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セキガエ

18/08/16 コメント:0件 比些志 閲覧数:8

冬の体育館。仲間とバスケをしていると、もやの中から学級委員の洋子が目の前に現れた。
「先生がよんどるよ」
洋子は一方的に私の右の二の腕を引っ張る。
「おい、なん、なんだよ?」
「今日はセキガエの日でしょうが」
と洋子はぶっきらぼうにそういいはなって、一人でスタスタと歩きはじめた。私はなんだか、席替えという言葉を聞いて、急にうれしくなった。
 
教室に入ると・・・

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ハッチ

18/08/16 コメント:0件 みゆみゆ 閲覧数:18

 僕の名前はハッチ。コンパクトハッチバック車だからハッチだと、ユリちゃんが名付けてくれた。彼女は免許を取りたてだったからあちこちに傷も付いたけれど、そんなことは最初のうちだけだったし、ユリちゃんのお父さんはいつでもちゃんとディーラーさんに傷の修理を頼んでくれていたから、何の問題もなかった。
 ユリちゃんの通う大学やアルバイト先への往復のほか、いろんな場所へ僕らは出掛けていった。知らない田舎道・・・

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リンドリン王国の薔薇園にて

18/08/16 コメント:0件 chiho 閲覧数:9

 リンドリン王国の東塔の窓から薔薇園が見える。朝霧の中に浮かび上がるように姿を現す至宝の楽園。
「完璧な薔薇園には、完璧な庭師が必要だわ!」
窓際の椅子に深く腰掛けて、そう言い放ったわたしに「歩いてごらん?」とアークは意地悪を言った。
「完璧だなんて、きみには似合わないよ」
「この頃、よく顔を見せるわね」
「きみのお姉様に会いに来ているだけだよ」
「王子様・・・

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音楽妄想掌編 THE GODDESS

18/08/16 コメント:0件 逢原冴月(あいはらさえつき) 閲覧数:11

         ・・・カッチーニの作曲「アヴェ・マリア」によせて
 ぼくはおまえより何でも持っている。ただ一つのものを除いては。
すべての約束された王道はぼくのために開かれる。ぼくにはその資格があるし、あらゆる力がぼくをサポートしてくれる。
おまえと二人、留学の話が来たとき、嬉しかったけど、実はほんの少し悔しかった。
やはりおまえなんだな。皆がその存在に気づいてしまうのは・・・

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Mからの逃走

18/08/16 コメント:0件 白汐鈴 閲覧数:25

 片想い病。友人たちは純菜のことをそう言った。
 竹を割ったような性格の彼女は、気になる相手ができると躊躇わず距離を縮めた。友情なのか愛情なのか曖昧ではあったが、下ネタ話にも平気で加わるざっくばらんな気安さに好感を抱く男もいた。そして、純菜みずから「好き」と相手に宣言するのは、決まってその相手に別の女が現れたときだった。
「失恋しちゃった」
 泣き腫らした目を化粧でごまかし、純菜・・・

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体外離脱するほど片想い

18/08/15 コメント:0件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:39

 体外離脱とは、体から離れた自分が、体をおきざりにしてあちこち浮遊するということらしいが、そんな話、僕はあたまから信じていなかった。
 ところがあるとき、その僕が、体外離脱を体験したのだ。
 忘れもしないある春の夜、僕は布団に横になりながら、ひとりの女性の顔を思い描いていた。
 泉美春。同じ会社に勤める子で、それはキュートですてきな女性だった。
 僕は彼女が大好きだった。毎・・・

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一握の砂

18/08/15 コメント:0件 六井 象 閲覧数:14

 ふたりしっかりと手をつないで歩いていたはずなのに、私の部屋の前に辿りついた時には、既に彼は私の手の中で一握りの砂になってしまっていた。
 初めて本当に好きになった人だったんだけれど、神様は許してくれなかったみたいだ。
 砂粒が少し湿っている。
 私の手汗かな。
 いや、彼の涙だと思うことにしよう。・・・

