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火が消えて

12/08/08 コメント:0件 野村レトリクス 閲覧数:2790

 月の夜、神殿への道をふさぐようにしつらえられた天幕の中に、ふたりの男がいる。若い兵士と中年の上官だ。彼らの部隊の任務は戦ではなく工事であり、夜警も形ばかりだ。
 ふたりは小さな机を挟んでいる。机には木の板が置かれ、赤と黒の木片がまばらに配されている。上官は身を乗り出し、板や木片をなめ回すように見る。兵士は上官の禿げた頭を見る。板の脇には灯りが置かれている。油を満たした小皿の端で小さな火が揺・・・

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眼鏡をかけた、頭が良くない小学生のディアレクティークに身を寄せて

15/05/01 コメント:9件 クナリ 閲覧数:2790

 高校二年の秋の合唱際を控えたある日のHR。先生が、
「バイオリンが弾ける人はいない? 今度の歌では、ピアノに加えてバイオリンも演奏に欲しいの」
とクラスに呼びかけた。
 首を縮めている私の後ろで、誰かが声を上げた。
「村瀬さんが昔やってました」
 ふざけんな、と叫びたくなる。
「村瀬さん、そうなの。じゃあお願い。ピアノは前に決めた通り、杉村君ね」
 杉村・・・

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黒猫と女

13/11/25 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:2789

 女は部屋で黒猫を飼っていた。
 小さな古い平屋に猫とふたりで暮らしている。いつも野暮ったい服を着て、化粧っ気もなく、地味で目立たない、この女はもうすぐ五十歳に手が届く。
 親兄弟もなく天涯孤独な境遇と聞くが、さりとて近所付き合いもなく、ひっそりと息を潜めるようにして暮らしている。

 女の左腕は肩より上がらない。
 酒癖の悪い夫が生きていた頃に酔っ払って暴力を振るわ・・・

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火の刺

12/12/12 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:2789

 豪徳寺駅を降りて小さな商店街を瀬里は歩いていた。車は進入禁止である。自転車さえ気を付けていればいいのだから八ヶ月の身重にとっては歩き易い道であった。鰻のようにうねうねと曲がる道沿いに、八百屋やパン屋、蕎麦屋などが軒を連ねている。小さな門松を飾る店もあり、大晦日の賑わいを冷たい風の中に感じるのだった。
 十五分も歩くと瀬里が生まれ育った家が見えてくる。塀を高く超えてピラカンサの実がまるで目印・・・

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涙のネックレス

13/04/15 コメント:4件 こぐまじゅんこ 閲覧数:2787

 森の中の赤い屋根のおうちが、うさぎのねねちゃんのおうちです。

 ねねちゃんは、今日、だいすきなお母さんのために、コーヒーをいれてあげようと思いました。
 お母さんのお気に入りのカップをとりだして、インスタントコーヒーをスプーンに一杯いれると、ポットのお湯を入れるつもりでした。
 でも、つい手がすべって、カップを床に落としてしまったのです。
 ねねちゃんは、びっくり・・・

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クラスメイトは孤独に歌い

13/09/25 コメント:4件 タック 閲覧数:2787

 商店街は空気さえも色を失ったようだった。無味乾燥なシャッターが景色の多くを占め、活気を生む声も人々の行き交いも無く、悲しい静寂だけが、荒涼とした場を満たしている。崩壊に向かっているのが分かりながらどうにもできない、そんな諦観に、壊れかけの街は包まれていた。
 細々と、僅かに残り続ける古くからの店。その一つである肉屋に向かう最中、ひどく音割れのした時代遅れのポップスが耳に入った。さびれた雰囲・・・

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羅刹丸

13/08/23 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:2785

 人を殺すことなんか、何とも思っちゃいない。大人も子どもも殺す。年寄りは、大っ嫌いだ殺す! 若い女は……いたぶってからゆっくり殺す。

 ――俺の中には『憎悪』しかない。

 男は羅刹丸らせつまると呼ばれる東山の麓の鹿の谷ししのたにあたりを根城に悪さを働く一匹狼の夜盗だった。金のためなら、人殺しなんか何んとも思っちゃいない。村を襲っては金と食糧を奪って、女を犯す、まるで悪鬼・・・

