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試合前の控室

18/09/27 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:177

 浩二は控室でひとり、重々しい沈黙のなかに浸っていた。。
 リングにむかうのは、あと三十分後と迫った。
 さっきまで彼のまわりをとりまいていたジム関係者たちはみな、闘いを目前にした彼のために、部屋の隅にひきさがった。
 こみあげる緊張感はすでに極限にまで達していた。椅子にすわって、固くバンテージを巻き付けた自分の手にじっとみいっている彼はいま、最大限の恐怖と底知れない孤独感とを相・・・

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悪魔の伝言

18/09/25 コメント:0件 とむなお 閲覧数:172

 秋風が、すがすがしい水曜日……

 東京都A区に本社のある雑貨品メーカーの『D商会』で営業課長をしている宮本は、平社員の田村を伴って、W村というド田舎に来ていた。
 この村の村長宅から、自社の製品に対するクレームがあったからだ。

 いつもなら、社の営業車を使うのだが、あいにく調子が悪かった。
 すぐにJAFに連絡したが、早くても半時間はかかると返答されたため・・・

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禁断の果実に手を伸ばす

18/09/25 コメント:0件 小峰綾子 閲覧数:164

リリカは、震える手で生物室をノックした。中から「どうぞ」という、男性の声が聞こえる。

高校の図書室で借りた本の中に1枚の紙きれを見つけたのは2日前のことだ。

「アダムとイブからの伝言。あなた方は騙されている。この世界は大事なことが隠されている。恋や愛は美しい感情であり行為である。決して禁止などできるものではない。もちろん扱いには気を付けなければならないものではあるが。こ・・・

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謝罪会見

18/09/24 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:192

十月某日、○×食肉の食品偽装の謝罪会見が行われた。
大勢のマスコミとたかれるフラッシュ。まぶしい会場には○×食肉の上層部が計五人立っていた。
「まずは弊社の起こした行為により被害を被られた皆々様に心よりお詫びを申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」
マイクを持った代表取締役社長がマイクを降ろし頭を九十度下げる。他の幹部たちもそれに倣う。長い沈黙の後、失礼しますと言って○×社・・・

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ポケットに伏せ字のメモが込められた

18/09/24 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:155

朝、登校してる時だったと思う。

人が結構いる通りで、誰かと肩がぶつかったんだ。俺は急いでたので、気にせずそのまま学校に行った。

学校でふと、学ランのポケットに紙が入ってることに気づいて、まあ引っ張り出してみたよ。ノートの切れ端にメモが書いてある。

「6月××日 お前は事故にあう」

おい、なんだこれは。やめてくれよ、冗談きついわ。6月8日の時点・・・

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伏字を愛した男

18/09/24 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:160

たまに会うじいちゃんはいつも優しかった。
小学生の夏休み、読書感想文の宿題で上手く書けず困っていると「英輔、そういう時は伏字を使うといいんだよ」と教えてくれた。
オレは教えられた通り原稿用紙を○○○で埋め尽くした。
先生には叱られたがオレは満足だった。だってじいちゃんは伏字も立派な文字だと教えてくれたから。それ以降ボクは人生の困った時に伏字を使うようになった。

中学・・・

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小さな森

18/09/24 コメント:2件 野々小花 閲覧数:270

 深夜、誰も居なくなった事務所で、私はタイムカードを押した。今月はもう半分を過ぎたが、今のところ休みは一日もない。帰り支度をする気力も無く、その場でしばらくぼうっとしていると、スマートフォンが光った。
<○○も生きて○ま○>
 届いたメールの文字は、所々が文字化けしている。差出人は確認しなくてもわかる。隣の家に住む男からだ。

 就職して二年目になった現在も、大学へ進学する・・・

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リムーバブル・スネイク

18/09/24 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:177

 父が亡くなってから三年後、実家の処分を決意した私は、飛行機とレンタカーを利用しながら片道六時間かけて、家財処分のため実家を訪れた。
 父の葬儀から何も変わらず、埃だけが積もった家の中は、生まれてから十八年間を過ごした宝物のような記憶と、その記憶が確実に風化していく事実を改めて私に思い出させる。何百年も昔に盛者必衰という言葉を生み出した先人たちへの畏敬の念と、その先人たちもまた私と同じような・・・

