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幸運の傘

12/05/06 コメント:7件 寒竹泉美 閲覧数:5049

 初めて来た土地で勝手が分からずうろうろしていると、空から白いものが次々と降ってきた。雪だろうか? と思って、男は足を止めた。でも、ここはずいぶん温かい土地だ。半袖でも充分なほどの陽気で、日が照っている。いくら異常気象が増えているとはいえ、こんな日に雪は降らないだろう。

 髪にくっついた白いものを摘み上げて、よくよく観察してみると、何かの植物の綿毛のようだった。しかし、見たことがない・・・

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剣闘士

12/09/12 コメント:10件 そらの珊瑚 閲覧数:5021

 古代ルピーナ帝国において、皇帝は「パンとサーカス」と呼ばれる政策に力を注いだといわれる。その両輪がうまく回っていれば、市民は大人しいのである。
 パンは飢えさせないこと。重税など課そうものなら、市民の反乱が起き、政権が倒される。サーカスは娯楽である。コロッセウム(円形闘技場)で開かれる剣闘士の命を賭けての試合は市民にとって何よりの娯楽であった。

 強い剣闘士は市民のアイドルの・・・

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お正月は嫌いです

12/12/13 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:5011

年が改まり 今日から新年なんだ
モソモソと布団から這いずり出して 袢纏を引っ掛け 
いつものように 新聞をポストに取りに行ったら
電話帳みたいな ぶっとい紙が捻じ込まれていた

こんなもん、取れるかい!
小さなポストから無理やり 引っ張り抜いた

大晦日も元旦も仕事の私にとって
お正月なんで 煩わしいだけで なんの感慨もない 
母も亡くな・・・

8

宅配アイドルでーす!

13/10/03 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:4960

 ピザを頼んだら、玄関に変な女が立っていた。
 インターフォンが鳴ったので、てっきりピザ屋だと思って、俺は二階から駆け降りた。台所に置いてある母親の財布からピザの代金を掠めて、慌ててドアを開けたら、
「宅配アイドルでーす!」
「はぁ? なにソレ? そんなの頼んでないから!」
 そう言って、鼻先でバタンとドアを閉めた。
 なんだよ、あの女は? ヒラヒラのミニワンピ着て、・・・

1

文豪ラップ選手権(前編)

16/12/31 コメント:0件 ミラクル・ガイ 閲覧数:4956

DJ星
「膨大な言葉の引き出しと頭脳の高速回転が織りなす芸術、MCバトル。待ちに待った、最強のラッパーが今夜ついに決定する。『文豪ラップ選手権』決勝トーナメント、いざ開幕!」
 日本武道館に押し寄せた1万人の観客と生放送を観るお茶の間の国民が湧く。1週間前に放送された予選リーグの平均視聴率は驚異の98%であった。

DJ星
「ご来場の皆様、そしてテレビの前の皆様、本日・・・

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懐中時計 【 ブレゲ No.160 】

12/09/15 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:4947

「アナタ、この古くさい時計、どこかへ売っぱらってきてちょうだい!」
 リヴカは朝から機嫌が悪い。朝食のためテーブルについた夫のアブラハムに、懐中時計を差し出し、怒鳴りだす。
 アブラハムは妻がなぜ不機嫌なのかわかっている。だから素直に、「ああ、そうするよ」と答えた。

 1ヶ月ほど前のことだった。泥棒市場で、アブラハムはこの金の輝きを持つ時計を見つけた。手にするといかにも精・・・

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ルイーズの悲劇

16/01/04 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:4735

 ルイーズはフランス一いや、世界一幸せな花嫁だった。
 彼女は貧しい靴屋の娘に生まれたが、艶やかな金髪と青い宝石の瞳と石膏のような白い肌をもつ美しい娘だった。十五歳の時に領地を治める貴族が小間使いを募集した。条件は容姿が美しいこと――。
 可愛いペットを連れて歩きたがるように、貴族の奥方はきれいな小間使いを側に置きたがる。そしてルイーズは貴族の奥方に雇われることになった。オルレアン伯爵・・・

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恋という妖

16/01/06 コメント:11件 石蕗亮 閲覧数:4718

「こんな寒い夕暮れ時はストーブを背負って怪談をするに限る。
 寒さが孤独感を後押しして寂しさを増すから、話すなら悲恋ものが良い。」

雪で止まった電車を待つために駅の待合室には数人が集っていた。
田舎のため、駅員も居なければ復旧を告げるアナウンスも流れない、昭和の匂いが残る古い駅舎であった。
今時珍しく携帯の電波も届かないほどの田舎である。
下手に携帯を視ても情・・・

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美女はトイレになんて行きません!

