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沈む部屋

18/12/13 コメント:1件 たま 閲覧数:30

 ドーム型の背のひくい建物だった。
 どう見ても、マンションには見えなかった。巻き貝の殻の口のような入り口を入ると、建物の円周に沿った青い絨毯貼りの廊下があって、そこを過ぎると、だだっ広い円形のホールに出た。どうやらここがマンションのエントランスで、ホールの中央には直径10メートル余りの穴があった。なだらかな螺旋階段が地下に向かって延びている。

「エレベーターはありませんので…・・・

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おにぎり

18/12/12 コメント:2件 再帰樹海 閲覧数:44


おにぎりが食べたかったのですが、あいにく塩がありませんでした。
しようがないので近くの店屋に行くことにしました。
10分ほど歩くとマンションがあり、コンビニもありました。

以前目にとまった《天然塩》なんてのもおいてあったと思うのですが、
《天然塩》の味を知らない自分にとっては《天然》かどうかなどの、
表示されただけの言葉などどうでもよく、確かな製造元と・・・

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504号室が消えた

18/12/12 コメント:1件 若早称平 閲覧数:75

 そのマンションに決めたのは彼の方でした。私も彼も大の虫嫌いで、七階以上だと虫が出ないっていう都市伝説みたいな話を信じてたんですけど、結局妥協して今のマンションの五階にしたんです。
 彼は株のトレーダーをしていて、たまにジムに行く以外はほとんど家にいます。虫は出ないみたいなんですけど、まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。

 きっかけの手紙を見つけたのは私でした。引・・・

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全国定額制提携賃貸契約

18/12/09 コメント:2件 64GB 閲覧数:84

転勤があるオレにとっては、全国定額制提携賃貸契約は画期的な契約だった。
かいつまんでいうと、全国の504号室で空き部屋さえあれば東京であろうと北海道であろうと定額で移動することができるというものだ。全国の504号室の家賃を全部足して店子で割る。すると地方の家賃は少し上がるものの東京の家賃の相場ではありえない安さになる。集められた賃料を分配する手間はかかるがオーナーは損をしない仕組みだ。なにし・・・

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504号室のアリ

18/12/06 コメント:0件 こぐまじゅんこ 閲覧数:68

 アリたちのちっちゃなアパートがありました。
 土をほって、地下にもぐっていくアパートです。
 一階から、どんどんもぐっていって五階まであります。
 ひとつの階には、横に四つ部屋があって、101号室から504号室まであるんです。
 ひとつの部屋には、アリが一匹ずつくらしています。
 アパートには、全部で二十匹のアリがくらしていました。
 101号室のアリは一番え・・・

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頭のおかしい腐った蜜柑

18/12/04 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:153

 ◇
 冬場になると昔よく、母親が送ってくれた蜜柑のことを思いだす。
 そして今の俺のこの状況と重ね合わせて、まるでここは腐った蜜柑しか存在しないダンボール箱のなかだ、と思ってしまう。

 ◇
 朝目が覚めると、口元が鉄製のマスクで覆われており、俺はまた“あの日”がきたことを瞬時に理解する。

 マスクは首の後ろまで回りこみ、鍵がかけられているので人力で取・・・

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うさぎ小屋に名前を

18/12/04 コメント:6件 秋 ひのこ 閲覧数:124

 アパートやマンションのことを、祖父は「うさぎ小屋」と呼んだ。
「そんなうさぎ小屋に住んでどうすんだ。隣近所と壁一枚でくっついてるなんてな、家畜小屋だ」
 人口200人に満たない山間の村に生きる祖父は、村を見下ろす段々畑の上に建てた木造二階建てが自慢で、そこに祖母と母、私の4人が暮らしていた。婿養子の父が隣村の女と浮気して逃げて以来、祖父が父代わり。その祖父に、死んでしまえと何の罪悪感・・・