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抜け殻

18/08/15 コメント:0件 六井 象 閲覧数:12

 部屋の隅に抜け殻を残して、恋人が去ってしまった。



 カサカサの恋人の抜け殻を、そっと壁に立てかけた。



 夜までぼんやりと空を眺め、爪を切り、そうしたらもうすることがなくなったので、一人布団に潜り、抜け殻を眺めながら眠ることにした。



 抜け殻の足の方にかすかに溜まった恋人の声が、寝入りばなの耳にさびしく・・・

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ボクとカイジュウのいない夏

18/08/15 コメント:2件 入江弥彦 閲覧数:93

今年は僕の町だった。
毎年、夏になると日本のどこかに巨大な生命体が現れる。東京にあるビルなんかよりもずうっと大きい、ワニと鳥とを混ぜたような奴だ。ワニのように鋭い爪のついた足を、二つの田んぼに片方ずついれた体勢で眠っている。今まで、そいつは動いたことがない。いつの間にか現れて、いつの間にか消えているのだ。
ゴツゴツしていそうな背中の鱗の隙間から生えた翼が開いたところは見たことがないけれ・・・

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大切な話があるんだ。

18/08/15 コメント:0件 鞍馬 楽 閲覧数:41

 葉書の裏に印刷された地図を見直して、目の前にあるペンション風の建物を眺める。
 思っていたよりも、会場はずっと落ち着いた雰囲気だった。大衆酒場のような場所を想像していたが、どうやら予想は外れていたようだ。
 思わず口角がつり上がる。騒がしいよりは、こういう雰囲気のほうがずっと好みだったからだ。はやる気持ちを抑えきれず、丸太を模した階段を駆け足で上って入り口の扉を開く。
 広いフ・・・

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額の扇風機

18/08/15 コメント:1件 吉岡 幸一 閲覧数:51

 男は人に言えない悩みを抱えていた。反社会的でもなく危険性もなく、見方によってはユーモラスで便利なものであったのだが、男は気味悪がられることを恐れてこの悩みを誰にも話すことができなかった。
 悩みとは額に扇風機が取りついてしまったことだ。これは何かの比喩ではなく、額の中心に白くて丸い縁があり、その中に本物の扇風機の羽が四枚皮膚に埋まっているということだ。二ヶ月前に原因不明の高熱を出し、三日三・・・

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確率の世界を超えていけ

18/08/14 コメント:0件 syaiku 閲覧数:77

大人になるということは、色々な経験値が増えるということだ。
同時に、その経験値が、本当の自分の気持ちを邪魔してしまうこともある。
興味があることでも、先に始めている人と比較されたら恥ずかしいとか、
今から始めるのは遅すぎるだとか、余計なことばかりを考えてしまい、足踏みをする。
物事の期待値と、成功する確率が見合うかどうか、計算してしまうのだ。

そしてある時、ふ・・・

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生き物係の高橋くん

18/08/13 コメント:0件 結木公子 閲覧数:121


 私には好きな人がいる。6年2組の高橋くんだ。
 部活はサッカー。生き物係。高橋くんはクラスのムードメーカーで、いつも誰かに囲まれている。足もクラスで一番速い。頭もいい、ってわけではないけど悪いというわけでもない。算数が得意で国語がちょっと苦手。でも頭の回転は速くって、みんなを笑わせるのがとてもうまい。おまけに顔もいいもんだから、月に一度は女の子たちからお呼び出しもされている。

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片想いのすすめ

18/08/12 コメント:0件 カジキM 閲覧数:90

 私は片想いのプロフェッショナルだ。女性と深い仲になった事など一度もない。
 ある方法を思いつき、それを極めることによって、俗に言う“お付き合い”をしなくとも幸せを感じることができる。私はこの片想いの方法を君たちに広めたいと思う。それによって救われる人が必ずいるはずだ。
 では、なぜ私が片想いを推奨するのか。そして、どのように片想いで自己を満たすことができるのか、簡単に説明していこう。・・・