15/07/26 コメント:4件 海見みみみ 閲覧数:4708

 美女はトイレになんて行かない。誰が言い始めたか知らないが、世の中にはそんな決まりがあるらしい。
 私は誰もが認める美女だ。だからもちろん人前ではトイレになんていかない。それが美女としての役柄だからだ。
 人は何らかの役柄を演じながら生きていくものだと私は思う。その役柄が私はたまたま『美女』だったのだ。
 そういった訳で、私は美女としての役柄を演じながら大学生活を送っていた。

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【 閲覧注意 】全国不幸自慢大会

14/02/10 コメント:18件 泡沫恋歌 閲覧数:4701

「みなさん、こんにちは。全国不幸自慢大会の時間でございます」
 市民会館の大ホール、観客席ほぼ満員である。
 七三に分けワックスで固めた頭に、今どき流行らない赤い蝶ネクタイ、黒いロイド眼鏡をかけたアナウンサーは胡散臭い男だ。
「では、本日の審査員をご紹介します。絶望の魔女と呼ばれる超辛口人生相談カウンセラーのクリスティーン・佐渡先生でーす!」
「ハーイ! クリスティーン・佐・・・

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第1巻 『これでもか物語 in 歯医者』(アメリカの巻)

13/09/21 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:4677


 こんにちは。
 この物語は高見沢一郎が体験した歯医者さんの物語です。

 誰でもお世話になる歯医者さん、これでもかこれでもかと攻めてきますよね。
 そんなお話しを、アメリカの巻、メキシコの巻、日本の巻、これら三つを連載で、この自由投稿スペースで順次紹介させていただきます。

 軽く読んでもらえれば光栄です。


プロローグ : これで・・・

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ママチャリと私

12/07/17 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:4662

「あれー? 自転車がない!」
 私は思わず大声で叫んでしまった。
 さっき、スーパーで買い物を終えて出てきたが、自転車の鍵を外した所で買い忘れた品物を思い出した。慌てて、買って戻ってきたら、私の自転車が駐輪場からなくなっていた。
 あっちこっち駐輪場の中を探し回ったがやはりない。鍵を外したままで放置したのは、私の不注意だけど……その間、たった五分くらいである。まさか、そんな短時間・・・

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紅葉さんと若葉ちゃん

13/05/16 コメント:20件 泡沫恋歌 閲覧数:4621

 この会社に勤めて二十五年になる。夫婦なら銀婚式だが、私は結婚もしないで、この中堅商事会社でずっと働いている。若い子たちは私を『お局』といい、私より後に入社して管理職になった上司は、影で『ババア』と呼んでいるらしい。フン! 別に構わない。
 だけど二十五年も総務やってたら、いろいろ奴らの弱みを握ってるんだから甘く見ないことよ。

 不況のあおりで新規採用がなかったが、三年振りに我・・・

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トイプードルを連れたお嬢さん

12/10/05 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:4595

 黄昏時、公園沿いの散歩道は日中のアスファルトの熱も冷めて、ちょうどよい温度だ。この時間に行き交う顔馴染みたちに軽く挨拶すると、おいらは元気いっぱい歩く。一日の中で一番好な時間だ。
『お、あの子がきた!』
 彼女の放つ芳しい匂いが風に運ばれて、おいらの敏感な鼻が反応した。この道でいつもすれ違う茶色いクリクリ巻き毛の女の子だ。小柄でとってもセクシー! 興奮して落ち着かなくなってきた。ダッ・・・

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すばらしき防弾傘

12/04/22 コメント:2件 ぬるたん 閲覧数:4591

 短いサイレンが鳴り響くと、皆が一斉にビルの壁に駆け寄って素早く傘を拡げるのも日常の光景になってしまった。最初の頃こそどこの小学生が傘をさし遅れてケガをしただの、直撃弾を受けた老人が転倒して骨を折っただのというニュースが流れていたが、もうそんなことは話題にもならない。話題にしたところで誰かに文句が言えるわけでもなく、これといった防御策があるわけでもないからだ。どんな天災もわれわれにはただ慣れること・・・

