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暗い夜

18/09/15 コメント:2件 hayakawa 閲覧数:90

 大学院を神経衰弱で中退した。あの頃の俺はどうかしていた。俺は将来作曲家を目指すという理由で就職もせず、今の塾のアルバイトを始めた。
 生徒はとにかく褒めた。高学歴だった過去の俺と同じように上を目指してほしかった。
「この問題わかります?」という反抗的な生徒のメタファー。それは反抗期を繰り返してきた昔の俺と似ていた。
「因数分解はこうやって解くんだよ」
 俺は一から生徒に教・・・

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父からの手紙

18/09/14 コメント:1件 笹岡 拓也 閲覧数:158

結婚式を明日に控えた私のもとに一通の手紙が届く。その手紙の差出人は父からだった。普段堅物で言葉数も少ない父からの手紙に私は胸を踊らせ、バタバタとしている忙しい中、手を止めて手紙を開く。

アイスランドに壊れた
劇を隠してみる。
理由がゴマ、餅と罰。
無地布、酒はよせ。
備えず葱、フグ、蛇で
ほぼお披露目だぞ。

私はこの手紙を感動するような言葉・・・

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秘密

18/09/13 コメント:1件 新世界 閲覧数:72

 梅雨入りしたばかりの空は暗く、今にも雨が降り出しそうだった。じっとりと重い、湿った空気が体中にまとわりつき、息苦しさを感じる。
 ――故 里村 沙也子儀 葬儀式場。
 自分の母親の名が書かれた看板を眺めるのは妙な気分だった。居なくなったという実感はまだ無いが、言葉で表現するにはあまりに纏まりのない気持ちで足元はぐらぐらと揺れていた。受付に並ぶ参列者には知らない顔の方が多く、学生の私は・・・

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海風の部屋

18/09/11 コメント:1件 白汐鈴 閲覧数:132

 レースのカーテンが揺れていた。
 もとは真っ白だったその布は、柔らかく風を纏いゆらゆらと乳白色の陰影を浮かべ、くすんだ色が経た時の長さを感じさせた。
 窓を開けたのはいつぶりだろう。
 閉ざされた扉の向こうに、この部屋はずっとあり続けていた。

 姉は美しい人だった。
 真白なカーテンの脇に立ち、ゆるりと吹き込んだ風がその髪をかきあげ、陽を透かし、ふと彼女が私・・・

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心の伏字

18/09/10 コメント:2件 土佐 千里 閲覧数:93

 今日、久しぶりに昔の恋人の達也を見かけた。私は結婚してしまっているけど達也はまだ独身。
 わざと私に見えるような位置を歩いていた。まだ、恋人はいないみたいだけど、わざと女子社員と仲よさそうな笑顔を浮かべていた。彼はきっと、すでに結婚して子供もいる私にみえるように、こんな笑顔をしたんだと思う。俺だって楽しくやっているよって。わざと視界に入る距離で、そう伝えていることがわかった。でもあなたと長・・・

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それは九月の朝

18/09/09 コメント:4件 みゆみゆ 閲覧数:165

 ノートを開くと伏字の黒丸があちこち散りばめられた文章が現れる。それが私となみちゃんの交換日記の特徴。教師や生徒の名前といった固有名詞は勿論、感情を表す動詞や時には形容詞さえ伏字。仲良しの二人にしか分からないと言えば聞こえは良いが、お互いに分かっていない可能性もある。
 伏字だらけのそのノートがクラスメートにばれないよう、私たちはこっそりと渡し合っている。幸い二学期が始まった今でも一度も見咎・・・

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十年越しのクロスワードパズル

18/09/08 コメント:0件 本宮晃樹 閲覧数:91

 わたしにはクロスワードパズルに特別な思い入れがある。
 時間の空いたとき――白状すればたいていの休日が該当するわけだが――はなんでもいいから雑誌を買ってきて、記事そっちのけで目的のしろものを一日じゅう解いていたりする。
 いまもなじみの喫茶店にコーヒー一杯で陣取り、益体もないパズルに頭を悩ませている。店員の目が鋭さを増すなか、わたしの集中力は研ぎ澄まされていく。
 こんな奇特な・・・

