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第125回時空モノガタリ文学賞【優しさ】

今回のテーマは【優しさ】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/02/13

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/12/19〜2017/01/16
投稿数 103 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今回はクオリティの高いコンテストだったと思います。書きやすいテーマだったということもあるのかもしれませんし、普遍的な内容ゆえに、掘り下げやすかったのかもしれません。全体的にアイロニカルに優しさを描いたものが、かなり多かったですね。“本当の優しさ”は誰もが求める一方で、その定義が難しく、現実に稀なことは誰しもが感じるところなのかもしれません。内容的には母と子に関するものがいくつかありましたが、他にはあまり重なるところもなく、質の高い作品が多く、充実したコンテストだったと思います。今までのコンテスト中で、もっとも層が厚かったコンテスト、という印象でした。最終選考作品ですが、入賞はならずとも良い作品ばかりだったと思います。「ふわり、風花」は散文と詩情が調和した美しい作品ですね。ストーリーを構成する隠喩としての諸要素によって、姉妹の葛藤が鮮やかに浮かび上がっていると思います。ラストに余韻があり、全体的に学ぶべきところの多い作品ではないでしょうか。「デザイン」は非常に考えさせられる作品でした。妻の言い分はさほど奇抜なものではなく、むしろ多くのリアルな価値観を体現したものかもしれませんね。技術が発達するたび、私たちは価値観の選択を迫られることになるのだと思います。「ナルシスの花盛りに」は、本当の優しさの難しさを正面から扱い丁寧に描いていますね。息子が幼さから選んでしまった優しさと、父の、失敗から学んだそれとの対比が印象的でした。真の優しさついて考えさせられます。優しい語り口も良いですね。「から傘むすめ」は、今コンテストでは珍しく時代物でしたが、作りがしっかりしていて読みやすかったです。親子のような友情で結ばれた二人の、暖かい繋がりが素直に伝わりました。「あの江野先生なら、」は、一見優しい態度をとった江野先生の身勝手さと、それが後に自分に返ってくる皮肉が、緻密な物語構成の中で描かれていたと思います。「あくまでキミが決めることだ」という台詞は一見正論のようですが、時に、冷たく都合のいいものなのかもしれませんね。「殺すか否か」はシンプルなストーリーですが、これは普遍的なジレンマでもあると思います。生きるために他の生命を犠牲にするという自然のサイクルから、我々は生きる限り逃れられませんが、主人公の気持ちも確かによくわかります。ラストも切ないですが、いろいろ考えさせられるものがありました。最終選考以外の作品は、共感を呼ぶ内容だけれど、あと今一歩何かが足りないという作品が多かったと思います。やはり時間をおいて何度も見直し、修正する作業が重要だと思います。コンテストのテーマによって、書きやすい内容とそうでないものは確かにあるでしょうが、全体的なレベルは上がってきていると思うので、その“今一歩”のところを詰めていただきたいと思います。次回も期待しています! 

入賞した作品

6

優しさの復讐

17/01/16 コメント:5件 光石七

『  ぼくのお母さん    二年二くみ 木山なおき
 ぼくのお母さんはかえでという名前です。いつもニコニコしていて、ぼくのすきなりょう理を作ってくれます。ぼくがすきなことをさせてくれます。
 ぼくを生んでくれたお母さんは三年前にしんでしまいました。ぼくはかなしくて、さびしくて、何どもなきました。でも、今はかえでお母さんがいるのでさびしくありません。
 ぼくは何でもしてくれるやさし・・・

5

見る目のない私たちの強かな未来

17/01/14 コメント:3件 宮下 倖

 香帆のブレスレットがグラスに触れて澄んだ音をたてた。私と律子の視線が余韻を追って香帆の手首に注がれる。彼女がわざとグラスに当てたであろうことは、「あっ、ごめん」と言いながらまるで悪びれず、むしろ見せびらかすように手首を上げたことで察せられた。
「わあキレイ! 香帆、それ新しいやつ?」
 律子が声のトーンを上げて訊いた。そうやって香帆の欲しい言葉をすぐに放れる律子はすごい。私が喉元でご・・・

7

年末ジャンボ宝くじ

17/01/08 コメント:4件 タキ

今年も残すところあと8時間。妻は「身を清める」と言ってシャワーに入った。「年末ジャンボ宝くじに当選する為の儀式」らしい。珍しく宝くじを買った妻だが、凄まじい意気込みを感じる。何しろ【数多くの当選者を輩出したという宝くじ専門の神社】にまでわざわざ出かけて買ったのだ。

「当たったらどうしようかな」
ドライヤーで髪を乾かしながら、妻が無邪気に言ってきた。
うーん。どうしよう…。・・・

13

お母さん大好き

17/01/04 コメント:11件 デヴォン黒桃

 ぎゃあ……おぎゃあ……ぎゃあ……ぎゃあ……
 マア、なんて可愛い私の坊や。
 産毛みたいな髪の毛が、抱っこしたら鼻をくすぐって仕方がなかった。
「こんにちは赤ちゃん。私がお母さんよ」
 アノ時アナタに向けたお母さんの愛はトッテモ深いものだったのよ。

 眠る時間がグンと少なくなっても、坊やがヒトツ咳をしただけで、其の晩は寝ずに過ごしたものよ。
 チョット・・・

4

資産家と後妻さん

16/12/30 コメント:2件 夏川

 木造平屋、畳張りのこじんまりした広間。派手さはないが、木の温もりを感じられる落ち着いた空間だ。
 部屋の中心に置かれた長机の周りには数人の老人たちが集い、おしゃべりに興じている。一見何の変哲もない至って普通の老人たちだが、彼らは全員が一代で財を成した超一流の経営者、そして資産家なのである。現役時代は激しい火花を散らし、自らの会社の利益のため騙しあいを繰り広げていた彼らも今やすっかり優しい目・・・

10

カエ男

16/12/19 コメント:8件 クナリ

 ある町内に、ある老人が住んでいた。
 彼は近くの川の護岸工事に反対していて、しかし強硬に反対活動をするでもないので、自治体からは少々煙たい変わりものに見られていた。
 昼間から時折、道路の側溝に手を突っ込み、泥水の中をさらうような動作をしてニヤニヤしているので、どこかおかしいのではないかと思われていた。
 しかしどういうわけか彼には友人が多く、老人はいつも楽しそうにしていた。<・・・

最終選考作品

7

ふわり、風花

17/01/16 コメント:8件 そらの珊瑚

 実家の門をくぐる。暖冬のせいだろうか、玄関へ続くアプローチに沿って植えられた水仙の葉先が、もう顔を出している。高さ五メートルほどのジューンベリーの樹は全ての葉を潔く失くしている。その枝にふたつ並んだ巣箱があった。それらが寂しそうに見えるのは、長いこと住人がいないせいだろうか。それとも塗装のペンキが劣化し、はげかかっているからだろうか。
 私がこの家を巣立ってすでに二十年が経つ。
「た・・・

4

デザイン

17/01/16 コメント:4件 入江弥彦

 パーツを選んでください。
 そう書かれたディスプレイを睨む妻の目は真剣そのものだ。目の形はたれ目が良い、唇は薄いほうが好みだなどとブツブツ言いながら何度も選択を繰り返す。
「そこまでこだわらなくてもいいんじゃないか」
 などと私が口を挟むと、妻は異質なものでも見るかのような顔をして諦めたように溜め息を吐いた。
「女の子だよ? 可愛くなきゃダメじゃん」
 何がダメだと・・・

