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7

【猫探偵】ショートグッドバイ

13/07/12 コメント:17件 そらの珊瑚 閲覧数:3258

 とある雑居ビルの二階の南西角部屋がワタクシ『猫探偵』の住居を兼ねた事務所である。午前八時きっかりにドアが開く。事務員の時子さんの出社だ。何事にも正確であることをモットーにしている。
「おはようございます、先生」
 今日もただの一本の後れ毛もなく髪を頭頂部でシニヨンでまとめ(はやくいえばひっつめ髪ですな)そのためいくぶん目尻のシワは伸ばされ若干つり目になっている。見た目はとても五十歳に・・・

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僕の目の前で、親にドブネズミと言われた少女

15/02/14 コメント:13件 クナリ 閲覧数:3252

渋谷駅を出て、会社への近道になる裏通りへ入る。
すると脇の建物から、いきなり高校生くらいの女の子が転がり出して来た。
その建物の入り口には、似たような年格好の女子が三人程立っている。
「大げさに転ばないでよ。あんた、池袋かアキバに行けば」
転がって来た子は、成程、ヘッドドレスからロリータワンピース、リボンパンプスまで、ゴシックロリータで決めていた。
その子は三人を睨み・・・

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応援グッズ

12/05/06 コメント:2件 智宇純子 閲覧数:3249

「もしかしたら、明日、死んじゃうんじゃないかしら」

 少し薄暗くなってきた廊下を歩きながら、香織はそんなことをぼんやり思っていた。右手にはちょっと小ぶりの緑色のビニール傘。
 死んじゃう、というより、存在が消えてしまう?消滅してしまう?そんなイメージ。家族に不満があるのではない。世の中がつまらないわけではない。今日も親友の敏子と一緒に大笑いした一日だった。確かに、担任の小宮に眼・・・

1

夕立ち

12/06/01 コメント:4件 そらの珊瑚 閲覧数:3248

 雨の匂いがする、と塔子は思った。
 
 塔子は昔から極度に嗅覚が鋭いところがあって、いい匂いにしても、そうでない匂いにしても人より早く、強く匂ってしまうタチらしい。
 匂いというものは、歓迎するしないにかかわらず、、勝手に向こうからやってくるのだから仕方ない。
 ああ、何かに似ている。そうだ、恋はたぶんこんな感じだったんじゃないか。かつて恋をしていた時のことを思い出した。・・・

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アンナのアリア

15/01/24 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3248

18世紀、ウィーンはハプスブルク家が栄華を誇り『音楽の都』と呼ばれていた。当時はヴィヴァルディやバッハのバロック音楽から、交響曲の父・ハイドンを中心にウィーン古典派が開花しようとしていた。ヨーロッパ中から成功を夢見る、才能溢れる音楽家たちが集まったウィーンの街外れの下宿屋に、その音楽家は住んでいた。
彼は下宿屋の娘と恋に落ちて、今度、公演するオペラの成功を強く望んでいた――。

・・・

2

赤色 巡礼の旅で

12/07/21 コメント:6件 ryonakaya 閲覧数:3247

 母が心不全で亡くなり、一週間が経つ。前日までお気に入りの赤い折りたたみ自転車
に乗って元気に駅前の繁華街まで出かけていたのだが、行きつけの洋品店で倒れ、その
まま帰らぬ人となった。赤い折りたたみ自転車は2日ほど前に洋品店のご主人が届けて
くれた。遺品の整理もしなければ、と思いつつ、体も頭も動こうとはしない。
 小さく折りたたまれて届いた自転車は、玄関にそのまま置いては・・・

2

トライアングル

12/08/22 コメント:4件 そらの珊瑚 閲覧数:3242

 夫婦の形態は、もちろん人それぞれであろうが、夫が家で仕事をする人は少数派かもしれない。うちは夫が物書きなので、始終一緒だ。
 もともと私は夫が書く小説のファンであり、それは現在進行形だ。思えば中学生の時からであるからして、それはもう年季が入っている。同級生が、アイドルにうつつをぬかしている時期、作家如月周(きさらぎ あまね)に疑似恋愛をしていた。
 のちに知るのだが、その名前はペンネ・・・

