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チャンネル 『1059』

12/10/18 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:3432

「花形博士、この世紀の大発見、ビジネスとして世に打って出たらどうでしょうか?」
 助手の河瀬は恐る恐る進言した。「うーん、どうしようかね」と、博士に少し迷いがあるのか、曖昧な返事しか返ってこない。
「そうですか。博士の場合、もし奥さんが知れば離婚問題に発展しかねませんからね。じゃ、この発見、封印してしまうのですか」
 河瀬が残念そうに表情を曇らせた。それに反し、今度は花形博士は背・・・

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迷惑な隣人たち

13/11/15 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:3428

 郊外に住む主婦の沙織さんは、今年三十二歳で三人の子供のお母さん。長女は六歳で小学一年生、次女は五歳で幼稚園、少し離れた長男は十ヶ月になります。旦那さんは真面目なサラリーマンです。ごく普通の主婦沙織さんの趣味はガーディニング、家の周りはいつもお花でいっぱい、道行く人々の目を楽しませてくれてます。
 沙織さんの家は一年前に購入した新築分譲住宅で、三軒家が並んで建っています。真ん中が沙織さんの家・・・

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縁切寺

13/01/05 コメント:15件 そらの珊瑚 閲覧数:3427

 今しがた掃いたばかりの庭に、赤い椿がぽとりと落ちた。
 まだ息をしているようで、すぐさま捨てるのも何やらしのびない。そのままにしておこう。
 むきだしになった剃髪に、ひんやりと触れていくものの気配がして、空を仰いだ。
「また雪か……」
 淡雪のたよりなく落ちてくるさまは、ここへたどりつく者たちの、行き場を求めてさまよう悲しみと重なる。
 
 ふと何やら山門の外・・・

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菖蒲湯の鯉

12/04/27 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:3424

 幼い頃の我が家は貧乏で、鯉のぼりなんてありはしなかった。端午の節句の恒例行事といえば、父に連れられていく近所の銭湯の菖蒲湯くらい。もっともガキだった当時の僕には菖蒲湯のありがたみなんか分からなくて、お目当ては他では見ることのできない鯉の絵だった。
 それは、銭湯に来ていたどこかのおじちゃんの背中に鮮やかに描かれていた。滝を昇る一匹の緋鯉。持ち主の背中の筋肉と一体になって、まるで生きているよ・・・

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九分九厘あり得ぬ話

15/02/22 コメント:17件 光石七 閲覧数:3421

 あの男がこのような暴挙に出ようとは。秀吉の援軍に向かわせたはずが主君を奇襲。信長は歯噛みしつつ、なだれ込んでくる兵に矢を放つ。
(光秀……!)
弓が折れ、信長は薙刀に持ち替えた。近づく兵を切りつけ、突き刺す。鉄砲の弾が信長の肩をかすめた。敵勢は更に押し寄せてくる。信長は応戦を諦め部屋に下がった。寺に火を放つよう蘭丸に言いつけ、奥の小部屋に向かう。
(ここで果てようぞ)
戸・・・

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アンナのアリア

15/01/24 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3412

18世紀、ウィーンはハプスブルク家が栄華を誇り『音楽の都』と呼ばれていた。当時はヴィヴァルディやバッハのバロック音楽から、交響曲の父・ハイドンを中心にウィーン古典派が開花しようとしていた。ヨーロッパ中から成功を夢見る、才能溢れる音楽家たちが集まったウィーンの街外れの下宿屋に、その音楽家は住んでいた。
彼は下宿屋の娘と恋に落ちて、今度、公演するオペラの成功を強く望んでいた――。

・・・

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日常と、最後の手紙

13/04/13 コメント:9件 青海野 灰 閲覧数:3412

春の爽やかな朝日の差し込む明るい喫茶店には、似つかわしくない悲しげなジャズピアノが、誰からも忘れ去られたように流れていた。
結婚してからもう数年が経つが、こうして朝食を外でとるというのは、意外にも初めてのことで、二人で微かに驚いて笑ったりもしていた。

