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  2. 第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】

第123回 時空モノガタリ文学賞 【 クリスマス 】

今回のテーマは【クリスマス】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/01/16

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/11/21〜2016/12/19
投稿数 102 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 「クリスマス」テーマのコンテストは4年振り、2回目となります。今回は投稿数が前回の倍以上なこともあってか、依然よりもバリエーションに富んだ作品が多かったと思います。投稿順の前半ではクリスマスやプレゼントなど比較的オーソドックスなもの、後半はサンタクロース自体に焦点を当てたものが多かったですね。また、スプラッタ、ダークな傾向の作品も、やや多かったのが意外でした。どの内容にも言えることなのですが、設定の奇抜さや平凡さということだけでなく、ものの見方に説得力や普遍性、新鮮さがあるかどうかが、やはり印象を左右するのだと思います。今回の最終選考作品の「1/365」は、スーパーでのクリスマスの様子が具体的で印象に残りました。クリスマスという形骸化したイベントに抵抗を持つ主人公が、寺島さんの、軽く見える表面の顔とは裏腹に顧客の要望に真摯に向き合う姿勢に揺り動かされる過程が、丁寧に描かれていました。「明日、消えるかも知れないこの光を」は、とても美しい作品ですね。戦場でのつかの間の休戦の暖かさ儚さが、感情を抑えた丁寧な文章から静かに伝わってきます。「エッセイ 残る日々」は、本当に何気ない日常の一コマの記憶が綴られているのですが、落ち着いた文体で、小さな店のクリスマスの様子が目に浮かぶようです。「樅の木とクリスマス」は、電飾で巻かれる樅の木の辛さや孤独が描かれているところに意外性がありました。

入賞した作品

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消失のサンタ

16/12/19 コメント:5件 奈尚

 昨夜見た夢の話だ。羽の生えた少女が現れて、まっすぐ私を指さし言った。
 あなた、サンタクロースにおなりなさい、と。

「そういえば今日はクリスマスイブだっけ」
 顔を洗いながら、鏡越しにカレンダーを確認する。社会人となり一人暮らしを始めてからというもの、すっかり行事というものに注意を払わなくなってしまっていた。
(なんであんな夢を見たんだろう。サンタなんて柄でもない・・・

6

クリスマス・ニャロル

16/12/17 コメント:6件 宮下 倖

 カイは助走をつけることなく軽やかにブロック塀に飛び乗った。背負いなれないリュックが不安定に揺れる。急に開けた視界に目を細め、しなやかに四肢を伸ばして夜空を仰ぐと、満天の星が瞬いていた。カイは鼻を動かし、キンと冷えた空気を吸い込んだ。

 知る人は稀だが、日本において聖夜にサンタクロースの手助けをしているのは野良猫たちである。その昔、初めてサンタが日本に来た際、あまりの忙しさに「猫の手・・・

10

おとうとの彼女

16/12/16 コメント:3件 黒谷丹鵺

「ナマイキだ!」
 あたしは白い息を吐き散らしながら坂道をのぼっていた。
「今日は彼女とデートだから遅くなる? ふざけんな!」
 まだ柔らかい雪をドスドス踏みつけて進む。ショートブーツの上から雪が入って踝のあたりが濡れているけれど、そんなことはどうでもいい。冷たさも感じない。
「家族を大切にしろっての!」
 文句を言いながら勢いよく踏み出した足がツルンと滑り、あたしは・・・

4

雪解けは灯滅と共に

16/12/11 コメント:5件 日向 葵

 十二月の冷たい雨が病室の窓を叩いていた。病院のベッドに横たわる父の姿は、暫く見ないうちに、しぼんで小さくなっていた。

「もう長くないから」

 久しぶりにかかってきた実家からの電話の主は母だった。何もクリスマスに呼び出さなくても良いではないか。相変わらずの空気を読まない態度に、私は憤りを通り越して呆れ果てた。手短に見舞って帰ろう。そう思い、最小限の荷物と金を持っ・・・