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Tangle

18/09/08 コメント:0件 雪見文鳥 閲覧数:85

 残念なことに世の中には、いくら言葉を尽くして喋っても、人の気持ちを理解できない人がいる。彼らに悪気はなく、自分が誰かを傷つけたという自覚がない。彼らは決してひとりになろうとしない。いつだって集団になって、たったひとりを傷つける。そして残された人たちは、か弱い自分を守るべく、必死でバリケードを作るのだ。


 中学1年生の夏、私に一人の彼氏ができた。けれど一つ大きな問題があった。・・・

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伏せ爺と僕

18/09/08 コメント:0件 むねすけ 閲覧数:163

 外では我慢している。黙るフリは上手くなった。
 家に帰る。靴を脱いで、揃えて、鞄を置くよりも早く、僕は喋り出す。帰り道で一人でも、癖を出さないのは母さんとの約束だ。僕はもう小学生じゃないから、約束は守れた。成長というのは嬉しいことばかりじゃない。要らなくなった踏み台の踏み心地を大好きだったこともある。
 僕の癖。独り言、と、人は言う。けど違う、僕のそれはカウンセリングの先生によって独・・・

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この世界の真理とは

18/09/08 コメント:1件 うたかた 閲覧数:72

 とある場所でとある人物が本を読んでいる。
 その本には一体何が書かれているのであろうか。感情が不図揺らいだ、かと思った瞬間、夢が覚めた。
 白く凹凸のある天井。小鳥のさえずり。全身を包む布の柔らかさ。布団の暖かな香り。これらを認知した僕は一体どういう仕組みでこれらを捉えているのだろうか。
 或いはこれらが存在していて、自らも存在し得るのであろうか。
 そのような自分の最も・・・

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或る未完の原稿

18/09/07 コメント:2件 みーすけ 閲覧数:73

 これは、私が見つけた、書きかけの小説もどきである。
 原稿は、とある図書館の机の上に放置されていた。
 ここに内容を紹介させて頂く。なお、人名は、伏字とさせて頂いた。

   *

 ひと月以上前だった。バーで飲んでいると、僕の前に一人の男が現れた。痩せている、というより、やつれ果てて見えた。
 男は僕に、ある品物を買わないか、と持ち掛けてきた。
・・・

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ルポルタージュ:紙面の白き盾

18/09/05 コメント:1件 マサフト 閲覧数:82

「伏せろおおーーー‼」

分隊長の怒号が飛ぶ。
私の目の前で整然と並ぶ、丸く白い盾を持った兵士たちが一斉に紙面に這いつくばった。盾を背中に構え、跪く彼らは守っているのだ。紙面に浮かぶ文字を。その文字をうかがい知ることは私にはできない。


先程の号令を飛ばした分隊長にお話を伺う。

ーーどんな文字を守っているのですか?
<・・・

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君と過ごした日々

18/09/04 コメント:0件 hayakawa 閲覧数:103

 朝目覚めて、太陽の日差しを眺める。美しい景色だ。初夏の太陽は黄金に輝いている。
 リビングに降りていくと母親が朝食を作っている。
「お母さん。おはよう」
「おはよう。圭」
 母親と僕の二人暮らしだ。母親は父親と僕が生まれた時、離婚した。理由はわからない。
 僕らは朝食が出来上がると食べた。
「圭は好きな人いるの?」
「いない」
 僕はそう言って嘘を・・・

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伏字ソフトの女

18/09/04 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:111

 アダルト作家茂木伸の仕事部屋には、優秀な伏字ソフトがあった。
 伏字ソフトといっても、パソコン専用のソフトではない。彼の手書き原稿を、横でチェックしてワードでうちこむ、布施純子という助手のことだった。
 アダルト小説作家として、茂木伸の名はそれなりに売れていた。三年前、彼の手になる一作が、公序良俗をいちじるしく乱すと判断され、裁判沙汰にまでなって罰金刑をいいわたされたことがあった。お・・・

