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第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】

今回のテーマは【あだ名】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2018/12/24

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2018/10/22〜2018/11/19
投稿数 46 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 皆さまあけましておめでとうございます。2019年もよろしくお願いいたします。今回はお題に無理に合わせたような作品がやや多かったかもしれませんね(確かに難しいお題だとは思いますが)。「あだ名」の必然性という意味では、受賞作の『消し炭になった畑中君はゴミじゃない』は「いじめ」という独自のテーマと「あだ名」がしっかりリンクしているところが良かったと思います。数という意味ではではやや盛り上がりに欠けたコンテストとなりましたが、次のコンテストの「504号室」は投稿数が少なくとも面白い作品が多いように感じます。今年も量よりも質の高い作品を期待しております。   『ミセス・スイートポテト』 ふかし芋のように素朴な温かい家庭の雰囲気が伝わってきて印象的でした。コンプレックスを長所に感じさせてくれた正幸は、塩味の混じった芋のようにちょうどいい加減で心を温めてくれる相手だったのですね。 『八重歯』 八重歯の悩みの詳細なエピソードによって、少女らしい悩みや母親の寂しさなどが具体的に書かれているのが良かったです。そういえば昔は八重歯のアイドルもいましたが、最近は整った歯並びの美人がもてはやされていて、なんとも時代の移り変わりを感じますね。 『僕の子猫ちゃん』 成長とともに幼馴染との距離ができてきて、しだいに気楽に名前を呼べなくなってゆく寂しさが切ないです。お題を通して不器用な恋心を描く努力が伝わってきて、好感が持てる作品でした。 『KYのNYの山田くん』 奇天烈な名前の転校生を迎えたクラスの反応が面白かったです。特に先生が、戸惑いつつもなんとかクラスをまとめようとする必死さがコミカルで、個人的には好きでした。 『すき間くん』 スライムのようにすき間に入れるという地味な能力自体が面白く、その能力を隠し再びひっそりと生きる男の姿には、哀愁とともに微かにユーモアが漂っていました。しかし彼自身はこの一件があろうがなかろうが根本的には変わっておらず、ヒーローのように特別なものと平凡なもの、その二つがさりげない顔で共存していたのが印象的でした。 『できない思春期にいる私』 コメント欄の指摘通り、「私」と「ゆっきー」とが同一人物だとわかるまでは確かに少々分かりにくい構成となっていますが、最後まで読むとなるほどと納得させられる仕掛けではありました。他人に対して必要以上に気を遣い家族にストレスをぶつけ、結果的に自己嫌悪に陥るという悪循環はきっと誰でも経験があることでしょう。そんな自分を客観的に観察しつつ葛藤する不器用さが印象的でした。 『あだな』 子供の素朴な疑問をシンプルな言葉で表現しているのが新鮮で腹に落ちるものがあり、「わかんない」と言い放つ子供の素直さにクスリと笑えました。わからないことが多いから、子供にとって世界は新鮮さと輝きに満ちているのかもしれませんね。 『ミィコ』 「二浪」と嫌味なあだ名で呼ばれる飼い主「ゴウ」の、反抗的な言葉とは裏腹な寂しさが漂う姿が印象的でした。動物視点ならではの素朴な観察が面白いですね。 『猫に恨みはないけれど、涙滴る川になる』 動物の虐待のニュースを聞くと心が痛みます。あだ名だろうが本名だろうが、そんなことは猫には関係がなく、愛情をくれる相手がやはり一番なのでしょう。

入賞した作品

2

名探偵のナミダ

18/10/31 コメント:2件 若早称平

 義姉のナミさんから久しぶりの連絡がきたのは兄が亡くなって半年経った十月の終わりだった。ナミさんと私は歳が近いのもあり兄の生前は兄抜きでもよく遊びに行ったりしていた。気の合う友達のような関係だったが、兄が交通事故で亡くなって以来、法事以外で会うことはなくなっていた。私と会うことで兄のことを思い出してしまうのかな? などと考えて私から連絡することも控えていた分、「明日会えない?」とナミさんから言われ・・・