3

512の夜

16/12/03 コメント:5件 秋 ひのこ

 512は担当のN地区に到着すると、長年使いすっかり手に馴染んだ懐中時計をピタリと止めた。
 闇に舞う雪が、宙に浮いたまま堕ちることを止める。明かりが灯る街から音が、動きが、臭いまでもが消える。512と、彼をのせた橇(そり)をひくトナカイの息遣いだけが、白く漂っている。
「さ、行くか」
 512は最初の家へ手綱を切った。

 12月25日午前0時、識別コードのついたサ・・・

最終選考作品

2

1/365

16/12/19 コメント:4件 四島トイ

 キリがないよなあ、という手島さんの声。紙束を机の上で整えるトントンという音が続く。
「合コン。また駄目だったんですか」
「また、とか言わないで」
 即座に反論された。パソコン画面の勤務表から目を離すことなく、はいはい、と私は応じる。年末年始にかけてシフトが埋まっているバイトは私だけだ。
 事務室の薄い壁越しに、軽快な店内音楽が耳に届く。冷たいなあ竹倉さんは、と寺島さんが呻・・・

16

明日、消えるかもしれないこの光を

16/12/19 コメント:16件 冬垣ひなた

 そうだ、今日は星がとても綺麗で、どれか一つでもいい、木の上にこぼれ落ちて来たら立派なツリーになるだろう。
 父さん、母さん、メリークリスマス。
 この手紙がいつ届くかは分からないけれど、ロンドンに帰れなくてごめん。愛してる。
 24 December 1914 
 フランドルにて ブライアン


 土を掘って身を隠す塹壕のぬかるみに、軍靴の足先は凍て・・・

2

【エッセイ】 残る日々

16/12/19 コメント:0件 野々小花

 元夫の父親が経営する店を、結婚しているあいだ、私も手伝っていた。日本に出稼ぎに来ているブラジル人向けの店である。食料品が主で、店の大きさはコンビニと同じくらい。レジはひとつだった。
 当時、私は彼らの言葉がまったくわからなかった。それなのに、無謀にもそのたったひとつのレジを担当していたのである。バーコードを通せば値段は表示されるから、私はとにかくニコニコしてその金額を指さしていた。
・・・

1

【樅ノ木とクリスマス】

16/12/11 コメント:2件 吉岡幸一

 樅ノ木は辛かった。身体中を電飾でぐるぐる巻きにされて揺れることも出来ず、一日中つけられた明かりが眩しくて眠ることもできなかった。外灯の明かりに集まってくる夜の昆虫のように人びとは木の下に群れた。根元は踏みつけられ土は硬くなった。小鳥は寄りつかなくなり、闇夜は逃げていった。十二月は樅ノ木にとって一年でもっとも苦しく嫌な時期だった。
 市役所が建てられるずっと前から樅ノ木はそこにあった。県の保・・・

投稿済みの記事一覧

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サンタの仕事

16/12/19 コメント:0件 汐月夜空

気になるあの方へ独占取材!!
本日はこの時期と言えばこの人。サンタさんにお尋ねしてみました。

――さて、早速ではございますが、まずは自己紹介からお願いいたします。もはや説明するまでもないとは思いますが、我々の知らない肩書もあるとか。
「はい、私は17世紀の歴史を持ちます株式会社サンタクロースの代表取締役サンタです。サンタにつきましては先代から屋号を引き継ぎまして、私で60・・・

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この唯一の赤で、あなたと私を繋いでいてほしい。

16/12/19 コメント:3件 滝沢朱音

「小雪には、赤が似合うね。俺が一番好きな色だ」
 あなたはそう言って微笑み、真新しい首輪を私に見せた。その強烈な革の匂いにむせて鼻を鳴らすと、あなたは満足げに頷き、早速私の首に巻こうとした。
 逃げるなら今――でも、もう駄目だ。私は飼育されてしまう。あなたという唯一の存在に。

「他のみんなも、私と同じように暮らしているの?」
 最上階のスイートルームで、私の頭を撫で・・・

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泥棒サンタ

16/12/19 コメント:0件 むねすけ

 しめしめ、このうちはいつも車があるのに今日は無いっと。これは子供だけ留守番で親はイヴの夜ぐらいしっぽりだな。居たとしても子守のグランパグランマ今はっと、もう二時だ。夢の中で羊と遊んでるころだろう。いやいや今夜ぐらいはトナカイかね。
 男は泥棒。四十過ぎて一度も女性とのロマンチックなクリスマスの夜を過ごしたこともなく、ひねくれてイヴの夜に泥棒業に精を出しちゃうタイプです。
 今夜も三軒・・・

