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  2. 第169回 時空モノガタリ文学賞 【 純情 】

第169回 時空モノガタリ文学賞 【 純情 】

今回のテーマは【純情】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2019/07/29

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2019/05/20〜2019/06/24
投稿数 63 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評

投稿済みの記事一覧

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19/06/24 コメント:0件 入江弥彦

 初期衝動はもう残っちゃいない。
 六畳一間に彼女と二人暮らしをしていて貧乏ながらも幸せだ、と見栄を張りたいところだが、残念なことにこの部屋は四畳半しかないし彼女はつい先月出て行った。最初のころは大好きでたまらなかったはずだけど、最近では狭い部屋に一緒にいるのが苦しくて、いつになったら就職するのと言いたげな視線に耐えかねていたからちょうどよかった。
 一息ついてギターを鳴らすと隣の人が・・・

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ヨシコちゃん

19/06/24 コメント:0件 入江弥彦

 僕がまだ幼稚園児だった頃、帰り道で猫が死んでいた。
 寝ているものだと思って近づいた僕の手を慌てて掴んだお母さんが、顔をしかめて口を開く。
「触らないの、汚いでしょ」
 その猫が死んでいるということを告げたお母さんが僕の手を引っ張って帰路を急ぐ。
 生きている猫は可愛いのに、死んでいたら汚いなんてどういうことだろう。汚いのなら、洗ってあげたらいいじゃないか。
 ねえ・・・

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キラキラ星幻想曲

19/06/24 コメント:0件 青苔

 空を見上げるのが好きだった。
 幼い頃は祖父の膝の上で、空を見上げながら、よく昔話を聞かせてもらったものだ。そう遠くない、昔の話。祖父が子供だった頃の話。
 祖父は子供の頃、地球に住んでいた。
 地球というのは青い星で、水がたくさんあるから青いのだと、祖父は懐かしそうに空を見上げていた。空にはたくさんの星にまじって、祖父の住んでいた青い地球も見えていた。それは明るい水色に輝き、・・・

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彼女たちの純情

19/06/24 コメント:0件 みや

ー五人組ネットアイドルグループのピュアホワイトが二年間の活動を終え解散して一ヶ月、彼女たちのその後ー

Aのその後
Aはグループでもあまり目立つ存在では無く控えめなキャラクターが売り物だった。Aは解散後に新しい就職先探しに苦心していた。高校在学中からピュアホワイトに所属していたのでアイドル以外の仕事をした事が無く、求人募集に履歴書を送っても書類選考にすら引っかからない。何通履歴書・・・

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自動ドアより愛をこめて

19/06/24 コメント:1件 宮下 倖

 わたくし、自動ドアです。
「壱ノ瀬堂」という古書店で仕事をしております。繁華な商店街から一本奥に入った路地にある、こぢんまりとした店舗の出入口で仕事に勤しむ日々です。
 店の前には鉢植えが並び丁寧に手入れされています。その花たちに誘われてくる虫たちや、悠然と闊歩する地域猫たちの姿を眺めながらののどかな仕事がとても気に入っております。
 さて、自動ドアの歴史が存外古いのをご存知で・・・

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dead of the Childish night

19/06/24 コメント:0件 森音藍斗

 現実の人間関係に疲れて出会い系サイトに登録した。
 誰とも会う気はなかった。顔写真の欄には、私が趣味でよく撮る雰囲気写真を載せた。男女の仲に関する生々しい項目はすべてパスして、趣味の欄だけちょこちょこと埋める。
 どんなことを書いたらどんな人間が寄ってくるのだろう、という興味本位の実験も兼ねていて、まあどうせ、現実と同じ、いや現実より露骨に、血の気の多い男共が可愛い女の子を求めて目を・・・

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妹の純情

19/06/24 コメント:0件 要諦の山

 変わった名前の人というのは、たくさんいると思う。最近では、キラキラネーム、なんていう言葉もある。
 名前をつけた側にも理由はあるだろうから、一概にそれがいけないとはいえないかも知れないが。
 僕の妹も、ちょっとだけ変わった名前をしている。
「純情」とかいて、「こころ」と読ませる。はじめて妹の名前をみる人は、たいてい「じゅんじょう」と読んでしまう。
 まぁ、仕方がないだろう・・・