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認知外クラック

18/09/03 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:128

 メトロノームのように単純作業を繰り返す親指が、タイムラインを弾き落とし続ける。
 見飽きたプロフィール画像と、どこかで読んだことがあるような文字列がザァザァと降っていく。
 一瞬、見覚えのないプロフィール画像と、物騒な文字が見えた気がして、タイムラインを戻してみると、知り合いがリツイートしたものが現れた。


 ※


●山●美 @●●t●s●●●・・・

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Prayer for healing

18/09/03 コメント:3件 向本果乃子 閲覧数:133

 今日最初の患者ー三十代の痩せた女性が口を開く。
「どうしても書かないとだめですか?担当医は報告しておくと」
「聞いています。ただ、自分の言葉で書くことが必要なんです」
 女性は渋々鉛筆を握った。字を書くこと自体久しぶりなのだろう。何度か握りなおして真っ白な紙を見つめる。
「決まりはありますか?」
「ありません」
 女性はしばらく紙をみつめていたがやがてゆっくり・・・

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トワイライトカフェ

18/09/02 コメント:0件 妄想シネマ 閲覧数:114

「ねえ、本当のこと話してよ。ヨッシーってなに」
彼女は真剣だった。
今、緑の恐竜について熱弁することもできる。赤い帽子を被った配管工を背に乗せ、長く伸びる舌で敵を丸呑み。卵も投げられ、レーシングマシンに乗せれば加速は随一。すごいよね、ヨッシー。
もしそう説明したのなら、彼女は立ち上がり、短い言葉を残して去るだろう。最悪ビンタの一つや二つは覚悟すべきだ。そしてこのカフェに残された僕・・・

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書き置きが読めない

18/09/02 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:170

 ◇
 朝起きると僕は、文字が読めなくなっていた。
 いや、正確に言うと妻の書き置き“だけ”が読めなかったのだ。

 ケータイのホーム画面は、今日が元日であることを示していたし、テーブルに置かれた新聞の見出しは、白ヌキ文字で僕の目に容赦なく飛び込んでくる。

 だけど、テーブルに置かれている少し皺の寄ったコピー用紙。そこに残された、見慣れたはずの妻の筆跡は、僕に・・・

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裁かれた言葉

18/09/01 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:102

◎今月の要注意ワード
 財団法人 日本語適正化機構より公表する〈望ましくない日本語〉(九月度分)は次の通りです。漏れのないよう目を通していただき、極力使用を控えるようご配慮願います。

スリッパ 語感が悪い。窃盗の俗語であるスリとかかるため。→アタリッパなら許容。
おまんま 幼児語として不適切。女性器の俗語と混同しやすい。→代替用語なし。原則使用不可。
だるま 四肢欠・・・

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ふせ字解読下じき

18/09/01 コメント:1件 海見みみみ 閲覧数:245

 放課後。カタルくんは近所に住む、いとこのチエミお姉さんの家へ遊びに行きました。しかしこの日のカタルくんはどこか変で、デレデレとしまりのない顔をしています。
「どうしたの? そんな面白い顔して」
「面白い顔とはなんだ。……実は今日小学校でラブレターをもらったんだ」
「あら、よかったじゃない」
 チエミお姉さんがお祝いのはくしゅをすると、カタルくんはさらにデレデレとしました。・・・

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きにして

18/08/31 コメント:0件 春海 閲覧数:79

濃い霧の中。冷たい朝の気配が辺りにたち籠めている。
こんな早い時間に、何故私は一人通学路を歩いているのか。
ぽつりぽつりとすれ違う人はランニング中か犬の散歩。
こういう雰囲気ってなんて言うんだっけ? あ、そうそう。せいひつな感じ。漢字は分からないケド。

なんだかざわざわする。静かで、でも何か動き出しそうな。実はニンゲンは世界に私一人になっちゃっていて、周囲の家の中・・・

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ほにゃららを教えて

18/08/30 コメント:2件 安藤みつき 閲覧数:181

私は放課後の誰もいない教室で小説を読むのが好きだ。
この誰もいない空間では、自分という存在を忘れて小説の登場人物になりきり、物語に没頭することができた。
そんな空間で突如不釣り合いな音がなり始めた。
学生生活で何千、何万回と聞いただろうチョークで黒板を叩く音だ。
小説を読んでいたかったが、音が気になり黒板に目を向けた。

