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遺書書き

18/07/23 コメント:0件 カンブリア 閲覧数:326

 死んだ人のいいところは、たくさん部屋に集まっていても、暑苦しくないというところだ。
 いったいいま何人くらいいるのだろう。
 帰ってくると、挨拶もしてくれるし、生きている人間と違って、とても優しい人が多い。
 何か作ってくれようとしたり、あるいは踊りをおどっていたり、ときにはまったく違う姿に変わっていたりして、まるで飽きない。
 自分の、狭苦しいアパートには、ろくに風も吹・・・

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あとがき前の僕ら

18/07/23 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:668

 紗良の病室に本のめくれる音が二つする。
 擦れたページ。紗良と淳二は競うように図書館の帯出カードを埋めている。
 本を読めない俺は、ギターを擦れさせた。通せないアンプは紗良にも淳二にも言えない俺の心と同じでどっかに置いてけぼり。きっと積もった埃を指でこそいだ時に、俺はせめて言葉を探せるだろう。
「淳くん、今月それで何冊目?」
「八冊」
「やっりー。私十冊目」
・・・

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ストーカー彼女

18/07/23 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:215

 彼女の朝は早い。だから、僕の朝はもっと早い。

 午前六時三十九分
 高層マンション上層階の廊下に到着。望遠レンズの付いた一眼レフを構えると、マンションから北西方向距離百五十メーター先にあるアパートのカーテンの閉まった窓を狙う。

 午前六時四十分
 イヤホーンに鳴り響く目覚まし時計の音。ベッドの軋む音。一歩、二歩、三歩、四歩、五歩。カーテンが勢いよく開く音と・・・

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翠川蘭子ファンブログ

18/07/23 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:410

 翠川蘭子は、あとがきが長いことで有名な作家だった。
 文庫本で平気で五ページぐらいはあとがきだったりする。しかも、内容が本編とは関係ない、本人の近状報告なのだ。そして、それがやたらに面白い。作品は幻想的なファンタジーなのだが、そこからは連想できない笑えるあとがきだった。
 ブログでもやれ、と言った声もあったが、あとがきを楽しみにしているファンも一定数いて、翠川蘭子のあとがきは継続され・・・

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コエテル

18/07/23 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:184

 コエテルはこの地上で、最大のいきものだった。姿かたちは人間のようだが、その大きさたるや、まさに山のようだった。
 じじつ、あたりにすむおおくのいきものたちは、かれを山か丘ぐらいにおもって、なにもしらずにそのうえを、歩いてゆききするぐらいだった。
 コエテルが子供のころは、それはよくたべた。草も木の葉も樹木も、クマも馬も猪も、ときには象を、海にはいってはクジラを、まるごとわしづかみにし・・・

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あとがき

18/07/23 コメント:0件 雨のかえる 閲覧数:248

『人生150年・渋谷タケオの生涯』をお読みくださり、ありがとうございます。

きっと多くの方が、このあとがきまで行き着かず、途中で「とんだイカサマだ」と本を投げ捨てているのではないか、と十分承知しています。もしくはこのあとがきから読まれている読者の方もいるでしょうか。
それならば都合が良い、どうか私の話を今一度お聞き願いたい。


私は1970年7月10日、東京・・・

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片想いビジネス

18/07/23 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:518

「時間の感じ方って、人それぞれなの」
 窪田さんの言葉に俺は力強くうなずく。
「自分の好きな話をしているときは短く感じるけど、つまらない話を聞いているときは長く感じる。ここで必要になるのが、大事なことだけシンプルに伝える技術よ」
 一分で話せ、と窪田さんはいつも言っている。一分間で相手に刺さる伝え方ができれば、ビジネスにおいてかなり優位になる、と。
 俺はその言葉を信じて、・・・

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片想い

18/07/23 コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:224

 僕が通う高校で、同じクラスにいるミヅキは、教室の中でほぼ真ん中あたりに座っている。でも、その存在感で言うと、ずいぶん端っこの方にいるって感じの、ミヅキはそんなおとなしい女子だった。
 ちょっと地味で目立たない、何となく控えめな、そんなところがとてもいい。だから僕の中でミヅキは間違いなく、ど真ん中に居る存在だった。
 一方の僕はと言うと、存在感はミヅキとほぼ同じで、やっぱり端っこの方だ・・・

