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  2. 第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】

第156回 時空モノガタリ文学賞 【 浮遊 】

今回のテーマは【浮遊】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2018/07/02

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は3作品とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2018/04/30〜2018/05/28
投稿数 102 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数 3
総評 今回は物理的に浮遊するものの中に、精神的な葛藤や所在のなさを重ねた作品が多かったですね。例え作り物の話であったとしても、そこには何かしらの作者の体験や思いが込められているわけで、誰もが同じ辛さや戸惑い、生き難さを内面では抱えているのだなあと感じ、読んでいてしみじみ癒される思いがしました。選考外の作品の中にも、完成度は高くないながらも素直に体験や感情を綴った文章で共感できるものが多々ありましたが、もう一、二段階、練り直す時間や手間をかけて頂きたいなあという気がしたのも事実です。最初からわかっている結論を書くのではなく、文章や構成を練っていくと自分自身でも思ってもいなかったような広がりや、展開が生まれてくる可能性もあるのではないでしょうか。 『フク子さんと惑星ブランコ』老いを受け入れることと、生きようとする意志。若者の自死への想い。一方では宇宙の無重力の世界に憧れつつも葛藤に満ちた現実という重力の中で生きるフク子さんの姿には、ブランコを漕ぐ力と浮遊感に重なって引き付けられるものがありました。答えのない両極の間で我々の人生はブランコのように行きつ戻りつしているのかもしれません。 『シニボタル』生と死の間を漂うものたちの哀しみを理解する主人公が、亡くなった両親に死を悟られまいと気遣うラストがなんとも切ないです。死を直視する強さと死者への優しいまなざしが入り混じった複雑な味わいの作品でした。 『この浮遊する世界で』「浮遊して消えていくだけの存在だとわかっていながら答えのないことを考え続ける」という一文が印象的です。答えのない問いを投げかけずにいられないのは人間の性でもあり、同時に苦しみの原因なのかもしれません。しかしそれは同時に音楽や小説を生む原動力ともなっているのではないかとも思います。 『音を見る』小早川君はきっと、音の空気振動を視覚的なイメージとして受けとることができるのでしょうね。欠如に見えていることは別の視点で見れば欠如ではなく、それは「僕」にとっても同様なのかもしれません。上下の関係性に苛立つ「僕」の閉塞感に、風穴を開けるかのようにダイナミックな音の振動が伝わってくる気がしました。 『晴れのちくらげ』くらげが夜の闇に浮かぶ映像的感覚的な美が印象的でした。幻想的な浮遊感と表裏一体のように存在する毒は、世界に内在する影の側面を象徴しているようで、無邪気にくらげに接しながら痛みを体験する璃子の姿は、子供が社会に同化していく成長過程を見るかのようにも感じられました。 『そらよりとおくで君はふりむく』クローン本人にとっては、あくまで自分は本人に他ならないのでしょう。どちらが本当にせよ、少なくとも何か確かな存在が、この世から完全に消えてしまったことを意味しているようにも思えます。クローンの死に際し、「本物の姫宮はここにいる。なのに涙が止まらなかった」のは、それを二人は肌で受け止めているからなのではないかと個人的に想像しました。奇想天外でユニークな世界観の中にも、胸を刺すような喪失感がサブテーマとして底流にあるように思えて、引き付けられました。

入賞した作品

2

浮遊する言葉たち

18/05/28 コメント:0件 小峰綾子

学校の帰りに100円ショップによってうろうろしている時だった。いつものようにスマホでラジオを聴きながら。耳にはイヤホンが入っている。

隣に立っていた同い年ぐらいの男子が私の方を見てハッとしたようで、何か言っている。イヤホンをしていたので聞こえなかったので、片耳だけ外して
「なんですか」
と聞いた。
「そのステッカー、金曜のラジオの・・・」
私のスマホに張ってい・・・

2

月凪公園奇譚

18/05/28 コメント:1件 宮下 倖

「……防犯カメ……映像……犯人の特ちょ…………不審物には充分……てください……」
 ラジオのチューニングがうまく合わない。一週間前から電波がよくないのでラジオもテレビも調子が悪いが、これはしばらく仕方ないだろう。
「……次は、月凪公園浮遊のニュースです。突如として月凪公園が浮き上がってから一週間が経ちました。各分野の研究者が調査を続けていますが未だに原因は特定できず、周辺住民の不安は続・・・

6

俺とアイツの3時間

18/05/22 コメント:2件 飛鳥かおり

 「急がば回れ」などという言葉がある。
 ちょっとばかし閉所恐怖症の俺は、エレベーターには極力乗らずにいつもは階段を利用する。だが、オフィスのある九階から一階まで降りるのはやはりエレベーターの方がだいぶ早い。
 仕事を終えた俺は、時計を見ると今日は予定より一本早い電車に乗れそうだったので、珍しくエレベーターに乗り込んだ。良くも悪くも、それがすべての始まりだった。

 やはり・・・

6

浮かぶ魚と、セーラー服

18/05/18 コメント:6件 秋 ひのこ

 入り江の先に、オレンジ色のひとの頭ほどの玉が浮いている。一列になって、ぷかぷかと。そこに向かい、泳ぐというか流されるというか、一度も止まらず、まっすぐ進んでいく小さな頭。
 こんなにも私が吼えているのに、振り向きもしない。



 弟のセイジが好きなもの、最大の関心事は、「浮いているもの」だ。
 物心つく頃からずっと。それこそ大人たちが「おや、この子はもしや・・・

最終選考作品

3

フク子さんと惑星ブランコ

18/05/28 コメント:4件 冬垣ひなた

 SNSのタイムラインはまた、校舎から飛び降り自殺した男子中学生の話題で持ち切りだ。
 いじめが原因だって? 何にも悪いことしてないのにさ、「いじめられた方にも原因が」とか「死んだら掃除する人が迷惑」とか言われて可哀想に、あたしも他人事じゃないよ。


 スマートフォンの画面から目を離すと、公園のベンチに腰かけていたフク子は、夕空を眩しそうに仰いだ。
 有り難いお天道・・・

2

シ二ボタル

18/05/28 コメント:2件 そらの珊瑚

 すっかり夜が更けると、小川のそこかしこで青白く光るものが揺らぐ。ゆらーん、ゆらん。蛍だった。
「ばっちゃん、きれいやね」
 私が伸ばした幼い手のひらに、蛍が一匹とまった。いつもそうだった。つかもうとしたわけではない。蛍が自らの意志で、或いは見えざる何かの力に導かれるように私のところへやってくる、そんなかんじだった。
 小さかった私は、葛で編んだ祖母の手作りの籠の中に、その蛍をそ・・・

3

この浮遊する世界で

18/05/23 コメント:2件 向本果乃子

最近、女子中学生につきまとわれている。
ー父親が自分は絶対正しいと信じて疑わないことが嫌!この世に絶対なんてないでしょ
ーえっと俺は君の親でも先生でもなく…
ーだから話してるの!
ーあ、そう
一体どうしてこんなことに。俺はたばこの煙を吐き出して溜息を隠す。
ー客席行く
少女は言い捨て去って行く。俺もベースを持ちステージに向かう。ロリだったのかとバンド仲間が・・・

2

音をみる

18/05/11 コメント:2件 秋 ひのこ

 僕はその日、生まれて初めてレコードというものを聴いた。
 小早川君の家で、だ。

 去年出てきたバンドが今は流行っていて、あとはアイドルから独立した子も人気。中学生の僕らはそういう音楽を聴く。だから、きいこきいこした楽器が重なるだけでメリハリがあるのかないのかわからない音が延々と続き、挙句「歌」がない、という外国のクラシック音楽は、はっきり言って退屈だ。
 それを、小早川・・・