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そして彼女は

18/09/24 コメント:0件 森音藍斗 閲覧数:173

 ——そして彼女は、×××、と言った。

「……は?」
 僕は思わず声を上げた。それは揺れる電車の音に掻き消されてくれることはなく、他の乗客の視線が集まって散る間、僕は肩を縮めているしかなかった。
「どうしたの」
 僕の向かいに彼女が居てくれたのが幸いだった。会話をしていた体裁に——ならないか。彼女と自分の間に言葉が交わ・・・

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D氏の伝言

18/09/24 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:131

 アーヤは窓をいっぱいにあけると、静寂につつまれた夜の中に、耳をすました。
 どこかから、蝙蝠のはばたきがきこえてこないかしら……。
 その蝙蝠は、D氏からの伝言を運んでくるはずだった。
 ――夜が更けるのを待って、我が館をたずねられよ。
 それが伝言に書かれている文言だということは、村にすむ娘ならだれもがしっている。
 娘のいる家に、D氏の伝言が届けられるのは、いま・・・

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プライベート・プラネタリウム

18/09/24 コメント:0件 冬垣ひなた 閲覧数:199

 いつものように明かりを消して、夜を満たした部屋の天井に、綺羅星が灯った。二人で選んだ白いテーブルの上には、丸く黒い球体の家庭用プラネタリウム。日常の重圧から解かれた空間の隅っこで、僕とルリは一つの毛布を被りながら、どちらかが眠くなるまでお互いのことを語り合う。
 大学生になって二人暮らしを始めてから、週末の夜にこんな儀式を続けて1年半が経とうとしている。
「なあ。鶏になりかけた雛って・・・

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彼女を殺したのは

18/09/24 コメント:0件 みや 閲覧数:124

「そもそも私の作品に隠されている私の真意を本当に理解している人間が果たして存在しているのかと考えると、おそらくいないのではないかという結論に私は達しています。インターネットなどで私の作品の謎について持論を展開させている暇な人間も多いですが、あんなものは余りに稚拙な解説であって私の作品に対する一種の冒涜だと私は感じずにはいられません。何故なら彼女を殺した犯人を特定する事に何の意味も無いからです」

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バスツアーにいってみっか

18/09/24 コメント:0件 kanza 閲覧数:138

 来週末、地元の友達である美湖が、東京の私のアパートに泊まりにくる。といってもいつものこと。地元は北関東だし、お互い大学生ということもあって、2カ月に1回くらいは泊まり来たりしている。
 今回はどこか変わったところにでも遊びに行こうかとネットを見ていると、面白そうなものが目に止まった。
 どうやら日帰りバスツアーらしいのだが……。
『○○いっぱい! 〇いっぱい! 残暑吹き飛ぶ○○・・・

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歴史の柱

18/09/24 コメント:0件 飛鳥かおり 閲覧数:456

「この“ぼく”って、秀ちゃんのことね」
 結婚してから初めて帰省したときのこと。実家の居間の一番大きな柱に、たくさんの短い横棒と一緒に書かれた文字を指さして、妻の郁恵が言った。
「当たり前だけど、秀ちゃんもこんなに小さかったんだなあ」
「そりゃそうだよ、小学生のときだし」
 背丈を測ってつけた横線の印は、いまの俺の身長の三分の二ほどしかない。成長の軌跡を追うように、何度も何・・・

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伏字のラブレター

18/09/24 コメント:0件 せーる 閲覧数:139

駅のホーム。誰かが手を振っている。
どうせ、僕に向けてではないだろう。
高校に入るために上京したはいいが、半年たっても上手いこと友達を作れずにいる。クラスでも馴染めているか微妙なとこだ。小学校では活発な人間だったが、中学の3年を間に入れれば性格も変わってしまう。
上京して出来るようになったことと言えば、電車通学。小中では歩きか自転車だったので、初めは電車での通学でガチガチに緊張し・・・