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ツギハギ

12/04/28 コメント:2件 AIR田 閲覧数:4543

 子供の日。屋根の上に棚引く鯉幟様。それが泳いでいられるのは一体いつまでだろうか?7歳?10歳?それとも20歳?多分10歳位までだと思う。歳を重ねるにつれて、屋根より高い鯉幟様に段々と興味が無くなり、「今年はどうする?」と母が言い、「もういいんじゃないか。あいつも大きくなったからな」と父が言い、押入れで静かに眠る。やがて時がは流れ、子が親になり、鯉幟様は再び屋根の上を棚引くことが出来るかもしれない・・・

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女スパイ・村山たか女 (後編)

13/08/20 コメント:4件 鮎風 遊 閲覧数:4444


──激しくも生き、されど終焉は穏やかに── (後編)

 高見沢は、自分勝手な主観で作成した年表、それを見ながら妄想に耽っている。
「1842年か、今から約百七、八十年前に、村山たか女、長野主膳、井伊直弼のそれぞれが異なった道を歩いてきた。そして女一人三十三歳、男二人二十七歳が赤い糸を手繰り寄せるように巡り合った。ホント不思議な縁、何か運命的なものを感じるよなあ。人の出逢・・・

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告白デッドロック

14/07/29 コメント:12件 夏日 純希 閲覧数:4440

 これは告白できなくなった僕の悲しい話。
「今日はこれ奢ってくれるよね?」
 僕は反射的に肯定した。惚れた女の子に奢るのは御褒美だ。尻尾があったらフリフリものだ。
 例え、佐伯さんのお盆に学食最強のランチセットがあって、僕が学食最弱の具なしカレーがあろうとも。
 最強と言えど、たかが学食。文庫本一冊程のお値段。許容範囲。
「後ろの子の分も一緒にお願いします」
 ・・・

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死刑執行

13/07/06 コメント:4件 鹿児川 晴太朗 閲覧数:4371

「おはようございます、所長」

 制服姿の若い男が、少し憂鬱な表情で根岸に挨拶をする。

「なんだ。辛気臭い顔して」

「この仕事をしてて平然としてられるのは、所長ぐらいのものですよ」

「お前は胆力が足りないんだよ、平沢。まあいい。巡回の時間だ」



 拘置所内・死刑囚舎房。
 毎朝九時になると、管轄の刑務官たちは肩・・・

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星の船

13/01/14 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:4310

――20XX年
真っ暗な宇宙空間に浮かぶ銀色の宇宙船『スターホープ』号、火星移住者用の連絡船である。地球と火星の往復をしている。
火星移住計画は各国が協力し合って、すでに火星には住居用コロニ―があり、自給自足しながら、約10万人の人類がそこで暮らしている。
レイラは黒い髪と瞳を持つアジアン系の娘である。20歳になったばかりの彼女は、たったひとりで火星移住船に乗っていた。
火・・・

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恋愛中毒

15/03/18 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:4302

たぶん わたしは狂っていたんだろう

あなたのその冷たさが 余計に熱くさせた
『いつも わたしだけを見ていて欲しい』
独占したい気持ちでいっぱいになってきた
激しい感情が 『毒』となって身体中まわり始める


少しずつ狂い始めた まず3つの症状が表れた

『冷静さをなくす』『嫉妬深くなる』『情緒不安定』
『追えば逃げるという』恋の・・・

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大人の子供の日

12/04/03 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:4268

丘の上の、ゴルフ場をおもわす広大な芝生がひろがる庭のただなかの、これまた途方もなく大きな邸宅に、三々五々、人々がはいってゆく。

きょうは子供の日。しかしかれらの年恰好はどれも、どうみても還暦はすぎていて、なかには頭がすっかりはげたのや、まがった腰を杖でささえているものたちの姿も目についた。