2

晴れのちくらげ

18/05/02 コメント:2件 くまなか

”本日は陽射しは強いですが、空にくらげが多く漂いますので、不要不急の外出は控えて……”

 いつからだったか、璃子には記憶が薄かったが、遠い水平線の空と海とが交じる辺りから、むくむくとくらげが浮くような天気が起きるようになった。酷い時には、十五階建ての十階にある璃子の家の窓ガラスに、茶、白、透き通った青と色々のくらげがぺたりと張り付く。
「窓を空けちゃ駄目。ハブクラゲなんかは猛毒・・・

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そらよりとおくで君はふりむく

18/05/02 コメント:2件 クナリ

 ある日の放課後、俺は同級生の姫宮に、高校の空き教室へ呼び出された。本当は俺は、この時間は期末試験の追試だったのだが。
「柴田君。私、君に告白したいことがあるの」
「えっ」
 俺は心底驚いた。
 俺も姫宮のことが好きだった。高校に入ってからの一年間、ずっと。
「実はね。私、手で触れた物体を浮遊させることができるの」
 そう言った姫宮の手のひらの上方で、シャープペ・・・

投稿済みの記事一覧

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ボトルレター フロム スカイ

18/05/29 コメント:0件 石蕗亮

 昔昔の御伽話 天気の良い日に雲も無いのに陰る時 空から何が降ってきても触ってはいけません。 どんな言葉が聞こえて来ても一切答えてはいけません。 もしもそれらに関わればその日は家に帰られない。 その後も一生帰られない。 帰ってきても誰の目にも見えない触れない聞こえない さみしいお化けのできあがり。 姉が行方不明になってからもうすぐ7年になる。 7年経つと失踪宣告で死んだことになる。 当時13歳だ・・・

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執着を捨てて

18/05/28 コメント:0件 石蕗亮

赤い赤い夕焼けが街中を赤に染めていた。 人も車も街路樹も、赤を纏い赤に彩られていた。 夕陽を浴びた場所は鮮やかに、影を負った場所は赤暗くに、コントラストとグラデーションで街は色彩を奏でていた。 そんな色鮮やかな街の一角にぽつりと、昏い昏い場所があった。 周囲の赤が、そこだけ滲んでいるようにぼやけていた。 そしてその場所だけは、赤というより紅かった。 駅前の人通りの多い場所でありながら、何故か其処は・・・

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プリーズプリーズイラストレーター

18/05/28 コメント:0件 むねすけ

 月に一度、出版社をおどかしに行く。
「よーう、不二家で百個買ったのになんにもオマケしてもらえなかった爺さんです、こんにちは」
「佐野さん。差し入れはありがたいんですけど、不二家さんに迷惑かけないでくださいよ。編集全部でも二十人ちょっとなんですよ? うわ、ペコちゃんのほっぺ全部カスタードだ、恐ろしい」 
「けっけっけ、愉快痛快、セイ?」
「言いませんよ」
「言わなくて・・・

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俺の血をどんどん吸え

18/05/28 コメント:0件 霜月秋介

 耐えている。その男は、ただひたすら痒みに耐えている。夏の夕暮れ、空中に浮遊する蚊は、草刈を終えて汗ばんだ彼の体に容赦なく襲い掛かる。彼はいったいどれだけの蚊に無抵抗で刺されたのだろうか。無数の蚊が彼の血を吸うのを見ていると、見ている私までが蚊に刺されているようで体が痒く感じる。私なら目の前に蚊が飛んでいるのを見つけた瞬間、即座に駆除するだろう。しかし目の前の彼はそれをしない。なぜ黙って蚊に血を吸・・・

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宙 108個の風船

18/05/28 コメント:0件 nekoneko

 風船の群れが用意ドンの合図で一斉に空に放され赤。黄。青。橙。緑。色の風船達が風に煽られながら空一面に広がって行く。同時に、周りからは響き渡る歓声とドヨメキ声。僕は、空中を漂う様に飛び交う風船の群れをボンヤリと眺めながら、その数を数え出した。全部で108個。それから、間が開き。「本日のイベントはこれで全て終了いたしました。」と女性のアナウンスが響き渡り僕の周ると、僕の周りにいる人達が一斉に帰り支度・・・

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遠くの近く

18/05/28 コメント:0件 四島トイ

「保浦先生。テレビやってますよ」
 事務室からの声に応えず、茜色の空を見上げていた。
 夕暮れは、雲の輪郭を切り取り、質量を感じさせる白色が黄金色に縁取られている。見上げる遥か先に、遠い世界が突き抜けていく。
 不意に何かが光った。
 金星、と叫ぶ少女の声が聞こえた気がして、あの日と同じように保浦は耳を澄ませた。


 砂浜に少年少女が座っていた。その背中・・・

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つながり

18/05/28 コメント:0件 アラウンド君


生き物は、どうやってツガイとなるパートナーを探すのだろう。シロナガスクジラは、体が大きいから相手を見つけやすいかもしれないけど、ミジンコみたいに小さいやつだと大変だ。地球みたいな宇宙から見たら、すごくちっぽけな世界の中でも、たまたまか、運命か、全ての生きものたちがめぐりあい、愛を深めていき、次の世代にバトンを繋いでいっている。
そして今。
奇跡的な確率で、君と僕は出会っ・・・

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浮遊する魂

18/05/28 コメント:0件 みや

肝臓の末期癌で入院している七十五歳の私の身体の状態は一週間程前から確実に悪化していて、心電図モニターやら酸素吸入やらがジャラジャラと身体に取り付けられていた。以前からお腹の廃液ドレーンが二本と大きな点滴の管を付けていたので全部で五本、まるで管人間だ、と私は私を俯瞰で眺めながら妙に可笑しくなった。

自分を自分で俯瞰で眺めるなど実際には不可能な事なのだが、今の私にはそれが出来ていた。

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多田くんは浮いている。

18/05/28 コメント:0件 小高まあな

 多田くんはクラスで浮いている。
 クラスの子と話してるところを数える程しか見たことがない。話しかけてもそっけない。休み時間はずっとなにか分厚い本を読んでいる。どんな授業も引くぐらい真剣。お昼ご飯はいつもカロリーメイト。
 決して悪い人ではないけれど、多田くんは他のみんなとの間に一線を引いているし、他のみんなからも一線を引かれている。
 高校生にもなったら、少し違うからといって、・・・

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午前四時の帰り道

18/05/28 コメント:0件 野々小花

 午後六時の世界はオレンジ色に染まっている。僕はいつものように駅前のロータリーでバスを待っている。サラリーマンや制服を着た人々が駅の出口から、まるで吐き出されるようにして出て来るのが見えた。一日を終えた顔には、充実と安堵と疲労が綯い交ぜになっている。
 バスは、バイパスを降りると田園風景のなかを走る。しばらくすると突如として灰色の工場群が姿を現す。その中に吸い込まれていくようにして僕の乗った・・・

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浮いてるセンチにセンチメンタル

18/05/28 コメント:0件 むねすけ

 電車の中吊り広告、ワイドショーのキャッチに一発目、今日も「有名タレントの娘夢落ち消失」の文字と声が無節操な口パクを操って世間を席巻していく。
 世知辛い世を儚む警鐘の具現、供物、なんて使い慣れない殺傷回数の微量な言葉を拾って悦に入るコメンテーターは、夢落ちに無縁なまま人生を終える気でいる。
 目を醒ますことなく眠りっぱなしの息子娘に遭遇するなんてピーナッツのチョッポリほども懸念しない・・・