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【 ガチャ★ガチャ 】

18/07/23 コメント:2件 泡沫恋歌 閲覧数:238

昨日、アタシ15歳になった。
誕生日プレゼントに自分専用のスマホを買ってもらった。
うちの教育方針で15歳になるまでスマホ厳禁、そのせいでラインもできないし、友だちと長電話もできない。
クラスでスマホ持ってないのはアタシだけ……可哀想な子扱いだった。
昨夜はスマホデビューが嬉しくて、ライン登録送ったり、無料電話したり、あれこれやってたら朝になっちゃった。
ふぁ ・・・

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アンブレラくんとおひさま

18/07/23 コメント:2件 こぐまじゅんこ 閲覧数:325

 アンブレラくんは、おひさまに恋しています。
 でも、アンブレラくんには、雨つぶちゃんばかりがくっついてきてこまっています。
 今日も、朝から雨つぶちゃんにひっつかれていました。
 アンブレラくんは、雨つぶちゃんにいいます。
「ごめんなさい。ぼくにはほかにすきな子がいるんです。」
 雨つぶちゃんは、
「あら、どんな子? わたしよりもかわいいの?」
ときいて・・・

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想葬記念日

18/07/23 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:279

 学生の頃、校舎裏でいじめられていた生徒を助けた彼に、私は一目惚れした。いじめっ子たちに暴力を仕掛けられても、彼は難なくいなし、あっという間に退散させた。
 彼に泣きながら感謝するいじめられっ子に、私も共感した。何もできなかった自分を恥じながら。
 彼が同学年の別学級にいる生徒なのだと、翌日に知った。昼休み、勇気を出して声をかけようとしたけれど。廊下を歩く彼の隣には、一人の可愛い女子が・・・

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あとがきだけの物語

18/07/22 コメント:0件 いっき 閲覧数:271

「あとがきのない小説を読んで、あとがきを書いていってみない?」
 突如、由麻(ゆま)がそんなことを言った。
「えっ、それって、意味あるの?」
 その突拍子もない提案に、僕は眉をひそめた。
 だって、あとがきなんて、小説を書いたその人が読者へのメッセージを込めて書くものであって、読者自身が書くようなものではない。そんなことをしたところで、何の意味もなさそうなことだけれど……。・・・

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P.S.アイラブユー

18/07/22 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:367

『あとがき』という言葉を前にして、心の中にふいに浮上してきた思い出がある。

 小さい頃一緒に暮らしていた叔母のマリモさんのことだった。
 マリモさんは父の妹で、母屋につながる離れの和室で暮らしていた。本の好きな人だった。畳敷きの部屋には本がぎっしりと詰まった本棚。本は床の間も占領し、そのわずかな隙間に白い花瓶の中で立ち枯れたオレンジ色のほおずきが顔を出している。それでもはみだし・・・

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エッセイ あとがき紹介

18/07/22 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:314

 あとがきっていうと、本の後ろに載っている短い文章で、作者が制作秘話を書いたり、裏話を書いたりっていうのがよくあるパターンですよね。
 そのパターンを裏切ったというか、心に残ったあとがきを少し紹介したいと思います。

 まずはスレイヤーズシリーズ。富士見ファンタジア文庫のライトノベルで少し前にヒットした作品ですが、アニメにもなっているので知っている方も多いのではないかと思います。・・・

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一冊の本だとしたら

18/07/22 コメント:0件 霜月ミツカ 閲覧数:451

 彼との出会いは、わたしが二十四歳のとき。彼はわたしよりも二十歳も年上で奥さんと子どもが居た。どこが好きかと訊かれたら多分、性格と答えていたけれど、実際は笑い皺とか、目の下のシミとか、そういうところが好きだった。優しくしてくれるひとはたくさんいるけれど、彼の目尻に刻まれた皺の深さを見て、このひとはいままで酸いも甘いも噛み分けて生きてきたのだと想像するのが好きだったし、彼がいままでどんな風に笑ってき・・・