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堂々巡り

18/08/12 コメント:0件 笹原 琥太郎 閲覧数:75

 肩を叩く、影の中から。人は振り返る、そして首を傾げ再び歩き出す。その瞬間、影で覆い尽くし体内に取り込むだけ、それだけ。

 真っ暗闇の体内で、問いかける。「叶えたい願い、あるんだろう」醜い欲を、曝け出してしまえよ。囁きに怯えるように、暗闇を手探りで歩く。道なんてない、扉なんてない、歩いてなんかない。全てはただの、思い込みにすぎない。
 泣き出した人間が蹲り、神の名を呼ぶ。「願い・・・

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片思いは突然に

18/08/12 コメント:0件 いありきうらか 閲覧数:52

毎週金曜日、深夜の2時から僕は眠たい目を擦りながらテレビを見ている。
この番組との出会いは偶然のものだった。
RPGのゲームに飽き、チャンネルを変えたときに、彼女は真っ直ぐ立っており、カメラは彼女の後ろ姿を捉えていた。
彼女が着ているセーラー服は、僕が通っている高校のものに似ていた。
肩に届くか届かないかの髪をぶら下げた彼女を、僕は吸い込まれるように見ていた。

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めぐろのいえ

18/08/12 コメント:0件 秋 ひのこ 閲覧数:56

 めぐろが食べることを止めて、1週間になる。
「ほら、お願いだから少し食べて」
 困り果てた若菜がめぐろの鼻先にジャーキーを押しつけるも、全力で顔を背ける。耳が根元からなく、失明して濁ったガラス玉のようになった目の横顔が若菜に向いた。
「フジコさんじゃないと嫌なの? そうなの」
 嘆息し、若菜は助けを求めるようにスマホを手に取る。新着メッセージが届いていた。

・・・

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彼女のいる部屋の中

18/08/12 コメント:0件 早川 閲覧数:46

「おはよう」
 耳元で彼女が問いかける。
「もう仕事に行く時間だよ」
 優しい声が耳元に響きわたる。僕は目をぱっちりと開ける。窓の外から日差しが射しこんでくる。2LDKのマンションの一室で僕は目を覚ました。目の前にいる彼女はすっかり、仕事に行く身支度を整えている。
「おはよう。今起きる」
 僕はベッドから身を起こす。どことなく体がだるい。毎朝、起きるたびそうだった。<・・・

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顔の見えない片思い

18/08/11 コメント:2件 腹時計 閲覧数:77

 拝啓 七瀬絵里子様
 初めまして。僕は田中蓮司と申します。七瀬さんがここに住んでいたと父に聞いたので、手紙を送ってみることにしました。
 僕は今、二十一になりました。K大学の三年です。野球部に入っています。小学生の時から野球をやっています。僕は野球が好きです。
 あなたが帰ってこなくなってから、僕はずっと父に育てられました。祖父母も助けてくれました。大学まで出してくれて、今はと・・・

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片思い そして――

18/08/10 コメント:0件 七霧孝平 閲覧数:54

昼休みの屋上。そこは俺にとって聖地である。
その理由は――

「あの、先輩。横、いいですか……?」

「ん……」

伊藤先輩。俺の憧れの人。
人によっては不愛想と取られる先輩だが俺にはわかる。この人はとても優しい人だと。

先輩の横に座り、購買で買ってきたパンをかじる。
隣では先輩が、色鮮やかな弁当を食べている。

お互・・・

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永遠に片思い

18/08/09 コメント:1件 向本果乃子 閲覧数:95

 初めからこの想いは一方通行。願うのは、いつか誰かを愛するあなたの幸せ。

 今日も私の部屋のHDDはフル稼働。ドラマにバラエティに歌番組。録画してもいつ観れるだろう。溜まった雑誌の切り抜きもしたいし、まだ一回しか観ていない去年のコンサートDVDだってリピしたい。

 中学二年になった瞬の部屋から電話で話す声がする。
「母親がアイドルにはまってるとか恥ずかしいよ」

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恋に恋せよ、乙女。

18/08/09 コメント:0件 北沢あたる 閲覧数:66

片想いは楽しい。

私は隣のクラスのトキワ君に恋をしている。
きっかけはある春の日。真新しい少し大きめの高校の制服を着、桜の花びらがひらひらと舞う通学路を歩いていた時だった。桜並木の中を春風が吹き抜けた。突風に驚いた私は、手にしていたプリントを手放してしまった。一時間目の英語で小テストがあり、出題はこの中からと、昨日の授業中に配られたプリントを、通学途中に確認していたのだ。・・・

