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月へ行くうさぎ

18/11/19 コメント:0件 みや 閲覧数:81

「あなたのあだ名は…うさぎですか?」
毛深くて身体が大きく、見るからに熊の様な男性が私に話しかけてきた。
「分かりますか?歯が…歯がうさぎみたいで…子供の頃からのあだ名はずっとうさぎでした。あなたは…熊?」
「はい、見た通りです。身体が大きいので。僕も子供の頃からあだ名は熊でした」
熊の様な男性はそう言ってがははと笑った。ステーションには徐々にたくさんの人々が集まって来てい・・・

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雨のち晴れ!

18/11/19 コメント:0件 宮下 倖 閲覧数:89

 そもそも大雨の日に生まれたということを良平に知られたのがはじまりだった。
 小学三年生のときに出された宿題がきっかけだ。
 自分が生まれたときのことを家族に聞きましょうというもので、家が隣同士の幼なじみだった私たちは一緒にその宿題に取り組んでいた。
 そばには良平のお母さんと私のお母さんがいて「どんな天気の日だった?」「生まれたときなんて思った?」などという質問に根気よくつき合・・・

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二つ名メーカー

18/11/19 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:151

「ここに、やつが住んでいるのね」
 私は、屋根がやや傾いたその家を眺める。思っていたよりも、ぼろい。稼いでるんじゃないんだろうか。
 まあ、やつの家がぼろかろうが関係ない。
 私はそのドアを軽くノックした。
「たのもー!」
 返事はない。もう一度。
「たのもー!」
 やはり返事はない。が、中から人の気配がする。居留守だな。
「たのもー!!」
 ・・・

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クマの転校生

18/11/19 コメント:0件 森音藍斗 閲覧数:120

 後ろの席に見慣れぬ女の子が座っていることと、私がクラスメイトに呼ばれるたびに彼女もびくりと反応することに、私は気づいていた。朝教室に来てから、ほんの三十分弱の話だ。
「ねえ、クマちゃん」
 私が椅子を斜めにしながら背後にそう問いかけると、彼女はまた肩を震わせ、そして自分が呼ばれるわけがないと考え直した様子で、それから今に限ってはやっぱり自分が呼ばれていることをようやく認識して顔を上げ・・・

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八重歯

18/11/19 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:155

 嫌な夢を見てしまった。高校の卒業アルバムの載せるための写真撮影で、カメラマンがとてつもなく面白いこと(だけど具体的には思い出せない)を言い連ねたがために、たまらず私は大口を開けて笑ってしまう。結果、私の左右二つの醜い八重歯がしっかりと写され、アルバムの片隅に……。八重歯を気にして高校時代の三年間、極力人前では笑わないようにしていて、それでも笑ってしまう時には必ず手で口を隠してきたのに。よりによっ・・・

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いつかどこかにある、のかもしれない風景

18/11/18 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:121

 わたしは今日も小さな町工場で働いている。
 
 下町情緒というのが色濃く残るこの地域は特殊である。世界でも有数の近代都市である東京。そうとは到底思えないほどの風景が今でも存在している。
 頭上の空を覆い隠すように高速道路の網が張りめぐらされ、陽の明かりが木漏れ日のように地上へとふりそそぐ。コンクリートに護られたどぶ川がそのわずかな光を反射し、その川沿いに小さな工場がひしめき合う・・・

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僕の子猫ちゃん

18/11/18 コメント:2件 南野モリコ 閲覧数:199

「ねえ、たかちゃん」
昼休み、僕の子猫ちゃんがまとわりついてきた。

「その呼び方やめろよ」
僕はふてくされて、読みかけの単行本を開くと、僕の子猫ちゃんは、つまらなそうに自分の席に戻っていった。

僕の子猫ちゃんは、僕より3列向こうの斜め前辺りに座っている。

本当の名前は山本さちこ。小学校では皆から「さっちゃん」と呼ばれていた。
母親の手に引・・・

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吾輩には名前がある。あだ名はまだない。

18/11/18 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:149

吾輩には名前がある。あだ名はまだない。
どこで生まれたかとんと見当つかぬ。と言ってみたいが吾輩は普通すぎるところで生まれた。ごく普通の家庭で過ごし、当たり前のように一日三食用意してもらえる。朝は学び舎に向かい、夕方には我が家に帰る。そして温かい風呂に入り、ふかふかの布団で就寝する。
こんな生活をしているからか吾輩にはあだ名がなかった。そんな吾輩は密かにあだ名を付けてもらうことが夢だった・・・