3

消し炭になった畑中君はゴミじゃない

18/10/22 コメント:4件 クナリ

 私の高校一年の冬は、中学までとあまり変わらなかった。
 つまり、迫害はされても友達はいない状態だ。

 十二月一日の放課後、関東ならでは穏やかな寒さの中、私は校舎の裏にある焼却炉を目指した。
 ゴミの残り火がくすぶっている間は、その真後ろにいると、人目にもつかず暖かく過ごせる。
 しかし、寒風の中焼却炉に着くと、いつもと様子が違った。
 焼却炉は私の胸くらいの・・・

最終選考作品

1

ミセス・スイートポテト

18/11/19 コメント:2件 冬垣ひなた

 キッチンに腰を下ろして床下の貯蔵庫を開けると、太陽にさらされた温かい土の匂いがした。
 白いポリ袋の中に入っている、濃い紅色をしたさつまいもがようやく食べ頃を迎えた。香津美はどんな料理にしようかと想像して頬が緩む。
 収穫は紅葉の時期だった。40歳を目前にして家庭菜園を始めたビギナーとしてはなかなかの豊作に、宝探しのように家族で競って掘り起こした。とれたてのさつまいもはもちろん食べら・・・

1

八重歯

18/11/19 コメント:2件 そらの珊瑚

 嫌な夢を見てしまった。高校の卒業アルバムの載せるための写真撮影で、カメラマンがとてつもなく面白いこと(だけど具体的には思い出せない)を言い連ねたがために、たまらず私は大口を開けて笑ってしまう。結果、私の左右二つの醜い八重歯がしっかりと写され、アルバムの片隅に……。八重歯を気にして高校時代の三年間、極力人前では笑わないようにしていて、それでも笑ってしまう時には必ず手で口を隠してきたのに。よりによっ・・・

1

僕の子猫ちゃん

18/11/18 コメント:2件 南野モリコ

「ねえ、たかちゃん」
昼休み、僕の子猫ちゃんがまとわりついてきた。

「その呼び方やめろよ」
僕はふてくされて、読みかけの単行本を開くと、僕の子猫ちゃんは、つまらなそうに自分の席に戻っていった。

僕の子猫ちゃんは、僕より3列向こうの斜め前辺りに座っている。

本当の名前は山本さちこ。小学校では皆から「さっちゃん」と呼ばれていた。
母親の手に引・・・

1

KYのNYの山田くん

18/11/01 コメント:2件 三明治

 アメリカの、あのニューヨークから転校生がやってきた。NY生まれのNY育ち。
 男なのは残念だけど……。できればハーフの女の子がよかったな。ウエキ先生と教壇に並んで立っている男の子はハーフでもなく純日本人らしい。坊主頭に半ズボンでボーダーのタートルネック着用。小学四年生にしては、ちょっとオッサン臭い顔をしている。なんとなくだけど島根とか鳥取あたりから来たというほうが、しっくりくる感じがした。・・・

4

すき間くん

18/10/31 コメント:3件 吉岡幸一

 すき間くんの本当の名前は田中一郎という。だが、この三ヶ月間だれも田中くんとも一郎くんとも呼ばない。みなこの平凡な名前がはじめから存在しないかのように、すき間くんと呼んでいる。

 三ヶ月前、T町で地震があった。震度3程度の地震ではあったが、運悪く倒壊した家があって、田中一郎はちょうどその現場に居合わせた。
「母が家の中に取り残されているんです。この潰れた家のどこかで下敷きになっ・・・

1

できない思春期にいる私

18/10/27 コメント:1件 悠真

 放課後の帰り道、改札を出たところで「ゆっきー」と後ろから抱きつかれる。クラスメイトの愛菜だ。
「もう、やめてよ愛菜」と口では嫌がりながらも、それを振りほどこうとしないゆっきー。
 私は愛菜が好きじゃない。そこまで仲良くなった覚えはないのに妙に馴れ馴れしい所が苦手だ。私と距離感が決定的に違う。
「一緒に帰ろ」という愛菜の提案に、ゆっきーは「いいよ」と頷いた。
 私なら断るけ・・・