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産卵する乙女

19/06/23 コメント:0件 冬垣ひなた

 アフター5にカラオケへ誘う同僚を断り、ほのかは予定通り5時21分の上り列車に乗る。冷房の利かない車内は混雑していて、夏のスーツ姿ではうんざりするほど暑かった。けれど顔だけは涼しげに装い、ほのかは首を巡らせて周囲を見渡した。
「ほのかさん、お疲れ様です」
 座席に座る少年が軽く手を振った。高校の制服姿が、やや大きく見える。また背が伸びたのだろうか。ほのかは化粧直ししたばかりの目元を緩め・・・

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濁った情熱は戻らない。

19/06/24 コメント:0件 小高まあな

 漫画を最初に描いたのは、小学二年生の時だったと思う。その前から、お絵描きはしていたけれども、文字と組み合わせ、ストーリーがあるものにしたのはそれが初めてだった。
 忘れもしない、夏休みの祖父母の家で。海に行く予定だったのに、台風が来てしまい断念して、ふてくされている私に祖母が用意したのが、裏が白紙の広告の束だったのだ。
 最初はなんとなくのラクガキ。でも楽しくなってきて、ウサギの親子・・・

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純情の師匠、執拗な情操

19/06/23 コメント:0件 mokugyo

「師匠!僕に純情を教えて下さい!僕はお人よしですぐ人を信じて、この世の中の人は実はいい人ばかりだと信じている子供です!こんな世間知らずの僕は純情を極めることができると思うんです!僕に純情の何たるかを指導して下さい!」

弟子の少年はそう言って、目を輝かせている。師匠は、そんな弟子を見て怒りが沸騰してきた。

「このくそ野郎が!」

師匠は思いっきり弟子の頭をひっ・・・

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主演・カノコ

19/06/23 コメント:0件 ササオカタクヤ

そういえばこの前頼んどいた新作映画の件どんな状態だろう。私は制作会社の清水に電話で問い合わせた。
「この前の映画の件どうなった?」
「あぁー純情ですよ」
「ほほう!純情か!」
「はい!純情ですよ!このまま撮影に入れますがいかがですか?」
私はプロデューサー。基本的にどんなものを作るのか確認は必要だが、信頼を寄せている清水だ。作品の質に間違いないはず。このまま撮影に入っ・・・

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同窓会

19/06/23 コメント:0件 みつ1122

 同級生の一人が経営していた料理屋をたたむことにしたので、最期の記念に同級生に集まってほしいという手紙をもらったのは、もう1ヶ月以上前のことだ。そのうち、返事しょうと思っていたのが、あっという間に時間が過ぎた。特に忘れていたわけではない、むしろ、参加しょうか、今回も不参加にしょうか、満員電車のつり革につかまりながら考えていた。
 朝は、家の電気がついているのが見えたり、洗濯物が干してあったり・・・

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アルキメデスの伝説的最後

19/06/22 コメント:1件 土井 留

 科学の本質は現象の解明にあるが、数学は論理の中で完結し、現実との接点を持たなくとも成立する。完全に数学的な人はその世界のみで充足でき、現実への応用を一種の副産物と考える。彼らにとって重要なのは抽象的論理であり、実際的利用は一段下がった目的である。数学者が真に生きる場所は精神的な仮想空間であり、物理的世界は単なる仮住まいに過ぎないのかもしれない。

紀元前3世紀、アルキメデスとエラトス・・・

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マルチタレントの推し☆

19/06/22 コメント:0件 タック

友人の推している女性タレントを、寡聞にして僕は知らなかった。
流行に乗り遅れているのかと危惧したが、友人が言うには、まだ知名度の低いタレントであるようだった。
何を主軸に活動されている方なのか、と尋ねたところ、「アイドル、アーティスト、声優、女優をマルチにこなすタレント」との回答だった。
すぐに、僕はこう感じた。
(それほど多才であるのなら、有名になってしかるべしなのでは?・・・

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ハズレ

19/06/22 コメント:0件 霜月ミツカ

 感情が無くなればいい。
 誰かに言えばこれを取り除いてもらえるのだろうか。そう思っても彼を見てこの胸らしきところにある痛みがなくなるのは少しだけ惜しい気がする。こういう痛みみたいなものを感じると、わたしも彼にまだ近い存在の気がする。だからもう少しこのままでいてもいいかな。