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ピンク色の黒歴史

18/11/16 コメント:0件 腹時計 閲覧数:83

 過去を記憶するとき、何かをきっかけに覚えていることはないだろうか? 何かの弾みで思い出す、というのは、そのきっかけに触れて、誘発されて記憶がよみがえることだ。例えば、スーパーで買ってきたカツオのタタキを食べているときに、幼いころに高知県へ行ったことを思い出す。あるいは、ふとスイレンを見かけると、中学校の中庭の池にもスイレンがあったことを思い出して、ついでに中学生の時、中庭で告白して失恋した思い出・・・

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小バカにされたあだ名から──

18/11/17 コメント:0件 せーる 閲覧数:79

 カップに紅茶が注がれる音がチョロチョロと部屋に響く。注いでもらった紅茶に口をつけ、ひとススリする。
「もう、この味も苦手ではなくなったな」

──私は中学1年生のとき、当時の英語教師から言われた言葉が忘れられない。
『おっ、その名前の英語読みカッコいいな!』
 私の名前は、柳 赤秀(やこうやなぎ)という。英語読みにするとAko Yanagi。それを大きく褒められたこ・・・

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転校生のあだ名

18/11/17 コメント:0件 山上 太一 閲覧数:104

午前中の授業が終わり、昼休みが始まった。開始のチャイムが鳴りやまないうちに、十数人の男女が僕の席の周囲に集まってくる。
「さて、朝も話したけどこのクラスでは本名でなくあだ名で呼び合うという決まりがある。君は前の学校ではあだ名はなかったそうだから、これから僕たちで話し合って君のあだ名を決めようと思う」
そう言ったのはメガネザルと呼ばれている男子だ。小柄な体格に大きな目、小動物的な雰囲気。・・・

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あだ名の終わり

18/11/17 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:87

 公園に行くと、涼子はブランコを揺らさずに座っていた。鎖を握りしめ、うつむいた姿が寂しそうに見えた。
「リラ、遅くなってごめん」
 声をかけると、涼子はパッと、顔を上げた。
「ううん、さっき、来たところ。ごめんね、急に呼び出して」
「構わないけど、一応、女なんだから、暗くなってから、公園で待ち合わせなんて、やめろよ」
 そう言って、俺は隣のブランコに腰をかけた。

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私を名前で呼ばないで!

18/11/17 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:181

私は名前が本当に嫌いだ。子どもの頃からとにかく嫌いで、私の名前を呼ぶ子には頭を下げて違う呼び方をしてもらうほど嫌いだ。古臭くて可愛らしくない、そして名前の響きが恥ずかしい民子という名前が嫌だった。
「大橋さんの名前、民子って呼んでいい?」
「ごめん。私のこと名前で呼ぶの止めてもらえない?」
小学生の頃からこんなやりとりをしてきた。すんなり受け入れてくれる子もいたけど、多くは「どう・・・

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モルモットくん

18/11/16 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:200

僕のことをクラスのみんなは【モルモット】と呼ぶ。学級崩壊に近いクラスの雰囲気に先生も諦めていて、授業で生徒に問題をやってもらう時には僕ばかり指名する。僕はクラスで目立たない人間で、言われたことはなんでもやってしまう性格だから先生にとっては使い勝手がいいようだ。
「ちょっとこれ君が解いてくれる?」
「分かりました」
こんなやりとりは日常茶飯事で、そんな姿から先生のモルモットとして使・・・