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奇跡の部屋

18/12/03 コメント:4件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:89

 その攻撃が政府軍のものかそれともテロ集団かは定かではなかった。が、飛び交うロケット弾に建物の大半が吹き飛ばされ、その巨大な建築物のあった場所にはわずかなガレキが残るばかりでそれはちょうど人が死んで灰と骨片が残るようなものだった。
 そのガレキの上に、部屋がひとつ、のっかっていた。窓は鎧戸がおりて室内をうかがうことはできない。知らないものがみたら、ガレキの上に部屋なんか置いたのは誰だとあきれ・・・

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504号室の隣人は幽霊

18/12/03 コメント:1件 吉岡 幸一 閲覧数:59

 隣人は幽霊だといったら信じてもらえるだろうか。
 夏の最中に急な人事異動を命じられた俺は、よく調べる間もなく引っ越し先を見つけなければならなくなった。
 たまたま駅の近くにレンガ造りの洒落た二階建てのアパートを見つけることができ、すぐに空き部屋の505号室に引っ越した。
 二階建てのアパートなのに、まるで五階の部屋のように505号室というのはおかしな番号と思うかもしれないが、そ・・・

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504号室のシベリアンハスキー

18/12/01 コメント:2件 marotch 閲覧数:99

今日も会社に行く、当たり前のルーチンに憂鬱な気持ちを抱えながらマンションの扉を開けて外に出る。と、同時に504号室から隣人が出るドアの開く音。対してご近所と親しくない私にとって隣人との邂逅は気まずい瞬間だが、仕方ない。挨拶をしようとその姿を直視すると同時に目を疑う光景に凍り付く。
504号室から出てきたのはシベリアンハスキーだった。
シベリアを原産とする大型犬種。非常に社会性に富み、人・・・

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気球

18/12/01 コメント:2件 くまなか 閲覧数:97

 極彩色というものは、青空に乗せるとそう目立っても見えない。橙と黄色がストライプになった袋状の布地がバーナーに炙られてむくりと起き出し、錘を落とすとやはり空として馴染んだ。考えてみれば南国の夏空はもっとすごい大きくて派手な鳥や虫たち、そういうものをみんな馴染ませてしまうのだから。
夏帆は双眼鏡の中で点からだんだん大きくなってくる気球達に、浮かれた気持ちで(夏までに部屋を空の色にしよう)と決め・・・

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504号室王国の王子

18/11/30 コメント:2件 繭虫 閲覧数:77

504号室王国。 人口は2人。 少数民族国家である。 時空ハイツ大陸の503号室王国と505号室王国の間に位置している。 503号室王国には、大陸唯一、「猫」の生息が確認されている。可愛い。 505号室王国は武力国家で、紛争が絶えない。よく、怒鳴り声や大きな物音が聞こえてくる。 その間に位置する504号室王国は、一人の女王が主権を持ち、一人の幼い王子が住まう、独立国家である。 王・・・

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とってつけたような話

18/11/26 コメント:1件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:81

 おやじもおふくろも酒のみだったから、ぼくの名前を考えたときもきっと、二人とも酔っていたのにちがいない。そうでなければどうして、生まれた子供にこんな名前をつけたりするだろう。
 ――号室。読み方はそのものずばり、ごうしつ。ふだんよぶときは、ごうし、ごうしだった。
 それだけのことならぼくも、気にいらないながらも、しょうがないとあきらめることもできた。問題は苗字のほうだ。五百五。これをな・・・

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僕には解けないダイイングメッセージ

18/11/23 コメント:0件 夏日 純希 閲覧数:119

504号室には質量の一部を失った女の子で、僕が人生で3番目に抱いた女の子がいた。
「アインシュタインの理論によれば質量は膨大なエネルギーと等価で、私は大事な一部を無くしてしまったから、きっと生きるエネルギーの多くを失ってしまったの」
と彼女は言うから
「もしそれが本当なら、甘いものをたくさん食べればいいよ」
と、僕は応える。
「甘さは脂肪にしかならないのよ。悪くないけ・・・