カウンター席から眺める外の風景は、慌ただしくもありふれた日常を映し出していて、僕の精神を激しく揺り動かし続けた音のないやりとりも・・・

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「憎い娘」

16/08/15 コメント:8件 葵 ひとみ 閲覧数:3411

 ある日、ひとりの女がはるばると山をのぼり仙人のもとをおとずれました、

その女は仙人にこう相談したのです。

「仙人さま、私は後妻なのですが、

私の旦那の前妻の娘が憎くて憎くてほんとうにたまりま

せん。

主人には驚くほどなついているのですが、私にはまったくなつかないのです」

それを聴いた仙人は答えました、

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【猫探偵】ショートグッドバイ

13/07/12 コメント:17件 そらの珊瑚 閲覧数:3409

 とある雑居ビルの二階の南西角部屋がワタクシ『猫探偵』の住居を兼ねた事務所である。午前八時きっかりにドアが開く。事務員の時子さんの出社だ。何事にも正確であることをモットーにしている。
「おはようございます、先生」
 今日もただの一本の後れ毛もなく髪を頭頂部でシニヨンでまとめ(はやくいえばひっつめ髪ですな)そのためいくぶん目尻のシワは伸ばされ若干つり目になっている。見た目はとても五十歳に・・・

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雪響 ――ミグナッハはかく歌い――

13/11/22 コメント:19件 クナリ 閲覧数:3409

私が十九歳で、合唱団最高格の歌姫を辞め、駆落ちした夜は、酷い雪だった。
大陸の端の一大都市、『歌と水の町』の冬。
貴族院付きだった私の逃亡は、団の名に泥を塗ることになる。<脱走死罪>の団の私兵をやり過ごすために私達は雪に潜り、長い時間、道端に伏せた。
追手が諦めて去る頃、私に覆い被さった恋人は凍死していた。私も寒さで病み、お腹に宿していた命が流れて散った。
歌う為に生きてき・・・

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青空に書いた手紙

15/04/03 コメント:6件 南野モリコ 閲覧数:3406

前略、通学路様。
 僕は、今日で高校を卒業します。ここを通って学校に行くのも今日で最後になります。僕はこの村で生まれた、恐らく最後の子供です。最後の登校に、今日はあなたに感謝の手紙を書きます。

「感謝」とは、「感」じて「謝る」と書きます。僕は今、通学路であるあなたに、心から感謝しています。母さんに手を引かれて初めてこの道を通った時、僕は4歳でした。今日のあなたは14年前と少しも・・・

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盤上の風

13/06/29 コメント:13件 そらの珊瑚 閲覧数:3400

 故郷の春を想う時、それは『からっ風』と呼ばれる山々を越えてきた強い風が吹いていくる。あの風に背中を押されるように、俺は小学校に入学する前から近所の将棋センターに通った。
    ◇
 古い木造家屋の硝子戸に顔を寄せてじっと中の様子を見ていると、先生と呼ばれるそこを経営しているおじさんがやってきて、「坊や、また来たんか」と中へ入れてくれる。
 
 ダルマストーブの上にはシュ・・・

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父と母の高校野球

12/08/10 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:3392

 遼一は母・幸子(さちこ)が一人暮らしをしていた実家に戻り、片付けをしている。そして弔いのために、母が好きだった高校野球のTVのボリュームを上げる。部屋中に歓声が轟く。そんな時に、大事そうに仕舞われてあったノートを見つけた。

 遼一はなんとなく感じ取った。それは母が遼一に伝えておきたかったことではないかと。
 遼一は拾い読みをした。そしてそこには遼一が知らない母がいたのだ。

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人は死んだら星になる

14/07/27 コメント:4件 スレイ 閲覧数:3385

交通事故で亡くなった母のお通夜の帰り道、当時4歳だった妹のユウが私の服の袖を握りながらこんなことを言った。
「ねえ、お母さんはどこに行ったの?」
ユウは「死」というものをまだよく理解出来ていないのだ。私は考えた。どう答えようか。どう答えたら妹が「死」を理解できるのか。どう答えたら幼い妹はショックを受けずに済むだろうか。
それはその頃の小学四年生の私には難し過ぎる質問だった。私は何・・・