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妄想新説・本能寺の変

15/02/08 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2785

 天正10年(1582年)6月2日の未明、本能寺の変は起こった。轟々と燃え盛る炎の中で織田信長は自害したと言われている。
 しかし、明智光秀は燻る焼け跡でくまなく遺骨を探した。されど見つからなかった。
 謀反を起こした光秀にとって、信長に代わり天下を取ることが第一義。このままここに留まってるわけにはいかない。この後光秀は電光石火に京を治め、残党を追捕し、近江平定を行った。
 6月・・・

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幻の蝶々

14/10/12 コメント:11件 泡沫恋歌 閲覧数:2784

 平凡な家庭のリビングに油彩画を飾る。
 マリ・タチバナという世界的に有名な画家の作品で、これが遺作となった。
 パリのアトリエで、この絵を描き上げ、絵筆を握ったまま眠るように彼女は死んでいた。外傷はなく自然死だと報道された。
 そして日本にいる私の元へ、この絵を届けて欲しいとメモが残されていた。マリ・タチバナのエージェントは方々手を尽くして、やっと私を探し出した。
 この・・・

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タピオカに殺されかけた私

14/11/17 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:2781

 今日は、秋晴れで、絶好のドライブ日和。

 娘の運転で、孫と私と三人で、ドライブにでかけた。

 カーシートに乗った十一か月の孫は、
「あー、あー。」
と、大きな声をあげて、はしゃいでいる。
 私も、ドライブは大好きなので、気分はうきうき。娘との会話もはずむ。

 赤や黄色に色づいた木々を眺めながら、車は走る。
「うわー、きれいじゃなぁ・・・

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信夫と友子の場合

13/06/05 コメント:3件 おでん 閲覧数:2775

 平成二十五年六月の福島に、田所信夫という男がいた。歳は二十四であるが、年齢にそぐわぬ頼りなさがその風体から滲みでていた。ひょろな体型に加えて、顔も不細工であったから、友人らからはよく馬鹿にされていた。
 しかし信夫は別にかまわなかった。村田友子という幼なじみであり彼女でもある女のことを思い浮かべれば、身にふりかかる嫌なことなど全て忘れることができるのだ。友子は美しく心の優しい女であった。信・・・

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転がる宝石のように!

14/06/05 コメント:21件 草愛やし美 閲覧数:2774

 悦子は、先程から洗面所に閉じ籠っている。鏡の前で、しきりに顔の表情を変えていく。大きく口を目いっぱい開け、「あいうえおー」喉の奥まで見えるようにと手鏡を持つ手にも自然と力が篭る。口角を引き締める美容法だ。これを毎日やれば豊齢線など、への河童だと心に言い聞かせる。鏡の中の自分の顔の老いに気づいてもう何年になるだろう。若い頃、自画自賛できるほど、綺麗だった。道をゆけば、振り返る男もいた――はず、そう・・・

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妬きの野伏さり

15/03/02 コメント:11件 クナリ 閲覧数:2772

まだ日本に、本格的な重工業が興る前の話である。
ある山中の村で、人死にの出た庄屋の屋敷を検分していた役人二人が、顔をしかめた。
「ひどいわ。幼い娘は首を絞められ、母はその隣で胸を包丁で突かれ」
「やれ、父親の平助も庭の蔵で死んどる」
蔵の中で、平助は衣服を乱して転がっていた。だが、外傷はない。
「こいつは何で死んだんやろう」
「強盗なら、全員刺し殺しとるわのう」・・・

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鋭い目

13/07/01 コメント:5件  閲覧数:2770

僕の近所には探偵がいる。探偵といえば、よくテレビで華々しく活躍しているけど、僕は知っている。探偵とは、もっと地味なものだ。
実際、近所の探偵は、こじんまりとした事務所兼自宅にいて、表にでている看板も控えめな大きさで申しわけなさそうにたっている。そんな事務所にいる探偵も探偵で、見た目はどこにでもいそうな普通のおじさんだ。むしろ、昼夜かまわず、コンビニ弁当を持って帰る姿ばかりみかけるので、探偵と・・・