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六畳間のクリエイター

18/05/27 コメント:1件 冬垣ひなた

 昭和の時代。私がまだ、とても幼かった頃の物語。2軒隣に住んでいたみっちゃんは、私の初めての友達だった。幼稚園に行くのも、遊ぶのも一緒。いつも私は彼女の家まで呼びに行く。 「みっちゃん、遊ぼう」  玄関の内側で待っている間、幼児の私は不思議な気持ちで、振り返って引き戸を見上げていた。  戸と天井までの空間に、それほど大きくない幾つかの絵が額に入れられ、大切そうに飾られている。絵画教室に通っていた子・・・

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浮遊者への着地許可

18/05/27 コメント:0件 光石七

 掃除を一通り終え、私はパソコンの電源を入れた。起動を待つ。顔の無いぼやけたマネキンもどき、ぐにゃぐにゃしたシャボン玉もどきが次々と現れ、自室の中を漂い始める。Wordを開く。
(テーマ【弁当】……。愛妻弁当ならぬ「愛夫弁当」の話は?)
 マネキンもどきの一つが男性の姿に変わる。まだ顔ははっきりしない。自室の一角でシャボン玉もどきが変形して台所を構成する。
(年配の男性かな。男子・・・

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私の祖父のこと

18/05/27 コメント:0件 三明治

 祖父は昭和の初め、浅草六区で奇術師として舞台に立っておりました。
 我が家のアルバムにはタキシードにシルクハットを被りポーズを決めている写真が何葉か残されております。祖母の話によると、垢抜けたスタイルで「種も仕掛けもございません」と云う口上は当時の流行語にもなったそうです。
 ある秋の日、舞台を終えた祖父は「煙草を買ってくる」と云い残し楽屋を出たまま姿を消してしまいました。祖母も周囲・・・

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歌う旅人!現在、熱唱中!

18/05/27 コメント:0件 アラウンド君

今のなんて歌ですか。
 思わず立ち止まって、彼に話しかけていた。
 ここは、世に言う無人駅だった。
各駅停車しか停まらないこの駅は、一日に停車する電車も数える程で、停車したとしても、乗り降りは、数人がほとんどだった。
私は、毎日のように、通勤に使っているが、同年代の女性が使っているのは、見たことがない。多分、こんな田舎から、都会の方まで通勤していくという女性は珍しいのだ。<・・・

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わたしはジャージが被れない

18/05/27 コメント:0件 浅月庵

 すべては、あの日深夜に起きた両親の口論が始まりでした。

 わたしは二階の自身の部屋で就寝していたのですが、一階のリビングから聞こえる二人の話し声が五月蝿く、ついに覚醒してしまいました。時間が経つにつれ罵り声は激しくなっていき、わたしは猛烈に怖くなると、布団のなかで芋虫のように丸くなったのです。
 
 しばらくすると夫婦喧嘩は収まり、わたしは恐る恐る階段を降りて一階へと向・・・

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レイニージャック

18/05/27 コメント:0件 奈尚

 大丈夫だよ、晴。レイニージャックに聞けばいいんだ。
 正しい答えは、彼がきっと教えてくれる。


「さあ、選びなさい」
 夕食後のテーブルに向き合って二人。
 静かに促すと、姪はおびえた亀のように小さく縮こまった。
「……また、後で」
「いや。今ここで選ぶんだ。晴」
「じゃあ、ちょっと……洗面所に」
「後にしなさい」
 少女は困惑・・・

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陰影

18/05/27 コメント:0件 泡沫

 空を見上げれば数羽の雀が青の背景をもって電線に座っている。風は生暖かさを保ちながら、二人の間を軽やかに流れた。  君は何故に僕の左隣を歩く。  目の前に広がるのは、はっきりとした境界のない、ぼやけきった住宅地。街の騒々しさとはとど遠く、僕らはゆらゆらと歩いている。これにははっきりとした理由がないのだから、彷徨っているのと同じだろう。   風景の一部にしか過ぎない僕らにはこの道を踏みしめることすら・・・

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メール便おばちゃん浮遊する

18/05/27 コメント:0件 紅茶愛好家

奥村登代子はその時メール便配達に勤しんでいた。
一冊二十円の契約、サカキ運輸のメール便をバイクいっぱいに積み込み住宅街を駆け回る。今日は朝から日照りが強く日焼け防止のため長袖なのだがそれが余計に暑さを助長する。三丁目の南さんのポストに配達物を入れてバイクに戻り、持ってきていたペットボトルのスポーツ飲料をぐっと喉に流し込む。
「はあっ、生き返る」
額の汗を拭い空を見上げると飛行機が・・・

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神のてのひら

18/05/27 コメント:0件 待井小雨

 長く会わずにいたKという友人から、昨晩「一度会えないだろうか」と連絡があった。「見せたいものがある」とのことで、私は彼を訪ねることとなった。

 Kは都会から離れた山近くに暮らしていた。
「来てくれてありがとう」
 Kは白衣姿で私を出迎えた。その姿と研究所のような建物の佇まいに、「君はまだ、何か研究をしているのか」と尋ねた。
 ああ、とKは穏やかに頷く。通された部屋・・・

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浮遊体験ゴーグル(試作品)

18/05/26 コメント:0件 与井杏汰

「このゴーグルを頭からかぶって。私の顔が見えるか?」  タケルが頷くと、神田博士は言った。 「右上にスイッチがあるだろ? それを手前に引くと浮遊モードだ」  タケルはスイッチをスライドした。 「後は君の意思次第だ。脳波の変化で動作する。慣れるまで少し時間がかかるが、とりあえず動きたい方向をイメージして」  浮け!そう念じると、目の前の景色がふわっと変化した。 「あ、浮かびました!」 「そうか。うま・・・

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超伝導棺桶、時代を切り拓く

18/05/26 コメント:0件 本宮晃樹

「きみみたいな狂人が得意げに面会を求めてくる」多国籍企業〈オデッセイ〉の渉外担当は固く目をつむった。こめかみを揉みながら、「いつかそんな日がくるんじゃないかってずっとビビってた」
「すると、なんですか」と対面する年若い男。彼はあくまで陽気だった。「ぼくがあなたの悪夢を実現した第一号ってわけですね?」
「その通りだ。わかったらとっとと地獄へ失せろ」
「あなたに会うまで苦労したんです・・・

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浮遊

18/05/26 コメント:0件 加藤 小判

 ”5月24日 木曜日”

 僕は、多重人格者だ。
 正確に言うと、僕は多重人格者なのかもしれない。それ以外はどこにでもいる高校3年生。部活には入っていないが、3年生ということもあり受験勉強に勤しんでいる。友達はいない。だが、僕が通う高校は県内きっての進学校ということもあり、友達を作らない人は多くはないが一定数いる。おかげで僕が教室内で特別浮くということは少ない。
 そんな・・・

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踏み出す一歩

18/05/26 コメント:0件 功刀攸

 ある日のことでした。突然ぐらりと揺れる視線の先に、ある男性の泣きそうな顔が見えたのです。
 母と私。よくある母子家庭で、父の顔は知りません。きっと父も私のことを知らないでしょう。何せ、父と母の関係は一夜限りのもの。それ以降、母は父と会ったことも連絡を取ったこともないと言っていたし、私は父の連絡先を知りません。母は父の連絡先を知っているようでしたが、私はどうやら父にとって望まれない存在という・・・

