1. トップページ
  2. ストーリーを探す

ストーリーを探す

ニックネーム、タイトル、本文に
を含む

検索結果

並べ替え : 新着順 | 評価が高い順閲覧数の多い順コメントが多い順

0

海へ還す

18/07/16 コメント:0件 アシタバ 閲覧数:250

 母娘が訪れたのは小さな漁村だった。
 派手さはないが美しい海と緑の濃い里山がある。それらに挟まれるようにして古い民家がたち並び、村は潮の香りと蝉の鳴き声に埋め尽くされていた。
 小さく幼い娘と若い母親はそんな村の風景を写真に収めたり、海辺で波の音を聞いたりして時間を過ごしていた。
 やがて昼時になり、二人は空腹に気がつく。
 娘は海辺に一軒の定食屋があるのを見つけた。海の・・・

2

真っすぐ立って真っすぐに進む

18/07/16 コメント:2件 むねすけ 閲覧数:445

 メルちゃんの右目。曲のタイトル、夜のギターケース。駅に聴こえる初心者コードみっつのメロディー。
 メルちゃんの右目。小説のタイトル、更新される夜の十時。回るアクセスカウンター、読まれるストーリーは幸福な未来を友達に語りかける。
 メルちゃんの右目。パンの名前、早朝四時の寝ぼけた眼が目を描く。中身は美味しいウグイス餡。友達は春が好きだと左目で見ていたから。
 メルが右目の視力を失・・・

0

さよならイツカくん

18/07/16 コメント:0件 高橋螢参郎 閲覧数:314

. 世の中の面倒事をスポンジのように吸い込んですっかり重くなった身体に何とか鞭打って、仕事を終えた僕は今日もベッドに倒れ込んだ。
 ひどい時にはこのままシャワーを浴びる事もなく明日を迎えてしまう。明日もまた同じように仕事をして、半分気を失うように眠るのだろう。息継ぎするのに必死の、下手くそなクロールのようなこの日常があと三十余年続くかと考えるだけで、僕の胃はひどくよじれた。
 もうダメ・・・

3

片想い

18/07/16 コメント:1件 石蕗亮 閲覧数:508

 あれはやけに腹を空かせていた時のことだった。 窓際のベッドで外を眺めている女が表通りから見えた。 カモだと思った。久しぶりに旨いものが食えると思った。  まずは身だしなみを整えねばと、それらしい格好をしてから女の部屋に現れた。 女は私の存在に気が付くとその瞳に憶びれの色も写さずに「誰?」と一言放った。 「見ての通りの者さ」 「目に映るものが全てではないでしょう」 素気なく答える女に折角身なりを・・・

0

貴方に花を。色とりどりの、綺麗な花を。

18/07/16 コメント:0件 黒江 うさぎ 閲覧数:417

 そこは、真っ暗な…灯り一つ無い、真っ暗な場所。
 そこに、一人の女の子がいました。
 真っ暗な場所で、一人ぼっち。
 女の子は蹲って、すんすんと鼻を啜りました。
 …と、不意に。
 ぽっ、ぽっ、と、真っ暗なその場所に灯り達が灯りました。
 灯り達は、果ての見えない一本道を照らす様に、優しく、温かそうに灯っています。
 ふと、女の子が手の中を見れば、そこに・・・

0

人型恋愛ロボット

18/07/16 コメント:0件 柳瀬 閲覧数:404

もう少しだ、もう少しで完成する。
アキラ博士の長い研究の成果によって、もうすぐ人型恋愛ロボットが完成する。
これで、僕にも彼女が....いや、そんな卑猥な事を考えてはダメだ。
僕は人付き合いが苦手で彼女が出来ない不器用な男子の為にこの研究を成功させるんだ。
あとはこのロボットに声を吹き込むだけだ。
どうせだったら本物の女性の声を吹き込みたいな。
そう思った博士は・・・

0

苦しみの町

18/07/16 コメント:0件 時津橋士 閲覧数:312

 夜。楓は自室でベッドに腰掛け、考え事をしていた。といっても、難しいことを考えていたのではない。昔体験した少し不思議な出来事を思い出していたのだ。楓はまだ幼かったころ、一度だけおかしな町に迷い込んだことがあったのだ。今となってはもう夢かもしれないその出来事を、楓は決して忘れることができなかったのだ。
 幼い楓が体験したのはこんな出来事だった。