 喜怒哀楽とか、恋心とかそういうものは人間の特権らしい。ほかの動物にはないものだと言われるけれど、それは・・・

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わかっていない

19/06/22 コメント:0件 田辺 ふみ

「先生、好きな人がいるんだろ」
 そう言うと、岩田先生は真っ赤になった。
 おじさん、分かりやす過ぎ。
「い、いないよ」
 ちらりと動いた視線は事務室の方。
 そこには受付の美咲さんがいる。若くて美人で、うん、岩田先生にはもったいない。
「それじゃ、バレバレだよ。なんか、アプローチしてるの?」
「先生は黙ってモテるタイプじゃないんだから、何かしないと」

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愛はカツ

19/06/22 コメント:0件 紅茶愛好家

カツ屋の娘仁美ちゃんはカツが好き。さらに言うとカツが好きな僕のことが好き。
「カッチャンは本当おいしそうにカツを食べるよね」
「私、大きくなったらカッチャンと結婚することにしたわ」
給食でカツが出るたびに僕のことをそう褒めたたえる。自分のカツを1つさらに寄越して、「私のも食べていいよ」とくるから困ったものだ。彼女のくれたカツを頬張りながら本当に結婚するんじゃないだろうなと不安にな・・・

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純情色、霞む

19/06/22 コメント:0件 路地裏

 手が震える。
 シャンプーの詰め替えほど面倒なことはない。一気に注ごうとするとかえって失敗してしまう。急がば回れということだろうか。
 液体を注ぎながら、妻のことを考えた。

「純情色を見たことはある?」
 当時恋人だった妻は、顔に白い粉をはたきながらそんなことを言った。純情色という聞き馴染みのない言葉の意味を彼女に尋ねた。「本当のところは知らない」と答えた。続けて・・・

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純度

19/06/21 コメント:0件 浅月庵

 中学の頃から母親に言われるまま“ウリ”をしていた私は、高校の《純度検査》で数値【32】を叩き出した。
 でも年齢も上がった分、中学のときのように教員に呼び出されることはなかった。むしろ法律上、結婚を許されるランクに足を踏み入れていた。

「私、純度検査のことで先生に呼び出されちゃった……」
 だけど隣の席の永山純子は違った。彼女が不安そうに言った。
「私も中学のとき・・・

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純情仮面 ── 刑事:百目鬼 学(どうめき がく)──第29話

19/06/21 コメント:0件 鮎風 遊

 ホテルの地下駐車場、高級外車にもたれるように男が失血死していた。矢で心臓を射貫かれ、そのせいで辺りは血の海だ。
 被害者は最近活躍が目立つ芸能人、鷲爪尖(わしづめせん)。名からして攻撃的、それなのに無惨にも逝った。マスコミはここぞと食らい付き、報道合戦となっている。
 捜査においては防犯カメラ映像にある白帽子に白いマスクをした男が犯人だと推断した。だが物的証拠は鷲爪を射貫いた1本の矢・・・

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愛しキミへ

19/06/21 コメント:0件 紅茶愛好家

「ああ、あと白の牡丹を1本ずつ、と……以上で」
「牡丹ですね」
 言いながら店員はバケツから牡丹を2本引き抜く。店員はそれぞれの花束に1本ずつを加えバランス良く整えると全体を見て満足げにうんうんと頷いてハサミを持った。余分な茎を切りそろえるザクッという心地のいい音がして茎がぽろぽろとカット台に転ぶ。
 ラッピングが終わるのを待って「いくらですか?」と問う。
「3600円です・・・

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純情病

19/06/21 コメント:0件 嶺 ナポレタン

直人(なおと)はいつものように授業をそっと抜け出し裏門の階段に向かうと、階段にはすでに先客がいた。隣のクラスの由宇(ゆう)だ。

直人と由宇は小学校からの知り合いで、高校に入ってからはクラスは違うものの、会えばわりと話す間柄だった。

そして1ヶ月前ほどから、たまにこうして何の約束もせずとも、階段で顔を合わせるようになっていた。

「由宇ちゃんまたサボってんの?・・・

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お日様

19/06/20 コメント:0件 つつい つつ

 学生時代の友人の理子とランチした。理子は大学を卒業してすぐ上京したから、会うのは2年ぶりだった。
「でも、美結が公務員なんてね。それもちゃんと続いてるんだから意外なもんね」
 食事の後、紅茶を飲みながら理子は私を不思議そうな目で見つめた。
「なんでよ。やり甲斐もあるし私には合ってるよ。で、そっちはどうなの?」
 理子は髪を右手でかきあげ、いかにも苦労してますって表情で言う・・・