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くっつき虫

18/11/16 コメント:0件 吉岡幸一 閲覧数:79

「おい、くっつき虫じゃないか。こんなところで会うなんて、いままでどこに隠れていたんだ」
 男に呼び止められた女はビルの出口に立ち止まった。逃げ場を探すように辺りを見渡したが、すぐに視線をまっすぐに男に向けた。
 風がつよい日で銀杏の木からは黄色い葉が舞い落ちていた。踏み潰されたぎんなんの尖った臭いが鼻を刺すようで、道行く仕事帰りの会社員たちは足もとに気をつけながら歩いている。
 ・・・

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僕のあだ名を忘れた私は

18/11/15 コメント:1件 夢野そら 閲覧数:111


ある夜、私は夢を見た。


淡い古いあやふやな記憶がそのまま映像化したような、ぼやけた世界の中に僕はいた。

「おーい!◯◯!」
誰が呼ばれた?僕が呼ばれた?
おずおずと振り返ると、不思議そうな顔をした森田和樹がいた。小学生だった。ああ、なるほど。周りを見ると、田中裕也や、岸本凛、見知った顔がいくつもあった。
「反応おせーな、◯◯。早くボール・・・

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ラベリングリアル

18/11/13 コメント:1件 どようび 閲覧数:168

 アザヤ王の元に命を芽吹かせたイズフヤ王子は、当時の世界の女帝や、歴史上の美しい人達の事については誰よりも知識を有していましたが、しかし、生活の知恵については人一倍乏しいのでした。街の美麗な娼婦の名前を一つ覚える度に、食事の作法を一つ忘れてゆきます。隣町の、腰回りが民家の柱の細さ程度しかないイゾフラ嬢の話を聞き、唖然としてナイフを落として「済まない、フォークを拾ってくれ」と発言した時、アザヤ王は憤・・・

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いつかの誰かみたいに

18/11/12 コメント:2件 上木成美 閲覧数:140

羨ましかった。あだ名、ニックネーム。それは、友達の称号。君は友達だよ、と認められた証。どんなにふざけたあだ名でも、皆がその名を自ら進んで呼ぶのだ。佐知子という子の「さっちゃん」ですら、私には羨望の対象だった。常に苗字で呼ばれる人間はもはや名無しと同じなんじゃないだろうか。名簿を見るたび、テスト用紙に名前を書くたび、私は自分の名前の魅力の無さを嘆いた。

いつも明るくて華があって皆の人気・・・

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ゴキブリ

18/11/12 コメント:1件 hayakawa 閲覧数:137

 小さい頃、壮太と名付けられた少年は、発達が遅く、幼稚園に入学しても友達も作らずに一人で過ごしていた。
 壮太の母親はそんな彼を懸命に幼稚園に通わせようとしたが、彼は泣き叫んで嫌がった。母親はそんな様子を見てとても不安な気持ちになった。
「この子の将来は大丈夫かしら?」
 母親は父親に問い詰めた。
「大丈夫だろう」
 寡黙な父親はそう言って酒を飲んだ。仕事はできるが、・・・

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いのち

18/11/12 コメント:0件 たま 閲覧数:162

 90年も生きると名前なんていらないと思うことがある。

 私が暮らしている介護施設は全室個室で、80名ほどの入居者がいるが、食事時に廊下や食堂で顔を合わす程度だから、名前なんて覚える必要もなかった。というか、入居者のほとんどは痴呆症とかで、挨拶もろくに出来ないから、名前を覚えてどうのこうのという付き合いは、ほとんど出来なかったのだ。
 でも、名前のない付き合いは、もうひとつ気分・・・

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私は、花をくれた人の名を知らない

18/11/11 コメント:3件 冬垣ひなた 閲覧数:235

 一口に言えば、気難しく孤独な老人。
 毎日決まった席で、観葉植物のように音もなく座っていた。
 彼はいつも一人で喫茶店に訪れる。客がいなくなった昼下がりに、カランカランとドアベルの音がしたら間違いなく彼だ。ちょっと近所に散歩という身なりではなく、帽子にテーラードジャケットの知的ないで立ちで、そして30分ほど飲食して帰っていく。
 その老人は客で、私はウェイトレス。場所はコーヒー・・・