2

あだな

18/10/26 コメント:4件 こぐまじゅんこ

 おかあさん、あだなってなあに?
 ほんとのなまえじゃなくて、よぶときにつかうときになまえだよ。

 たとえば、
 いぬくんは、
 わんわんなくから
 わんちゃん。

 ねこちゃんは、
 にゃあにゃあなくから
 にゃんこ。

 ぶたさんは、
 ぶーぶーなくから
 ぶーちゃん。


 なきごえできめ・・・

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ミィコ

18/10/22 コメント:2件 荒井文法

 僕の名前はイルヴェライザス。
 お母さんが付けてくれた名前。
 僕の一生の宝物。

 お母さんとは、おっぱいを飲まなくなった頃に会わなくなっちゃった。お母さんはおっちょこちょいだから、きっと迷子になってしまったんだと思う。いつか迎えに行ってあげるんだ。お母さん喜ぶだろうなあ。

 お母さんに会わなくなった頃から、親切な人が僕に食べ物をくれるようになった。とても・・・

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猫に恨みはないけれど、涙滴る川になる

18/10/22 コメント:2件 荒井文法

 名前? んなもんねえよ。

 物心ついたときにゃもう独りよ。誰も頼れねえ。周りは恐ろしいものだらけ。一瞬気を抜けばやられちまう。食事を獲るつもりが逆に獲られたり、地面に置かれてるごちそうを喰って口から泡吹いたり、ぶら下がってるごちそうに噛み付いて檻の中に閉じ込められたり、そういう奴を何人も見てきた。
 分かるか? 名前なんてもんは平和ボケした奴らの遊び道具さ。今この瞬間に死んじ・・・

投稿済みの記事一覧

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浮舟

18/11/19 コメント:0件 青苔

 私は昔、浮舟と呼ばれていた。

 本当の名前は知らない。
 いつからか私はここにいて、私のそばには姉さんがいた。
 姉さんは時々私に昔のことを話してくれる。あんたはこの遊郭の大門の前に捨てられていたのだ、そして私が面倒を見ることになったのだ、と。
 遊郭の中の子供にはたくさんの雑用があったけれども、その合間には子供同士でよく遊んでいた。でも私は、いつからかその遊びに・・・

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【エッセイ】 深夜の救世主

18/11/19 コメント:0件 野々小花

 自宅から歩いてすぐの所にコンビニがある。小腹が空いたとき、コピー機を使いたいとき、急な出費があったとき、とりあえず私はコンビニへ行く。最寄りのコンビニには、日頃からたいへんお世話になっている。
 そのコンビニにある日、筆文字で『救世主、求む!』と書かれた張り紙があるのを見つけた。入口の人目に付きやすいところに貼られたその張り紙をよく見ると、夜勤で働いてくれるひとを探しているらしいことが分か・・・

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月へ行くうさぎ

18/11/19 コメント:0件 みや

「あなたのあだ名は…うさぎですか?」
毛深くて身体が大きく、見るからに熊の様な男性が私に話しかけてきた。
「分かりますか?歯が…歯がうさぎみたいで…子供の頃からのあだ名はずっとうさぎでした。あなたは…熊?」
「はい、見た通りです。身体が大きいので。僕も子供の頃からあだ名は熊でした」
熊の様な男性はそう言ってがははと笑った。ステーションには徐々にたくさんの人々が集まって来てい・・・

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雨のち晴れ!

18/11/19 コメント:0件 宮下 倖

 そもそも大雨の日に生まれたということを良平に知られたのがはじまりだった。
 小学三年生のときに出された宿題がきっかけだ。
 自分が生まれたときのことを家族に聞きましょうというもので、家が隣同士の幼なじみだった私たちは一緒にその宿題に取り組んでいた。
 そばには良平のお母さんと私のお母さんがいて「どんな天気の日だった?」「生まれたときなんて思った?」などという質問に根気よくつき合・・・

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二つ名メーカー

18/11/19 コメント:0件 小高まあな

「ここに、やつが住んでいるのね」
 私は、屋根がやや傾いたその家を眺める。思っていたよりも、ぼろい。稼いでるんじゃないんだろうか。
 まあ、やつの家がぼろかろうが関係ない。
 私はそのドアを軽くノックした。
「たのもー!」
 返事はない。もう一度。
「たのもー!」
 やはり返事はない。が、中から人の気配がする。居留守だな。
「たのもー!!」
 ・・・

