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父さんの再婚相手

19/04/08 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:145

父さんから電話があった。
もう2年以上実家に帰っていないし、電話で話したことも記憶にない。だから嫌な予感がした。しかし電話越しから聞こえてくる父さんの声は、俺の知ってる声よりも輝いて聞こえた。
「晴人、父さん実は…再婚しようと思ってるんだ」
母さんが死んでから男手一つで俺と妹を育てた父さん。妹も高校を卒業したし、セカンドライフは新しいパートナーがいてもいいんじゃないか?寛大な心を・・・

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遠すぎた実家

19/04/07 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:126

 異変に気づいたのは新幹線の指定席を予約したときだった。
 携帯端末の画面を前にして目をしばたく。チケットの料金が値上がりしていたのだ、それも万単位で。
 ただでさえあまり帰省したくないというのに、大幅に値上げをされたのではかなわない。
 鉄道会社のホームページを漁ってみるも、値上げの理由はどこにも見当たらない。これほど一方的に高額な値上げをするのはよほどの理由がない限り難しい。・・・

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帰らない

19/04/07 コメント:0件 koori 閲覧数:104

「結婚したんだからそんなに帰ってくるものじゃないんだよ。もうここは五月の家じゃないんだからね」
見慣れた石油ストーブの前でのんびりと横になっていたら母から思いもよらない言葉が飛んできて耳を疑った。はっ?実家って帰ってきたらだめなんだっけ。
嫁いだ娘を諭しているのかと考え直してもみたが、母の顔を見た途端に違うなとすぐにこの考えは打ち消された。60過ぎの割には白髪は目立たず、艶のあるしっか・・・

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おとぎのお家

19/04/06 コメント:0件 やまぐちなみこ 閲覧数:121

 郵便受けを開けるとヤギがいた。その足もとには紙吹雪。郵便物の残骸だろう。艶めく彩り豊かな紙がもとチラシなのは明らかで、私はほっと吐息する。むろん私宛ての郵便物など、服屋のダイレクトメールだとか、せいぜいが携帯電話の利用料金請求書だとかでしかないのだけれど。
「お腹が空いていたんだね」郵便受けに収まる手のひらサイズのヤギに、私は話しかけ、「古紙回収の日まで溜めておくつもりだったチラシの束、あ・・・

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神様との会話

19/04/06 コメント:4件 路地裏 閲覧数:224

 実家に帰省して二日目の朝。今日の昼には東京に戻る。一階では母がバタバタと忙しなく家事をしている音が聞こえてくる。

 こっちの朝はまだまだ寒い。俺は布団に包まりながら、スマートフォンのホームボタンを押し録音アプリを起動する。そして再生ボタンを押した。

『久しぶり父さん』

「久しぶり。大学はどうだ?」

『ぼちぼち。そっちは?』

「・・・

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彼女のピアス

19/04/05 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:158

「実家のパパに買ってもらったの!」
そう言って佐奈はロゴを模ったブランド物のピアスを見せる。
「いいなあ、佐奈の家はお金持ちで」
「大して金持ちじゃないわ。これは二十歳の誕生日だから特別」
「でも、ウチは手作りケーキだけだったよ? 羨ましい」
その『羨ましい』が佐奈の大好物であることを僕は知っている。
「今度使わなくなったピアス持ってきてあげる。あげるわ」

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実家アロマ

19/04/05 コメント:2件 松本エムザ 閲覧数:165

 何をしても疲れが取れない。
 連日連夜に渡る激務。口煩い上司、調子のいい同僚、頭の硬すぎる後輩に囲まれて、四面楚歌の毎日。

 久々の休日、私は食料やトイレットペーパー等の生活用品をGETすべく、フラフラと街へ出た。本当は、何もかも忘れて一日中ベッドで眠りこけていたかったのだけれど、人として最低限の生活を維持する為に、渋々と。
 何しろ私の部屋ときたら「驚愕!片付けられな・・・