共通しているのは、かれらのそのあきらかに富裕層とおぼしき、高価ないでたちだった。・・・

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ウエディングケーキ請負人 朝倉真帆

12/06/12 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:4257

「ウエディングケーキプロデューサーの朝倉です。今回はどうのようなケーキをご希望でしょうか?」
「私たち、香川県出身でしてうどんに目がないのです」
「香川といえば、有名な讃岐うどんですね。それで?」
「うどんケーキでお願いします」

 頼まれた私はどんなケーキであろうと絶対首を横に振らない。それは意地というものではなく、その人たちにとって一生一度の結婚式だからこそ、お式・・・

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未完の曜変天目茶碗

14/01/27 コメント:14件 鮎風 遊 閲覧数:4237

 癌を患い、やせ細った父。私は父を見舞うため帰郷した。母に支えられて寝室から出て来た父、私を手作りの茶室へと招き入れ、一服の茶を点ててくれた。
 私は茶道の作法を知らない。それでも漆黒の茶碗の中で、泡立つ鮮やかな青緑色の薄茶(うすちゃ)をゴクゴクと飲み干した。
「祐輔はまだまだはな垂れ小僧だなあ。だけどお前には、この茶碗での一気飲みが似合ってるようだ」
 侘び寂びの感性を持たない・・・

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納豆マンの独白

14/12/08 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:4233

いやね、いつから、こんな体質になったのか自覚がないんですよ。
ある日、気がついたら指先から糸をひいてました。
触ってみたら、ネバネバして、いくらでも糸をひくんです。
手を洗ったり、ウェットティッシュで拭いても、また、すぐに糸をひくんで参っちゃいます。
でも、その頃はさほど気にしてませんでした。
だいいち医者に行こうとも思わなかったし、ちょっと面白いやんかと人前で自慢し・・・

8

このP−スペックを、唯、きみに。

14/12/29 コメント:14件 滝沢朱音 閲覧数:4231

 はずむ息を整えた。目の前には、まさにホームに飛び込もうとする僕。お気に入りのネオンカラーのダウンジャケットが軌跡を描き、ひらりと線路に舞い降りる。そこで泣いている幼い女の子を拾い上げ、ホームに押し上げた瞬間、背後から迫るライト。けたたましい警告音。ブレーキの摩擦音。そして、「びゃっ」という耳障りの悪い効果音。
(今、死んだ)
 自覚するより一瞬早く、透明だった自分の両手にほわんと色が・・・

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六道輪廻の雨

14/04/20 コメント:0件 堀田実 閲覧数:4211

 かなしいかな。今生で功徳を積まなかった魂が数々と落ちていきます。それらの魂は輪廻転生を理解していなかったのでしょう。彼らはどんどん地へと落下していきます。
 それらはまず動物に生まれ変わります。ちょうど地に落ちた雨粒が大地に溶けていき、水分が植物の管を通り、固定され、そして動物に食べられるように。
 そうして苦しみはやってまいります。動物となった彼らは瞳の、その光輝く瞳孔で輪廻の一部・・・

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好奇心と最後のダンス

16/07/09 コメント:16件 デヴォン黒桃 閲覧数:4208

 僕は親友と、田舎の爺さんのとこに泊まりに来ている。
 と言っても、ほとんど会った事も無かった。

 来年就職するから、今のうちに旅行にでも行きたい、ナンテ母に言ったら、
「アンタ、小さい頃に行ったお爺ちゃんの事、覚えてる? アソコの海は綺麗だから、行くと良いよ。お爺ちゃんのトコに泊まれば安く上がるわよ」

 ダカラ、会った事すらアマリ覚えてない爺さんの田舎に来・・・

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紫陽花と猫には傘がない

12/05/06 コメント:1件  閲覧数:4203

 雨の日の紫陽花は綺麗だと思う。通学路の歩道橋の下に咲く紫の花を見つめながら、信号が青に変わるのをいつも待っている。傘もささずに、僕は泣いていた。このまま家へ帰ってしまおうかと思っていたとき、紫陽花から、にゃあと声が聞こえて、猫が出てきた。
 昨日、学校で嫌なことがあった。教科書が机の中から、全部なくなっていた。下駄箱の上履きがなくなっていたのは、一昨日のことだ。そのまえは、黒板に、学校に来・・・