 それは冬の夕暮れのことだった。楓・・・

0

俺には記憶領域が10個ある。

18/07/16 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:460

 俺には記憶領域が10個ある。
 10個のセーブデータを保有することができるのだ。RPGゲームと同じ、失敗したらセーブデータを呼び出し、またそこからロードしてやり直すことができる。
 幼い頃は、これは皆が持っている能力だと思っていた。だから、皆が試験後、試験前に戻ってやり直さないことが不思議だった。俺は何度も100点近くをとれるまでやり直していたのに。
 どうやらこの能力が俺にし・・・

0

パンとスープ

18/07/15 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:374

 うつぶせになり崖の下をそっと覗きこんだ。林の中にいくつかの建物が見え隠れする。そこが僕の目的地だった。背中に背負ったパラシュートはちゃんと開くか心配だったけど、それは実際飛んでみないとわからないことだった。僕は覚悟を決めて周りにいる仲間に「行くよ」と告げた。みんなは僕の肩をそっと叩き、「お前は村の英雄だ」、「お前のことは忘れないよ」と、励ましてくれた。
 思えば僕の人生のほとんどは役立たず・・・

0

生まれ変わり

18/07/15 コメント:0件 ひーろ 閲覧数:301

 自信はないほうがいい。そんなことを誰かが言っていた。曰く、真っすぐで揺るぎない自信を胸に突き立てている人ほど、何かの拍子に簡単に心が折れてしまうのだと。迷いながら悩みながらゆれている人の方が折れにくい。ちょうど、五重塔やスカイツリーの構造のように。
 この言葉は、すっかり生きる自信を失くしてしまった僕に、追い打ちをかけてきた。ちょうどこの頃、長年付き合っていた彼女に別れを告げられ、親友だと・・・

0

みやちゃん

18/07/15 コメント:0件 三明治 閲覧数:258

 朝から母と口論になった。
 その日は整形外科に通院する予定になっていたのだが、母が突然ごねだした。
「からだが痛いから病院にいきたくない」
「なんだよ、痛いからいくんじゃないか」
「うごけないから、いやだ」
「そんなこと言わないでくれよ」
 何度かやり取りを交わした後、互いに、だんまりを決め込んだ。昔から言い出したら聞かない母の性格は、要介護の身になってから、・・・

1

ノナウミガメの方向転換

18/07/15 コメント:0件 安城和城 閲覧数:329

 男女共学化した現在でもお嬢様学校として有名な深窓(しんそう)大学に入ってからというもの、桜井春子(さくらいはるこ)にとって、長期休暇明けの講義はこれ以上ないほど憂鬱なものとなっていた。
 それもそのはず、同じ学部の友人たちから、どこそこに行って一日中泳いでいただの、どこそこで新年を迎えて昨日帰ってきたばかりだの、嫌でもそんな話を聞かされるのだ。
 その「どこそこ」が多くの場合海外の地・・・

0

芸術って何?

18/07/15 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:402

 僕はふと頭の中で芸術家になろうと考えた。何がいいだろう。小説家、映画監督、音楽家、画家。
 頭に浮かぶのはそれくらいで、なんとなく映画監督になろうと思った。なにより、映画が一番面白いと思ったからだ。

「ねえ、映画作ってみない?」
 僕は大学の友達に話しかけた。
「映画? 俺達で? そんなの無理だよ」
 彼はそう言った。
 彼は僕と話している時もゲームに・・・

2

爪の垢

18/07/15 コメント:1件 かめかめ 閲覧数:403

 貧乏下宿に帰ると部屋のドアにノブがなかった。ノブがついていたところにポッカリと穴が空いている。ドアノブ泥棒だろうか。健太郎は首をひねりながらドアを開けた。
 廊下の灯りが玄関に差しこんで、人の足が二本ニュっと伸びているのが見えた。
 慌てて電気をつけると老人がうつぶせに倒れている。
「大丈夫ですか!? どうしました!?」
 健太郎は老人のそばに膝をつき呼吸を確かめた。息が・・・

