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覚悟していてね

18/07/28 コメント:0件 雨のかえる 閲覧数:201

「わぁ、なんだこれ!」

ウサギ小屋の前のポプラの木の下で、リコーダーの練習をしていた私の耳に、男の子の叫び声が聞こえた。
顔を上げると、ウサギ小屋の前で何人かが箒を持って騒いでいる。私が近づくと「あれあれ」とウサギがいるスノコの下を指差した。その物体は、スノコから落ちてしまったのだろう。糞や野菜クズに紛れて動かないただの肉片になったウサギの赤ちゃんだった。生まれて間もない、まだ・・・

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俺の家には、俺の合格を喜んでくれる人がいません。

18/07/27 コメント:4件 クナリ 閲覧数:280

 霜の降りた二月五日。
 飯田コウキは、二年間通っていた塾に、中学入試の結果を伝えに来ていた。
「こんちは」
 カウンターの前で、無愛想にコウキが言った。
 ちょうど、数学を担当していた土谷講師と、坂井という事務担当者がそこに居合わせた。
「どうだった?」
 土谷が聞いた。この二人は特にコウキとは打ち解けており、あまり社交的ではないコウキも比較的笑顔を見せやすい・・・

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埼玉のあの子に

18/07/27 コメント:0件 ジェームズボンバークライシス 閲覧数:90

埼玉のあの子に

SNSで知った1人の少女、僕は、無料通話アプリで1回だけ通話しただけだ。
だけど、その日からずっと彼女に恋をしている。

そういえば僕は彼女といつか埼玉で会う約束をしたな、覚えているだろうか。

彼女が僕にツイッターのダイレクトメッセージで送ってくれたそのSNOWで盛った顔、それが現実とはかけ離れてたとしても、少なくとも彼女の声は本物だ、・・・

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図書室の彼女

18/07/27 コメント:0件 夢野そら 閲覧数:201

放課後になったらすぐ、ぼくは図書室へ向かう。並ぶ本棚に沿う窓際には、机と椅子がカウンター席のように並んでいて、そのひと席がぼくのお気に入りの場所だ。

ある日、いつも通り目についた本を手にとって椅子に座ったとき、普段と違う感じがしたんだ。不思議に思って周りを見ると、机のずっと奥が、空いていなかった。その子はとっても落ち着いた印象で、こんなこと言っちゃあダメなのかもしれないけれど、古風な・・・

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高原の扇風機と音楽家

18/07/26 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:275

 高原の別荘地には真夏にもかかわらず涼しい風が吹いていた。風は山の奥から樹々の間を通って濾過された水のように汚れのない空気だけを運んでいた。
 別荘地のなかでも賑わいのある通りから離れた場所に一軒のログハウス調の家があった。ずいぶん前に建てられたにもかかわらず、よく手入れされていて掃除も行き届いている。
 毎年、夏になると持ち主のピアニストがやってきた。クラシック音楽に詳しい者なら誰も・・・

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一輪の教え

18/07/25 コメント:0件 とむなお 閲覧数:139

 ある夏の終り――

 巨大な台風が上陸し、僕が住んでる街も洪水に襲われた。
 普通のサラリーマンで、独身の僕が住んでいる街の近くの川も決壊し、大量の水が押し寄せた。

 この地域の、ほとんどの家屋は浸水被害や倒壊被害にあった。
 中でも僕の自宅と隣の廃屋は、最も低い地域に在ったため、倒壊はしなかったが完全に床上浸水した。

 特に僕の寝室は、最も低・・・

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時空を超えた採集家

18/07/25 コメント:2件 55 閲覧数:156

 枯れ色の床を軋ませた三歩先、立てられた焼き物の皿に女性が描かれていた。アンティークショップの入り口付近に押し出されたそれだけが、独特の香りを放っていた。
 店内に敷き詰めるように並べられた洋風の陶磁器たちは、当時の豪奢な生活を思わせる黄金の縁取りが施され、優雅な笑みで互いの美しさを褒め合っている。色ガラスのモザイクに橙色が灯るステンドグラスのランプが、彼らの舞踏会をセピアに染めている真横を・・・