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祖父の手記

18/07/22 コメント:0件 村升 青 閲覧数:257

病弱な僕はある夏、父の育った田舎へ行く事になった。
空気が綺麗と言うが、砂や木端が直に風に乗って来る環境が良い筈もなく、僕は到着してすぐに寝込んでしまった。
数日後回復すると僕は心配する大人の顔も見飽きていたので、大して興味も無い近くの山へ足を向けた。
今は子供は殆どいないが、父も祖父も昔この山で友達と遊んだらしい。
蝉の声の中、汗をかきつつ木影を進むと水の音が聞こえてきた・・・

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『南野モリコ 大全集』あとがき

18/07/22 コメント:0件 南野モリコ 閲覧数:332

この優れた短編小説を残したのは、南野モリコというペンネームでネットで小説を発表していた21世紀の小説家である。

19××年×月×日、静岡県の農村部に育ち、過疎であったことから小学校時代から片道30分かけて歩いて通学していた(1)。近隣に同年代の子供がおらず、学校が終わった後に一人で過ごす時間がたっぷりあったことが彼女を創作という遊びに導いたのは言うまでもない。「創作に必要なものは孤独・・・

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おじさんの本と猫のあとがき

18/07/22 コメント:2件 待井小雨 閲覧数:645

 猫のぼくがこの本のあとがきを書いているのは、おじさんが代わりに書いていいって言ったからです。ペンを持つのが辛いので、代わりに書いてほしいそうです。
「おそらくこれが最後の本になるでしょう」というのが、おじさんの伝えたいこと。もうすぐおじさんは眠るよりももっと深いところで眠って、起きてこられなくなるそうです。おじさんは知っていました。ぼくも知っていました。おじさんは近いうち、誰も会いに行けな・・・

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身勝手なあとがき

18/07/20 コメント:2件 トイトイ 閲覧数:318

 町田かよこ、三十歳。独身。交際している異性はなし。趣味はネット小説のあとがきを作者になりきって書くこと。
――さあ、今日もやりますか。
 仕事を終えて帰宅したかよこはストッキングを脱ぎ捨てると、パソコンの電源を入れた。パソコンが立ちあがるまでの間にスーツからジャージに着替え、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。いつもの準備が整うと、お気に入りから小説投稿サイトにアクセスし、今日アップされた・・・

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木曜日の紫苑

18/07/20 コメント:0件 白汐鈴 閲覧数:293

 最終ページに栞をはさみ、本を閉じた。
 気持ちは本の世界をさまよったままで、なんとなしにまたそのページを開き、続きを捲る。あるのは奥付ばかりで、出版年が二十一年前だったことに胸のもやもやがわずかに軽くなった。僕の生まれた年だ。
 ページを繰り、ラスト三ページを読み返す。もやもやが再燃した。
「なに? その本、面白くなかったの?」
 そう言った友人が我がもの顔で占拠するシン・・・

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14才の夏

18/07/19 コメント:0件 三明治 閲覧数:542

 私は一冊の詩集を持っている。
年々、増殖してきた蔵書の大半は電子化してしまったが、この本は、その災難を逃れた数冊のうちの一冊だ。無人島に持っていく一冊ではないのだが、棺桶に入れてもらいたい本のリストには入っている。
 私の父はブン屋(新聞記者)であった。とても熱心な社会部記者であり、その仕事ぶりのせいか、人の話題に上るときには「あの」が名前の頭に付いた。「出世なんかしなくてもいいんだ・・・

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隠されたメッセージ

18/07/19 コメント:1件 若早称平 閲覧数:506

 作家には大きくわけて二種類の人間がいる。面倒臭い人と、そうでない人だ。平手先生は僕が担当している作家の中でぶっちぎりの前者だった。
 もちろん作品は素晴らしい。気さくな人柄で人当たりもいい。原稿が遅れることもほとんどない。ただ一つ、どうにもこうにも連絡が取れないのだ。今どき携帯やパソコンを持っていない上、脱稿すると所持している山奥の別荘へ籠ってしまうという悪癖まで持っている。そういうわけで・・・