1

極楽惑星

18/07/14 コメント:0件 松本エムザ 閲覧数:354

「アナタはゾンビなのですか?」

 唐突な質問に、僕は目を丸くした。

「ど、どうして、そう思うの?」
「アナタはお風呂に入ると『極楽極楽』と言いますよね? 『極楽』とは、死んだ人が行く『天国』のことですよね? つまり、アナタは一度死んで、よみがえってココにいる」
「いやいや、そうじゃないんだハッくん」
 ハッくんの流暢な日本語と読解力には感心してしまうが・・・

1

ブルーな海底から晴れ空を仰ぐ

18/07/14 コメント:0件 Fujiki 閲覧数:318

 瑞樹の見ている世界を見るには、ひとまず一番近くの水族館に足を運んでほしい。水族館の水槽にはたいてい青のライトが使われている。透明な水を青く見せ、幻想的な雰囲気を演出するためだ。水を抜いてみたら背景の壁が明るい水色をしていることも多い。魚が文句を言わない限りピンクや蛍光イエローの水槽があってもいいはずだけど、青が圧倒的に多数である。
 そんな水槽の前に立ってみよう。通路が暗ければなおいい。青・・・

1

ジャスコが苦手な理由(わけ)

18/07/14 コメント:0件 くりまん 閲覧数:300

 ジャスコ今はイオンなのかやヨーカドーでの買い物が、最近苦手になってきた。
雨が降りそうな日曜日、地元のジャスコの交差点を曲がる時、無性に悲しくなって涙まで出そうになった。
 かつては、喜々として買い物に参列していたのに。こんな便利な施設はないと感心していたのに。
いつから変わってしまったのだろう。

 僕がこういう大型スーパーを意識したのは、社会人になってから・・・

0

憧れのプレミアリーグのピッチ

18/07/14 コメント:0件 ポテトチップス 閲覧数:341

『P.S. 
 20年後、ボクはプレミアリーグのピッチ上で、誰よりも早く駆け抜けている。
 1998年 2月15日  6年2組 上谷岳』

 マッケーロが、岳の肩を軽く叩いた。表情に自然な笑みを浮かべて。
 これから始まる試合の緊張に飲み込まれず、冷静を保っている彼はさすがだ。
 マッケーロは、頭上から岳の目を真っすぐに見つめて英語で話しかける。岳は聞き取った・・・

1

リアル雪女

18/07/14 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:362

「ようこそ、ワンダースノーへ。今日はあなたを不思議な雪の世界にお連れします。案内人は僕、雪だるまのダルマーです」
 明るい声を上げているのは若い普通の男性だ。宇宙服のような全身を覆うスーツとヘルメットを身につけている。いかついゴーグルは額の上に上げていた。
 雪だるまとは似ても似つかぬ姿に客席にはくすくすと笑い声が広がった。
 できたばかりの話題のテーマパークなので、家族連れとカ・・・

1

獄中記(某月某日、使徒来たる)

18/07/14 コメント:0件 秘まんぢ 閲覧数:503

 きょう、義兄への傷害罪で長く服役中のわたしへと面会者が来た。平坦で単調な毎日をすごすしかない服役囚にとって、面会は暗闇から神様がまっすぐ自分のもとへ歩いて来るのにひとしい。恩寵を告げにだ。
「どんなやつです?」
「それがな、キム・ベイシンガーみたいな名前の女だよ。おまえ英語できるのか?」
 看守がまんざらでもない興味を示して聞く。
「まさか」
 安心したように「だろ・・・

5

心の形

18/07/14 コメント:4件 浅月庵 閲覧数:566

 ◇
 チャイムの音色が授業の終わりを告げると、僕も含めた生徒たちは廊下へ抜け出た。
 ただ、次の授業は体育だけど、僕だけは体育館ではなく“違う場所”へと導かれていた。

 その歩を進めている最中、すれ違いざま隣のクラスの峯岸琥珀に耳うちされた。彼女から声をかけられたのは、これが初めてのことだった。
「横田くんさ、変な気起こさない方がいいよ」
 僕は峯岸さんから・・・

