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トワイライトカフェ

18/09/02 コメント:0件 妄想シネマ 閲覧数:242

「ねえ、本当のこと話してよ。ヨッシーってなに」
彼女は真剣だった。
今、緑の恐竜について熱弁することもできる。赤い帽子を被った配管工を背に乗せ、長く伸びる舌で敵を丸呑み。卵も投げられ、レーシングマシンに乗せれば加速は随一。すごいよね、ヨッシー。
もしそう説明したのなら、彼女は立ち上がり、短い言葉を残して去るだろう。最悪ビンタの一つや二つは覚悟すべきだ。そしてこのカフェに残された僕・・・

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書き置きが読めない

18/09/02 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:415

 ◇
 朝起きると僕は、文字が読めなくなっていた。
 いや、正確に言うと妻の書き置き“だけ”が読めなかったのだ。

 ケータイのホーム画面は、今日が元日であることを示していたし、テーブルに置かれた新聞の見出しは、白ヌキ文字で僕の目に容赦なく飛び込んでくる。

 だけど、テーブルに置かれている少し皺の寄ったコピー用紙。そこに残された、見慣れたはずの妻の筆跡は、僕に・・・

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裁かれた言葉

18/09/01 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:270

◎今月の要注意ワード
 財団法人 日本語適正化機構より公表する〈望ましくない日本語〉(九月度分)は次の通りです。漏れのないよう目を通していただき、極力使用を控えるようご配慮願います。

スリッパ 語感が悪い。窃盗の俗語であるスリとかかるため。→アタリッパなら許容。
おまんま 幼児語として不適切。女性器の俗語と混同しやすい。→代替用語なし。原則使用不可。
だるま 四肢欠・・・

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ふせ字解読下じき

18/09/01 コメント:1件 海見みみみ 閲覧数:408

 放課後。カタルくんは近所に住む、いとこのチエミお姉さんの家へ遊びに行きました。しかしこの日のカタルくんはどこか変で、デレデレとしまりのない顔をしています。
「どうしたの? そんな面白い顔して」
「面白い顔とはなんだ。……実は今日小学校でラブレターをもらったんだ」
「あら、よかったじゃない」
 チエミお姉さんがお祝いのはくしゅをすると、カタルくんはさらにデレデレとしました。・・・

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きにして

18/08/31 コメント:0件 春海 閲覧数:181

濃い霧の中。冷たい朝の気配が辺りにたち籠めている。
こんな早い時間に、何故私は一人通学路を歩いているのか。
ぽつりぽつりとすれ違う人はランニング中か犬の散歩。
こういう雰囲気ってなんて言うんだっけ? あ、そうそう。せいひつな感じ。漢字は分からないケド。

なんだかざわざわする。静かで、でも何か動き出しそうな。実はニンゲンは世界に私一人になっちゃっていて、周囲の家の中・・・

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ほにゃららを教えて

18/08/30 コメント:2件 安藤みつき 閲覧数:299

私は放課後の誰もいない教室で小説を読むのが好きだ。
この誰もいない空間では、自分という存在を忘れて小説の登場人物になりきり、物語に没頭することができた。
そんな空間で突如不釣り合いな音がなり始めた。
学生生活で何千、何万回と聞いただろうチョークで黒板を叩く音だ。
小説を読んでいたかったが、音が気になり黒板に目を向けた。

(ほにゃららを教えて)

黒・・・

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伏せられた名前

18/08/29 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:250

 こういう地方のホテルだからか、二人の名前を記帳してくれと受付にいわれて、私がとっさに「来栖富雄」と書いたのは、彼女がいつも私をみてトム・クルーズに似ているといっていたからだった。それまでトム・クルーズという俳優のことをしらなかった私だが、彼女にいわれてからはその俳優が出演している映画などもみるようになって、へえ、おれってこんなイケメンなのかと、自惚れもてつだっていささか気をよくしていたのだ。

