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5

歴詩(連載6) 真田幸村・大坂夏の陣

15/02/13 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2951

 ほんの七月(ななつき)ほど前に 大坂冬の陣
 真田幸村は 城の南方に築いた 真田丸から
 怒濤の攻撃
 そして徳川方は 惨敗した

 戦が終わり 和議を結んだ
 徳川が 外堀を埋める
 一方豊臣は 内堀を、と

 いかにも 老いた家康は焦っていた
 あっと言う間に、内堀まで埋めてしまったのだ
 難攻不落の大坂城が、これで――裸城に・・・

7

偽りのテーブル

15/04/20 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:2951

 「いただきます」と手を合わせて、今夜も母の用意してくれた夕食を、私は食べ始める。
 しゃけの塩焼きが三人分。筑前煮も三つの小鉢に盛り付けられてテーブルの上に置かれている。ご飯茶碗も、汁椀も箸も三人分。母と娘の私と、それから父の分だ。
 ◇
 父が病気で亡くなり、一ヶ月ほど経った頃だった。母がこうして父の分まで作り始めたのは。
 最初、母は笑ってごまかした。
「いやあ・・・

4

コーヒー、一杯分の幸せ。

12/11/24 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:2949

 夕凪で窓のカーテンは微動だにしない。西日のあたるキッチンのテーブルで千秋はコーヒーを飲んでいた。
「今日は忙しかったなぁー」
 フーと溜息をついてテーブルに頬づえをつく。
 今日はスーパーの売り出しだった。まだ新米の千秋はレジの前に並ぶ客の多さに目が回りそうだった。その上、商品の値引きを忘れて中年の女性客にしつこく文句を言われて辟易した。

 今年、三十二歳になる主・・・

3

廃駅

12/09/09 コメント:5件 郷田三郎 閲覧数:2946

 目の前を轟音を伴って赤い電車が通り過ぎてゆく。
 運転手には寂れたホームの上、線路ぎりぎりまで前に出ている私など目に入らない様だ。
 風圧が私の頬を弄り髪を崩すが電車は速度を落す素振りさえ見せはしない――。

 その日は朝から酷く忙しい日だった。正確には前週末から忙しさは継続していて、週が明けて三日が過ぎた木曜になっても事態の収束がいつになるのか、私には想像がつかなかった・・・

1

水族館

12/07/07 コメント:15件 汐月夜空 閲覧数:2940

「やっぱりここに居たんですね、館長」
 辺りを照らすのは水上の従業員用通路と通路に五メートル幅に埋め込まれたブルーライトのみ。その仄暗い明りの中を加賀美は靴音を大きく鳴らさないようにゆっくりと歩いていく。以前館長がここに居た時に、蛍光灯を全部点けて駆け足で近づいて、普段は温厚な館長に信じられないほど怒られたのは記憶に新しかった。
 ――ここ、とは夜の水族館のガラス通路だ。館長は一日の仕・・・

4

珈琲牛乳のおもいで

12/11/20 コメント:9件 そらの珊瑚 閲覧数:2936

 のれんをくぐると、入口はふたつに別れている。

 男湯と女湯。そこで仕分けされるのは、もちろん生物学的な男と女に基づくものだが、母親に連れられた小さな男の子というものは、女湯に入ることを許された稀有な存在かもしれない。というか、母親のおまけのようなものだったのだろう。
 
 いつものように、その日も母に連れられて女湯の脱衣所に入る。番台には背中を丸くしたおばさんが座ってい・・・

7

迷う人

13/06/21 コメント:13件 平塚ライジングバード 閲覧数:2935

【登場人物紹介】

〇中原 武蔵
旅館の支配人。
幼い頃からピンポンダッシュを繰り返してきた極悪人。
深夜に宴会場の大型テレビでHなビデオを見ていたところ、ヘッドホンが抜けて、音声が旅館中に鳴り響いた。
自身のアブノーマルな趣味を外に拡散させないため、宿泊者、従業員を全て殺害しなければならないと考えている。
粉々に破壊されたヘッドホンが、彼の殺意を物語って・・・