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死体の真似事

18/05/26 コメント:0件 紫聖羅

「やっぱりここにいたか」
 放課後の誰もいないプールで、紗夜は水面に仰向けになってプカプカ浮いていた。制服も靴も着用したままだった。濡れたワイシャツが下着を透かしていて、俺は咄嗟に目を逸らした。
「クラゲってどんな気持ちかなぁと思って」
浮いたまま紗夜は言う。
「違うな。水死体とはどんな気持ちかなぁ、だろう」
「慎太郎はなんでもお見通し……なのかな?」
 ・・・

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なにかが空に浮いている

18/05/26 コメント:1件 志水孝敏

 最初に気がついたのは誰だったろうか。
 もしかしたら、すべすべの真っ赤な風船をはなしてしまった子供が、ゆっくりと真っ青な空のなかの赤いぽつんに変わっていく友達を見送っていて気がついたのかもしれないし、
 満員電車の中で身動きが取れず、空を見上げることしかできないサラリーマンが、初めは目の疲れか、飛蚊症かと思って、目を凝らしてみると驚いたのかもしれない。
 いやいや、考えてみれば・・・

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ツイスミ不動産 物件4:筏(いかだ)ホーム

18/05/26 コメント:0件 鮎風 遊

 目に青葉 山ほととぎす 初鰹
 桜花は散り、はや木々の緑が目を刺す初夏。そんな折に、くたびれた薄手コートを脇に挟み、初老カップルがツイスミ不動産に入って来た。
 営業責任者の笠鳥凛子(かさとりりんこ)課長は一見で、山あり谷ありの人生を共に歩み来て、その終幕にやすらぎの庵を探し求めて訪ねて来たと感じた。なぜなら婦人の手にはツイスミ不動産のチラシが。そしてそこに書かれてある文句が…。

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記録が伸びない私

18/05/26 コメント:0件 笹岡 拓也

記録が伸びなくなった。今まで練習を重ねれば、自然と記録が付いてきたのに。やっぱり6メートルの壁は相当大きい。こんな記憶じゃ全国で活躍できるわけない。
「裕子は幅跳びをするために生まれきたのかもね!」
私は中学で陸上を始めたのにも関わらず、グングンと成績を伸ばしていった。顧問からも驚かれるほどの成績と言われるほどだった。その期待は私の活力へと変わり更なる成績向上へと変わっていく。友人も親・・・

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浮遊する物体

18/05/26 コメント:0件 ちや

 しばらく、目の前をゆらゆらと振り子のように揺れていた白い物体を眺めていた。
揺れは次第に速度を落としていき、いつしか静止する。
そして若葉を通りすぎてきたからっとした爽やかな風が抜けていくと、再びそれは舞い始める。右へ左へ、時にはこちら側にあちら側にと言った風に。

 しばらく眺めていると、自然と首が曲がるし、目が疲れてきて瞬きを繰り返す。
それでも、揺れるそれは・・・

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浮遊する恋

18/05/25 コメント:0件 甘宮るい

 先輩のものだった、2つ上の彼女が誰のものでもなくなった。
 恋をしたのは春のことだった。随分と前の、入学式の日だった。一目ぼれに近かったけれど、一目ぼれではなかった。
 彼女は移り気な人だった。不安定で、美人局な人だと知った。
 街に薄暮の迫る頃、駅前でずっと待っていた彼女から「予定が入った」と連絡がきた。何度目かのことだったから、何とも思わないはずだった。先輩と別れた彼女にど・・・

2

渓谷にて

18/05/24 コメント:0件 みゆみゆ

 お父さんは、吊り橋の真ん中まで歩いて下を見おろしました。干上がった川底の石は実際の大きさが計り知れないほど小さく見えて、お父さんは思わず半歩、後ずさりました。そして顔を上げると、みいちゃんが渓谷に浮かんでいたのです。
 紅葉の季節はとうに過ぎた寂しい山々を背景に、そこだけお花の咲いたような黄色いワンピース。背丈も髪の長さも、道の脇に停めた車ですやすやと眠る、三歳のみいちゃんそのままです。顔・・・

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グラビティ・ゼロ

18/05/23 コメント:0件 新屋鉄仙

 それまで、半年以上同じ女性と付き合ったことがない私が、彼女とは一年も付き合っていた。
 彼女は生まれつき念動力、つまり物を浮かせることができる超能力を持っていた。と言っても、自分自身を地面から十センチほど浮かせることしかできないかわいいものだ。彼女の能力は自分でコントロールできないらしく、喧嘩をすれば怒りながら宙に浮き、感動する映画を見れば泣きながら座高が十センチ伸びたかのように浮き上がっ・・・

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浮かんでいくのは簡単で

18/05/23 コメント:0件 瑠璃

数ヶ月前に、メールでの文通にはまった。本名も、顔も、何も知らない相手との文通に。毎日1通か2通ずつくらいのやりとりを続けた。やりとりの相手は優さんという名前を使っていた。優さんは優しく楽しい人で、親や友達に相談できないようなことまで相談した。人によっては可笑しな話だと思うかもしれない。しかし、私は優さんに恋をしていた。毎日、優さんからのメールだけを楽しみに生きていた。特技や趣味などがない私にとって・・・

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幽体サバイバー

18/05/22 コメント:0件 まきのでら

 強く意識しろ!
 スピードを上げろ!
 俺は俺だ!
 俺の肉体は俺だけのもんだ! 誰にも渡しゃしねえっ!!

 はじまりは何時間か前のこと、その夜は久々に自分を慰めて賢者モードで眠りに落ちた。
 次に目を開けると俺は俺を見ていた。これをどう表現したものか。つまりは意識だけがふわふわ浮遊して自分の部屋の天井から寝ている俺を見ているってヤツ。とどのつまり幽体離脱と・・・

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夢中海

18/05/22 コメント:0件 時津橋士

 深夜。楓は自分のアパートメントに帰ってきた。彼は手早く風呂に入り、歯を磨き、床に就いた。早く眠りたかったのだ。しかし誤解してはいけない。彼は何も一日の疲れをとるために眠るのではない。彼が眠るのは夢のためである。楓は自らが望む通りの夢を見ることができた。しかし、ここにおいても誤解してはいけない。彼が毎晩のように見る夢は決して面白いものではなかった。それはとても痛ましい夢であった。しかし、楓はその夢・・・

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恋愛相談

18/05/22 コメント:0件 若早称平

 父からこのバーを受け継いで二年が経つ。軒を連ねる店の半分がシャッターの閉まったこの平手町商店街の地下に僕がマスターを務める「ラブリーインフェルノ」はある。一刻も早く改名したいくらい絶望的なダサい名前だが父が存命の間は絶対に許さないと言い張るので、僕は血の涙を流しながら今夜もネオンを点灯させる。

 店名のせいなのかこの土地柄なのか客層も個性的な人が多い。もとい、変人が多い。今夜は常連・・・

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私と世界の境界線

18/05/22 コメント:0件 夢野そら

まだ仄暗い午前5時前。家族に気づかれないように家を出て、私は森を駆けていた。右手に携えたほうきと共に。肌に冷たい風を感じながら、木々の間を走り抜ける。もうすぐ日の出。今日こそいけるかもしれない。森を抜けて小さな丘のてっぺんに着いたとき、私は、とんだ。


