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セカンドバースデー

19/03/15 コメント:1件 若早称平 閲覧数:77

 教室に入るといつもと空気が違うのを感じた。クラスメイト達の私に対する視線がなんだかよそよそしい。妙な緊張感とともに鞄をおろして席に座ると数人の女子が私の席へと近付いてきた。みんな一様ににやにやしている。
「せーの、誕生日おめでとう!」
 その言葉を合図に私に向けられたクラッカーが一斉に音を立てた。少し遅れて教室のあちらこちらでもクラッカーが炸裂する。「びっくりしたでしょう?」と言って・・・

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本当の兄弟になった日

19/03/15 コメント:2件 ポテトチップス 閲覧数:84

 新幹線の車窓からは、田園にまばらに建つ民家の明かりが時々見えた。
 車内で乗客の誰かが酒でも飲んでいるのか、酒臭い匂いが漂ってくる。剛志はなるべく車窓に顔を向け、隣に座る母から顔を背けていた。
「お腹空いてない?」
 母が言った。
 母といっても、剛志が生まれてすぐに男と駆け落ちした女である。父は生前、母のことを男好きな情婦だと、酒によっては剛志に言い聞かせていた。その時・・・

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猫が嫌いな花屋の娘

19/03/14 コメント:2件 高月雫 閲覧数:60

ジョアンは、花屋の看板娘だった。
誰にでも優しくて、明るくて、誰からも好かれていた。
街で一番裕福な家に育った僕も、一目で恋に落ちた。

明るい金髪に、澄んだ空色の目・・・その目が寂しげだったのは、両親を早くに無くして、叔父と叔母に育てられ、そして少し貧しい生活をしていたせいだと思っていた。
でも、紹介された、叔父さんと叔母さんは、とてもいい人だった。
僕との結・・・

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おそうしき

19/03/14 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:68

 おじいちゃんが しんだ。そうきいて ボクくんは ないしん したうちを しました。
 あしたは ずっと たのしみにしていた おくたまでの ツリに いく よていのひ。でも おじいちゃんが しんで あしたは おそうしき。ツリには いけません。
――なんで こんなときに しんだんだよ。おじいちゃんの バカ。
 ボクくんは そう こころのなかで つぶやきました。

 よくじつ・・・

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母からの贈り物

19/03/13 コメント:1件 堀田実 閲覧数:76

 挨拶も早々に済ませると喪主である崇彦は生前の母との思い出をつらつらと並べ立てていく。ほとんどが身に覚えのない作り話だったが、何十人という聴衆を前にすると不思議と罪悪感は芽生えてこない。
 白けた気持ちになりながらも崇彦は目頭をぬぐい母との思い出話を終える。崇彦の話を真面目に聞く人たちは目に涙を浮かべている。おそらく母の人格者ぶりを思い返しているのだろう。母は旧来から外当たりがよく学校の婦人・・・

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頼りないギフト

19/03/13 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:95

 光田レントは走っていた。あと一分で高校の校門が閉まる。このままでは遅刻だ。
 仕方なくレントは自身の顔をこねた。するとなんとレントの顔がみるみる変わっていく。
 校門はすでに閉まり、体育教師が前に立っている。そこにレントは恐る恐る近寄った。
「……登校中にケガをしてしまったッス。これって遅刻の取り消しにならないッスかね?」
 レントの顔を見て体育教師が悲鳴をあげる。その顔・・・

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いらないプレゼント

19/03/13 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:78

 クリスマスイブの朝。タクヲくんはボクを抱え走っていました。
 ボクはタクヲくんが買ってくれたプレゼント。今は鮮やかな包装紙に包まれています。
 タクヲくんが走って探していると、ようやく想い人であるコマチさんを見つけました。
「あら、タクヲくん。どうしたの?」
「これ、よければ受け取ってもらえますか!」
 ボクが差し出されると、コマチさんは笑顔で受け取ります。同じく笑・・・