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forget-me-not

18/07/24 コメント:0件 奏鳴曲 閲覧数:172

「ほしいもの?時計かな」
 聞かれて、私はできるだけふわりと答えた。
「時計って、腕時計?」
「ううん、掛け時計」
 へえ、と彼女が目を軽く見開いた。確かに、こういう時に掛け時計を欲しがる人はあまりいないだろうな、と思う。
「なんかね、うちの古い時計が壊れちゃったの。部品が一個取れちゃったみたいで、振るとカラカラ鳴るんだ」
 午後の鮮烈な光が、彼女の顔を白く縁取・・・

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桃の気持ち

18/07/24 コメント:0件 くまなか 閲覧数:142

 明海は海辺の産まれだけに、山で実るものが余計に贅沢品だと思える。つい三年前に山村に嫁いだ親友からの中元は、桃だった。
開いて直ぐに「おお」甘くてうぶな、バラ科の実の香り。贈答と呼ぶには質素な、運送会社のダンボール箱へ入れられ、新聞でぐるぐるに縛ってある。
「本当になったんだ」彼女が嫁いだ翌年に、この果物が好きすぎて庭に苗を植えたと年賀状に書いて寄越したものだろう。「ええっと、桃栗三年・・・

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ツイテいない日

18/07/24 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:158

ツイテいないと言う日はあった。確かにそう日はあった。僕が今までに生きて来た中で、そう言う日は幾度となくはあったような気がする。そして、そ言うことが起きる時は大抵は予兆のような事はなく、例えあったとしてもそれは極めて小さいな出来事の様な物で僕が特に意識をしていなければ気が付かない様な細やかな事なのであろうと思う。多分そうであろう。そ言う事で間違いは無いと思う。ただ今回は違っていた。と言うのは、初め・・・

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もう言い訳はしない

18/07/23 コメント:0件 木野 道々草 閲覧数:179

 娘のバレエのレッスンが終わる頃、僕は読んでいた海外小説の本編を読み終え、訳者あとがきを読んでいた。娘はまだ五歳なので一人でレッスンに通わせるわけにはいかず、土曜日の午後はいつもバレエスタジオの下の階の喫茶店に入り、コーヒーを二つ注文して本を読みながら待機した。

 作品の解説が主な内容のそのあとがきは数ページ足らずで、すぐに読み終えた。次のページには何もないはずだが一応めくると、訳者・・・

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深層

18/07/23 コメント:0件 飛鳥かおり 閲覧数:266

 デビュー時から追い続けている作家がいる。彼女の著書はどれも報われない主人公が苦境を生き抜く話であり、ラストもハッピーエンドとはほど遠いのだが、返ってそれが現実味を帯びている。俺は主人公に共感し、時には笑い、時には涙を流した。彼女の一年ぶりの最新作が刊行されるということで、俺は発売日に本屋に走った。
 平積みの一番上の一冊を手にとり、パラパラとめくる。いつものように細かい章立て。後ろの方まで・・・

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最後の言葉にできなくて

18/07/23 コメント:0件 冬垣ひなた 閲覧数:171

「無事に創刊から100号を迎えたものの、社内報はすでに役目を終えていると思う。上層部の中には廃刊してはという声もあってね」
 広報室勤務の美里は、上司からの打診にすぐには答えられなかった。
 老舗の食品会社に勤めて10数年。ずっと社内報を手掛けていただけに、美里はどの社員よりも抜きん出て会社の内部事情に詳しい。業績悪化の波が本格化する前に、経費の削減が課題だということは、言われるまでも・・・

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偽りのガラスを割れ!