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クリスマスプレゼント

16/12/19 コメント:0件 ゆえ

肌が寒さで奮い立つ季節がきた。
この季節がくる度にもういない君の事を思いだす。
優しく、温かく、俺のそばにいてくれた君の事を。
俺は、まだ君以外に隣にいてほしいと思う人には会えてないよ。


「はい、今年もお疲れ様でした!来年も頑張りましょう!メリークリスマス!」
「「「メリークリスマス!!」」」
なんて締めの言葉で忘年会は締めくくられた。
元・・・

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もうひとりの賢者

16/12/19 コメント:0件 高橋螢参郎

「おばあさん。よかったら私たちと一緒に……」
「悪いけど、遠慮しとくよ。流石にこの歳で長旅は無理さね」
 そう言って首を振り、老婆は昨夜気まぐれに泊めてやった三人の旅人の後姿を雪の降る中見送った。
 どうやら三人とも高名な学者らしかったが、彼女には何の関係もなかった。ただ夫に先立たれて以来、家政婦時代に磨いた料理の腕を久々に振るう事が出来て悪い気はしなかったという、それだけだ。お・・・

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クリスマスプレゼント

16/12/19 コメント:0件 ichi

   電車内。並んで座っている千佳と貴夫。手を繋いでいる。
千佳「クリスマスだねー!」
貴夫「(興味がなさそうに)あーそうですねぇ」
千佳「そうですねって、クリスマスだよ? 街はきっと煌めいているよ! どこか行こうよ」
貴夫「え、何でですか?」
千佳「何でって…クリスマスは恋人と過ごすのが普通じゃない?」
貴夫「あーそういう考えは1ミリもなかったです」
千・・・

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12歳のコラージュ

16/12/19 コメント:2件 そらの珊瑚

枝毛さがしは
手軽な気分転換だった
期末テストは目前

枝毛をみつけては
はさみで英語のプリントの上に
切り落とす

一本の毛髪が
まるで
仲違いでもするように
なぜ別々の道をいくのか
理由なんて知らなかった

ふたつに別れた枝毛は
人という字に見える

英単語をひとつ覚える
Christm・・・

2

非モテ系男子4人が聖夜に誓ったこと!?

16/12/19 コメント:2件 泡沫恋歌

クリスマスなんか大嫌い! 毎年、この季節になると憂鬱な気分だ。
貧困アニメーターの俺に彼女なんかできるわけない。聖夜はひとりでゲームでもしようとプレステを起動させたら、スマホに鳴った。
「サトシ家にいる?」
大学のアニメ研究会のメンバーだったツトムからだ。
「なんだよ、クリスマスなのにおまえボッチか?」
しばらく気まずい沈黙が流れた。
「……そうか、俺もひとりな・・・

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優しいサンタさん

16/12/19 コメント:0件 Fujiki

 人形の子どもに延々とプレゼントを手渡し続ける電気仕掛けのサンタクロース。その隣は、雪の降らない島に青白い照明と人工雪で作り上げた銀世界の庭。そのまた隣は、屋上から色とりどりの電球を垂らした光の洪水……。リュウの運転する車に乗った益美の前を趣向を凝らしたイルミネーションが次々と流れていく。丘の裾野に並ぶ外人住宅はクリスマスの時期になると地元の若者の人気ドライブコースになる。軍属が多く住むこの地域で・・・

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空の下のクリスマス

16/12/19 コメント:0件 タック

少女が、雪を転がしています。
ひとりで、道のはしっこで、少しだけ積もった雪を丸め、徐々に大きくしています。
少女のかぶる毛糸の帽子からは長い金髪がこぼれ、赤くなった頬に何本かくっついています。
息も白く、鼻水も出て、とても寒そうにしています。
それでも、少女はしゃがんで雪を集め、ひとりで丸く、転がしているのです。