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数え切れない優しさがあることを覚えていてよ

19/06/19 コメント:0件 hayakawa

 大学時代に僕と玲奈は出会った。ゼミが一緒だったのだ。僕は適当に発表していたが、彼女は違った。引用文献をこちらが圧倒されるほど調べあげ、教授顔負けの発表をした。彼女はその時彼氏がいて、僕は男友達の一人だった。なんとなく男友達というのは切ないものだ。本当は僕も彼女と付き合いたかった。
 卒業後、彼女は大手の化粧品メーカーに勤め、僕は小さな学習塾に内定を貰うことができた。
 その学習塾は個・・・

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白いてのひら

19/06/19 コメント:0件 待井小雨

 夏のバス停で、ゆらゆらと白い手が揺れている。
 僕はその腕を捕らえたくて必死で走るけれど、辿り着いてもそこには誰もいない。シャツの合わせを掻き毟る様に掴む。
 太陽が火照った体を焼いていく。
 ここで倒れたらあの人はあの時のように現れてくれるだろうか。……逃げて翻ったワンピースの裾。
 やがて到着したバスに乗って振り向いても、もうあの手は現れない。
 あれは幻――そ・・・

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若い感性で描かれた純情って何だよ

19/06/18 コメント:0件 hayakawa

 文芸部には部員は二人しかいない。僕である圭介と愛の高校三年生だ。秋の文化祭で出す小説の短編集を出すために僕らは毎日、小説を書いては顧問の先生に出しに行っていた。顧問の先生は頭の禿げた国語教師で、授業は退屈でおもしろくなく、「ハゲ」と陰口をたたかれている。そんな顧問の先生だが、昔から小説を書いて読んできたせいもあるせいなのか、人一倍、部活動には精を出している。
 僕ができた小説、原稿用紙十枚・・・

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がくあじさいのがっくちゃん

19/06/18 コメント:0件 こぐまじゅんこ

「今日もおひさまが顔をだして、雨がふらないなぁ」
 がくあじさいのがっくちゃんは、しょんぼり。
 がっくちゃんのとなりで、ちょうちょさんが、ひらひらおどっています。
「雨がふらなくて、よかった!」
 ちょうちょさんは、はずんだ声で言いました。
 がっくちゃんは、
「わたしは、のどがカラカラなのよ。雨がふってほしいのに……」

 そのとき、サーサーとシ・・・

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純情だったかもしれない

19/06/17 コメント:0件 要諦の山

 恋愛ゲームのような展開にあこがれたことはないだろうか。
 例えば、幼なじみの女の子とひょんなことから一緒に暮らすようになったとか。
「そんなこと、現実にはほとんどありえない」と思う人もいるだろう。
 それでも、そういう展開にひそかにあこがれている、という人も中にはいるのではないだろうか。
 実を言うと、僕もそんなことを夢想していた時期はあった。
 けれども、あこがれ・・・

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理由

19/06/17 コメント:0件 秋 ひのこ

 それを男と女なら純愛だと、ひとは言う。
 相手を想って想って、どうしようもないくらい大切な、尊いこころ。
 たとえこの気持ちが「愛」ではないにせよ、私はだったら、何と呼べばいいのだろう。

 ユキはいつも、耐えていた。
 家庭環境に、高校の副担任、F島に。
「別れてくれない」
 と、ユキが私に暗い顔を見せる。
「怒鳴るし、髪とか引っ張られて、土下座・・・

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ラセツ

19/06/15 コメント:1件 土井 留

 純情‐計算を抜きにして、相手を信じて疑わない気持ち(様子)‐『新明解国語辞典』第7版

1936年2月26日午前10時頃、陸軍大臣官邸内

 磯部浅一は得意の絶頂にあった。
 若手陸軍将校の一団は、日本を蝕む元凶をまさに一掃しようとしていた。
 私利私欲に走る政党政治家、資本家と手を組んで日本を食い物にする軍閥の領袖、そして宮中で専横を極めた奸臣たちが、仲間と・・・