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あとがき殺人事件

18/07/19 コメント:0件 ケン 閲覧数:398

   ■作者あとがき

 作家の山田三郎です。この小説『終極』が読者の元に届いている頃、私はもうの世にはいません。このあとがきを書いた後に自殺します。つまりこのあとがきは遺書です。
 私は10年前に妻と出会い結婚した。妻は私より20も若く美しかった。今でも彼女がなぜ、私のようなオヤジの、しかも売れない小説家を夫に選んだのかと不思議に思う。妻との時間は私の幸せそのものだった。しかし・・・

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猿の詩

18/07/18 コメント:0件 秘まんぢ 閲覧数:472

【はじめに】
 2000頁に及ぶ本書は、作者の星野隕石以下、、感謝しても感謝。真理子に捧げます。
【第七章・大爆発】
 あの人は 猿の惑星 パピプペポ。
【終章】
 がないのである。
【あとがき】
 NASAから連絡がきておどろいた。自著「猿の詩」が「地球からの声」キャンペーンの一等賞になり、信号化されて宇宙へ発信されるというのだ。そして2年後、再びNAS・・・

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七不思議の後日談

18/07/17 コメント:0件 すんみこ 閲覧数:421

学校の七不思議の内容は、大抵どこの学校も似通っている。トイレの花子さん、理科室の人体模型、音楽室のベートーヴェン、増える階段、体育館裏の合わせ鏡、誰もいない放送室……などだ。そして最後の七番目は、存在しないことが多い。
だが、私が通っていた小学校には、七番目の七不思議が存在していた。
最後の七不思議が語られる場所は、プールだ。学校の大時計が四時四十四分を指し示す夕まぐれのころ、プールサ・・・

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作家先生のあとがき

18/07/17 コメント:0件 吉岡幸一 閲覧数:541

 この小説のあとがきを書くにあたって僕が最初に思ったことは、ようやく解放されるということでした。
 二年六カ月の間、この小説を書くためにすべてを犠牲にしてきたと言えば大げさに聞こえるかもしれません。
 多くの方には理解していただけないのかもしれませんが、こと創作に携わるような方なら多少なりともこの感覚を理解していただけると思います。
 朝は起きて夜は寝るまで、そして夢の中でさえ、・・・

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岬のふたりと散弾銃

18/07/16 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:366

「この世に言葉があるからこそ、人は不幸になる」

こう言うのだ、佐々木は。その視線の先には広大な海が広がっている。しかし、佐々木の目には海の青さもむなしい色にしか見えないのだろう。

狂いそうになる程の夏の暑さとは裏腹に佐々木の表情はきわめて冷静である。それはもう憎らしいほどに冷たい。仮に5秒後に彼女と吉田が立っている岬が崩れてふたり揃って仲良く落下しても、佐々木は表情を変・・・

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春を待ってる

18/07/16 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:269

 *

 僕が生まれたのは、三月のとても寒い日だった。その日、東京は大寒波で大雪に見舞われた。人々は口々に、
「今年に入って何度目の積雪かしら」
「地球がおかしくなってるんだ」
 とぼやいていたけれど、僕はとても寒さに強いので気にならなかった。
 この時、まだ目は見えていなかった。僕は元から足がない。でもそれで不自由なことは何もない。手は生まれてから3日目にで・・・

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ドア

18/07/16 コメント:1件 奇都 つき 閲覧数:293

 友人が一人も受講していない授業では、特に席も決めていなくて、適当に座っていた。もっとも、決まってないとはいえ、あまり知らない人が得意ではない私はいつも端っこの席を取るようにしていた。隣の人との間隔が二席くらい離れていると尚良いと思う。丁度この講義で使う教室は直前まで授業が入っていないので、私は前の授業が終わるよりも早い時間に教室に入る。だからいつも一番乗りだ。
 しかし、ドアを開けると先客・・・