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スモーキング・ワールド

14/02/27 コメント:20件 泡沫恋歌 閲覧数:4175

「星座を見てくる」
 そう言って俺はダウンジャケットと携帯用灰皿を持ってベランダにでる。ポケットから煙草を取り出し火を付け、一服深く煙を吸い込む。
 この寒空に誰が星なんか見たいもんか! 我が家は室内での喫煙は厳禁なのだ。妻は大の煙草嫌いで俺に禁煙しろと喧しい。「夫が煙草を吸うと妻の肺がんの確率が増加するし、私を殺す気なの?」と嫌味をいう。おまけに娘に喘息があり家族の前では絶対に煙草が・・・

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かごめかごめ都市伝説

13/10/28 コメント:13件 草愛やし美 閲覧数:4169

かあごめかごめ 籠のな〜かん鳥は いついつ出やる よあけの晩にぃ 鶴と亀が滑ったあ〜後ろの正面だ〜れ
かあこめ囲め 籠の中の囚われ いついつ出やる 夜明けの晩げ つるりと滑った 後ろの正面だあれ

 またこの歌……このところ毎夜、眠ると聞こえてくる歌。わけがわからず気味が悪い。マリッジブルー? きっとそうだ。でも、不安で居たたまれない。昼間も残響のように歌が聞こえ耳を塞ぐこともし・・・

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国東半島 仏に導かれ出逢った女(ひと)

12/07/03 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:4151

「静けさや 岩にしみいる 蝉の声……」
 かしましく鳴いている蝉の声さえ届かない静寂の世界に彷徨いこんだかのように私の心は、穏やかな波動を描いていた。一人この地に立った私は熊野磨崖仏と対座し瞑想に耽っていたのだ。
 
 フルート奏者の私は心傷つき大分にやってきた。世間の評価など気にしていないと口にしたものの辛辣な批判の前に音楽家としての私の自信は砕け散ってしまった。未来を見失い思・・・

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夢幻回廊

13/12/13 コメント:19件 泡沫恋歌 閲覧数:4103

 ――夢の世界へ迷い込んだ。
 気がつくと、そこは見渡す限り砂の海であった。地平線の向こう、遥か彼方まで砂に覆い尽くされた世界。天上にはナイフのような新月とスワロフスキーの星々が煌めいている。
 自分は駱駝の背に揺られていた。アラビンナイトの踊り子の衣装で、東郷青児の描く女のように深い憂いの睫毛を瞬かせて……。ここは砂漠なのかしら?
 駱駝の手綱を見知らぬ男を引いている。白いター・・・

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朝茶はその日の難逃れ

14/09/22 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:4085

「朝茶はその日の難逃れ」

 祖母はそう言って朝食が済んだあと、毎朝緑茶を淹れて飲ませてくれた。
 朝は一分だって多く寝ていたい年頃の中学、高校生の頃はそんな迷信めいた行為を僕はありがたがるどころか、内心ばかにしていた。はっきりいえばウザかった。
「あちィッッ」
 クソっ! あわてて飲んで口の中を火傷することもしょっちゅう。
 僕が度を越した猫舌になってしまっ・・・

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カミツレとジギタリス

13/08/26 コメント:18件 クナリ 閲覧数:4085

辺境の女子孤児院を、リラの花弁が彩る季節が来た。
十年前の革命暴動の際の孤児が多く居るこの施設で、私とフラヴォアは七歳の時に出会った。今年、お互いに十七になる。
フラヴォアは貴族の血を引く端麗な容姿の持ち主で、その金髪碧眼は院内でも目立っていた。毅然とした立ち居振る舞いに憧れている子も多く、彼女と友達であるということは私の自慢でもあった。ただ、友情と言うよりは、憧れに近い感情ではあった・・・

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表に出ろ!