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夕立ち

12/06/01 コメント:4件 そらの珊瑚 閲覧数:3383

 雨の匂いがする、と塔子は思った。
 
 塔子は昔から極度に嗅覚が鋭いところがあって、いい匂いにしても、そうでない匂いにしても人より早く、強く匂ってしまうタチらしい。
 匂いというものは、歓迎するしないにかかわらず、、勝手に向こうからやってくるのだから仕方ない。
 ああ、何かに似ている。そうだ、恋はたぶんこんな感じだったんじゃないか。かつて恋をしていた時のことを思い出した。・・・

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ハンセイの味

16/07/13 コメント:0件 リンリン 閲覧数:3383

 炒りつけるような熊蟬の鳴き声に莫迦にされているみたいな朝、サチコが金魚に餌をやろうとしていた。千切りにした大根を俎板の上に置き去ったサキエが、今日の昼頃にヤスオが弁当持ちで帰って来ると、受話器先のサチコの祖母に伝えていた。それを耳にしたサチコは金魚の世話を放ったらかして朝食も摂らずに学校へと急いだ。
 ヨシダという表札の掛かった三階建ての玄関先にいる厳かなブルドックに恐れをな・・・

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略奪恋愛ゲーム

13/10/09 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:3380

 私にとって恋愛はゲームと同じだった。
 たとえば素敵な彼氏を連れた女がいるとすれば、その男に近づいて、誘惑して“略奪愛”で自分の彼氏にする。だが、奪ってしまえば熱は冷める。結局、男は捨ててしまうだけだった……それでも略奪恋愛ゲームは止められない。
 なぜかって? 恋の勝者である自分に酔い。人の男を振り向かせることで自分の価値が確認できる。恋人を盗られた女の悔しがる顔が見たい……この腹・・・

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応援グッズ

12/05/06 コメント:2件 智宇純子 閲覧数:3374

「もしかしたら、明日、死んじゃうんじゃないかしら」

 少し薄暗くなってきた廊下を歩きながら、香織はそんなことをぼんやり思っていた。右手にはちょっと小ぶりの緑色のビニール傘。
 死んじゃう、というより、存在が消えてしまう?消滅してしまう?そんなイメージ。家族に不満があるのではない。世の中がつまらないわけではない。今日も親友の敏子と一緒に大笑いした一日だった。確かに、担任の小宮に眼・・・

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風師中級試験

13/02/24 コメント:7件 そらの珊瑚 閲覧数:3372

ここは風師たちの住む丘。外の世界からは透明なシールドによって、隔離かつ保護されていた。あの時代の反省によって。
 今から数百年を遡った話である。貴重なレアアース資源をめぐって内戦が起きた。稲を育て、水を尊び、家畜を放牧し、野で歌を唄い、豊かな自然とともに質素に暮らしていた民の生活が一変してしまった。目先の金に目がくらんでしまった。
レアアースが産出される土地を奪おうと、民は歌を捨て、・・・

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告白

13/10/11 コメント:22件 murakami 閲覧数:3362

 1976年のことです。私は高校を出て、就職したばかりでした。ある日、同じ職場の3歳年上の男性から結婚前提の交際を申し込まれたのです。まじめで優しそうな方だったので了承しました。交際するうちに彼の誠実さに惹かれ、週末のデートが何よりの楽しみになりました。
 ところが3ヶ月程たったある日、二人でドライブ中に事故にあってしまったのです。助手席に座っていた私は、追突された拍子にダッシュボードに顔面・・・

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ダン・ド・リオン空港

15/01/17 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:3362

 一面たんぽぽが咲いている野原、住人たちは、ここを『ダン・ド・リオン空港』と呼ぶ。春の陽を受けて、のどかであった。
 蜘蛛がたらした糸は、見事に地球に対して垂直を保っている。
「たんぽぽの皆様、本日は無風であります。全フライトは延期いたします」
 ピ、ピ、ピ。管制官の雀のアナウンスが響く。
 今日あたり、たんぽぽの離陸が見られると思い、見物に出かけてきた蛙のカップルが