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クマの転校生

18/11/19 コメント:0件 森音藍斗

 後ろの席に見慣れぬ女の子が座っていることと、私がクラスメイトに呼ばれるたびに彼女もびくりと反応することに、私は気づいていた。朝教室に来てから、ほんの三十分弱の話だ。
「ねえ、クマちゃん」
 私が椅子を斜めにしながら背後にそう問いかけると、彼女はまた肩を震わせ、そして自分が呼ばれるわけがないと考え直した様子で、それから今に限ってはやっぱり自分が呼ばれていることをようやく認識して顔を上げ・・・

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いつかどこかにある、のかもしれない風景

18/11/18 コメント:2件 アシタバ

 わたしは今日も小さな町工場で働いている。
 
 下町情緒というのが色濃く残るこの地域は特殊である。世界でも有数の近代都市である東京。そうとは到底思えないほどの風景が今でも存在している。
 頭上の空を覆い隠すように高速道路の網が張りめぐらされ、陽の明かりが木漏れ日のように地上へとふりそそぐ。コンクリートに護られたどぶ川がそのわずかな光を反射し、その川沿いに小さな工場がひしめき合う・・・

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吾輩には名前がある。あだ名はまだない。

18/11/18 コメント:0件 ササオカタクヤ

吾輩には名前がある。あだ名はまだない。
どこで生まれたかとんと見当つかぬ。と言ってみたいが吾輩は普通すぎるところで生まれた。ごく普通の家庭で過ごし、当たり前のように一日三食用意してもらえる。朝は学び舎に向かい、夕方には我が家に帰る。そして温かい風呂に入り、ふかふかの布団で就寝する。
こんな生活をしているからか吾輩にはあだ名がなかった。そんな吾輩は密かにあだ名を付けてもらうことが夢だった・・・

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ピンク色の黒歴史

18/11/16 コメント:0件 腹時計

 過去を記憶するとき、何かをきっかけに覚えていることはないだろうか? 何かの弾みで思い出す、というのは、そのきっかけに触れて、誘発されて記憶がよみがえることだ。例えば、スーパーで買ってきたカツオのタタキを食べているときに、幼いころに高知県へ行ったことを思い出す。あるいは、ふとスイレンを見かけると、中学校の中庭の池にもスイレンがあったことを思い出して、ついでに中学生の時、中庭で告白して失恋した思い出・・・

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小バカにされたあだ名から──

18/11/17 コメント:0件 せーる

 カップに紅茶が注がれる音がチョロチョロと部屋に響く。注いでもらった紅茶に口をつけ、ひとススリする。
「もう、この味も苦手ではなくなったな」

──私は中学1年生のとき、当時の英語教師から言われた言葉が忘れられない。
『おっ、その名前の英語読みカッコいいな!』
 私の名前は、柳 赤秀(やこうやなぎ)という。英語読みにするとAko Yanagi。それを大きく褒められたこ・・・

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転校生のあだ名

18/11/17 コメント:0件 山上 太一

午前中の授業が終わり、昼休みが始まった。開始のチャイムが鳴りやまないうちに、十数人の男女が僕の席の周囲に集まってくる。
「さて、朝も話したけどこのクラスでは本名でなくあだ名で呼び合うという決まりがある。君は前の学校ではあだ名はなかったそうだから、これから僕たちで話し合って君のあだ名を決めようと思う」
そう言ったのはメガネザルと呼ばれている男子だ。小柄な体格に大きな目、小動物的な雰囲気。・・・

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あだ名の終わり

18/11/17 コメント:0件 田辺 ふみ

 公園に行くと、涼子はブランコを揺らさずに座っていた。鎖を握りしめ、うつむいた姿が寂しそうに見えた。
「リラ、遅くなってごめん」
 声をかけると、涼子はパッと、顔を上げた。
「ううん、さっき、来たところ。ごめんね、急に呼び出して」
「構わないけど、一応、女なんだから、暗くなってから、公園で待ち合わせなんて、やめろよ」
 そう言って、俺は隣のブランコに腰をかけた。

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私を名前で呼ばないで!