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振袖

19/04/05 コメント:0件 コジコジ 閲覧数:101

 駅の構内を歩くたびにハイヒールの音が心地良く鳴った。六年振りの帰省だ。
 春子はスーパーへ食品を卸す会社に勤めていたため、正月やお盆など繁忙期には思うように休暇を取れなかったのだった。母には帰ることを電話で知らせておいたが、同級生などには連絡をしていない。もうこの年齢になると子育てで忙しかったり家族優先になるため、今では親しくしている同級生や友人はいない。
 母はまた結婚の話しをする・・・

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笑った

19/04/05 コメント:2件 naokiti 閲覧数:112

「そっちはどうなの? ちゃんとしてくれてる?」
 電話の奥から、探りを入れるような母の声がする。私より祖父母の様子が気になるのだろう。
「よくしてくれてるけど、なるべく早く出ようと思う。おばあちゃんも年だしね」
「どうして? 孫なんだからいいじゃない」
「ずっと二人暮らしだったから、私の食事、作るの大変そうで」
「まあ、そんなこと言われたの!」
 尖った声だ。し・・・

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あの子の故郷は遠い地の果て

19/04/02 コメント:2件 文月みつか 閲覧数:116

 昼時の学食は食べ物の匂いと学生たちの活気に満ちていた。
 マーニャは「いただきます」と手を合わせ、塗り箸で華麗に醤油ラーメンをすすった。
「いつもラーメンで飽きないの?」
 私が聞くとマーニャは少し首を傾げて答えた。
「今日は少し塩気が強いです」
「つまり毎回微妙に味が違うのを楽しんでいると?」
「はい。ラメンは私が日本にやってきた主な理由の一つです」
・・・

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第二の故郷

19/04/01 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:111

 例のごとくだしぬけにバーナード星方面軍に転属が決まったと思ったら即出撃、量子トンネルを潜ってさあやっつけるぞ、と意気込んだらこのざまだ。
「森下かすみ部隊長どの、聞きたいことがあります」兵員輸送船のスクリーンを通して見えるとんちんかんな星座にまごつきながら、「ここはいったいどこなんですか」
「あたしが知るわけないだろ」鉄火肌の部隊長は肩をすくめた。
 端末を起動して星図を確かめ・・・

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僕と父のちょっと

19/03/29 コメント:0件 こまっちょ 閲覧数:111

 僕の実家は小さな酒屋。
店主はタバコと酒を愛する父。
いつも酒くさい。禁煙したって、家族から煙たがられる。そんな存在。

「おい、ちょっと来い」

 父は「ちょっと」が多い。そして話もちょっと長い。勉強から生活態度まで。
無理もない。うちには母ちゃんがいない。でも反抗期。うるさい父。それは靴の裏にこびりついて離れないガムのよう。ガムならまだマシだ。目立た・・・

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おかあさんのおかあさん

19/03/28 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:199

 わたしは、まえだあいり。
 小学二年生。
 おかあさんのおかあさんの家、つまり、おばあちゃんの家は、わたしの家のすぐ近くにある。
 おかあさんは、わたしをつれて、しょっちゅう、おばあちゃんの家に遊びに行く。
 おばあちゃんの家には、たたみの部屋がいっぱいあって、こたつもあるから、おかあさんは、必ずこたつにはいって、
「あー、やっぱり実家はおちつくわぁ」
って、・・・

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おかあちゃんねる

19/03/26 コメント:0件 若早称平 閲覧数:161

 頬杖をついて見るバスの窓に映った自分の顔が思っていたよりもやつれていた。実家に帰るだけとはいえ、ちゃんと化粧してくれば良かった。こんな顔じゃ両親に心配をかけるかもしれない。
 大学を出て就職したのがいわゆるブラック企業だった。果てしない残業で死んでしまう前に私はなんとか逃げ出すことができた。母に電話で話すと、
「なんも心配せんと帰ってきーや。あんたの部屋はそのままやけ」
 私は・・・

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実家が――大変な事にー!