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真上の異界 〜上の階に行ってはいけない〜

18/11/23 コメント:2件 とむなお 閲覧数:80


 それは、12月24日――クリスマス・イブのことだった。
 都立W大学2年生の、和也、正治、弘司の3人は……

 ――どこか変った所で、クリスマスしようぜ――

 という勝手な計画を立てた。
 3人は昼食後の講義をサボり、ホームセンターで買ったハンディライトを、それぞれオーバーのポケットに入れた。
 駅前のの専門店で、それぞれ好きなショートケーキを・・・

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ホテルの幽霊

18/11/23 コメント:1件 うたかた 閲覧数:70

「お待たせいたしました。こちらがお部屋の鍵になります」

「ありがとうございます」

 俺はフロントから鍵を受け取ると、右にあるエレベーターの前に向かった。外観は街に埋もれて古びて見えていたが、内装はいたって普通。清潔感もあって空気も悪くない。
 部屋番号を確認すると、『504号室』とあった。
 到着したエレベーターに乗り込むと、何も考えず『5』を押す。六人が乗・・・

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可能性探偵助手とずっと504号室

18/11/23 コメント:2件 浅月庵 閲覧数:120

 探偵が風邪で休みとなれば、その助手も一緒に休みになりそうなものだけど、私は念のため事務所に顔を出している。
 ただいつもは閑古鳥が鳴いてばかりの探偵事務所だというのに、こんな日に限って突然入り口の扉が開かれた。
「マジ助けてほしいんだけど!」
 現れたのは金髪の白ギャルで、正直私と真反対の人種で対応に困る。
「本日探偵であるハガナイはお休みで、ご依頼の内容だけでも私にお聞・・・

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1008号室

18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:74

 「いらっしゃいませー」
 「すいません、四月から大学行く関係で、アパート探しているんですけど、ネッ」
 「あ、新入生の方ですねー?」
 「はい、そ」
 「おめでとうございますー! どちらの大学ですか?」
 「法治大学なんですけど、ぼ」
 「わあすごい! 私もそういうとこ行ってみたかったですー」
 「あの」
 「お部屋ですよねー、どうぞこちらへ、パソ・・・

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超能力青年ヨシオ

18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:66

 決して、彼女のあとをつけていたわけじゃない。偶然だ。だから、彼女が五〇四号室の玄関を開けて中に入っていくのを見たのも偶然だ。

 大学生になって初めての一人暮らし。憧れのトーキョー。田舎で二十年間を過ごしてきた僕は、何をするにもワクワクして、どこを見ても人がいて、毎日鼻血が出そうなくらい興奮して夜も眠れないから、当たり前のように、あっという間に、夜型人間へ移行していた。
 一に・・・

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紅い秋桜

18/11/22 コメント:2件 荒井文法 閲覧数:68

 一ヶ月に一度、彼の爪を切ってあげる。

 窓際にはコスモス。今日、私が摘んできた花が花瓶に生けられている。
 彼がコスモスを好きかどうかは知らない。知る術もない。
 窓から差し込んでいる夕陽が、ピンクのコスモスを紅く染めている。

 彼の爪は伸びるのが遅い。爪だけでなく、髪もそうだ。彼が植物状態だからだと思っているが、医師や看護師に質問したことはない。そんな質・・・

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え?・・・マジか

18/11/22 コメント:1件 風宮 雅俊 閲覧数:79

「え?・・・マジか」
 周りの視線が集まる。
「何でもないです。クレームのメールじゃないです」
 事務所に広がった緊張が安堵に変わると、それぞれの仕事に戻っていった。

 今は、仕事中だ。人目を引くような事は慎まないといけない。あくまでも仕事中だ。仕事中は仕事をしなくてはいけない。がしかし、頭の中は推敲をしていてもばれない・・・。そもそも、隣では書類を作成する振りをし・・・

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決めつけてかかるな

18/11/22 コメント:2件 W・アーム・スープレックス 閲覧数:97

 トミオは503号室をノックした。
「なにか」
 男が顔をつきだした。
「じつは僕、504号室をたずねてきたのですが――」
「1番ちがいだ」
「あの、504号室は、503号室の、隣ですよね」
「わかっているなら、いけばいいだろう」
「ところがですね……」
 トミオは横をむくと、まるで海原にうかぶ島影でもみるような調子で額に手をかざした。
「お・・・

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自分だけ出入りできる能力ッ!