18/11/17 コメント:0件 ササオカタクヤ

私は名前が本当に嫌いだ。子どもの頃からとにかく嫌いで、私の名前を呼ぶ子には頭を下げて違う呼び方をしてもらうほど嫌いだ。古臭くて可愛らしくない、そして名前の響きが恥ずかしい民子という名前が嫌だった。
「大橋さんの名前、民子って呼んでいい?」
「ごめん。私のこと名前で呼ぶの止めてもらえない?」
小学生の頃からこんなやりとりをしてきた。すんなり受け入れてくれる子もいたけど、多くは「どう・・・

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モルモットくん

18/11/16 コメント:0件 ササオカタクヤ

僕のことをクラスのみんなは【モルモット】と呼ぶ。学級崩壊に近いクラスの雰囲気に先生も諦めていて、授業で生徒に問題をやってもらう時には僕ばかり指名する。僕はクラスで目立たない人間で、言われたことはなんでもやってしまう性格だから先生にとっては使い勝手がいいようだ。
「ちょっとこれ君が解いてくれる?」
「分かりました」
こんなやりとりは日常茶飯事で、そんな姿から先生のモルモットとして使・・・

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くっつき虫

18/11/16 コメント:0件 吉岡幸一

「おい、くっつき虫じゃないか。こんなところで会うなんて、いままでどこに隠れていたんだ」
 男に呼び止められた女はビルの出口に立ち止まった。逃げ場を探すように辺りを見渡したが、すぐに視線をまっすぐに男に向けた。
 風がつよい日で銀杏の木からは黄色い葉が舞い落ちていた。踏み潰されたぎんなんの尖った臭いが鼻を刺すようで、道行く仕事帰りの会社員たちは足もとに気をつけながら歩いている。
 ・・・

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僕のあだ名を忘れた私は

18/11/15 コメント:1件 夢野そら


ある夜、私は夢を見た。


淡い古いあやふやな記憶がそのまま映像化したような、ぼやけた世界の中に僕はいた。

「おーい!◯◯!」
誰が呼ばれた?僕が呼ばれた?
おずおずと振り返ると、不思議そうな顔をした森田和樹がいた。小学生だった。ああ、なるほど。周りを見ると、田中裕也や、岸本凛、見知った顔がいくつもあった。
「反応おせーな、◯◯。早くボール・・・

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ラベリングリアル

18/11/13 コメント:1件 どようび

 アザヤ王の元に命を芽吹かせたイズフヤ王子は、当時の世界の女帝や、歴史上の美しい人達の事については誰よりも知識を有していましたが、しかし、生活の知恵については人一倍乏しいのでした。街の美麗な娼婦の名前を一つ覚える度に、食事の作法を一つ忘れてゆきます。隣町の、腰回りが民家の柱の細さ程度しかないイゾフラ嬢の話を聞き、唖然としてナイフを落として「済まない、フォークを拾ってくれ」と発言した時、アザヤ王は憤・・・

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いつかの誰かみたいに

18/11/12 コメント:2件 上木成美

羨ましかった。あだ名、ニックネーム。それは、友達の称号。君は友達だよ、と認められた証。どんなにふざけたあだ名でも、皆がその名を自ら進んで呼ぶのだ。佐知子という子の「さっちゃん」ですら、私には羨望の対象だった。常に苗字で呼ばれる人間はもはや名無しと同じなんじゃないだろうか。名簿を見るたび、テスト用紙に名前を書くたび、私は自分の名前の魅力の無さを嘆いた。

いつも明るくて華があって皆の人気・・・

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ゴキブリ

18/11/12 コメント:1件 hayakawa

 小さい頃、壮太と名付けられた少年は、発達が遅く、幼稚園に入学しても友達も作らずに一人で過ごしていた。
 壮太の母親はそんな彼を懸命に幼稚園に通わせようとしたが、彼は泣き叫んで嫌がった。母親はそんな様子を見てとても不安な気持ちになった。
「この子の将来は大丈夫かしら?」
 母親は父親に問い詰めた。
「大丈夫だろう」
 寡黙な父親はそう言って酒を飲んだ。仕事はできるが、・・・

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いのち

18/11/12 コメント:0件 たま

 90年も生きると名前なんていらないと思うことがある。

 私が暮らしている介護施設は全室個室で、80名ほどの入居者がいるが、食事時に廊下や食堂で顔を合わす程度だから、名前なんて覚える必要もなかった。というか、入居者のほとんどは痴呆症とかで、挨拶もろくに出来ないから、名前を覚えてどうのこうのという付き合いは、ほとんど出来なかったのだ。
 でも、名前のない付き合いは、もうひとつ気分・・・