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ウエディングベルの丘 

12/06/06 コメント:2件 草愛やし美 閲覧数:2770

 長い冬が終わり、生れたばかりの白うさぎは、お母さんと一緒に初めて穴から出てきました。春の野に出た白うさぎは、丘の上で眩しさに驚きました。可愛いピンクの花が 咲いています。
「なんて可愛くキラキラ輝いているんだろう」
 白うさぎはその花に恋をしました。でも、白うさぎはその花に話したくても、恥ずかしくてどうしても話すことができません。毎日丘の上に登って行き、木陰からじっと小さな花を見つめ・・・

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あいあい傘

12/04/18 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2770

改札口を出て、しばらく歩いたところで、いきなりザアッときた。

駅にもどるには遅すぎた。とっさにサワ子はもよりの家の軒下に張りついた。

雨はいっそう激しくなった。子供のころなら、こうしていると、家の人が雨宿りに戸を開けてくれた。世知辛い現代、サワ子が背にした玄関はいつまでも固く閉ざされている。

傘をさした人々が、目の前を通りすぎてゆくのを、ひがみっぽい気持ち・・・

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にゃんこカフェ

12/12/20 コメント:15件 泡沫恋歌 閲覧数:2769

 ここは、とある街にある〔猫カフェ〕である。
 猫カフェというのは分かりやすく説明するとメイド喫茶みたいなもので、メイドさんの代わりに猫たちがスタッフとして働いています。来店したお客様相手にじゃれたり遊んだりして、その可愛らしい姿でお客様を癒してあげるのです。
 今日も猫カフェ『にゃんこの館』では、開店前にゲージから出されたスタッフの猫たちが鏡の前で毛つくろいをして身だしなみを整えてい・・・

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ある橋の下で

13/08/19 コメント:3件 佐川恭一 閲覧数:2769

 まったくねえ、神様なんてものがいるはずないんですよ、もしいたなら、私がこんな目に遭ってる理由がわかりません。私はね、昔ちゃあんと働いてたんです、女房と一人娘がいて、慎ましくも幸せな生活を送っていたんですよ。それなのに、私が証券会社に騙されて借金背負わされると、女房は娘と逃げちまいました。私は借金がばれて会社もクビになって、まったくの無一文。毎日借金取りに来られてどうしようもなくなって、強盗に入っ・・・

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綾音は──(⌒-⌒)ニコニコ

13/10/02 コメント:7件 鮎風 遊 閲覧数:2769

 良樹は田舎町の小さな駅に降り立った。この町を出て十年、そこには懐かしい風景があった。しかしながら商店街へと向かう良樹は驚いた。まさにシャッター通り、かっての賑やかさはない。
 良樹は人通りのないアーケードを進み、ローズ生花店までやってきた。引き戸が半分だけ開かれてる。良樹は中へと入り、薄暗い先の部屋に向かって声を掛ける。
「来たよ、綾音!」


── お兄ちゃん、母・・・

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海耳

15/05/16 コメント:6件 くにさきたすく 閲覧数:2769

「大丈夫だよ。もう慣れた」
 息子はぶすっとしている。小学校に上がったばかりだから仕方のない事なのかもしれないが、母親としては気が気じゃない。
「何を言っているの。重い病気だったらどうするの? 耳が聞こえなくなってもいいの?」
「でも何か怪しい」
「変なこと言わないの。やっと見つけたお医者さんなんだから」
 私は息子の手を引いて古びた木造家屋の扉を開けた。

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心の天秤

13/07/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:2765

 高木正人は携帯電話のボタンを押し電話を掛けた。深夜0時過ぎの公園には人の姿はなく、耳に当てた携帯電話の発信音が2回3回鳴り響くが、相手が出る様子はなかった。
 高木は電話を切り、虚しく発光する液晶画面を見つめたまま小さくため息を吐いた。7月初旬の夜気は少し蒸し暑さを残していて、昼間の職場での出来事をいつまでも引きずらせるようだった。
「高木は無慈悲な奴だよな。俺は課長の立場を理解した・・・