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吸血鬼の僕ら

19/03/12 コメント:1件 hayakawa 閲覧数:84

 吸血鬼。僕は西洋の物語に出てくる存在を想像していたが、まさか自分が吸血鬼になるとは思っていなかった。
 高校の授業の始まり、僕は登校する。
「おはよー」
「おはよー」
 僕は友達が声をかけてきたので返事をする。
「宿題やった?」
「やってない」
 僕が座った前の席の同級生たちはそんな話をしている。
 僕は後ろを振り向き、親友でしかも女の玲奈に話しか・・・

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おくりものがたり

19/03/11 コメント:3件 奈尚 閲覧数:149

 妹が駅まで送ってくれると言うので、ありがたく助手席に収まった。
 独特の香りが肺を浸す。車には各々特有の匂いがあるものだ。実家の車は、実家の車の匂いがする。
「終電まだある? あっち、随分と田舎なんでしょう」
「ああ」
 ここも大概だけどな。
 流れていく夜景をぼんやり眺めながら答える。久しく離れていた故郷の風景は、記憶のそれとは様変わりしていた。
 あんなに・・・

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小さな幸せ

19/03/11 コメント:1件 hayakawa 閲覧数:71

 深夜の二時になっても眠りにつけないので、テレビを見ている時、一瞬この世界を疑った。それはこの世界は誰かが作り上げているもので、自分はその中で飼われているだけなのではないかということだった。
 やけに意識は鮮明で体に残る疲労が、心にくすぶる不安が自分を苛めている。スマートフォンのロックを解除し、メモ帳のアプリを開き、そこに「この世界は洗脳」と書いた。
 明日は大学院に通わなければならな・・・

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消去していいですか?

19/03/10 コメント:2件 つつい つつ 閲覧数:109

休みの日になるとカメラを持って出かけた。どこにでもある安物のデジタルカメラ。町を歩き回り気になればシャッターを押す。
 文化住宅の軒先で積まれた雑誌、古びた洗面器、なにが植えてあるかわからない植木鉢。住宅街の奥まった場所の何年も人が使ってないようなさびれた公衆電話から伸びる影。通りを少し曲がったら出てくる汚いどぶ川に日が落ちてさらに澱みを増す様子。そんな撮る必要のない景色が好きだった。

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等しいおくりもの

19/03/10 コメント:2件 naokiti 閲覧数:84

「本日から昼夜ずっと留守番電話にしています。電話に出ないとお父さんと決めました。用事の時は名前を言って下さい」
 母からのメールを見てどきりとした。振り込め詐欺やらオレオレ詐欺やら、それ以外でも様々な勧誘の電話が、かかってくることは聞いていた。ついに騙されたのか?
 私が両親の元へ帰るのがいいのかもしれない。兄妹で結婚していないのは私だけで、その上去年会社もやめてしまった。アラフォーか・・・

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太陽から

19/03/09 コメント:0件 嶺 ナポレタン 閲覧数:56

太陽は、お届け先もお届け日もお届け時間帯も指定せず、幸せな気分になる光を与えてくれる。受け取り手が幸せを感じた瞬間にお届け完了というシステムだ。

私たちは太陽の会員なので、どれだけ受け取っても送料は必要ない。だから、何度でも幸せな気分になる光を受け取ることができる。

しかし、同じ会員であるのに、何度も幸せを感じる人もいれば、ほとんど感じない人もいる。

そこ・・・

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哀しい贈り物

19/03/07 コメント:0件 デヴォン黒桃 閲覧数:106


 
 ──ただユックリと眠りたかった。脳内を駆け回る思考の種たちよ芽吹かないで呉れ──

 アナタと同じ速さで歩けたら、まだ側に居て呉れただろうか。

 ──傲慢──
 最後の夜に、罵倒を繰り返した、其れは胸が苦しかったから。自分の想いを伝えるのだけ必死で、愛したはずのアナタの心情を慮ることを置いてけぼりにして、劣情とも云える汚い言葉をぶつけた。ボクが求・・・

