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知見調査士

18/08/20 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:250

 あの凄惨な事件をきっかけに制定された悪名高き知見担保法(通称なんだけどね。正式名称は「知見の信頼性を担保するために講ずる調査に関する法律」。蔑称、チ●ポ法……)であれば、たくさんの人が知ってると思うけれど、片や『知見調査士』のことになると、知らない人が途端に多くなる。一応、国家資格なんだけどね……。

 誰でもネットが使えるようになって、わざとじゃないにしても、嘘の情報を拡散すること・・・

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いつか、届け

18/08/20 コメント:2件 宮下 倖 閲覧数:448

 閉じただろうか。開いたままだったろうか。
 記憶を巻き戻すように何度も思い返しているけれど開いたままだった気がする。
 先生が急に呼ぶからいけないんだ。大至急手伝えなんていうから何事かと慌てて行ってみれば花壇の水遣りだった。
 鳳仙花に水をかけながら私は気が気ではなかった。
 ひとり教室に残って書いていたノート。呼ばれてそのままあたふたと出てきたからちゃんと閉じていなかっ・・・

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反面

18/08/20 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:190

 男が私を見つめています。
 右の手で人差し指の先は銃口のつもりなのでしょう。
 男は頭を撃ち抜いてしまいたいのでしょうか、そのままの姿勢で、延々と私を見つめ続けています。
 時折自重を任せる膝を左右に振り分けながら、柱時計が半時ごとにボンボンと日常を急かしても、男は私を見続けています。
 私は男のことが大層好きでありましたから、男に見つめられ続ける時間は至福の陶然でもあり・・・

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花の名前

18/08/20 コメント:2件 野々小花 閲覧数:450

 結婚してしばらくはアパート住まいだった。夫の仕事場の近くに手頃な賃貸物件を見つけて、息子の蓮が六歳になるまでは家族三人で2LDKの部屋で暮らした。アパートの玄関を出て大通りを抜けると、新しい戸建てが並ぶエリアがあった。ぴかぴかの家と、丁寧に手入れを施された庭。
 庭には、季節ごとにきれいな花が咲いていた。アパートのベランダは狭くて、洗濯物を干すだけで精一杯だったから、余計に羨ましいと思った・・・

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風が僕だけよけていく

18/08/20 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:218

 そこには砂塵敷きの地面と岩肌に、様々な楽器があるだけだった。
 幾百幾千の山の頂、僕らは行き着いたのだ。証拠に空は犬と呼んでもかまわないほどに何処にもなかった。空は犬のように鳴いている。僕らに置いていかれて、きっと。
 いつか、月の砂漠、とラクダに乗った歌うたいが上手い組み合わせを披露してくれた。自慢の喉に、絶妙な景色のタッグがメロディーの補助になって美しかった。あれよりも、上手いこ・・・

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◆※▽

18/08/20 コメント:5件 風宮 雅俊 閲覧数:303


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マイノリティ

18/08/20 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:188

 彼女は、今日は欠席している。たぶん今週は来ないだろう。もしかしたら、そのまま辞めてしまうかもしれない。彼女は▼◇Φ▽だから・・・・

「ねぇ、知ってる? 彼女▼◇Φ▽なんだってよ」
 隣の席のA子に訊いた。
「知ってる、知ってる。彼女、今まで▼◇Φ▽だって事を隠していたんでしょ」
 さすが、A子。情報が早い。
「うそ・・・、▼◇Φ▽なのに私たちの中にいたの?」・・・

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小泉くん専用・幸福のシシャ

18/08/20 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:250

 小泉くんは少し落ち込んでいる。
 小さい不幸が重なっているのだ。
 この前のテストの点数があんまりよくなかったこと、サッカー部のレギュラーを外されそうなこと、おととい深爪しちゃった右手の人差し指とか。
 それでもやっぱり一番は、片想い中の萩尾さんにカレシがいるっていう噂があること。
 小泉くんは、小さくため息をつくと、いじっていた右手の人差し指から、斜め前に座る萩尾さんに・・・