5

ナルシスの花盛りに

17/01/15 コメント:6件 冬垣ひなた

 雨上がりの西の空が、いちご水のような赤に染まり始めました。
 この季節の自然はみな、枯れそうな寒さに震えていましたが、緑の葉を風に揺らした早咲きのナルシス(水仙)だけは、今を盛りに咲き乱れていました。
 春の先触れにはまだ早い、かぐわしい香りが辺り一面にたちこめ、花畑は蛇行する川沿いを続きます。夕陽を浴びた白い花弁は一斉に薄い赤を透かし、今日の終わりを彩ります。

6

から傘むすめ

17/01/15 コメント:4件 待井小雨

 ……今日は風が強いので、あの人が咳をしていないかばかり気になる。

 大八車に縛り付けられ、見世物小屋に売られる道中にある。
周囲からの目隠しとしてかけられているぼろ布があおられ捲れて、風の強い事を私に教えた。私は自分を作ってくれたあの人の事を想う。
「ずいぶんと大人しいが、見世物小屋じゃあちゃんとしゃべれよ」
 布の向こうからのぞんざいな男の言葉に、私は何も答えな・・・

2

あの江野先生なら、

17/01/14 コメント:4件 秋 ひのこ

 江野先生は、枯枝のようになった手足を小さく床(とこ)におさめ、毛布にくるまっていた。
「先生、お久しぶりです」
 Kは表情ひとつ変えず、丁寧に挨拶する。
「あなた、Kさんよ。20年前の教え子さん。いま、お医者さんなんですって」
 先生の妻が顔をうんと先生に寄せて紹介する。締め切った部屋の生活臭に混じり、体臭だか口臭だか、強い人間の臭いが漂っている。臭いのもとである先生にそ・・・

4

殺すか否か

17/01/06 コメント:8件 霜月秋旻

 ネズミが掛かっていた。
 元旦の朝、伸びをしながら台所の前を通ったら、毎晩台所を荒らしまわっていたと思われる子ネズミが、粘着タイプのネズミ捕りに張り付いていた。両手両足の自由を奪われ、もがいている。
「やったわ!これで台所を荒らされずに済むわ!毎晩毎晩、物音で眠れなかったのよね。新年初日からついてるわ!」
 後ろから、嬉しそうに妻が話しかけてきた。
「ああ、そうだな…」<・・・

投稿済みの記事一覧

7

家神

17/01/17 コメント:2件 石蕗亮

 キシキシキシ
床板の軋む音だけが徐々に近づいてくる。
 キィー
静かに廊下の突き当りのドアが開く音がする。
 カッチャン
そしてドアが閉まる音が続く。
 キシキシキシ
再び足音は無く、しかし床板の軋む音だけが移動して私たちの寝室へ近づいてくる。
そのままその音は寝室のドアの前を通り過ぎ、家を貫いて在る廊下を端から端へと渡っていく。

 ・・・

2

銃口は誰に向く

17/01/16 コメント:0件 四島トイ

 男が一人、革張りの椅子に身を沈めている。
 呼吸はゆっくりと、長く、深い。
 閉じていた瞼が、億劫そうに動き、僕を見つめる。口ひげが僅かに震え、笑ったようにも見えた。やあ、という吐息のような声が、一昔前の衛星通信のような速度で耳に届く。
「そろそろ来ると思っていました」
「ただいま」
「私はご覧のとおりおじいさんになってしまいました」
「僕は一人前になった」<・・・

0

やさしさカフェと純喫茶やさしさ

17/01/16 コメント:0件 むねすけ

 母さんの帰って来いメールをあまりに上手に受け流すので、いつからか母は僕のことを内匠頭と呼ぶようになった。僕の名前の拓海と巧みなメールさばきをかけてのことらしい。まぁ、メール上だけのことだろうと黙殺しておいたのだけど、まさか対面でもそれで呼ぶとは。いつになってもわからない人だ。
「内匠頭、あんたかねそんなとこにお金ばら撒いて」
 三年ぶりの実家、タオル入れの上のチェストに普遍的に積もっ・・・

5

優しさの裏側

17/01/16 コメント:5件 泡沫恋歌

半年前まで、僕らは恋人同士だった。
それが今ではボクのお姉さんか、まるで母親みたい。

「ああ〜またこぼしてる」
朝食のトーストを食べるとき、ほんの少しパン屑をこぼしたら、
キミは目ざとく見つけて、すぐにふきんで拭きとる。
「あら、ネクタイがゆがんでる」
横からボクのネクタイを直そうとする。
そうやって四六時中、なにかを正そうとしている。

1

天使と悪魔

17/01/16 コメント:2件 玉鬘 えな


「もう死のう」

生きているのがツライ。苦しい。寂しい。
いいことなんて何も無いし、これから先、起こる予兆さえ感じられない。
街で一番高いビルの屋上で、キラキラと瞬く星をぼんやりとした眼で見つめながら、私は靴を脱いでかかとを揃えた。
ひやりと冷たいフェンスに手をかけ、建物の縁へと身を乗り出す。遠く下界には深夜だというのに光り輝く摩天楼が見える。それは誰かにとっ・・・

4

スカポンタン☆

17/01/16 コメント:2件 泡沫恋歌

 大和工科大学の地下、薬品倉庫の奥深く、『劇薬』『火気厳禁』『混ぜるな! 危険』と書かれたプレートより、さらに危険なラボがあった。
 そこには大学の疫病神と呼ばれるDr.山田とその助手の佐藤が、日夜、極秘(胡散臭い)研究に明け暮れていた。
「あれぇ? 僕のプリンがなぁ〜い!」
 冷蔵庫に頭を突っ込んだまま、助手の佐藤が叫んだ。
「博士あんたか? また勝手に食べたのか!?」<・・・

0

抑圧の時代

17/01/16 コメント:0件 OSM

 自動ドアが開き、客が店に入ってきた。黒縁の眼鏡をかけ、ダークグレイのスーツを着た、三十歳前後の男。いらっしゃいませ。何名様ですか? 決まりきった台詞、決まりきった笑顔。
 客の男は小さく舌打ちをした。心の声が聞こえてくるようだ。何名様ですか、だって? どこからどう見ても、俺は一人だろう。背後霊でも見えるのかい、店員さん?
 おかしなことを言っている自覚はあるわ。私は必死の思いで営業ス・・・

1

オフレコs

17/01/16 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ

「フレックス制」
 満員電車が嫌いな俺には、夢のような職場に思われた。

 夢にすぎなかった。全くもって優しくなかった。
 部長は大雑把な助言しかくれない。残業代も無い。先輩は皆、談笑して帰って行く。安定の5時帰り。俺だけ職場にポツンな毎日。

「部長、仕事の割り振り、おかしくないですか?」
「嫌なら辞めれば?」
 先輩たちの方が件数をこなしている。・・・

3

【エッセイ】 つめたい背中

17/01/16 コメント:3件 野々小花

 年の瀬になると、決まってある光景を思い出す。
 私は小学校の低学年だった。冬休み、近くに住む祖父母の家に泊まりに来ていた。離れで暮らす、二つ年下の従妹と遊ぶためだ。
 古い大きな家には、畳の部屋がいくつもあった。中庭や、白い壁の蔵や、昔は馬がいたという小屋もあった。子どもにとっては、良い遊び場である。中庭にある黒板に絵を描いたり、蔵の中をのぞいたりして、その日も夜遅くまで、私は従妹と・・・