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アナタヘノタンジョウビプレゼント

19/03/06 コメント:2件 比些志 閲覧数:104

ボクにとって彼女は女神そのものだ。陰りのある瞳、陶器のように滑らかな白肌、しなやかな体の動きに反して揺れる長い黒髪、時折見せる無邪気で無防備な笑顔と潤いに満ちた笑い声。すべてが愛おしく、そして眩しい。その姿は目をつぶっていても脳裏に思い浮かべることができる、などと言うとおそらくきっと笑われだろうが、ボクは気にしない。だって本気で彼女が好きなのだから。

ボクの望みはただ一つ。彼・・・

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あなたからの贈り物

19/03/06 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:106

毎年この季節がやってくるとあなたのことを思い出す。74歳になっても私の中であなたは輝き続けているの。
そんなあなたが亡くなってから、もう6年が経とうとしてる。息子たちから気遣ってもらいたくなくて、つい平気な素ぶりをしてしまうけど、本当は誰かに縋りたい気分になるの。一人でいることに慣れるどころか、日に日に寂しい気持ちが増してくるわ。

あなたは出逢ってすぐに結婚しようと言ってくれた・・・

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黒猫のおくりもの

19/03/06 コメント:1件 吉岡幸一 閲覧数:86

 黒猫はいつも港近くの郵便局の前で昼寝をしていた。よく晴れた日はポストの上で、曇った日はポストの下で、雨の日は姿をみせない。いつもといっても黒猫が来るようになってまだ二月ほどにしかならない。
 サトシは小学校からの帰り道、黒猫をみつけては眺めていた。大半は寝ていたのでただ眺めるだけだが、起きているときはポケットから煮干しを出して与えたりしていた。
 かなり歳なのかもしれない。黒猫はおと・・・

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贈る言葉

19/03/04 コメント:1件 浅月庵 閲覧数:101

 先生は今日お前らに、伝えたいことがある。輝かしい未来へと羽ばたくために非常に重要なことで、言うなれば“贈る言葉”ってやつだ。
 おいおい騒ぐな。羽山、五月蝿いぞ。え? 卒業式に言うならわかるけど、三年生の頭に贈る言葉だなんて、頭おかしいんじゃないかって? なーに、遠慮するなって。そうだ。羽山、順番はお前からにしようか。

 羽山お前さ、イケメンで成績優秀だなんて、天は二物を与え・・・

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おばあちゃんからの手紙

19/03/04 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:126

 かんたくんのいえでは、おばあちゃんもいっしょにくらしています。
 かんたくんは、おばあちゃんがだいすき。
 保育園のおむかえも、いつもおばあちゃんがきてくれます。
 おばあちゃんは、かんたくんがもうすぐ年長さんになるので、なにかプレゼントをおくりたいなぁ、とおもっていました。
「いえに、いっしょにいるから、かんたくんにてがみをだしたことがなかったねぇ」
 おばあちゃ・・・

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11光年でのプレゼント

19/03/03 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:115

 ミサ隊員の顔が、妙にこわばっているのが気になった。
「無理もない」
  隊長のオクムラは、ひとりつぶやいた。
 ここは地球から11光年へだてた宇宙空間だった。我々惑星調査隊の搭乗する宇宙船はいま、いかなる人類も経験したことのない未知の領域にあるのだ。
 めざすは、赤色矮星の周囲をまわる惑星アルテミス。太陽系外で生物の生息する可能性のもっとも濃厚な惑星だった。生物学者のミサ・・・

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ありえないプレゼント

19/02/27 コメント:1件 とむなお 閲覧数:104

3月24日のこと……
新宿区にある美術大学1年生のカナは、板橋区のKマンションに住んでいた。
彼女は、近くの横断歩道で困っていた老女を助けた。
感心した老女は、物陰にカナを誘うと、
「あなたはとても親切なので、これをプレゼントしましょう」
真珠のような玉が入った小袋を二つ、差し出し、
「一つはお友達に上げるといいわ」
そして、その玉の使い方を教えると、角を・・・

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19/02/27 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:108