12/03/20 コメント:1件 南リンゴ 閲覧数:4056

「表に出ろ!」
 金曜日の夜、突然の怒号がカウンター席しかない狭い店内に響き渡る。路地裏の小さな居酒屋にしては不釣り合いの状況だった。叫んだ男はガンっと乱暴に引き戸を開け、表に出て行った。
 私は少々呆気にとられて、傾けたグラスからハイボールをこぼしてしまった。もったいない。
 店のおかみさんもかぼちゃの煮つけを箸でつかんだまま、入口のほうを見つめていた。
 開いた戸の先に・・・

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無口な背中

13/07/22 コメント:22件 泡沫恋歌 閲覧数:4035

「黙秘権を行使します」
 そう宣言したきり私は無言を通した。刑事にどんなに恫喝されても、自分に不利な証拠を見せられても一切口を開かなかった。私が犯した罪は殺人未遂、被害者は病院へ救急搬送されたという。

 心の耳を塞ぐ――。
 夫はとても無口な人で、無言の時間には慣れていた。結婚して十年間になるが、私が話し掛けても「ああ」とか「うん」しか返事をしてくれない。
 仕事が・・・

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晩夏の小夜時雨 (ばんかのさよしぐれ)

12/06/17 コメント:6件 鮎風 遊 閲覧数:4008

 粒径は0.4ミリメ−トル。そして、落下速度は秒速2メ−トル。無色透明のまま、それらは真っ暗な夜空より、さあ−さあ−と。微かな音とともに複雑に、交叉しながら落ちてくる。
 主成分は紛れもなく[H2O]、だがそこに微量の窒素を含ませて・・・・・・。
 そんな天空からの、季節外れの落下物、それは晩夏の小夜時雨。無味無臭の性状のままで、その夜それが降っていた。

「ねえ、開けて」・・・

9

スイーツ系男子

13/11/07 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:3988

 親友の莉奈(りな)から、『相談があるので会って欲しい』とメールが届いた。
 うちは自営業なので昼間の二、三時間なら都合がつくのでスタバで会うことになった。待ち合わせの時間に着くと、莉奈はテラスの席でブラックコーヒーを渋い顔して啜っていた。
 私は注文したココアを持って、彼女の席に着いた。
「急にどうしたの? 何かあったの?」
「う〜ん。ちょっと……」
 なんだか元気・・・

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壇ノ浦で、源義経は水夫(かこ)を射たのか――えっせえのようなもの

16/04/12 コメント:8件 クナリ 閲覧数:3974

 歴史。
 それは私達の現在につながるものでありながら、どこかファンタジー性を含んで語られる、確かなはずなのに不確かな、不思議な物語。

 さて、クナリという人は日本史が好きなのですが、それは英雄達の生き様や丁々発止が好きなのであって、あくまで人間ドラマとして捉えているため、年表やら年号やらという分野においては小学生以下の知力を誇るので困ったものです(他人事)。
 そんな愚・・・

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コロボックルの赤い薬

12/10/02 コメント:6件 そらの珊瑚 閲覧数:3962

 これは信じてはもらえないかもしれないけど、僕の小さな友達コロボックルのお話です。
    ◇

 僕は小児喘息だったので、夕張小学校はたぶん半分くらいしか行けなかった。だから友達らしい友達も出来ず、体調が良い時は炭鉱にほど近い小さな森で虫や鳥を相手に遊んだものだった。
 ある日、蜘蛛の巣にかかった一匹の蛾を見つけた。バタバタと羽を動かしている。かわいそうに。そう思った瞬間・・・

12

純文学と名付けた人をきっとこの先も知らずに生きていく

16/02/01 コメント:13件 そらの珊瑚 閲覧数:3958

 私が書店員になった理由のひとつが、あの日々につながっている。

 新刊が店に届く。バックヤードで、その荷をほどく時、その本の著書のひとりが、もしかしたら君の名前ではないかと、目で探してしまう。大学を卒業したあと、本屋に就職して十年。それはもうくせのように身にしみついてしまったようだ。作家になりたいと君は言っていた。夢が叶われたとしても、本名で本を出すかどうかもわからないのに。
・・・

3

吉兆の猫

12/08/21 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3952

「まことに寝子というだけあって一日中寝てばかりおるわ」
 不機嫌そうな乳母の声が瑠璃姫の居る、御簾の中にまで聴こえてきた。その後、ぎゃんと猫の鳴き声がした、廊下で寝ていた猫を乳母が蹴飛ばしたかも知れない。
 乳母の機嫌が悪そうだと思っていたら、どかどかと瑠璃姫の御簾に乳母が入ってきた。
「姫君! なぜ、弾正尹(だんじょうのかみ)に文をお返しにならなかったのですか?」
「乳母・・・