とんだ、飛んだつもりだったんです。本当に、今日こそ成功すると思ったんです。でもとんですぐに、しりもちをついて野原に寝っ転がって・・・

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赤い風船

18/05/21 コメント:0件  浅縹ろゐか

 赤い風船に手紙と花の種を同封して飛ばすということを、小学生の頃に何度かやったことがある。海に手紙を入れた瓶を流すのに憧れたのだが、私が住んでいる地域には海はなかった。苦肉の策で思いついたのが、風船で代替させることだったのだ。
『この花のたねを、うめてください』
 確かこのような手紙とも呼べないような、紙を風船に括りつけていた。あまり重いと遠くまで風船が飛ばないだろう、ということは分か・・・

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浮遊する恋の危険性

18/05/21 コメント:0件 するめ

 濃いオレンジ色の夕暮れの中で見る踏切の影はさながら寂しい墓標だった。遮断捍がゆっくりと、ちょうど夜の帳を下ろすかのように下降していく。
 この踏切は車両基地の近くにあり、運が悪いと二十分近く足止めを食らう。開かずの踏切として付近の住民から避けられているのだが、勿論利用する者もいる。遮断捍のこちら側には人影が二つ、あちら側には車が一台止まっていた。
 警告音に立ち止まった少女は長い髪に・・・

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浮けない私、恋恋恋したーーーい

18/05/21 コメント:0件 虹子

体育の時間、校庭のトラックまわりを走っていると、急につんのめってこけた。 密かな笑い声と突っ伏した私をひらりと超えていくたくさんの浮いた足たち。 「おーい、藤原。いつまでそこに寝てるんだ。早く立て」 鬼教師の声にびくっとして何とか立ちあがろうとすると妙な重力を感じた。両手をついて足をふんばると自分の足先が地面に少しめりこんでいるのがみえた。 「てかさぁ、あんたもう重症だね」 そう言って笑う・・・

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空の大かぞく

18/05/20 コメント:0件 はるの

 よし、今日はお空をたんけんしにいってみよう。
 どうやっていこうかな。
 あ、そうだ。風さんにおねがいしよう。
 風さんとばしてくださーい。

「よぉし、おれにまかせとけ。いくよービュー」

 わぁい、たのしいな。
 あ、くもさん、こんにちは。
 くもさん、くもさん、くものおかあさんとおとうさんだれかな?
 くもは水でできているから…。・・・

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大富豪誕生秘話

18/05/20 コメント:0件 本宮晃樹

 誰しも子どものころ、一度くらいはふんわりと宙に浮かんでみたいとこいねがったことがあるはずだ。自由に飛翔する鳥たちを見てぼくも/あたしもあんなふうにお空を駆け回れたら……なんと純真だったことか!
 かつてのピュアなガキどもは長じるにつれ、薄汚い社会の瘴気にさらされる。連中は見るも無残に現実とやらを思い知らされ、ヒースの根っこみたいにひねくれた人間へ変貌を遂げてしまう。
 だがなかには蔓・・・

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月と兎と走り幅跳び

18/05/20 コメント:0件 マサフト

「宇宙空間とか、重力が弱いところに長くいるとこつしょしょうしょうになるんだってー」

傍らで『宇宙での生活』という、ーー今後地球から出ることのないであろう我々一般市民には特に役に立たないであろうーー図説入りの本を読みながら、彼女は驚いていた。

「骨粗鬆症な」
「こつしょそうしょう」
「(もうええわ)骨がスカスカになるやつだっけ」
「そーそー。筋肉とか・・・

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父の背中

18/05/18 コメント:0件 マサフト

久しぶりに田舎に帰ると、昔のままの風景の中に混じって、記憶にない物が増えていたり、逆に懐かしいものが減っていたりする。

空き地が多く、寂れていた駅前は新興住宅地だとかができたためか大きく様変わりし、同じような形の新築の家がおもちゃのブロックのように立ち並んでいた。立方体の白い家は、窓のあるところの壁だけ黒く塗られているものだから、醤油をかけた豆腐のようだ。子供の頃の行きつけだ・・・

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サイダー

18/05/18 コメント:0件 山盛りポテト

机に置かれたサイダーの入ったグラスは水滴がだらだらと落ち、その歪んだグラス越しに見える彼女の輪郭は失われ、ただそこにぼんやりと存在していた。その光景がおかしくて、
「俺たちの関係みたいだね」
と言おうとしてそれは洒落ですまないことに気づき寸前でやめた。
クーラー嫌いな僕が開けた窓を彼女はずっと眺めていた。
点けっぱなしにしている扇風機が面倒くさそうに生ぬるい風を運び、その音・・・

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ハイパーエスケープガール

18/05/17 コメント:0件 清野勝寛

ぷっかぁーってしてる、あたし。
今日も現実逃避だよ。

ふわふわついでにひとりごと。
いや、今はキミもいるからふたり、だね。

例えば、あたし一人この星で生きていたとしたら、とか時々思う。
だって誰かと関わるのって面倒くさい。
誰もいなかったら、めっちゃ楽じゃん。
いちいちおしゃれしなくても、おでかけ出来るし。

……え? おしゃれ・・・

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星の上の女

18/05/17 コメント:0件 早川

 俺はただ一人で夢想していた。あらゆることを考えた。この世界がどんな法則に支配されているのかとか、人間はどういった法則によって動いているのかとか、答えは出ない。全ては謎めいている。そして俺はきっとこうやって誰かより優れた存在でいたいと切望しているのだ。
 いったい他人がどうやって生きているのか俺は知らない。ただ俺は特殊な性格のせいか物事の詳細まで気にする。
 テーブルの上に置かれている・・・

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寄す処

18/05/17 コメント:0件 春海

シュウは、 手のかかる幼馴染みだった。
転んでは泣き、友達にからかわれて泣き、花が枯れて泣く男の子だった。
そんなシュウと、私はいつも手をつないで小学校を登下校していた。
泣き言を聞いて慰めたり、一緒に蝶々を追いかけたりした。
クラスの男子に、付き合っているのかとからかわれても、私は全く気にしなかった。シュウは私にとって可愛い弟みたいなものだった。

・・・

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浮かんだ煙は消えていく

18/05/17 コメント:0件 アベアキラ

 煙草を吸うと彼を思い出す。たった一時間だが肩を並べて歩いた、僕の友達だ。
 出会いは唐突であった。喫茶店でゆっくりと煙草を燻らせていたときである。隣の席に座っていた彼が話しかけてきたのである。
「コンニチハ……煙草クダサイ」
 多分カナダ人であろう彼、片言の日本語だが煙草の発音が妙に流暢なのが気になった。今までも僕以外の人物に話しかけていたのだろうか。
 何故カナダ・・・

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まるで必要ないような

18/05/16 コメント:0件 瑠璃

カーテンの隙間から光が差す。ありきたりの毎日。そして私は、まるでこの世界に必要とされていないような悲しい錯覚に陥って、目を覚ます。目覚まし時計をちらりと見ると、時刻は午前6時30分。また、今日が始まってしまった。着替えを済ませ、朝ごはんを食べ、黙々とロボットのように身支度を整えていく。決められた毎日。この世界が私を必要としていないのと同じで、私もこの世界を必要としていない。私は、いつもそうなのだ・・・

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初めての、

18/05/14 コメント:0件 夢野そら

「もういい加減やめてくれよ。」

まったく、俺の友達はどうしてこんなに低レベルなのか。こんな弊害どうってことない、すぐに収まる、なんて思ってたのに、2週間経ってもこれだ。

帰りの挨拶をした瞬間に俺を取り囲んでくるヤツらをテキトーにあしらって、足早に教室を出てく。お前らに構ってる時間なんてないんだよ。
それに下手に口を滑らせるとジマンだなんだって煩そうだし。
・・・