19/03/25 コメント:0件 とむなお 閲覧数:132

 四月中旬のこと…… 
 東京アーティスト大学2年生の田村フミヤは、ゴールデンウイークを利用して、千葉県にある実家に帰省することに決めていた。

 以前から電話で母に、
『そんなに遠くないんだから、一度は帰ってきなさいよ!』
 と言われていたためと、今年のゴールデンウイークは4月28日から5月6日と長かったからだ。

 4月28日――快晴の昼前に、フミヤは・・・

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日が暮れるまで

19/03/25 コメント:0件 吉岡幸一 閲覧数:121

 街から片道四時間、電車とバスを利用して三ヶ月ぶりに実家に帰ってきた。懐かしいという感覚はない。落ち着くという感じでもない。ただ実家をほったらかしにしていては心配だから、私は年に四度ほど帰ってきているだけだ。
 父も母も死んだ。すでに亡くなって五年が過ぎている。実家にはだれもいない。私を迎えてくれる人も当然いない。ただ空っぽの家が埃をためて私を待っていてくれるだけだ。
 両親が死んだの・・・

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祖父の知られざる一面

19/03/24 コメント:0件 嶺 ナポレタン 閲覧数:111

亮介の実家は今どき珍しい三世代家族である。東京で働き始めて4年目になるが、盆正月は必ず福岡の実家に帰っていた。

そして今年の盆休みも例のごとく実家に向かっており、その道中、電車の窓から見える曇り空とそれに覆われた世界をぼーっと眺めていた。

ふと目に入ったのは、電線を支えながら山の上にそびえ立つ東京タワーのような物体。1つ見えるとまた1つ見え、俯瞰して見ると予想以上にたく・・・

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終の住み処

19/03/24 コメント:2件 桜森湧水 閲覧数:125

 男は断崖絶壁にしがみ付いていた。
 天高くそびえる塔の岩肌を、ゆっくりと登る。
 雲海を抜ければてっぺんは近い。
 毎年、男はこの仙境を訪れる。
 物好きな冒険家というわけではない。
 ただ、雲の上に実家があるだけだ。

 玄関で息を切らしてへたり込む男を、老婆が出迎えた。
「おかえり。よく来たねぇ。くたびれたろう?」
「ただいま。毎度のこと・・・

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夏の夜明けを抱いた詩人

19/03/24 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:116

 何より凡庸な平俗さを嫌ったという詩人の家があるシャルルヴィルにやってきた私は、とめどなくこみあげる感動にしばらく言葉をなくしていた。
 若くして世界中の詩人たちを驚愕させた詩を書き綴り、わずか二十歳でいっさいの詩業を放擲してその後数奇な運命をたどり37歳でこの世を去った天才詩人がこの家で生まれたとおもうだけで、私は全身に鳥肌がたつのをおぼえた。
 私がいまこうして詩の世界で生きている・・・

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母の掌と閉じられた家

19/03/24 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:177

 右足が階段を踏み外したのが、やけにはっきりとわかった。階段を一段飛ばしで駆け上がっていたぼくは、ゴンゴンと嫌な音を立てながら、背中から滑り落ちていった。当時小学校一年生だったぼくは、母が仕事から帰ってくるまで階段の下で泣きわめいていた。
 帰ってきた母が一目散に駆け寄ってきて、ぼくの背中をさすってくれた。その温かさをいまだに覚えている。

 
 年末に熱を出してしまうなん・・・

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死んだ世界から

19/03/23 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:117

 大学生の僕らは二人で電車に乗って休日に海に出かけた。海が近づくにつれてわくわく感は高まっていった。
「ねえ、海ってどんな景色なんだろう?」
「さぁ? でもどうして急に海に行きたくなったの?」
「なんとなくだよ。夏休みみたいだろ?」
「まだ夏じゃないわ」
 春香はそう言ってくしゃっと笑った。
 海に着くまでの間、二人でただ茫然と街の景色を見ていた。
「街も・・・