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日常と、最後の手紙

13/04/13 コメント:9件 青海野 灰 閲覧数:3242

春の爽やかな朝日の差し込む明るい喫茶店には、似つかわしくない悲しげなジャズピアノが、誰からも忘れ去られたように流れていた。
結婚してからもう数年が経つが、こうして朝食を外でとるというのは、意外にも初めてのことで、二人で微かに驚いて笑ったりもしていた。

カウンター席から眺める外の風景は、慌ただしくもありふれた日常を映し出していて、僕の精神を激しく揺り動かし続けた音のないやりとりも・・・

8

アドニスのためのパヴァーヌ

15/02/03 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:3241

 フランスの作曲家モーリス・ラヴェルが1899年に作曲した『亡き王女のためのパヴァーヌ』は抒情的で美しいメロディだ。この曲の亡き王女とは、ハプスブルク家のマルガリータ王女をモデルに作られたといわれているが、その王女は21歳の若さで亡くなっている。
 この曲を聴く度に、こんな映像が頭の中に浮かぶ、雲の切れ間から放つ一条の光に導かれて、小さな女の子がゆらゆらと舞いながら天国へ昇っていくのだ。

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うまんまの箸

12/12/05 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:3239

 単身赴任中の高見沢一郎、パソコンの前でコンビニ弁当を突っつきながらふと思い出した。それは幼い頃に祖父がポロリと漏らした『うまんまの箸』のこと。一体それはどんなものだろうか? ネット検索すると……。

 うまんまの箸は香木うまんまの木から作られ、それを使うとすべての食べ物が美味しいと感じられる。
 材料となるうまんまの木は森深くに育つ落葉樹。初夏に可憐な花を咲かせ、秋には真っ赤に・・・

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飛行機雲の下で教習

13/02/01 コメント:1件 ポテトチップス 閲覧数:3236

空を見上げると飛行機が一機、南に向かって飛んでいた。
2月の澄み切った青空に、一筋の飛行機雲が描かれた。
小岩隆弘は、欠伸をしながら『クボタ フォークリフト教習所』の門をくぐった。
受付で名前を伝えた後、指示された第一教室の扉を開けた。
「おはようございます。お名前は?」
白髪混じりの男が苛立たしげに聞いてきた。
教室の席には、7名の受講者が座っていた。
・・・

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雪響 ――ミグナッハはかく歌い――

13/11/22 コメント:19件 クナリ 閲覧数:3231

私が十九歳で、合唱団最高格の歌姫を辞め、駆落ちした夜は、酷い雪だった。
大陸の端の一大都市、『歌と水の町』の冬。
貴族院付きだった私の逃亡は、団の名に泥を塗ることになる。<脱走死罪>の団の私兵をやり過ごすために私達は雪に潜り、長い時間、道端に伏せた。
追手が諦めて去る頃、私に覆い被さった恋人は凍死していた。私も寒さで病み、お腹に宿していた命が流れて散った。
歌う為に生きてき・・・

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すーちゃんのおねえちゃん

14/09/21 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:3226

『すーちゃん、すーちゃん』

「ママ、今、だれかの声がしたよ」
「えっ? そんな筈ない。この家には涼香(すずか)とパパとママの三人しかいないわ」

 田舎にある古家に住むことになった。
 この家はパパのお祖母ちゃんが亡くなる日まで一人で暮らしていた。戦前に建てられた日本家屋で、地主だったという旧家の立派な建屋である。
 こんな辺鄙な山の中に住む人もなく、取・・・

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風師中級試験

13/02/24 コメント:7件 そらの珊瑚 閲覧数:3222

ここは風師たちの住む丘。外の世界からは透明なシールドによって、隔離かつ保護されていた。あの時代の反省によって。
 今から数百年を遡った話である。貴重なレアアース資源をめぐって内戦が起きた。稲を育て、水を尊び、家畜を放牧し、野で歌を唄い、豊かな自然とともに質素に暮らしていた民の生活が一変してしまった。目先の金に目がくらんでしまった。
レアアースが産出される土地を奪おうと、民は歌を捨て、・・・

