のスリの大親分が宣言した。
 会場には歴代のスリ名人たちが一堂に会している。
「みんな、普段の腕前を発揮して、競おうぜ!」
 ケッパーの梅ジイが気合いを入れる。ケッはケツ、尻のこと。またパーは財布の隠語。その名前通り、ケッパーの梅ジイ・・・

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一重白彼岸枝垂桜 ( ひとえ しろ ひがん しだれざくら )

14/01/12 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3084

 夜の闇を打ち割るように、ライトアップされた一本の枝垂れ桜がある。老木だが、浮かび上がった姿は艶(あで)やかで、時折吹き来る夜風にひらひらと花びらを散らす。
 花木洋介は空(くう)に舞う一片(ひとひら)を掴み取り、ベンチに腰を下ろす。それから缶ビールをシュパッと開け、ゴクゴクと。これでやっと喉の渇きを潤すことができた。そしてブツブツと。
「知恵理さん、今年も会いに来ましたよ。いつも妖艶・・・

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雀の春

12/12/24 コメント:6件 池田K 閲覧数:3082

「あ〜ァ、おやじさんすっかり出来上がっちまッて」
「振る舞いの屠蘇で潰れるなんざァお客だったら有難いね」
 常なら反り合おう筈もない新造も遣手も、席を同じくして姦しい。禿どもは駆け回るし、若い衆もどこか肩の荷を下ろした風情で散らばっている。最前潰れた楼主もおかみさんも、眉間の皺が伸びて少しは若返って見える。
 正月一日は、吉原の数少ない休日だ。大門を閉め切った廓内に、普段とは違っ・・・

1

龍ちゃんプール

12/08/23 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:3081

 鬱蒼と茂る木々、一帯にムーンと熱気が籠もってる。
 それでも良樹は全身に汗を噴き出させながら、道なき道を前へと進む。多分もう少しだろう、目指すポイントに辿り着けるのは。

 それは十日ほど前のことだった。ネット内の航空写真で遊んでいた時に見つけたのだ、満々と水を湛(たた)えた青い泉を。山あいを細い清流がくねくねと縫っていた。それはそのそばにあった。
 だが拡大してみると、・・・

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邂逅記

15/08/24 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3081

 まったく先生のていたらくには愛想が尽きる。
 夏木露山(なつき ろざん)は、帝国日本を代表する立派な文学者である。代表作の「猫の始末記」「膝枕」「これから」などは素晴らしい文学で深い感銘を受けた。そんな夏木先生に憧れて書生になったのだが、同じ屋根の下で暮らすようになると先生に対する幻想が壊れてしまった。
 駒込千駄木町に居を構え、先生の奥様とお子さんが五人と女中が住んでいる。先生の収・・・

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Looking for somebody

13/06/20 コメント:12件 光石七 閲覧数:3074

『ぬこ様の肉球にかけて、俺は真実を暴く!』
テレビから聞こえるドラマの主人公の台詞。今話題の深夜ドラマ『ぬこ厨探偵 猫川唯斗』だ。
「そうそう難事件に遭遇するかよ。この決め台詞、意味不明。どうせ犯人はあの医者だろ? 知識を利用して、犯行時刻を遅らせたんだ」
ぶつぶつ文句を言いながらも、何故か毎週見てしまう。
「お前も好きだな。明日は早いんだから、さっさと寝ろよ」
所長・・・

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携帯電話を忘れないでね

13/01/13 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:3068


「ねえ、亮介、私はA社の秘書、あなたは競争相手のB社の営業部長でしょ。寡占状態にある会社の社員がこのように密会してるって、しかもホテルのベッドの中よ。これって法的にも……罪を犯してることになるんでしょ?」
 阿沙子は、髪を撫でる亮介の手を振り払いながら、ボソボソと呟いた。
「ああ、立ち話しだけでも、価格カルテルの疑いで睨まれるぜ。独占禁止法違反だよ」
 こう言い切った滝川・・・

2

消滅、カンニングペーパー

13/01/28 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:3068

 試験官はそのとき、前から三列目の机で試験用紙にむかっている男子受験生の手に、なにやら白い紙切れがひるがえるのをみた。
 カンニングペーパー。試験官は足早くその生徒に歩みよった。
 と、たしかにいま、彼の手の中にみえていた紙が、きゅうにパッと消えてなくなった。
 おやっと目をまるめた試験官は、しかしそれ以上どうすることもできずに、彼からはなれた。
 試験官は、試験場を見渡せ・・・