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夢と君とミステリー

18/08/29 コメント:0件 27 閲覧数:208

 その日は照り返すような太陽の熱が、道路に反射して、目の前が揺れていた。僕は桜子の歩く道の先が、揺ら揺らしているのが不安で、首に伝う汗を拭った。

 僕はよく夢を見る。同じように夢を見る人には理解できると思うが、夢は必ずしも心地の良いものじゃない。身近な人間から、過去の他愛ない風景まで、ごちゃ混ぜになって出てくる。大体の場合、そんな舞台の中心に立つのは、心配事だ。
 桜子の父親は・・・

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排水溝奇譚

18/08/27 コメント:3件 クナリ 閲覧数:359

 僕は道端の排水溝の中に入って仰向けに寝転がり、蓋を閉めて、その隙間から空を見るのが好きだった。
 小学校の頃にこの趣味を自覚し、高校一年生になった今でもそれは変わらない。
 しかし、この行為はとても卑劣な覗き行為と不可分だ。
 いくら僕にその気がなくても、それはまごうかたなき犯罪だ。

 だが僕は僕で、この趣味をやめるわけにはいかない。
 排水溝に入らないでい・・・

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『非現実』

18/08/27 コメント:0件 カジキM 閲覧数:245

 卑猥な言葉を叫びたい。
 そんな衝動に駆られる。
 「○×△△」や「△□〇」など、ここに記すには伏字にしなければならないような、私たちが生きる社会の上では決して使ってはいけないような単語をだ。
 なるべく堅苦しい場面が望ましい。大学の講義、会社の会議、葬式、そんな場面で幼稚な声色で、無邪気に卑猥な言葉を叫べたらどんなに快感だろう。

 こんな衝動に目覚め・・・

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サプライズ好きの彼

18/08/26 コメント:0件 キップル 閲覧数:200

 マンションのエレベーターから降りて右へ曲がり、いつもの廊下を歩く。最近立て続けにバイトの子が辞めたのでたくさんシフトを入れられて辛い。角部屋のひとつ手前が私の部屋だ。いつもならすぐにドアを開けて、靴を脱ぎ捨てソファにダイブするのだが、今日は違った。ドアの郵便受けに白い封筒が刺さっていたのだ。

「何だろうこれ?」

封筒には切手が貼られておらず、差出人の名前もない。多分誰・・・

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塗りつぶされた手紙

18/08/26 コメント:0件 雪見文鳥 閲覧数:254

 その便箋の名前は、トイといいました。すずらんの花がプリントされた、綺麗な便箋でした。トイの将来の夢は、だれがだれに宛てた手紙でも良いから、まごころを込めて書かれた手紙になることでした。転校してしまった友達への手紙、母親が遠く離れた息子へ送る手紙、大好きな人に宛てた手紙。そんな美しい手紙に。
 トイの持ち主は、高校生の花乃子さんです。息が凍ってしまいそうな寒い夜、書店のレジ近くで、花乃子さん・・・

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みえない

18/08/25 コメント:0件 27 閲覧数:210

 咲絵は死んだ。地下に沈む小さなライブハウスで、アコースティックギターを折った。最前列から避けるように空いたフロアの穴が、一歩分広がる。立ち尽くすファンの手から、蛍光色のペンライトが落ちた。
「二十八歳になりました」
 咲絵は亡霊のまま、スタンドマイクに息を吹きかけるように言う。
「ずっと、有名になりたいと思ってやってきました」
 ショッキングピンクのガーターリングを脱ぐ。・・・

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言葉にならない、●してる

18/08/25 コメント:0件 腹時計 閲覧数:215

 その日まで、彼女のことがとりわけ好きだということはなかった。
 少なくとも、自覚している分には。

 その日の朝、湊章太は朝七時には起きて、ゆっくりと朝食を取り、課題のレポートをコーヒー片手に片付けた後、昼近くになってから、大学へ向かった。こんなに余裕のある午前中を過ごすことは滅多にない。時間の余裕は、心にもゆとりをもたらす。なんだかすれ違う人に対しても、朗らかな挨拶をしたくな・・・