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ロックンロール ニアリー アルコオル

19/03/22 コメント:1件 入江弥彦 閲覧数:357

 親父が素面でいるのを見たことがない。
 朝は俺が起きるよりも早くから飲んでいて、夜は俺が寝るよりも遅くまで氷の音を響かせている。酒癖が悪いわけではなかったし、暴力をふるうこともなかったけれど、無関心で無気力な男だった。
 俺が東京に行くと言った時も、そうかと一言吐き出しただけで、こちらも見ずに瓶をさかさまにしていたのをよく覚えている。止めてほしかったわけではないし、応援してほしかった・・・

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彼が生まれた家

19/03/22 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:143

 つきあってもう3年になるけど、一樹がその間に自分の過去のことを話したのは、ただ一度だけ――俺の田舎はトンボがたくさんいるんだ、だけだった。しかもそれをいったときにも、うっかり口がすべったといったふうなので、こちらから水をむけても、わざとのようにはぐらかしてしまう彼に、私もいい加減、頭にきてしまった。
 だって、二人の間がここまできたら、お互いのことをあらいざらいうちあける時期だと思うんだけ・・・

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実家での一コマ

19/03/21 コメント:0件 犬飼根古太 閲覧数:96

 ドアノブを回すと、音もなく扉が開いた。
「まあまあ遠いところからよく帰って来たねぇ、さぁさぁお上がり」
 腰くらいの高さから響く甲高い声が、扉を開けた俺を出迎える。
「ただいま、母さん。一年振りだね」
「ほんとそうだねぇ……実家って言っても近いんだから、もっと頻繁に帰って来なさいよねぇ」
 小言をいう声には心情がこもっていた。
「母さんは、実家に帰りたいって思・・・

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履歴で繋がるその路は

19/03/21 コメント:1件 悠真 閲覧数:107

 決意表明のように連絡先から実家の番号は削除していたが、母からであろう着信履歴からいつでも連絡できる状態だった。
 何がしたいのか言わず強引に家を出た私が、心配で仕方ないのだろう。悪いとは思っているが、話せるような将来の展望を持っているわけではなかった。
 時間を持て余していたからか、冬の寒さと静けさが寂しさを助長させたのか、ただの気まぐれか、私はその履歴から実家にかけていた。
・・・

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母のいる実家は天国

19/03/21 コメント:0件 笹峰霧子 閲覧数:130

 実家は良いなあ〜!という母親に続いて、こっちの高校へ入学したいな〜と、後に続いて言うのは今年中三に進級する子だ。
 そんなに良いもんかねぇ、と内心理解できない私である。というのは私は一人っ子なので、母が亡くなるまで同じ邸内に暮らしていたからだ。
 私の場合いわゆる実家とは少し違うが、或る期間だけ母親の待つわが家を恋しく思ったことがある。それは大学在学中の四年間で、夏と年末と春の休みに・・・

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偽物の義母

19/03/20 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:111

 嫁の実家が苦手だーーというより、義母が苦手だ。
 彼女は会話の途中で、突然こちらの心をズガッと削る言葉を放ってくる。
 俺の働いてる職場に対し「そんな会社聞いたことないねぇ」とか「男は遊ぶのが仕事だと思ってるからねぇ」ってのが、神経質かもしれないけど俺的には結構苦痛だ。

 ただ帰省ってものは避けては通れない恒例行事で、今年のお盆も嫁の実家へ車で帰る。
 およそ三時・・・

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幻洞

19/03/19 コメント:4件 クナリ 閲覧数:224

 「幻洞」を知っているだろうか。
 山中などの埋めたはずの洞が、夜中になぜかぽっかりと口を開け、中にさえ入れるという怪奇現象だ。
 なぜこんなことを訊くかといえば、それは……



 昭和の話だ。
 当時地方都市の大学生だった僕に、一人暮らししている母親から、山村の実家を取り壊すという連絡が届いた。
 父は僕が中学生の頃に他界しており、それ以来母一・・・

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星の贈り物

19/03/19 コメント:1件 南野モリコ 閲覧数:175

都心から電車を乗り継ぎ数時間で辿り着く海辺のホテル、サザンテラスは、星がきれいなことで知られている。夏が終わり、誰もが海を見飽きた頃、星を見ることを趣味とする「星好き」たちでサザンテラスは静かなシーズンを迎える。「星好き」たちは、手持ち花火の火薬が散らばる砂浜に天体望遠鏡を立てる。テントの中でアルコールランプで暖をとりながら、お目当ての星が見えるのを待つのだ。
星のシーズンには、勤務中のホテ・・・