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迷う人

13/06/21 コメント:13件 平塚ライジングバード 閲覧数:2765

【登場人物紹介】

〇中原 武蔵
旅館の支配人。
幼い頃からピンポンダッシュを繰り返してきた極悪人。
深夜に宴会場の大型テレビでHなビデオを見ていたところ、ヘッドホンが抜けて、音声が旅館中に鳴り響いた。
自身のアブノーマルな趣味を外に拡散させないため、宿泊者、従業員を全て殺害しなければならないと考えている。
粉々に破壊されたヘッドホンが、彼の殺意を物語って・・・

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goukaな彼

16/05/13 コメント:0件 阿部藤 閲覧数:2764

「どうぞありのままに生きてください。あなたはもうそれだけで輝いていますから。」

夏らしく風鈴の絵柄の入った水色の便箋。冷房の効き過ぎたスーパーのステーショナリーの古びれた棚から選んだのか。どこのブランドでもありやしない、子ども同士でも大人同士でも送り合わない、かもめ〜るみたいな、平坦な夏の便箋。私の為にわざわざ選んだのだろうか。

情けない。ファンレターみたいなものは本当・・・

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転校生

13/03/20 コメント:12件 草愛やし美 閲覧数:2763

「転校生の内田太郎君です、みんな仲良くして下さいね」
「内田太郎です、よろしくお願いします」
 先生は、僕の家が、サーカスだという事は言わない、苛められるからと言って僕が頼んでいるからだ。
 まだ小四だというのに、これで何度目の転校だろう。初めは数えていたが、今では、そんなことはどうでもいい。どうせ、僅かの間しかいられない学校、友達なんてできるわけない、今までもそうだった。見せか・・・

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ボウフラ

12/05/01 コメント:4件 智宇純子 閲覧数:2761

 記憶を辿りながら入り口の戸を静かにあける。香ばしいような甘い香りが、懐かしさと共に身体中をゆったり包み込んでくる。
「いらっしゃいませ。あら」
 芳江さんじゃないですか。と、奥から懐かしい顔が覗いた。街並みとは裏腹に、あまり変わっていない店の雰囲気にホッと胸を撫で下ろすと、芳江は迷わずカウンターの右から三番目に腰かけた。いつも座っていたこの場所。フィルターから落ちるコーヒーの音が雨音・・・

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そして誰もいない……

12/12/24 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:2760

「いつ帰って来たんだろう?」
 亜理紗は自分の部屋のベッドで目を覚ました。窓から差し込む光りがやけに眩しくて、携帯の時計を見ると八時をまわっていた。
「やばい! 遅刻だわ」
 お母さん、何で起こしてくれなかったのよ。慌てて服を着替え、階段を駆け下りて一階のリビングに行くと家族が誰もいない。
「あれぇ? みんなどこに行っちゃったの?」
 この時間なら、いつもキッチンに居・・・

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第三十三回 朝礼耐久選手権

14/04/04 コメント:16件 タック 閲覧数:2760

「蝉時雨のひびく、夏真っ盛りの様相。太陽は輝き、この日の開催を祝福しているようであります。皆さん、おはようございます。本日はここ、上谷中学校グラウンドからお送りいたします、朝礼耐久選手権。天候は晴れ。湿度も良好。気温は早朝にも関わらず、二十五度と絶好のコンディションです。実況を務めますのは私、天気晴夫。そして解説には晴天大学教授、長雨不快さんにお越しいただいております。よろしくお願いします」

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恋よりカツサンド!

14/11/03 コメント:6件 泡沫恋歌 閲覧数:2756

 4時間目終了のチャイムと共に教室から飛び出して、学校食堂へ続く渡り廊下を猛スピードで走っていた。
《早くいかないと売り切れる!》先生に廊下を走るなと注意されても今だけはきけない。――全力疾走するアタシです!
 月に一度の食堂のおばさん『気まぐれカツサンド』の売り出し日なのだ。
 限定10食、お一人様1パック限り、値段は280円と激安、大人気ですぐに売り切れる。販売は不特定で食堂・・・