13

本妻と愛人

14/02/20 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2935

【本妻】




ぬくぬくと眠りをむさぼる冬の朝
これほど愛しいと思うものがあろうか……

布団……
これこそ私の恋人だ

私を抱き留めてくれるその暖かい思いやりに
私もまた応えたいと抱きしめ愛を語る

夢見心地のまま 
あと5分 あと5分だけ
愛撫しあいたい

この愛を成就するには短すぎる・・・

5

黒洞沼の鯰(くろうろぬまのなまず)

15/05/22 コメント:10件 クナリ 閲覧数:2934

 ――沼だ。沼が。
 ――光作なら、喰われたよ――

 江戸時代、特に元禄期は、生活を脅かす戦が長く遠のいたこともあり、大衆娯楽の一大隆盛期となった。
 特に、絵の類は質・量ともに無類の充実を見た。
 ただし、表があれば裏もある。
 江戸は小石川の片隅に、格別名もなしていない絵師が長屋暮らしをしていた。
 周囲の家々では、腕のない絵師が貧乏長屋で食いつめて・・・

10

黒猫と女

13/11/25 コメント:17件 泡沫恋歌 閲覧数:2932

 女は部屋で黒猫を飼っていた。
 小さな古い平屋に猫とふたりで暮らしている。いつも野暮ったい服を着て、化粧っ気もなく、地味で目立たない、この女はもうすぐ五十歳に手が届く。
 親兄弟もなく天涯孤独な境遇と聞くが、さりとて近所付き合いもなく、ひっそりと息を潜めるようにして暮らしている。

 女の左腕は肩より上がらない。
 酒癖の悪い夫が生きていた頃に酔っ払って暴力を振るわ・・・

7

かげろうの語源

13/06/17 コメント:10件 平塚ライジングバード 閲覧数:2932

かげろうの語源を知っていますか。
わたしは、少しでも多くの方に彼のことを知ってもらいたいのです。そして、願っていただきたいのです。

わたしの物語は語り継がれるかもしれません。わたしの歌は詠み伝えられるかもしれません。しかし、彼についての記述だけは、嫉妬に狂った我が夫に焼かれ、完全に消失してしまったのです。

わたしは、彼の生前も死後も幸せにすることはできませんでした・・・

12

詩人の本能

14/09/08 コメント:16件 草愛やし美 閲覧数:2930

 嬉しい時も、悲しく辛い時も、それでも蜘蛛は巣を編み続けます。詩人がそうであるように、息をするかのように糸を編み続けるのです。 
 ◇ 
 山奥の、とある橋の欄干に蜘蛛は巣を張るため草叢から這い出してきました。生まれて初めて巣を張るのです。蜘蛛の本能は生きるために、この橋の欄干に巣を張ることがよいと申しています。生まれ出る前から、その能力は備わったもの、人は本能と呼びますが、それは、ど・・・

8

第三十三回 朝礼耐久選手権

14/04/04 コメント:16件 タック 閲覧数:2928

「蝉時雨のひびく、夏真っ盛りの様相。太陽は輝き、この日の開催を祝福しているようであります。皆さん、おはようございます。本日はここ、上谷中学校グラウンドからお送りいたします、朝礼耐久選手権。天候は晴れ。湿度も良好。気温は早朝にも関わらず、二十五度と絶好のコンディションです。実況を務めますのは私、天気晴夫。そして解説には晴天大学教授、長雨不快さんにお越しいただいております。よろしくお願いします」

2

信夫と友子の場合

13/06/05 コメント:3件 おでん 閲覧数:2928

 平成二十五年六月の福島に、田所信夫という男がいた。歳は二十四であるが、年齢にそぐわぬ頼りなさがその風体から滲みでていた。ひょろな体型に加えて、顔も不細工であったから、友人らからはよく馬鹿にされていた。
 しかし信夫は別にかまわなかった。村田友子という幼なじみであり彼女でもある女のことを思い浮かべれば、身にふりかかる嫌なことなど全て忘れることができるのだ。友子は美しく心の優しい女であった。信・・・

1

暑中はがき

12/07/26 コメント:10件 泡沫恋歌 閲覧数:2927

 車のエンジンを止めて、ドアを開けると外は真夏だった。
 喧しい蝉の鳴き声と焼け付くような強い日差しでいっぺんに汗が噴き出した。美咲は三日振りに自宅のある郊外のマンションに帰ってきた。ここのところ仕事が忙しく、会社近くのビジネスホテルで寝泊まりしていた。通勤時間を惜しんで仕事に打ち込んだ。
 美咲は中堅のインテリア照明会社に勤めている。都心に大型ホテルがオープンするので、その建物内の照・・・