1

ホーム・スイート・スイート・ホーム

18/07/13 コメント:0件 腹時計 閲覧数:249

 俺は小さい頃、ヒットマンになりたかった。
友達から借りた漫画の中で、黒コートを着こなすヒットマンは、まるで世直しのごとく、悪者を倒していた。冷酷だけれど実は情に厚く、圧倒的に強いヒットマンにあこがれるのは、何の力もない子どもとしては当然のことだと思う。
 貧しい家庭に生まれつき、母はあまり家にいなかった。飲んだくれの父はずっと家にいて、モンスターを家の中に飼っているようだった。

0

『星の界』を聴いてのあとがき、もとい感想

18/07/13 コメント:0件 マサフト 閲覧数:312

人智は果てなし 無窮の遠に 其の星の界 きはめも行かん

昔の人、具体的に何時代だとか何処そこの国だとかは無しにして、とにかく昔の人の想像力とは如何なものなのだろう。

星を眺め、角度を計り、目星目印にして現在位置や方角、距離を割り出す。それは解る、手筈は知らないもののその行為、目的は理解できる。
だが星座はどうだろう。勿論、先に述べた手順の前段階と・・・

1

本音

18/07/13 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:265

「ねぇ、豊彦くん。『あとがき』ばかり読んでいて面白いの?」
 私の彼は同じ文学部。そして今年から同じゼミ。
「面白いよ」
 ぽつりと言うと、『あとがき』に目を戻す。
 豊彦くんは興味の湧いた作者を見つけると、初版日順に作品一覧を作る。同じ題名でも単行本や文庫本、出版社が違うもの、改稿したものを丹念に調べて作成する。良くある事が絶版になっている本。その時には近くの図書館から一・・・

3

博士が愛した罪

18/07/13 コメント:2件 路地裏 閲覧数:685

青の街、アメリア・カルセドニ。建物の高さは厳しく規制され、屋根の色はアトランティコ・ブルーで統一されている。街を囲む同色の海も、より一層輝きを放つ。この地を初めて訪れた者は「まるで海の中に居るようだ」と口を揃えて言う。私もその中の1人だった。まさか10年もこの地に留まることになるとは。アトランティコ・ブルーの魅力は、私の心を掴んで離さない。

私の職業は小説家である。「だった」という・・・

1

ストーカー店長

18/07/13 コメント:0件 りんごさん 閲覧数:537

「お弁当温めお待たせいたしました〜」

高田 敏夫は業務用電子レンジからコンビニ弁当を取り出しながら、マニュアル通りのセリフを呟く。
今日はチーズたっぷりカルボナーラか。女性が食べるにしてはカロリーが高めだな――敏夫の心にさざ波が立つ。まさか男と一緒に食べるつもりなのだろうか。

「フォークはお一つでよろしかったでしょうか?」

商品が一つなのだからフォー・・・

0

作家になりたかった

18/07/13 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:340

 僕がこれを書いているのは、作家になりたかった自分のためだ。様々なことを考えた。
 僕の母親は専業主婦で週に五日パートを飲食店でしている。僕の父親は製薬会社で管理職をやっている。
 どことなく居心地が悪い家庭だった。父親は怖く、母親は僕に無関心だった。それで小さい頃から僕は人並に地味に生きてきた。
 大学在学中に僕は友達が一人もできず、ひどいうつ病になってしまい、自殺未遂をした僕・・・

3

味噌汁に焼餅

18/07/13 コメント:2件 秋 ひのこ 閲覧数:402

 空港からのびる県道の両側には青々とした田園が広がり、色濃い山々が四方を囲んでいる。
 タクシーの運転手は「ニイミ」と名乗る若い男だった。
「仕事ですか、観光ですか」
 ニイミが鏡越しに朗らかに話しかける。
「いえ、珍しいので。空港からの行き先がN村の食堂というのが。今はグルメの取材とかツアーとかあるでしょう。田舎のただの蕎麦屋まで秘境の隠れ家とか言われたりね。そういう関係・・・

2

魔法使いマホガニー

18/07/11 コメント:2件 さくって 閲覧数:273

その日マホガニーは学校の帰りに本屋に立ち寄り、いつものように小説の表紙だけを見ていた。

マホガニーには特技があった。
それは、表紙を見ただけで、つまりタイトルと表紙イラストを見るだけで、その小説の内容が6割方わかるという特技だ。
マホガニーは想像力が豊か。
それも結構的を得たものだった。