0

大雪の朝

17/01/16 コメント:0件 海音寺ジョー

 冬になる頃に、物置から雪かき用のシャベルを軒先に出しておいたのだ。だから油断した。

 どっかりと降りつもった朝、シャベルの出番が来たと軒先を探ったが、なぜか見あたらない。老父にきいてみたら、出しっぱ
なしにしていたから物置に仕舞いなおしたと言う。物置の扉は、家の屋根から落ちてきた雪で埋まっていて開けることができず
、俺は何とも形容しがたいムシャクシャした気分になった。い・・・

2

彼女が少しでも私を愛するために

17/01/15 コメント:0件 村咲アリミエ

「あの人の後ろ姿が切ない。追いかけている恋が叶わないと知らないからだわ」
 彼女の長い髪が好きだった。風に撫でられるようにさらさらと流れるそれは、彼女の冷たさを表しているようでもあった。風になびいてなお、染まることなど決してない漆黒。
「本当に叶わないのかな」
 私からの意地悪な質問に、彼女は動じない。ツンとすまして、まるで用意していたかのように、さらりと返事をよこす。
「・・・

0

5歳児の「理由ある反抗」

17/01/15 コメント:0件 ちほ

 5歳のウォルターにとって、母親の再婚相手は邪魔な存在だった。大好きな母親はウォルターのものだったのに、いとも簡単に奪われた。ウォルターは、ベッドに潜り込んで毛布の端をギュッと握った。
「ウォルター」
「……」
「ぼくのことは嫌いかい? でも、少しは好きになってほしいな」
 新しい父親が、布団の中のウォルターに優しくささやく。ウォルターは、不機嫌な顔をしてみせたが、この父親・・・

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ピューっと鳴る音

17/01/14 コメント:0件 つつい つつ

 家に帰ると急に疲れが出た俊彦はリビングのソファにぐっと腰を下ろした。今日は昼から妻の香織と息子の大樹と公園で遊び、夜はファミレスで食事をして一日を過ごした。
「お疲れなさい」と、香織がコーヒーを用意してくれた。
「大樹、もう寝たのか?」
「うん、一日遊んだから、もうおふとん入ったとたん寝ちゃったわよ」
「それにしても大樹、サッカーうまいな。どこかサッカーチームでも探そうか・・・

1

しゃべる自動販売機

17/01/14 コメント:0件 ケイジロウ

「スンマセン、オレ、おにぎり作ったことないっす」
 その言葉に、店長の目が丸くなった。近頃の高校生はおにぎりすら作れないのか、店長は高校生バイトを睨みつけた。
「イラッシャイマセ、キツエンセキカキンエンセキ、ドチラニナサイマスカ」
 入口からの自動販売機みたいな声が、厨房にまで響いてきた。ピーピーピー、という音とともに新たな注文が厨房に知らされる。ピンポン、と客が呼んでいる。あの・・・

2

あくまで相談員

17/01/14 コメント:3件 あずみの白馬

 日曜日の昼下がり、今日は僕の彼女、未菜とデートの予定だった。
 しかし彼女にドタキャンされてしまい、やることも無く秋葉原をぶらぶらとしていた。

 未菜とは婚活パーティーで知り合い、つきあって半年になる。僕のオタク趣味も受け入れてくれて、とても綺麗で優しい。一人暮らしでコンビニ弁当ばかりの僕に、美味しい手料理も作ってくれた。このまま結婚まで行きたいと思っている。

・・・

2

やすらぎの世界へ

17/01/14 コメント:0件 待井小雨

 天気のいい日にしようと決めていた。

 太陽の光が家の中を明るく照らしている。私は中学生の娘の部屋のドアをノックした。
「唯、起きたの?」
「起きてるよ」
 屈託なく笑う唯が部屋から出てきて、私も笑い返す。
「朝ご飯はおにぎりがいいな」
「そんなのでいいの? フレンチトーストとかだって、言ってくれれば作るのに」
 せっかく今日はどんなものでも作れる・・・

2

泳ぎ疲れたセルフィッシュ

17/01/14 コメント:2件 浅月庵

 私のこと甘やかしすぎじゃない?って彼女が苦笑いするから、次の日からしばらく連絡もせず放っておいたら、さすがに寂しいなんて言い出す。
 どうやらお風呂の湯加減と一緒で、人によって“丁度良さ”というものが違うらしい。難しい。

 初めてできた彼女のことが僕はすごい好きで、デートの送り迎えは勿論、行きたいところも食べたいものもすべて彼女優先だった。
 毎日夜に僕から彼女へ電話を・・・

1

秘密

17/01/14 コメント:0件 待井小雨

 燃え盛る炎の中、返事のない部屋の戸を叩く。
「出てきて! 生きてよ!」
 ――こんな風に終わるのなんて、赦さない。

 夜半に起きた火事だった。屋敷についた炎に気づかずに寝入る私を救ったのは叔母だった。
 火の手を背に、必死な顔で叫ぶあの人。
 ――火事よ! 逃げなさい! 逃げて!
 異常な状況に混乱する頭を整理する暇も与えずに、叔母は私を布団でくるみ、・・・

0

背中

17/01/14 コメント:0件 miccho

「最近の歌はどれも同じだねぇ」
紅白歌合戦を鑑賞中の家族の輪に加わっていた祖母が呟いた。
「最近の歌」と形容された歌の歌手は実際には実に12年ぶりに再結成したロックバンドで、僕からしたら完全に「懐メロ」にカテゴライズされるのだが、おばあちゃんから見れば十把ひとからげに「最近の歌」ということになるらしい。
もちろんそんな説明したところで何を分かってもらえるでもないことは重々承知なの・・・

0

お涙頂戴お化け

17/01/14 コメント:0件 十文字兄人

 制服を着た警察官は、暗い路地裏で困り果てていた。
 数分前、駐在していた交番に一本の通報が入った。少女が一人で座り込んでいると。

 現場に向かうと、一人の中学生ぐらいの少女が、顔を自分の膝に埋めた状態で屈んでいた。時折、雨の中の捨て猫のように身体をビクつかせていたので、これはただ事ではないと判断し、優しく声をかけたのだった。

「君、大丈夫?」

「…・・・

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天使からの贈り物

17/01/14 コメント:0件 ひーろ

「死にたい」
 男は独りそう呟いた。
 人生も折り返し地点。男は中身のない長い時間を消費してきた。会社では、上司や同僚から言われたことを言われた通りに、やるべきことをマニュアル通りに行う機械のような存在。頼みごとをされると断れない性質で、「優しいね」などと言われると、心中で「そんなことない」と返す。自分から行動を起こすわけではなく、他人から受けた依頼を淡々とこなすだけのお人好しなのだと・・・

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翼をください

17/01/13 コメント:0件 PineLeaf723

 まだ生まれたてだった僕らに、彼女は母親としての霊感で、それぞれの特質にぴったりの名前をつけた。
 僕は『健』と書いてケン、双子の弟は『優』でユウ。
 健康も優しさも人には必須の資質らしいが、彼女が欲したのは優しさだけだ。

