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コメディアン

18/06/03 コメント:0件 はやかわ 閲覧数:185

 俺と圭は二人で教室の隅に座っていた。この高校の落ちこぼれでお互いに友達がいない。クラスの連中を見上げては陰口を言い合う。
「さゆりの化粧みてみろよ」と俺は言った。
「あいつ高校生にもなってまだ反抗してるよな。正直時代遅れ」
「そうそう。ああやって派手な化粧して仲間に入ろうとしてる」
「馬鹿みたいだよな」
「ほんと笑える」
 俺と圭はそんな風にクラスの目立つグル・・・

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マイコメディアン

18/06/03 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:216

 一杯飲み屋のテーブルに向かいあってのんでいた山本が、ふいにカウンタ―のほうを指さした。
「ほら、あそこに――」
 なんのことかと僕は、彼の指先をたどって、カウンターの端にすわる一人の男をみた。白いものがめだつ後頭部よりも、そのどこか寂し気な背中が男のうらぶれた心情を素直に物語っていた。
「あの人が、どうした」
「彼だよ、喜多南」
「きた、みなみ……ってあの、お笑い芸・・・

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理系男子と恋の方程式

18/06/03 コメント:2件 上村夏樹 閲覧数:285

「理央くん。恋愛研究部の活動を始めよう」 「ああ。文香よ、今日の活動内容はこれだ」  理央くんは黒板を指さした。そこには白い文字で『夏祭りデートで異性に告白するシミュレーションをしよう』と書かれている。  ここは恋愛研究部の部室。放課後、私たちは学校では教えてくれない恋愛について日々研究している。  相方の理央くんは理系科目を愛している理系男子だ。一方、私は平凡な文系女子である。 「さて、どちらが・・・

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フィクションorノンフィクション?

18/06/02 コメント:0件 新屋鉄仙 閲覧数:372

『今から数千年前、猿から人へと進化した人類はこの地球の支配者となっていた。文明を発達させた人類は生活を楽にするため、AIを開発し、身の回りの全てのことを最高の存在であるアンドロイドたちに任せるようになっていった。
 怠惰を極めた人類は体を動かすことをやめるため、エネルギー補給などの生理的な行動を全て自動化していった。いつしか人類は全ての生産的な行動をアンドロイドに任せるようになっており、エネ・・・

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笑いを取り戻せ!

18/06/02 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:303

「アノ、スイマセン……」ミネソタあたりからやってきたであろう壮年夫婦。彼らは期待に目を輝かせている。「わたしたち、聞きたいことアリマス」
 肩で風を切って歩く若者は内心うんざりしていたが、これも大阪のためだと涙を呑む。大阪生まれ大阪育ち、そして当面のところ大阪から出ていくつもりはない。彼は大阪を誰よりも愛し、万が一大阪が滅びるなんてことがあるのなら、喜んでそれに付き合うつもりだった。
・・・

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コメディって。

18/06/02 コメント:0件 泡沫 閲覧数:345

「面白かったね!」  君はそう言って笑った。僕にはただの笑顔にしか見えないのだが、その裏にある僕に対する――いや、僕に限らず周りにいるみなにもあてはまる――同情の想いを感じざるを得なかった。 「うん、また見ようね」  僕はコメディドラマが録画してあるDVDを取り出し、テレビの電源を落とした。消灯の時刻だ。  僕は今、各部屋六人が布団を敷けるだけの部屋にいる。男女ともに三人ずつの部屋割りは前か・・・

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窓枠テレビ〜あの日、路地裏スタジオから〜

18/06/02 コメント:2件 クナリ 閲覧数:364

 なぜ私が人を笑わせる仕事を生業に選んだのかと言われれば、この他に理由はない。
 あれは私が小学六年生、はなたれ坊主の頃だった。
 下町というのはどこもそうなのかもしれないが、私の住んでいた長屋には、幾筋もの裏路地が家々の間を渡っていた。
 私には三つ上の、背が高く見目もよく秀才という、大変出来のいい兄がいて、兄への引け目からか、私は裏路地だの町外れだの、そういうところを主な遊び・・・