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私は、花をくれた人の名を知らない

18/11/11 コメント:3件 冬垣ひなた

 一口に言えば、気難しく孤独な老人。
 毎日決まった席で、観葉植物のように音もなく座っていた。
 彼はいつも一人で喫茶店に訪れる。客がいなくなった昼下がりに、カランカランとドアベルの音がしたら間違いなく彼だ。ちょっと近所に散歩という身なりではなく、帽子にテーラードジャケットの知的ないで立ちで、そして30分ほど飲食して帰っていく。
 その老人は客で、私はウェイトレス。場所はコーヒー・・・

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すみれ

18/11/11 コメント:2件 秋 ひのこ

 犬も悲鳴をあげるのだということを、僕はゴンタで知った。
 痛みの内側から引き裂くような、無力でひ弱で情けない声。知らない女と消えた父が置いていった犬を、僕は傷つけることを覚えた。
 ゴンタのことは結構好きだ。でも、最近の僕は自分でもおかしくなるほど余裕がない。父が去って母は仕事と酒に沈み込み、僕は僕で中学では――。
 ゴンタの悲鳴が耳をつんざく。
「うるせーよ、カワタ」<・・・

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百面相の哲

18/11/10 コメント:0件 本宮晃樹

「〈百面相の哲〉、久しぶりだな」
 声を聞いただけですぐにわかった。確認するまでもない。〈百面相の哲〉は苦笑いを顔に貼りつけ、振り返りしなに大きく両手を広げた。「これはこれは。二宮巡査部長のだんな、ご機嫌うるわしゅう」
〈百面相の哲〉は高飛びの間際だった。当局の動きがにわかに慌ただしくなっているのに目ざとく気づいた彼は、足のつきやすい航空便は避け、客船に乗ってタイ王国へ逃げ込むつもりだ・・・

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呪術師の息子

18/11/08 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 山や沢をかけたり、木によじのぼったり、川で蟹や魚をつかまえたりするのに飽きてきた子供たちは、だれいうともなく山里に足をむけた。
 こんもりした繁みのなかに、煙突から煙をたちのぼらせる家がみえてくると、かれらはわざと笑い声をあげては、楽しそうに騒ぎ出した。
 しばらくすると、二階の窓から小柄な少年が顔をつきだしたのを、すかさずダンがみつけた。
「ニッキだ」
 みんなはニッキ・・・

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あだ名で呼んで

18/11/05 コメント:1件 文月めぐ

 いつものように「西本広樹様」というネームプレートを確認してカーテンの中をそっと覗き込みます。ベッドのそばにある折りたたみ式の椅子に腰かけると、夫は目を薄く開きました。あら、起こしちゃった、と思っているうちに完全に目を覚ましたようです。
「ああ、お母さん、来てたんだね」
 そう言って体を起こそうとするのを私は軽く補助しながら「今来たばかりですよ」と笑いかけました
「リンゴは持って・・・

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あなたとあだ名と徒花

18/11/03 コメント:0件 浅月庵

 クラス全員からあだ名で呼ばれているあなたを、私はあだ名呼びすることができない。
 さらに苗字の高山“くん”呼びなのが全然距離を詰められていない証拠なのだけど、身の程知らずなのは重々承知で、私はあなたのことが好きなのだ。

 きっかけは、私があなたに三回も助けてもらったから。風邪気味でぼけーっとして、赤信号の道路にふらーっと飛び出したときに、あなたは私の腕を掴んで引き戻してくれた・・・

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仇名

18/11/03 コメント:0件 新世界

「えー、であるからして、言葉というのは言霊とも呼ばれ、昔の人は『言霊』には力が宿ると思っていた訳だなー。面白いねー」
 大して感情の籠らない声で教師は言った。古典か歴史か、何の授業だったかは覚えていない。百合子はただ窓の外を眺め、流れる雲をボケっと見ていた。