8

モーツァルトの耳

15/02/07 コメント:10件 そらの珊瑚 閲覧数:2926

 トーストの上でバターは溶け、淹れたてのインスタントコーヒーにハムエッグ。もう既に、大小二人分の弁当が出来ている。代わり映えしない、朝の風景。

 小学生の頃から、俺を真似して料理するのが好きだった娘は、ますます手際が良くなり、中学生になった今では、料理は娘担当になった。今は料理が好きというより、必要だからとやっているのだろうと思うが。
 親の欲目を引いても、味はまあまあイケる。・・・

3

風にのって

12/09/03 コメント:0件 kou 閲覧数:2925

 ハーフタイムを迎えた。
 ロンドンパラリンピック「ゴールボール」決勝 アメリカ×日本は静かに幕を開け前半終わって、2−0とビハインド。
「諦めるな」綾子は白い紙、いや、黄ばみかかった紙に刻まれている文字を見つめながら頭にその言葉を連打した。
「綾子、鈴に思いをぶつけろ」と観客席から婚約者である勇太の声が響き、綾子は声のする方に身体の向きを変え笑顔で応えた。その直後、審判員の笛が・・・

6

タイムバンク

15/06/01 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:2924

 今夜はこれからデートだ! 時間はたっぷりある。
 小腹がすいたのでカップ麺でも食べるとしよう。麺にお湯を注ぎ、きっちり3分間、柔らかすぎる麺は嫌いなので、いつも砂時計で時間を計る。
 さらさらと……砂が落ちて時を刻む。
 よし。そろそろいいだろう。カップ麺のフタを開けようとした瞬間。
『タイムオーバー!』誰かの声がした。
 一人暮らしの俺の部屋にいったい誰だ? 10・・・

4

消えないもの、消えるもの

15/07/02 コメント:4件 佐々々木 閲覧数:2923

 放課後。教室にはほのかに赤みを帯びた日差しが窓ガラス越しに差し込んでいる。誰もいない教室は静かで、少なからず解放感を感じた。目を閉じると、木や金属、チョーク、紙、制汗剤などが混ざった独特の匂いがする。ソックス越しに感じる床の感触は固くひんやりとしていた。床の埃が気になり、穿いている白のソックスが汚れることには抵抗があったが、洗えばすぐ落ちるだろうと高をくくる。
 私は軽く絞った雑巾で自分の・・・

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火が消えて

12/08/08 コメント:0件 野村レトリクス 閲覧数:2922

 月の夜、神殿への道をふさぐようにしつらえられた天幕の中に、ふたりの男がいる。若い兵士と中年の上官だ。彼らの部隊の任務は戦ではなく工事であり、夜警も形ばかりだ。
 ふたりは小さな机を挟んでいる。机には木の板が置かれ、赤と黒の木片がまばらに配されている。上官は身を乗り出し、板や木片をなめ回すように見る。兵士は上官の禿げた頭を見る。板の脇には灯りが置かれている。油を満たした小皿の端で小さな火が揺・・・

5

我、剣、於、愛、知

13/05/22 コメント:7件 平塚ライジングバード 閲覧数:2922

最初に断言しておくが、出身地を尋ねた時に『名古屋』と答えるのをやめていただきたい。他の人が愛媛とか群馬とか県名を答えているのに、なぜ都市名を答えるのか!
諸君と同じ症状は、神奈川県民や兵庫県民にも散見されるが、正直理解に苦しむ。先日、この質問に『名古屋』と答えた学生を問い詰めたら、こともあろうに名古屋市ではなく県内の別の市に住んでいるというではないか。
なお、名古屋市在住だからといって・・・