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「憎い娘」

16/08/15 コメント:8件 葵 ひとみ 閲覧数:3221

 ある日、ひとりの女がはるばると山をのぼり仙人のもとをおとずれました、

その女は仙人にこう相談したのです。

「仙人さま、私は後妻なのですが、

私の旦那の前妻の娘が憎くて憎くてほんとうにたまりま

せん。

主人には驚くほどなついているのですが、私にはまったくなつかないのです」

それを聴いた仙人は答えました、

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青空に書いた手紙

15/04/03 コメント:6件 南野モリコ 閲覧数:3219

前略、通学路様。
 僕は、今日で高校を卒業します。ここを通って学校に行くのも今日で最後になります。僕はこの村で生まれた、恐らく最後の子供です。最後の登校に、今日はあなたに感謝の手紙を書きます。

「感謝」とは、「感」じて「謝る」と書きます。僕は今、通学路であるあなたに、心から感謝しています。母さんに手を引かれて初めてこの道を通った時、僕は4歳でした。今日のあなたは14年前と少しも・・・

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隕石でお仕置きよ

13/06/18 コメント:5件 鮎風 遊 閲覧数:3215


 今宵はにぎり寿司だよ、大トロ、それともウニ、どちらがお好み?
 こんなリッチな迷いが日常化した暮らし、それは確かにソラにとって幸せな日々だった。だが今、それに終止符を打つかどうかで迷っている。

 夫のヒラメキはITベンチャー企業の社長、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。しかし、ここに至るまでの道程(みちのり)、ソラは持ち合わせた才能、すなわちコンピューターの知識/技能を駆使し、・・・

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黒と白

12/05/28 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:3212

しほちゃんは、お昼ごはんのあと、画用紙にクレヨンで、絵をかいていました。
ぽかぽかあたたかい日で、おなかはくちくて、しほちゃんは、うつらうつらすると、ことん、と寝てしまいました。

しほちゃんが、すーすー、寝息を立てているのを確認して、クレヨンたちがニョキニョキっと立ち上がりました。

「あ〜あ。らんぼうに握るから、体が半分で折れちゃったよ」

「私なんか・・・

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略奪恋愛ゲーム

13/10/09 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:3209

 私にとって恋愛はゲームと同じだった。
 たとえば素敵な彼氏を連れた女がいるとすれば、その男に近づいて、誘惑して“略奪愛”で自分の彼氏にする。だが、奪ってしまえば熱は冷める。結局、男は捨ててしまうだけだった……それでも略奪恋愛ゲームは止められない。
 なぜかって? 恋の勝者である自分に酔い。人の男を振り向かせることで自分の価値が確認できる。恋人を盗られた女の悔しがる顔が見たい……この腹・・・

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盤上の風

13/06/29 コメント:13件 そらの珊瑚 閲覧数:3207

 故郷の春を想う時、それは『からっ風』と呼ばれる山々を越えてきた強い風が吹いていくる。あの風に背中を押されるように、俺は小学校に入学する前から近所の将棋センターに通った。
    ◇
 古い木造家屋の硝子戸に顔を寄せてじっと中の様子を見ていると、先生と呼ばれるそこを経営しているおじさんがやってきて、「坊や、また来たんか」と中へ入れてくれる。
 
 ダルマストーブの上にはシュ・・・

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サンタクロース会議

12/11/30 コメント:3件 寒竹泉美 閲覧数:3194

 今年のサンタクロース会議は、波乱に満ちた幕開けとなった。開催のあいさつが終わるやいなや、ひとりの若いサンタクロースが立ち上がり、議長が止めるのも振り切って、とうとうと演説し始めたからだ。
「僕はどうしてもこの場を借りて言いたいことがあります。みなさんがご存じのように、最近、僕たちは人間の子供から感謝の声を聞くことが少なくなった。その原因は明らかです。親たちが、手柄を横取りしているせいなので・・・