 なぜ? 何がきっかけだったんだろう。
『出ない杭は打たれない』平凡で平和な学生生活の筈だった。心から馴染んでいる・・・

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しょんべん野郎

18/11/01 コメント:0件 hayakawa

 俺には物語の意味もわからない物語。早見という名前の俺はそう思いながらトイレまで向かった。トイレで用を足す。そのことに激しく抵抗感を持っていた。
 しょんべん野郎。
 俺の小学校の頃からのあだ名だ。俺はそう言われることに恐怖した。授業中いつでも抜け出した。
 俺には授業中トイレに行くことが唯一自由になる気がした。
「早見君、トイレで何してるの?」
 女子に中学校の頃、・・・

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天使の呼ぶ声

18/10/27 コメント:2件 

・・・行き、快速・・・黄色い線・・・ご注意ください
―全然来んから心配した、どうしたと?
―三度寝たい、まだねむか
―テスト勉強?
―ううん、昨日遅くまで

 電車が到着し、アナウンスに押されるよう乗客たちが車内に乗り込む。おれは古賀綾子とその友人の後ろに続き、手すりのすぐ後ろに陣取る形となった。
 ラッシュの少し前とは言え、それなりに混んでいる。背中を押・・・

4

ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ、ゴリラ

18/10/26 コメント:4件 繭虫

「五里さんはさ、女の子じゃん。『ゴリラ』ってあだ名、嫌じゃないの?」 HR後の教室に集った三人の『ゴリラ』に詰め寄られ、五里さんは目を丸くした。 しかし、面子を見て納得したのか、すぐにクスリと笑って答える。 「いい。そのあだ名、嫌いじゃないから。『ゴリラ』って、強そうってことでしょ。一目置かれてて美味しいじゃない。私は名字が五里だから普通に呼んでも『ゴリ』だしね。」 五里さんは不敵に微笑み・・・

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忘れられたあだ名

18/10/23 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 さすがに40年もたてば、当時の面影は影も形もないと誰もが思っていた。
 が、同窓会会場のレストランに集まった面々は、たしかに髪が薄くなったり、また白髪もめだつものもいて、最初のうちこそ遠慮がちに顔をみあわせていたものの、老齢の先生を囲んでテーブルに座り、簡単な自己紹介もすんで、食事がはじまり、アルコールもはいって和やかな空気が生まれるにつれ、忘れていた小学生のころの顔が、しだいによみがえっ・・・

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もう一度、呼んで

18/10/22 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 磯子は壁に貼られた売却済の判がおされた売り家の間取り図をみて、満足そうにうなずくと、
「栄ちゃん、やったわね」
 担当者の栄坂のほうをねぎらうようにみた。ふだんめったにほめられることがないだけに彼は、周囲の社員の顔を、照れたようにみまわした。入社以来、彼があつかってはじめて売れた物件だった。
 不動産会社のオーナーをつとめる磯子は、男子社員にひけをとらない大柄の体格の持ち主で・・・

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フゥコ

18/10/22 コメント:2件 荒井文法

 私の名前はリルクレィト。
 父が付けて下さった誇り高き名前です。

 父も母も由緒ある血筋です。私はその末裔ですから、父や母の血筋を貶めるような行いを慎まなければなりません。
 両親は厳粛さと優しさを併せ持ち、日頃の私を見守って下さいました。二人から学ぶべきものは多く、二人は私の師であり、目標でもあります。

 私がまだ年端も行かない子供だった頃、とあるお客様・・・

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ひみつ

18/10/22 コメント:1件 風宮 雅俊

 休日で賑わう、ショッピングモール。行き交う親子連れもみんなウィンドウショッピングを楽しんでいる。

 !

 ベビーカーを押しながら来る夫婦・・・・。そう、あの時はまだ子供だった。他に説明出来る言葉はなかった。


     〜 ・ 〜


 中学校の生活に慣れてくると、小学校の時と女子との距離感が違う事に誰もが気付くようになっていた。・・・

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アイちゃん

18/10/22 コメント:2件 R・ヒラサワ

「アイちゃん」
 小学生ぐらいの女の子が声をかけてきたので、私はニッコリと微笑んだけど、その後は何もしなかった。そもそも『アイちゃん』は、私の本当の名前ではない。
 会社の人に同行して、コンパニオンの様な格好で笑顔を振りまきながら、パンフレットを配るのが私の主な仕事だ。
 これまで小さなイベント会場にしか行った事がなかったが、今日は国内でも有数の大きな展示会場に来ている。異業種の・・・

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