「ユウは優しい子ね」
 夜の仕事から帰宅すると、薬で眠るユウを朝まで見守るのが彼女の日課だ。数年前に離婚してからは特に、ユウを愛でる以外、食事の・・・

2

《ねこ》より

17/01/13 コメント:1件 リアルコバ

ぼくがこの家に来たとき、あいちゃんは10歳だった。
生まれたてのぼくを友達の家からもらってきたんだって。
ぼくの最初の記憶はおさげ髪のあいちゃんがなでてくれてることなんだ。

ぼくの名前は《ねこ》と云う。
猫なのに名前も《ねこ》だって、おかしいよね。
でもあいちゃんが『ねこって名前の猫はきっといないよ』ってつけたらしい。

ぼくはあいちゃんの勉強部屋・・・

0

雨の日

17/01/13 コメント:0件 ササオカタクヤ

こんな雨が降る中で私は傘もささずにただただ歩いた。
道行く人々は私のことを可笑しな目で眺めるだけ。きっと私だって雨の中、傘もささずただただ歩く女がいたら、可笑しな人だなと見てしまうだろう。だから私は怒りさえ覚えない。
雨の中傘をささずに歩き続けようやく街に辿り着いた。あともう少し。
街を歩く人々は皆傘をさしている。傘と傘が重なり、私はその間をすり抜けるように歩く。
やっと辿・・・

0

もそもそ

17/01/13 コメント:0件 とっとっとっとー

 えみりちゃんは こえが おおきいおんなのこ
 おこったり ないたり わらったり いつもいそがしそうなおんなのこ

 そんなえみりちゃんのおかあさんが しんだ

 するとえみりちゃんから いろんなかおが きえた
 あんなにいそがしかったかおが とつぜんうごかなくなった

 でもぼくは きづいた
 かおは うごいていないけど くちは もそもそ う・・・

0

それは500円玉から始まった

17/01/12 コメント:0件 とむなお

 少し曇り気味のある日――
 Rビル付近にある飲料水の自販機の前を、何人もの男女が通っていた。
 やがて、バス停からやってきたマサシ(25)は、立ち止まると財布から500円玉を取り出し、コイン投入口に入れようとした。その時、後ろを通ったエリカ(23)の体がマサシの背中に当たり、手から500円玉が落ちた。
「あっ」
「えっ?」
 落ちた500円玉は転がって、自販機の下に・・・

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寄る辺

17/01/12 コメント:0件 宇田川椎

「ネコになりたい……」
と佐々木がぼやいたのは、東京都郊外にある私のマンションの一室だった。
中学の同級生である私たちがこの広い東京で偶然にも再会し、その後も二人でたびたび会うことになった経緯はそれなりに複雑だ。佐々木はそこそこ良い会社のサラリーマン、私は絵を生業にしているので、接点のない二人の再会は、それなりに奇跡に近いものだっただろう。
とりあえず、佐々木の家に私が勝手に上が・・・

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門出

17/01/12 コメント:0件 本宮晃樹

 すっかり忘れていたはずだった。高校時代は忘却のかなたであり、それがあったのかどうかさえいまや定かではない。
 いまそれが確かにあったのだと、アパートの郵便受けに投函されていた結婚式の招待状によって、疑いようもなく証明されたのだった。
 ずっとわたしのなかで澱のように淀んでいた苦い思い出が、鮮烈によみがえってくる。

     *     *     *

「日・・・

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笑って逝こうか

17/01/11 コメント:2件 かわ珠

 それは、この上ない絶望だった。
「残念ながら、あなたに残された余命は半年です」
 まさか、自分が余命宣告を受けるだなんて、想像もしていなかった。言葉を告げた医者は何の感動もない表情で、機械的に、冷徹に、平然と言い放った。
 突如付き付けられた余命宣告。
 僕は何も考えることができなくなり、病院から自分の家までどうやって帰ったのかさえ覚えてなかった。気が付けば、ソファーに腰・・・

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ムーンダスト

17/01/12 コメント:0件 兎丸


小さな小さな腐った箱庭にただ蹲る事しか出来なかったボクに差し伸べてくれた手はとても冷たかった事を覚えている。
けれどその冷たさがボクが生きているって事を実感させてくれた。飾り気の無い言葉だったけど真っ直ぐに此方を見てくれる視線が暖かくて弧を描く笑みが眩しくて凄く凄く嬉しかった…。

「一緒に来るか」

その一言が白黒だったボクの瞳に色を灯してくれた、生まれて初・・・

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親切な村

17/01/11 コメント:0件 山盛りポテト

俺は都会での騒々しい生活に辟易していた。
そんな折、久々に休暇が取れたので、山間の静かな場所に旅行へ行くことにした。
深い緑に囲まれた山道を車で走らせると心が躍った。窓を開け、澄んだ空気を体いっぱいに吸い込んだ。
「ここに来て正解だったなあ」
今時、携帯の電波も入らないような田舎だったが、その不便さを差し引いてもおつりがくるほどの魅力があった。綺麗な小川、小鳥のさえずり、ど・・・

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どういうのがやさしい?

17/01/09 コメント:0件 ichi

「どういうのがやさしい?」
 5歳の娘が布団の中で、あと4時間もすれば36歳になる俺に聞く。
「う〜ん……」
 俺は答えられなかった。
 なんと難しい質問をするんだ、娘よ。
 いや、いつもなら「そうだなぁ。例えば、お母さんのお手伝いしてあげるとか」って安易に答えるだろう。
 しかし、もしそう言って、娘が皿洗いの手伝いをすると言い出し、皿を割ってしまったとする。お・・・

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優男のこと

17/01/11 コメント:0件 Fujiki

 はじめに断っておくが、優男の読み方は「やさおとこ」ではなく「まさお」である。でも僕らは彼を「やさお」と呼んでいた。
 やさおという呼称のきっかけは、ポテトヘッドというあだ名を持つ文学教授が担当した大学三年次のゼミだった。最初の授業でポテトヘッドは登録簿の氏名と教室にいる学生の顔を交互に見ながら丁寧に出席を取った。
「仲宗根リカルド君……西野松子君……西銘やさおとこ君? ほう、君はあの・・・

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「優しい子」

17/01/11 コメント:0件 PURIN

小さい頃から、みんなは僕を「優しい子」だと言っていた。
人の気持ちを考えて、人のために行動できる子だ、と。

ある日、友達の1人が大けがをした。
もう助からないと誰にでも分かるくらいの酷いけがだった。

友達は、息も絶え絶えに言った。
「どうせ助からない。これ以上痛い思いをするのは嫌だ。もう死にたい」
かわいそうだった。
だから、僕はその子を殺・・・

2

オンリーワン!

17/01/11 コメント:0件 若早称平

 いつもの公園を通りがかった時、ふと嗅ぎ慣れた香水の香りがした。ということは彼女がいるのではないかと周囲を見渡すと、思った通り噴水前のベンチのそばに彼女の姿を見つけた。
「やあ」と僕が駆け寄り声を掛けると「こんにちは」と彼女が会釈する。
「いい天気ですね」
「そうですね」
「どこか行かれるのですか?」
「いえ、これから帰るところです」
 過ぎ去る彼女の後ろ姿を僕・・・

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腐るボタン

17/01/10 コメント:3件 かるり

「腐りますか?」
 案内人を名乗る男が取り出したのは、怪しげな装置だった。
 装置はたばこの箱と同じぐらいの大きさで、中央に赤いボタンがついている。ポチッと押したくなるデザインだが、その気になれないのはボタンの下にDANGERと書かれているからだ。
「危険と書いてあるぞ」
「教えて頂きありがとうございます。英語が苦手なものでして」
 恭しく頭を下げた後、案内人が言った・・・

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悪魔が来りて

17/01/10 コメント:0件 らー

狭いレコードスタジオの片隅に俺は居た。
俺はプロミュージシャンである。その演奏技術と音楽性は
業界からは高く評価されていたが一般受けせず全く売れなかった。
マニアしか受けない。美しい旋律を奏でだせるというのに。
俺はミュージシャンとして芸術性を求めていた。
売れればいいという考え方は無かった。だが一向に芽が出ない状況に焦り始めた。

何故売れないのか 何故・・・

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Which?