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コンビニ 「ハイ、ハニー!」

12/09/28 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3067

「いらっしゃー、まっせー」
 ふらりと立ち寄った高見沢一郎に、コンビニ特有の挨拶が飛んでくる。そして弁当を取り上げレジへと。
「あたためますか?」
「うん、あっためて」
 コンビニ定番の会話だ。
 それからプラスチック袋を手にし、外へと出る。そこに若者たちが物憂げにたむろしている。別段驚くことではない。日常化した風景だ。
 だが、彼らの横を通り過ぎる時にふと思い・・・

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遺跡ラーメン

13/06/04 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3067

 21世紀、南海トラフ大地震による巨大な地殻変動で日本は海底に沈没した。
 わずかに残った国土である北海道はR国が支配し、沖縄はC国が領土主張をして取り上げられた。本州では富士山山頂だけが海面に沈まず、そこに「大和民族」と称し生き残った日本人たちが住みついていたが……やがて、隣国Kの手で駆逐されてしまった。
 ついに日本国は世界地図からも歴史からも消滅してしまった。

 2・・・

8

シュガーキャッスル インザスカイ

15/07/24 コメント:14件 クナリ 閲覧数:3067

 ノコノコと呼び出されて来た夏の校舎の屋上で、同級生のタカユキの唇が血の香りを残して、私のそれから離れた。
 私は思い切り、タカユキの頬を張る。
「悪いけど私、喧嘩する人嫌いだから」
 ごしごしと、制服の袖で口を拭う。
「彼氏でもないのにのぼせていきなりキスする奴も嫌い。彼女がいるのに簡単そうな女にキスする奴も嫌い。私を簡単そうな女だとみなす奴も嫌い。じゃあね」
 高・・・

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茶封筒

13/04/22 コメント:3件 メラ 閲覧数:3065

 ある日、しこたま飲んだ帰りに郵便ポストを覗いた。特に意味はない。そうしないとどうでもよいゴミが溜まるからだ。しかし、その日はピザ屋の広告や、いかがわしいチラシに混じって、一通の封筒が入っていた。
 その茶封筒には恐ろしく達筆な文字で、自分とは違う、見覚えのない宛名が記されていた。しかし住所は東京都杉並区・・・。これはここの住所だ。
 封筒を裏返すと、書き主の名前が書いてある。これも恐・・・

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Mr. & Mrs. イトウ

12/06/23 コメント:2件 ヨルツキ 閲覧数:3065

「『いつか会社を辞めてやる』って言うけれど、私たちも『いつか離婚してやる』って思っているわよねえ〜」ミセス・イトウの声にそうよそうよ、とマダム友だちが笑い声をあげた。
「誰のおかげでメシが食えると思ってるんだよな。俺たちが働いているから3食昼寝つきの生活してやがるんだぜ」ミスター・イトウの声にそうだそうだ、と仕事仲間が笑い声をあげた。

 結婚式を挙げて30年。
 3人の子・・・

1

プリンセスと自転車

12/07/28 コメント:2件 鮎風 遊 閲覧数:3063

 亮介は駅から事業所までの近道を急いでいる。
 朝一番の会議までに資料を作成しておかなければならない。しかし、そんな慌ただしい中で思うのだった。
「今朝も彼女とすれ違うかな?」

 彼女とは、多分事業所近くに住む女性だろう。年の頃は二十五歳前後。
 きっとOLなのだろう、いつも亮介が事業所へと徒歩で向かっている時に、自転車を走らせ、軽快に駅へと飛ばしていく。
 ・・・

4

コアントローの昼下がり

13/11/18 コメント:7件 朔良 閲覧数:3063

「ゆかり、シュークリーム作ってよ」

 …それを今、この場面で言う?

「ぜぇーったい、いや」

 あたしは小鼻にしわを寄せて、相馬ののほほんとした顔をにらんだ。

「やっぱり?」
「なんで、今シュークリームなんて言うかな? バカなの? 死ぬの?」

 三日前に決別した元彼の新しい彼女が「サークルのみなさんに差し入れでぇっす」って持・・・

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海を失った男と、空を持たざる女

14/12/07 コメント:1件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:3061

 目先の利益に釣られて、大荒れの海に船を出したのが運の尽き。
 俺の人生は、風に打たれ波に砕かれた船ともども、転覆した。

 ――。

「これが呑まずにいられるか」

 意識は朦朧とし、胸には吐き気のみが溜まってゆく。
 しかし、それでも酒を呑まずにはいられない。
 吐瀉物の代わりに口を衝いて出るのは、悪態、雑言。

「それぐらいに・・・

4

減らないラーメン

13/05/31 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:3061


 仕事の第一線から退いた高見沢一郎、今は妻の夏子と穏やかに、いやそれなりに波瀾万丈に暮らしている。
 そんなある日、長女の真奈美が可愛い孫娘、愛沙を連れて、還暦夫婦の陣中見舞いにと遊びに来てくれた。