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人生はコメディ

18/06/01 コメント:0件 みゆみゆ 閲覧数:472

 「あのね、これからはぼくが、お母さんを笑わせてあげるよ」おやつのホットケーキをもぐもぐしながら晴斗が言う。小学生になって、一度に二枚食べるようになった。「笑うとね、元気が出るんだって」
 「じゃあ、ママを元気にしてくれるの?」晴斗は「そうだよ」とうなずいてホットケーキを口に運ぶ。この時間に私の幸せが詰まっている。幼稚園で泥だんごを作っていた頃の顔を、学校での出来事を話す顔に重ねて見える成長・・・

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ある中学校での話

18/06/01 コメント:0件 たい焼き好き 閲覧数:226

『いただきます』の合図でみんなが一斉に箸を取る。最初にご飯に手をつける人もいれば、魚の骨を取る人もいる。そんなありきたりな風景の中、私、神楽舞は、重大な問題に悩まされていた。
「牛乳おかわりいる人ー…は、いないか…。よーし、じゃあ剣崎、これ全部飲め」
「えー流石に五本はきついっすよ先生!1リットルですよー!」
「あ、じゃあ俺のもよろしくー」
「ちょ、こゆびは自分で飲めよ!っ・・・

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シナイ写本 p457

18/06/01 コメント:0件 64GB 閲覧数:210

サンフランシスコ大学で教鞭を取っている私がシリアを訪れることになったのには訳があった。
ギリシャ語で書かれた最古級のパピルス写本が見つかったからだ。新しい資料が見つかったくらいでは、わざわざシリアまで来ることはないのだが、大発見の予感がある。シナイ写本やヴァチカン写本と匹敵するほどの一級品の資料だと言うのだ。
もしかするとパウロが書いた手紙の原文かもしれない。そう思うと言い知れない思・・・

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ソフィア

18/05/31 コメント:0件 路地裏 閲覧数:428

眠そうに開かれたサファイアブルーの瞳は今なおその美しさを維持している。小さな手がこちらへ伸びてきて、不慣れな様子で私の体を撫でる。酷く下手くそな撫で方だ。こんな風に撫でられるのは私の人生においてこれが2度目である。

少女は私と同じサファイアブルーの瞳をしていた。少し癖っ毛だが美しいブロンドヘアを持つその少女の名前はソフィアと言う。フランス人の父と日本人の母の元に生まれた美しい娘だ・・・

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絶対に笑ってはならない

18/05/30 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:274

 困ったことになった。貫夫は途方に暮れてしまった。
 美紀の母親が、急な病で他界した。間近に結婚式を控えていたやさきのできごとだった。美紀は、貫夫より三つ年下だったが、気丈にも、彼のまえでは涙ひとつみせなかった。三人きょうだいの長女でもあり、母の告別式の準備に、父親ともども率先して動く姿がむしろ痛々しくうつった。
 問題は、そのことではない。
 これまで、人には話したことがなかっ・・・

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ボトルレター フロム スカイ

18/05/29 コメント:0件 石蕗亮 閲覧数:422

 昔昔の御伽話 天気の良い日に雲も無いのに陰る時 空から何が降ってきても触ってはいけません。 どんな言葉が聞こえて来ても一切答えてはいけません。 もしもそれらに関わればその日は家に帰られない。 その後も一生帰られない。 帰ってきても誰の目にも見えない触れない聞こえない さみしいお化けのできあがり。 姉が行方不明になってからもうすぐ7年になる。 7年経つと失踪宣告で死んだことになる。 当時13歳だ・・・

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執着を捨てて

18/05/28 コメント:0件 石蕗亮 閲覧数:293

赤い赤い夕焼けが街中を赤に染めていた。 人も車も街路樹も、赤を纏い赤に彩られていた。 夕陽を浴びた場所は鮮やかに、影を負った場所は赤暗くに、コントラストとグラデーションで街は色彩を奏でていた。 そんな色鮮やかな街の一角にぽつりと、昏い昏い場所があった。 周囲の赤が、そこだけ滲んでいるようにぼやけていた。 そしてその場所だけは、赤というより紅かった。 駅前の人通りの多い場所でありながら、何故か其処は・・・