18/11/22 コメント:2件 戸松有葉 閲覧数:65

 日常が壊れたあの日から、少年は高校からの帰宅さえすんなりさせてもらえない。
 今も人気のない路上で、敵の刺客が道を塞いでいた。 
 両者異能力を持ち合わせているわけだが、刺客のほうは組織から少年の異能を聞いていると考えられ、少年のほうは刺客の異能など初対面なため知らない。
 それでも刺客がわざわざ教えてくれるという楽観はあった。間抜けにも。これまで幾度も刺客と相まみえたが例外な・・・

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ワケあり物件

18/11/22 コメント:2件 戸松有葉 閲覧数:67

 若そうではあるが年齢不詳でもあるその女は、今度入居するアパートの安い家賃に満足していた。アパートとしたが、正確にはアパートの一室、『504号室』のみ特別に安い。
 身体的ハンディを様々に抱えながらも、障害年金といったものは貰えないため、高い家賃は死活問題なのだ。現代の発展した医学や偏見差別をなくそうという社会においても例外はあることを、女は身を持って知っている。実際、これまで生活に困って自・・・

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被選挙権資格制度

18/11/22 コメント:2件 戸松有葉 閲覧数:70

 高級マンションの一室、504号室には、数人の若者が集まっていた。彼らには共通の志がある。政治に携わることだ。そんな彼らにとって、現在の政治家の無知や頭の悪さは、嘆かわしいだけでなく、改革したいと思うものだった。
 ついこの間も、現役大臣が問題発言をしていた。本人は一切問題がないと思っている――正しいと思っているところが恐ろしい。その証拠に、同じ見解は繰り返し述べられており、謝罪・撤回はない・・・

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超予測変換

18/11/22 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:71

 最近はスマートフォンの性能も随分と良くなった。普及率もどんどん上がり、持たない人が少数派に追いやられるばかりだ。使えるアプリも増え続け、便利な世の中になったものだと思う。
 ワープロの様な文字編集専用のテキストエディタなどは、小説を書く人によく利用されるようだ。それらと連動する文字の変換機能も重要な性能で、特に『予測変換』などは入力がスムーズに行えるようになって便利である。
『超予測・・・

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404からは出られない

18/11/22 コメント:4件 クナリ 閲覧数:111

 高校二年の冬。
 私は放課後、同級生の立花君のマンションを訪れた。
 もう彼が学校に来なくなって半年になる。
 彼と何の関係もない私ができることはないのだけれど。
 立花君に何かあったのかもしれないと思うと、胸が張り裂けそうだった。

 エレベーターに乗る。
 立花君の家は505号室だ。
 回数ボタンを見ると、1、2、3階の次が5階になっていた。<・・・

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ミセス・スイートポテト

18/11/19 コメント:2件 冬垣ひなた 閲覧数:152

 キッチンに腰を下ろして床下の貯蔵庫を開けると、太陽にさらされた温かい土の匂いがした。
 白いポリ袋の中に入っている、濃い紅色をしたさつまいもがようやく食べ頃を迎えた。香津美はどんな料理にしようかと想像して頬が緩む。
 収穫は紅葉の時期だった。40歳を目前にして家庭菜園を始めたビギナーとしてはなかなかの豊作に、宝探しのように家族で競って掘り起こした。とれたてのさつまいもはもちろん食べら・・・

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浮舟

18/11/19 コメント:0件 青苔 閲覧数:60

 私は昔、浮舟と呼ばれていた。

 本当の名前は知らない。
 いつからか私はここにいて、私のそばには姉さんがいた。
 姉さんは時々私に昔のことを話してくれる。あんたはこの遊郭の大門の前に捨てられていたのだ、そして私が面倒を見ることになったのだ、と。
 遊郭の中の子供にはたくさんの雑用があったけれども、その合間には子供同士でよく遊んでいた。でも私は、いつからかその遊びに・・・