クリスマスは少女の住む小さな町にもおとずれ、町・・・

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キヨシこの夜に、赤鼻の戸中井さんとお届けに伺います

16/12/19 コメント:0件 かるり

 キヨシはクリスマスが嫌いだった。その理由は2つある。
「この日に人が死ぬと決まってこう言うんだ」
 空っぽの缶を蹴り飛ばして、赤い服を着たキヨシが呟く。それはブラックコーヒーの苦みが混じった声だった。
「サンタさんが連れていってしまったのよ、と」
 空き缶は公園の花壇へ転がって夜に溶けた。隣に立っていた相方の戸中井は缶の転がる音が聞こえなくなってからようやく、重たそうに唇・・・

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ノンスタイル・クリスマス

16/12/19 コメント:0件 OSM

〇コンビニエンスストア・店先(深夜)
   橇を引いたトナカイの石田(36)、市道からコンビニエンスストアの敷地に入り、店先で足を止める。
   サンタクロースのコスプレをした成宮裕介(36)、白い息を吐きながら橇から降りる。
成宮のM「相方(アモーレ)のギャグくらい寒いな、今夜は。クリスマスだからか? それとも、マイナス金利が導入された影響かな? ……どうでもいいか」
 ・・・

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クリスマスにはお人形と話そう

16/12/19 コメント:0件 むねすけ

 父さんも母さんもやさしい兄ちゃんも、やさし過ぎて冷たい。とっても残酷。
 私のこと、壊れた私のこと、壊れてないように見るん。
 普通じゃもうない私、普通なように見るん。
「聡美、今日のサスペンス角替さん出てるから面白そうよ」
「はぁい、当たりやねぇ」
 それより母さん、私壊れた眼鏡、セロテープで固定してるけど。
「みーちゃん、ほらこれ、イチゴ大福こーて来た」<・・・

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惨蛇十字聖戦

16/12/18 コメント:0件 星屑野波

 今年も聖戦の日がやってきた。朱い衣装に白いひげを生やした世界の敵、惨蛇十字サンタクロスが現世に姿を現す日だ。鋭い牙に禍々しい角を持った途那怪トナカイを連れてやってくる。
 いつからだろうか、クリスマスは恋人たちや家族のためではなくなっていた。隙あらば子供たちに、臭いお菓子を勝手にプレゼントする不届き物が出現するようになってしまった。キリスト様の誕生日は悪魔に侵されてしまったのだ。
「・・・

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  ユキの降る夜に

16/12/18 コメント:0件 長玉


しゃらん。

しゃらん。

あたしの名前はユキ。
雪のクリスマスに産まれたから、ユキ。
そう教えてくれた母親は、こどものころ首を吊って死んだ。

「ねえ、もっとはやく走ってよ」とソリをひく犬をせかす。
今日のあたしはユキじゃない。赤い服を着たサンタクロース。
プレゼントの配達表をながめながら、クリスマスなんて消えればいいのに、とい・・・

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present for you

16/12/18 コメント:0件 RN

 3年前の冬だった。僕が君と付き合い始めたのは。君と過ごす初めてのクリスマスには、ペアの腕時計をプレゼントした。次の年にはネックレスを。去年は君の左手薬指に指輪をはめた。横浜のみなとみらい。観覧車の中で。我ながらベタベタのプロポーズで今思い出すと笑ってしまう。でもあの時は緊張で胸が張り裂けそうだった。指輪をポケットから取り出して、「結婚して」って出した時、多分僕の手は震えてて、すごくかっこ悪かった・・・

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ガラガラガラとザクザクザク

16/12/18 コメント:0件 ケイジロウ

「ああ、そういえば今日クリスマスイブだったっけな」
 山本雪雄の声が、一人きりの小屋の中でむなしくこだました。足の裏と腰に張り付けたホッカイロがようやくあったまってきたからか、それとも先ほど舐めたワォッカが効いてきたのか、体がホカホカしてきて、饒舌になって来た。
 しかし、誰も雪雄に返答する者はいない。そもそも今日がクリスマスイブだということを雪雄は知っていた。だからこそ街を離れ、山の・・・