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君に、あなたに響く歌

18/07/16 コメント:0件 共和国民 閲覧数:317

 ここは、夜の商店街。聴こえてくるのは、青年の優しい歌声とアコースティックギターの音色。ほとんどの店のシャッターは閉まり、規則的に並んだ電灯が、赤茶色のブロックを敷き詰めた道路を寂しく照らしている。千鳥歩きの酔っ払いが演奏を終えた彼に尋ねる。
「どうしてこんな人気のないところで歌ってるんだい?」彼はこう答える。
「待ち人がいるのさ」
 ここは、夜の商店街。人通りは少ないが、ここを・・・

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B4N R.I.P.

18/07/16 コメント:0件 凪野裕介 閲覧数:203

ー†ー
ある日、突然僕は死んだ。
交通事故で即死だった。
この話はそこから始まる!!
ー†ー



睦美にとって娘の凛は不思議な存在だった。
時折、誰も居ない道端で挨拶をしてみたり。
ひとりで部屋に居るはずなのにな会話が聴こえてきたり。
携帯電話も与えてはいないし部屋を覗いても他には誰も居ない。
育児本によると小・・・

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歴史

18/07/16 コメント:0件 27 閲覧数:219

 小学生の頃だった。バラエティ番組の笑い声が響くリビングルームで、父は自らの胸を叩いた。同時に台所に立つ母が、食器棚に手を伸ばす光景を覚えている。棚から一枚の皿が落ちると、小さな悲鳴をあげた母は物憂げな視線を落とした。振り返る父の首と同じ速度で、笑顔が出来あがった。
「大丈夫よ」
 自慢話を遮られた父は「そうか」と言って私に向き直った。しゃがみこんで皿の破片を集める母は、あの表情に戻っ・・・

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アナザー・ニュー・ホライズン――未完請負人・小椋小夜子――

18/07/16 コメント:5件 滝沢朱音 閲覧数:607

 突然私のもとを訪れたのは、見知らぬ中年男性だった。
「小椋先生、この小説の続きを書いていただけないでしょうか。お願いします!」
 リノベーションした古ビルの一室が、私の自宅兼事務所だ。広告や看板の類は一切出していないのに、この男はどうやってたずね当てたのだろう。いぶかしむ私に、男は説明する。
「仕事柄、出版社の方とも取引がありまして……それで先生のことを知ったのです。急逝した作・・・

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リインカネーション

18/07/16 コメント:16件 冬垣ひなた 閲覧数:1052

「何度も言うようですが、亡くなったドナーの情報はこれ以上お教えできません。感謝の気持ちを伝えたいのであれば、あなたの名前を伏せて、ご遺族の方にサンクスレターを書く事が出来ますよ」
 角膜移植手術の経過は順調だった。16歳にして円錐角膜の大病を患った私は、善意の人の命と引き換えに窮地を救われ、再び視力を得たのである。
 左目の角膜を提供してくれたのは、20代の男性だそうだ。
 忘れ・・・

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土まみれの純白

18/07/16 コメント:12件 飛鳥かおり 閲覧数:2002

 一番初めに覚えた諺は「出る杭は打たれる」であった。子ども用のことわざ辞典をめくっていたときに、「ああ、私のことだ」と思ったのだ。
 小学校に通いだした私は、教室で大人しく座っているというノルマを毎日こなしていた。
 教科書は配られた週の週末に読み終えていた。算数ドリルをもらった翌日に全問解いたものを提出したら「みんなに合わせようね」と先生に呆れられた。
「どうして?」
 ・・・

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私と無口な先輩と

18/07/16 コメント:0件 七霧孝平 閲覧数:204

それは高校に入学した日のことでした。

「あれ、ここどこだっけ……?」

入学早々、私は高校の一角で迷子になっていました。
高校の奥の林は思っていたより広く私を包み込んでいます。
1人、高校探索をしてみたのはいいもののこのままでは帰れません。そんな時でした。