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空中浮遊

18/05/14 コメント:0件 犬童 幕

実は私、空を飛べるんです
いや
空じゃない
空中に浮くことが出来るんです
これも的確じゃない
見た目では分からないくらい
微妙に浮いているんです
しかも
私の意志に関係なく24時間
これってすごく不便です
地面に足が付いていないので
歩けない、走れない
風が吹けば流される
今も木に掴まってます
これって病気でしょう・・・

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死んだ彼女

18/05/14 コメント:0件 早川

 彼女と夢で出会う。黒髪でほっそりとしていて、高身長で僕は一目見て彼女に惹かれた。そんな彼女は夢の中で王女となっていた。身にそぐわないドレスを着てどこかぎこちない彼女の姿を僕は大衆の中の一人として見ていた。
 目が覚めて、今日は休日だと気づく。いつものようにコーヒーとトーストを用意して朝食を食べる。
 普段の日課だったが、僕の気持ちは憂鬱だった。気分が晴れることはない。これは恋なのか愛・・・

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監獄

18/05/13 コメント:0件 ダイシゲ

 囚人番号28号と31号は、刑務官の隙を見て、風呂場の高窓から風呂場の屋根に出た。
「でどうする」
31号は、隣の建物の屋根を見ていた。
「まず、隣の建物の屋根に飛び移ろう」
28号は、屋根の平らな部分で助走して、ジャンプして隣の建物の屋根に飛び移った。31号も助走してから飛び移ろうとし
た。隣の屋根に着地したもののバランスを崩し、倒れそうになったが、28号が腕をつか・・・

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スノウちゃん

18/05/13 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 今は夏です。
 はるくんは、庭でシャボン玉をしてあそんでいます。
 ちらちらちら
 白いものが空からふってきました。
「なに?」
 はるくんは、そっと手にのせました。
「つめたい!」
 つぶをよくみると、白いワンピースをきた女の子です。
「うわぁ。」
 はるくんは、びっくりしてふりおとしました。
 女の子は、ひまわりの葉っぱに、ちょこん・・・

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蛙の皇帝あるいは生身の帝国空軍

18/05/12 コメント:1件 時雨薫

 降る雨が途切れなくアスファルトを打ち、周波数の合わぬラジオが拾った電波のように無意味な音がただザーザーと憂鬱に街を覆っている。折傘は跳ねる水で裾が濡れるのにも構わず、右手に苔生す石垣の続く道を足早に歩いていた。折傘は余りに軽装だった。傘に守られぬ肩の上が濡れた。
 折傘は俯き加減に歩いていたから、ほんの目の前に迫るまでそれに気づかなかった。道の両端に蛙が二つの列をなしていた。中央をのっそり・・・

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風乗り日和

18/05/12 コメント:0件 本宮晃樹

「みんな、準備はいい?」引率の女教師は子どもたちの顔をぐるりと見渡した。「〈巨人たちの遺跡〉まで数メートルもの大旅行。わくわくするね」
 子どもたちはむろんわくわくした。なにせ初めての社会見学である。めいめいが口々に興奮を表明し、彼らの棲家である〈ハニータウン〉の外縁からいまにも飛び出さんとする勢い。二、三人のせっかちな子たちは早くも気流をとらえ、ふらふらと宙へさまよい出ている。
 女・・・

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浮遊大会

18/05/12 コメント:1件 吉岡 幸一

「いよいよ今日は浮遊大会だな。みんなで応援にいくから頑張るんだぞ」
 父に背中をたたかれて家をでたカイは勢いよく小学校へかけだした。
 この日のためにどれだけ作戦を練ったことか。雨の日も晴れの日も、リビングで寝転びながら、テレビを見ながら、ゲームをしながら、鼻をほじりながら、必死に脳内浮遊訓練を繰り返してきた。
「一番になったらスマホ買ってほしいな」
 カイがおねだりをする・・・

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塔の女

18/05/11 コメント:0件 広田杜

その塔のてっぺんには、一人の女が定住していた。
浮力を纏ったその女は、飽きることなく塔の周りをくるくると回り浮いている。長い髪が風にたなびいているのがわかるが、地上の私からは表情まではわからない。私もまた飽きることなく彼女を見上げる地上の人間の一人だった。
あるよく晴れた日のことだった。塔の上の彼女は動きを止めると、空の彼方へ顔を向け何かを見つめている。ちょうど地上の人間たちが彼女を見・・・

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地獄は浮遊する

18/05/10 コメント:0件 鎌太郎




 知っているかい? 死んだ人間は死ぬ瞬間で静止してしまうんだって。なんて話をどこかで聞いた事があるだろうか。
 死とは、人という存在の時間を静止させる現象だ。人が死ぬと、その死という静止の中で、死に揺蕩い続けるんだそうだ。
 初めて聞いた時は、ずいぶん荒唐無稽で風変わりな話だと思った。
 天国地獄理論というのはどこの宗教でもあるものだが、しかしそのような・・・

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浮遊日和

18/05/09 コメント:0件 吉岡 幸一

「今日は天気もよく浮遊日和ですな」
「湿度が50%以下になると浮遊もしやすくって気持ちがいいわね」
 ドーナツ屋の店先でスーツ姿の男と女がプカプカ浮かびながら話をしていた。
「湿度が50%を超えると、ほんと浮遊しにくいですからな。地に足をつけて歩くなんて不潔なことしたくないし」
「そうですね。足をつけて歩くなんて野蛮人のすることですから」
 帰るまで我慢ができないのか・・・

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浮き上がる時間

18/05/09 コメント:0件 黄間友香

 高校の頃、彼女はクラスの中で浮いていた。容姿はどちらかというと素朴な感じで、物語に出てくるミステリアスな女性には程遠かった。でも、皆どこか彼女を遠巻きに見ていた。彼女の方も年頃の女子が喋るのに興味がないのか、皆の会話に入ることは稀だった。代わりにいつも窓際の席に座って長い髪を耳にかけ、ぼんやりと外を眺めていたのを覚えている。友人が一人か二人いたような気もするけれど、その人たちとも学校で話すぐらい・・・

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空の旅

18/05/08 コメント:0件 雨のかえる

《空の旅》







僕は今 空の上

窮屈な座席に縛られ

エアポケットの中を

上がったり下がったり



隣も隣も熟睡モード

我慢しよう、とにかく。

目を閉じてやり過ごす



後ろは多動の子供達

さっきから 僕・・・

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浮かばれない!