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プリーズプリーズイラストレーター

18/05/28 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:289

 月に一度、出版社をおどかしに行く。
「よーう、不二家で百個買ったのになんにもオマケしてもらえなかった爺さんです、こんにちは」
「佐野さん。差し入れはありがたいんですけど、不二家さんに迷惑かけないでくださいよ。編集全部でも二十人ちょっとなんですよ? うわ、ペコちゃんのほっぺ全部カスタードだ、恐ろしい」 
「けっけっけ、愉快痛快、セイ?」
「言いませんよ」
「言わなくて・・・

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俺の血をどんどん吸え

18/05/28 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:319

 耐えている。その男は、ただひたすら痒みに耐えている。夏の夕暮れ、空中に浮遊する蚊は、草刈を終えて汗ばんだ彼の体に容赦なく襲い掛かる。彼はいったいどれだけの蚊に無抵抗で刺されたのだろうか。無数の蚊が彼の血を吸うのを見ていると、見ている私までが蚊に刺されているようで体が痒く感じる。私なら目の前に蚊が飛んでいるのを見つけた瞬間、即座に駆除するだろう。しかし目の前の彼はそれをしない。なぜ黙って蚊に血を吸・・・

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浮遊する言葉たち

18/05/28 コメント:0件 小峰綾子 閲覧数:424

学校の帰りに100円ショップによってうろうろしている時だった。いつものようにスマホでラジオを聴きながら。耳にはイヤホンが入っている。

隣に立っていた同い年ぐらいの男子が私の方を見てハッとしたようで、何か言っている。イヤホンをしていたので聞こえなかったので、片耳だけ外して
「なんですか」
と聞いた。
「そのステッカー、金曜のラジオの・・・」
私のスマホに張ってい・・・

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宙 108個の風船

18/05/28 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:229

 風船の群れが用意ドンの合図で一斉に空に放され赤。黄。青。橙。緑。色の風船達が風に煽られながら空一面に広がって行く。同時に、周りからは響き渡る歓声とドヨメキ声。僕は、空中を漂う様に飛び交う風船の群れをボンヤリと眺めながら、その数を数え出した。全部で108個。それから、間が開き。「本日のイベントはこれで全て終了いたしました。」と女性のアナウンスが響き渡り僕の周ると、僕の周りにいる人達が一斉に帰り支度・・・

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アホの鳥

18/05/28 コメント:0件 井川林檎 閲覧数:208

 昔々あるところにアホの鳥がいました。

 アホでしたが食べたら旨いので、それが唯一かつ最強の自慢でした。



 ある時、

 「こんなに俺は旨いんだから、他に取り柄を伸ばそう」

 と、鳥は思いました。



 それから、ただ旨いだけだったアホの鳥の快進撃が始まりました。



 めっち・・・

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フク子さんと惑星ブランコ

18/05/28 コメント:4件 冬垣ひなた 閲覧数:359

 SNSのタイムラインはまた、校舎から飛び降り自殺した男子中学生の話題で持ち切りだ。
 いじめが原因だって? 何にも悪いことしてないのにさ、「いじめられた方にも原因が」とか「死んだら掃除する人が迷惑」とか言われて可哀想に、あたしも他人事じゃないよ。


 スマートフォンの画面から目を離すと、公園のベンチに腰かけていたフク子は、夕空を眩しそうに仰いだ。
 有り難いお天道・・・

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遠くの近く

18/05/28 コメント:0件 四島トイ 閲覧数:172

「保浦先生。テレビやってますよ」
 事務室からの声に応えず、茜色の空を見上げていた。
 夕暮れは、雲の輪郭を切り取り、質量を感じさせる白色が黄金色に縁取られている。見上げる遥か先に、遠い世界が突き抜けていく。
 不意に何かが光った。
 金星、と叫ぶ少女の声が聞こえた気がして、あの日と同じように保浦は耳を澄ませた。