4

雪は知っている

13/12/12 コメント:8件 alone 閲覧数:2915

ソノは思いつく限りの防寒着を身に着け、ひざ掛けの上に手袋をつけた手を乗せ、僕が押す車いすに座っていた。
「今日はやっぱり寒い?」
こちらを振り向くことなく、ソノは僕に訊ねた。僕は車いすを押す手を止めることなく、押したまま答える。
「そうだね。少し肌寒い」
「そう……」
ソノは寂しそうな音を含んだ声を漏らし、そのまま黙った。
乾燥した空気が冷たい風に揺り動かされる・・・

3

京都伏見 酒蔵情話

12/05/27 コメント:1件 草愛やし美 閲覧数:2914

 
 母が亡くなって1年法事のため私は実家へやって来た。母は昔から丈夫な人で家族みんな病気とは無縁の人だとばかり思ってきた。病に気づいた時はもう手遅れで家族はみんな悔やんだがどうしようもできなかった。
 私は隣の県に嫁いだが、母は私のことを心配してくれた。嫁ぎ先が兼業農家だったため嫁である私は年中農作業に駆り出された。
「都会育ちのあんたに田植えなんかできるん? 腰はどない、無理・・・

2

永遠の海よ

12/07/11 コメント:16件 そらの珊瑚 閲覧数:2913

 僕たちを乗せたあの自転車は、どこへ消えてしまったのだろうか。
       
        ◇
 
 僕たちは海辺の町で育ったおさななじみだった。小さい頃は磯に出て、カニを採ったり潮だまりに取り残された小魚を採ったりして共に遊んだものだった。
 小学校へ進級してからはどちらともなく距離を置くようになった。『男女七才にして席を同じゆうせず』という言葉があったように、・・・

5

羅刹丸

13/08/23 コメント:8件 泡沫恋歌 閲覧数:2911

 人を殺すことなんか、何とも思っちゃいない。大人も子どもも殺す。年寄りは、大っ嫌いだ殺す! 若い女は……いたぶってからゆっくり殺す。

 ――俺の中には『憎悪』しかない。

 男は羅刹丸らせつまると呼ばれる東山の麓の鹿の谷ししのたにあたりを根城に悪さを働く一匹狼の夜盗だった。金のためなら、人殺しなんか何んとも思っちゃいない。村を襲っては金と食糧を奪って、女を犯す、まるで悪鬼・・・

10

三角形の崩し方

14/02/24 コメント:15件 草愛やし美 閲覧数:2909

 綾の部屋に忍び込む。親友だった女だから彼女の習慣は熟知している。就寝前、必ず飲む甘い赤ワインに毒を盛る。夫の前で鼻を鳴らしていたあの得意顔の女は苦しみに歪んだ酷い形相で死に絶える。綾は死ぬしかない女。憎い、どうして親友の私の夫を寝取るなんてことができるのか。あいつは女の風上に置けない、いや、人間じゃない。ドラマのような酷い話が、吾身に起こるなんて思いもよらなかった。
 夫は私のもの、私にぞ・・・

13

お母さん大好き

17/01/04 コメント:11件 デヴォン黒桃 閲覧数:2909

 ぎゃあ……おぎゃあ……ぎゃあ……ぎゃあ……
 マア、なんて可愛い私の坊や。
 産毛みたいな髪の毛が、抱っこしたら鼻をくすぐって仕方がなかった。
「こんにちは赤ちゃん。私がお母さんよ」
 アノ時アナタに向けたお母さんの愛はトッテモ深いものだったのよ。

 眠る時間がグンと少なくなっても、坊やがヒトツ咳をしただけで、其の晩は寝ずに過ごしたものよ。
 チョット・・・

5

ホワイト・クリスマス

13/12/07 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2907

 そっと開けたカーテンの間隙、その向こうに少しくすんだ風景が見える。本当は白銀の世界なのだろう。しかし、新月だった闇の中で雪はしんしんと降り、今も舞い落ちる六花(りっか)の重なりなのか、グレーぽく目に映る。
 凛太郎は、そんな雪夜の名残にふーと息を吹きかけ、ボソッと呟く。「雪だよ」と。

 ベッドの中にいる麻伊からは、興味がないのだろう、「そうなの」と、おかしみのないレスポンスし・・・

3

ライオンのジロー

13/02/25 コメント:4件 こぐまじゅんこ 閲覧数:2907

 サーカス団に、火の輪くぐりをするライオンのジローがいた。
 ジローは、ライオンなのに、心がやさしくて、ちょっぴりこわがりだった。

 火の輪くぐりをする前は、いつもこわくて心臓が、ばくばくした。
 団長さんが、
「ジロー、いい加減に慣れてくれないと、毎回毎回、おしっこちびられちゃぁかなわないよ。」
と、大きな声で言うもんだから、サーカスの仲間にまで、ジローがち・・・