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川端文学の「純情もの」

19/06/15 コメント:0件 治ちゃん

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メール・デート

19/06/14 コメント:0件 治ちゃん

・・・

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偽りのない

19/06/11 コメント:0件 藍田佳季


 人間は年齢が上がれば上がるほど、純粋な部分は減る。
 けど、奥底にはある。
 それが働いた結果が、いまのこの状況。

 顔を合わせて三日の相手。それを心から信じて前に進もうとしている。
 これから共に生きていく相棒だと信じて。
 
 信じた先に何があるかは分からないけど、覚悟はできている。
 それがないとどこへも辿り着かない。

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ミラクルツイン

19/06/08 コメント:0件 とよきち

 足は一本、翼はひとつ。おまけに頭も嘴も半分しかない奇妙なひよこ。
 子どもの頃に読んだ童話に出てくるそのひよこは、まるで僕たちだった。
 というのも、高校で『ミラクルツイン』と呼ばれる僕たち双子は成績が優秀で特別視されてはいたけれど、いみじくも、その呼び名にはもう一つ意味があったからだ。
 僕と弟の理央は、別々の身体でありながら、情報と感覚を共有している。
 理央が得た情・・・

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教授、うんこから前世を語る。

19/06/07 コメント:0件 堀田実

「うんこを笑うのは小学生の昔からの特徴ですが、実はその昔というのは人類が始まって以来ずっと続いているものではないか、と私は時々思うのです。」

 満開だった桜も散りはじめた頃、教授は入学したばかりの新入生たちを前にして唐突に話し始めた。

「生物学的に考えるならそれはおそらくうんこを笑うことが種の保存あるいは生存競争に勝つために有意なものだったから、ということになりましょう・・・

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メスのホンノウというやつ

19/06/07 コメント:0件 秋 ひのこ

 冴島先生は、セイブツガクテキ魅力に満ちている、とフーコは思う。

「主君の敵を討つべくここで秀吉が中国からすっとんで戻ってきたわけだ。すごいだろ、早いだろ、ありえないだろ」
 秀吉の中国攻めのあたりから、冴島教諭はいつもに増して熱い。本能寺の変でやられてしまった信長そっちのけでやたら秀吉を語る。
 10月に入ったというのに空気はまだ熱を帯び、冴島は片手にチョーク、片手に団・・・

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咄嗟の他人行儀

19/06/07 コメント:0件 悠真

 電車が停車したことを体で感じ、ドアが開いたことを耳で知る。開いていた文庫本から一瞬だけ目を離し、窓ガラス越しにまだ降りる駅ではないことを確認。その目は再び文庫本に戻って文字を追う。
「もしかして、津村さん?」
 顔を上げると、数年前に別れた彼が立っていた。
「いいえ、違います」津村は咄嗟に否定してしまった。どうしていいかわからず、視線を落として本の世界に逃げる。
 しかし・・・

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その男、盲目につき

19/06/06 コメント:0件 悠真

 早く食べ終わったので、何をするでもなく席に着いたままぼんやりしていると、トレイを持ったマキさんが視界に割り込んできた。
「やあ。ここ、いい?」
 僕が返事するより先に、マキさんは椅子を引いて向かいの席に座った。トレイの皿には野菜と果物しかない。
「ダイエットですか?」
「人聞きが悪いな。私がダイエットを必要とする体をしているように見えるかね」マキさんは顎を引いて、顔を斜め・・・

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Fってきっと古川くん

19/06/05 コメント:0件 路地裏

 日下部さんからメールが届いたのは、二日前のことだった。
 古川くんが亡くなった。古川くんは、高校時代のクラスメイト。日下部さんもまた、そうだった。
 驚いたのだけれど、彼が亡くなったのは一年前のことらしい。日下部さんは彼の死を受け入れるのに、人より少し時間がかかってしまったそうだ。

「お待たせ」
 そう言って現れた日下部さんは、すっかり大人の女性になっていた。白い・・・

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ルーイン

19/06/03 コメント:0件 村沢走

「夜に浮かぶ雲が好きなんだ」と、彼女は言った。長い睫毛を瞬かせている其の姿は、僕の腹案をも冥暗の内。鮮やぐ絶佳も輔弼の内。504号室の中で彼女は告げた。御馴染みの姿で、彼女は言った。「哲也君。ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックというのを知ってるかい?」。僕は、「嗚呼」と即答し、「Aという無理難題を先に投げ、妥協したとみせてBを通す遣り方な」と、付け加える。「うむ」。と、納得した様に彼女は応え、次・・・