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こんな隣人のハナシ

18/08/20 コメント:0件 とむなお 閲覧数:205

ハッ――と、僕は起き上がった。
「なーんだ、夢か……」
僕は、ホテルの涼しいロビーで寝ていたのだ。
やがて僕は、ヨロヨロとホテルから出ると、都心の空に目をやった。

ジメジメした季節が過ぎ去り、次の季節がやってきて、一ヶ月が過ぎようとしていた……。
――が、太陽は、日の出を少し過ぎると、めいっぱいの熱量を、人々の頭上に降りそそぐ。
街は昼を待たず、ふっとう・・・

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ANSWER

18/08/20 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:375

 アキコが二十歳ぐらいから知るショッピングセンターは、オープンから既に三十年は経つだろう。ここにはしばらく来なかったが、最近また利用するようになったのは、十年以上連れ添った夫と別れた事がきっかけだった。
 夫の浮気が原因で離婚してから半年。今年で五十歳になるアキコにとって、熟年離婚は簡単な事ではなかった。
 夫が提示した慰謝料によって、経済面の不安がある程度解消された事と、何より、自分・・・

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叶うはずがない初恋

18/08/20 コメント:0件 せーる 閲覧数:189

ぼくが好きになった人は、男の子に興味がない娘だった。

最初はその娘の笑顔に見惚れるところから始まった。
どこか不思議な雰囲気を纏うその娘の笑顔は、どういう娘なんだろうという興味を刺激された。
学校で授業をうけるたびに、その娘がとても頭の良い娘なんだとわかった。
問題をスラスラとけるわけではないけど、自分で考えて試行錯誤しながらに答えにたどり着くその姿は、ただテストで・・・

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バベルの塔再建阻止

18/08/20 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:349

 昔々、同じ言語、同じ言葉を使っていた人間たちは、神様に挑戦しようと、天まで届く高い塔を建て始めました。
 ところが、その様子を見た神様は、人間たちの言語をバラバラにし、彼らの言葉の意味が互いにわからなくなるようにしてしまいました。
 人間たちは仕方なく、別々の国、別々の文化を作って暮らすようになりました。
 それから何千年もの月日が経ちましたが、言語や言葉が変わっても、何度とな・・・

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辻斬り

18/08/20 コメント:2件 泡沫恋歌 閲覧数:252

 今宵は新月、星もなく、漆黒の闇が辺りを包む。
 街道から宿場に抜けるこの道は暮れ六つを過ぎると人通りもなく、時おり行商人や廓で遊んできた者だけが通る。一本松の陰に隠れて、俺は獲物を物色する。
 遠くで揺れる提灯、それは次第に此方へ近づいてくる。町人か、商家の主と風呂敷を背負った丁稚のようだ。商談の帰りなら、たんまり金を持っているかもしれぬ。
 いきなり木の陰から飛び出し、二人連・・・

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拝啓、喜次郎様へ

18/08/20 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:191

 拝啓、喜次郎様へ。
 私から突然の手紙が来た事、さぞ驚いておられる事でしょう。
 …だって貴方は茶屋の店主で、私はその客というだけなんですから。
 その貴方に、どうして私がこうしてお手紙をお出ししたのか。
 …私は明日、婚礼致します。
 相手は、名立たる華族の、長男様。
 私の家と比べる事すら烏滸がましい、とてもとても…とても高い、雲の上にいる御方です。

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きっと、いつかは

18/08/19 コメント:0件 要諦の山 閲覧数:179

 初恋はいつだったかと訊かれると、はっきりと答えられない。理屈っぽいと言われてしまうかも知れないが、「好き」とか「嫌い」とかなんて言う感情は極めて曖昧なものだと思う。
 そもそも、僕はこれまで本当に「恋」なんてしたことがあるのだろうか。それすらも、分からない。
 ただ、特定の女の子のことが頭から離れなくなってしまうということならある。それを「恋」と定義するのであれば、僕は何度もしている・・・