「こんにちは」
 訪問者は丁寧に挨拶すると、応対に出た月波等の顔を、まじまじと見つめた。
 等は、ヤバイと思った。
 この男が宗教、または保険の勧誘にきたのなら、どうして断ればいいのかいまから案じる彼だった。だが相手が両腕でしっかり抱えている四角い箱をみると、相手が勧誘ではなく、何かのセールス目的なのを察して、なおさらヤバイと思った。それが新興宗教なら自分は仏教の信者で通せばいい・・・

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ねずみ

19/02/27 コメント:1件 浅月庵 閲覧数:157

 午後十一時過ぎ。連日激務続きの私は、今日も残業を終えて独り暮らしの自宅に帰る。玄関扉を開けるやいなや、私は思わず鋭い悲鳴を上げたーー部屋のベッドの上で、何者かが倒れているのだ。
 私はその場で尻餅をついてしまうも、なんとか家を這い出てすぐさま110番をした。

 そして夜中から朝方にかけて警察から事情聴取を受けつつ、謎の人物の素性もその際に判明する。
 男の名前は横井忠文・・・

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僕から未来のおくりもの

19/02/26 コメント:1件 273 閲覧数:97

一通の手紙が届いた。
今時手紙なんていう時代遅れの代物を寄越してくるのは、大概が年金を取り立ててくるお役所様か、大量の年賀状をコピーすることだけが生き甲斐の老人ぐらいだと思っていた。
しかし、その手紙は、僕の想像とは全く逆ベクトル、つまり未来から送られていた。
未来からの手紙?
小学生の頃に大嫌いで仕方なかった馬面の教師に強要され、20の自分に向けた手紙を書いたことはあるが・・・

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君に花を

19/02/26 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:137

 あなたに贈ります、この花を

 水曜日の午後六時半。やはり今日も「あの人」はやってきた。
 スーツ姿でふわふわとパーマをかけた髪はハーフアップにくくっている。仕事終わりと見て間違いないだろう。
 彼女が買う花はいつも様々だ。カーネーションやガーベラ、ユリ。色も赤や黄、オレンジ、白と特に決まりはない。これは相当な花好きだろうと私は想像していた。私はこの人のことを勝手に「カ・・・

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ミライ・ザ・チョッパー

19/02/26 コメント:2件 夏日 純希 閲覧数:145

大学で講義が終わると突然の雨。
傘がなければ不幸の始まり?
ううん、それはイケメンが傘を貸してくれない場合に限る。ふふん、そうよつまり不幸の始まり。
今日はだめかと、長いため息。用事がある日に限ってこれだ。とりあえず雨空にチョップしてみた。痛かったよ、なんか心の辺りが。
しばらくすると幸福が舞い降りた。
「傘、使うか?」
それは医学部のプリンス手塚君だ。経済学部・・・

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尊き贈り物

19/02/24 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:108

 迎撃用ミサイルがついに発射されずにおわったのには、理由があった。
 宇宙のかなたから飛来したそれが、隕石などの自然の物体でないのはその造形的な輪郭をみれば明らかだった。ゆっくりと日本の上空にまでたっしたとき、まっさきに迎撃反対をとなえたのは、じつに仏教界だった。空からまいおりてくるそれは、地上のいかなる仏像よりも貴いお姿をしている――多くの高層たちのそれが一致した見解だった。
 新聞・・・

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ぷれぜんと

19/02/24 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:131

 はるくんは、三さい。
 だれかに、ぷれぜんとをあげたくてしかたがありません。
 
 かにさんに、おはなをあげました。
 でも、かにさんのハサミでチョキンときれてしまいました。
「はるくん、ごめん。せっかくくれたのに、もてないわ」
 かにさん、しょんぼり。
「ざんねん」
 
 はるくんは、こんどは、さかなくんに、アイスクリームをあげました。

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神様からのおくりもの

19/02/23 コメント:2件 笹峰霧子 閲覧数:140

 母が勤めていた官庁を退職したのは72歳だったように記憶している。
母は医師だったので年齢制限はなかったがそろそろ休みたいと思ったのだろう。
母が退職した時、私は第一子の長女を出産していた。二年後に次女も生まれた。