18/07/23 コメント:3件 霜月秋介 閲覧数:163

「ん、今日は月曜日だな。ちょっとコンビニ行って少年ジャンペ読んでくる」
 それが、彼が妻に、いや、この世に言い遺した最期の言葉だった。【吾輩の蛸なのか】や【膝枕】など数々の名作を世に送り出した天才小説家、夏目漱右。彼は昨夜コンビニ店の窓際で雑誌を立ち読みしている最中、店内に突然ガラスを突き破って突っ込んできた軽トラックに撥ねられて死亡した。愛する妻と、執筆中の小説【名案】を自宅に遺して…。<・・・

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兄の一計

18/07/23 コメント:1件 宮下 倖 閲覧数:84

 平沢の妹が訪ねてきたのは、あいつの四十九日が過ぎていくらか経ったころだった。
 大きな茶封筒を大事そうに胸に抱き、背筋を伸ばして俺の前に座っている。意志の強そうな澄んだ瞳に力が戻っているのを見て、俺はひどく安堵した。
「金井さん、兄の書斎からたいへんなものを見つけたんです。それを見ていただきたくて」
 そう言ってもどかしそうに封筒の中に手を入れる彼女に俺は苦笑した。
「香・・・

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あとがきに込めたメッセージ

18/07/23 コメント:0件 みゆみゆ 閲覧数:80

 彼女はあとがきを読むのが好きだった。小説の余韻に浸りながら、その作者さんとの会話を楽しむようで好きだと話していた。読者カードに、小説の内容よりあとがきについて書いていることもしばしばあった。そうやって小説家との会話を弾ませる彼女の様子を傍らで見ていられることが、あの頃の僕にとって最大の幸福だった。
 読む本のほとんどを図書館で借りてくる僕と違い、彼女は新刊の単行本を一年に何冊も買うことがで・・・

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花が好きな人でした

18/07/23 コメント:0件 みや 閲覧数:55

明るくて花が好きな人でした。

今年の四月に末期癌で他界した母はそんな人でした。明るくてお喋りが大好きで、花や植木を育てるのが好きでそしてとても上手でした。玄関先に並んでいる沢山の花や植木に水をあげながら、通りすがりの家の近くの友人や顔見知りの人、顔見知りでもなんでもない人とも気さくにお喋りが出来る、そんな明るい人でした。

「明るくて楽しい人だった」
「いつもお喋り・・・

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あとがきの後の準備

18/07/23 コメント:1件 野々小花 閲覧数:98

 本を読むのが子供の頃から好きだった。少女小説に始まり、SF、ミステリー、純文学、時代小説、ノンフィクション。今ではジャンルは一切問わず、だから私の本の守備範囲は超一流の野球選手並みに広い。ただひたすら無節操に読み漁っている。本編を読み終わった後、余韻に浸ることができればそれは良い本といえるだろう。そしてその余韻が覚める頃、最後のお楽しみが待っている。あとがきである。
 あとがきというものは・・・

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遺書書き

18/07/23 コメント:0件 志水孝敏 閲覧数:105

 死んだ人のいいところは、たくさん部屋に集まっていても、暑苦しくないというところだ。
 いったいいま何人くらいいるのだろう。
 帰ってくると、挨拶もしてくれるし、生きている人間と違って、とても優しい人が多い。
 何か作ってくれようとしたり、あるいは踊りをおどっていたり、ときにはまったく違う姿に変わっていたりして、まるで飽きない。
 自分の、狭苦しいアパートには、ろくに風も吹・・・

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あとがき前の僕ら

18/07/23 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:418

 紗良の病室に本のめくれる音が二つする。
 擦れたページ。紗良と淳二は競うように図書館の帯出カードを埋めている。
 本を読めない俺は、ギターを擦れさせた。通せないアンプは紗良にも淳二にも言えない俺の心と同じでどっかに置いてけぼり。きっと積もった埃を指でこそいだ時に、俺はせめて言葉を探せるだろう。
「淳くん、今月それで何冊目?」
「八冊」
「やっりー。私十冊目」
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ストーカー彼女

18/07/23 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:70

 彼女の朝は早い。だから、僕の朝はもっと早い。

 午前六時三十九分
 高層マンション上層階の廊下に到着。望遠レンズの付いた一眼レフを構えると、マンションから北西方向距離百五十メーター先にあるアパートのカーテンの閉まった窓を狙う。