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本妻と愛人

14/02/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2754

【本妻】




ぬくぬくと眠りをむさぼる冬の朝
これほど愛しいと思うものがあろうか……

布団……
これこそ私の恋人だ

私を抱き留めてくれるその暖かい思いやりに
私もまた応えたいと抱きしめ愛を語る

夢見心地のまま 
あと5分 あと5分だけ
愛撫しあいたい

この愛を成就するには短すぎる・・・

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そう思ったのです

12/05/03 コメント:2件 デーオ 閲覧数:2754

 紅葉には少し早かったのですが、庭園にあるモミジは綺麗に色づいており、あたしは思わず「わぁ!」と声をあげてしまいました。
 あのひとがあたしを見る視線を感じながら、あたしは精一杯の笑顔をつくったのでございます。なにしろ、久しぶりの外出でありましたさかい、もう病気のことなど忘れておりました。

 池にかかる橋をゆっくりと渡っておりますと、池畔の黄色い色と赤い色。そして水面に映る少し・・・

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古書店にて

12/05/19 コメント:1件 山田えみる(*´∀`*) 閲覧数:2752

 『京都』というところには他の土地にはない魅力があるらしい。
 だいたい創作モノでは鬼や妖怪が跋扈しているように描れることが多い。わたしもアマチュア作家だからよくわかる。だいたいそれにおまけして、和装の少年が陰陽師の子孫として札を操っては式神を使役したりする。
 だが、もちろんここはそんな現代ファンタジーな世界ではない。夏は蒸し暑く、冬はまじ寒い、いたって普通の街だ。

 ・・・

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この国を救うのは君だ! プロジェクトJに参加しよう

12/07/24 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2750

「ようやくここまでたどり着いた……」
 僕は感慨深い気持ちで呟いた。このNPO団体を知ってからここにたどり着くまで、随分時間がかかったように思えたが本当のところ数ヶ月だった。
 
 僕の担当職員がやってきた。
「ようこそ安藤さんお待ちしていました。このNO378があなたの乗る自転車です。画期的な自転車発電が可能です。明日朝スタート、2時間ぶっ通しで漕ぐのですが大丈夫でしょう・・・

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まんなかの緋鯉

12/04/06 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:2749

「ねえ、あれって僕達みたい!」
 久々に3人で買い物に出かけた、その帰り道。
 彼の子が指差したのは、戸建の屋根にはためく鯉のぼりだった。
「1番上の青いのがパパ。1番下の小さいのが僕なの」
 無邪気な声の続きが怖くて、私は先回りをして訊ねた。
「じゃあ、真ん中の赤いのはお母さんかな」
「ちがうよ! お母さんはどっか遠くに行っちゃったんだから」
 指差して・・・

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「弁当」と言う単語が一度も出ないファンタジー

16/07/12 コメント:9件 あずみの白馬 閲覧数:2748

「これ、忘れないでね」
 暗殺組織の長、エリーゼ様からサンドイッチ入りのバスケットを受け取った。

 戦乱の真っただ中にあるこの世界、圧政を敷く帝国軍と、解放軍の激しい戦いは、解放軍が優勢で進んでいた。
 戦況打開のため、帝国軍のナンバー2、アマデウスは、闇の司祭エリーゼをトップとした暗殺組織を結成し、解放軍の主要メンバーを葬り去ることを計画した。

 身寄りの・・・

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「ねえ、はいる?」

12/04/18 コメント:2件 松定 鴨汀 閲覧数:2747

 GWもGWが名残惜しい時期もとうに過ぎ、私は会社という日常に戻っていた。
 今日も6時とは思えぬ強い日差しを浴びながら駅へと歩く。通勤地獄のスタートラインへと。

 駅が見えてきた。どんどん人が吸いこまれていく。数分後には自分もそのうちの一人かと憂鬱な気持ちになっていたものだから、ふいにかけられたその声に最初は気がつかなかった。

「ねえ、はいる?」

・・・

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我、剣、於、愛、知

13/05/22 コメント:7件 平塚ライジングバード 閲覧数:2746

最初に断言しておくが、出身地を尋ねた時に『名古屋』と答えるのをやめていただきたい。他の人が愛媛とか群馬とか県名を答えているのに、なぜ都市名を答えるのか!
諸君と同じ症状は、神奈川県民や兵庫県民にも散見されるが、正直理解に苦しむ。先日、この質問に『名古屋』と答えた学生を問い詰めたら、こともあろうに名古屋市ではなく県内の別の市に住んでいるというではないか。
なお、名古屋市在住だからといって・・・