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誰を、思いやるがゆえ

18/08/25 コメント:0件 秋 ひのこ 閲覧数:245

 大学を卒業する年、まだ高校生の彼とつき合い始めた。
 人懐っこい子どものようなAを、私は無垢な犬みたいに可愛がった。私の家に入り浸ることを喜び、ろくに勉強もバイトもしなくとも、その伸び伸びとした姿を微笑ましく愛でた。
 自分の変化に気づき始めたのは、就職して3年目、Aが大学2年の年だ。

『西森教授、盲●で入院だって。ラッ●ー、休講!』
『今夜、餃子求ム。王●の再現・・・

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ゲーデルの眼

18/08/25 コメント:0件 カンブリア 閲覧数:210

 秘密。
 秘密とは何か、考えたことがあるだろうか?
 真実が常にそうであるように、逆説的な話をしなければならない、すなわち、もしもそこに秘密があることが知られているならば、それはすでに秘密ではない。
 秘密とは、矛盾と同様に、もっともありふれていなければならず、そして、ありふれているのだ。

 この事実は、電子データに記されてはならない。
 全てのネットに接続・・・

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あて字クイズ

18/08/24 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:349

 はるくんは、四歳。
 今日は、ばあちゃんとおるすばんです。
 ばあちゃんが、
「はるくん、あて字クイズしようか。」
と言いました。
「あて字クイズってなに?」
 はるくんが、きょとんとしていると、ばあちゃんは、紙とマジックをもってきました。
 紙を四角く切ると、

 り○ご

とマジックで書きました。
「この○にはいる字をあ・・・

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伏字ラブレター〜十三文字の秘めごと〜

18/08/22 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:394

 絵理沙は透明な書類ケースを使っているから、中身が丸わかりになってしまう。大学生協に売っているやつだ。それにレポートやらルーズリーフやらを詰め込んで移動するのだが。
 「周へ」
 そんな文字が見えた気がして、俺は思わず二度見してしまった。
 その封筒は確かに絵理沙のケースに収められていて、これはラブレターだ、彼女は周が好きなんだ、と確信した。
 俺は絵理沙が好きだ。いつも研・・・

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将来を

18/08/22 コメント:0件 佐竹竹之助 閲覧数:245

夏の夕暮れは蝉時雨と蜃気楼を連れて訪れる。白昼夢のような光景を見つめ膝を抱えていた。
「なぁ、芥生よ」
僕、榊健二郎は陽が沈みかける校庭の木陰で、隣に座る芥生恭助に声をかけた。
「なんだぁ、榊。こんな暑い日に校庭で夕陽を見るだなんて」
返ってきたのは気怠げな声色の文句であったが、それを無視して僕は問うた。否、問おうとした。
「僕らはこれから……」
「その先、言う・・・

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ニセン●年

18/08/22 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:204

「太田さん、お誕生日おめでとう!」
今日は30回目の私の誕生パーティー!うちの会社は全従業員が10人でアットホームだから、社長も含め一緒にお祝いしてくれて、セレブになった気分。入社して5回目の誕生パーティーになるけど私にとっては、本当に毎年楽しみにしている行事の一つだ。
 今年も毎年恒例、それぞれが何か気軽なプレゼントを用意してくれた。入浴剤やタオル、スイーツまで小さくてもうれしいもの・・・

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無口な私の分岐点

18/08/21 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:237

 私はこれまで、なんとなく平凡な人生を歩んできた。性格も無口なほうで、あまり友達もいない。いじめられている人をみても注意もできず、逆にいじめられることもあった。将来なりたいものがなく、公立の小学校から中学、高校、そして何の苦労もなく、大学は指定校推薦がきている学校に面接だけで入学した。
 就職活動の時期になって、これといった企業も特に無く、ヘタな鉄砲も数うちゃあたる方式で、幅広い業種の就職試・・・