マホガニーは将来小説家になればその想像力で売れっ子になれるかもし・・・

3

ノラの寝床

18/07/12 コメント:3件 白汐鈴 閲覧数:501

 茜がその日に見たのは、ふつうの青い青い空だった。
 雨など降りそうになく、そのことが少し憂鬱で、すべて放ったらかして飲みに出かけようかと考えたりもしていた。
 開け放った縁側から暑くも寒くもない穏やかな風にのせて、品のない笑い声が裏の家から聞こえてくる。ここらあたりに住む人たちは良くいえば豪快、悪くいえば野蛮という言葉が似つかわしく、喧嘩しているようなやりとりは明日の祭りの打ち合わせ・・・

2

エンディング・ノート或いは終わりの始まり

18/07/12 コメント:4件 しのき美緒 閲覧数:666

 「あなた、いったい何をしていらっしゃるの?」
 シルクジャージーの濃紺のワンピースにほっそりとした身を包み、百貨店の紙袋を提げた京子は、ダイニングに一歩踏み込むや、その光景に驚いて声をあげた。
 京子が丁寧にワックスで磨き上げる無垢材のダイニングテーブルの上一面に書類が乱雑に積み重ねられ、ペンやラインマーカーが転がっている。その中で夫の宏が、電卓を手に何やら懸命にノートに書き付けてい・・・

5

小説家の洞窟

18/07/12 コメント:3件 若早称平 閲覧数:583

 もともと書くのが早い方ではなかったが、ここまで書けなくなったのは作家になってから、いや、小説を書き始めてから初めてのことだった。机に向おうが散歩をしていようが食事中だろうが、寝ても覚めても小説のことを考えているのになにも書けない。アイディアが浮かばない。とうとう雑誌のページに穴をあけ、八つ当たりのように仕事用のノートパソコンを壊したとき、妻であり、編集者でもある一実からしばらく休んで旅行にでも行・・・

1

馬鹿と煙は高いところへ上る

18/07/11 コメント:0件 佐々々木 閲覧数:535

「働くのってしんどいな」
 高校からの友人は、煙草の煙を吐き出しながらそう零した。顔をしかめて軽い調子で続く。
「こんなに仕事が辛いもんだとは思わなかった。大学時代に戻りたいよ」
 この春就職した彼とは違い、大学院へと進んだ僕はその気持ちがまだわからない。そんなことを言われても相槌を打つくらいしかできないんだけど、と内心困りながら、しばし間を置き、「そうなんだ」とだけ返した。

3

走馬灯システム

18/07/11 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:675

「これにて炭田奏多様の走馬灯を終了させていただきます。また炭田様は享年32歳とお若く亡くなられているため、生前親しくされた方1名様と数分程ご歓談できますがご利用なりますか?」

目を覚ますと私は真っ白な部屋で大きなプロジェクターに映し出される私の走馬灯を観せられていた。走馬灯を観ながら喪服を着た男に様々な状況を説明させられる。どうやら私は不慮の事故で亡くなったようだ。
私は突然死・・・

4

あとがき屋(自伝のあとがき)

18/07/11 コメント:1件 吉岡幸一 閲覧数:699

 あとがき屋の商売をはじめて十年が過ぎた。あとがきとは詩集や小説、自伝、紀行文、エッセイ、論文など書かれた文章の終わりに本文とは別に書き添える文章のことだ。通常は書いた本人が書くことが多いのだが、本人の意向や出版社の意向で本人以外の者が書く場合もある。そのあとがきを書くことを生業としているのがあとがき屋である。
 男は六十歳の時に長年経営していた印刷会社を売却してあとがき屋を開業したのだが、・・・

0

あとがき屋(小説のあとがき)

18/07/11 コメント:0件 吉岡幸一 閲覧数:570

 あとがき屋の商売をはじめて十年が過ぎた。あとがきとは詩集や小説、自伝、紀行文、エッセイ、論文など書かれた文章の終わりに本文とは別に書き添える文章のことだ。通常は書いた本人が書くことが多いのだが、本人の意向や出版社の意向で本人以外の者が書く場合もある。そのあとがきを書くことを生業としているのがあとがき屋である。
 男は六十歳の時に長年経営していた印刷会社を売却してあとがき屋を開業したのだが、・・・