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高く、高く、あがれ

12/04/21 コメント:2件 ジョゼ 閲覧数:2744

「なんで、今日なんだろうなぁ」
「いつ終わるって言われても、なんで今日なんだろうなっていうんでしょ」

落ち着いては居るが、沈んだ声で初老の夫婦は呟いた。
茶の間に集まっているのは5人。
初老の夫婦と若い夫婦。高齢のおばあさん一人。
背の低いテーブルを囲んで4人、おばあさんは正座が辛いのか低いイスにゆったりと腰を預けてもたれている。
皆暗い顔をし、うつむく・・・

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蘇るベートーベン

15/01/30 コメント:7件 草愛やし美 閲覧数:2744

「セラ、僕はベートーベンを蘇らせるのに成功したんだ」
「嘘、二百五十年も前の人だよ」
「あれほどの才能を持ちながら、五十六歳で死んだベートーベンは、死亡前に難聴の原因を調べるため、自分の解剖を依頼していたのさ。ヨハン・ワグナーという医師がベートーベンの家で解剖をやった、だから、遺体は残ったってことさ」
 ケンは手元にある本を読み始めた。

「1827年、難聴に苦しみ続・・・

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ライオンのジロー

13/02/25 コメント:4件 こぐまじゅんこ 閲覧数:2743

 サーカス団に、火の輪くぐりをするライオンのジローがいた。
 ジローは、ライオンなのに、心がやさしくて、ちょっぴりこわがりだった。

 火の輪くぐりをする前は、いつもこわくて心臓が、ばくばくした。
 団長さんが、
「ジロー、いい加減に慣れてくれないと、毎回毎回、おしっこちびられちゃぁかなわないよ。」
と、大きな声で言うもんだから、サーカスの仲間にまで、ジローがち・・・

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桜の約束

13/05/06 コメント:14件 光石七 閲覧数:2743

 数か月だけだが、名古屋で暮らしたことがある。名古屋駅、ナナちゃん人形、栄の地下街、コメダ珈琲店、小倉トースト……。多少なりともあちこち出かけ様々な風景を見たが、真っ先に思い浮かぶのは鶴舞公園の桜だ。それも、植えられて数年ほどであろう、私と背丈が変わらない細い桜の木だ。
 私が名古屋に住んだ理由。それは、勤めていた会社が支社を立ち上げるに当たって、本社から派遣するリストに名前が入ったからだっ・・・

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駅が見える窓

12/09/11 コメント:4件 メラ 閲覧数:2742

私の部屋の窓からは、ちょうど駅のプラットホームを見下ろす事ができます。窓は東向きで、朝、カーテンを開くと、遠い山間から上った太陽の光が、部屋の奥まで差し込みます。そして、高い建物など一つもないこの町を、その眩い朝日が照らしている様子を見渡す事ができます。
 私は毎朝、目が覚めると一番に窓を開け、朝の冷たい空気を部屋に招き入れるます。そして光を受け、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込みます。そし・・・

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金髪とヒキコモリ

12/04/04 コメント:1件 アフロ蛇丸 閲覧数:2740

「ほれ、バイト代」
 兄貴は僕に、わざわざ封筒に入れた金を渡した。

 僕の面倒を見てくれていた両親が事故で死んで一ヶ月が経ち、もうどうすることもできなくなった僕のところにふらりと現れて、唐突に「お前、仕事手伝え」と言った。
 小中高と私立の名門に通っていた僕と違って、兄貴は市内の中学校でも有名な不良で、中学を卒業してすぐ家を飛び出した。それからずっと連絡のひとつも寄こさず・・・

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一通の不幸の手紙

13/04/11 コメント:8件 光石七 閲覧数:2738

 やっくんに一通の手紙が届きました。やっくんはあまり手紙をもらったことがないので、とても喜びました。ところが、封を開けてみると、便箋にはこんなことが書いてありました。

『これは、不幸の手紙です。
 この手紙を3人に送らないと、私に災いが訪れるそうですので、申し訳ありませんがあなたに送らせていただきました。
 3日以内に、同じ文面で3人に同様の手紙をお送り下さい。
 ・・・