 午前六時四十分
 イヤホーンに鳴り響く目覚まし時計の音。ベッドの軋む音。一歩、二歩、三歩、四歩、五歩。カーテンが勢いよく開く音と・・・

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翠川蘭子ファンブログ

18/07/23 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:140

 翠川蘭子は、あとがきが長いことで有名な作家だった。
 文庫本で平気で五ページぐらいはあとがきだったりする。しかも、内容が本編とは関係ない、本人の近状報告なのだ。そして、それがやたらに面白い。作品は幻想的なファンタジーなのだが、そこからは連想できない笑えるあとがきだった。
 ブログでもやれ、と言った声もあったが、あとがきを楽しみにしているファンも一定数いて、翠川蘭子のあとがきは継続され・・・

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コエテル

18/07/23 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:57

 コエテルはこの地上で、最大のいきものだった。姿かたちは人間のようだが、その大きさたるや、まさに山のようだった。
 じじつ、あたりにすむおおくのいきものたちは、かれを山か丘ぐらいにおもって、なにもしらずにそのうえを、歩いてゆききするぐらいだった。
 コエテルが子供のころは、それはよくたべた。草も木の葉も樹木も、クマも馬も猪も、ときには象を、海にはいってはクジラを、まるごとわしづかみにし・・・

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あとがき

18/07/23 コメント:0件 雨のかえる 閲覧数:100

『人生150年・渋谷タケオの生涯』をお読みくださり、ありがとうございます。

きっと多くの方が、このあとがきまで行き着かず、途中で「とんだイカサマだ」と本を投げ捨てているのではないか、と十分承知しています。もしくはこのあとがきから読まれている読者の方もいるでしょうか。
それならば都合が良い、どうか私の話を今一度お聞き願いたい。


私は1970年7月10日、東京・・・

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片想いビジネス

18/07/23 コメント:0件 文月めぐ 閲覧数:306

「時間の感じ方って、人それぞれなの」
 窪田さんの言葉に俺は力強くうなずく。
「自分の好きな話をしているときは短く感じるけど、つまらない話を聞いているときは長く感じる。ここで必要になるのが、大事なことだけシンプルに伝える技術よ」
 一分で話せ、と窪田さんはいつも言っている。一分間で相手に刺さる伝え方ができれば、ビジネスにおいてかなり優位になる、と。
 俺はその言葉を信じて、・・・

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石橋効果

18/07/23 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:84

 古典的な手法、吊り橋効果。吊り橋でのドキドキを恋のドキドキと錯覚させて、恋を成就させようというものだ。
 彼は片想いの彼女に、この古典的な手を講じた。理由は彼女の性質性格に依るところも大きい。彼女は高所恐怖症で、且つ元々が臆病だったのだ。
 吊り橋効果の「吊り橋」は例に過ぎないので、恐怖のドキドキがあれば何でも良かったのだが、彼は正攻法として、本物の吊り橋へと彼女を誘導した。そして告・・・

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妖怪カタオモイ

18/07/23 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:86

 右肩が重い。
 肩こりの経験がなかったその若い女性は、当初肩こりを疑ったのだが、どうにも症状が違う。そして日々症状は酷くなり、辛さに耐えられなくなっていった。
 困ったことに、病院をはしごしても原因が掴めない。外科的内科的に異常はないというのだ。心療内科にも頼ってみた。身体は何ともないのに感じるということはあるからだ。しかしこれも空振り。本格的に謎で、そのことが更に彼女を苦しめた。<・・・

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後カノ

18/07/23 コメント:0件 戸松有葉 閲覧数:51

 日本でもストーカーの存在が認知され、警察も対処するようになった……という事実はない。どんなに法を整備しようが、実際に扱うのが現場の警官である以上、警官が変わらなければ旧来と同様である。もし目立つストーカー事件が起きてマスコミが騒ぎ立てたら、ほとぼりが冷めるまで頑張っているふりをするくらいだ。ふりであり、理解していないわけなので、たとえ事件性がないものでも事件に発展させてしまうくらい無能でもある。・・・