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トライアングル

12/08/22 コメント:4件 そらの珊瑚 閲覧数:3360

 夫婦の形態は、もちろん人それぞれであろうが、夫が家で仕事をする人は少数派かもしれない。うちは夫が物書きなので、始終一緒だ。
 もともと私は夫が書く小説のファンであり、それは現在進行形だ。思えば中学生の時からであるからして、それはもう年季が入っている。同級生が、アイドルにうつつをぬかしている時期、作家如月周(きさらぎ あまね)に疑似恋愛をしていた。
 のちに知るのだが、その名前はペンネ・・・

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飛行機雲の下で教習

13/02/01 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:3356

空を見上げると飛行機が一機、南に向かって飛んでいた。
2月の澄み切った青空に、一筋の飛行機雲が描かれた。
小岩隆弘は、欠伸をしながら『クボタ フォークリフト教習所』の門をくぐった。
受付で名前を伝えた後、指示された第一教室の扉を開けた。
「おはようございます。お名前は?」
白髪混じりの男が苛立たしげに聞いてきた。
教室の席には、7名の受講者が座っていた。
・・・

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二つの祖国とオリンピック

12/08/31 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:3353

 エスタジオ・ド・マラカナン、それはメイン・スタジアム。そして今、そこにはリオのカーニバルが再現され、サンバのリズムが轟き渡っている。
 南米初のブラジル・オリンピックは2016年8月5日から8月21日まで17日間開催された。そして今夜、閉会式を迎えた。

 2012年のロンドン・オリンピック以降、準備は加速されたが、なにぶんリオデジャネイロは混雑したメガシティ、そして「リオ人は・・・

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黒と白

12/05/28 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:3353

しほちゃんは、お昼ごはんのあと、画用紙にクレヨンで、絵をかいていました。
ぽかぽかあたたかい日で、おなかはくちくて、しほちゃんは、うつらうつらすると、ことん、と寝てしまいました。

しほちゃんが、すーすー、寝息を立てているのを確認して、クレヨンたちがニョキニョキっと立ち上がりました。

「あ〜あ。らんぼうに握るから、体が半分で折れちゃったよ」

「私なんか・・・

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最後の暴君

13/07/01 コメント:8件 光石七 閲覧数:3349

 国王が急な病で床に就いた。二十歳を過ぎたばかりの王太子が留学先から密かに呼び戻される。国王の病状は深刻で、もはや治る見込みがなかったのだ。
「畏れながら、まもなくあなた様は一国の王となられるでしょう。どうかお心づもりを……」
側近が王太子に告げる。王太子は頷き、国の現状を尋ねた。
 まもなく国王が崩御した。新国王の誕生だ。国民は新しい国王を歓迎した。外国で見聞を広め、旧態を打破・・・

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温もりに敵わない

13/03/12 コメント:8件 クナリ 閲覧数:3346

三月の夕暮れは、思ったよりも早く訪れてきていた。
富士山の裾野にある遊園地の賑わいはまだまだ続いているが、
「あと一時間くらいで、ほとんど閉園だね」
四月から大学生になるサナが、高一の終りを迎えているカケルに言った。
乗り足りない気分はあったが、カケルにとってはサナの隣にいる時間にこそ意味があった。ただ、サナにとってはそうではないことも分かってはいた。
「すみません、・・・

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神は……

13/07/31 コメント:9件 光石七 閲覧数:3345

「ありがとうございます。先生は神様です」
患者の家族が涙ながらに感謝してくる。難度の高い手術を次々とこなす私を「神の手だ」ともてはやす輩もいる。私はそのように言われるのが好きではない。もちろん心臓外科医としての矜持も、それなりに鍛錬を重ねてきた自負もある。担当した患者が元気な姿で退院していくのはうれしい。しかし、どこかやりきれない思いが残る。
 患者全員を助けられるわけではない。手術の・・・

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白球のゆくえ

12/07/25 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:3340

 健は深い感慨にとらわれていた。

 健は西宮育ちのせいか、幼い頃から甲子園は身近な存在だった。いつかあの甲子園に行くんだと夢を膨らませていた。しかし、その夢は破れ、結局甲子園の土は踏むことは叶わなかった。しかし野球少年の夢は、産まれた子ども、夏樹に受け継がれ、今日、ようやく果たされたのだった。夏樹の高校は、8回の予選を勝ち抜き、激戦区と言われる大阪代表として次の試合に出るのだ。