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友達になるということ

17/12/31 コメント:4件 ひーろ 閲覧数:3193

 その少年は、孤独でした。孤児院には一人も友達がいません。淋しさのあまり涙を流すこともしばしば。頼れる人など、誰もいないのです。淋しい。涙。淋しい。涙。毎日がその繰り返しでした。  あるとき、少年は自分の置かれている現状に耐え切れなくなって、神様にこんな願い事をしました。 「日本中の人たち全員と友達になりたい」  彼の思いは極めて強いものでした。それゆえ、悩みに悩んだ挙句、神様は彼の願い事を叶えて・・・

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京都嵯峨化野(あだしの)幽霊伝説殺人事件

12/05/09 コメント:4件 カシヨ 閲覧数:3183

 この街ではよく殺人事件が起こる。
 現場は祇園、西陣、鞍馬、嵐山あたりが多く、だいたい市内の中心部か北寄りだ。午後九時から十一時にかけて、平均二、三人が殺される。月曜か金曜、土曜日が一般的だが、木曜八時台もおなじみだ。
 
「おはよう、しょうちゃん。きのうのドラマ見た? 九時からのやつ。あれ、しょうちゃんちの裏の竹林やろ? 血がぶしゅーって飛んですごかったな。『幽霊伝説殺人事件・・・

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神は……

13/07/31 コメント:9件 光石七 閲覧数:3182

「ありがとうございます。先生は神様です」
患者の家族が涙ながらに感謝してくる。難度の高い手術を次々とこなす私を「神の手だ」ともてはやす輩もいる。私はそのように言われるのが好きではない。もちろん心臓外科医としての矜持も、それなりに鍛錬を重ねてきた自負もある。担当した患者が元気な姿で退院していくのはうれしい。しかし、どこかやりきれない思いが残る。
 患者全員を助けられるわけではない。手術の・・・

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九分九厘あり得ぬ話

15/02/22 コメント:17件 光石七 閲覧数:3182

 あの男がこのような暴挙に出ようとは。秀吉の援軍に向かわせたはずが主君を奇襲。信長は歯噛みしつつ、なだれ込んでくる兵に矢を放つ。
(光秀……!)
弓が折れ、信長は薙刀に持ち替えた。近づく兵を切りつけ、突き刺す。鉄砲の弾が信長の肩をかすめた。敵勢は更に押し寄せてくる。信長は応戦を諦め部屋に下がった。寺に火を放つよう蘭丸に言いつけ、奥の小部屋に向かう。
(ここで果てようぞ)
戸・・・

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メグ・ワールド

12/09/27 コメント:4件 ryonakaya 閲覧数:3180

 娘が保育園から退園の通告を受けた。妻は青い顔をして、
「この子、集団生活ができないんだって。困ったわ」
 子供を嘆いているのか、私に訴えているのか、自分を責めているのか、とにかく、子供の行く末が危ういとでも言わんばかりの口吻で部屋の中を行ったり来たりしている。私は妻の右往左往するその姿こそ先が危ういと、腹の中で笑っていた。3歳になったばかりの女の子が、集団生活を円滑にこなしている方が・・・

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昼行燈

12/05/08 コメント:1件 tahtaunwa 閲覧数:3178

 幕末の京都。とある居酒屋で、関東から上洛してきたばかりの浪人が売り出しに躍起になっていた。男の名は大田一蔵。
「わしの名前は江戸ではちょっとしたものだったぞ。ある道場主などは、道場破りが来るたびに助っ人を頼みにきたくらいでな」
「そんな情けない道場主がありますかね?」
 一緒に飲んでいた瓦版売りが疑いの目を向けた。
「わしを疑うのか?」
 そのとき、一蔵の目に店の奥・・・

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ぶたれい

12/06/01 コメント:0件 AIR田 閲覧数:3176

「私はね、ここで豚から人間に生まれ変わったことがあるんだよ」
 サクサク。サクサクと、衣を噛む軽快な食リズムがとんかつ伊勢に響き渡り、それに耳をかたむけていると、いつの間にやら隣に座っていたおじさんが僕に話しかけてきた。
 あのう、他に空いている席があるんですけど、と言おうか言わないか迷っていたが、でも多分言えないだろうと思っていた。
「豚だった頃が懐かしいよ。あ、決してとんかつ・・・