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【エッセイ】 深夜の救世主

18/11/19 コメント:0件 野々小花 閲覧数:83

 自宅から歩いてすぐの所にコンビニがある。小腹が空いたとき、コピー機を使いたいとき、急な出費があったとき、とりあえず私はコンビニへ行く。最寄りのコンビニには、日頃からたいへんお世話になっている。
 そのコンビニにある日、筆文字で『救世主、求む!』と書かれた張り紙があるのを見つけた。入口の人目に付きやすいところに貼られたその張り紙をよく見ると、夜勤で働いてくれるひとを探しているらしいことが分か・・・

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月へ行くうさぎ

18/11/19 コメント:0件 みや 閲覧数:51

「あなたのあだ名は…うさぎですか?」
毛深くて身体が大きく、見るからに熊の様な男性が私に話しかけてきた。
「分かりますか?歯が…歯がうさぎみたいで…子供の頃からのあだ名はずっとうさぎでした。あなたは…熊?」
「はい、見た通りです。身体が大きいので。僕も子供の頃からあだ名は熊でした」
熊の様な男性はそう言ってがははと笑った。ステーションには徐々にたくさんの人々が集まって来てい・・・

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雨のち晴れ!

18/11/19 コメント:0件 宮下 倖 閲覧数:53

 そもそも大雨の日に生まれたということを良平に知られたのがはじまりだった。
 小学三年生のときに出された宿題がきっかけだ。
 自分が生まれたときのことを家族に聞きましょうというもので、家が隣同士の幼なじみだった私たちは一緒にその宿題に取り組んでいた。
 そばには良平のお母さんと私のお母さんがいて「どんな天気の日だった?」「生まれたときなんて思った?」などという質問に根気よくつき合・・・

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二つ名メーカー

18/11/19 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:112

「ここに、やつが住んでいるのね」
 私は、屋根がやや傾いたその家を眺める。思っていたよりも、ぼろい。稼いでるんじゃないんだろうか。
 まあ、やつの家がぼろかろうが関係ない。
 私はそのドアを軽くノックした。
「たのもー!」
 返事はない。もう一度。
「たのもー!」
 やはり返事はない。が、中から人の気配がする。居留守だな。
「たのもー!!」
 ・・・

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クマの転校生

18/11/19 コメント:0件 森音藍斗 閲覧数:86

 後ろの席に見慣れぬ女の子が座っていることと、私がクラスメイトに呼ばれるたびに彼女もびくりと反応することに、私は気づいていた。朝教室に来てから、ほんの三十分弱の話だ。
「ねえ、クマちゃん」
 私が椅子を斜めにしながら背後にそう問いかけると、彼女はまた肩を震わせ、そして自分が呼ばれるわけがないと考え直した様子で、それから今に限ってはやっぱり自分が呼ばれていることをようやく認識して顔を上げ・・・

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八重歯

18/11/19 コメント:1件 そらの珊瑚 閲覧数:97

 嫌な夢を見てしまった。高校の卒業アルバムの載せるための写真撮影で、カメラマンがとてつもなく面白いこと(だけど具体的には思い出せない)を言い連ねたがために、たまらず私は大口を開けて笑ってしまう。結果、私の左右二つの醜い八重歯がしっかりと写され、アルバムの片隅に……。八重歯を気にして高校時代の三年間、極力人前では笑わないようにしていて、それでも笑ってしまう時には必ず手で口を隠してきたのに。よりによっ・・・

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いつかどこかにある、のかもしれない風景

18/11/18 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:89

 わたしは今日も小さな町工場で働いている。
 
 下町情緒というのが色濃く残るこの地域は特殊である。世界でも有数の近代都市である東京。そうとは到底思えないほどの風景が今でも存在している。
 頭上の空を覆い隠すように高速道路の網が張りめぐらされ、陽の明かりが木漏れ日のように地上へとふりそそぐ。コンクリートに護られたどぶ川がそのわずかな光を反射し、その川沿いに小さな工場がひしめき合う・・・