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火の刺

12/12/12 コメント:8件 そらの珊瑚 閲覧数:2906

 豪徳寺駅を降りて小さな商店街を瀬里は歩いていた。車は進入禁止である。自転車さえ気を付けていればいいのだから八ヶ月の身重にとっては歩き易い道であった。鰻のようにうねうねと曲がる道沿いに、八百屋やパン屋、蕎麦屋などが軒を連ねている。小さな門松を飾る店もあり、大晦日の賑わいを冷たい風の中に感じるのだった。
 十五分も歩くと瀬里が生まれ育った家が見えてくる。塀を高く超えてピラカンサの実がまるで目印・・・

8

そして誰もいない……

12/12/24 コメント:13件 泡沫恋歌 閲覧数:2905

「いつ帰って来たんだろう?」
 亜理紗は自分の部屋のベッドで目を覚ました。窓から差し込む光りがやけに眩しくて、携帯の時計を見ると八時をまわっていた。
「やばい! 遅刻だわ」
 お母さん、何で起こしてくれなかったのよ。慌てて服を着替え、階段を駆け下りて一階のリビングに行くと家族が誰もいない。
「あれぇ? みんなどこに行っちゃったの?」
 この時間なら、いつもキッチンに居・・・

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そう思ったのです

12/05/03 コメント:2件 デーオ 閲覧数:2905

 紅葉には少し早かったのですが、庭園にあるモミジは綺麗に色づいており、あたしは思わず「わぁ!」と声をあげてしまいました。
 あのひとがあたしを見る視線を感じながら、あたしは精一杯の笑顔をつくったのでございます。なにしろ、久しぶりの外出でありましたさかい、もう病気のことなど忘れておりました。

 池にかかる橋をゆっくりと渡っておりますと、池畔の黄色い色と赤い色。そして水面に映る少し・・・

3

笑え!

13/03/22 コメント:4件 ミュウ 閲覧数:2905

 明日は一緒にサーカスに行くはずだった。
「まだお子さん小さいのに……可哀想にねえ」
 うるさい。
 僕にできたことは、写真の中で柔らかに微笑む母を睨み付けることだけだった。
 ――約束したのに。
 正直、悲しみよりも怒りの方が大きかった。
 だから僕は、知らない人たちが集まって啜り泣いているその場所がどうにも居心地が悪くて、抜け出した。
 こっそりと補助・・・

9

家庭内離婚

15/11/30 コメント:16件 泡沫恋歌 閲覧数:2904

 妻の小夜子と家庭内離婚をして、かれこれ十年は経つだろうか。
 今年で銀婚式の夫婦だが、子どもたちが成長するにしたがって会話もなくなり、寝室も別になった。最近では食事も別々、夕食だけは妻が作ってテーブルの上に置いてあるので、仕事から帰ってからチンして温め独りで食べている。
 必要な連絡事項はメモしてテーブルに置くか、妻の携帯にメールで送信する。よほど事がない限り会話はしない。お互いに飽・・・

8

桜の約束

13/05/06 コメント:14件 光石七 閲覧数:2900

 数か月だけだが、名古屋で暮らしたことがある。名古屋駅、ナナちゃん人形、栄の地下街、コメダ珈琲店、小倉トースト……。多少なりともあちこち出かけ様々な風景を見たが、真っ先に思い浮かぶのは鶴舞公園の桜だ。それも、植えられて数年ほどであろう、私と背丈が変わらない細い桜の木だ。
 私が名古屋に住んだ理由。それは、勤めていた会社が支社を立ち上げるに当たって、本社から派遣するリストに名前が入ったからだっ・・・

6

爆走疾走! 白線レース

14/06/27 コメント:10件 タック 閲覧数:2900

深夜、商店街。
歩道には多くの若者が立ち並んでいる。道路を囲むように列をなしている。
――その、若者たちの目的はただ一つ。「白線レース」におけるタツミの疾走。
怪我により休業していたタツミの復帰を、間近で見ることにあった。