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すみれ

18/11/11 コメント:2件 秋 ひのこ 閲覧数:134

 犬も悲鳴をあげるのだということを、僕はゴンタで知った。
 痛みの内側から引き裂くような、無力でひ弱で情けない声。知らない女と消えた父が置いていった犬を、僕は傷つけることを覚えた。
 ゴンタのことは結構好きだ。でも、最近の僕は自分でもおかしくなるほど余裕がない。父が去って母は仕事と酒に沈み込み、僕は僕で中学では――。
 ゴンタの悲鳴が耳をつんざく。
「うるせーよ、カワタ」<・・・

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百面相の哲

18/11/10 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:91

「〈百面相の哲〉、久しぶりだな」
 声を聞いただけですぐにわかった。確認するまでもない。〈百面相の哲〉は苦笑いを顔に貼りつけ、振り返りしなに大きく両手を広げた。「これはこれは。二宮巡査部長のだんな、ご機嫌うるわしゅう」
〈百面相の哲〉は高飛びの間際だった。当局の動きがにわかに慌ただしくなっているのに目ざとく気づいた彼は、足のつきやすい航空便は避け、客船に乗ってタイ王国へ逃げ込むつもりだ・・・

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呪術師の息子

18/11/08 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:122

 山や沢をかけたり、木によじのぼったり、川で蟹や魚をつかまえたりするのに飽きてきた子供たちは、だれいうともなく山里に足をむけた。
 こんもりした繁みのなかに、煙突から煙をたちのぼらせる家がみえてくると、かれらはわざと笑い声をあげては、楽しそうに騒ぎ出した。
 しばらくすると、二階の窓から小柄な少年が顔をつきだしたのを、すかさずダンがみつけた。
「ニッキだ」
 みんなはニッキ・・・

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あだ名で呼んで

18/11/05 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:258

 いつものように「西本広樹様」というネームプレートを確認してカーテンの中をそっと覗き込みます。ベッドのそばにある折りたたみ式の椅子に腰かけると、夫は目を薄く開きました。あら、起こしちゃった、と思っているうちに完全に目を覚ましたようです。
「ああ、お母さん、来てたんだね」
 そう言って体を起こそうとするのを私は軽く補助しながら「今来たばかりですよ」と笑いかけました
「リンゴは持って・・・

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あなたとあだ名と徒花

18/11/03 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:284

 クラス全員からあだ名で呼ばれているあなたを、私はあだ名呼びすることができない。
 さらに苗字の高山“くん”呼びなのが全然距離を詰められていない証拠なのだけど、身の程知らずなのは重々承知で、私はあなたのことが好きなのだ。

 きっかけは、私があなたに三回も助けてもらったから。風邪気味でぼけーっとして、赤信号の道路にふらーっと飛び出したときに、あなたは私の腕を掴んで引き戻してくれた・・・

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仇名

18/11/03 コメント:0件 新世界 閲覧数:138

「えー、であるからして、言葉というのは言霊とも呼ばれ、昔の人は『言霊』には力が宿ると思っていた訳だなー。面白いねー」
 大して感情の籠らない声で教師は言った。古典か歴史か、何の授業だったかは覚えていない。百合子はただ窓の外を眺め、流れる雲をボケっと見ていた。

 なぜ? 何がきっかけだったんだろう。
『出ない杭は打たれない』平凡で平和な学生生活の筈だった。心から馴染んでいる・・・

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KYのNYの山田くん

18/11/01 コメント:2件 三明治 閲覧数:235

 アメリカの、あのニューヨークから転校生がやってきた。NY生まれのNY育ち。
 男なのは残念だけど……。できればハーフの女の子がよかったな。ウエキ先生と教壇に並んで立っている男の子はハーフでもなく純日本人らしい。坊主頭に半ズボンでボーダーのタートルネック着用。小学四年生にしては、ちょっとオッサン臭い顔をしている。なんとなくだけど島根とか鳥取あたりから来たというほうが、しっくりくる感じがした。・・・

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しょんべん野郎

18/11/01 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:149

 俺には物語の意味もわからない物語。早見という名前の俺はそう思いながらトイレまで向かった。トイレで用を足す。そのことに激しく抵抗感を持っていた。
 しょんべん野郎。
 俺の小学校の頃からのあだ名だ。俺はそう言われることに恐怖した。授業中いつでも抜け出した。
 俺には授業中トイレに行くことが唯一自由になる気がした。
「早見君、トイレで何してるの?」
 女子に中学校の頃、・・・