「……」
「きゃっ!?」

木から突然、男の人が降りてきました。
・・・

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続きが気になる。

18/07/16 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:619

新鋭漫画家として注目を集めていた桜田ラクサ先生が、42歳という若さで突然この世を去った。訃報は瞬く間に知れ渡り、多くのファンが悲しみに暮れていた。

「それにしても『悪魔コレクション』の続き見たかったよねー!」
桜田ラクサ先生の遺作となった『悪魔コレクション』の最終巻が発売された。亡くなる直前に完結した作品で、きっと先生は作品の完結まで力を振り絞って描いたんだと思う。そう考えると・・・

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女客

18/07/16 コメント:0件  紫金曜日 閲覧数:286

「『チェリー・21』の者です」
「あ、今ドアを開けます」
「こんばんは。えっと俺」
「時間通りね。入って」
「失礼します」
「はぁ、道端にしゃがんでる小僧ってかんじだけど。んー、もう少しワイルドマッチョがあたしの好みかなあ」
「他の者にチェンジもできますが」
「まあいいや。座って。缶ビールしかないけど、飲む? チェック・インする前にかるくひっかけて来たんだ・・・

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甘い生活をあなたと

18/07/16 コメント:0件 みや 閲覧数:250

僕がスーパーの品出しの仕事を終えて休憩室で冷えた麦茶を飲んでいると、レジ係の中年のおばさんが休憩室に入って来た。僕が妻と結婚した一ヶ月前にこのスーパーで働き始めたのと同じ時期にこのおばさんもこのスーパーで働き始めたていたので、僕達はなんとなく仲が良かった。
「あー今日も忙しかったね、お疲れ様。夕方のお客さんの多さと言ったら」
「お疲れ様でした」
「何急いで帰ろうとしてるのよ」

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勘定狐

18/07/16 コメント:2件 奈尚 閲覧数:607

「それでね。その時ゴトーがさ」
「イヤだぁ、もう」
 昼休み。いつものように数人のグループを作り、談笑し合う同級生達の中に私はいた。
 活気にあふれた教室。束の間の自由を惜しむかのように絶え間なく笑い声が上がり、すぐ近くで聞き耳をたてていないと、誰が何を話しているのか判らなくなる。
 まあ、全グループの話を理解する必要は当然なく、私の場合は目の前にいる二人の親友――ムツミと・・・

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フライトタイム

18/07/16 コメント:0件 清野勝寛 閲覧数:180


「いらっしゃいませー」

 毎朝7時丁度に、その子は店にやってくる。肩まである真っ直ぐの髪の間から見える小さい耳。白いイヤホンで音楽を聞きながら制服のポケットに手を突っ込んで、真っ直ぐ俺の前……レジを横切ってカレーパンとミルクティーを手に取り俺の元へ持ってくる。俺は差し出されたそれを手に取りバーコードを読み取る。読み取らなくても会計は覚えたが。

「237円になりま・・・

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【エッセイ】私がアンジェリーナだった頃

18/07/16 コメント:1件 野々小花 閲覧数:471

 二十代前半の頃に結婚をした。相手はひとつ年上で、ブラジル生まれのひとだった。彼の両親は、幼い頃にそれぞれ家族でブラジルに渡り、現地で知り合い結婚した。そして彼が生まれて、彼が小学生になる前に、一家で日本にやって来たのである。
 彼は出会ったとき「うちは家族で小さなスーパーを経営している」と言っていた。どんなスーパーだろうと思ったら、日本の商品はほとんど売っていなかった。日本に出稼ぎに来てい・・・

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名札

18/07/16 コメント:0件 海音寺ジョー 閲覧数:191



 グリーンランドの西の村に、巨大な氷山が漂着したとインターネットのニュースで写真が流れてきた。

 村を覆うような大きい氷の山。

 神は海から来ると、柳田国男の『海南小記』に書いてなかっただろうか。綺麗というよりも、すごいというよりも怖い感覚に襲われる。

 払暁に仕事が終わって、終日営業をしてるスーパーに買い物に寄り、帰宅してからずっとパソコ・・・

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キャンデー

18/07/16 コメント:0件 ツチフル 閲覧数:247

 一粒で三十二種類の味が楽しめるキャンデーを買う。
 口に放り込み、舌の上で転がしてみる。
 始めはオレンジ。味の始まりはオレンジからと言う格言通りの、無難な出だしだ。
 わざとらしい酸味と甘みに、果皮に付着したワックスの風味も相まって、安物のオレンジ具合を見事に表現している。
 しばらく舐めているうちに味に変化が生じてきた。グラデーションのようにオレンジが薄らぎ、覆い被さ・・・