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禁止用語だらけ文章書きには無慈悲なブログ

18/09/24 コメント:0件 泡沫恋歌 閲覧数:219

ネット依存症だった主婦が語る。
私がネットを始めたのは、自分専用のノートパソコンを買った14年ほど前からです。
以前は毎日平均3、4時間はパソコンの前に張り付いていたし、旅行や病気以外ほとんど毎日WebサイトにはINしてました。10年前の失業中、失業保険が支給されていた期間は朝から晩まで、一日10時間以上パソコン漬けでした。。
完全にネット依存症です! 今はちゃんと仕事してますか・・・

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ハッピーラグタイム白かりんとう

18/09/24 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:282

「ハッピーアイスクリーム!!」
「なぁに、さっちゃん。今日のおやつどら焼きよ? まだボケないでよ。くわばらくわばら」
「ちーがうよ。がっこで流行ってんの。今みたいに二人の声がダブった時に言うの。ハッピーなんちゃらって。先に言った方が勝ちで、お菓子奢って貰えるのよ」
 私とお婆ちゃんのハッピーごっこのスタートは「生地が美味しい」だった。芦原家のくいしんぼシスターズに似つかわしい。<・・・

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みえるもの

18/09/24 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:137

−−−−聞こえない、聞こえない。
私は聞こえない言葉の出どころを探した。ふと目が合って、急に、冷たい視線を向けられ、すぐそらされた。
聞こえなくても、分かる。その口たちが、何を囁きあっているのか。
四つか五つの口たちは、その端に気味の悪い笑みを残しながら、バラバラと教室を出て行った。
ただぼうっと、黒い線の跡で汚れている机に目を落とす。
・・・

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さよなら、名前を呼べない妹

18/09/24 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:202

 十月の満月の晩に生まれた子は、「××」と名付けられるのがこの村の習わしだ。
 なぜならば、その子は山奥にある泉に住む、龍神に生贄にされる運命だから。だから、名前など不要なのだ。
 生まれてきた子供は、額に大きく星型のあざを持って生まれてくる。私の妹のように。
 妹が生まれた時、両親は生まれた日付をごまかそうとしたらしい。でも、それは無理な話。だって、一目見ただけでわかってしまう・・・

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遺言

18/09/24 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:153

ある日、発明家のじいちゃんが死んだ。
とにかくユーモアがあり朗らかな人柄で人に好かれ、葬儀には生前のじいちゃんを慕う多くの人々が参列して別れを惜しんだ。
葬儀のあと、火葬場でじいちゃんが焼けるのを待っている最中、じいちゃんと同居していた和彦伯父さんがスーツの内側から一通の封筒を取り出した。なんとじいちゃんは財産がないにも関わらず遺言を残していた。皆、金もないくせにと笑ったがじいちゃんは・・・

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「そう、しよう」

18/09/24 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:129



『さようなら』


 船首が切り開く海に広がる白い軌跡、無音の洋上を波の音が進んで行く。朝日はなんて美しいんだろう。
 デッキのあちらこちらには老夫婦。私と同じように朝日を見つめている。なかには、わき腹を小突かれている人もいる。

 やっと一つの区切りを迎える事ができた。十年分の自分にご褒美。こんな清々しい朝を迎えられたのは、心地の良い夫婦生活を・・・

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文字のない手紙

18/09/24 コメント:0件 ハナトウ 閲覧数:118

伏字。
広辞苑第六版で調べると、「印刷物で、明記することを避けるために、その箇所を空白にし、また〇や×などのしるしで表すこと。」と記載されているそれ。
君はそんな伏字だらけの手紙を受け取った事があるだろうか?
買い物から帰宅した私が、悪戯っ子のように笑う彼女から受け取ったのがそれだった。
空白だらけの伏字の手紙。
初めに宛先、つまり私の名があり 「 で本文が始まったと・・・