 ワタシは家で中学生に勉強を教える仕事をしていたので昼間は暇だったが、
母が退職してからは二人の幼児は夕食まで母の部屋で過ごしていた。

 ・・・

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おめでたい家族

19/02/23 コメント:2件 文月みつか 閲覧数:118

「母上様」
「何よ改まって気持ち悪い」
 食後のティータイムを楽しんでいるところに、長女の緑が現れた。
「こちら、デパ地下で手に入れた高級かりんとうでございます。ちょうどお茶の時間のころ合いのようだったので」
 「高級」のところを強く発音し、お菓子の袋をテーブルの端にうやうやしく乗せる。
「おかしいわね。これと同じものを近所のスーパーで見かけたことがあるんだけど」

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宝島より愛をこめて

19/02/19 コメント:8件 クナリ 閲覧数:310

 少し昔の、ある田舎町の話だ。
 中学一年生の頃、僕はよく、近所のベーカリーに通っていた。
 南仏風の、穏やかで明るい造形。
 うちとはあまりにも違った。
 僕の家は町の誰よりも大きかったけれど、暖かい場所はひとつもなかった。

 店内のカウンタには川原祥子さんという二十代半ばの女の人がいつも立っていて、厨房ではその夫の剛健さんがパンを造っていた。
 傍目・・・

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挨拶の品

19/02/19 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:107

 半年ほど空いていた隣の部屋に、新しい住人がやって来たのは、日曜の午後の事だった。久々に私の部屋のチャイムが鳴ったのだ。
「ごめんください」
 ドアを開けて声の主を確かめてみると、それは二十代後半ぐらいと思しき綺麗な女性だった。
「すみません突然。私、隣に引越して来た者なんですが、ご挨拶にと」
「ああ、そうでしたか。それはご丁寧に」
 最近では引越しの挨拶も珍しくなっ・・・

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弾ける笑顔の埠頭にて

19/02/18 コメント:1件 mokugyo 閲覧数:118

映画館の前で、弾けるような笑顔で君が待っていたんだ。

残念だったよ。水も弾くと言われるその肌がゆるむのを見て、僕の決心が鈍るからだ。

僕は、君を殺さなければならない。その使命を全うする為に君に近づいたんだ。だから、くだらない映画を一緒に観て夕食を食べたら、隙をうかがって君をハジキで撃ちぬいて死体を弾町一丁目に持っていかなければならないんだ。

だから頼むよ、・・・

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感情☆ドロップ

19/02/18 コメント:1件 ぐりのぐりこ 閲覧数:115

粉々に砕けた。破片が散った。彼女が叫んだ。
「ことばになんてできるわけないじゃんっっ」
私の頭の中で彼女のことばがぐるぐると駆け巡る。
ことば、コトバ、言葉、言羽、言刃、言破……。
ああ、そうかこれが――。
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」
目の前の無数の色に取り込まれる。
「うん、そうだね」

この曖昧な関係にことばなどいらない。

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デビュー

19/02/18 コメント:0件 沓屋南実 閲覧数:100

 女性ピアニストは、それだけで注目を集める。それも小さな子どもだったら。曲芸師のようなピアニストにだけはすまい。音楽を深く理解し、表現できる一流の芸術家を目指すように、自らの意思で求めるように。ヴィークは、リハーサルを終え、支度を終えた娘のクララを感慨深く見つめていた。
 クララは、ピンクの裾の広がった薄桃色のドレス姿の自分を鏡に映してみる。長い黒髪を、ヘルテル家出入りの美容師に結い上げても・・・

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シャボン玉、はじけた

19/02/18 コメント:1件 青苔 閲覧数:81

 シャボン玉が、昔から好きだった。
 きらきら、ふわふわしているところが好きだった。こことは違う世界のようで好きだった。
 だから、シャボン玉の液を作る時から、わくわくしていた。
 ガスコンロの前に踏み台を持ってきて、その上に登って、鍋でお湯を沸かす。沸騰したら火を止めて、きちんと火が消えたかどうか確認する。これはとても大切なことだ。
 それから、コンロの脇に置いてある容器・・・

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サイダーガール(ズ)