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ふきんとふきん掛けを巡る復讐

13/11/11 コメント:5件 rug-to. 閲覧数:3340

「た、ただいま…」
「おかえり、何をおどおどしてんの」
付き合って1年半になる彼女は、少し笑って僕を出迎えた。
「いやー、何か『ただいま』と言うのはまだ照れますなあ、はは」
「自分の家だと思えばいいのよ。それとも家賃一部払う?」
「払おうか?」
答えた僕に、彼女は一瞬の間を置いて、
「うーん、今はいいよ。大丈夫」
とだけ言って部屋に戻った。僕も靴を脱・・・

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燃えた きんしゃち

13/06/02 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:3336

 じいちゃんは、なんで花火が嫌いじゃって? そりゃ悲しくなるからや。

 じいちゃんが、ちょうどおまえくらいの中学生の頃の話じゃ。
 その頃日本は戦争してた。すでに学校で勉強なんてしなくなってたな。勉強しないでいいなあ、って? 勉強しない代わりに、勤労学徒っていってな、工場で働くんだぞ。爆弾作ったりするんだぞ。真っ黒になってな。じいちゃんの同級生だけど、暴発して手首がなくなってし・・・

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なぜ、その子はテーブルの上で息絶えていたのだろうか?

15/04/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:3334

 五月三日、世間がゴールデンウイークで賑やかなその日、幼い姉弟の遺体が発見された。
 なぜか、姉はテーブルの上で絶命しており、弟は姉が乗ったテーブルの足元で蹲るようにして息絶えていた。腐敗が進み悪臭が漂ってきたことから同じアパートの住人が通報し、やってきた警官によって発見された。警官はその凄惨な姿に顔を背けた。

 空っぽに近い冷蔵庫の扉は開けっ放しのままで、床には調味料の瓶や容・・・

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海を失った男と、空を持たざる女

14/12/07 コメント:1件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:3331

 目先の利益に釣られて、大荒れの海に船を出したのが運の尽き。
 俺の人生は、風に打たれ波に砕かれた船ともども、転覆した。

 ――。

「これが呑まずにいられるか」

 意識は朦朧とし、胸には吐き気のみが溜まってゆく。
 しかし、それでも酒を呑まずにはいられない。
 吐瀉物の代わりに口を衝いて出るのは、悪態、雑言。

「それぐらいに・・・

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赤色 巡礼の旅で

12/07/21 コメント:6件 ryonakaya 閲覧数:3331

 母が心不全で亡くなり、一週間が経つ。前日までお気に入りの赤い折りたたみ自転車
に乗って元気に駅前の繁華街まで出かけていたのだが、行きつけの洋品店で倒れ、その
まま帰らぬ人となった。赤い折りたたみ自転車は2日ほど前に洋品店のご主人が届けて
くれた。遺品の整理もしなければ、と思いつつ、体も頭も動こうとはしない。
 小さく折りたたまれて届いた自転車は、玄関にそのまま置いては・・・

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邂逅記

15/08/24 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3329

 まったく先生のていたらくには愛想が尽きる。
 夏木露山(なつき ろざん)は、帝国日本を代表する立派な文学者である。代表作の「猫の始末記」「膝枕」「これから」などは素晴らしい文学で深い感銘を受けた。そんな夏木先生に憧れて書生になったのだが、同じ屋根の下で暮らすようになると先生に対する幻想が壊れてしまった。
 駒込千駄木町に居を構え、先生の奥様とお子さんが五人と女中が住んでいる。先生の収・・・

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サンタクロース会議

12/11/30 コメント:3件 寒竹泉美 閲覧数:3324

 今年のサンタクロース会議は、波乱に満ちた幕開けとなった。開催のあいさつが終わるやいなや、ひとりの若いサンタクロースが立ち上がり、議長が止めるのも振り切って、とうとうと演説し始めたからだ。
「僕はどうしてもこの場を借りて言いたいことがあります。みなさんがご存じのように、最近、僕たちは人間の子供から感謝の声を聞くことが少なくなった。その原因は明らかです。親たちが、手柄を横取りしているせいなので・・・

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全部ぶち壊せ!