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2018年の夏休み。

18/08/09 コメント:0件 三明治 閲覧数:91

 「九回裏ツーアウト、ランナーなし、もう後がない。とにかく塁に出たい場面。さあ、フルカウントです。投げた、バッター打った、が、これは弱いゴロです。ショート真っ正面、がっちり捕ってファーストへ。バッター、ヘッドスライディングするも、アウト。ゲームセット。試合終了、○○学院二回戦進出です。△△高校惜しくも敗退っ」
 
 家族持ちの皆さんに、お盆休みのど真ん中を譲り、あたしは少し早めに帰省し・・・

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雨さんは愛したい。

18/08/09 コメント:0件 するめ 閲覧数:39

 その衝動は昔から私の中にあった。気付いた時には胸のど真ん中に存在していた。
 愛したい。
 性愛とかそういうんじゃない。それは大人になってから味わえばいい。
 例えば幼稚園生の時はお気に入りの男の子と花を摘んで遊んだし、花冠をプレゼントしたりされたりした。
 小学生になってからは男の子(上の子とは全く別の子)の家に遊びに行って、その子の母親が買い物に行っている間二人きりで・・・

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涼風至

18/08/09 コメント:2件 しのき美緒 閲覧数:189

 健吾さん……健吾さん
 懐かしい声がした。見ればすぐ目の前に藍地に白く露芝を染め抜いた和服の膝があった。女が正座をしている。健吾はパチパチと瞬きをして目だけを上へ上へと動かしていった。白地に紅葉を織りだした絽の帯、きちんと合わせた胸元から覗く真っ白な半襟。すんなりとしたうなじが緩みのひとつもない顎(おとがい)へと続く。紅など注さずともほんのりと赤く艷やかな唇。一重の薄いまぶたの下には健吾を・・・

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花には水を、妻には愛を

18/08/07 コメント:2件 しのき美緒 閲覧数:251

 ぼくね、みどり先生が大すきだったんだ。
 それでパパにそうだんしたの。そうしたらパパは

「お花を持っていこうか。女の人はお花が好きなんだよ」

と教えてくれたの。だから毎朝、家のかだんにさいているお花をつんで、ようちえんに持っていってたの。最初はコスモスだったかなぁ。

「敦君おはよう」

朝、ようちえんの校門で先生たちはみんなにごあいさつ・・・

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落ちる前に強く輝く

18/08/06 コメント:0件 待井小雨 閲覧数:169

 校内は誰もがみんな眠りについて、廊下を歩く私の足音だけが響く。時間は正午。衣替えしたばかりの夏服のスカートを翻して屋上に向かう。
 屋上から見下ろす町もしんとして人の動く気配はない。人も、動物の声もしない。私が彼らを眠らせたから。
 日差しに目を細めて空を見上げると、地球に落下してくる隕石が水蒸気の尾を引いている。今は流れ星ほどに見えるが、実際のサイズはそんなものとは比べ物にならない・・・

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恋のからくり

18/08/06 コメント:0件 藤光 閲覧数:66

 恋っていつの間にかはじまっていて、あるとき唐突に終わるものだ――そういったのは、彼。

「尾瀬です。桐山さんを担当します」
 美容師の彼はまだ男の子と言ってもいい年格好だった。そして、私はすぐにこの美容院にやってきたことを後悔し始めた。とにかく美容師としての所作が板についていないのだ。準備にはもたつくし、むっつりと無愛想で、カットの技術も下手、櫛の当て方は乱暴で、ブローのドライ・・・

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同室

18/08/05 コメント:0件 藍田佳季 閲覧数:60

彼が好きだ。
それに気付いたきっかけは彼の片思い。
就職して三年目、相手は2年上の先輩。

彼女に弟のようにしか見られていない、どうすれば振り返ってくれるのか。

私にそんなことを独り言半分に訊いてくる。
「まあ、君に分かるわけないよね」
「分かりますよ」
反論する。
「本当に?」
「ストレートに言えば良いんです」
「そう出来・・・