(ほにゃららを教えて)

黒・・・

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伏せられた名前

18/08/29 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:81

 こういう地方のホテルだからか、二人の名前を記帳してくれと受付にいわれて、私がとっさに「来栖富雄」と書いたのは、彼女がいつも私をみてトム・クルーズに似ているといっていたからだった。それまでトム・クルーズという俳優のことをしらなかった私だが、彼女にいわれてからはその俳優が出演している映画などもみるようになって、へえ、おれってこんなイケメンなのかと、自惚れもてつだっていささか気をよくしていたのだ。

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夢と君とミステリー

18/08/29 コメント:0件 55 閲覧数:82

 その日は照り返すような太陽の熱が、道路に反射して、目の前が揺れていた。僕は桜子の歩く道の先が、揺ら揺らしているのが不安で、首に伝う汗を拭った。

 僕はよく夢を見る。同じように夢を見る人には理解できると思うが、夢は必ずしも心地の良いものじゃない。身近な人間から、過去の他愛ない風景まで、ごちゃ混ぜになって出てくる。大体の場合、そんな舞台の中心に立つのは、心配事だ。
 桜子の父親は・・・

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排水溝奇譚

18/08/27 コメント:3件 クナリ 閲覧数:202

 僕は道端の排水溝の中に入って仰向けに寝転がり、蓋を閉めて、その隙間から空を見るのが好きだった。
 小学校の頃にこの趣味を自覚し、高校一年生になった今でもそれは変わらない。
 しかし、この行為はとても卑劣な覗き行為と不可分だ。
 いくら僕にその気がなくても、それはまごうかたなき犯罪だ。

 だが僕は僕で、この趣味をやめるわけにはいかない。
 排水溝に入らないでい・・・

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『非現実』

18/08/27 コメント:0件 カジキM 閲覧数:110

 卑猥な言葉を叫びたい。
 そんな衝動に駆られる。
 「○×△△」や「△□〇」など、ここに記すには伏字にしなければならないような、私たちが生きる社会の上では決して使ってはいけないような単語をだ。
 なるべく堅苦しい場面が望ましい。大学の講義、会社の会議、葬式、そんな場面で幼稚な声色で、無邪気に卑猥な言葉を叫べたらどんなに快感だろう。

 こんな衝動に目覚め・・・

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サプライズ好きの彼

18/08/26 コメント:0件 キップル 閲覧数:87

 マンションのエレベーターから降りて右へ曲がり、いつもの廊下を歩く。最近立て続けにバイトの子が辞めたのでたくさんシフトを入れられて辛い。角部屋のひとつ手前が私の部屋だ。いつもならすぐにドアを開けて、靴を脱ぎ捨てソファにダイブするのだが、今日は違った。ドアの郵便受けに白い封筒が刺さっていたのだ。

「何だろうこれ?」

封筒には切手が貼られておらず、差出人の名前もない。多分誰・・・

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塗りつぶされた手紙

18/08/26 コメント:0件 雪見文鳥 閲覧数:101

 その便箋の名前は、トイといいました。すずらんの花がプリントされた、綺麗な便箋でした。トイの将来の夢は、だれがだれに宛てた手紙でも良いから、まごころを込めて書かれた手紙になることでした。転校してしまった友達への手紙、母親が遠く離れた息子へ送る手紙、大好きな人に宛てた手紙。そんな美しい手紙に。
 トイの持ち主は、高校生の花乃子さんです。息が凍ってしまいそうな寒い夜、書店のレジ近くで、花乃子さん・・・

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みえない

18/08/25 コメント:0件 55 閲覧数:91

 咲絵は死んだ。地下に沈む小さなライブハウスで、アコースティックギターを折った。最前列から避けるように空いたフロアの穴が、一歩分広がる。立ち尽くすファンの手から、蛍光色のペンライトが落ちた。
「二十八歳になりました」
 咲絵は亡霊のまま、スタンドマイクに息を吹きかけるように言う。
「ずっと、有名になりたいと思ってやってきました」
 ショッキングピンクのガーターリングを脱ぐ。・・・