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迷ったあげく

19/03/18 コメント:1件 霜月秋旻 閲覧数:127

 私の部屋のすみに墓石が置かれていた。
 仕事から帰ってくると、私が住むアパートの一室に、誰が置いたのか知らないが、高さ一メートル半はあるだろう、見るからにズッシリとして立派な、黒色の和型墓石が置かれていたのである。何が起こったのかわからなかった。そういえばこのところ忙しく、夜もよく眠れていない。幻覚でも見ているのかもしれない。しかし、何度まばたきしても目の前にある墓石は消えてくれない。消え・・・

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二月二十九日の誕生日プレゼント

19/03/18 コメント:1件 壬生乃サル 閲覧数:117

 私は二月二十九日生まれだ。
 いわゆる、うるう年。誕生日の話になると、決まって言われることが二つある。

「え? 四年に一度しか年取らないの? 良いなー、良いなー」

 これに関しては、かなり高い確率で言われた。それも心底羨ましそうに。
 しかし、そんな夢のような話はない。みんなと同じように、しっかり年は取っている。
 私は今日、還暦を迎えた。時の流れに・・・

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あなたがくれた

19/03/18 コメント:1件 森音藍斗 閲覧数:140

 窓辺に揺れるモビールは、誕生日のおくりものでした。
 部屋に彩りが欲しくも植物を育てるのが苦手な私に、ぴったりな萌葱色をあなたは選んできてくれました。半透明のフィルムが、太陽にきらきら反射して、部屋に色を落とします。
 いつもコーヒーを飲むマグカップは、クリスマスのおくりものでした。
 いつも一緒に居られなくてごめんねと、赤いリボンの描かれた真っ白なマグカップと、インスタントコ・・・

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少女はサファイア色の涙を流す

19/03/18 コメント:7件 橘瞬華 閲覧数:134

 幾重にも重ねられた薄絹のヴェールのような、夜の帳が一枚ずつ剥がれ、埃っぽい部屋に光が射し込む。やがて光は埃に反射し、部屋全体を白く満たし、静謐な朝が訪れる。
「おはよう、昨日はよく眠れたかな?」
「はい、旦那様」
 お着替えを用意しようと背伸びをすると、欠伸が溢れそうになり慌てて口をつぐむも空しく、カランと音を立てて生理的な涙が落ちた。窓から射し込む光を眩しいくらいに反射してい・・・

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ダンボールの家

19/03/18 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:93

 俺をうけいれてくれるのは、この家だけだ。
 夜の10時から翌朝9時までの間、とざされたシャッターの前で俺は、ダンボールの中に横になって朝までぐっすり眠れるというわけだった。
 ほかのホームレスたちはもっぱら、駅周辺に寝床をつくった。公衆トイレがちかくにあるし、最近はめっきりへったが、捨てられたタバコにありつけるのも、あのあたりが最も多かった。
 俺がその前を寝床にしている店は、・・・

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怪奇短編「母のレコード」

19/03/18 コメント:0件 ダイナマイト・キッド 閲覧数:147

 これは、40年以上前に我が家で実際に起こった出来事を聞いて書きだしたお話です。

 私の母ミワコはレコード収集が趣味で、今でも我が家にはCDにカセットテープ、VHSにDVDにレーザーディスク、そして沢山のアナログ盤がある。
 当時は近所にレコードショップがあって、母も若いころはそのお店に頼んで輸入盤なんかも取り寄せてたらしい。
 
 1970年代のある日、いつものよ・・・

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星を紡ぐうさぎ

19/03/18 コメント:2件 みや 閲覧数:84

私達が月に到着して二週間が経っていた。元気だった熊になった彼が昨日からぐったりとしていて、意識が無い。彼はこのまま死んでしまうのだろうか?うさぎになった私の小さな心臓がザワザワしていた。