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名探偵のナミダ

18/10/31 コメント:2件 若早称平 閲覧数:257

 義姉のナミさんから久しぶりの連絡がきたのは兄が亡くなって半年経った十月の終わりだった。ナミさんと私は歳が近いのもあり兄の生前は兄抜きでもよく遊びに行ったりしていた。気の合う友達のような関係だったが、兄が交通事故で亡くなって以来、法事以外で会うことはなくなっていた。私と会うことで兄のことを思い出してしまうのかな? などと考えて私から連絡することも控えていた分、「明日会えない?」とナミさんから言われ・・・

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すき間くん

18/10/31 コメント:3件 吉岡幸一 閲覧数:210

 すき間くんの本当の名前は田中一郎という。だが、この三ヶ月間だれも田中くんとも一郎くんとも呼ばない。みなこの平凡な名前がはじめから存在しないかのように、すき間くんと呼んでいる。

 三ヶ月前、T町で地震があった。震度3程度の地震ではあったが、運悪く倒壊した家があって、田中一郎はちょうどその現場に居合わせた。
「母が家の中に取り残されているんです。この潰れた家のどこかで下敷きになっ・・・

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天使の呼ぶ声

18/10/27 コメント:2件  閲覧数:177

・・・行き、快速・・・黄色い線・・・ご注意ください
―全然来んから心配した、どうしたと?
―三度寝たい、まだねむか
―テスト勉強?
―ううん、昨日遅くまで

 電車が到着し、アナウンスに押されるよう乗客たちが車内に乗り込む。おれは古賀綾子とその友人の後ろに続き、手すりのすぐ後ろに陣取る形となった。
 ラッシュの少し前とは言え、それなりに混んでいる。背中を押・・・

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できない思春期にいる私

18/10/27 コメント:1件 悠真 閲覧数:174

 放課後の帰り道、改札を出たところで「ゆっきー」と後ろから抱きつかれる。クラスメイトの愛菜だ。
「もう、やめてよ愛菜」と口では嫌がりながらも、それを振りほどこうとしないゆっきー。
 私は愛菜が好きじゃない。そこまで仲良くなった覚えはないのに妙に馴れ馴れしい所が苦手だ。私と距離感が決定的に違う。
「一緒に帰ろ」という愛菜の提案に、ゆっきーは「いいよ」と頷いた。
 私なら断るけ・・・

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あだな

18/10/26 コメント:4件 こぐまじゅんこ 閲覧数:338

 おかあさん、あだなってなあに?
 ほんとのなまえじゃなくて、よぶときにつかうときになまえだよ。

 たとえば、
 いぬくんは、
 わんわんなくから
 わんちゃん。

 ねこちゃんは、
 にゃあにゃあなくから
 にゃんこ。

 ぶたさんは、
 ぶーぶーなくから
 ぶーちゃん。


 なきごえできめ・・・

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ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ

18/10/26 コメント:4件 繭虫 閲覧数:243

「五里さんはさ、女の子じゃん。『ゴリラ』ってあだ名、嫌じゃないの?」 HR後の教室に集った三人の『ゴリラ』に詰め寄られ、五里さんは目を丸くした。 しかし、面子を見て納得したのか、すぐにクスリと笑って答える。 「いい。そのあだ名、嫌いじゃないから。『ゴリラ』って、強そうってことでしょ。一目置かれてて美味しいじゃない。私は名字が五里だから普通に呼んでも『ゴリ』だしね。」 五里さんは不敵に微笑み・・・

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忘れられたあだ名

18/10/23 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:200

 さすがに40年もたてば、当時の面影は影も形もないと誰もが思っていた。
 が、同窓会会場のレストランに集まった面々は、たしかに髪が薄くなったり、また白髪もめだつものもいて、最初のうちこそ遠慮がちに顔をみあわせていたものの、老齢の先生を囲んでテーブルに座り、簡単な自己紹介もすんで、食事がはじまり、アルコールもはいって和やかな空気が生まれるにつれ、忘れていた小学生のころの顔が、しだいによみがえっ・・・