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言葉にならない、●してる

18/08/25 コメント:0件 腹時計 閲覧数:91

 その日まで、彼女のことがとりわけ好きだということはなかった。
 少なくとも、自覚している分には。

 その日の朝、湊章太は朝七時には起きて、ゆっくりと朝食を取り、課題のレポートをコーヒー片手に片付けた後、昼近くになってから、大学へ向かった。こんなに余裕のある午前中を過ごすことは滅多にない。時間の余裕は、心にもゆとりをもたらす。なんだかすれ違う人に対しても、朗らかな挨拶をしたくな・・・

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誰を、思いやるがゆえ

18/08/25 コメント:0件 秋 ひのこ 閲覧数:92

 大学を卒業する年、まだ高校生の彼とつき合い始めた。
 人懐っこい子どものようなAを、私は無垢な犬みたいに可愛がった。私の家に入り浸ることを喜び、ろくに勉強もバイトもしなくとも、その伸び伸びとした姿を微笑ましく愛でた。
 自分の変化に気づき始めたのは、就職して3年目、Aが大学2年の年だ。

『西森教授、盲●で入院だって。ラッ●ー、休講!』
『今夜、餃子求ム。王●の再現・・・

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ゲーデルの眼

18/08/25 コメント:0件 カンブリア 閲覧数:81

 秘密。
 秘密とは何か、考えたことがあるだろうか?
 真実が常にそうであるように、逆説的な話をしなければならない、すなわち、もしもそこに秘密があることが知られているならば、それはすでに秘密ではない。
 秘密とは、矛盾と同様に、もっともありふれていなければならず、そして、ありふれているのだ。

 この事実は、電子データに記されてはならない。
 全てのネットに接続・・・

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あて字クイズ

18/08/24 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:158

 はるくんは、四歳。
 今日は、ばあちゃんとおるすばんです。
 ばあちゃんが、
「はるくん、あて字クイズしようか。」
と言いました。
「あて字クイズってなに?」
 はるくんが、きょとんとしていると、ばあちゃんは、紙とマジックをもってきました。
 紙を四角く切ると、

 り○ご

とマジックで書きました。
「この○にはいる字をあ・・・

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伏字ラブレター〜十三文字の秘めごと〜

18/08/22 コメント:1件 文月めぐ 閲覧数:182

 絵理沙は透明な書類ケースを使っているから、中身が丸わかりになってしまう。大学生協に売っているやつだ。それにレポートやらルーズリーフやらを詰め込んで移動するのだが。
 「周へ」
 そんな文字が見えた気がして、俺は思わず二度見してしまった。
 その封筒は確かに絵理沙のケースに収められていて、これはラブレターだ、彼女は周が好きなんだ、と確信した。
 俺は絵理沙が好きだ。いつも研・・・

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将来を

18/08/22 コメント:0件 佐竹竹之助 閲覧数:91

夏の夕暮れは蝉時雨と蜃気楼を連れて訪れる。白昼夢のような光景を見つめ膝を抱えていた。
「なぁ、芥生よ」
僕、榊健二郎は陽が沈みかける校庭の木陰で、隣に座る芥生恭助に声をかけた。
「なんだぁ、榊。こんな暑い日に校庭で夕陽を見るだなんて」
返ってきたのは気怠げな声色の文句であったが、それを無視して僕は問うた。否、問おうとした。
「僕らはこれから……」
「その先、言う・・・

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ニセン●年

18/08/22 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:83

「太田さん、お誕生日おめでとう!」
今日は30回目の私の誕生パーティー!うちの会社は全従業員が10人でアットホームだから、社長も含め一緒にお祝いしてくれて、セレブになった気分。入社して5回目の誕生パーティーになるけど私にとっては、本当に毎年楽しみにしている行事の一つだ。
 今年も毎年恒例、それぞれが何か気軽なプレゼントを用意してくれた。入浴剤やタオル、スイーツまで小さくてもうれしいもの・・・