人間が他の動物に変化すると、人間だった時の感情は失ってしまうのか?
博士達に聞いても明白な答えを得る事が出来なかったこの疑問。その答えを私達は自ら実感した。うさぎになった私も、熊になった彼も人・・・

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神の御技を賜りて

19/03/18 コメント:1件 青苔 閲覧数:82

「妊娠、されていますね」
 それが、僕がこの世界で初めて認識された瞬間だった。
 僕の母はその時、素直に、と言うべきか、無邪気に、と言うべきか、とにかく笑顔でその事実を喜んだらしい。そして、僕の存在を告げた医者は、マニュアル通りに次の言葉を続けた。
「まずは出生前診断が必要ですので、一週間後に来院してください」
「あの、……もし陽性だったら」
「その時は堕胎についての・・・

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ビートのりこ

19/03/18 コメント:0件 ダイナマイト・キッド 閲覧数:132

 うちのバアさんこと佐野ノリコさんは、近所でも親戚のなかでも豪傑で知られていた。
 6人兄弟の長女で運動神経も抜群、昔から女親分だったノリコさんはとにかくお金も出すところは出すし、買い物も欲しいものはすぐに買うというザ・三河の女。
 喫茶店でコーヒー飲むのが大好きで家の近所から旅行先まで、そこいらじゅうの喫茶店のコーヒーチケットが買ってあった。
 コーヒーチケットってのは早い話が・・・

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ばあちゃんの冷やし中華ごまだれ味

19/03/18 コメント:0件 ダイナマイト・キッド 閲覧数:119

 おばあちゃんというのは気の長いイメージだ。
 だがそれは我が家の豪傑バアさんことノリコさんには当てはまらない。まあ世の中には今、キレる年寄りとかもいるのでそれと一緒にされたくはないのだけれど。
 なんつーか、カクシャクとしていたんだノリコさんは。

 そんな豪傑バアさんだが、やっぱりどっかおばあちゃんという年齢、概念になったのだなと思うことに
 同じ食べ物を延々リピ・・・

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「シャコンヌ」の編曲

19/03/18 コメント:2件 沓屋南実 閲覧数:165

 バッハが残した素晴らしいヴァイオリン作品、机の上に置いた「シャコンヌ」の楽譜を僕は眺めている。どうにかしてピアノで演奏してみたくなった。ヴァイオリンの比類なき名手で20年来の友人の演奏を聴いていて、すっかり虜になってしまったからだ。しかし、演奏を聴く機会はとても限られる。彼の住まいはベルリン、僕はウィーン。加えて、彼は頻繁に演奏旅行に出てつかまえるのが難しい、超売れっ子。
 彼の伴奏なしの・・・

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紙の花束

19/03/18 コメント:2件 待井小雨 閲覧数:154

 買い物を頼まれて外に出ると、向かいのアパートの階段に女の子が座っていた。紙で何やら一生懸命折っている。小さな膝頭を合わせてちょこんと座っているのが可愛らしい。
「ね、何してるの?」
 女の子に視線を合わせて話しかける。幼稚園生ぐらいだろうか。女の子はびくっと顔を上げると、困ったように視線を彷徨わせた。警戒心を抱かせてしまったようだ。
「ごめんね、知らない人から話しかけられたら怖・・・

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リバースモーゲージ

19/03/18 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:72

「ママ、不在通知が入っていたから電話しておいたよ」
 ソファーでタブレット見ている娘が、思い出したように言った。
「ありがとう。どっからの荷物?」
「銀行って書いてあったよ」
「どこの銀行?」
「知らなぁい」
 通販の荷物は明後日のはずだし、パパが注文したのかな? 銀行から荷物ってなんだろう・・・

     〜 ・ 〜

「ここに、手す・・・

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ゴミ屋敷

19/03/18 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:84

 二十年ぶりの実家だった。幼少期を過ごした思い出の家のはずなのに、ホントに我が家なのかと疑うほどに変わっていた。縄跳びをした芝、夕飯のおかずを採ってきた母さん自慢の家庭菜園は全て雑草で覆いつくされていた。
 リビングのカーテンは昔と同じだったけど、窓に張り付いていた。その理由は家から漏れ出る悪臭が全てを物語っていた。私の実家は、帰省できない間にゴミ屋敷になっていた。