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          【幽霊のアルペジオ】          

18/08/19 コメント:0件 長玉 閲覧数:204


 「あのピアノ、幽霊が弾きにくるのよ」
マダムたちがうわさ話をはじめた。駅前の公共ピアノが、夜になると鳴り出すのだと言う。
「曲は毎日変わるの。どれも子供のころ、ご近所さんが弾いてた曲よ」
このマダムの子供のころなら、きっと50年から200年ほど昔のことだろう。妙な話だ。
「ご近所さんね、ピアノの先生だったの」
「50年前の話ですな?」
「そう、50年前・・・

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円周率ラプソディ

18/08/19 コメント:0件 硝子 閲覧数:177

 孝は、幼稚園の頃、家族で行った海水浴のことを思い出していた。イルカの形の浮き輪でどうしても遊びたくて、泣いて頼んでレンタルしてもらった結果、案の定、うまく乗れなくてひっくり返り、大泣きしたらしい。
 66653935……。孝は、朝の教室で一人、円周率を頭の中で唱えていた。
 中学校では、孝は科学部に入っていた。結晶の模型を作るのが楽しくて、先生に難しい問題を出してもらっては、辺りを発・・・

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Reminiscence

18/08/19 コメント:0件 広田杜 閲覧数:189

彼女が眼を覚ますのを正座をしてじっと待つ。
彼女はベッドの中、夏掛けの軽い布団の下で静かに寝息を立てている。僕は小さな指輪を机に置くと、その時を待った。
彼女が眠たそうに眼をこすり、ゆっくり上体を起こした。ぼんやりとした目で室内を見回す。視線は僕を通り越し、テーブルの上の小さな光る輪で止まった。
彼女は布団を抜け出し、机の前に座る。Tシャツとショーツだけを身につけた彼女。・・・

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片恋フェードアウト

18/08/19 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:304

 お隣りのまりなママが亡くなったのは、僕が小学4年生の頃だった。誰もがすすり泣く中、満里奈はお通夜の席でひときわ大声を上げて涙を流していた。綺麗で優しくて、お料理やお菓子作りが上手なママは、幼馴染の満里奈の自慢だった。
「シュンちゃんはいつも頼りになるわ。満里奈と仲良くしてあげてね」
 にこやかに笑うまりなママからはいつもいい香りがして、僕は嬉しいとともに胸が弾むように高鳴った。それが・・・

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郵便配達人Kのメモリアル

18/08/19 コメント:0件 硝子 閲覧数:169

 Kは、今まで素通りしていた町一番の大豪邸の家に郵便物を届けることになった。その豪邸自体は、Kが生まれる前からあったが、ずっと空き家になっていた。そこに最近、誰かが引っ越して来たらしい。噂によると、新たな入居者は東京から来た医師で、体の弱い奥さんのために、静かな田舎町に越して来たという。
 バイクを止めて手紙を探していると、大きな外車が近づいて来た。車から降りて来たのは、若い女性だった。年齢・・・

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あのひとが住む街

18/08/19 コメント:0件 霜月ミツカ 閲覧数:176

 窓の外の景色は、高層ビルが連なっていたり、工事現場の柵がてられていたと思えば田園が広がっている。まるで創造と破壊を繰り返し、過去と現在が交錯しているようだった。こんな遠くまできて、きちんと帰れるのかという不安よりも、よく分からない高揚感で心臓が暴れていた。いままで勇気がなくて買えなかった、自分にはあまりにも可愛すぎるワンピースと、インターネットでメイクの教則動画を見てコスメを買い集めて、必死で勉・・・

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「時は流れて、マチは変わって、それでも僕は、あの日のままで」

18/08/19 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:193

 そりゃあ、この町だって変わるよ。
 田舎だから変わらないままだと思ってた?
田舎だからこそ色々と変わるのよ。懐かしさを求めて帰ってきたであろう君とは違って、私はずっとこの町で生活してきたから、失うことに対するノスタルジーはもう慣れたけどね。まぁ、この二人で見る夕日の美しさだけは永遠に変わらないのかも。
 君は十年ぶりだっけ?この町に帰ってくるのは。何だか久しぶりの気がしないね、・・・