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永代供養

18/08/05 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:52

 風呂敷の包みを広げると、中に札束が三つ入っていた。
 「これで、永代供養をお願いします」
 札束を持ってきた老年の男性が口だけを動かしながら言った。男性の声は周りの蝉の声に掻き消されて、男性の周囲一メートルくらいに近付かなければ、何を言っているのか聞き取れない。もっとも、男性の周囲にいるのは私だけであるが。

 「そうですか……。えぇと、あの、私が言うのもあれなんですが、・・・

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片想いを楽しんでる

18/08/05 コメント:0件 浅月庵 閲覧数:106

 バイト先で一緒の優木美智にアプローチしまくって、手応え掴めてさぁ告白するぞってタイミングに、俺の彼女に対する想いがジェットコースターの安全バーを外して抑揚のない地上へと降り立ったみたく平坦になる。それで彼女ができそうなのに俺は他の女の子と二人きりで居酒屋に来ていて、(と言っても小学校からの幼馴染)小野鞠萌に恋愛相談すると、彼女はわかりやすく溜息をつく。
「片想い楽しんでない?」
「な・・・

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いつの日か

18/08/05 コメント:0件 うたかた 閲覧数:39

 その日、俺は草原の上をただ一人彷徨っていた。周りに広がる生え始めの草木は、心地よい風に微かにすらされている。辺りは紅の日差しに塗りつぶさせれ、途方もないこの旅路に終焉を告げようとしていた。日の入りはもうまもなくである。
 君は確かに言った。この山を越えた向こうにいると。しかし、実際はどうだ。町どころか人すらいない。さらに言えば動物の姿さえ全く見えないのである。
 俺の衣服は、冷たさを・・・

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いつの日か

18/08/05 コメント:0件 うたかた 閲覧数:16

 その日、俺は草原の上をただ一人彷徨っていた。周りに広がる生え始めの草木は、心地よい風に微かにすらされている。辺りは紅の日差しに塗りつぶさせれ、途方もないこの旅路に終焉を告げようとしていた。日の入りはもうまもなくである。
 君は確かに言った。この山を越えた向こうにいると。しかし、実際はどうだ。町どころか人すらいない。さらに言えば動物の姿さえ全く見えないのである。
 俺の衣服は、冷たさを・・・

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人型恋愛ロボット

18/08/05 コメント:0件 柳瀬 閲覧数:22

もう少しだ、もう少しで人型恋愛ロボットが完成する。
このロボットは、人の感情を読み取る事ができ、女性との恋愛を疑似体験できる。
僕みたいに人付き合いが苦手で、彼女が出来ない不器用な男子の為にこの研究を成功させてやる。
あとはロボットに声を吹き込むだけだ。
どうせだったら本物の女性の声を吹き込みたい。
そうだ、高校の同級生で、先日の同窓会で連絡先を交換したカンナに電話を・・・

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彼岸花

18/08/04 コメント:0件 雲鈍 閲覧数:49


死んだという話を聞いた。即死ではないようだった。全身を浅く切り刻まれ、死んだ。出血多量だった。悶えた後が残されていたらしい。よく知る人間の犯行だと噂されていた。
 兄だった。2つ年上の兄弟だ。血は繋がっていない。俺は母の子として、兄は養父の子として、再婚したのだった。初対面の印象は悪くない。白い歯を見せて笑う、明るい男だと思った。しかし、ふとした瞬間に暗い顔を見せる。そしてそのことが・・・

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永遠の幻

18/08/04 コメント:0件 笹原 琥太郎 閲覧数:29

 か行の棚、視線を右へ左動かして、探す。か行。あ行でもさ行でもなく。指を背表紙に沿わせ、なぞる。指の腹で物語が交錯する。行き交う。
 物語が生きて、死んで、生きて、死んで、生きて、生きて、死ぬ。指の腹で。
 意識した。途端、重い。私は息を呑んだ。空気が重い塊になって、喉を通過する。つっかかりそう、痛い。空気のくせに。
 一冊、そう、一冊。選んだなら交差は終わり、絞り、幾分か楽にな・・・