19/02/18 コメント:1件 北 流亡 閲覧数:70

トラックが、朱に染まり始めていた。
タータンの茶色と刻まれた白線が曖昧になっていた。
遥香はそれを見て、何時間も観客席に居たことを自覚した。
ひたすらに、静かだった。
地面が蹴られる音も、槍が空を切る音も、何も無かった。
風が草を撫でる音。それだけがあった。
明日から、もうこのトラックで走ることは無い。「部活」という物語は、今日終わったのだ。
遥香は、スタ・・・

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雑草の実がはぜるように、生きてみたい

19/02/18 コメント:2件 冬垣ひなた 閲覧数:153

 午後の寒空には、粉雪がちらつき始める。6歳になる優菜の手を引いて、閑散とした公園の散歩道を歩く芹香は、しきりに足を止める娘を不思議に思う。
「何か気になる?」
「あのね、しあわせを探しているの」
 哲学的に語る娘のあどけない瞳に、瑞々しい光が宿っている。親馬鹿を承知で褒めるが、この子は芸術家肌なのかもしれない。先ほど絵画教室の無料レッスンを体験したところ、うっとりとした表情を浮・・・

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夏よ終わらないで

19/02/18 コメント:1件 糸井翼 閲覧数:83

「ねー、七瀬はそれでいいの?」
友だちは怖い顔をして私を見る。
「あの山田くんと二人でアイスを食べてたんでしょ」
「山田くんは幼なじみだから」
私は笑ってごまかす。この手の話題はあまり好きじゃない。山田くんにも失礼だから。
「山田くんが他の女に盗られていいの、ねえ」
「別に私のものじゃないでしょ、もー」
山田くんは幼なじみであり、私なんかにも優しくて、かっ・・・

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Frajile

19/02/18 コメント:2件 みや 閲覧数:81

キッチンで朝食の用意をしていると、十三歳の息子が二階から降りてきた。
「おはよう、ノエルにごはんをあげてくれる?」
息子は私の言葉を無視して冷蔵庫から牛乳を取り出しコップに注いでいる。
「聞こえてるの?ノエルにごはんをあげてって言ってるでしょ」
息子は更に私の言葉を無視して牛乳をゴクゴクと飲み干した。
「聞こえてるんでしょ!」
私は怒りにまかせて息子を怒鳴った。・・・

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スプリング ハズ カム

19/02/18 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:96

ここにいると季節がない。快適で、だけど虚しい。

 鏡を見る。いつのまに、こんなおばあさんになっちゃたんだろ、あたし。

 高級老人ホームっていったって、狭いワンルームに押し込められて、ああ、息が詰まりそう。
 たとえばここは宇宙船。機械が壊れたせいで、酸素が薄いからそっと息を吸うしかないのだ。どこへ向かっているんだろう。月、だろうか。月は地球より重力が弱いから、き・・・

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芸の為なら

19/02/18 コメント:4件 高月雫 閲覧数:123

大手得意先のA社の社長は、一見ヤクザのような風貌をしている。
風貌だけでなく、何か問題が発生すると大手メーカーのSだろうがTだろうが怒鳴り込みに行って相手先を謝らせたなどという武勇伝がまことしやかに流れている。

そのA社を担当していた課長が、商品手配を大幅にミスしたまま、突然、退職してしまった。
運悪く、課長の下にいた私が、担当せざるを得なかったが、無いものは無い。

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しゃぼん玉

19/02/18 コメント:0件 森音藍斗 閲覧数:109

 ゆっくり息を吹き込むと、それはふうっとふくらんで、虹色に輝いた。
 虹色は太陽の色で、だから、私は希望の七色が消えてしまわないように、だいじにだいじに育てたんだ。
 私の吐息を内側に宿して、透明な筈なのに輝くまんまるのしゃぼん玉は、まだストローの先にいて、そこから離れたらどうなってしまうのか怖がる私の臆病を他所に、独りで宙に飛び立っていった。
 風が当たらないように、壊れてしま・・・