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文字を伏せる

18/09/24 コメント:0件 ハナトウ 閲覧数:114

物語を書く際、何の変哲もない日常を淡々と描くのは案外難しい。
朝、何時に何がきっかけで目覚めるか。
昼、何で何処へ行き誰と会って何を如何したか。
夜、どんなものを如何食べ如何入浴し就寝したか。
そんな些細な事を描くよりも、誰もが主人公になってしまいそうな天変地異を描く方がよっぽど簡単で、読者の興味も引き付けられる。
だが、そんな些細でどこにでもあるような日常がきちんと・・・

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キ〇ガイアパート

18/09/24 コメント:0件 時津橋士 閲覧数:113

 なぜ私達家族が引越しをせねばならなくなったのか、父も母もそれを語ろうとはしなかったが、私には察しがついている。きっと近隣の住人達とのトラブルであったのだろう。実際、以前の家では私達家族への嫌がらせが続いていた。真夜中に玄関のチャイムが鳴らされたり、家の壁に落書きがされたり。ある時は猫の死骸がポストに入れられていた。その時、私は丸一日をポストの洗浄に充てねばならなかった。父も母も、それが原因で引越・・・

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ままごとあそび

18/09/24 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:216

 ここは、ことりほいくえん。
 すみれぐみさんは、三才、四才、五才の子どもたちがいっしょにあそんでいます。
 三才のゆうくんと、四才のはるくん、五才のめいちゃんは、なかよしです。
 今日は、三人でままごとをしていました。
 めいちゃんが、おかあさんです。
「ゆうくん、にんじんかってきて。」
 めいおかあさんが言いました。
 ゆうくんは、はるくんに言います。・・・

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伝言、頼んだよ

18/09/24 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:252

 駅まで車で十五分。つまり、家を出るまであと一時間しかないという計算になる。
「それにしても東京かあ……いいなあ、都会」
 沙理が今日何度も言った台詞を口にして、ため息をついた。沙理も友美も地元の大学に受かってこちらに残ることになった。それを考えると、私だってこっちに残りたかったが、苦笑いを浮かべてその言葉をぐっとこらえる。ただ手を動かしてナポリタンをフォークに巻き付ける。
「ね・・・

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沖田総司の三段突き

18/09/24 コメント:3件 クナリ 閲覧数:255

 幕末の剣人、新撰組の沖田総司の代名詞となっている技がある。
 三段突きと呼ばれ、その名の通り、一呼吸で三度突く。
 沖田の学んだ天然理心流では、二段突きはできても、三段を突ける者は現代に至るまで沖田総司ただ一人であるという。

 新撰組は創立期を過ぎると、京の不逞浪士の取り締まりだけではなく、内部粛清にも明け暮れた。
 特に組の脱退は厳しく禁じられ、死罪である。

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あなろぐ

18/09/24 コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:135

「ヤマキ商店です。いつものパック、昨日の二倍で」
 エースフード最大の取引先である『ヤマキ商店』は、こだわりの商品作りで抜群の集客力を持ち、自社製や仕入れ商品全てを完売させる事で有名だった。その為、いつも製造開始の直前に注文が入る。今日はシンプルな注文だったが、駅近の店舗は販売数が倍になる事も珍しくはなかった。
 カナコが勤めるエースフードは、食用の素材をすり潰した『調理用ペースト』を・・・

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正義のヒーロー

18/09/23 コメント:0件 若早称平 閲覧数:213

 先週号がデスクに叩きつけられ、大きな音出した。にも関わらずその場の誰もが動じなかったのはその行動が能條の演出だと分かっていたからだ。
「先週でブルワーは死にました。そして今日生まれ変わります」
  そう宣言して能條は眼鏡をくいっとあげた。今日付けで週刊ブルワーの編集長に就任した能條には入社以来抱いていたある野心があった。
「かつてペンは剣よりも強しと言われていた出版界・・・

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少女A

18/09/23 コメント:3件 そらの珊瑚 閲覧数:215

 小学5年生の頃、授業でローマ字というものを習った。アルファベットを覚え、それで日本語を表してみるといったもの。自分の名前をイニシャルで表すことも妙に新鮮だった。苗字と下の名前をひっくり返す法則も、外国人みたいではないか。K.R. T.E.  I.H.……みんなが自分の名前をイニシャルにして黒板に書いていく。
 私の名前は秋本朝子なので、A.A.だった。ひっくり返したかいもなくつまらない。そ・・・

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フッセージ!