 砂浜に少年少女が座っていた。その背中・・・

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つながり

18/05/28 コメント:0件 アラウンド君 閲覧数:145


生き物は、どうやってツガイとなるパートナーを探すのだろう。シロナガスクジラは、体が大きいから相手を見つけやすいかもしれないけど、ミジンコみたいに小さいやつだと大変だ。地球みたいな宇宙から見たら、すごくちっぽけな世界の中でも、たまたまか、運命か、全ての生きものたちがめぐりあい、愛を深めていき、次の世代にバトンを繋いでいっている。
そして今。
奇跡的な確率で、君と僕は出会っ・・・

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わたしを見て笑って。

18/05/28 コメント:0件 井川林檎 閲覧数:290

 その少女は美貌で、頭脳明晰で、特殊な能力を授かっていた。病人に手をかざし、あっという間に治癒することができた。どこにいっても少女は歓迎された。

 ある時、少女は不治の病に侵された。この世のものとも思えぬ奇病だった。
 血は吐くわ目は見えなくなるわ髪の毛は抜けるわ食事は喉を通らぬわで、少女はやせ衰え、病室で死を待つばかりとなった。
 
 これまで少女が手をかざせば病・・・

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浮遊する魂

18/05/28 コメント:0件 みや 閲覧数:150

肝臓の末期癌で入院している七十五歳の私の身体の状態は一週間程前から確実に悪化していて、心電図モニターやら酸素吸入やらがジャラジャラと身体に取り付けられていた。以前からお腹の廃液ドレーンが二本と大きな点滴の管を付けていたので全部で五本、まるで管人間だ、と私は私を俯瞰で眺めながら妙に可笑しくなった。

自分を自分で俯瞰で眺めるなど実際には不可能な事なのだが、今の私にはそれが出来ていた。

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多田くんは浮いている。

18/05/28 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:335

 多田くんはクラスで浮いている。
 クラスの子と話してるところを数える程しか見たことがない。話しかけてもそっけない。休み時間はずっとなにか分厚い本を読んでいる。どんな授業も引くぐらい真剣。お昼ご飯はいつもカロリーメイト。
 決して悪い人ではないけれど、多田くんは他のみんなとの間に一線を引いているし、他のみんなからも一線を引かれている。
 高校生にもなったら、少し違うからといって、・・・

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午前四時の帰り道

18/05/28 コメント:0件 野々小花 閲覧数:211

 午後六時の世界はオレンジ色に染まっている。僕はいつものように駅前のロータリーでバスを待っている。サラリーマンや制服を着た人々が駅の出口から、まるで吐き出されるようにして出て来るのが見えた。一日を終えた顔には、充実と安堵と疲労が綯い交ぜになっている。
 バスは、バイパスを降りると田園風景のなかを走る。しばらくすると突如として灰色の工場群が姿を現す。その中に吸い込まれていくようにして僕の乗った・・・

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浮いてるセンチにセンチメンタル

18/05/28 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:247

 電車の中吊り広告、ワイドショーのキャッチに一発目、今日も「有名タレントの娘夢落ち消失」の文字と声が無節操な口パクを操って世間を席巻していく。
 世知辛い世を儚む警鐘の具現、供物、なんて使い慣れない殺傷回数の微量な言葉を拾って悦に入るコメンテーターは、夢落ちに無縁なまま人生を終える気でいる。
 目を醒ますことなく眠りっぱなしの息子娘に遭遇するなんてピーナッツのチョッポリほども懸念しない・・・

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お笑い予選

18/05/28 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:266

 テレビ局内の小ホールには、予選出場者と同じくらいの人数が観客席に詰め掛けていた。予選参加者は出番待ちに緊張していた。観客席側も一言一句聞き逃すまいと緊張していた。
「これより、第二十三回、お笑い大会の予選を行います。予選に先立ち、第二十三回より昨今の放送事故を防ぐ為に関連団体の方に審査の協力をお願いしております。よろしくお願いいたします」
 司会は観客席にお辞儀をした。
「では・・・

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月凪公園奇譚

18/05/28 コメント:2件 宮下 倖 閲覧数:352

「……防犯カメ……映像……犯人の特ちょ…………不審物には充分……てください……」
 ラジオのチューニングがうまく合わない。一週間前から電波がよくないのでラジオもテレビも調子が悪いが、これはしばらく仕方ないだろう。
「……次は、月凪公園浮遊のニュースです。突如として月凪公園が浮き上がってから一週間が経ちました。各分野の研究者が調査を続けていますが未だに原因は特定できず、周辺住民の不安は続・・・