0

何でもあります

18/07/10 コメント:0件 新屋鉄仙 閲覧数:336

 ゴールデンウィークの初日、連休を読書で過ごすことにした独身男の陽介は、家から少し離れた大型書店に来ていた。
話題作を次々と手に取り、どれを買って帰ろうか悩んでいると、胸ポケットに入れていた携帯電話が小刻みに揺れた。
 相手は会社の同僚で、コンパのお誘いメールであった。コンパの場所は今いる書店から近く、開始時間も二時間後であった。今から家に帰っても、すぐに戻ることになるため、小説を一冊・・・

3

わたしノオト

18/07/10 コメント:1件 カンブリア 閲覧数:486

 もしも叔父と、もうすこし遅く出会っていたならば、たとえば中学生、いや、小学校に入りたての頃からだって、もしかしたらあんな関係にはならなかったかもしれない。
 父とは十五歳も離れていて、むかしは恥かきっこなんて言ったらしいが、ともかく叔父は、高校のときには山奥の実家からわたしたちの家に下宿していて、そののちに私のものとなった部屋はずっと彼のものだったのだ。
 事故で死んだのは、高校生の・・・

3

魔女っ子キララ

18/07/10 コメント:4件 秋 ひのこ 閲覧数:423

「だから電話でもお話ししましたように、母にテレビ出演なんて無理です」
 自宅の居間で、玲子はふたりの男性と向き合っていた。隣には夫の聡真(そうま)がいる。
「VTR出演だけでも駄目ですか」
 30の玲子たちとそう歳は変わらないテレビ局からきた男が、熊のような身体を乗り出した。
「我々がお母様の施設に機材を持って伺いますし、それほど負担にはならないかと……」
 熊の隣で・・・

1

恋人ごっこの両縁結び

18/07/10 コメント:0件 遊馬 閲覧数:382

 雨の中で、私は泣き暮れる。雨なのか、涙なのか、空に聞いてもわからない。空はただ、静かに暮れていくだけ。
 心寂しい冬の寒気は鈴の音の迎えを期待させては、落胆させる。
 座り込んだ岩の上から見える鳥居の赤が目に映る度、私の胸は酷く痛んで、向かうこともできずに俯いた。
 りん。
 空に線を引くような、愛しい鈴の音。又、りん、と鳴る。その音は段々と強くなり、最後に私の手の上で、・・・

1

彼の死んだ世界

18/07/10 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:428

 夕暮れの中を彼と歩いていた。電柱や家々の窓がある。やけに街灯の明かりは明るい。
 二人で酒を飲んだ帰りだった。
「俺の家泊って行けよ。明日は休みだろ?」
 大学生の彼はそう言って、僕らは彼の住むマンションに向かった。すごく見た目が立派なマンションだった。とても一人暮らしの若者が住むようなところじゃない。
「ずいぶん立派なところだな」
「だろ? うちの親は医者だから。・・・

1

よく似ている

18/07/09 コメント:0件 ひろP 閲覧数:412

 「おいっ、このバカ」  そう、誰かが呼び止めた気がした。  「『気がした』じゃねェよ。呼んだんだよ、呼んだ。おいっ、聞いているか、バカ」  幼女の声だ。  でも、振り返っても、誰もいない。  「当たり前だろ。いないのは、お前の方なんだから」  意味が、分からない。  「頭悪いな。死んでこの世にいないのは、お前の方。幽霊のお前には、現世の人間が見えないんだよ」  死んだ?  僕が?  いつ?  「・・・

1

墓荒らしと猫

18/07/09 コメント:0件 早良龍平 閲覧数:417

 月が浮上し、その高さが頂に達したと思われるとき、人里離れた共同墓地では墓荒らしが黙々、土に鋼鉄のシャベルを突き立てていた。
 墓荒らしの背後、少し離れたところから作業を見守るモノ、月光に照り光る翡翠の瞳はひとつの黒の猫である。
 猫は四肢を地につけ、背の筋を伸ばして座っていたが、墓荒らしを見るのに飽きたのだろう、細く長い尾をゆらりと浮かせ、少し面をさげてちろちろと、真赤な舌で前肢の爪・・・