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伝えられなかった気持ち

18/08/03 コメント:0件 早川 閲覧数:44

「ねえ、死ぬのって怖い?」
 帰り道、午後の日差しがアスファルトを照らす。彼女は遠くを見ながら僕に問いかける。
「そりゃあ、怖いよ」
 彼女は僕の答えに満足したように微笑した。僕にはその意味がわからなかった。
「私達はもう高校三年生。後半年でお別れの時期ね」
「確かに」
 僕はそう言って、自分の心の中に残る恋心を彼女に伝えられずにいた。好きで仕方がないのに、その・・・

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「♡片想いの実験室♡」

18/08/03 コメント:0件 イツキ カヅキ 閲覧数:49

 ああ、今日もまた、実験は失敗に終わった。
 どうすればこの美しい少女の運命を変える事が出来るのだろうか。自殺する君なんて、もう見たくも無いのに。実験を繰り返すたび、私は現実に押し潰されそうになる。

 アンドロイドの「五機」。今日から君が壊れた「四機」に変わって私の助手だ。いきなりだが、この膨大な施設の一部を案内する。着いてきたまえ。
 「培養器の森」まで少し歩く。それ・・・

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「弁当」

18/08/03 コメント:0件 イツキ カヅキ 閲覧数:48

 私は、あの卵焼きが本当に好きだった。
 咲が毎日作ってくれた弁当の中に、いつも入っている、お世辞にも形が良いとは言えない卵焼き。私のために一生懸命作ってくれた事が分かって凄く嬉しかった。それに塩と砂糖、カニかまや小ねぎなどバリエーションが豊富で毎日ワクワクしていた。私のお気に入りはチーズが細かく刻まれたものが入っている卵焼き。初めて食べた思い出の味。
 そのワクワクも、もう、お終い。・・・

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「シキ、巡って春」

18/08/02 コメント:1件 イツキ カヅキ 閲覧数:70

 確かにあの日、運命の音が私には聞こえていた。
 退院した次の日、家にある家具や家電、趣味のクラシックのcdらとオーディオ機器など、必要最低限の生活を送るにあたって不必要な物は、ほぼ全て処分した。独り身である私が大量の物を所有していると、迷惑がかかるのは私を発見した人達だ。手元にある娯楽はクラシックにはまるきっかけになった演奏者が弾いたベートーヴェンの『交響曲第5番ハ短調作品67』、所謂「運・・・

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ドリームランドでまた逢おう‼

18/08/02 コメント:0件 比些志 閲覧数:119

16歳、高校二年の夏。

 夏休みに友だちと市内にあるドリームランドというレトロな遊園地に出かけた。遊園地などに興味はなかったが、園内にあるプールで暑さしのぎと暇つぶしをしたかった。
 しかし友だちはいつまでたっても現れない。同じようにプールの準備をしながら知り合いを待ちわびているふうの少女が入場門の反対側に立っていた。

「そっちもふられたみたいだね」
 少女・・・

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あのこのなまえ

18/08/02 コメント:2件 夢野そら 閲覧数:128


気ままにレンガ通りを散歩をしていたある日、新しくできたお店の窓辺から外を眺めるあのこをみつけたんだ。
長い睫毛に囲まれた澄んだ瞳、綺麗な横顔は美しいのにどこか儚げで、そんな君に引き込まれない理由なんてなかった。それくらい魅惑的だった。

それからぼくは毎日わざとその窓の前を通ったんだ。あのこはいつでもそこにいて、ずっと憂いた表情のままだった。

ぼくはかっこい・・・

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カタオモイ

18/08/01 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:65

 青い空で輝く銀色の雲が、高く、大きく、空に広がっている。
 暑い空気と喧しい蝉音に包まれながら、網戸越しにその光景を眺めていた。
 とっくに見飽きてしまったテレビが笑い声をコソコソ上げている。

 じっとり汗が滲み続け、身体が溶けてしまいそうな気がする。
 体に触れるものすべてが疎ましくて、エアコンの風が不快で、エアコンは消してしまった。
 自分の心も消してし・・・