17/01/10 コメント:0件 miccho

「なんでまだ資料できてねぇんだよ!お前仕事なめてんのか?」
また始まった...。僕は下唇を噛みながら、上司の叱責に対して消え入りそうな声で返事をするのが精一杯だった。
この1週間、1日2〜3時間睡眠でなんとか業務をこなして来たが、もう限界だった。

「外資系経営コンサルタント」
入社前この仕事に対して抱いていた、ブランドのスーツをスマートに着こなし、大企業の経営者に対・・・

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優しさの裏返し

17/01/09 コメント:0件 窓際

正月に引いたおみくじが大吉だった。
僕の人生が下向きに伸びていくきっかけとなったのはそんな些細なことだったのかもしれない。

自分で言うのもなんだが僕の人生は順風満帆であった。
高収入・高身長・高学歴
一昔前に言われていた3高全て揃っていたし、運動はすべて並み以上には出来るくらい運動神経もよかった。

才能にあふれ誰からもあこがれるような人生が狂いだしたの・・・

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みなさまへ。

17/01/09 コメント:0件 いありきうらか

話さないことが優しさ、だと思っていたのですが、どうやらそれは違ったようで、
しかしそれ以外にどうするべきだったか、と問われると私は答えを持っていませんでした。

私にはユーモアがありませんでした。だから誰かから話しかけられてもうまく言葉を返すことができませんでした。
お喋りは嫌いではなく、むしろ好きな方でした。
ですがある日、私が話している最中、友達は、目を合わせずに・・・

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やさしさについて

17/01/09 コメント:0件 sasaki aki

 控室の扉が開いて、廊下から窮屈そうに長身の男が室内に入った。先に部屋にいた少し小柄な男を視界に入れると長身の方は自然な動作で小柄の方の隣にあるパイプ椅子に腰を下ろす。窮屈なのは部屋が狭いなどと言う理由ではなさそだった。
「こないだの収録のコメントだけど、あれあんまりよくないな」
 唐突に、思いのほか高い声音で長身が話しかけた。言いながらパイプ椅子を引いて二人の座り位置が少しハの字にな・・・

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アイシテ

17/01/09 コメント:0件 六月一日 憂



「あんたなんかッ!あんたなんかッ!!」
「やめてお母さんっ!!」
「うるさいっ!!」
「…っ」

飛んでくる物を避けたらダメ。
避けたら余計に怒らせるから。
飛んでくる物が無くなるまでジッとしていれば解放される。そう、我慢していればいい…。

「あの女によく似た顔で私の前に近寄らないでッ!!」
「ごめんなさい…ッ」

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いちごクレパス

17/01/09 コメント:0件 深夜にじ

 これでいいの。これでいいの。私はこれでいいの。
 体の中心に刻まれつつある呪文を何度も何度も繰り返し、人差し指に力を込める。指になじんだクレパスを細かく動かすたびに、柔らかい赤がスケッチブックの上で溶ける。
 クレパスは色合いが柔らかいから好きだ。クレヨンのように主張が強すぎるわけではないし、色鉛筆のように先端がとがってもいない。ただなめらかに、そして伸びやかに緩くほどける。
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こんなクズでも愛してる

17/01/09 コメント:0件 山吹薫

「私が馬鹿だった。雅人は本当に酷い人だった」
 公園のベンチで項垂れた香織は、酷く酔った口調で、小さく呟いた。
 「裕子と哲平君の言うとおり……ごめんね、本当にごめん」
 「なんで謝るの。香織は何にも悪くないのに」
 隣で背をさすっていた私が言うと、香織は子供のように泣き出した。
 香織とは大学時代からの親友で、今は同じ会社で働いている。
 穏やかで優しい性格の・・・

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言えないこと

17/01/08 コメント:0件 八王子

 仕事から帰ると温かい夕飯ができていたりはしない。
 それどころかどこの部屋も真っ暗で電気のひとつも点いていない。
「ただいま」
 壁のスイッチを押して電気を点けても、その返事が返ってこない。
 いつもより広く感じる物静かなリビング、大きなソファーは冷たく、大きなテレビも静寂を保っている。
「まずい、洗濯物干しっぱなしだ」
 買ってきたスーパーの買い物袋をキッチ・・・

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優しい出来事

17/01/08 コメント:0件 糸井翼

電車の中で起こった、優しい事件について書こうと思います。事件、と言うか、私にとっては事件でした。だって、電車の中って、みんな寝ているか、スマホをいじるか。他人との繋がりなんてあまり感じないでしょう。そんな電車の中で、思わぬ優しさに出会ったのでした。

私は始発駅から電車に乗っていることもあって、いつも同じ電車、同じ場所に乗って通勤しているのですが、そうしていると、仲良くなるわけではない・・・

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AKAZUKIN

17/01/08 コメント:0件 糸井翼

森の中にその組織の施設はあった。
以前から内偵している馬場の力も借りて、なんとか組織に入り込むことができた。
「お前、名は」
「ウルフだ」
この組織では本名では呼び合わない。俺の名前は大神だったからウルフとなった。俺の立場からしたら随分露骨な名前だが仕方ない。
施設の中で馬場が待っていた。
「名前、ウルフなんていいじゃないですか。私、グランマですよ。馬場だから、・・・

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17/01/08 コメント:0件 木野 道々草


もし
人間を
描くのに
必要な色を
使うとしたら
優しさの光だけ
反射する心を砕き
粉にして痛みに耐え
愛でのばし時間をかけ
できた絵の具を筆にとり
唇に両手の平に視線の先に
そっとのせるそれを繰り返す

絵の具のチューブが十九世紀
  画家を戸外に連れて
    風を見せた
      が<・・・

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優しさの湯

17/01/07 コメント:0件 比些志

優しさの湯という温泉ができたというので、青木は仕事帰りに一人で立ち寄ることにした。そこはサラリーマンやOLをターゲットにしている都市型のいわゆるスーパー温泉である。とはいえ天然の源泉掛け流しで、且つ体のみならず心まですっかり癒され、優しい気分に満たされると評判なのだ。
青木は受付をすませると、まっすぐ脱衣場に進んだ。とても清潔だし、店員の対応も気持ち良い。とりもなおさず汗ばんだスーツとシ・・・

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おにいちゃんとの約束

17/01/07 コメント:0件 ちほ

  太陽が沈む直前の世界が金色に輝く時間だった。幼いわたしは、名前も知らない『おにいちゃん』と公園の砂場で遊んでいた。彼はいつも優しかった。いつどんな風にして出会ったのかは記憶にない。今では、顔すらも覚えていない。でも、幼いわたしへの彼の別れの言葉は覚えている。
「もう君には会えなくなるんだ」
「とおくへいっちゃうの?」
「またこの町で暮らせるようになったら、君に大きな花束を贈・・・