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バッテリー

12/08/01 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:3173

「本当に辞めてしまうんですか?」
 部下だった下村が、まだ疑わしそうに訊く。今日で俺は三十年務めた会社を退職した。断わったのだが元部下たちが集まって送別会をやってくれた。一次、二次、三次と……最後の四次会は下村と二人になってしまった。彼とは長年一緒に仕事をした仲だ。
「部長が辞めたら……俺はどうしたらいいんだろう?」
 下村は目頭を押さえて、項垂れた。
 送別会の〆は俺と下・・・

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白球のゆくえ

12/07/25 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:3173

 健は深い感慨にとらわれていた。

 健は西宮育ちのせいか、幼い頃から甲子園は身近な存在だった。いつかあの甲子園に行くんだと夢を膨らませていた。しかし、その夢は破れ、結局甲子園の土は踏むことは叶わなかった。しかし野球少年の夢は、産まれた子ども、夏樹に受け継がれ、今日、ようやく果たされたのだった。夏樹の高校は、8回の予選を勝ち抜き、激戦区と言われる大阪代表として次の試合に出るのだ。

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告白

13/10/11 コメント:22件 murakami 閲覧数:3173

 1976年のことです。私は高校を出て、就職したばかりでした。ある日、同じ職場の3歳年上の男性から結婚前提の交際を申し込まれたのです。まじめで優しそうな方だったので了承しました。交際するうちに彼の誠実さに惹かれ、週末のデートが何よりの楽しみになりました。
 ところが3ヶ月程たったある日、二人でドライブ中に事故にあってしまったのです。助手席に座っていた私は、追突された拍子にダッシュボードに顔面・・・

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奪われた時間

13/04/19 コメント:17件 草愛やし美 閲覧数:3173

 奪われた時間は、永遠に止まったまま。彼らは、待っている……寂しさを埋めてくれる誰かを。
 
  ◇    ◇ 

「お父さん、何でそんなこと聞くのよ、友達だって言ってるじゃない」
「心配なんだ、結のことが」
「男の子だって、友達なんだから、いちいち詮索しないでよ」
 私は、父に構わず、どんどん先にたって歩き出していた。中学生にもなったというのに、父はまだ・・・

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悪夢指南

13/02/18 コメント:6件 石蕗亮 閲覧数:3170

占い師で夢占いも扱っている私にはお客様からよくこんなことを質問される。
 Q、夢って全部予知夢なんですか?
 A、夢には記憶の整理をするための夢、自らの六感で見る予知夢、第3者に見せられる予知夢の3種あります。
 Q、3つの違いは?
 A、記憶の整理は現実にあった出来事を夢で見たり、寝る前に見た映像や聞いた音に関連するものを夢で見たりします。必ずしもその日見たものとは限らず・・・

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温もりに敵わない

13/03/12 コメント:8件 クナリ 閲覧数:3169

三月の夕暮れは、思ったよりも早く訪れてきていた。
富士山の裾野にある遊園地の賑わいはまだまだ続いているが、
「あと一時間くらいで、ほとんど閉園だね」
四月から大学生になるサナが、高一の終りを迎えているカケルに言った。
乗り足りない気分はあったが、カケルにとってはサナの隣にいる時間にこそ意味があった。ただ、サナにとってはそうではないことも分かってはいた。
「すみません、・・・

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渋谷スイングバイ

15/03/08 コメント:10件 冬垣ひなた 閲覧数:3168

ビルの最上階、『コスモプラネタリウム渋谷』の入り口前。
なんで、ツイてないんだろう?落とした百円は、自販機の下に隠れて見えない。
あたしが膝をついて下を覗き込んでいると、何かがその上を通過して、自販機のカチャッと動く音がした。
ああ、まだお金入ったままだって!思ったその目の前に、買うはずのチケットが舞い降りる。これがにやけ面の茶髪男ならナンパが目的だろう、しかし予想は違った。

3

うちのおにいちゃん

12/11/19 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:3167

 昭和40年代は塾もテレビゲームもパソコンもなかった。
 子どもたちは日が暮れるまで外で遊びまわっていた。ひざ小僧はいつも傷だらけ、野原が大好き昭和の子どもたち。貧しかったけど、元気いっぱいの子どもたちが路地で、空き地で、駄菓子屋さんの前で……そこらじゅうに溢れていた。
 どこにもいるような、わんぱく坊主の兄と妹のお話です。