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片想い

18/07/23 コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:61

 僕が通う高校で、同じクラスにいるミヅキは、教室の中でほぼ真ん中あたりに座っている。でも、その存在感で言うと、ずいぶん端っこの方にいるって感じの、ミヅキはそんなおとなしい女子だった。
 ちょっと地味で目立たない、何となく控えめな、そんなところがとてもいい。だから僕の中でミヅキは間違いなく、ど真ん中に居る存在だった。
 一方の僕はと言うと、存在感はミヅキとほぼ同じで、やっぱり端っこの方だ・・・

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【 ガチャ★ガチャ 】

18/07/23 コメント:2件 泡沫恋歌 閲覧数:90

昨日、アタシ15歳になった。
誕生日プレゼントに自分専用のスマホを買ってもらった。
うちの教育方針で15歳になるまでスマホ厳禁、そのせいでラインもできないし、友だちと長電話もできない。
クラスでスマホ持ってないのはアタシだけ……可哀想な子扱いだった。
昨夜はスマホデビューが嬉しくて、ライン登録送ったり、無料電話したり、あれこれやってたら朝になっちゃった。
ふぁ ・・・

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アンブレラくんとおひさま

18/07/23 コメント:2件 こぐまじゅんこ 閲覧数:137

 アンブレラくんは、おひさまに恋しています。
 でも、アンブレラくんには、雨つぶちゃんばかりがくっついてきてこまっています。
 今日も、朝から雨つぶちゃんにひっつかれていました。
 アンブレラくんは、雨つぶちゃんにいいます。
「ごめんなさい。ぼくにはほかにすきな子がいるんです。」
 雨つぶちゃんは、
「あら、どんな子? わたしよりもかわいいの?」
ときいて・・・

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想葬記念日

18/07/23 コメント:0件 蒼樹里緒 閲覧数:109

 学生の頃、校舎裏でいじめられていた生徒を助けた彼に、私は一目惚れした。いじめっ子たちに暴力を仕掛けられても、彼は難なくいなし、あっという間に退散させた。
 彼に泣きながら感謝するいじめられっ子に、私も共感した。何もできなかった自分を恥じながら。
 彼が同学年の別学級にいる生徒なのだと、翌日に知った。昼休み、勇気を出して声をかけようとしたけれど。廊下を歩く彼の隣には、一人の可愛い女子が・・・

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あとがきだけの物語

18/07/22 コメント:0件 いっき 閲覧数:103

「あとがきのない小説を読んで、あとがきを書いていってみない?」
 突如、由麻(ゆま)がそんなことを言った。
「えっ、それって、意味あるの?」
 その突拍子もない提案に、僕は眉をひそめた。
 だって、あとがきなんて、小説を書いたその人が読者へのメッセージを込めて書くものであって、読者自身が書くようなものではない。そんなことをしたところで、何の意味もなさそうなことだけれど……。・・・

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P.S.アイラブユー

18/07/22 コメント:2件 そらの珊瑚 閲覧数:123

『あとがき』という言葉を前にして、心の中にふいに浮上してきた思い出がある。

 小さい頃一緒に暮らしていた叔母のマリモさんのことだった。
 マリモさんは父の妹で、母屋につながる離れの和室で暮らしていた。本の好きな人だった。畳敷きの部屋には本がぎっしりと詰まった本棚。本は床の間も占領し、そのわずかな隙間に白い花瓶の中で立ち枯れたオレンジ色のほおずきが顔を出している。それでもはみだし・・・

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エッセイ あとがき紹介

18/07/22 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:133

 あとがきっていうと、本の後ろに載っている短い文章で、作者が制作秘話を書いたり、裏話を書いたりっていうのがよくあるパターンですよね。
 そのパターンを裏切ったというか、心に残ったあとがきを少し紹介したいと思います。

 まずはスレイヤーズシリーズ。富士見ファンタジア文庫のライトノベルで少し前にヒットした作品ですが、アニメにもなっているので知っている方も多いのではないかと思います。・・・

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一冊の本だとしたら

18/07/22 コメント:0件 霜月ミツカ 閲覧数:224

 彼との出会いは、わたしが二十四歳のとき。彼はわたしよりも二十歳も年上で奥さんと子どもが居た。どこが好きかと訊かれたら多分、性格と答えていたけれど、実際は笑い皺とか、目の下のシミとか、そういうところが好きだった。優しくしてくれるひとはたくさんいるけれど、彼の目尻に刻まれた皺の深さを見て、このひとはいままで酸いも甘いも噛み分けて生きてきたのだと想像するのが好きだったし、彼がいままでどんな風に笑ってき・・・