16/01/04 コメント:9件 霜月秋旻 閲覧数:3322

 消費している。僕はただ、毎日を消費して生きている。特別欲しいものは何も無い。知りたいこともない。そんなもの、あってもネットで検索すればすぐわかる。
 ぬるま湯に延々とつかっているような毎日だった。体温が、お湯の温度と共に熱を加えられることも無く段々と下がってゆく。そんな日々を、これから何十日も何十年も過ごしていかねばならない。そう思って窓の外の景色を覗いていると、突然、その男は現れた。

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野良猫のルドルフ

16/03/29 コメント:11件 泉 鳴巳 閲覧数:3321

 おれは猫だ。名前もちゃんとある。

 名はルドルフ。濡れたような艶のある毛並みが自慢の黒猫だ。
 この名前はハヅキさんという人間が付けたんだ。なんでも人間の読み物からとったそうだ。おれは名前なんて何でも良いのだけれど、しかしルドルフという響きはなんだか気に入ってもいた。

 おれは野良猫として生まれ、自分の力だけで生きてきた。野良として中堅の域に達していたおれだが、・・・

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R-12 三匹の子豚 (保護者同伴で読みましょう)

15/05/04 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:3320

 三匹の子豚の作った家で、頑丈な煉瓦の家は狼の襲撃にもビクともしませんでした。
 そのことで自信をつけた末っ子の子豚は「子豚ハウス」という建設会社を立ち上げました。注文住宅専門で設計から施工まで引受けるのです。
 人手(豚足?)が必要なので、ダメな兄二匹を雇うことにしました。
 一番上の兄には営業に回って貰うことにしました。「よし! 俺が注文を取ってくるぞ」と勇ましく飛び出した兄・・・

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京都嵯峨化野(あだしの)幽霊伝説殺人事件

12/05/09 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:3315

 この街ではよく殺人事件が起こる。
 現場は祇園、西陣、鞍馬、嵐山あたりが多く、だいたい市内の中心部か北寄りだ。午後九時から十一時にかけて、平均二、三人が殺される。月曜か金曜、土曜日が一般的だが、木曜八時台もおなじみだ。
 
「おはよう、しょうちゃん。きのうのドラマ見た? 九時からのやつ。あれ、しょうちゃんちの裏の竹林やろ? 血がぶしゅーって飛んですごかったな。『幽霊伝説殺人事件・・・

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奪われた時間

13/04/19 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:3313

 奪われた時間は、永遠に止まったまま。彼らは、待っている……寂しさを埋めてくれる誰かを。
 
  ◇    ◇ 

「お父さん、何でそんなこと聞くのよ、友達だって言ってるじゃない」
「心配なんだ、結のことが」
「男の子だって、友達なんだから、いちいち詮索しないでよ」
 私は、父に構わず、どんどん先にたって歩き出していた。中学生にもなったというのに、父はまだ・・・

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メグ・ワールド

12/09/27 コメント:4件 ryonakaya 閲覧数:3309

 娘が保育園から退園の通告を受けた。妻は青い顔をして、
「この子、集団生活ができないんだって。困ったわ」
 子供を嘆いているのか、私に訴えているのか、自分を責めているのか、とにかく、子供の行く末が危ういとでも言わんばかりの口吻で部屋の中を行ったり来たりしている。私は妻の右往左往するその姿こそ先が危ういと、腹の中で笑っていた。3歳になったばかりの女の子が、集団生活を円滑にこなしている方が・・・

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ぼくの冒険

12/04/08 コメント:0件 翡白翠 閲覧数:3303

 赤い中に、ぼんやりした光がともる提灯。もう夜遅くで、お日様も地面に沈んだのに、ぼくの周りは活気に満ちている。目を輝かせながら、目の前を見つめる。木で作られた扉からは明かりが透けて見えて、まるで天国のように思える。
 でも、ぼくはそこへはいけないんだ。居酒屋とお母さんには聞いたけど、子供が行っちゃけないと言われた。ガミガミうるさいものだ。自分の息子くらい信用すればいいのに。
 ここにず・・・