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ジュンズ・ブライド

18/08/01 コメント:0件 荒井文法 閲覧数:115

 六月に結婚式する奴の気が知れない、そう思う人が多いことくらいはもちろん分かっている。
 昔はジューンブライドという言葉があって、憧れの結婚式の代名詞みたいになっていたみたいだけど、ただでさえ雨で外出したくないのに、窮屈で動きづらい高価なドレスを着て、ジメジメした暑い中を、汗と雨の化粧崩れに怯えながら歩くというのが信じられない。

 そんな時期に、私は結婚式を開催する。
<・・・

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雪が降る夏

18/08/01 コメント:0件 腹時計 閲覧数:122

 お盆も過ぎ、蝉とつくつくぼうしの鳴き声が混じりだしたある日、祖母は死んだ。もともと肝臓がかなり悪かったから、その知らせを聞いても、美佳子はあまり驚かず、むしろ「ようやくか」と思いさえした。

 高校に上がるまで祖母と同居していた美佳子は、乱暴で酒飲みの祖母が嫌いだった。若い頃は心優しい美女だったらしいが、姑からの苛烈な嫁いびりによって徐々に精神が壊れ、姑の死後は酒浸りになり、その美貌・・・

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打倒! ブラックチョコレート

18/08/01 コメント:0件 55 閲覧数:114

 チョコレートはブラックから食べるようにしている。待って、僕の話を聞いてほしい。

 真夏のあの日、僕の家の冷蔵庫にはバラエティパックが冷やされていたんだ。ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ブラックチョコレート。大学の試験も終わり、やっと夏休みに入った時だ。蝉の鳴き声が室内まで届いて暑さを煽る、あの光景を思い浮かべてほしい。

 僕は甘いものが好きだ。子供の頃からず・・・

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プリズム

18/07/31 コメント:0件 55 閲覧数:158

 洗っていない野菜を差し出して、「ありのままを受け入れてください」と懇願するなんて馬鹿だ。
 そんな内容を話した芸能人がいたのを覚えている。綺麗に洗い、切り刻んで、爪楊枝の刺さる柔らかさまで煮てから「食べてください」と床に頭をつく。それほどして初めて「美味しそう」あるいは「食べる気がしない」と評価を下して貰える。美味な見た目をしていないから、きっと体に悪いのだろう。奇跡的に口に入れられたそれ・・・

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土曜日のネコ

18/07/30 コメント:0件 三明治 閲覧数:110

 テラスに並んだ二人掛けのテーブル。クロスは白とワインレッドのストライプ。七里ガ浜の海岸通りに面したレストランに僕とネコはいた。土曜日のランチ。太陽が眩しい。
 皆に<ネコ>と呼ばれている二歳年上の女性。僕は今、何を話せばいいのだろう。
 視界の隅に一匹の蝿が飛び込んでいる。それは消えたり、現れたりしながら、テーブルの中央に固定される。
 ネコは気づいているのだろうか。視線の動き・・・

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数年ぶりの一方通行

18/07/30 コメント:0件 たい焼き好き 閲覧数:68

片想い、なんて何年ぶりだろう。
小学校の頃、クラスの男子に憧れを抱いていた記憶は、朧げにある。しかし、今やその相手が誰だったのかすら思い出せないので、恐らくその程度のものであり、恋とは縁遠いものだったのだろう。
中学に入ってからは、恋をする暇なんてなくなった。吹奏楽部に入って以来、放課後も休日も毎日部活で、女子から恋愛相談をされることこそあれど、相談する側にはついぞ回らなかった。自分で・・・

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いなくなった彼女は

18/07/30 コメント:1件 早川 閲覧数:173

 いつからだろう。目が覚めても何も感じなくなったのは。
 隣で眠る彼女が夢から目覚める。
 僕は彼女の温もりを感じる。どうしてかはわからないけれど、彼女が側にいないと不安を感じる。
 無機質な世界の中に僕らはひっそりと生きていた。彼女も僕も会社員だ。
「おはよう」
 彼女は眠そうに目をこする。
「おはよう」
 僕は返事をする。
 彼女はキッチンへ向か・・・

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