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無口な私の分岐点

18/08/21 コメント:0件 土佐 千里 閲覧数:101

 私はこれまで、なんとなく平凡な人生を歩んできた。性格も無口なほうで、あまり友達もいない。いじめられている人をみても注意もできず、逆にいじめられることもあった。将来なりたいものがなく、公立の小学校から中学、高校、そして何の苦労もなく、大学は指定校推薦がきている学校に面接だけで入学した。
 就職活動の時期になって、これといった企業も特に無く、ヘタな鉄砲も数うちゃあたる方式で、幅広い業種の就職試・・・

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「天才ミライの未来。」

18/08/21 コメント:0件 倉本莉亜@小学生小説家 閲覧数:113

ミライは、自分でも天才だと信じていたし、世界もそう信じていると思っていた。

まるでそれが「あなたの名前はミライです。」と同じことのように、生まれた時から天才なのだと。

ミライは、7歳で宙に浮く車を発明した。

8歳で全ての家事を自分で行う知能が備わった家を設計した。

9歳で携帯やパソコンといった機械が必要ない、空気がパソコンや電話になるエアーネ・・・

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言論の自由を絆す会

18/08/21 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:123

 「もうほんと、チ●ポ法、まじ勘弁っす。意味分からないっすよね」

 二人の男が食事している狭い部屋、否、本来は広い部屋なのだが、膨大な書類が床に雑然と積まれているため、床面積の二十五パーセントしか空いていない部屋で、眼鏡をかけている男が、唇をミミズのように踊らせながら言った。男の口の中では、コンビニ弁当から移された様々な食べ物が渾然一体であるが、その様子を説明しようとすれば、都の迷惑・・・

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「秘め事」

18/08/21 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:86

 成功したの。
 そう、同性だからと半ば諦めていたけれど告白が成功したの。それでね、それでね。私達、恋人になったの。そして、その日のうちにどちらともなくキスしたの。放課後の教室。カーテンに隠れて。二人の秘め事。はじめの秘め事。だーれにも言えない空白だから秘密にしましょう。そうしましょう。それでね、それでね。神様が、夕焼け小焼けの茜の色で、二人の頬と。私の本当の色を隠してくれたの。
*<・・・

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「バケツ人間はBarに集う」

18/08/21 コメント:0件 篠五野 ユウ 閲覧数:84

 そのかぶり物を作るのは簡単だ。指定された百円ショップで、頭がすっぽりと入るプラスチック製のバケツを購入し、半田ごてで、お面のように自分の目の位置に見通し穴を空ける。そしてヤスリで尖った部分を削る。それだけだ。

「初めてで驚いたでしょう?」
 ここのバーのマダムがカウンター席に座っている私に話しかけてきてくれた。
「ええ。ドアを開けたらバケツを被った人達が十数名いて、開・・・

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やじろべえ

18/08/21 コメント:0件 nekoneko 閲覧数:74

「ユリ、早くしなさい。時間に遅れるぞ」何と無くソワソワした様なお父さんの声が聞こえてくる。「はあい」と大きな声で返事を返すとユリちゃんは机の上のやじろべえを軽く触れて見た。やじろべえは軽く体を左右に揺らす。「どんなお母さんかな、今日会う人は」と呟きながら色々と思いを巡らす。優しそうな人。綺麗な人。想像してみたら笑みが思わず溢れてくる。でも、ユリのお母さんになってくれるならどんな人でもいいや。ユリち・・・

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アナタの思い、届けましょう

18/08/20 コメント:0件 飛鳥かおり 閲覧数:178

「辻先輩、この前の試合も格好良かったなあ。今日も練習見られるかな」
 ひとりごとの多いいつもの通学路。野球部の朝練に合わせて早く出るのにはもう慣れてしまった。
 本日も清々しいほどの快晴。特に今年は例年になく猛暑の日々が続いている。普段ならとっくに制服のシャツがぐっしょりと湿っているはずだが、不思議と今日は汗をかいていない。
 辻先輩は洋子の高校の野球部の二年生で、洋子は入学直後・・・