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昼行燈

12/05/08 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:3302

 幕末の京都。とある居酒屋で、関東から上洛してきたばかりの浪人が売り出しに躍起になっていた。男の名は大田一蔵。
「わしの名前は江戸ではちょっとしたものだったぞ。ある道場主などは、道場破りが来るたびに助っ人を頼みにきたくらいでな」
「そんな情けない道場主がありますかね?」
 一緒に飲んでいた瓦版売りが疑いの目を向けた。
「わしを疑うのか?」
 そのとき、一蔵の目に店の奥・・・

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バッテリー

12/08/01 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:3300

「本当に辞めてしまうんですか?」
 部下だった下村が、まだ疑わしそうに訊く。今日で俺は三十年務めた会社を退職した。断わったのだが元部下たちが集まって送別会をやってくれた。一次、二次、三次と……最後の四次会は下村と二人になってしまった。彼とは長年一緒に仕事をした仲だ。
「部長が辞めたら……俺はどうしたらいいんだろう?」
 下村は目頭を押さえて、項垂れた。
 送別会の〆は俺と下・・・

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うまんまの箸

12/12/05 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:3299

 単身赴任中の高見沢一郎、パソコンの前でコンビニ弁当を突っつきながらふと思い出した。それは幼い頃に祖父がポロリと漏らした『うまんまの箸』のこと。一体それはどんなものだろうか? ネット検索すると……。

 うまんまの箸は香木うまんまの木から作られ、それを使うとすべての食べ物が美味しいと感じられる。
 材料となるうまんまの木は森深くに育つ落葉樹。初夏に可憐な花を咲かせ、秋には真っ赤に・・・

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タピオカに殺されかけた私

14/11/17 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:3299

 今日は、秋晴れで、絶好のドライブ日和。

 娘の運転で、孫と私と三人で、ドライブにでかけた。

 カーシートに乗った十一か月の孫は、
「あー、あー。」
と、大きな声をあげて、はしゃいでいる。
 私も、ドライブは大好きなので、気分はうきうき。娘との会話もはずむ。

 赤や黄色に色づいた木々を眺めながら、車は走る。
「うわー、きれいじゃなぁ・・・

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うちのおにいちゃん

12/11/19 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:3296

 昭和40年代は塾もテレビゲームもパソコンもなかった。
 子どもたちは日が暮れるまで外で遊びまわっていた。ひざ小僧はいつも傷だらけ、野原が大好き昭和の子どもたち。貧しかったけど、元気いっぱいの子どもたちが路地で、空き地で、駄菓子屋さんの前で……そこらじゅうに溢れていた。
 どこにもいるような、わんぱく坊主の兄と妹のお話です。

                  *
・・・

7

浸食

12/10/30 コメント:7件 クナリ 閲覧数:3296

女だてらに、金曜日だからと調子に乗って残業をしていたら、22時を回ってしまい、さすがに集中力にも限界が来て、会社を出る準備をした。
更衣室へ入って制服のスカートを脱ぎ、濃紺のデニムへ履き替える。
都内と言うよりも下町と表現した方がふさわしい場所にある社屋を出て、私は駐車場へ向かった。
居酒屋やレストランが灯す明かりの中のひとつ、なじみのコーヒースタンドでモカを頼んだ。
眠気・・・

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ぶたれい

12/06/01 コメント:0件 AIR田 閲覧数:3293

「私はね、ここで豚から人間に生まれ変わったことがあるんだよ」
 サクサク。サクサクと、衣を噛む軽快な食リズムがとんかつ伊勢に響き渡り、それに耳をかたむけていると、いつの間にやら隣に座っていたおじさんが僕に話しかけてきた。
 あのう、他に空いている席があるんですけど、と言おうか言わないか迷っていたが、でも多分言えないだろうと思っていた。
「豚だった頃が懐かしいよ。あ、決してとんかつ・・・

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