                  *
・・・

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誰よりも笑われた男

16/10/14 コメント:10件 あずみの白馬 閲覧数:3165

「人口80万人の街に地下鉄!? そんなの作って赤字になったらどうするんです? 熊でも乗せる気ですか?」

 1965年のある日、運輸省と札幌市交通局との間で、札幌市に地下鉄を通す計画を話し合う会議がもたれていた。
 その席で、運輸省の役人が意地悪な質問を札幌市交通局にぶつけてきたのだ。
 室内には嫌味な笑い声が響いてくる。だが交通局長、大刀豊は臆する事なくこう切り返した。<・・・

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花橘(はなたちばな)

13/07/16 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:3162

   いにしへを花橘にまかすれば軒のしのぶに風かよふなり
                        ― 式子内親王 ―

 夜半に吹き荒れた野分(のわき)のせいで、花橘(はなたちばな)の君の屋敷では庭の草木も倒れ、屋根や塀なども吹き飛ばされてしまった。昨夜は塗籠(ぬりごめ)中で風の音が怖ろしく震えながら一睡もできなかった花橘であったが、一夜明ければこの惨状に成す術(すべ)も・・・

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ダン・ド・リオン空港

15/01/17 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:3162

 一面たんぽぽが咲いている野原、住人たちは、ここを『ダン・ド・リオン空港』と呼ぶ。春の陽を受けて、のどかであった。
 蜘蛛がたらした糸は、見事に地球に対して垂直を保っている。
「たんぽぽの皆様、本日は無風であります。全フライトは延期いたします」
 ピ、ピ、ピ。管制官の雀のアナウンスが響く。
 今日あたり、たんぽぽの離陸が見られると思い、見物に出かけてきた蛙のカップルが

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故郷の記憶

12/04/15 コメント:0件 リアルコバ 閲覧数:3160

真っ青に澄んだ空が、何処までも見渡せるベランダから、遠くスカイツリーが開業を待ちわびている。 私はキャラクターがプリントされた小さな蒲団を干して振り向いた。春の光で満たされ輝く部屋には、座布団に乗った我が子がすやすやと眠る。(幸せだ)そよ風の中、昨日主人が立てた真新しい、そして小さな小さな鯉のぼりの先の風車がカサカサと音をたてている。

 「何でなの?」 私は関東平野の北側の田園風・・・

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ぼくの冒険

12/04/08 コメント:0件 翡白翠 閲覧数:3160

 赤い中に、ぼんやりした光がともる提灯。もう夜遅くで、お日様も地面に沈んだのに、ぼくの周りは活気に満ちている。目を輝かせながら、目の前を見つめる。木で作られた扉からは明かりが透けて見えて、まるで天国のように思える。
 でも、ぼくはそこへはいけないんだ。居酒屋とお母さんには聞いたけど、子供が行っちゃけないと言われた。ガミガミうるさいものだ。自分の息子くらい信用すればいいのに。
 ここにず・・・

2

最後のデート

12/07/07 コメント:7件 泡沫恋歌 閲覧数:3157

 車の中に男を待たせて、私ひとりで水族館に来ている。
 初めてのデートは水族館だった――。ふたりで手を繋いで、まるで回廊のような巨大な水槽をグルグル回りながら降りて行った。底の方になると不気味な魚たちが沈んでいた。光の届かない海底で気配を殺し、獲物が来るのを待っているのだろうか。
 深海に潜む魚の暗い眼と合った時、自分の中で何かが共鳴し合った。

 男に別れ話をされた。ふた・・・

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京都の和菓子

12/05/05 コメント:4件 かめかめ 閲覧数:3153

(明日は休みだ。今日を乗り越えれば、明日はこのツマラナイ仕事から開放される)
重い足を引きずりながら、オレは心の中でつぶやく。
毎日毎日、ノルマノルマ。
「お前が無能だから売れない!」と罵られ続ける。
毎朝、吐きそうなほどの胃痛と共に出社するコッチの身にもなれってんだ。