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未来が見えたくない。

18/08/19 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:251

私は生まれつき変わった能力を持っている。それは《手を触れるだけで相手の未来が見える》能力。
子供の頃はなんとなくしか分からなかった能力だけど、高校生になった私は能力が高まり凄まじい情報を得ることができる。それが故に、簡単には人と触れ合うことができなくなっていた。
「美咲自身が背負いこむことないからね?普段はこの手袋をつけておきな?」
私は大事な友達の未来を見て傷つけてしまい、落ち・・・

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アネモネは散らない

18/08/19 コメント:0件  閲覧数:211

“幸せになってね”
なんてずるいよ
これからわたしが背負うのは
そう
残されたあなたへの想い
重たい 痛い 心が痛い

指が触れ 掌が触れ
腕が触れ 心が触れた
あの夢のような時間は今
何処に旅立ったのかなあ
きっと
君に振られて
雨に降られて
今頃、雨宿りでもしてるんだろう
でも止みそうにないね
今夜・・・

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僕の好きな青い花

18/08/18 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:205

 ティティオは今日も空を見上げました。でも、亜銀星を見つけることは出来ませんでした。
「ティティオなんて嫌い!」
 風藍妹(フウアイメイ)から言われた言葉がもう何百回も頭の中でこだましていました。ずっと仲良く遊んでいたのに、いつ嫌われたのかティティオには全く理由がわかりませんでした。それも、お別れの時にそんなこと言われるだなんてティティオは悲しくてしかたありませんでした。
 ティ・・・

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軽やかに舞う想い

18/08/18 コメント:0件 文香 閲覧数:166

 軽やかに軽やかに花が舞う。
 風に吹かれて美しい花が舞う。
 淡く麗しい色の花が舞う。
 風に吹かれてどこまでも、その身をゆだねてどこまでも。
 残る香りに恋しさが増す。
 一体どこに行くというのか。
 一体どこに行けるというのか。
 風の向くまま、花自身も行く末を知らされずに。

 白く美しい幹は、淡い花を全て散らし寒々しさに静まり返る。<・・・

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帰郷

18/08/18 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:248

 久しぶりに銀座を歩いていたら、後ろから肩をたたかれ、振り向いた。
「こんにちは。私を覚えていますか?」
 何かの詐欺だろうか、と反射的に思ったが、その女の顔をじっと見ていたら、心なしか見覚えがあるような気がしてきた。
「うまく思い出せませんが、誰でしたっけ」
「私は湊高校三年一組三十番猫島今日子です。あなたは同じクラスの十八番加古川君ですよね」
 高校を卒業して二十・・・

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夫婦の片想い

18/08/18 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:164

「汝、スザクは、シエラを妻とし、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しきときも、死が二人を分かつまで、愛し合うと誓いますか?」
 牧師の言葉にスザクは短く答えた。
「誓います」
 いつもの戦士の服装に白い花を胸につけている。
「汝、シエラは、スザクを夫とし、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しきときも、死が二人を分かつまで、愛し合うと誓いますか?」
・・・

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温室のあなた

18/08/18 コメント:0件 結木公子 閲覧数:199

 あ、今日もシマさん来てる。

 私はさっき手渡された入場切符を握りしめ、なるべく音を立てないようにいつもの席へと腰掛ける。シマさんの座るテラス席の斜め向かいのこの席は、目の前が植物で仕切られているためばれずに観察できるのだ。

 シマさんというのは私が心の中で呼んでいる、勝手につけた彼の名前だ。私の会社近くにあるこの植物園の温室には、ひっそりと佇む異国風の穴場的なカフェが・・・

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残り香

18/08/18 コメント:0件 二十日鼠 閲覧数:162

 「俺はずっと海に片思いしているんだ」
 それが彼の口癖だった。
 彼は三つ年上の、日に焼けた浅黒い肌が印象的な体格のいい男で、母親と二人で暮らしていた。もともと人口の少ない地域であったから、子供も少なく、家が近いこともあって、僕は彼とよく遊んだ。
 遊ぶ場所は決まっていつも海だった。石が多い岸辺はしんとしていて、波が押し寄せる音と、鳥の鳴く声がよく響いた。僕も彼も、その静・・・