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私は成長したのかもしれない

19/06/01 コメント:0件 糸井翼

夏の暑い日に祖父母の家に顔を出した。子どもの頃からいつも同じ、パッケージに変な子どものキャラクターが笑っているアイスを出してくれる。祖父母にとっては私はいつまでも小さな孫なのだろう。社会人になると普段は絶対選ばないが、味覚は子どものままなのか、それとも疲れているせいか、冷たくてこってり甘いこの味は、本当に美味しいと思う。
「じいちゃんは、一人で寂しくなったら、つばさちゃんの小さな頃の写真を眺・・・

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確かにあれは、恋だったんだよ

19/06/01 コメント:0件 小峰綾子

窓におでこをつけて景色を眺めていた。あっという間に、思い出に浸る暇もないスピードで流れていく景色。

そこには見慣れた人の姿があった。手を振っている。それは、私の愛しい人…

なんてこと、ドラマでもあるまいし起こらない。そもそも新幹線のスピードじゃ無理である。

せめて最後、一度だけ会ってくれないか。

先生の、最後の、たった一度の我儘ともいえるメッ・・・

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おはな

19/06/01 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 おひさま さんさん
 おはなに水をあげましょう
 さきちゃんが じょうろをもって
 じゃあ じゃあ じゃあ
 おはなは ごくごくのんじゃった

 かぜさん そよそよ
 おはなをゆらす
 おはなは るんるん おどってる

 あまぐも もくもくやってきて
 あめが しとしとふってきた
 おはなは シャワーをあびながら
 い・・・

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純情くん

19/05/31 コメント:0件 吉岡幸一

 純情くんは今夜も駅の高架下でポストカードを売っていた。手描きのイラストに小さな朱印が押されたポストカードを敷いた布の上に並べて、折り畳み椅子に座りながら人々が通りすぎていくのを黙って眺めていた。
 ときどき通りすがりの会社員や酔っ払いが興味半分にポストカードを眺めていたが、金を出してまで買おうという人は滅多にいなかった。皆、鼻で笑っては手に取ったポストカードをすぐにもとの場所に戻して立ち去・・・

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公園に眠るファラオ

19/05/31 コメント:0件 とよきち

 食卓に飾られた花瓶に僕は眉をひそめる。嫌な予感がした。
「どうしたの、これ」と妻に聞くと、航太くんから、と彼女は口元を綻ばせた。小学三年生の航太は姉の子どもで、つまりは僕の甥にあたる。花瓶に活けられた白い百合の花はやや萎れてはいたが、綺麗だった。僕があまりにその花を睨みつけていたからだろうか。妻は苦笑した。
「なあに、ヤキモチ?」
「まさか」
 ふんと僕は鼻を鳴らす。

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ゼロの底の純情

19/05/29 コメント:0件 堀田実

 ある日突然すべての数がゼロになるように定義された。数字の定義が変わったのだ。ゼロにはいくつ足してもゼロになるし、いくら掛けても割っても引いてもゼロのままだ。
 そんなほんの少しのお遊びのような違いが途端に世間の常識を一変させてしまった。
「昨日のテストを返すぞ」
そう言って一人一人に採点結果が配られる。
「川上よくできたな0点だ」
「山岸、全然勉強してなかっただろう・・・

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純情な君

19/05/28 コメント:0件 路地裏

 裸の男が寝ている。
 ベッドのシーツは捲れあがり、私の下着も男のものも部屋に散乱している。私はベッドに頬杖をつきながら、だらしなく眠る男を眺める。
 それは、綺麗な死体みたいだった。

 テーブルに置かれた煙草を手に取る。オレンジ色のライターは、コンビニで適当に選んだものだろう。
 私は煙草を吸わない。昨晩煙草を吸っていた男の姿を思い出しながら、不器用に火をつける。・・・

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埋まった

19/05/26 コメント:0件 村升 青

ある雨の日の放課後、親友に伝言を伝えられた。
「雪絵が、タイムカプセル埋めるから裏山に来て欲しいって」
にやけてそう言う彼は、良い奴だが嘘も多い悪戯好きだったので、一瞬驚いた僕はふうんと平静を装い、傘を差すといつも通り一人で家に帰った。
次の日登校すると、幼馴染の雪絵はいつも通り席に着いていた。
僕が来てもおはよと笑うだけだったので、やはり彼の言葉は嘘だったのだと僕は胸を撫・・・