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僕の子猫ちゃん

18/11/18 コメント:2件 南野モリコ 閲覧数:142

「ねえ、たかちゃん」
昼休み、僕の子猫ちゃんがまとわりついてきた。

「その呼び方やめろよ」
僕はふてくされて、読みかけの単行本を開くと、僕の子猫ちゃんは、つまらなそうに自分の席に戻っていった。

僕の子猫ちゃんは、僕より3列向こうの斜め前辺りに座っている。

本当の名前は山本さちこ。小学校では皆から「さっちゃん」と呼ばれていた。
母親の手に引・・・

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吾輩には名前がある。あだ名はまだない。

18/11/18 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:95

吾輩には名前がある。あだ名はまだない。
どこで生まれたかとんと見当つかぬ。と言ってみたいが吾輩は普通すぎるところで生まれた。ごく普通の家庭で過ごし、当たり前のように一日三食用意してもらえる。朝は学び舎に向かい、夕方には我が家に帰る。そして温かい風呂に入り、ふかふかの布団で就寝する。
こんな生活をしているからか吾輩にはあだ名がなかった。そんな吾輩は密かにあだ名を付けてもらうことが夢だった・・・

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ピンク色の黒歴史

18/11/16 コメント:0件 腹時計 閲覧数:46

 過去を記憶するとき、何かをきっかけに覚えていることはないだろうか? 何かの弾みで思い出す、というのは、そのきっかけに触れて、誘発されて記憶がよみがえることだ。例えば、スーパーで買ってきたカツオのタタキを食べているときに、幼いころに高知県へ行ったことを思い出す。あるいは、ふとスイレンを見かけると、中学校の中庭の池にもスイレンがあったことを思い出して、ついでに中学生の時、中庭で告白して失恋した思い出・・・

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小バカにされたあだ名から──

18/11/17 コメント:0件 せーる 閲覧数:45

 カップに紅茶が注がれる音がチョロチョロと部屋に響く。注いでもらった紅茶に口をつけ、ひとススリする。
「もう、この味も苦手ではなくなったな」

──私は中学1年生のとき、当時の英語教師から言われた言葉が忘れられない。
『おっ、その名前の英語読みカッコいいな!』
 私の名前は、柳 赤秀(やこうやなぎ)という。英語読みにするとAko Yanagi。それを大きく褒められたこ・・・

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転校生のあだ名

18/11/17 コメント:0件 山上 太一 閲覧数:72

午前中の授業が終わり、昼休みが始まった。開始のチャイムが鳴りやまないうちに、十数人の男女が僕の席の周囲に集まってくる。
「さて、朝も話したけどこのクラスでは本名でなくあだ名で呼び合うという決まりがある。君は前の学校ではあだ名はなかったそうだから、これから僕たちで話し合って君のあだ名を決めようと思う」
そう言ったのはメガネザルと呼ばれている男子だ。小柄な体格に大きな目、小動物的な雰囲気。・・・

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あだ名の終わり

18/11/17 コメント:0件 田辺 ふみ 閲覧数:59

 公園に行くと、涼子はブランコを揺らさずに座っていた。鎖を握りしめ、うつむいた姿が寂しそうに見えた。
「リラ、遅くなってごめん」
 声をかけると、涼子はパッと、顔を上げた。
「ううん、さっき、来たところ。ごめんね、急に呼び出して」
「構わないけど、一応、女なんだから、暗くなってから、公園で待ち合わせなんて、やめろよ」
 そう言って、俺は隣のブランコに腰をかけた。

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私を名前で呼ばないで!

18/11/17 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:121

私は名前が本当に嫌いだ。子どもの頃からとにかく嫌いで、私の名前を呼ぶ子には頭を下げて違う呼び方をしてもらうほど嫌いだ。古臭くて可愛らしくない、そして名前の響きが恥ずかしい民子という名前が嫌だった。
「大橋さんの名前、民子って呼んでいい?」
「ごめん。私のこと名前で呼ぶの止めてもらえない?」
小学生の頃からこんなやりとりをしてきた。すんなり受け入れてくれる子もいたけど、多くは「どう・・・