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伝言屋

18/10/22 コメント:0件 森音藍斗 閲覧数:151

『伝言屋
 時間と場所が離れた人へも、直接言いにくいことも 代わりに伝言致します、早く確実に伝えます
 匿名希望も受け付け可 誹謗中傷はお断りする場合が御座います
 tel/fax XXX-XXX-XXXX
 mail xxxxx@xxx.xx.xx
 address xx都xx区xx x-x
 報酬は、貴方のできることを、見合う分だけ』

 依頼人・・・

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僕の先生

18/10/22 コメント:0件 アシタバ 閲覧数:145

 僕が母さんのお腹で死んでしまったから母さんは酷く悲しんだ。
 病院のベッドで寝ている母さんの頭の上をくるくる飛んでいると「かわいそうになぁ」と近づいてくる人魂があった。
 それが僕の先生になった。
 先生は僕と同じ幽霊で僕のことをチビと呼んだ。そして何もわからない僕に色々なことを教えてくれたのだ。
 僕が先生にくっつくと先生の考えていることが流れ込んでくる。おかげで僕は言・・・

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素顔のメッセージ

18/10/22 コメント:0件 冬垣ひなた 閲覧数:215

 カフェから出ると、雨上がりの街からはオレンジ色が消えかかっていた。ちょっと長居しすぎたみたい。会社帰りの紗希は自分の頭を小突いた、今日は晩御飯の当番だ。しっかりしなきゃ、社会人一年生。折り畳み傘を鞄にしまおうとすると、丁度スマートフォンのメロディが鳴った。
「もしもし、お母さん?」
「ああ、紗希。今どこにいるの」
「駅前。もうすぐ帰るから」
「そう。そういえば、松木戸先生・・・

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もう一度、呼んで

18/10/22 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:140

 磯子は壁に貼られた売却済の判がおされた売り家の間取り図をみて、満足そうにうなずくと、
「栄ちゃん、やったわね」
 担当者の栄坂のほうをねぎらうようにみた。ふだんめったにほめられることがないだけに彼は、周囲の社員の顔を、照れたようにみまわした。入社以来、彼があつかってはじめて売れた物件だった。
 不動産会社のオーナーをつとめる磯子は、男子社員にひけをとらない大柄の体格の持ち主で・・・

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親愛なるあなたへ、魔法と愛を込めて。

18/10/22 コメント:0件 日向夏のまち 閲覧数:225

「激安宿の若旦那、久々の依頼だよ。」
 馴染みの旅人が、入口で羊皮紙を揺らした。
「久しぶり。パン屋の娘が、『また旅の話を聞かせて欲しいわ、熱々のパイと紅茶を用意して待っているから。』と、お前に。」
 相変わらず悪い夢みてぇと言い残し、旅人は店を後にした。羊皮紙には、アリーサ・セリツィロイとだけ書いてあった。

 枯れた灰色の石畳。青い屋根の家々。見上げる新緑の頂と、・・・

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注文が多い料理店

18/10/22 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:124

「オーダー、地中海の風コース。前菜のマグロとアボカドのマリネはアボカドを抜いてマヨネーズソースをかけてください。サラダにはクルトンの代わりにアーモンドを。パンはバターではなくオリーブオイルと塩で。スープはぬるめの30度くらいでパセリの代わりにイタリアンパセリを浮かべて欲しいとのことです。メインは肉ではなく白身魚をご希望です。あればスズキを。デザートはバニラアイスではなくゆずシャーベット、食後のコー・・・

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18.44メートルの距離

18/10/22 コメント:0件 野々小花 閲覧数:228

 長年、日本の野球界を牽引してきた投手、縞津和明が引退を表明した。
 私は彼のことを、新聞社のスポーツ部の記者という立場でずっと追い続けてきた。
 引退会見を終えたばかりの縞津を、私はこの部屋で待っている。インタビューをするためだ。部屋には私と、カメラマンと、後輩の記者が一人。縞津は、約束通りの時間に現れた。
「よろしくお願いします」
 野球人生を全うした男は、とても穏やか・・・