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「天才ミライの未来。」

18/08/21 コメント:0件 倉本莉亜@小学生小説家 閲覧数:297

ミライは、自分でも天才だと信じていたし、世界もそう信じていると思っていた。

まるでそれが「あなたの名前はミライです。」と同じことのように、生まれた時から天才なのだと。

ミライは、7歳で宙に浮く車を発明した。

8歳で全ての家事を自分で行う知能が備わった家を設計した。

9歳で携帯やパソコンといった機械が必要ない、空気がパソコンや電話になるエアーネ・・・

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言論の自由を絆す会

18/08/21 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:285

 「もうほんと、チ●ポ法、まじ勘弁っす。意味分からないっすよね」

 二人の男が食事している狭い部屋、否、本来は広い部屋なのだが、膨大な書類が床に雑然と積まれているため、床面積の二十五パーセントしか空いていない部屋で、眼鏡をかけている男が、唇をミミズのように踊らせながら言った。男の口の中では、コンビニ弁当から移された様々な食べ物が渾然一体であるが、その様子を説明しようとすれば、都の迷惑・・・

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「秘め事」

18/08/21 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:200

 成功したの。
 そう、同性だからと半ば諦めていたけれど告白が成功したの。それでね、それでね。私達、恋人になったの。そして、その日のうちにどちらともなくキスしたの。放課後の教室。カーテンに隠れて。二人の秘め事。はじめの秘め事。だーれにも言えない空白だから秘密にしましょう。そうしましょう。それでね、それでね。神様が、夕焼け小焼けの茜の色で、二人の頬と。私の本当の色を隠してくれたの。
*<・・・

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「バケツ人間はBarに集う」

18/08/21 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:197

 そのかぶり物を作るのは簡単だ。指定された百円ショップで、頭がすっぽりと入るプラスチック製のバケツを購入し、半田ごてで、お面のように自分の目の位置に見通し穴を空ける。そしてヤスリで尖った部分を削る。それだけだ。

「初めてで驚いたでしょう?」
 ここのバーのマダムがカウンター席に座っている私に話しかけてきてくれた。
「ええ。ドアを開けたらバケツを被った人達が十数名いて、開・・・

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やじろべえ

18/08/21 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:192

「ユリ、早くしなさい。時間に遅れるぞ」何と無くソワソワした様なお父さんの声が聞こえてくる。「はあい」と大きな声で返事を返すとユリちゃんは机の上のやじろべえを軽く触れて見た。やじろべえは軽く体を左右に揺らす。「どんなお母さんかな、今日会う人は」と呟きながら色々と思いを巡らす。優しそうな人。綺麗な人。想像してみたら笑みが思わず溢れてくる。でも、ユリのお母さんになってくれるならどんな人でもいいや。ユリち・・・

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アナタの思い、届けましょう

18/08/20 コメント:0件 飛鳥かおり 閲覧数:340

「辻先輩、この前の試合も格好良かったなあ。今日も練習見られるかな」
 ひとりごとの多いいつもの通学路。野球部の朝練に合わせて早く出るのにはもう慣れてしまった。
 本日も清々しいほどの快晴。特に今年は例年になく猛暑の日々が続いている。普段ならとっくに制服のシャツがぐっしょりと湿っているはずだが、不思議と今日は汗をかいていない。
 辻先輩は洋子の高校の野球部の二年生で、洋子は入学直後・・・

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片想いのバトン

18/08/20 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:179

 真っ白なチャペルの階段を、新郎新婦が笑顔で降りてくる。ひらひらと舞うフラワーシャワーが、二人を輝かせる光そのものに見えた。
 花嫁の、小さな子供の無垢な笑顔とそっくりな表情を見て、心の奥にすとんと落ち着くものがあった。
 ーー彼女が幸せそうで、本当に良かった。
 じっと見つめていたせいだろう。たっぷりのフラワーシャワーを受けた後、彼女と視線が交差した。こちらへ小走りで駆けてくる・・・