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祖父の手記

18/07/22 コメント:0件 村升 青 閲覧数:86

病弱な僕はある夏、父の育った田舎へ行く事になった。
空気が綺麗と言うが、砂や木端が直に風に乗って来る環境が良い筈もなく、僕は到着してすぐに寝込んでしまった。
数日後回復すると僕は心配する大人の顔も見飽きていたので、大して興味も無い近くの山へ足を向けた。
今は子供は殆どいないが、父も祖父も昔この山で友達と遊んだらしい。
蝉の声の中、汗をかきつつ木影を進むと水の音が聞こえてきた・・・

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『南野モリコ 大全集』あとがき

18/07/22 コメント:0件 南野モリコ 閲覧数:167

この優れた短編小説を残したのは、南野モリコというペンネームでネットで小説を発表していた21世紀の小説家である。

19××年×月×日、静岡県の農村部に育ち、過疎であったことから小学校時代から片道30分かけて歩いて通学していた(1)。近隣に同年代の子供がおらず、学校が終わった後に一人で過ごす時間がたっぷりあったことが彼女を創作という遊びに導いたのは言うまでもない。「創作に必要なものは孤独・・・

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おじさんの本と猫のあとがき

18/07/22 コメント:2件 待井小雨 閲覧数:428

 猫のぼくがこの本のあとがきを書いているのは、おじさんが代わりに書いていいって言ったからです。ペンを持つのが辛いので、代わりに書いてほしいそうです。
「おそらくこれが最後の本になるでしょう」というのが、おじさんの伝えたいこと。もうすぐおじさんは眠るよりももっと深いところで眠って、起きてこられなくなるそうです。おじさんは知っていました。ぼくも知っていました。おじさんは近いうち、誰も会いに行けな・・・

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身勝手なあとがき

18/07/20 コメント:2件 トイトイ 閲覧数:165

 町田かよこ、三十歳。独身。交際している異性はなし。趣味はネット小説のあとがきを作者になりきって書くこと。
――さあ、今日もやりますか。
 仕事を終えて帰宅したかよこはストッキングを脱ぎ捨てると、パソコンの電源を入れた。パソコンが立ちあがるまでの間にスーツからジャージに着替え、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。いつもの準備が整うと、お気に入りから小説投稿サイトにアクセスし、今日アップされた・・・

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木曜日の紫苑

18/07/20 コメント:0件 白汐鈴 閲覧数:155

 最終ページに栞をはさみ、本を閉じた。
 気持ちは本の世界をさまよったままで、なんとなしにまたそのページを開き、続きを捲る。あるのは奥付ばかりで、出版年が二十一年前だったことに胸のもやもやがわずかに軽くなった。僕の生まれた年だ。
 ページを繰り、ラスト三ページを読み返す。もやもやが再燃した。
「なに? その本、面白くなかったの?」
 そう言った友人が我がもの顔で占拠するシン・・・

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14才の夏

18/07/19 コメント:0件 三明治 閲覧数:233

 私は一冊の詩集を持っている。
年々、増殖してきた蔵書の大半は電子化してしまったが、この本は、その災難を逃れた数冊のうちの一冊だ。無人島に持っていく一冊ではないのだが、棺桶に入れてもらいたい本のリストには入っている。
 私の父はブン屋(新聞記者)であった。とても熱心な社会部記者であり、その仕事ぶりのせいか、人の話題に上るときには「あの」が名前の頭に付いた。「出世なんかしなくてもいいんだ・・・

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隠されたメッセージ

18/07/19 コメント:0件 若早称平 閲覧数:245

 作家には大きくわけて二種類の人間がいる。面倒臭い人と、そうでない人だ。平手先生は僕が担当している作家の中でぶっちぎりの前者だった。
 もちろん作品は素晴らしい。気さくな人柄で人当たりもいい。原稿が遅れることもほとんどない。ただ一つ、どうにもこうにも連絡が取れないのだ。今どき携帯やパソコンを持っていない上、脱稿すると所持している山奥の別荘へ籠ってしまうという悪癖まで持っている。そういうわけで・・・