「白線レース」王者、タツミ。挑戦者、茶髪の若者。
道路の両端、コースである白線上にふたりは立っていた。
横位置をそろえ、戦闘の気合を・・・

7

路地裏の、誰も聞こえない咳

14/09/26 コメント:14件 クナリ 閲覧数:2900

『僕は、吃音だ。
けど、知的障害よりも生き易い、ということもない。
人は、目や耳の不具合には寛容な愛を示すが、発音の不自由は、甘えや、工夫の不足とみなす。
吃音持ちに「ゆっくりでいい、はっきりと話してごらん」と言うのは、盲目の人に「頑張って、よく見てごらん」と言うのと、同じだと言った人がいる。
僕もそう思う――』

一九六九年、ポーランドの少年、イギール・ポンセ・・・

7

嫉視(意識過剰)

15/03/21 コメント:12件 タック 閲覧数:2899

ふざけるな、と呟く言葉は、白い画面の目前に消えた。
画面には六人の名前が称号を添えられて輝き、サイトの名を冠した賞が、今度は六人に与えられたことを示していた。
自分の、名前は無かった。自分の作品は隅の方に蟠り、なかば廃棄されていた。
二千字に全力を尽くした作品には善悪のコメントも無く、ただ目汚しの、恥の作品となっているようだった。つまりは、価値が無かった。自身を嘲笑されるより、そ・・・

0

心の天秤

13/07/01 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:2899

 高木正人は携帯電話のボタンを押し電話を掛けた。深夜0時過ぎの公園には人の姿はなく、耳に当てた携帯電話の発信音が2回3回鳴り響くが、相手が出る様子はなかった。
 高木は電話を切り、虚しく発光する液晶画面を見つめたまま小さくため息を吐いた。7月初旬の夜気は少し蒸し暑さを残していて、昼間の職場での出来事をいつまでも引きずらせるようだった。
「高木は無慈悲な奴だよな。俺は課長の立場を理解した・・・

5

アイサと首切り半蔵

13/09/25 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2899


 黒崎半蔵は女性アイドルグループ、ヤンレディ18の地方公演を終わらせ、今会場から30キロ奥地にある山里へと車を走らせている。と言うのも、十年前トップアイドルだったアイサに会いに行くためだ。
「確かにあの時、彼女を退団させてしまったが……」
 曲がりくねった山道を運転しながらも、当時を振り返る。

 煌めくステージ上に18人の少女たちがいた。まさに活き活きと、軽快なリ・・・

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とんかつ山のたぬきさん

12/06/09 コメント:0件 草愛やし美 閲覧数:2895

 僕は今日もこの『とんかつ伊勢』にやって来た。この席だった、この奥まった席に初めて僕はタヌ吉と向かい合って座った。向かい側のタヌ吉の緊張した顔が今でも思いだされる。もちろん人間に化けていたけれど……、その化け方のうまさには感心させられた。タヌ吉は上ロースかつ定食を頼んだ。二人で向かい合ってとんかつが来るのを待った。

「わあ! うまそうじゃな」
 人間の言葉を習ったのが仙人だった・・・

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妄想新説・本能寺の変

15/02/08 コメント:8件 鮎風 遊 閲覧数:2894

 天正10年(1582年)6月2日の未明、本能寺の変は起こった。轟々と燃え盛る炎の中で織田信長は自害したと言われている。
 しかし、明智光秀は燻る焼け跡でくまなく遺骨を探した。されど見つからなかった。
 謀反を起こした光秀にとって、信長に代わり天下を取ることが第一義。このままここに留まってるわけにはいかない。この後光秀は電光石火に京を治め、残党を追捕し、近江平定を行った。
 6月・・・

4

ゆうれい

15/06/13 コメント:8件 梨子田 歩未 閲覧数:2890

 うだるような暑さの中、与吉は天井を見ながら寝転がっていた。与吉は絵師とは名乗っていたが、待っているだけでは絵師の仕事が来るはずもなく、その日暮らしをしていた。
 顔がなまじいいものだから、本人もそれを承知で、うまいことを言って女から銭を巻き上げていた。女を長屋に連れ込んで、色白で色っぽい女を描いてやれば、落ちない女はいなかった。
 だが、すぐにぼろが出て女たちは金を返せというのだが、・・・