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とある哲学者の言葉

18/08/20 コメント:0件 君鳥いろ 閲覧数:205

「こんなに好きなのになあ」
彼女は秋空を仰いではにかんだ。
「…うん」
彼は俯き気味に彼女の隣を歩いていた。
放課後の帰路は、辺り一面が夕陽に染め上げられている。
「やっぱり私じゃだめかな」
彼女の言葉に彼は押し黙る。すると彼女はまた、唇を小さく開ける。
「…後悔するよ、私を選んでおけば良かったのにって」
強気な台詞とは裏腹に、震わせた空気は僅かだっ・・・

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弁当

18/08/20 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:293

朝登校したオレは下駄箱を見てぎょっとした。弁当箱がどんと置かれていたのだ。周囲を確認しても誰もいない。大丈夫。そっと弁当箱に手を伸ばす。バンドに紙が挟まっていて可愛い字で『良かったら食べてください』とある。ほくそ笑みそっと鞄に仕舞うとそそくさと教室を目指した。
オレの通っている高校は男女共学ですなわちこれはオレに淡い恋心を抱く女子からの贈り物という可能性は十二分にある。自分で言うのも情けない・・・

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片想い

18/08/20 コメント:0件 国光 閲覧数:168

「好きな人ができた」
 君の一言で俺の平和の日々は壊される。
「それで、今回は誰だ?」
 このやりとりも何度目になるかもう覚えていない。いつものことなので俺は必要最低限の情報だけ得ようとする。
 それでも君はいつものように好きになった人の名前を口にするのを躊躇い、数分の時を要して口を開いた。
「……あのね」
 そして俺はようやく情報を得る。
 ここから俺の・・・

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なっちゃん

18/08/20 コメント:0件 木野 道々草 閲覧数:200

 なっちゃんとわたしは、高校時代からの友人で、二人とも今年で二十四歳になる。そういう長い付き合いだし、彼女に頼られることは嬉しい。けれどそろそろ、彼女の恋愛相談に乗ることが辛くなり、少し距離を置こうと思った。

 そう決心した直後、なっちゃんから「会いたい」と連絡があった。
 もう会わないつもりだったのに、その週の金曜日、駅で待ち合わせをして一緒に夕食を食べてしまった。その後は、・・・

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純愛フェードイン

18/08/20 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:297

 満里奈っていう私の名前は、ママが付けたの。
 瞬くんの知らない秘密。
 昔から背が高かった彼は、隣に住む同い年の幼馴染だ。優等生だったし、ちょっとカッコよかったから、小さい頃は女の子たちが騒がしかった気がする。
「シュンくんは、だれがすきなの?」
 私の問いに、瞬くんは照れながら答えてくれた。
「まりなママかな」
 もうショックよ、人生初めての失恋だった。

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花火を閉じ込めた

18/08/20 コメント:0件 橘瞬華 閲覧数:187

 とある八月の土曜日、午後。夕方五時半。浴衣を着た私たちは連れ立って家を出た。向かう先は花火の打ち上がる公園。本当は多分家からも見ることができるのだけれど、屋台巡りを目的に。そして何より引っ越してきて初めての花火大会を、平成最後の夏に過ごすため。まだ暑さの残る坂道を下って、人波に紛れていく。
 初めて一人で着付けた浴衣は少し時間が掛かって、歩きながらも着崩れてないか心配で、何度も後ろを振り返・・・

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レンタル彼女と碧い海

18/08/20 コメント:0件 みや 閲覧数:207

彼女との三回目のデートはレンタルラバーの社長の勧めもあって海に行く事にした。可愛い二十四歳の彼女はセクシーな水着を着ていて僕はドキドキして、海はとても綺麗で僕のロマンチックな気分は否が応でも盛り上がった。彼女の事が好きだ…けれど彼女はレンタル彼女。ビジネスで僕とデートしてくれているだけであって、彼女は僕の事を好きでもなんでもない。完全に僕の片思いだ。