毒づきながら、目の前のチャイムを押す。
今時、インターホンじゃない、ただ音が鳴るだけ・・・

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燃えた きんしゃち

13/06/02 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:3148

 じいちゃんは、なんで花火が嫌いじゃって? そりゃ悲しくなるからや。

 じいちゃんが、ちょうどおまえくらいの中学生の頃の話じゃ。
 その頃日本は戦争してた。すでに学校で勉強なんてしなくなってたな。勉強しないでいいなあ、って? 勉強しない代わりに、勤労学徒っていってな、工場で働くんだぞ。爆弾作ったりするんだぞ。真っ黒になってな。じいちゃんの同級生だけど、暴発して手首がなくなってし・・・

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キャラ弁は愛の味

12/12/08 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:3147

「ゲッ! 箸忘れたぁー」
 ランチボックスから弁当箱を取り出した瞬間、僕は大声で呟いてしまった。
 箸を忘れるなんて最悪だ! 困ったなぁー、どうする? すると腹の虫までグウゥゥーと鳴いた。
「俺の箸かしてやるよ」
 いきなり横からそんな声がした。最近席替えしたばかりだが、こいつが話し掛けたのは初めてだ。司馬 翔(しば しょう)まるでアイドルみたいな名前だが、名前負けしないほ・・・

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浸食

12/10/30 コメント:7件 クナリ 閲覧数:3142

女だてらに、金曜日だからと調子に乗って残業をしていたら、22時を回ってしまい、さすがに集中力にも限界が来て、会社を出る準備をした。
更衣室へ入って制服のスカートを脱ぎ、濃紺のデニムへ履き替える。
都内と言うよりも下町と表現した方がふさわしい場所にある社屋を出て、私は駐車場へ向かった。
居酒屋やレストランが灯す明かりの中のひとつ、なじみのコーヒースタンドでモカを頼んだ。
眠気・・・

8

最後の暴君

13/07/01 コメント:8件 光石七 閲覧数:3141

 国王が急な病で床に就いた。二十歳を過ぎたばかりの王太子が留学先から密かに呼び戻される。国王の病状は深刻で、もはや治る見込みがなかったのだ。
「畏れながら、まもなくあなた様は一国の王となられるでしょう。どうかお心づもりを……」
側近が王太子に告げる。王太子は頷き、国の現状を尋ねた。
 まもなく国王が崩御した。新国王の誕生だ。国民は新しい国王を歓迎した。外国で見聞を広め、旧態を打破・・・

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忌み子

17/03/13 コメント:0件 玉梓 閲覧数:3141

 その昔、双子が不吉の象徴とされる風習があったらしい。
畜生腹と言って、人間が犬や猫のように二人以上産むことを卑下したものという説が濃厚らしいが、医学の発達した現代においては、実にバカバカしい考えだと思う。

 少し調べてみたが、なんと殺してしまう風習の土地もあったというのだから驚きだ。
一口に『殺す』と言っても、双子のうち片方だけ殺してしまうものと二人とも殺してしまうもの・・・

5

沙里と里沙

13/08/30 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:3140

 ステージの下手からトゥで立ち歩き、クロワゼでポーズ。左足プリエで右足前に上げ、つきさし、右足パッセしながら
……手をたたく。
 こんな動きからライモンダの第3幕ヴァリエーションは始まる。

 そしてバレリーナは無表情、いやむしろ毅然と澄ました顔。
 なぜなら──、ライモンダの婚約者・ジャンは戦地へ。その間に、異国の王子から熱烈にプロポーズをされる。帰還したジャンは決・・・

3

小説大学

13/01/06 コメント:9件 鮎風 遊 閲覧数:3139


 山々が重なり合った奥地に廃村がある。そしてそこには廃校が残った。しかし最近リフォームされ、再び開校されたようだ。
 宇田川聡(うたがわさとし)は山を超え、息を切らして学校の門をくぐった。ここで教鞭を執るつもりだ。

 不景気の煽りで、リストラに合った。次の就職先をウェブ上で探していたら、ふと見つけた。
「蘇った山の学校、ここで教え、共に学びませんか」
 こん・・・

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