「お父さん、お母さんに我がまま言ったらダメよ」
「おいおい、いきなり注意かよ、そんなの陣中見舞いにならないよ」
 ちょっと不愉快な昼前だったが、「グランパ、ラー・・・

8

シベリア

13/10/24 コメント:17件 そらの珊瑚 閲覧数:3061

 JR御茶ノ水駅で降り商店街を歩く。丸善、レモン画廊を通り過ぎニコライ堂の緑青のドーム屋根が遠くに見えた。約束の店はすぐ見つかった。『兎や』は間口いっけんほどの小さなケーキ屋だった。がらがら……。自動ドアを見慣れた眼には硝子の引き戸が過去の遺物に感じる。
「こんにちは」「はいよー」
 店の奥から声がする。店の棚はがらんとして商品はない。もう予約販売しかしていないというのはどうやら本当ら・・・

3

プールの底

12/08/06 コメント:14件 泡沫恋歌 閲覧数:3060

「あたち、菜々美四歳、ひまわり保育園のタンポポ組だよ」
 クルッとした瞳の大きな女の子だった。プールサイドでは人目を惹く色の白さで、ひとりぼっちでいるが気になって声をかけた。
 この夏、僕は水泳部の仲間たちと遊園地内にあるプールの監視人のアルバイトをしていた。平日はさほどでもないが、土日は家族連れでプールは賑わっている。
「お母さんやお父さんと一緒じゃないのかい?」
「菜々・・・

5

R-12 三匹の子豚 (保護者同伴で読みましょう)

15/05/04 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:3059

 三匹の子豚の作った家で、頑丈な煉瓦の家は狼の襲撃にもビクともしませんでした。
 そのことで自信をつけた末っ子の子豚は「子豚ハウス」という建設会社を立ち上げました。注文住宅専門で設計から施工まで引受けるのです。
 人手(豚足?)が必要なので、ダメな兄二匹を雇うことにしました。
 一番上の兄には営業に回って貰うことにしました。「よし! 俺が注文を取ってくるぞ」と勇ましく飛び出した兄・・・

8

【 怪談 】時雨番傘

13/08/03 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3058

「おや、こな所で雨宿りでありんすか」
 いきなり漆黒の闇から女の声がした。
 男は薬の行商を生業にする者で、山を越えて街道沿いの宿場まで商いに行った帰りであった。客の家で商いの話しが終わると膳が出されて、酒を呑み交わし寛いでいたら、すっかり遅くなってしまった。
 山道を帰る途中で陽が沈み、あたりは真っ暗闇になった。折からの時雨(しぐれ)に提灯も点かず、一寸先も見えない、この暗闇に・・・

1

みな様へ、 犬一匹からのご挨拶

12/10/09 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3049

 初めまして。
 僕は犬一匹です。
 せっかくの機会、この場を借りて、みな様へちょっとだけですが、ご挨拶申し上げます。


 僕がこの家に住み出して、随分と歳月が流れました。
 そう、それは10年前です。生まれたての僕はダンボールの箱に入れられて、公園に捨てられていたのです。当時、幼なかったエッコとヨックンがクンクンと泣いていた僕を家に連れて帰ってくれました。<・・・

5

デンオとテツオ

17/04/02 コメント:5件 入江弥彦 閲覧数:3049

 僕は電車オタクだ。
 自分でそう言っているわけではないし、本当はみんながいうほど電車が好きなわけじゃない。
 けれどもそれが僕のイメージであり、まわりからの評価なのだから仕方がない。電車オタクでは長いからと、デンオと呼ばれている。
 クラスメイトが僕のためにとランドセルがパンパンになるほど詰め込んでくれた紙くずを捨ててから、いつもの場所に向かった。
 立ち入り禁止の看板を・・・

16

スーラ・スールの咲かないザクロ

16/01/09 コメント:16件 クナリ 閲覧数:3048

 スーラ・スールという名前は、十五歳の冬に私が自分で付けた。
 綴りが簡単で、女らしいが男かもしれない名前。

 昨日自転車を置き忘れた通りに行くと、既になくなっていた。
 辺りを見回していたら、冬枯れの木が並ぶ路地に痩せた家が建っており、そのドアの脇に私の自転車が立てかけてあった。
 家は、随分うらぶれている。空き家かもしれない。
 私は鍵のかかっていないドア・・・