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夏の親友

19/05/25 コメント:0件 海見みみみ

「あなたの血、マズイわね」
 突然聞こえた声。ジュンがビックリしていると、目の前に一匹の蚊が現れました。
「こんなどんよりして薄暗い味初めてだわ。……あなた、見ない顔ね」
「私、ジュン。小学一年生」
「なるほど、この家のおじいさんの孫ね。……アナタ、今夜はおいしいものを食べなさい。それで血がおいしくなったら、また吸いに来てあげる」
 そのまま蚊は飛んで行ってします。蚊・・・

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純情性癖モラトリアム

19/05/25 コメント:0件 クナリ

 メロンシロップを混ぜたプリンのようだ、と自分の髪を見て自分で思う。
 高校一年生の九月、私の通う教室では、異質なものを見る目がいつも遠慮なく突き刺さってきた。

 放課後、いつものように一人で帰る。
 ふと体育館の裏を見ると、貧弱な外階段の踊り場に、同級生の男子が座っているのが見えた。
 工藤という、黒髪に眼鏡の真面目野郎だ。
 工藤の視線を追うと、その先には・・・

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新生物

19/05/24 コメント:0件 R・ヒラサワ

「私にしてみれば、タチバナ君だって『新生物』の様なものだ」と、所長は心の中で思った。
 所長の居る研究所は、食品会社が百パーセント出資している子会社で、主に原料となる植物の研究をしており、品種改良による理想の苗を開発するのが目的だった。
 数名いる研究員の中で、一番若手のタチバナは、所長と親子ほど年齢が離れていて、その扱いに頭を悩ませていた。
 基本的に打たれ弱い。注意するにも気・・・

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純情のありさま

19/05/24 コメント:0件 マサフト

何かにつけて心は平静を失う
いかにしてこの激情を説明したもうか
身体は動かぬままなのに
中身だけが暴れる様な
頭は冷たく冴えているのに
胸中だけが騒いでいる様な
大声を出しながら静謐を保つ
駆け出しながら静止する
そんな矛盾を抱えているのです
道理に合わない ちから なのです

何かにつけて心は羞恥する
いかにしてこの倒錯を鎮・・・

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純情グミ

19/05/23 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 田所靖といえば、これまで寝た女はそれこそ星の数ほどと豪語するまさに現代のカサノヴァともいえる男だった。ことその道にかけては彼の足下にもおよばない私からみれば、まったく羨ましいかぎりで、彼の女性遍歴をこうして酒場でグラスをくみかわしながらきかせてもらうのがせめてもの慰めだった。
 田所の、過去に関係した女の話を、微に入り細に入り、包み隠さずはなすのをきいていると、あたかも自分がその場にいたか・・・

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純白のサメ

19/05/22 コメント:0件 海見みみみ

 小学生四年生の夏休み。ボクはサメを飼い始めた。シャーク、海のギャングのサメだ。
 夏祭りに行った時のこと。おこづかいを握りしめ出店を見て回っていると、奇妙な店があった。『鮫屋』と書かれたその出店の前には、大きな水槽が置かれていた。水槽の中には真っ白な手乗りサイズのサメが泳いでいる。
「こいつはエモクイザメ。特別なサメだよ」
 店主のおじさんがボクに気づき、声をかけてくる。ボクは・・・

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美少女愛里の純情

19/05/22 コメント:1件 笹峰霧子

 愛里は町はずれの中学を終えると市の高校へ入学した。高校は自宅から自転車で20分ほどの距離にあった。中学までの友達はそれぞれ進路別の高校を選び散り散りになったので同じ高校へ進んだ者は数名にすぎなかった。

 中学校までは一番で通した愛里もこの学校ではついて行くのが精一杯というほど良くできる生徒が集まっていた。
 一年生の時は友達もいなかったので、授業が終わるとすぐに帰宅してピアノ・・・