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やお姫に祈れば

18/08/18 コメント:2件 秋 ひのこ 閲覧数:246

 やお姫って知ってる?
 その昔、漁師の男に恋をしたけど、男は池の大ナマズに襲われて、姫がその身と引き換えに大ナマズを退治したの。それ以来、池の水で身を清めると、好きな人と両想いになれるんだって。 


 マフラーをぐるぐる巻きにした女子中学生ふたりが寒気に頬を赤く染め、ピンクの御守を手にはしゃぎながら帰っていく。
 その様子を眺めつつ、エマは「若いねえ」とつぶやいた・・・

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「君はまだ、僕に話しかけてはくれない」

18/08/18 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:152

 君はまだ、僕に話しかけてはくれない。だから、君の名前も、本当の気持ちも分からないまま。僕の部屋にお迎えしてから、もう一週間も経つのに。なのに白の下着姿の君は、ぼんやりと、ベッド上でお人形座りをしたまま、壁を虚ろに見つめているだけ。
 君の名前が分からないのは、心苦しいよ。そうだね。君を初めて見つけたのが、学生が着る新品の制服が眩しい春の季節。だから、君の名前はハル。何もない、この部屋に咲き・・・

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ライク・ア・ドルフィン

18/08/17 コメント:0件 路地裏 閲覧数:292

今日は妻との結婚記念日である。車を2時間程走らせ、一度も訪れた事がない水族館へやって来た。妻は水族館が大好きで、若い頃は散々水族館巡りに付き合わされたものだ。

エントランスを抜けると、館内はほんのり薄暗いライトに照らされ神秘的な海の世界を表現している。通路に沿って小型の水槽が一定の距離で並べられており、美しい色の魚や面白い形をした生き物がゆらゆらと泳いでいる。

隣を歩く・・・

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蝉の動向

18/08/17 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:162

「強引にでもキスしとけばよかったな……」
 仰向けの太郎が天井を見ながら茶色いため息を不精髭のすき間から吹き出した。次郎はちゃぶ台の上に置いた鍋からラーメンをすすりながらテレビを見ている。
 ジリジリジリジリと蝉が騒いでいるが、設定温度20度のエアコンに冷やされた部屋にいるとそれは遠い異国の出来事に思えるのだ。次郎は太郎を見る代わりにちゃぶ台に置かれた半分になったウィスキーのボトルを見・・・

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ハートネイルピースサイン

18/08/17 コメント:0件 若早称平 閲覧数:286

「そんなの駄目に決まってるでしょ!」
 病室内にママの怒号にも似た叱責の声が響く。私が幼かった頃以来の事態に懐かしさから頬が緩んできてしまう。叱られている当の本人であるおばあちゃんを盗み見ると、私と同様反省の色もなくへらへらしていた。ママはいつまでも世間体がどうだとか、無謀な夢を見るなとか、のれんに腕押しを続けている。
 おばあちゃんが五十以上も年下の病院の職員さんに恋をしているという・・・

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素直になれなくて

18/08/17 コメント:0件 南野モリコ 閲覧数:227

イケメンでスポーツマンで成績優秀。おまけに性格がよくて学校の人気者。そんな彼に私が愛されるわけがない。そう、あれはただの気まぐれ。素直じゃなくて可愛くもない私が裕翔君の彼女になんて、なれるわけがないんだ。

9月、大学に学生が戻り、賑わい始めた頃。帰り際、裕翔君は私を追いかけてきて言った。
「のりこちゃん、来月、誕生日だって言ってたよね。何か欲しいものある?」
裕翔君のきれ・・・