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シ二ボタル

18/05/28 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:372

 すっかり夜が更けると、小川のそこかしこで青白く光るものが揺らぐ。ゆらーん、ゆらん。蛍だった。
「ばっちゃん、きれいやね」
 私が伸ばした幼い手のひらに、蛍が一匹とまった。いつもそうだった。つかもうとしたわけではない。蛍が自らの意志で、或いは見えざる何かの力に導かれるように私のところへやってくる、そんなかんじだった。
 小さかった私は、葛で編んだ祖母の手作りの籠の中に、その蛍をそ・・・

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キラワレモノと破壊神

18/05/28 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:253

 割れ物注意、なんて注意書きは、俺に合いすぎている。むしろ、割れ物どころか『壊れ物』、さらに言えば『キラワレモノ』だが。
 向けられた銃口を軽く握っただけで、銃は粉微塵になった。
 自分の手元と俺の無表情を、男は唖然と見比べる。
 その間、俺の横を他人が素早く駆け抜けた。
「隙ありぃっ!」
「ぐほあぁッ!」
 自分より小柄な女の体当たりを、男はまともにくらった。・・・

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六畳間のクリエイター

18/05/27 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:295

 昭和の時代。私がまだ、とても幼かった頃の物語。2軒隣に住んでいたみっちゃんは、私の初めての友達だった。幼稚園に行くのも、遊ぶのも一緒。いつも私は彼女の家まで呼びに行く。 「みっちゃん、遊ぼう」  玄関の内側で待っている間、幼児の私は不思議な気持ちで、振り返って引き戸を見上げていた。  戸と天井までの空間に、それほど大きくない幾つかの絵が額に入れられ、大切そうに飾られている。絵画教室に通っていた子・・・

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浮遊者への着地許可

18/05/27 コメント:0件 光石七 閲覧数:255

 掃除を一通り終え、私はパソコンの電源を入れた。起動を待つ。顔の無いぼやけたマネキンもどき、ぐにゃぐにゃしたシャボン玉もどきが次々と現れ、自室の中を漂い始める。Wordを開く。
(テーマ【弁当】……。愛妻弁当ならぬ「愛夫弁当」の話は?)
 マネキンもどきの一つが男性の姿に変わる。まだ顔ははっきりしない。自室の一角でシャボン玉もどきが変形して台所を構成する。
(年配の男性かな。男子・・・

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私の祖父のこと

18/05/27 コメント:0件 三明治 閲覧数:252

 祖父は昭和の初め、浅草六区で奇術師として舞台に立っておりました。
 我が家のアルバムにはタキシードにシルクハットを被りポーズを決めている写真が何葉か残されております。祖母の話によると、垢抜けたスタイルで「種も仕掛けもございません」と云う口上は当時の流行語にもなったそうです。
 ある秋の日、舞台を終えた祖父は「煙草を買ってくる」と云い残し楽屋を出たまま姿を消してしまいました。祖母も周囲・・・

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歌う旅人!現在、熱唱中!

18/05/27 コメント:0件 アラウンド君 閲覧数:221

今のなんて歌ですか。
 思わず立ち止まって、彼に話しかけていた。
 ここは、世に言う無人駅だった。
各駅停車しか停まらないこの駅は、一日に停車する電車も数える程で、停車したとしても、乗り降りは、数人がほとんどだった。
私は、毎日のように、通勤に使っているが、同年代の女性が使っているのは、見たことがない。多分、こんな田舎から、都会の方まで通勤していくという女性は珍しいのだ。<・・・

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わたしはジャージが被れない

18/05/27 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:350

 すべては、あの日深夜に起きた両親の口論が始まりでした。

 わたしは二階の自身の部屋で就寝していたのですが、一階のリビングから聞こえる二人の話し声が五月蝿く、ついに覚醒してしまいました。時間が経つにつれ罵り声は激しくなっていき、わたしは猛烈に怖くなると、布団のなかで芋虫のように丸くなったのです。
 