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あとがき殺人事件

18/07/19 コメント:0件 ケン 閲覧数:209

   ■作者あとがき

 作家の山田三郎です。この小説『終極』が読者の元に届いている頃、私はもうの世にはいません。このあとがきを書いた後に自殺します。つまりこのあとがきは遺書です。
 私は10年前に妻と出会い結婚した。妻は私より20も若く美しかった。今でも彼女がなぜ、私のようなオヤジの、しかも売れない小説家を夫に選んだのかと不思議に思う。妻との時間は私の幸せそのものだった。しかし・・・

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猿の詩

18/07/18 コメント:0件 秘まんぢ 閲覧数:247

【はじめに】
 2000頁に及ぶ本書は、作者の星野隕石以下、、感謝しても感謝。真理子に捧げます。
【第七章・大爆発】
 あの人は 猿の惑星 パピプペポ。
【終章】
 がないのである。
【あとがき】
 NASAから連絡がきておどろいた。自著「猿の詩」が「地球からの声」キャンペーンの一等賞になり、信号化されて宇宙へ発信されるというのだ。そして2年後、再びNAS・・・

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七不思議の後日談

18/07/17 コメント:0件 すんみこ 閲覧数:194

学校の七不思議の内容は、大抵どこの学校も似通っている。トイレの花子さん、理科室の人体模型、音楽室のベートーヴェン、増える階段、体育館裏の合わせ鏡、誰もいない放送室……などだ。そして最後の七番目は、存在しないことが多い。
だが、私が通っていた小学校には、七番目の七不思議が存在していた。
最後の七不思議が語られる場所は、プールだ。学校の大時計が四時四十四分を指し示す夕まぐれのころ、プールサ・・・

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作家先生のあとがき

18/07/17 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:182

 この小説のあとがきを書くにあたって僕が最初に思ったことは、ようやく解放されるということでした。
 二年六カ月の間、この小説を書くためにすべてを犠牲にしてきたと言えば大げさに聞こえるかもしれません。
 多くの方には理解していただけないのかもしれませんが、こと創作に携わるような方なら多少なりともこの感覚を理解していただけると思います。
 朝は起きて夜は寝るまで、そして夢の中でさえ、・・・

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岬のふたりと散弾銃

18/07/16 コメント:0件 mokugyo 閲覧数:168

「この世に言葉があるからこそ、人は不幸になる」

こう言うのだ、佐々木は。その視線の先には広大な海が広がっている。しかし、佐々木の目には海の青さもむなしい色にしか見えないのだろう。

狂いそうになる程の夏の暑さとは裏腹に佐々木の表情はきわめて冷静である。それはもう憎らしいほどに冷たい。仮に5秒後に彼女と吉田が立っている岬が崩れてふたり揃って仲良く落下しても、佐々木は表情を変・・・

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春を待ってる

18/07/16 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:112

 *

 僕が生まれたのは、三月のとても寒い日だった。その日、東京は大寒波で大雪に見舞われた。人々は口々に、
「今年に入って何度目の積雪かしら」
「地球がおかしくなってるんだ」
 とぼやいていたけれど、僕はとても寒さに強いので気にならなかった。
 この時、まだ目は見えていなかった。僕は元から足がない。でもそれで不自由なことは何もない。手は生まれてから3日目にで・・・

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ドア

18/07/16 コメント:1件 奇都 つき 閲覧数:124

 友人が一人も受講していない授業では、特に席も決めていなくて、適当に座っていた。もっとも、決まってないとはいえ、あまり知らない人が得意ではない私はいつも端っこの席を取るようにしていた。隣の人との間隔が二席くらい離れていると尚良いと思う。丁度この講義で使う教室は直前まで授業が入っていないので、私は前の授業が終わるよりも早い時間に教室に入る。だからいつも一番乗りだ。
 しかし、ドアを開けると先客・・・

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