18/09/22 コメント:3件 宮下 倖 閲覧数:374

 りんろんという澄んだ電子音に、ぼくは行き詰まった数学問題集から顔を上げた。スマホを引き寄せて画面を覗き込む。
<ハルカさんからフッセージが届きました!>
 明るく灯る小さな画面には見慣れた通知が光っていて、ぼくは思わず頬をゆるめた。
 トンと画面をたたくと文章が現れる。
<□の課題やった? □分□分わかんなーい!>
 今日はわかりやすい。
 塾の課題やった? ・・・

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案山子たちの首

18/09/22 コメント:2件 待井小雨 閲覧数:513

 親族だけしかいないような村の中、叔父の田んぼだけが何体もの案山子に囲まれている。
 その案山子たちは、藁の胴体の上に人間の生首を据えていた。
 幼い頃はひどく恐ろしかった。
 案山子は風に揺られて、時折首の断面を曝した。藁との隙間に見えるそれは、干し葡萄のように粘着質に黒かった。首は皆何かを呟いているが、それを聞きとれる者はいない。
 案山子に怯えてすがり付いた幼い私に、・・・

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伏字屋

18/09/22 コメント:0件 結木公子 閲覧数:156

 『あなたのそれ、伏字にします』

男は変な看板を見つけた。白い紙に手書きの文字で書かれたそれは、怪しさ満点だった。紙の下側にはちいさな文字で、『角を左に曲がってすぐ 伏字○△□屋』と書かれいる。
男も普段ならこんな看板など、見向きもしなかったはずだろう。しかし、男は先ほど彼女に振られ、デートの予定だった時間にただ街を徘徊しており、つまり、暇を持て余していた。男は鬱々とした足取り・・・

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カプセルの裏側

18/09/21 コメント:0件 大沼例 閲覧数:180

「この疲労感、ちょっと懐かしいな」
 シャベルを両手で支え、地面に突きつけながら、疲れきった全身に言い訳をするように呟く。19歳最後の一日、僕は過去に通った小学校を訪れて、校庭の南端で淡々と力仕事をしていた。頭上にあったはずの太陽は既に茜色へと表情を変え、溌剌としていたはずの僕は筋肉の悲鳴に顔をしかめている。
 タイムカプセル。小学校の卒業式後にひっそりと埋めておいたそれを、今更になっ・・・

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伏字術師の言い分

18/09/21 コメント:0件 ケイジロウ 閲覧数:179

「えっ、派遣先はA市なのは確かなんですけど、ぶっちゃげ、合併前の旧B町なんですね、そちらは大丈夫でしょうか?」
「あ、まぁ」
 遠いなあ、5キロくらい遠くなったなあ……、青柳翔太はアイスコーヒーのストローに口をつけた。
 ファーストフード店の安っぽいちっちゃなテーブルを隔てて座っている派遣会社の営業マンも翔太を真似てかアイスコーヒーのストローをあわてて吸った。テーブルに営業マンの・・・

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肝試しはお勉強の後で

18/09/21 コメント:0件 新世界 閲覧数:141

「山本君、一つ聞きたいのだが」
 日も落ち始めた夕暮れの山道を、僕らは登っていた。夕陽が渾身の力を込めて、ロクに高くない筈の僕の影をとんでもなく長く伸ばしている。足元はぼんやりと暗く、心許無い。
「なにかね、中村氏」
 小一時間何度か繰り返された内容を、他に話題も無いので、また繰り返す事になる。
「この道は本当にあっているのだろうね?」
 はあっと、誰からともなく溜息・・・