18/05/07 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな)

深雪ちゃんが死んだ。心臓発作。 深雪ちゃんは「発見」が遅くて死後1週間で大家さんに発見された。 私は息をしていない深雪ちゃんとこのハイツの狭い部屋で過ごしていたことになる。 ちなみに、今の季節は、2月、冬。 寒さの影響か深雪ちゃんは死後1週間もたつのに、綺麗なままだった。 私はロシアから空輸された、 マトリョーシカ人形なんだもん。 深雪ちゃんは、家庭のある従兄弟のおっさんとつきあっていたの。 し・・・

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もし、山田君が飛べるようになったなら

18/05/07 コメント:0件 井川林檎

 飛行が上手いひとほど、ヒエラルキー上位者。
 すうっと大きく円を描いたり、気の合うひと同士でダイナミックなダンスを踊ったり。
 
 電線に触れるか触れないかの際どさで、おどけたように飛ぶ彼ら。
 かっこいい。素敵。先生たちや親たちは、危ないから飛ぶときは、電線に触れない位置でまっすぐ飛びなさいと口うるさい。でも、そんな注意なんか守るわけがない。
 
 カッコイ・・・

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水と浮遊

18/05/07 コメント:0件 胡蝶陽夜子

嫌なことがあったとき
わたしはぼうっと宙を仰ぐ
何も見ていないような
何かを見ているような
だけど心はどこかへ行っていて
目の前のモノは透明になる

こんな時は
水に身体を投げ捨てて
すべてを委ねて
ゆらゆら
ふわふわ
たゆたっていたい
水の中の世界は
現実から切り離された
幻想をまとっていて
水の音が・・・

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太陽の光のように

18/05/06 コメント:0件 早川

 俺は空から雨を降らせたことがある。俺は地球を自転させている。俺は大地の草木を自由に操っている。俺はそう思っていた。
 俺は病室のベッドに括り付けられていて、自由に動くことができない。
 こうなったのは二度目だった。それでも俺が考えたことは全てが妄想だったのだろうかと自分で疑ってしまう。
「早川さん。調子はどうですか?」
 看護師の村上さんが無様な俺の元へとやってくる。彼女・・・

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風船はつながれている

18/05/06 コメント:1件 アシタバ

弟(現在)
 引越しをするにあたって、荷物を整理していたところ、押し入れの奥から古い写真を見つけ出す。俺と姉が二人並んでいる写真だった。こんなところにまだ残っていたのか、と少なからず驚いた。すべて捨てた筈だった。両親を事故で亡くし、叔父夫婦に引き取られた直後に撮影したもので、この時は姉がいなくなるなんて思いもしなかった。
 叔父夫婦は両親を失った俺達姉弟の親戚縁者として、最低限の責務を・・・

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いつも楽しい夢を

18/05/05 コメント:0件 リードマン

夢の中で自分はいつもフワフワ浮いているけれど、これはきっと地に足がついてないって事なんだろう。
楽しくて仕方がなくて、頭も心もフワフワ浮いてしまう。酔っている? そう、きっと寄っている。
なんて幸福なのだろう? 夢から醒めて、現実に恋してる。
ずっと欲しかったタカラモノ。
答えを得てしまった後の人生も、きっと幸福であると確信している。
いつか来る終わりも、恐れる事なん・・・

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浮かばれぬ浮遊霊

18/05/05 コメント:1件 若早称平

 あっと思った時にはすでに体は宙に浮いていた。アドレナリンのせいなのか、こういう時周りがスローモーションに見えるというのは本当のことのようだ。恐怖なのか驚愕なのか分からないが私を轢いた車の運転手が目と口を大きく広げている様や、後ずさる歩行者や、久しぶりに厚い雲が晴れた青空を、私はわりと冷静に観察していた。地面に着く前にしっかりと走馬灯も浮かび、「ああ、ここで死ぬんだな」とまるで他人事のような感覚で・・・

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影響

18/05/05 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 そのニュースの内容を真に理解したものはおそらくほとんどいなかったとしても、毎日のようにテレビの画面に黒ずんだ渦巻き状のCG画像がうつしだされて、識者、科学者、政治家、はたまたお笑いタレントたちが真剣な顔をよせあってさかんに意見交換する場面が連日放映されるのを、だれもがみたにちがいない。

 日菜子はしかし、それどころではなかった。半年前、じぶんの落ち度で手をひいていた老母が石段につま・・・

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災い男

18/05/05 コメント:0件 吉岡 幸一

「もっと石をなげろ。そんなんじゃ、あいつには届かないぞ。ぶつけて災いを落としてしまうんだ」
 楡の木の下で村の顔役の男に怒鳴られながら、数人の子供たちが木の上をめがけて石を投げていた。木の上では今年の災い男が枝にしがみついている。
 災い男とは一年間のありとあらゆる災いを肉体に宿した男のことである。二百年前からこの村では五月五日の日に災い男を一人選び、神社の御神木でもある楡の木に登らせ・・・

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飛べない鳥

18/05/05 コメント:0件 清野勝寛


 夜の明かりは直視出来ないほど目に痛い。私は眩しすぎる都市の中心部から、視線を僅かに右、広がる海へと逸らした。夜の海は宵闇に溶け姿を消す。ただ打ち寄せる波と潮騒だけが、そこに存在しているということを主張していた。光の浮かばないその空間を見つめていると、視界が少しずつ明暗を認識しなくなる。やがてその中に呑み込まれてしまうのではないかという錯覚に襲われ、身震いする。たまらず服の裾を握りしめた。・・・

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四次元ロッカー

18/05/04 コメント:0件 いっき

「うっわ、祐飛のロッカー、すごいゴミ」  千佳が俺のロッカーを見て、眉を顰めた。 「ゴミじゃねぇよ。まだ使える物を捨ててしまったら勿体無いだろ」 「いや、使わないでしょ! 私が、掃除したげる」  千佳がロッカーのものを全部出した。一回はめて殆ど使わなかったゴム手袋。裏紙にするつもりだったプリント……今までロッカーを隠れ蓑にしていた資源達が放り出される。 「ちょ、ちょっと。全部、いつかは使うものだっ・・・

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別れ道

18/05/03 コメント:0件 あぐり

女は2番目に好きな人と結婚するというのが、なんとく分かった。
1番は誰かで、2番目はいつも違う。
反対に男は2番目は変わらなくて1番が変わってしまうこと。
大好きで大好きでな人と、生活の人。私は男?女?

死ぬ時までにどうしても会いたい人がいるのだろうか?
寂聴さんには怒られるけど、略奪をするとまたされそれを返される。

夫が女から戻ってきたか?ご機・・・

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つなぎとめて

18/05/03 コメント:0件 浅月庵

 家で飼っていたオカメインコのピーちゃんが先日、寿命で亡くなってしまった。
 私が結婚する前から飼っているインコで、娘の夏子が産まれてからもピーちゃんは、私が覚えさせた童謡などを、陽気に音程を外しながら唄った。可愛い子だった。

 そんなピーちゃんの死を一番悲しんでいたのが、幼稚園の年長さんになる夏子で「ピーちゃんにはもう会えないの?」「ピーちゃんに会いたいよ」なんて、怒涛の質問・・・

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浮遊村

18/05/03 コメント:1件 いっき

「一体、何だここは……」  果てない田園風景に、どこか虚ろな空……それは、俺とは無関係と思っていた風景だった。  俺はこんな場所に住んでいた覚えはない。都会のアパート住まいで、バリバリ、シャカリキに会社員をしていたはずなんだ。なのに今朝、目が覚めたらガランと広い部屋にいて……一足外に出たら、そんな田舎の風景が広がっていたのだ。 「どうして……もうこんな時間。会社に遅刻だ。早く……早く、俺の家に戻ら・・・

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優越感

18/05/03 コメント:0件 蹴沢缶九郎

帰省ラッシュで渋滞している高速道路。渋滞は何十キロと続き、当分は進みそうもない。そんな中、突然一台の車がタイヤを折り畳み、5メートルほど宙へ浮かんで進み始めた。渋滞など関係なく、自分だけが快適に進める。車のドライバーは渋滞を見下ろし、優越感に浸った。
面白くないのは他のドライバー達。ただでさえ渋滞でイライラしている所に、そんなものを見せられて面白いわけがない。すぐさまドライバーは特定され、空・・・