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セキガエ

18/08/16 コメント:0件 比些志 閲覧数:160

冬の体育館。仲間とバスケをしていると、もやの中から学級委員の洋子が目の前に現れた。
「先生がよんどるよ」
洋子は一方的に私の右の二の腕を引っ張る。
「おい、なん、なんだよ?」
「今日はセキガエの日でしょうが」
と洋子はぶっきらぼうにそういいはなって、一人でスタスタと歩きはじめた。私はなんだか、席替えという言葉を聞いて、急にうれしくなった。
 
教室に入ると・・・

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ハッチ

18/08/16 コメント:0件 みゆみゆ 閲覧数:354

 僕の名前はハッチ。コンパクトハッチバック車だからハッチだと、ユリちゃんが名付けてくれた。彼女は免許を取りたてだったからあちこちに傷も付いたけれど、そんなことは最初のうちだけだったし、ユリちゃんのお父さんはいつでもちゃんとディーラーさんに傷の修理を頼んでくれていたから、何の問題もなかった。
 ユリちゃんの通う大学やアルバイト先への往復のほか、いろんな場所へ僕らは出掛けていった。知らない田舎道・・・

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リンドリン王国の薔薇園にて

18/08/16 コメント:0件 chiho 閲覧数:183

 リンドリン王国の東塔の窓から薔薇園が見える。朝霧の中に浮かび上がるように姿を現す至宝の楽園。
「完璧な薔薇園には、完璧な庭師が必要だわ!」
窓際の椅子に深く腰掛けて、そう言い放ったわたしに「歩いてごらん?」とアークは意地悪を言った。
「完璧だなんて、きみには似合わないよ」
「この頃、よく顔を見せるわね」
「きみのお姉様に会いに来ているだけだよ」
「王子様・・・

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音楽妄想掌編 THE GODDESS

18/08/16 コメント:0件 逢原冴月(あいはらさえつき) 閲覧数:156

         ・・・カッチーニの作曲「アヴェ・マリア」によせて
 ぼくはおまえより何でも持っている。ただ一つのものを除いては。
すべての約束された王道はぼくのために開かれる。ぼくにはその資格があるし、あらゆる力がぼくをサポートしてくれる。
おまえと二人、留学の話が来たとき、嬉しかったけど、実はほんの少し悔しかった。
やはりおまえなんだな。皆がその存在に気づいてしまうのは・・・

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Mからの逃走

18/08/16 コメント:0件 白汐鈴 閲覧数:180

 片想い病。友人たちは純菜のことをそう言った。
 竹を割ったような性格の彼女は、気になる相手ができると躊躇わず距離を縮めた。友情なのか愛情なのか曖昧ではあったが、下ネタ話にも平気で加わるざっくばらんな気安さに好感を抱く男もいた。そして、純菜みずから「好き」と相手に宣言するのは、決まってその相手に別の女が現れたときだった。
「失恋しちゃった」
 泣き腫らした目を化粧でごまかし、純菜・・・

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体外離脱するほど片想い

18/08/15 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:196

 体外離脱とは、体から離れた自分が、体をおきざりにしてあちこち浮遊するということらしいが、そんな話、僕はあたまから信じていなかった。
 ところがあるとき、その僕が、体外離脱を体験したのだ。
 忘れもしないある春の夜、僕は布団に横になりながら、ひとりの女性の顔を思い描いていた。
 泉美春。同じ会社に勤める子で、それはキュートですてきな女性だった。
 僕は彼女が大好きだった。毎・・・

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ボクとカイジュウのいない夏

18/08/15 コメント:4件 入江弥彦 閲覧数:458

今年は僕の町だった。
毎年、夏になると日本のどこかに巨大な生命体が現れる。東京にあるビルなんかよりもずうっと大きい、ワニと鳥とを混ぜたような奴だ。ワニのように鋭い爪のついた足を、二つの田んぼに片方ずついれた体勢で眠っている。今まで、そいつは動いたことがない。いつの間にか現れて、いつの間にか消えているのだ。
ゴツゴツしていそうな背中の鱗の隙間から生えた翼が開いたところは見たことがないけれ・・・