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ある自転車の話

18/07/16 コメント:2件 木野 道々草 閲覧数:369

 
 ◇◇◇

 夏の日照りの中、山沿いの国道をトラックが走っていた。その荷台に山積みにされた自転車たちが、振動に揺られて互いの体をぶつけ合っていた。修理が効かない自転車たちは、これから鉄工場へ送られるところだった。
 しかし彼らの中に、まだ走られる自転車があった。
 名前は、“六ペンス”といった。
 六ペンスを見つけた神様は、空から長い腕を伸ばし、ひょいと右手・・・

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押入に花束を

18/07/16 コメント:4件 入江弥彦 閲覧数:579

 もしも、僕に可愛い彼女ができたなら。
 そう思った翌日、僕の隣には裸の女の子が寝ていた。わざとらしいくらいカールしたまつ毛にほどよく上気した頬が可愛らしい。作り物みたいに透き通った肌に触れると、彼女が本当に作り物だということが分かった。けれども、後ろめたさを隠しながらめくった布団の下にある彼女の胸は上下しているし、温度の変化のためか鳥肌も立っていた。
「カイリ、そろそろ起きなさいよー・・・

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ほんうたい

18/07/16 コメント:5件 宮下 倖 閲覧数:449

 信号が青に変わった。再生ボタンが押されたみたいに一斉に人々が動き出す。
 その流れに足を任せ、ぼくは左手に持っていた本を右手に持ち替えた。周囲にも本を携えて歩く人がいる。彼らの足取りは弾み、表情も楽しげだ。もしかしたらぼくも同じように見えているのかもしれない。
 しずかに宵が迫ってきた。鬼灯色の夕陽が空を溶かし、地平からゆっくりと夜を引き上げてくる。
 今日はよく晴れていたから・・・

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白百合のかをり

18/07/16 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:595

 図書係はたいてい暇だ。中学校の図書室で本を借りる生徒は少ないし、いてもなぜか皆無口なので「お願いします」等必要最小限しか話さない。で、私は思うのだ。図書係に貸し出しカードを渡すという事は、自分が何を借りたかを知られてしまう可能性があるという事。そんな恥ずかしい事を赤の他人の私ごとき女子に知られてしまうかもしれない事実を前にして、やはり人は無口にならざるしかないのだ、と。
 でも私は差し出さ・・・

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恋、時を超えて

18/07/16 コメント:2件 スプリット 閲覧数:289

 最近、田崎健太の電話の打率がにわかに上がった。
「もしもし、おれ、おれ」
そう言っただけで、いきなり電話を切られることがほとんどだったのに、「誰?」とか「どうしたの?」とか、相手が話に乗ってきてくれるケースがやたらに増えた。
 どうしてだろうか。この仕事を一緒に始めた京洛高校の野球部時代のチームメート、岡田隆二は「声が真に迫っているよ。相手も引きずり込まれるんじゃないか。やはり・・・

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水底の邑

18/07/16 コメント:4件 泡沫恋歌 閲覧数:346

 一冊の本を持って旅にでた。
 本のタイトルは『水底の邑(みなぞこのむら)』文学的な響きに魅せられる。
 水底をみずぞこではなく、みなぞこと読ませて、村ではなく、邑(むら)という中国漢字を使っているのが興味深い。
邑(ゆう)音読み。(むら)は訓読み。口(くにがまえ、領域)+巴(屈服した人)、人を服従させ、その地に止めるの意。
『水底の邑』は、名も知らない作家の小説である。<・・・

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