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優しさをありがとう

17/01/07 コメント:0件 かめかめ

「すみません」
 午後八時。仕事帰りの僕は駅前で声をかけられた。見れば東南アジア系の顔立ちの若い女性だった。道でも聞きたいのかと立ち止まると、彼女は一枚のカードを差し出した。
『恵まれない子供たちのために署名と寄付をおねがいします』
 名刺サイズのカードには片面に日本語、片面には英語で同じ意味の言葉が書いてある。
 彼女は赤い手帳を開いた。子供たちの写真がたくさん貼ってある・・・

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物々交換

17/01/07 コメント:0件 秋澤

誰が言ったか覚えていない。けれどまん丸のオレンジを見ると思い出す言葉がある。
「レモンには火薬が詰まっている。オレンジには優しさが詰まっている。」
どういう意味だったのか、10年以上経った今もその真意を掴めないでいた。レモンに火薬が詰まっている、というのはおそらく梶井基次郎の「檸檬」からの引用だろう。だがしかし、対を成すように上げられたオレンジ。なぜオレンジには優しさが詰まってい・・・

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ボクに足りなかったもの

17/01/07 コメント:0件 海見みみみ

「ゴーダ君、小説のサイトで一位取ったの⁉」
 そんな大声が五年三組の教室にひびきわたりました。
「これもおうえんしてくれる、みんなのおかげだよ」
 ゴーダ君は笑顔でそう答えます。
 クラス中がゴーダ君に注目する中、一人だけノートに向かって真面目な表情で書き物をしている男の子がいました。
「ふん。素人の世界で勝ったって、なんの意味ないのに」
 だれにも・・・

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優しさって

17/01/07 コメント:0件 麦食くま

新しい年を迎え、世間が平常モードに戻りつつあった日の夜。とある警察署のの留置場にいた山本優真は、一人自責の念に駆られていた。「俺の名は優真(ゆうま)その名のとおり、『真に優しい人間にと名づけてくれた』と両親に言い聞かされた。だから、そうあろうと人に優しくしたつもりだったのに、それが災いになって、こんなところに放り込まれるとは・・・」
そういいながら優真は事件のことを思い出す。

・・・

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大根

17/01/06 コメント:2件 ちほ

 パブ『ロビン』の2階の自宅の居間で、小さな男の子が膝を抱えて考え込んでいた。いつも忙しい父親の誕生日に何をプレゼントにしようかと悩んでいた。
「お父さんの好きなものは何だろう?」
 突然、居間に父親が入ってきて、ほとんどうわの空で「大根……大根……」と呟き、いきなりクルッと男の子に顔を向けた。
「大根を畑から抜いてきてくれないかな?」
「うん、いいよ。裏の畑?」
・・・

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私の命は――

17/01/05 コメント:0件 汐月夜空

『いい、晶子』
 小学校低学年の放課後、待ち合わせ場所での母の言葉。
『占術師はね、決して嘘をついてはいけないんだ』
 それは、遥か先祖から占術師を継ぐ我が清水家に語り継がれる家訓の一つ。
 幼少の頃から優しい声音で重ねられたそれは、雪のように柔らかく私の身体を満たした。
『かと言って、占術の結果をそのまま伝えれば良いわけじゃない』
『嘘が駄目なら、本当のことを・・・

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知らない

17/01/05 コメント:0件 直見

 物心ついた時には、すでに人から疎まれていた。
「お前はこの世に生まれてきてはいけなかったのだ」
 とよく言われた。親にではない。会ったこともない、知らない人たちに、だ。
 親はいなかった。まるで最初から存在していなかったように、記憶の片隅にすらいなかった。
「お前は木の股から生まれた」
 と言われたこともある。そのときはまさかそんなことがあるものかと信じられなかっ・・・

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右手の優しさと左手の気持ち

17/01/04 コメント:0件 吉岡幸一

 左手は右手が嫌いだった。いつだって主役は右手、左手は活躍する右手を補助してばかりでけして主役にはなれない。
 食事の時、右手が箸を握ってご飯を口に運ぶので、その手伝いをするため左手は茶碗を握ったり皿を押えたりしなければならない。 手紙を書くとき、右手がペンを握る。ソフトボールをするとき、右手でボールを投げ左手は投げられたボールを受けるだけ。物を拾うときもたいていは右手が先に使われる。口紅を・・・

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フレンチトースト

17/01/03 コメント:0件 栗山 心

 おはよう、健ちゃん。起きた?うん、大丈夫?朝食、用意出来てるわよ。ママのフレンチトースト、あなた好きでしょう。クリームとイチゴジャムもあるわよ。うん、寒いから、暖房入れた。でも、パジャマの上に何か羽織って。片方の靴下は?蒲団の中?足、冷えなかったかな、風邪でも引いたら大変。熱、無い?おでこ、くっ付けて。うん大丈夫みたい。お紅茶、入れるわね。アールグレイ?ダージリン?胃を痛めるといけないから、ミル・・・

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優しい牢獄

17/01/03 コメント:0件 るうね

「ここから逃げ出そう」
 僕の言葉に、彼女は小首を傾げた。
「どうして? ここには何でもあるわ。食事にも困らないし、寝るところだってある。病気になった時は、親身になって世話をしてくれる人だっている。こんなに優しい世界、他にはないんじゃない?」
「そんな優しい世界だからさ」
 僕は言葉を吐き捨てる。
「こんなところにいれば、きっと僕らは駄目になる。身も心も腐ってしまう」・・・

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優しい占い師

17/01/02 コメント:0件 吉岡幸一

「それでは何を占いましょうか」
 占い師は長い髪で顔を隠しながら、今日も迷える人々の手相を見るのだった。
 デパートが閉まった後、シャッターの前に折り畳み式の小さな机と椅子を並べ、仕事帰りのOLや酔っ払いを相手に占っていた。
 そこそこ人気があって固定客もいたが、商業ビルなどに入ってきちんと店を構えようとは思っていなかった。占いなんて本当は出来なかったので、いつでも店じまいをして・・・

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スプーン

16/12/30 コメント:0件 フィットくん

−今でも忘れはしない。あれは小学3年生の時だった。−

「箸の持ち方ちげーべ。こうだべ」
母親から何度も注意された。うるさい。静かに飯ぐらい食わせろ。
私はそんなことを思っていた。母から言われたことを直さず、私は自分で正しいと思う箸の持ち方でご飯を食べ続けた。

すると母がムキになり、
「そんな箸の持ち方ならご飯食うな」
と一言。だんだん口が尖ってき・・・

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優しさは世界は良くしているだろうか

16/12/30 コメント:0件 チャイナ

北の大陸、とある病院の個室
 若い医者は少女の額にキスをする。半分は彼の恋心から、もう半分は彼女に生き続けて欲しいとする彼の優しさから。ふかふかのベッドに横たわる少女は弱弱しく、愛おしい。全身に繋がれたチューブや、キスをさせまいと口を塞ぐ人工呼吸器すら、彼には少女を彩るアクセサリーにしか見えていない。少女はゆっくりとした動作で医者の方に顔を向ける。重い病状に苦しむ彼女を救いたいとする欲望の土・・・