2

この国を救うのは君だ! プロジェクトJに参加しよう

12/07/24 コメント:8件 草愛やし美 閲覧数:2888

「ようやくここまでたどり着いた……」
 僕は感慨深い気持ちで呟いた。このNPO団体を知ってからここにたどり着くまで、随分時間がかかったように思えたが本当のところ数ヶ月だった。
 
 僕の担当職員がやってきた。
「ようこそ安藤さんお待ちしていました。このNO378があなたの乗る自転車です。画期的な自転車発電が可能です。明日朝スタート、2時間ぶっ通しで漕ぐのですが大丈夫でしょう・・・

5

一通の不幸の手紙

13/04/11 コメント:8件 光石七 閲覧数:2888

 やっくんに一通の手紙が届きました。やっくんはあまり手紙をもらったことがないので、とても喜びました。ところが、封を開けてみると、便箋にはこんなことが書いてありました。

『これは、不幸の手紙です。
 この手紙を3人に送らないと、私に災いが訪れるそうですので、申し訳ありませんがあなたに送らせていただきました。
 3日以内に、同じ文面で3人に同様の手紙をお送り下さい。
 ・・・

0

あいあい傘

12/04/18 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:2887

改札口を出て、しばらく歩いたところで、いきなりザアッときた。

駅にもどるには遅すぎた。とっさにサワ子はもよりの家の軒下に張りついた。

雨はいっそう激しくなった。子供のころなら、こうしていると、家の人が雨宿りに戸を開けてくれた。世知辛い現代、サワ子が背にした玄関はいつまでも固く閉ざされている。

傘をさした人々が、目の前を通りすぎてゆくのを、ひがみっぽい気持ち・・・

1

京都【さまよえる鬼】

12/05/25 コメント:0件 そらの珊瑚 閲覧数:2885

「こわいよ、かかさま」」
「またこわいゆめをみたのね。だいじょうぶよ、かかさまがそばにいるわ」
   ◇
 小さな灯によって浮かび上がったその影に、ふたつの角があることを子はまだ気づいてはいない。
 ほんとうの鬼は、夢のなかに棲んでいるのではなく、現実のなかに棲んでいることをまだ知らない。
   ◇
 わたくしのことをお知りになりたいのですか?今はこんな姿に成り・・・

7

ゲジ

13/09/06 コメント:11件 そらの珊瑚 閲覧数:2885

 駅前の日比谷花壇で白い百合を買った。白い菊を、と言いかけて止める。二月の雨の日に菊ではあまりに似合い過ぎている気がしたからだった。
 若い女の店員がくるくると手慣れた手つきで花束をこしらえながら、カサブランカですと言った。カサブランカ? 二、三秒のタイムラグの後、ああ、この花の名前? と理解した。そういえば三人でそんな名前の映画を見たことがあると思い出し、ふいうちをくらったように涙腺が熱く・・・

10

南の島に雪が舞う

13/12/13 コメント:18件 草愛やし美 閲覧数:2885

「雪だ、雪が降ってるだ!」
「雪だって、どこに?」
 草いきれに荒い息遣いをしながら目を瞑った俺は、田辺の声に薄目を開けた。恨めしいくらい綺麗な青空が広がっているが、もはや起き上がる力はない。幾日も水しか飲んでいない。最後に口にしたのは、土中のみみずだった。大きな異国の蟻が体を這い噛みついてくる。聳える椰子の木を見上げてもその実を得るすべはない。銃弾はとうの昔に尽きた。何のために戦って・・・

2

涙のネックレス

13/04/15 コメント:4件 こぐまじゅんこ 閲覧数:2884

 森の中の赤い屋根のおうちが、うさぎのねねちゃんのおうちです。

 ねねちゃんは、今日、だいすきなお母さんのために、コーヒーをいれてあげようと思いました。
 お母さんのお気に入りのカップをとりだして、インスタントコーヒーをスプーンに一杯いれると、ポットのお湯を入れるつもりでした。
 でも、つい手がすべって、カップを床に落としてしまったのです。
 ねねちゃんは、びっくり・・・

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