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神になった人間――イルカモノガタリ

12/07/30 コメント:6件 草愛やし美 閲覧数:2736

 しぶきをあげ今まで水面から飛び上がっていたイルカの動きが、突然止まった。警報ランプに反応したのだろう。女性トレーナー小百合と男性飼育員の僕は一斉に叫んだ。
「みんな逃げろー!」
「逃げてぇーー!!」
 会場に警報が鳴り響いている。小百合は水槽に飛び込みイルカを抱きかかえるようにした。観客はみんな一斉に席を立ち出口へ駆け出した。
「捕まったら死刑だぞ!」
 誰かの声が・・・

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ライバルにゃんこ

13/09/01 コメント:14件 泡沫恋歌 閲覧数:2734

 お馴染の、猫カフェ『にゃんこの館』では、12匹+ゲスト猫のスタッフが働いています。みんな仲良くやってるように見えますが、実はそうでもないのです。特にホワイトペルシャのお嬢さま猫シャネルと野良猫出身のキジ猫の蘭子は仲が悪い。
 寄ると触るとケンカになる。この二匹はいわゆる「犬猿の仲」なので、猫なのに犬猿とか……じゃあ馬が合わない。猫なのに馬が合わないって? お互いに相手が気に入らないようです・・・

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究極バイトどっとkami

13/01/11 コメント:26件 草愛やし美 閲覧数:2730

 正月だというのに美咲は、全く元気がない、バイト先の居酒屋がクリスマスを最後に閉店してしまったからだ。
「えーっと、究極バイト.kamiっと」
 携帯に入力して美咲は遠い目で雪の散らつく空を仰いだ。
「切ないなあ、今年もばあちゃんのいる田舎に帰れそうもないや。ばあちゃん待っているだろうなあ、今年こそ帰省できるように頑張ったのに……。でも落ち込んでられない。バイト探さなくちゃ」

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偽りのテーブル

15/04/20 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:2728

 「いただきます」と手を合わせて、今夜も母の用意してくれた夕食を、私は食べ始める。
 しゃけの塩焼きが三人分。筑前煮も三つの小鉢に盛り付けられてテーブルの上に置かれている。ご飯茶碗も、汁椀も箸も三人分。母と娘の私と、それから父の分だ。
 ◇
 父が病気で亡くなり、一ヶ月ほど経った頃だった。母がこうして父の分まで作り始めたのは。
 最初、母は笑ってごまかした。
「いやあ・・・

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三角形の崩し方

14/02/24 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2727

 綾の部屋に忍び込む。親友だった女だから彼女の習慣は熟知している。就寝前、必ず飲む甘い赤ワインに毒を盛る。夫の前で鼻を鳴らしていたあの得意顔の女は苦しみに歪んだ酷い形相で死に絶える。綾は死ぬしかない女。憎い、どうして親友の私の夫を寝取るなんてことができるのか。あいつは女の風上に置けない、いや、人間じゃない。ドラマのような酷い話が、吾身に起こるなんて思いもよらなかった。
 夫は私のもの、私にぞ・・・

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シマウマとライオン

13/02/08 コメント:4件 yoshiki 閲覧数:2727

 ――あるところに動物の国があった。雄大な自然がどこまでも広がり、緑豊かなその大地は誰にも荒らされる事などない美しい世界だ。我々から見たら異次元の世界だと考えてほしい。 そこに住む彼らは確かに動物であったが、人間のように考えることが出来たのだ。
 その世界のサバンナにとても足の速いシマウマがいて、そのシマウマは子供のころから走るのでは、誰にも負けたことがなかった。彼は先天的に足が速いだけでな・・・

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きになるひと

13/10/15 コメント:17件 猫兵器 閲覧数:2726

 自慢だった長い髪には青々とした若葉が混じり、ほっそりとした素足からは土を求める透明で細やかな根が伸びていた。
「ごめんね、けい君。わたし、樹になるんだ」
 そう言って寂しそうに笑ったミヤコの頬には、優しげな葉脈が目立っていた。

 ミヤコのお母さんも、お祖母さんもそうだったらしい。
「家系なの。言えなくてごめんね。いつかはこうなるって、分かっていたんだ。でも、ずっと・・・

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