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ステキな二人

16/12/30 コメント:0件 64GB

うらぶれたインテリアショップが立っていた。

店主は若い男である。

店の奥には価値ある品が置いてあった。

だが光の届かない暗い場所に誰も足を運ばない。

客は店の前に置いてある安物を買っていく。

20年以上も売れ残った価値ある品
……本当に買ってもらいたいのはこっちだと思い続けていた。

ある時ステキな女性が店を覗・・・

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闘いのなかで

16/12/30 コメント:0件 水面 光

私の中では彼女の言った言葉たち──正確に言うと彼女が実際に言ったのではなく、私が彼女が言ったものと錯覚しているだけかもしれない。というのも、こういった現象は統合失調症の主な症状のうちの被害妄想や幻聴という私がすでに何度も経験していることだからだ──が独り歩きして暴走をし始めた。「不倫しようと思ってるのかな?」──たぶん、彼女は一言もそんなこと言ってない。「腰痛なのかな?」「歯並びがいいね」「足が短・・・

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「これでいいのだ」〜込められた優しさ

16/12/29 コメント:2件 あずみの白馬

「これでいいのだ」

 赤塚不二夫作「天才バカボン」の主人公、バカボンのパパの名言。

 私は、この言葉ほど優しさにあふれた言葉は無いのではないかと思う。

 ギャグ漫画に登場する言葉に、どれほどの優しさが込められているのだろうか?

 人間は、時に過去にこだわってしまう。私などは特にそうだが、あの時こうしておけば良かったとか、こうだったら良かったの・・・

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優しいぬくもりを手探りして

16/12/27 コメント:0件 結簾トラン

「ストーブのね、出したばっかりの時の埃の焦げる匂いってすごく落ち着きませんか?」
「あぁ冬だなぁって感じで」

 そうなのか?と青年が返す。彼女は頷いた。
「うちは両親の趣味で薪ストーブだったからなー、薪の燃える匂いとか、パチってはぜる音かな」
「あーいいですね、憧れます」
 本の中では見慣れた光景が浮かんできて知らず笑みが浮かぶ。想像の中の暖炉の前には、な・・・

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優しさ、売ります

16/12/26 コメント:2件 雲鈍

「優しさ売ります」

 僕がその看板を見つけたのは、仕事が終わり、帰りの電車に向かう途中だった。
 木製の居たに、ペンキで乱雑に塗り描かれたその字面につられて、僕はその持ち主を目で探す。……近くに佇むのはキャップをかぶった少女と犬。少女はタバコをプカプカさせながら、犬はしっぽをぷらぷらさせながら、互いに明後日の方向を見つめていた。

「いくらなの」

 僕・・・

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ステーキ

16/12/25 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

カリブ海上を客船で北上していたとき、突然の大波をうけて船が大きく傾き、あっと思ったときは私は海上に投げ出され、ほかに投げ出された者たちといっしょに、とにかく沈没する船体から逸早く逃れるために死にもの狂いになっていた。
何人かと海面を漂っているうちに、いくらも離れてないところに島影がみえだした。みんなは互いに励ましながら、その島めがけて全力で抜き手を切った。
島に泳ぎついた者たちは17名・・・

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ガールフッド

16/12/25 コメント:3件 泉 鳴巳

 遺品を整理していたら、カーペットの下に一冊のノートを見つけた。
 パラパラと捲って気付く。これは、彼女の遺した日記だ。
 どうしてこんなところに。疑問に思いながらも、蚯蚓の這うようなか弱い字を目で追っていくうち、私はその内容に引き込まれていった。

4/5(日)晴れ
今日から私は日記を書くことにしました。
私は重い病気で、ほとんど布団から出られません。そのため・・・

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心やさしきバンパイア

16/12/25 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

闇よりもまだ黒い影が、夜道をゆく女性の背後に忍びよったかと思うと、その姿はたちまち人間に様変わりして、鋭い牙をのぞかせた口が、女のやわらかなうなじにいままさにくいつかんとしたそのとき、はたとそこで、D氏の動きがとまった。
後ろ姿はまことに艶やかな美女かと思いのほか、前にまわってみたその顔は、十人並かややそれより劣った。D氏にとって、美女の生血を吸うことこそ先祖伝来引き継いできた吸血鬼の誇り以・・・

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Sometimes Alone

16/12/25 コメント:0件 浅月庵

 高校卒業後に上京して、数年で金融大手の銀行員と結婚した姉貴。顔立ちが整っていて頭も良かったので、こいつの周りにはいつも人が集まっていた。俺とは大違いだ。
「よりにもよって二人とも旅行かよ」
「お母さんには連絡してたんだけど、日にち勘違いしてたみたい」
「あぁ〜」
「明日の朝には確実に戻るから」人妻が朝帰りなんかしていいのか。「勇輝、文也の言うことちゃんと聞いてね」
・・・

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優しさって

16/12/25 コメント:0件 素元安積

「へぇ、コイツが流行りのカラクリってやつか。面白そうだ。ちと、起動してみっか」
ここ最近、江慕エボの町で流行っているのが、伝言板の代わりとされる、この辞書ロボット”コトハ”であった。
江慕の町と言っても、住むのは人の子。鬼とは縁遠い存在だった。
しかし、鬼だって好奇心と言うものがある。面白そうな存在の登場に、皆密かに心躍っていたのだ。
鬼達の首領であるこの鬼もまたその一人で・・・

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優しさって2

16/12/25 コメント:0件 素元安積

「なぁ、優しさって何だと思う?」
 とあるうどん店。一人食い用のカウンター席に座る俺の隣にいる男が、突然聞いてきた。
 無視をしようと思ったものの、痛い程感じる男の視線。これは無言の、「答えてくれ」だった。
「何かあったんですか?」
 うどんを啜りながら、俺は男に尋ねた。
 すると男はぐったりと項垂れてカウンターに顔を付ける。こいつは余程ショックなことがあったのだろう・・・

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優しい嘘

16/12/22 コメント:0件 夜門シヨ

俺は嘘を吐いた。

嘘はいけない事。悪い事。
嘘を吐いても、良いことなんて無い。

でも、この嘘は優しい嘘だ。
だから、いけない事じゃない。悪い事じゃない。
良いことだってある。
君が、傷つかないから。
それが、俺の最大限の優しさ。
そう、思ってた……。





「嘘吐き!」
「っ!」
頭・・・

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蹴落とし引き摺り上に立つ

16/12/21 コメント:0件 ゆきどけのはる

「ごめん、この書類なんだけど…」
「いいですよ。いつまでにやっておけばいいですか?」
 先輩から渡された書類は山積みで、私はそれを嫌な顔一つ見せず受取りデスクに向かう。ひたすら与えられた仕事と頼まれたものを捌く。誰かはそれを押しつけられるとか、面倒だとか言ったりもするが私はそうは思わない。
 もらえるものは借金以外ならもらう。頼まれたら断らずにやる。それは学生時代からそうしてきた・・・

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箱庭のサイチョウ

16/12/20 コメント:0件 結簾トラン

生まれつき骨の兜を被って、私は密林の中に生まれた。
幸いなことに蟻とは逢わずに、喇叭を鳴らして気ままに暮らした。同朋は一度も見たことがなかった。私は独りでも別段構わなかった。

若いうちに己の羽を使わずして、青き海を渡る旅をした。
そうして今のこの箱の中へ来た。
密林程の広さはないが、どうやら蟻もいないようだ。
時折果物を摘まみながら、私は静かに暮らし始めた。<・・・