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飛びます☆飛びます☆飛べません↓

15/01/19 コメント:12件 泡沫恋歌 閲覧数:3952

「いい加減にしてください!」
 空港の国際線ロビーに若い男の怒号が響き渡った。
「シィー、佐藤君、声が大きい……」
 口の前に人差し指を立てて、辺りを窺うように中年の男が諫めた。
 二人は大和大学で細菌学を研究する山田博士とその助手の佐藤である。山田博士が培養したスーパー酵母菌が化学雑誌で取り上げられ一躍注目を浴びた。パリで開催される世界細菌学シンポジュウムで、その研究発表・・・

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鞍馬寺のパワー

13/01/15 コメント:10件 鮎風 遊 閲覧数:3945

 昭和七年(1932年)の秋、寛(ひろし)と志ょう(しょう)は鞍馬寺を訪ねた。もう幾度も来ているが、今回は鞍馬の門前町から入山し、貴船(きぶね)へと下りた。
 俗界から浄域への結界、その仁王門を超え、清少納言が「近うて遠きもの、くらまのつづらおりといふ道」と記した九十九折り(つづらおり)参道を登った。
 そして本殿金堂へと。ここは毘沙門天王、千手観世音菩薩、護法魔王尊の三身一体が本尊で・・・

7

My name is

14/12/29 コメント:9件 泡沫恋歌 閲覧数:3939

 朝起きたら、自分の名前が思い出せなくなっていた。
 毎朝、スマホでメールを確認するが、返信しようとして戸惑った。なんと自分の名前が出てこないのだ。名字は分かるがファーストネームが分からない。まさか若年性アルツハイマーか? だが妻や子供の名前はちゃんと覚えているし、自分の生年月日や血液型、星座、勤務先の電話番号もちゃんと言える。
 なのに……自分の名前だけが思い出せない。
「パパ・・・

3

断髪式。さよならなんだ。ひそやかに。

14/07/23 コメント:7件 滝沢朱音 閲覧数:3924

――違う。
――手が覚えているの。

「まるで別の人に抱かれてるみたい」
素直にそう囁いたら、男は苦笑した。
「言うかな、そういうこと」
「だって」
両手を伸ばし、彼の髪に触れる。短く苅られてしまったその毛は、あたしの手のひらでちくちくと嫌な感じに主張する。
「何。違う奴とやってるようで、興奮するって?」
「……」
男の長い髪を下から掻き・・・

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えのぐ

14/01/27 コメント:32件 泡沫恋歌 閲覧数:3918

 男は暗い顔でパリの街を彷徨っていた。
 売れない画家の彼は、いつもセーヌ川の畔で観光客相手に似顔絵などを描き細々と生計を立てていた。恋人は踊り子で彼の絵のモデルだった。
 小さなアパートメントで二人は暮らしていたが、貧乏暮らしに愛想を尽かしたのか、ある日、恋人が居なくなった。男はパリ中を探し回ったが見つからなかった。。
 その上、彼女は金貸しから借金があった。残された彼の部屋に・・・

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雛人形会議

13/03/10 コメント:14件 草愛やし美 閲覧数:3909

「いよいよ今夜ですぞ」
「嬉しいことじゃ、年に一度の雛人形会議。今年は、どんな議案が話題になるかのぉ」
「姫様、今年もまた、新規参加希望者がおるそうですが、かなり珍しい人形だということ」
「それは、まことか、右大臣」
「そのように聞いておりまする、姫」
「珍しきとは、如何様な人形か、早う見たいものだのぉ」
「お殿様、これ以上、雛の会が大きくなるのは、わらわは嫌じ・・・

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ぼくのゆめ

12/05/16 コメント:11件 ゆうか♪ 閲覧数:3890

 小学校3年生のぼくの今のゆめは、りょう理人になることです。
 ぼくのママはとってもりょう理が上手で、ぼくとパパのためにいつもおいしい食事を作ってくれます。
 ふだんは、パパはママがりょう理をしている時間には家にいないけど、たまの休みの日なんて、ダイニングのいすにすわって、ママがりょう理を作るうしろすがたをじぃーっとながめていたりします。そんな時のパパの目はおほしさまがキラキラしていて・・・

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