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片想いのバトン

18/08/20 コメント:0件 紫聖羅 閲覧数:73

 真っ白なチャペルの階段を、新郎新婦が笑顔で降りてくる。ひらひらと舞うフラワーシャワーが、二人を輝かせる光そのものに見えた。
 花嫁の、小さな子供の無垢な笑顔とそっくりな表情を見て、心の奥にすとんと落ち着くものがあった。
 ーー彼女が幸せそうで、本当に良かった。
 じっと見つめていたせいだろう。たっぷりのフラワーシャワーを受けた後、彼女と視線が交差した。こちらへ小走りで駆けてくる・・・

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とある哲学者の言葉

18/08/20 コメント:0件 君鳥いろ 閲覧数:74

「こんなに好きなのになあ」
彼女は秋空を仰いではにかんだ。
「…うん」
彼は俯き気味に彼女の隣を歩いていた。
放課後の帰路は、辺り一面が夕陽に染め上げられている。
「やっぱり私じゃだめかな」
彼女の言葉に彼は押し黙る。すると彼女はまた、唇を小さく開ける。
「…後悔するよ、私を選んでおけば良かったのにって」
強気な台詞とは裏腹に、震わせた空気は僅かだっ・・・

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弁当

18/08/20 コメント:0件 紅茶愛好家 閲覧数:138

朝登校したオレは下駄箱を見てぎょっとした。弁当箱がどんと置かれていたのだ。周囲を確認しても誰もいない。大丈夫。そっと弁当箱に手を伸ばす。バンドに紙が挟まっていて可愛い字で『良かったら食べてください』とある。ほくそ笑みそっと鞄に仕舞うとそそくさと教室を目指した。
オレの通っている高校は男女共学ですなわちこれはオレに淡い恋心を抱く女子からの贈り物という可能性は十二分にある。自分で言うのも情けない・・・

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片想い

18/08/20 コメント:0件 国光 閲覧数:71

「好きな人ができた」
 君の一言で俺の平和の日々は壊される。
「それで、今回は誰だ?」
 このやりとりも何度目になるかもう覚えていない。いつものことなので俺は必要最低限の情報だけ得ようとする。
 それでも君はいつものように好きになった人の名前を口にするのを躊躇い、数分の時を要して口を開いた。
「……あのね」
 そして俺はようやく情報を得る。
 ここから俺の・・・

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なっちゃん

18/08/20 コメント:0件 木野 道々草 閲覧数:86

 なっちゃんとわたしは、高校時代からの友人で、二人とも今年で二十四歳になる。そういう長い付き合いだし、彼女に頼られることは嬉しい。けれどそろそろ、彼女の恋愛相談に乗ることが辛くなり、少し距離を置こうと思った。

 そう決心した直後、なっちゃんから「会いたい」と連絡があった。
 もう会わないつもりだったのに、その週の金曜日、駅で待ち合わせをして一緒に夕食を食べてしまった。その後は、・・・

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純愛フェードイン

18/08/20 コメント:1件 冬垣ひなた 閲覧数:141

 満里奈っていう私の名前は、ママが付けたの。
 瞬くんの知らない秘密。
 昔から背が高かった彼は、隣に住む同い年の幼馴染だ。優等生だったし、ちょっとカッコよかったから、小さい頃は女の子たちが騒がしかった気がする。
「シュンくんは、だれがすきなの?」
 私の問いに、瞬くんは照れながら答えてくれた。
「まりなママかな」
 もうショックよ、人生初めての失恋だった。

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花火を閉じ込めた

18/08/20 コメント:0件 橘瞬華 閲覧数:86

 とある八月の土曜日、午後。夕方五時半。浴衣を着た私たちは連れ立って家を出た。向かう先は花火の打ち上がる公園。本当は多分家からも見ることができるのだけれど、屋台巡りを目的に。そして何より引っ越してきて初めての花火大会を、平成最後の夏に過ごすため。まだ暑さの残る坂道を下って、人波に紛れていく。
 初めて一人で着付けた浴衣は少し時間が掛かって、歩きながらも着崩れてないか心配で、何度も後ろを振り返・・・

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