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抜歯

16/12/20 コメント:0件 チャイナ

「少しちくっとしますよ。」
 痛みの濃厚な気配がぬるりと口内を撫でる。浅い角度で楽に座っている。これ以上とないリラックスした姿勢だが、体は硬く強張り、俺の両手は互いを求めるように硬く組み合わさる。ちくっ。小さな針が俺に侵入してくる感覚。つづいて滲むような痛みが短く、数回に分けて訪れる。
「では、麻酔が効くまで休憩しましょう。」
 先生が離れていく。自信に満ち溢れながらも決して驕っ・・・

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亭主関白

16/12/20 コメント:0件 かの

私は亭主関白なんぞになるつもりはなかった。
しかし彼女は、私をそれにするのが仕事だと思っていたようだ。
私が夜遅くに帰宅しても、当然のように出来立ての夕飯と熱めのお風呂が準備されていた。
私より先に床へつく事はなく、もちろん私より遅く起きてくることも無い。
私が起きればやはり温かい朝食と綺麗に整えられた洋服と鞄がいつものように置いてあるのだ。
彼女は何を・・・

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汚れなき10代

16/12/19 コメント:0件 おかちゃん

 高校の卒業記念にとひとり旅に出た。夜汽車に揺られ、日本海の荒波にもまれ着いた先は佐渡島のひなびた小さな寺。
大叔父が住職。中年の女性とその娘がお手伝いとして住み込んでいると祖父が教えてくれた。。
「よく来たな。まあ、上がりなさい」大叔父は寺の中へと嬉しそうに私を迎え入れた。寺の中は伽藍堂。境内には日蓮の
袈裟掛けの松が一本あり、それを目当てに日に三台ほどの観光バスが止まるという・・・

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これは紛れもない僕の物語

16/12/20 コメント:0件 浅月庵

 ある晴れた日の朝、神様からのお告げが頭のなかで響いた。

 “お前才能ないから、小説家目指すのやめろ”
 “どこかの企業の正社員を目指せ”
 “お前が心から愛せる女性と出会い、結婚しろ”
 “我が子の成長を喜び、不自由ない生活を送れ”
 “それがお前にとっての幸せだ”

 中学の頃から小説を書き始め、今の僕は二十代半ば。数々の文学賞に作品を投稿した・・・

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繋いだ手

16/12/19 コメント:0件 胡蝶陽夜子

ぎゅっと握った その掌から
あなたの温もりが伝わるから
私もそっと握り返すの
想いを込めて

好きな人と手を繋ぐのって
心がぽかぽかするもの
それは恋人だったり
家族だったり
子どもだったり
相手は色々だけど
手の温もりはみんな一緒
こんな幸せな日々が続きますようにって
願いながら手を握るのは
私だけじゃないはず<・・・

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この男

16/12/19 コメント:0件 りんご◯

私は、どう足掻いても、この男の一番にはなれない。
そして、どう足掻いでも、この男を嫌いになれない。

呼び出されるのは、彼女と喧嘩した時。
彼女が旅行している時。
…彼女が他の男と会っている時。
この男の世界は、全て彼女を中心に回っているのだ。
「明日も来て」
「…ごめん、明日は…」
「何、男?」
「…ちが…」
「じゃあ、来て」

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私はそれと引き換えに。

16/12/19 コメント:0件 りんご◯

時間が欲しかった。
ずっとずっと欲しかった。
やっと手に入れた時、私は自由を失った。



癌宣告をされたのは今から半年前。
私は、受験を目前にしたある日、学校で意識を失った。
その前から、ずっと腹痛は感じていた。
受験前のストレスだと思ってた。

大きな病院に入った日、いつも以上に静けさが私を襲う。
個室の部屋では、時計の音・・・

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北風と太陽と乾いた空と

16/12/19 コメント:0件 長玉





ある日、北風と太陽がケンカをした。

「やい、太陽。明るいだけのくせして、おれより強いなんて認めねえぞ
「まあ、いまのは聞き捨てなりませんわ。
わたしがこうして年中無休で光っているからこそ、ヒトは生きられるのです」
「くだらないね。ヒトなんて、ほうっておけば
おなかをすかせて全滅するぜ」
北風が見下ろした先には、うすぎたない・・・

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1LDKC

16/12/19 コメント:0件 蹴沢缶九郎

一人身の男が新しい部屋を探しに不動産屋へやって来た。男を迎え入れた担当者は、男の希望する物件の条件を聞き、一件の物件を紹介した。

「お客様の希望を満たす物件となりますと…、こちらの部屋などはいかがでしょう? 最近入ってきたばかりの優良物件です。駅から徒歩三分、近くにスーパーがあり、家賃は六万円と相場よりお安く、なにより新築アパートの1LDKCです」

「新築か…、良いね」・・・

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魔法のポケット

16/12/19 コメント:0件 蹴沢缶九郎

おやつの時間、弟が兄に言った。

「お兄ちゃん、僕のポケットはね、魔法のポケットなんだ。だからビスケットを入れてポケットを叩くとビスケットが増えるんだよ」

弟の言葉に、兄は笑いながら言う。

「それはビスケットが増えているんじゃなくて、ただビスケットが二つに割れただけさ」

しかし、その説明に納得のいかない弟は、

「嘘じゃないよ、見て・・・

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三くり姉妹

16/12/19 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 いがいがの家の中に、くりの姉妹がすんでいました。
 三くり姉妹です。
 一番上のお姉さんは、コロン。
 コロコロと、よくわらう女の子です。
 まん中の子は、ポロン。
 ポロポロと、よく泣く泣き虫です。
 一番下の妹は、プリン。
 プリプリと、おこりんぼうです。
 三くり姉妹は、それぞれ性格がちがうので、せまいいがいがの家の中では、いつもケンカがたえ・・・

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お父さん、泣かないで。

16/12/19 コメント:0件 かわ珠

 私のお父さんはよく泣く。
 映画を観に行けば、感動的なストーリーに涙を流し、テレビのニュースを見ては、小さな子が殺されてしまったという理不尽な事件に涙を流す。電車の中でお年寄りに席を譲る若者を見ても涙を流し、街中で美しい虹を見つけて涙を流す。誰かのお葬式に参列して泣かなかったお父さんは見たことがない。
 けれどもきっと、それは泣き虫というわけではない。
 いや、よく泣くから、そ・・・

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ニャンキチ先生の優しさ

16/12/19 コメント:4件 葵 ひとみ

「私、生理痛がひどいんですぅー。お話してくれませんか?彼氏とのお話の9割がシモネタなんですぅー」

鹿児島市の貿易商の愛娘であるミナミさんが無料通信アプリREONで萌えキャラヴォイスで午前3時!?に一方的に通話してきた……
おそらく、今まで、ミナミさんは彼氏とREONでお話していたのだろう……

ミナミさんにはちゃんとした彼氏がいて今現在、札幌市に赴任中なのである――・・・

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ネパールの優しさ

16/12/19 コメント:0件 葵 ひとみ

「……それで、御話のつづきなんですけど」とその若い女性は再び饒舌に喋りはじめた。

「とにかく素晴らしい才能のある方なんだけど、ものすごく変わった方なんです」

「なるほど」

「倉敷美術工芸繊維大学に半年ほど通ったんですけど、大学で講義を受けるカリグラフィーなどをはじめ全てにどうにも納得がいかなくて、そこを中退して、船員としてスリランカ行きの貨物船にのりこんだ・・・

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