「今回のデートは如何でしたか?」・・・

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幽霊色の秋

18/08/20 コメント:0件 時雨薫 閲覧数:608

 台本を忘れちゃったから持ってきてくれないか?福永の携帯に宛てて金田がそう連絡をよこした。福永がいつも放課後しばらくは教室に残っていることを知っていたのだろう。
 自主映画の台本だなんてどんなに真面目に書いてもいくらか恥ずかしそうなものを託せるほど信頼されているのだと思うと、福永は嬉しかった。
 その台本は金田のロッカーの中にあった。くたびれた紙製のファイルに20枚かそこらのルーズリー・・・

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知見調査士

18/08/20 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:296

 あの凄惨な事件をきっかけに制定された悪名高き知見担保法(通称なんだけどね。正式名称は「知見の信頼性を担保するために講ずる調査に関する法律」。蔑称、チ●ポ法……)であれば、たくさんの人が知ってると思うけれど、片や『知見調査士』のことになると、知らない人が途端に多くなる。一応、国家資格なんだけどね……。

 誰でもネットが使えるようになって、わざとじゃないにしても、嘘の情報を拡散すること・・・

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いつか、届け

18/08/20 コメント:2件 宮下 倖 閲覧数:510

 閉じただろうか。開いたままだったろうか。
 記憶を巻き戻すように何度も思い返しているけれど開いたままだった気がする。
 先生が急に呼ぶからいけないんだ。大至急手伝えなんていうから何事かと慌てて行ってみれば花壇の水遣りだった。
 鳳仙花に水をかけながら私は気が気ではなかった。
 ひとり教室に残って書いていたノート。呼ばれてそのままあたふたと出てきたからちゃんと閉じていなかっ・・・

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反面

18/08/20 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:215

 男が私を見つめています。
 右の手で人差し指の先は銃口のつもりなのでしょう。
 男は頭を撃ち抜いてしまいたいのでしょうか、そのままの姿勢で、延々と私を見つめ続けています。
 時折自重を任せる膝を左右に振り分けながら、柱時計が半時ごとにボンボンと日常を急かしても、男は私を見続けています。
 私は男のことが大層好きでありましたから、男に見つめられ続ける時間は至福の陶然でもあり・・・

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花の名前

18/08/20 コメント:2件 野々小花 閲覧数:502

 結婚してしばらくはアパート住まいだった。夫の仕事場の近くに手頃な賃貸物件を見つけて、息子の蓮が六歳になるまでは家族三人で2LDKの部屋で暮らした。アパートの玄関を出て大通りを抜けると、新しい戸建てが並ぶエリアがあった。ぴかぴかの家と、丁寧に手入れを施された庭。
 庭には、季節ごとにきれいな花が咲いていた。アパートのベランダは狭くて、洗濯物を干すだけで精一杯だったから、余計に羨ましいと思った・・・

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風が僕だけよけていく

18/08/20 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:245

 そこには砂塵敷きの地面と岩肌に、様々な楽器があるだけだった。
 幾百幾千の山の頂、僕らは行き着いたのだ。証拠に空は犬と呼んでもかまわないほどに何処にもなかった。空は犬のように鳴いている。僕らに置いていかれて、きっと。
 いつか、月の砂漠、とラクダに乗った歌うたいが上手い組み合わせを披露してくれた。自慢の喉に、絶妙な景色のタッグがメロディーの補助になって美しかった。あれよりも、上手いこ・・・

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◆※▽

18/08/20 コメント:5件 風宮 雅俊 閲覧数:339


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マイノリティ

18/08/20 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:217

 彼女は、今日は欠席している。たぶん今週は来ないだろう。もしかしたら、そのまま辞めてしまうかもしれない。彼女は▼◇Φ▽だから・・・・

「ねぇ、知ってる? 彼女▼◇Φ▽なんだってよ」
 隣の席のA子に訊いた。
「知ってる、知ってる。彼女、今まで▼◇Φ▽だって事を隠していたんでしょ」
 さすが、A子。情報が早い。
「うそ・・・、▼◇Φ▽なのに私たちの中にいたの?」・・・