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薄い白菫色

18/05/03 コメント:0件 一青アラン


一週間という区分の中央付近である水曜日。
パソコンのキーボードが叩かれる音と、電話のけたたましい呼び鈴が不協和音を織り成すオフィス。

「今週末は何か予定あるの?」
同僚が私に聞く。
私は答える。
「特にないよ。」
「そうなんだ。何か楽しいことないかね。」
同意を求めるように、椅子の背もたれに沿って背中を伸ばしながら呟く同僚。
私は・・・

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ある恋の物語

18/05/03 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな)

「この人だあ!」 あまりにもタイプの男の子を見つけて、俺は天から大声で叫んでしまった。 現在、俺は生まれ変わる事を許された「たましい」。 ふんわりふんわりと浮きながら空から下界を見つめ、 次にどこに生まれようかと毎日思案している。 前世、「大阪」って土地に住む日本人だったから、 「今度も日本人、大阪人に生まれたい。」 と言うといけ好かない元「江戸人」や、すかした元「京都人」がとめやがる。 ・・・

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コーヒーフロートの君

18/05/03 コメント:2件 文月めぐ

 祐介、と名前を呼ばれてびくっとした。喫茶店でバイトを始めて三か月、知り合いがやって来ることはなかった。だけどこの店は地元では有名だから、誰かに会うことはやはり避けられない。
 声の主の純とは高校が同じだった。大学は東京だったが就職して地元に戻ったのか。
 ぴしりとスーツを着こなし、手には大きな鞄を提げている。俺は注文を取るため彼のもとに向かった。
 「お前ここで働いてんの?」<・・・

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10年後の俺

18/05/02 コメント:0件 路地裏

「俺?俺はお前だよ」

午前0時。動揺を隠しきれない俺を置いてけぼりにするかのように、時計の針は規則正しく時間を刻む。

大学受験を控えた俺はいつも通り分厚い参考書と戦っていた。数学は大の苦手科目。ペンはなかなか進まない。机に置いてある時計に目をやると丁度日付けが変わった。

ズドーンッ!!

落雷のような音が真後ろで聞こえ、思わず「ひっ」と・・・

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in the earth

18/05/02 コメント:0件 斎藤緋七(さいとうひな)

アユミは裏庭の片隅に穴を掘る。 産んだ赤子を横に寝かせている。 赤子の父親のユウタも穴を掘るのを一緒に手伝ってくれている。 「ふう。」 ユウタは一息つく。 「これくらいの深さでいいわよね。」 アユミは言った、 10時間程前に自宅のトイレで女の子を産み落としたばかりだ。 「さあ、埋めようぜ。」 「そうね。 ……どっちが首を絞める?」 「…生き埋めでいいんじゃないか?そのうち、窒息死するだろ。」 「そ・・・

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サヨウナラ相棒

18/05/01 コメント:0件 ポテトチップス

 雲ひとつない日本晴れだった。『サザンビーチちがさき』の駐車場からは、幾人ものサーファーが押し寄せる波にサーフボードで勇壮に挑んでいる姿が見えた。
 まだ早朝5時を過ぎたばかりだが、彼ら彼女らは出勤前のレクリエーションなのかもしれない。
 駐車場で待つこと40分、メルセデスマイバッハS650が空車だらけの駐車場に、えばるようにやって来て止まった。
 左ハンドルの運転席から、牧原リ・・・

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浮いてる彼が羨ましい

18/05/01 コメント:0件 鎌太郎



「あいつ、ちょっと浮いているよな」

 初夏が始まろうとしている、少々蒸し暑い昼休みの教室でそう言ったのは、このクラスで1番人気の男子だった。
 いつも明るく誰とでも仲良く接しようとする彼は、女子人気が高いという訳ではなく、単純に平均値が高いというだけの話。
 それでも、彼の言葉に返事をしようという人間は多かった。

「ああ、確かにそうだよね」<・・・

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ピンポン玉

18/05/01 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 これはぼくの高校時代の話だから、もうずいぶん昔のことになる。
 記憶はあいまいにいろあせ、当然ながら細かい部分は欠落していたが、ただひとつ、鮮明におぼえている光景があった。鴨下という生徒のひろげた手のひらから、ピンポン玉が、うかびあがったのだった。
 鴨下はあまり――というよりほとんど勉強のできない生徒で、五十名ちかくいた生徒たちのなかでワースト3にはいっただろうか。勉強はできなくて・・・

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18/05/01 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 五々郎はふだんから、どこか浮いたところがあった。なにをやっても長続きせず、転職をくりかえし、親からも、いいかげん定職につけと、顔をあわせれば小言がとんだ。
 五々郎じしん、いつまでもこんなふらふらした生き方はしたくなかった。しかし、地に足をつけようとするときまって奇妙にふわふわした感覚が彼をとらえるのだった。
 もしかしたら俺には、地球の引力がうまれつき希薄なのかもしれない。そのため・・・

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空想

18/05/01 コメント:0件 s0204

ある高校についての話しだ。彼女の名前はミキ、高校の教員として日々を過ごしている。そんな彼女にはある秘密がある。それは誰もいない夜の教室での出来事である。彼女は高校の教員として誰にも邪魔されないこの時間に授業の予行練習をするのが習慣だった。まだ一年目であり、数学を教えることのむずかしさを家庭教師時代にあったことと、彼女はあがり症でありこういった時間が必要であると自分で判断しているがいつもとはなぜか違・・・

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浮遊症候群

18/05/01 コメント:0件 かわ珠

 雨が上がり、雲も去って河川敷には少し赤みを帯びた空が広がっていた。
 土手の上の雨が濡らしたアスファルトを歩く。
 すると、向かいから一人の男が近付いてきた。
 三十代半ばくらいで、明るい茶色に染められた髪に、少し大きめのピアス。ギターケースを背負っている。典型的なバンドマン、といった風貌。あまりにテンプレートなその容姿に、思わず噴き出してしまいそうになる。
 そして近付・・・

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PM2.5

18/05/01 コメント:0件 風宮 雅俊

「今日は天気が良いのに、霞んでみえるね」
 背広の男は、富士が見える筈の方角を見ながら言った。
「黄砂です」
 制服の男は言った。
「春だね」
 眼下の葉桜を見ながら背広の男は言った。
「そんな風流な物ではありません。この時期になると敵の攻撃によりたくさんの国民が犠牲になっております」
 制服の男は分厚いファイルを片手に、直立不動だった。
「ホントに・・・

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海月の気持ち、大王具足虫の気持ち

18/05/01 コメント:0件 風宮 雅俊

 太陽の光がキラキラと光る。
穏やかな風が波頭を撫でていく。

波間を漂う海月は、波に合わせて傘を開き・・・、傘を閉じる。
明確に存在する、波と言う天井。そして、果てしない深淵。どこまでも続く、限りの無い底。
 海月は思った。
光のない深淵の彼方に底はあるのだろうか。誰も見た事がない底が存在するのだろうか。
そして、海月は波間に漂っていた。

・・・

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常夜に浮遊

18/05/01 コメント:0件 蒼樹里緒

 妖(あやかし)が宙を漂うこともまた、日常的な光景の一つに過ぎない。単なる移動であったり、飛行の力を持たぬ者は何らかの術や道具を使っていたり、それぞれである。
 筆文字で『本日閉店』と書かれた札を引き戸にかけて鍵を閉め、老人はふと空を見上げた。
 寒々しい夜風の流れに乗り、数匹の管狐が何処かへと飛んでいく。細長い身体や尾を緩やかに波打たせ、毛並みと同じく銀色の光を帯びて。
 ――・・・

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