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伝えたい言葉が空に舞い上がる

18/10/22 コメント:0件 みや 閲覧数:106

その桜の木を目指してたくさんの人達が小高い山を黙々と登っていた。その人達の中には若い人もいれば高齢者もいて、皆んなそれぞれに誰かに伝えたい言葉を抱えながら山の頂上にあるその桜の木を目指していた。

私の少し後ろを七十歳くらいのお婆さんが杖をついて登っていた。標高144メートルのなだらかな山なので一時間弱で頂上に着くと言っても、高齢者にとっては辛そうで私は大丈夫ですかと声を掛けて手を引い・・・

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あいつに伝えて

18/10/22 コメント:0件 宮下 倖 閲覧数:127

 父さんは、ぼくの誕生日には必ず仕事を休む。
 いつも忙しい父さんが、ぼくが学校から帰る夕方には家にいて笑顔で「おかえり」と迎えてくれる。それから父さんと母さんと一緒にプレゼントを買いに出かけ、帰りはレストランで夕ご飯を食べる。これがいつものぼくの誕生日だ。
 今年、ぼくはカレンダーを見て飛び上がった。ぼくの誕生日が土曜日だったからだ。父さんの仕事もぼくの学校も休みの誕生日なんて初めて・・・

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言いたいことはひとつだけ

18/10/22 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:145

 雲坂家の遺影がガタガタとなる。
 痛打した肢足の欠片を脱いだ靴下に探し続けるかのような虚空でこそあれ虚構ではない微細だがビサイドユーな揺れである。
「お爺ちゃんが呼んでる」
 雲坂春香、雲坂家の長女が一番に反応する。雲坂十吉が大往生したあの日からいつか呼ばれる日のために遺影と視神経を固結びしておいたからだ。
「うっふっふー、目がくすぐったいぜ、お爺ちゃんわかったわかった」・・・

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モラトリアム

18/10/22 コメント:1件 泡沫恋歌 閲覧数:147

 突然の死というのは、今そこに座っていた人が退座したまま帰ってこない状態に似ていると思う。丁度、美咲の死がそんな感じだった。
 同じ会社のOL同士、大柄でボーイッシュ元気いっぱいの美咲と、チビでのんびり屋メガネっ子の私は、なぜかウマが合って仲良しになった。仕事中はもとより休憩時間やトイレにだっていつも二人でツレあっていた。休日には私のアパートでゲームをしたり、一緒にご飯を作ったり、まるで恋人・・・

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首相補佐官の憂鬱

18/10/22 コメント:0件 みーすけ 閲覧数:135

「博士、首相より伝言です」

 首相補佐官は遠慮がちに言った。博士への伝言をことづかってきたはいいが、その博士は傍から見ても忙しそうに動き回っていた。

「博士、首相より伝言です」

 意を決して大声を張り上げると、博士はようやく気づいたようだった。

「何だね、一体」

 手を止め、博士が尋ねる。

「例の物の開発を急げ、と・・・

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帰還

18/10/22 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:175

 小学校からの帰り道、僕は鳩を拾った。

 道端で横たわっているそいつを最初に見た時、死んでいるのかと思った。
 しゃがんでおそるおそる、その白い羽に触れてみる。鳩は小さく「クルックルー」と鳴いた。
 鳩は生きていた。
 どういう理由で、こんなところにいるのか分からなかったが、鳩がひどく弱っていることだけは確かだった。このままにしておけば、野犬にやられるか、そうでな・・・

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留守番電話は起爆剤

18/10/22 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:133

 目覚めたとき、最初にすることは枕元のケータイに手を伸ばすことだ。時間を確認するために。
「あれ……」
 ところが、ケータイに電源が入っていなかった。充電して寝るの忘れたんだっけな。そう思いながら、ケーブルを引き寄せて、ケータイに繋ぐ。
 段々意識がはっきりしてくる。そうだ、昨日は仕事が思ってたいよりも長引いて、っていうかここ数日ずっと午前様になってて。帰ってきて、かろうじて風呂・・・

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