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小泉くん専用・幸福のシシャ

18/08/20 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:273

 小泉くんは少し落ち込んでいる。
 小さい不幸が重なっているのだ。
 この前のテストの点数があんまりよくなかったこと、サッカー部のレギュラーを外されそうなこと、おととい深爪しちゃった右手の人差し指とか。
 それでもやっぱり一番は、片想い中の萩尾さんにカレシがいるっていう噂があること。
 小泉くんは、小さくため息をつくと、いじっていた右手の人差し指から、斜め前に座る萩尾さんに・・・

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こんな隣人のハナシ

18/08/20 コメント:0件 とむなお 閲覧数:236

ハッ――と、僕は起き上がった。
「なーんだ、夢か……」
僕は、ホテルの涼しいロビーで寝ていたのだ。
やがて僕は、ヨロヨロとホテルから出ると、都心の空に目をやった。

ジメジメした季節が過ぎ去り、次の季節がやってきて、一ヶ月が過ぎようとしていた……。
――が、太陽は、日の出を少し過ぎると、めいっぱいの熱量を、人々の頭上に降りそそぐ。
街は昼を待たず、ふっとう・・・

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ANSWER

18/08/20 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:429

 アキコが二十歳ぐらいから知るショッピングセンターは、オープンから既に三十年は経つだろう。ここにはしばらく来なかったが、最近また利用するようになったのは、十年以上連れ添った夫と別れた事がきっかけだった。
 夫の浮気が原因で離婚してから半年。今年で五十歳になるアキコにとって、熟年離婚は簡単な事ではなかった。
 夫が提示した慰謝料によって、経済面の不安がある程度解消された事と、何より、自分・・・

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叶うはずがない初恋

18/08/20 コメント:0件 せーる 閲覧数:212

ぼくが好きになった人は、男の子に興味がない娘だった。

最初はその娘の笑顔に見惚れるところから始まった。
どこか不思議な雰囲気を纏うその娘の笑顔は、どういう娘なんだろうという興味を刺激された。
学校で授業をうけるたびに、その娘がとても頭の良い娘なんだとわかった。
問題をスラスラとけるわけではないけど、自分で考えて試行錯誤しながらに答えにたどり着くその姿は、ただテストで・・・

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バベルの塔再建阻止

18/08/20 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:384

 昔々、同じ言語、同じ言葉を使っていた人間たちは、神様に挑戦しようと、天まで届く高い塔を建て始めました。
 ところが、その様子を見た神様は、人間たちの言語をバラバラにし、彼らの言葉の意味が互いにわからなくなるようにしてしまいました。
 人間たちは仕方なく、別々の国、別々の文化を作って暮らすようになりました。
 それから何千年もの月日が経ちましたが、言語や言葉が変わっても、何度とな・・・

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辻斬り

18/08/20 コメント:2件 泡沫恋歌 閲覧数:279

 今宵は新月、星もなく、漆黒の闇が辺りを包む。
 街道から宿場に抜けるこの道は暮れ六つを過ぎると人通りもなく、時おり行商人や廓で遊んできた者だけが通る。一本松の陰に隠れて、俺は獲物を物色する。
 遠くで揺れる提灯、それは次第に此方へ近づいてくる。町人か、商家の主と風呂敷を背負った丁稚のようだ。商談の帰りなら、たんまり金を持っているかもしれぬ。
 いきなり木の陰から飛び出し、二人連・・・

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拝啓、喜次郎様へ

18/08/20 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:217

 拝啓、喜次郎様へ。
 私から突然の手紙が来た事、さぞ驚いておられる事でしょう。
 …だって貴方は茶屋の店主で、私はその客というだけなんですから。
 その貴方に、どうして私がこうしてお手紙をお出ししたのか。
 …私は明日、婚礼致します。
 相手は、名立たる華族の、長男様。
 私の家と比べる事すら烏滸がましい、とてもとても…とても高い、雲の上にいる御方です。

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