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●●者は名もなき少年だった

18/09/21 コメント:0件 kanza 閲覧数:134

 お預かりしてきた古文書を前に唸り声をあげてしまう。
 かつて(十数年前の大学生だった頃)は幕末志士のコスプレ姿で歴ドル(歴史アイドル)と呼ばれていた私も、今やスーツ姿でテレビなどに出演させてもらっている幕末の専門家。古文書だって、小学生の頃から読みこなしてきているのだが――これは難解。大事な箇所が黒塗りになっているのだ。
 日付は黒塗りだが、慶応とあるので江戸末期のことで間違いないだ・・・

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伏字アプリ

18/09/20 コメント:4件 月村千秋 閲覧数:254

 中学生の息子が不登校になって1年が経つ。
 どうすれば学校に復帰できるのか、その糸口さえも掴めていない私は父親失格なのかもしれなかった。
「ねぇ、父さん。伏字アプリって知ってる?」
 普段は自室で夕食をとる息子が、久々にリビングに下りてきていた。
「いいや?」
「すごいんだよ、これ。自分が言ったことを後から伏字にできるんだ」
「伏字……」
 学校にも行か・・・

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Tell Me!

18/09/19 コメント:0件 たい焼き好き 閲覧数:150

「かーけーなーいー!」
不意に目の前の友人Tが叫んだ言葉は、もう既に何度となく聞いた言葉であった。
「はいはい。書けない書けない。で、今日は何書いてるの?」
そう言って手元のスマホを覗き込むと、Tは私に画面を見せながら、説明を始めた。
「今回は『伏せ字』をテーマに書かないといけなくて、ここまでは書けたんだけどオチをどうするか決まらなくて…」
「『伏せ字』?」
見・・・

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彼女の名前はやまとなでし子

18/09/19 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:193

「いい、あの女優さんのことを絶対、本名でよんではいけないわよ。なんでも良家の令嬢だとかで、親類縁者は貴族階級が多く、しられたら大変らしいの」
 教室のすみにつみあげられた椅子をおろして、窮屈そうに腰かけているみんなにむかって、主任の美香子がいった。
 自主制作の映画を作る目的できょう、許可をもらって取り壊し予定がある小学校校舎にあつまった制作スタッフや役者たちのなかに、一人いやに垢抜け・・・

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神さまは世界が終わると言ったんだ

18/09/17 コメント:0件 入江弥彦 閲覧数:351

 明日で世界が終わる。
 この地球がなくなって、僕がいなくなって、暴力的な両親も消えて、仲の良い友達は元からいないけれど、僕に無関心な教師たちも消える。それから風子も。
「私ね、実は××なの」
 いつもその言葉だけノイズ交じりに聞こえているから、正確なところはわからないのだけれど、僕は彼女が何者かであるということを知っていた。
「ねえ、耀太くん見てよ、教科書が四冊になっちゃ・・・

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〇山美咲の名前なくし

18/09/17 コメント:0件 アシタバ 閲覧数:213

 よく物を落としたり、予定を忘れたりと、間抜けな私ですが、まさか自分の名字の一部を失ってしまうとは流石に予想できませんでした。
 〇山美咲にとって一生の不覚です。

 ある金曜日の夜のことです。職場の飲み会でその日はたくさんのお酒を頂きました。ちょうど難しい仕事が片付いて気分が高揚していたのです。しかし、暴飲のツケはすぐにやってきました。飲み会がお開きになる頃にはフラフラで一人で・・・

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XX

18/09/17 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:198

 あたしの家は古い由緒がある家で万葉時代から続いているんだって。
 屋敷は、あ、家っていう言葉が似合わないの。時代劇に出てくるような屋敷。木造で和風で、黒く塗られていて、まるで、悪役の屋敷だよ。信じられる? 江戸時代に作られたらしんだけど、住んでると、古臭くって、プライバシーもなくて、最悪。
 でもね、蔵があるの、蔵。
 お金持ちっぽいでしょ。
 お手伝いの沢さんがあたしに・・・