3

〔アンテナきのこ〕

12/10/10 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3048

 俺の部屋にはテレビが三台ある。一台目はテレビ放送を観る用、二台目は録画専用、三台目は古いブラウン管テレビで地デジになったので映らないが、DVDの再生とゲームならできるので捨てないで取ってある。
 このブラウン管テレビが、ある日勝手にしゃべり出した。
『やあ! テレビの前の君、私とジャンケンをしよう』
 俺は驚いて言葉もでない。電源が入っていないテレビの画面が写っている。
・・・

10

あしたのりんご

15/04/19 コメント:15件 たま 閲覧数:3046

テーブルの上に、あした買ってきたりんごを置いてあると言う。
もちろん、そんなもの私には見えない。母だけが見ることのできるりんごだった。

今朝も雨が降っていた。桜の季節はいつも雨に邪魔される。と言っても、花見は好きじゃなかった。久しぶりの休日だし、すべては雨のせいにして春眠を味わう。たまには御褒美がほしい発育不良の大人だったから。
九時すぎに目覚めた。
「かあさん、お・・・

2

地平線に祈る

13/01/20 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:3041

そこを寺というのは勇気がいった。
しかし、そこは紛れもなく寺なのだ。

インドで日本人観光客向けのガイドを初めて4年が過ぎたが、それは初めての要望だった。
「仏教発祥のころのような寺が見たい」。
学生のバックパッカーが個人でガイドを雇うなどと、無駄に金をかけたのは、ツアーやガイドブックでは知りえない現地情報を求めてのことだったのだな、と合点はいった。
だが、観光・・・

0

カラス

12/04/21 コメント:0件  閲覧数:3039

大粒の雨が降り注ぐ都会の午後。

私は、とある雑居ビルの屋上にいた。
何をするでもなく、ただぼんやりと通りを行き交う人々の姿を眺めていた。
雨の日にここから眺める景色は、この上なく美しい。
アスファルトの上を色とりどりの傘の列が右へ左へ流れていく。
まるで花が咲いているようだ。
晴れた日には決して見ることができない光景だ。
私はこの景色が好きだった。・・・

0

心の傘

12/04/19 コメント:0件 さとる 閲覧数:3036

彼は毎日毎日、うんざりしていた。
上司に叱られ、同期に嫌みを言われ、時には有ること無いこと悪口を言われ続けていたのだ。
心無い言葉の雨は冷たく、彼の心を容赦なく冷やし、濡らしていった。
それでも、毎日生きていた。
けれど彼も人間だから、時に愚痴をこぼすこともある。
今日は彼の友人が、愚痴の嵐の犠牲者だ。
友人には悪いと思いながらも、愚痴は止まらない。
けれ・・・

3

格闘技いうたら、プロレスやろ!

12/09/10 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:3036

「格闘技いうたら、プロレスやろ」
 父は懐かしそうに目を細めた。酒をやめなければ体に悪いと何度言っても聞かない。うるさく注意すると、上目使いに「これ一杯だけで終わるから」とか「息子と飲む酒は格別だから今夜だけは許してくれよ」なんて言い出す。私はその言葉に弱い。同居をしようと言っても父は頑として首を縦に振らない。それどころか、「たまに会うから酒も美味いんだ」と笑ってごまかす始末で、いつも話をは・・・

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高速で駆け抜けた男

12/08/30 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:3035

 男は先ほどから自室で悶々と呟き続けていた。
「何てことだ、医者はこれ以上走るなと言った。オリンピックを夢見て誰よりも練習した結果がこれだというのか……」
 2年前、男はマラソン界で注目を浴びた。オリンピックに出場できる逸材だとあちこちのマスコミに騒がれたが、それがいけなかった。練習時間を増やしたことは却って足を限界に導いてしまった。あれほど騒いでいたマスコミは潮が引くように去ってしま・・・

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酒の音

13/07/15 コメント:7件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:3034

 あのときはまだ、昭和だったかな。
 ぼくはせまいアパート住まいで、部屋には風呂がなくていつも、近くの銭湯にかよっていたときのことだ。工場の仕事が終わって、一汗ながしにいく風呂は最高で、ときどき入れ墨した人が横に入っていることもあったけど、肌と肌のふれあいの場だから、それもしかたがない。
 銭湯の帰りにはかならず、たちよるところがあった。労働で油にまみれた体を洗いおとして、さっぱりした・・・

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