 事の発端・・・

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神か、悪魔か、猫フィギュア

19/03/18 コメント:1件 小高まあな 閲覧数:169

「先輩のその猫、いなくなっちゃうの、寂しいなー」
 隣の席の先輩が退職する。婚約者が転勤になるから、それに着いていくらしい。仕事が出来る先輩だから勿体ないけど、二年前に結婚直前で婚約破棄になっているし、慎重になってるのだろう。
「これ?」
  先輩は机の上に飾っていた、猫のフィギュアを手に取る。ガチャガチャでありそうな、眠っている猫のフィギュア。
「そうですぅ、可愛いか・・・

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イヌのくに

19/03/18 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:101

「あいそうが つきました! じっかに かえらせて もらいますワン」
 そう いうなり あいけん ピコは いえを でていきました。おどろいた ケンゴくんは ピコの あとを おいかけます。
「いきなり どうしたんだよ?」
「エサは マズイし、さんぽは さぼるし、もう ガマンの げんかいだワン」
 そう ピコは グチを いいます。
 ピコは トンネルの まえに つくと、3か・・・

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とどいたモノは

19/03/18 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:94

 タダヒトさんは はるから ひとりぐらしを はじめました。きゅうじつ いえで グータラ していると にもつが とどきます。おかあさんからの しおくりで ミカンが たいりょうに はいっていました。
「さすが こうぶつが よくわかってる。でも つぎは もっと いいもの たべたいな」
 タダヒトさんは ミカンを たべながら じっかあてに てがみを かきます。
『ミカン たいへん おいし・・・

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だいじなたてなおし

19/03/18 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:87

 とある ふるい いえに おばあさんと おじいさんが すんでいました。ふたりには むすこが いましたが、いまは ひとりぐらしを しています。さいきんは むすこから れんらくも なく、おばあさんたちは さみしく ひびを すごして いました。
 そんな あるひ。おばあさんは いえの かいだんを のぼり ためいきを つきます。
「さいきん かいだんが つらいわねぇ。てすりが あれば いいんだ・・・

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赤に舞う白い鈴

19/03/18 コメント:1件 kanza 閲覧数:68

「この度は紅白(歌合戦)初出場決定おめでとうございます」
 こんな言葉で始まった雑誌のインタビューは終始和やかに進んだ。そして、話しも一段落した頃、突然記者が声を潜めた。
「話しは変わるんですが、ある噂のことってご存じですか?」
 今までとは違う卑しさを含んだ笑みを浮かべ、視線を私の手首に向けている。きっと週刊誌の見出しにあったあのことだろう。
――バンダナで隠された筧すず・・・

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帰れない

19/03/18 コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:83

「両親はもう居ないの」
 初めてケンイチに会った時、ミサキはそう話した。
 本当の事は客であるケンイチには勿論の事、周囲の誰にも伝えていない。夜の世界に生きていれば不思議な事ではなかった。
 高校生の頃、ある時期を境に両親と不仲になり、卒業を待たずして家出した。
 ミサキが住んでいたのは、他人にプライベートが簡単に知れ渡る様な小さな町だった。
 家出する前には、『不良・・・

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世界からの贈り物が消えた日

19/03/18 コメント:1件 入江弥彦 閲覧数:286

 夕暮れ時はこのさびれた団地にも人が多くなって、僕の居場所が極端に狭くなるようだった。
 買い物袋を持ったおばさんや、くたびれた様子のサラリーマン、泥だらけの服を着た同い年くらいの男の子、それぞれが誰かの待つ家に帰る中、僕は決して手触りがいいとは言えないボロの背中を撫でていた。
 嬉しそうに尻尾を振ったボロがすんすんと鼻を鳴らして僕の手を舐める。ボロというのは、僕がつけた名前だった。首・・・

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