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答え合わせの図書館

18/09/16 コメント:4件 秋 ひのこ 閲覧数:298

 私は、頭の悪い子どもだった。
 友だちから「馬鹿がうつる」と避けられ、先生から無視され、親から心底見放されるような。
 そういう、子どもだった。

「ママ、これ何」
 引っ越し先で片っ端から荷物を開梱していると、10歳の娘、千草がやってきた。その手には、ところどころ黒く塗り潰され、黒い斑点が散る色褪せた新聞。私の私物の箱を開けたのだ。今日から母ひとり子ひとりの新生活・・・

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時を越えた記憶

18/09/15 コメント:1件 うたかた 閲覧数:197

 時は2118年、十年前ほど前にタイムマシンで過去や未来に行くことが民間人でも可能になり、社会ではそれに関する法律も制定された。もちろん、自由に行けるわけではなく、タイムマシンを管理する政府機関に行って正しい申請を行う必要がある。この日俺は、丁度十年前の日に戻るためにこの期間を訪れていた。

「それでは、こちらへどうぞ」

「わかりました」

 俺は返事をしたが・・・

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罰当たりなアミノ酸

18/09/15 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:183

 信心深く、かつ能力の低い者は狂信者になる。
 信心深く、かつ能力の平均的な者は無害な信徒になる。
 信心深く、かつ能力の高い有神論者は教祖になる。
 では信心深く、かつ能力の高い有神論者で、おまけに気ちがいじみたフェミニストだった場合は?
 むろん、道徳的な生化学者になるのだ。

     *     *     *

「どうでした」期待を込めたふ・・・

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お上品な僕は汚い言葉が███になる。

18/09/15 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:242

僕は生まれも育ちもお上品。だから汚い言葉を口にすることができない仕様になってる。
じゃあ汚い言葉を今言ってみるから聞いていてもらいたい。
「███!」
ほら!汚い言葉は僕の口からは言えない。いや言ってる感覚はあるけど、みんなに伝わらないようになってるんだ。

そんな僕はある日、友人とお話をする機会があった。その前の日に起きたことを友・・・

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記憶の中の彼女

18/09/15 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:194

 僕は高校三年生で季節は冬で、文芸部に所属していた。同じ部活の玲奈は学校に来ていない。彼女は病気で入院していたのだ。冬、辺り一面に雪が降った。そんな日、僕は玲奈のお見舞いにいった。
 クラスでは人気者でクラス中の男子の目線が彼女に向いていた。そんな彼女がもうじきこの世を去ろうとしていた。
 僕は雪道を歩き、バスに乗って、玲奈のいる病院に行った。バスは雪を踏み、先へと進む。僕も久しぶりに・・・

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暗い夜

18/09/15 コメント:2件 hayakawa 閲覧数:225

 大学院を神経衰弱で中退した。あの頃の俺はどうかしていた。俺は将来作曲家を目指すという理由で就職もせず、今の塾のアルバイトを始めた。
 生徒はとにかく褒めた。高学歴だった過去の俺と同じように上を目指してほしかった。
「この問題わかります?」という反抗的な生徒のメタファー。それは反抗期を繰り返してきた昔の俺と似ていた。
「因数分解はこうやって解くんだよ」
 俺は一から生徒に教・・・

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父からの手紙

18/09/14 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:312

結婚式を明日に控えた私のもとに一通の手紙が届く。その手紙の差出人は父からだった。普段堅物で言葉数も少ない父からの手紙に私は胸を踊らせ、バタバタとしている忙しい中、手を止めて手紙を開く。

アイスランドに壊れた
劇を隠してみる。
理由がゴマ、餅と罰。
無地布、酒はよせ。
備えず葱、フグ、蛇で
ほぼお披露目だぞ。

私はこの手紙を感動するような言葉・・・

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