0

あとがきがない

18/07/08 コメント:0件 あらしお 閲覧数:463

「おい待てよお前」
「おい、待てよお前」
「矢部くん振り返って、なんだよ」
「なんだよ」
「それで井川、お前さ・・・」
「お前さあ」
 そして鈴原さんは止まった。正確に言えば右手で唇を触りながら左足は貧乏ゆすりのように小刻みに動いているが、それまで激しく稽古場を動き回り大声を上げていた様子からすれば、鈴原さんは止まった。
 鈴原さんが次の台詞を発するのを待・・・

0

予想外のラスト

18/07/07 コメント:0件 リーマン一号 閲覧数:387


私は今、非常に困っている。

「今日はペンが進むなぁ」と呑気に導入パートを書き始めたのはいいが、そのままあまりにも盛り上がってしまい、気づけば導入パートがあとがきに差しかかってしまっているのだ。

あと2000文字しかないのに、まだ殺人事件すら起こっていない。

一応、ミステリー小説だというのに・・・

このままだと、タイトルの「真夏の海水浴・・・

1

隠し味

18/07/07 コメント:0件 リーマン一号 閲覧数:379


ラーメン。

中華麺とスープを主とし、焼豚やメンマ、煮卵などをトッピングした麺料理。

別名では中華そばや支那そば・南京そばなどと呼ばれるが、その歴史は古く、

今日では醤油・塩・味噌・とんこつなどスープの種類によって区分けがなされ、日本の第二の主食とも呼べるほどの人気を誇る国民食である。

そして・・・

私が初めてラーメンを食・・・

5

死体の家、家の死体――キャット・イーター事件――

18/07/06 コメント:8件 クナリ 閲覧数:744

 百瀬シレンは、女装した状態で、血まみれの猫の死体に唇を当てて開いた瞬間を、写真に撮られた。
 人気のない、地方都市の路地裏。シレンとは中学の同級生である常磐町キネリが、スマートフォンの液晶の角度を変えながら、映り具合を確認する。
 黒いブラウスに青いスカートという今日のいでたちは、シレンのお気に入りだった。上下黒のジャージ姿で、長い髪をこれも黒いキャップの中に押し込んだキネリよりも、・・・

1

あとがきが書けない

18/07/06 コメント:0件 undoodnu 閲覧数:492

 私はあとがきが苦手だ。原稿用紙を広げて机に向かって、ペンをくわえる。何も浮かばない。作品の解説をすれば良い? どうやればいいのだ。次回作への意気込み? そんなものは構想も何もまだない。登場人物達の後日談で跡を濁すか? そんな卑怯な真似はできない。困った時は、ひとっ風呂浴びてサッパリすることにしよう。
 入浴を済ませた私はサッパリした。だが、脳みそもサッパリしてしまった。やはり、何も浮かばな・・・

0

彼が微笑したあとがき

18/07/06 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:446

 僕は教室の隅でじっと本を読んでいた。最近有名になった本だった。僕の好きな作家がそれを書いた。午後の教室で講義が終わった後、こうして過ごしていることが多くなった。
 僕がそうしていると後ろから一人の男が話しかけてきた。僕は彼のことを知っていた。この学科で一番できるやつ、文学部の中で唯一大手の出版社に内定が決まったやつだ。彼は自分で小説を書いたこともあり、どこかの県の文学賞を受賞したことがある・・・

2

ご来店ありがとうございます

18/07/05 コメント:4件 紅茶愛好家 閲覧数:434

「えーと、生四つとライム酎ハイ、あとウーロン茶二つ」
「ライム酎ハイと……ウーロン茶二つですね」
 注文を取りながら若い女性店員が復唱する。飲み物を入力し終えたのを見て石丸准教授はメニューのページを繰った。背筋を伸ばし、注文を読み上げる。
「大皿特選ざんまい、中落ち、特選カルビ、牛モツセット、鳥軟骨の塩、福田屋サラダ、野菜盛り合わせ……とりあえずは、以上。で、良いかな?」
・・・

ログイン