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GIFT

19/02/18 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:101

 見覚えのある女の名で夫あての荷物が届いたのは、火曜日の夕方の事だった。アサミはその事が無ければ、今日が何の日か気付かなかった。夫であるタツヤの誕生日だ。
 結婚して九年目だった。お互い二度目で子供は居ない。日々を何となく過ごし、二人で出かける事も殆ど無くなった。それはタツヤが転職した事で、出費を抑える必要が出来たからだ。結婚して四年目の事だった。
 転職後、タツヤの仕事は順調だったが・・・

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万年筆は語る

19/02/18 コメント:1件 霜月秋旻 閲覧数:233

 書きたいものが無い。何も浮かんでこなくなった。スランプだ。
 書斎で毎日、空白の原稿用紙と睨み合いをしているが、私の右手に握られた万年筆の筆先は、原稿用紙に触れることなく、ただ、インクが乾いていく。時だけが過ぎていく。トイレに入ってる間も食事の間も、アニメを観ている間もアイデアがちっとも浮かんできやしない。それを毎日繰り返す。四年前までは、人気小説家として何作も書けていたはずなのに。

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エナジードリンク「弾ける」

19/02/18 コメント:1件 小高まあな 閲覧数:197

 テンションをあげることが苦手だ。
 黄色い声を出すことができない。プレゼントは本当に嬉しいのに、他の子みたいな「嬉しい!」ってぴょんぴょん飛び跳ねるような反応ができない。サプライズに対応できなくて、相手を不愉快にさせてしまう。
 感情を弾けさせることが苦手なのだ。自分で言うのもどうかと思うが、私の中にはしっかりとした感情があるのに。情熱があるのに。それを、表に出せない。
 だか・・・

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復讐の板チョコ

19/02/18 コメント:1件 霜月秋旻 閲覧数:170

 この高校一のイケメン教師と言われている速水ともみち。職員室にある彼の机の上に、三十個はあるだろうチョコレートがこんもりと乗っかっている。それに比べて齢六十近い薄毛の私は一個も貰えなかった。教師生活三十年、生徒から一個たりとも貰ったことが無かった。逆に凄くないか?義理チョコすら貰えないんだぞ?と誰かに問いかけたいくらいだ。
「いやぁ参ったなぁ毎年毎年こんなに!おやおやぁ?温水先生、もしかして・・・

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いつか爆ぜた心

19/02/17 コメント:2件 野々小花 閲覧数:177

 午後の授業を終えた教室は解放感に満ちている。
「誰か、立候補者はいないのか」
 担任が声を上げても何の反応もない。まだホームルーム中だというのに帰り支度に勤しむ者や、スマートフォンでオンラインゲームに興じている生徒もいる。
「仕方がないな。……杉里、お前、頼めるか」
 そう言いながら、一番前に座る生徒に視線を落とした。担任の申し訳なさそうな顔が、一番後ろの席に座る僕にもは・・・

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悪魔の夢はしゃぼん玉

19/02/17 コメント:0件 壬生乃サル 閲覧数:112

「オレ、天使になりたい!」
 魔界の王子・アックンが、突然そんなことを言い出しました。
「なんだと? きさま、血まようたか? わが大魔王の息子たるもの、この運命にあがらうことなど許されぬわ!」
 顔をまっかにして怒りをあらわにする大魔王に対して、アックンはあっけらかんとしています。
「悪魔なんて嫌われものじゃん。そもそもオレは次男だし。どうせ次の大魔王になるのは兄ちゃんなん・・・

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おばあちゃんが教えてくれたおはじき

19/02/17 コメント:1件 戸松有葉 閲覧数:124

 親戚一同からは「おばあちゃん」と呼ばれているが、厳密には子供らの祖母ではない。ともかく親戚間で「おばあちゃん」といえば、御年八十五歳のこの老女を指す。
 身体こそ小さくなってしまったが、目立った病気もなく、至って元気だ。温厚な性格と面倒見がいいことから、子供の親らからは有難がられている。
 子供も懐いているわけだが、現金なもので、ただ優しいだけで懐くわけではなかった。実利があるのだ。・・・

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