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私は空っぽなただのカラス

19/05/21 コメント:2件 浅月庵

 昼休みにミサトと、私の終わった恋愛について話をしていると、彼女が核心をつく。
「リカってさ、才能ある男に弱いんだね」
 あはは。図星だ。高一の始まりから秋頃までに、すでに七人の男と付き合い、別れた。同じ高校のサッカー部やバスケ部の有望選手。後は軽音楽部のギターボーカルなんかと付き合った。私の目には例え顔がイマイチだったとしても、なにかしらの才能さえ感じられれば、彼らが宝石のように映っ・・・

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純情ボート

19/05/21 コメント:1件 犬飼根古太

 その村には「クロフネ」と呼ばれる小さな黒い舟があった。
 なんの変哲もない古びた小舟だ。
 だが、まるで秘密基地を少年少女たちが代々受け継ぐかのように、クロフネは若者たちに受け継がれ、彼らにとってなくてはならないものとなっていた。

 先月中学三年に上がったチハルは、黒い詰め襟の制服の胸元を少し緩め、苦しそうに告げた。
「俺、高校は……都会のとこに行こうと思うんだ」・・・

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放棄した彼女を放置した僕

19/05/21 コメント:1件 悠真

 今になって思えば、あれは初恋で、一目惚れに分類されるものだったのだろう。
 二年前の春。中学生から高校生に肩書きが変わった四月。初めは気もそぞろだったが、一週間もすれば中学校と変わらない雰囲気が形成された。そんな中、僕は一人の女子を意識するようになる。決して外見に魅かれたわけではない。それもそのはず。彼女はおしゃれ要素が皆無の、どこか古さを感じさせる丸メガネをかけていて、伸びるままに任せた・・・

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六根清浄の蛭

19/05/20 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 友樹とその一行は巡礼の旅の途中でみつけた一軒の食堂に足をふみいれた。聳え立つ神山を望む聖地を目前にしてのことだった。
 友樹はテーブルに座り込んだ仲間たちの一様にうち沈んだ顔を、ゆっくりと見まわした。
 みんな心に深い苦しみ、癒されることのない悩みを抱えていた。ある人は宗教にすがりつき、ヨガ、瞑想、なかには神秘思想にのめりこむものもあったが、結局何をしてもいっそう煩悩がますばかりとい・・・

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移住

19/05/20 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

 どんより曇った空に響く拍子木の音も湿りがちだったが、その音にひきつけられて集まってきた子供たちが、たちまち公園の中央に繁みをひろげる木の下にかたまった。
 かれらのまえに止まっている自転車の荷台には紙芝居の舞台がすえられ、女性が一人、その舞台の横にたち、おもむろに紙芝居のはじまりを告げた。
 子供たちは、次々と展開する絵にあわせて語られる女性の、巧みな口ぶりにたちまち魅せられたように・・・

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星空

19/05/20 コメント:1件 風宮 雅俊

 夕陽を左に受けながら高速道路を一時間ほど走ると、アマチュア天文家の観測ドーム群がある。その一角にあるのが僕たちの観測ドームだ。
 そこには、無粋な街の光はない。街路灯もない。時折見えるのは水平線を滑るように進む貨物船の光だけだ。
 夕日が西の空をオレンジ色に染めた後、東の空から藍色が広がってきた。
 星空の開催だ。


 天体観測が毎週の楽しみになったのは、さ・・・

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キレイなドロ水

19/05/20 コメント:2件 海見みみみ

 人生に嫌気がさして、ドロのように眠っていると、目覚めたら本当にドロになっていた。待って、ワタシは二十五歳。独身のフリーター。彼氏なし、ついでにお金もなし。
 でも今の姿はどうだ。どこからどう見ても、ドロドロのドロ。当然ベッドで寝ていたので、寝具はドロだらけ。まだシーツ買い換えたばっかりなのに。いや、今はそんなことを気にしている場合じゃない。
 人間からドロに変身してしまい、正直ワタシ・・・

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スミレ先輩

19/05/20 コメント:2件 R・ヒラサワ

 入社二年目のカンナは、今でもスミレ先輩からアドバイスを受ける事が多い。
「ねえカンナちゃん。裁断機で紙を切るときは、一枚目を半分に折って印を付けておくと綺麗に切れるわよ」
「はい、スミレ先輩」
 スミレ先輩は入社八年目の事務員だが、男性並みに機械類に詳しい。女子力高めのナヨナヨした事務員を嫌い、男性社員からも一目置かれる存在だった。
「男の人って、結構このあたり気にする人・・・

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