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モルモットくん

18/11/16 コメント:0件 笹岡 拓也 閲覧数:143

僕のことをクラスのみんなは【モルモット】と呼ぶ。学級崩壊に近いクラスの雰囲気に先生も諦めていて、授業で生徒に問題をやってもらう時には僕ばかり指名する。僕はクラスで目立たない人間で、言われたことはなんでもやってしまう性格だから先生にとっては使い勝手がいいようだ。
「ちょっとこれ君が解いてくれる?」
「分かりました」
こんなやりとりは日常茶飯事で、そんな姿から先生のモルモットとして使・・・

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くっつき虫

18/11/16 コメント:0件 吉岡 幸一 閲覧数:50

「おい、くっつき虫じゃないか。こんなところで会うなんて、いままでどこに隠れていたんだ」
 男に呼び止められた女はビルの出口に立ち止まった。逃げ場を探すように辺りを見渡したが、すぐに視線をまっすぐに男に向けた。
 風がつよい日で銀杏の木からは黄色い葉が舞い落ちていた。踏み潰されたぎんなんの尖った臭いが鼻を刺すようで、道行く仕事帰りの会社員たちは足もとに気をつけながら歩いている。
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僕のあだ名を忘れた私は

18/11/15 コメント:1件 夢野そら 閲覧数:71


ある夜、私は夢を見た。


淡い古いあやふやな記憶がそのまま映像化したような、ぼやけた世界の中に僕はいた。

「おーい!◯◯!」
誰が呼ばれた?僕が呼ばれた?
おずおずと振り返ると、不思議そうな顔をした森田和樹がいた。小学生だった。ああ、なるほど。周りを見ると、田中裕也や、岸本凛、見知った顔がいくつもあった。
「反応おせーな、◯◯。早くボール・・・

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ラベリングリアル

18/11/13 コメント:1件 どようび 閲覧数:128

 アザヤ王の元に命を芽吹かせたイズフヤ王子は、当時の世界の女帝や、歴史上の美しい人達の事については誰よりも知識を有していましたが、しかし、生活の知恵については人一倍乏しいのでした。街の美麗な娼婦の名前を一つ覚える度に、食事の作法を一つ忘れてゆきます。隣町の、腰回りが民家の柱の細さ程度しかないイゾフラ嬢の話を聞き、唖然としてナイフを落として「済まない、フォークを拾ってくれ」と発言した時、アザヤ王は憤・・・

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いつかの誰かみたいに

18/11/12 コメント:2件 上木成美 閲覧数:96

羨ましかった。あだ名、ニックネーム。それは、友達の称号。君は友達だよ、と認められた証。どんなにふざけたあだ名でも、皆がその名を自ら進んで呼ぶのだ。佐知子という子の「さっちゃん」ですら、私には羨望の対象だった。常に苗字で呼ばれる人間はもはや名無しと同じなんじゃないだろうか。名簿を見るたび、テスト用紙に名前を書くたび、私は自分の名前の魅力の無さを嘆いた。

いつも明るくて華があって皆の人気・・・

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ゴキブリ

18/11/12 コメント:1件 hayakawa 閲覧数:93

 小さい頃、壮太と名付けられた少年は、発達が遅く、幼稚園に入学しても友達も作らずに一人で過ごしていた。
 壮太の母親はそんな彼を懸命に幼稚園に通わせようとしたが、彼は泣き叫んで嫌がった。母親はそんな様子を見てとても不安な気持ちになった。
「この子の将来は大丈夫かしら?」
 母親は父親に問い詰めた。
「大丈夫だろう」
 寡黙な父親はそう言って酒を飲んだ。仕事はできるが、・・・

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いのち

18/11/12 コメント:0件 たま 閲覧数:116

 90年も生きると名前なんていらないと思うことがある。

 私が暮らしている介護施設は全室個室で、80名ほどの入居者がいるが、食事時に廊下や食堂で顔を合わす程度だから、名前なんて覚える必要もなかった。というか、入居者のほとんどは痴呆症とかで、挨拶もろくに出来ないから、名前を覚えてどうのこうのという付き合いは、ほとんど出来なかったのだ。
 でも、名前のない付き合いは、もうひとつ気分・・・

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