 しばらくすると夫婦喧嘩は収まり、わたしは恐る恐る階段を降りて一階へと向・・・

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レイニージャック

18/05/27 コメント:0件 奈尚 閲覧数:308

 大丈夫だよ、晴。レイニージャックに聞けばいいんだ。
 正しい答えは、彼がきっと教えてくれる。


「さあ、選びなさい」
 夕食後のテーブルに向き合って二人。
 静かに促すと、姪はおびえた亀のように小さく縮こまった。
「……また、後で」
「いや。今ここで選ぶんだ。晴」
「じゃあ、ちょっと……洗面所に」
「後にしなさい」
 少女は困惑・・・

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陰影

18/05/27 コメント:0件 泡沫 閲覧数:150

 空を見上げれば数羽の雀が青の背景をもって電線に座っている。風は生暖かさを保ちながら、二人の間を軽やかに流れた。  君は何故に僕の左隣を歩く。  目の前に広がるのは、はっきりとした境界のない、ぼやけきった住宅地。街の騒々しさとはとど遠く、僕らはゆらゆらと歩いている。これにははっきりとした理由がないのだから、彷徨っているのと同じだろう。   風景の一部にしか過ぎない僕らにはこの道を踏みしめることすら・・・

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メール便おばちゃん浮遊する

18/05/27 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:240

奥村登代子はその時メール便配達に勤しんでいた。
一冊二十円の契約、サカキ運輸のメール便をバイクいっぱいに積み込み住宅街を駆け回る。今日は朝から日照りが強く日焼け防止のため長袖なのだがそれが余計に暑さを助長する。三丁目の南さんのポストに配達物を入れてバイクに戻り、持ってきていたペットボトルのスポーツ飲料をぐっと喉に流し込む。
「はあっ、生き返る」
額の汗を拭い空を見上げると飛行機が・・・

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神のてのひら

18/05/27 コメント:0件 待井小雨 閲覧数:294

 長く会わずにいたKという友人から、昨晩「一度会えないだろうか」と連絡があった。「見せたいものがある」とのことで、私は彼を訪ねることとなった。

 Kは都会から離れた山近くに暮らしていた。
「来てくれてありがとう」
 Kは白衣姿で私を出迎えた。その姿と研究所のような建物の佇まいに、「君はまだ、何か研究をしているのか」と尋ねた。
 ああ、とKは穏やかに頷く。通された部屋・・・

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浮遊体験ゴーグル(試作品)

18/05/26 コメント:0件 与井杏汰 閲覧数:243

「このゴーグルを頭からかぶって。私の顔が見えるか?」  タケルが頷くと、神田博士は言った。 「右上にスイッチがあるだろ? それを手前に引くと浮遊モードだ」  タケルはスイッチをスライドした。 「後は君の意思次第だ。脳波の変化で動作する。慣れるまで少し時間がかかるが、とりあえず動きたい方向をイメージして」  浮け!そう念じると、目の前の景色がふわっと変化した。 「あ、浮かびました!」 「そうか。うま・・・

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超伝導棺桶、時代を切り拓く

18/05/26 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:225

「きみみたいな狂人が得意げに面会を求めてくる」多国籍企業〈オデッセイ〉の渉外担当は固く目をつむった。こめかみを揉みながら、「いつかそんな日がくるんじゃないかってずっとビビってた」
「すると、なんですか」と対面する年若い男。彼はあくまで陽気だった。「ぼくがあなたの悪夢を実現した第一号ってわけですね?」
「その通りだ。わかったらとっとと地獄へ失せろ」
「あなたに会うまで苦労したんです・・・

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浮遊

18/05/26 コメント:0件 加藤 小判 閲覧数:197

 ”5月24日 木曜日”

 僕は、多重人格者だ。
 正確に言うと、僕は多重人格者なのかもしれない。それ以外はどこにでもいる高校3年生。部活には入っていないが、3年生ということもあり受験勉強に勤しんでいる。友達はいない。だが、僕が通う高校は県内きっての進学校ということもあり、友達を作らない人は多くはないが一定数いる。おかげで僕が教室内で特別浮くということは少ない。
 そんな・・・