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大切な話があるんだ。

18/08/15 コメント:0件 鞍馬 楽 閲覧数:175

 葉書の裏に印刷された地図を見直して、目の前にあるペンション風の建物を眺める。
 思っていたよりも、会場はずっと落ち着いた雰囲気だった。大衆酒場のような場所を想像していたが、どうやら予想は外れていたようだ。
 思わず口角がつり上がる。騒がしいよりは、こういう雰囲気のほうがずっと好みだったからだ。はやる気持ちを抑えきれず、丸太を模した階段を駆け足で上って入り口の扉を開く。
 広いフ・・・

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額の扇風機

18/08/15 コメント:1件 吉岡幸一 閲覧数:200

 男は人に言えない悩みを抱えていた。反社会的でもなく危険性もなく、見方によってはユーモラスで便利なものであったのだが、男は気味悪がられることを恐れてこの悩みを誰にも話すことができなかった。
 悩みとは額に扇風機が取りついてしまったことだ。これは何かの比喩ではなく、額の中心に白くて丸い縁があり、その中に本物の扇風機の羽が四枚皮膚に埋まっているということだ。二ヶ月前に原因不明の高熱を出し、三日三・・・

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確率の世界を超えていけ

18/08/14 コメント:0件 syaiku 閲覧数:206

大人になるということは、色々な経験値が増えるということだ。
同時に、その経験値が、本当の自分の気持ちを邪魔してしまうこともある。
興味があることでも、先に始めている人と比較されたら恥ずかしいとか、
今から始めるのは遅すぎるだとか、余計なことばかりを考えてしまい、足踏みをする。
物事の期待値と、成功する確率が見合うかどうか、計算してしまうのだ。

そしてある時、ふ・・・

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生き物係の高橋くん

18/08/13 コメント:0件 結木公子 閲覧数:264


 私には好きな人がいる。6年2組の高橋くんだ。
 部活はサッカー。生き物係。高橋くんはクラスのムードメーカーで、いつも誰かに囲まれている。足もクラスで一番速い。頭もいい、ってわけではないけど悪いというわけでもない。算数が得意で国語がちょっと苦手。でも頭の回転は速くって、みんなを笑わせるのがとてもうまい。おまけに顔もいいもんだから、月に一度は女の子たちからお呼び出しもされている。

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片想いのすすめ

18/08/12 コメント:0件 カジキM 閲覧数:263

 私は片想いのプロフェッショナルだ。女性と深い仲になった事など一度もない。
 ある方法を思いつき、それを極めることによって、俗に言う“お付き合い”をしなくとも幸せを感じることができる。私はこの片想いの方法を君たちに広めたいと思う。それによって救われる人が必ずいるはずだ。
 では、なぜ私が片想いを推奨するのか。そして、どのように片想いで自己を満たすことができるのか、簡単に説明していこう。・・・

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堂々巡り

18/08/12 コメント:0件 遊馬 閲覧数:247

 肩を叩く、影の中から。人は振り返る、そして首を傾げ再び歩き出す。その瞬間、影で覆い尽くし体内に取り込むだけ、それだけ。

 真っ暗闇の体内で、問いかける。「叶えたい願い、あるんだろう」醜い欲を、曝け出してしまえよ。囁きに怯えるように、暗闇を手探りで歩く。道なんてない、扉なんてない、歩いてなんかない。全てはただの、思い込みにすぎない。
 泣き出した人間が蹲り、神の名を呼ぶ。「願い・・・

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片思いは突然に

18/08/12 コメント:0件 いありきうらか 閲覧数:177

毎週金曜日、深夜の2時から僕は眠たい目を擦りながらテレビを見ている。
この番組との出会いは偶然のものだった。
RPGのゲームに飽き、チャンネルを変えたときに、彼女は真っ直ぐ立っており、カメラは彼女の後ろ姿を捉えていた。
彼女が着ているセーラー服は、僕が通っている高校のものに似ていた。
肩に届くか届かないかの髪をぶら下げた彼女を、僕は吸い込まれるように見ていた。

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