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踏み出す一歩

18/05/26 コメント:0件 功刀攸 閲覧数:177

 ある日のことでした。突然ぐらりと揺れる視線の先に、ある男性の泣きそうな顔が見えたのです。
 母と私。よくある母子家庭で、父の顔は知りません。きっと父も私のことを知らないでしょう。何せ、父と母の関係は一夜限りのもの。それ以降、母は父と会ったことも連絡を取ったこともないと言っていたし、私は父の連絡先を知りません。母は父の連絡先を知っているようでしたが、私はどうやら父にとって望まれない存在という・・・

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死体の真似事

18/05/26 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:205

「やっぱりここにいたか」
 放課後の誰もいないプールで、紗夜は水面に仰向けになってプカプカ浮いていた。制服も靴も着用したままだった。濡れたワイシャツが下着を透かしていて、俺は咄嗟に目を逸らした。
「クラゲってどんな気持ちかなぁと思って」
浮いたまま紗夜は言う。
「違うな。水死体とはどんな気持ちかなぁ、だろう」
「慎太郎はなんでもお見通し……なのかな?」
 ・・・

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なにかが空に浮いている

18/05/26 コメント:1件 カンブリア 閲覧数:185

 最初に気がついたのは誰だったろうか。
 もしかしたら、すべすべの真っ赤な風船をはなしてしまった子供が、ゆっくりと真っ青な空のなかの赤いぽつんに変わっていく友達を見送っていて気がついたのかもしれないし、
 満員電車の中で身動きが取れず、空を見上げることしかできないサラリーマンが、初めは目の疲れか、飛蚊症かと思って、目を凝らしてみると驚いたのかもしれない。
 いやいや、考えてみれば・・・

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ツイスミ不動産 物件4:筏(いかだ)ホーム

18/05/26 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:162

 目に青葉 山ほととぎす 初鰹
 桜花は散り、はや木々の緑が目を刺す初夏。そんな折に、くたびれた薄手コートを脇に挟み、初老カップルがツイスミ不動産に入って来た。
 営業責任者の笠鳥凛子(かさとりりんこ)課長は一見で、山あり谷ありの人生を共に歩み来て、その終幕にやすらぎの庵を探し求めて訪ねて来たと感じた。なぜなら婦人の手にはツイスミ不動産のチラシが。そしてそこに書かれてある文句が…。

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記録が伸びない私

18/05/26 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:256

記録が伸びなくなった。今まで練習を重ねれば、自然と記録が付いてきたのに。やっぱり6メートルの壁は相当大きい。こんな記憶じゃ全国で活躍できるわけない。
「裕子は幅跳びをするために生まれきたのかもね!」
私は中学で陸上を始めたのにも関わらず、グングンと成績を伸ばしていった。顧問からも驚かれるほどの成績と言われるほどだった。その期待は私の活力へと変わり更なる成績向上へと変わっていく。友人も親・・・

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浮遊する物体

18/05/26 コメント:0件 ちや 閲覧数:202

 しばらく、目の前をゆらゆらと振り子のように揺れていた白い物体を眺めていた。
揺れは次第に速度を落としていき、いつしか静止する。
そして若葉を通りすぎてきたからっとした爽やかな風が抜けていくと、再びそれは舞い始める。右へ左へ、時にはこちら側にあちら側にと言った風に。

 しばらく眺めていると、自然と首が曲がるし、目が疲れてきて瞬きを繰り返す。
それでも、揺れるそれは・・・

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浮遊する恋

18/05/25 コメント:0件 甘宮るい 閲覧数:349

 先輩のものだった、2つ上の彼女が誰のものでもなくなった。
 恋をしたのは春のことだった。随分と前の、入学式の日だった。一目ぼれに近かったけれど、一目ぼれではなかった。
 彼女は移り気な人だった。不安定で、美人局な人だと知った。
 街に薄暮の迫る頃、駅前でずっと待っていた彼女から「予定が入った」と連絡がきた。何度目かのことだったから、何とも思わないはずだった。先輩と別れた彼女にど・・・

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