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遠い世界のクリスマス

16/12/18 コメント:0件 アシタバ

 研究施設『サンタの家』からの逃走劇は、どうやらここまでのようだった。
「逃げきれると思っていたのか!」
 どこまでも続く広大な雪原に『兄弟』の怒声が響く。
 逃げるのに使った(ジェット式空飛ぶ雪ソリ)は、私の後を追ってきた『兄弟』に撃ち落とされ、無残にも数十メートル先で黒い煙をあげていた。墜落寸前で放り出されたのは良かったが、足の骨が折れて、今は逃げるどころか立ち上がることも出・・・

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サンタさんへの手紙

16/12/17 コメント:2件 光石七

 タク君は今日も学校でサンタさんに手紙を書きました。サンタさんへの手紙はタク君の秘密の日課です。いよいよクリスマスが近づいています。
 手紙をポストに入れて帰る途中、橋の上で釣り糸を垂らすおじさんがいました。
(近頃ここ通るたびにいるけど……)
 タク君はおじさんに声をかけてみました。
「あの、いつも何を釣ってるんですか?」
「クリスマスツリーです。うちは貧乏で買えな・・・

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【エッセイ】 ふたりのクリスマス

16/12/17 コメント:6件 野々小花

 幼稚園に通っていたころ、近所に神戸から引っ越してきた家族があった。両親と姉、兄、妹の三人きょうだいであった。末の女の子は私と同い年で、幼稚園も私と同じ所に通うのだという。
「家が近いんだし、お話してみたら」
 母にそう言われて、翌日、私は幼稚園で女の子に声をかけた。
「家、近いんだけど」
 口下手で、私はそれ以上なにも言えなかった。けれど、不安だったのだろう。私が発した愛・・・

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涙のクリスマス。

16/12/17 コメント:0件 さき

あれは小学三、四年生の頃であろう。
この時期になると毎年思い出す。
私は、サンタさんに「○△×をください。」と紙に書いてベッドに張り付けた。私はサンタさんが来る日をまだかまだかと楽しみに待っていた。
そして遂に純粋な子供たちが365日の中で誕生日の次に楽しみであろうサンタさんがプレゼントをくれる来る日がやって来たのである。
私はいつも通り良い子でこの日が来るのをまっていた。・・・

2

だからその手を、

16/12/17 コメント:2件 若早称平

 娘の遥が作る肉じゃがの味が死んだ妻のものと似てきた。教わったわけではないのにそういう所も遺伝するのかな、そう思いながら人参を口に運んだ。
「ねえお父さん」
 テーブルを挟んで同じく人参を突つく遥は私の方を見ずに言った。
「クリスマスなんだけど、友達と遊ぶからご飯いらないから」
 遥の視線は手元の携帯に向けられている。
「は?」私は箸を置いた。
「クリスマスはイ・・・

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ぼくのクリスマスプレゼントがうんこだったわけ

16/12/17 コメント:0件 るうね

 うんこが漏れそうだった。
 トナカイの曳くソリの上で、サンタは必死にうんこを我慢していた。
「ぬうう、あと少しでプレゼントを配り終えるというのに」
 とは言っても、すでに限界を突破している。
 もはや、肛門から
・∀・ノこんにちは
 状態だ。
 だが、もし服やソリにうんこをつければ上司にこっぴどく叱られることは目に見えている。さらに、同僚からはうんこマン・・・

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独りの女の子

16/12/17 コメント:0件 かの

空はすっかり真っ暗だけど、今日の地上がいつもよりもっときらびやかなのだ。
この国ではすっかり恋人の日となってしまったイエス様の誕生日。私は眩しいお化粧をしたいつもと違った通りを軽やかな足取りでずんずん歩いて行く。
手を繋いでゆっくり歩くカップルを、スキップするように独り軽快に追い抜いてゆく。
カップル達は私に何の興味も示さない。目の前の異性で手一杯なのだ。
行動プランは何・・・

1

クリスマス禁止法

16/12/16 コメント:2件 直見

「おじいちゃん、くりすますって知ってる?」
 幼稚園から帰ってきた孫娘が、玄関で靴を脱ぎながら無邪気にそう訊いてきた。壁に貼ってあるカレンダーで確認すると、今日は12月24日だった。
「ああ知ってるとも。おじいちゃんが子供の頃には、まだあったからね」
「すごおい! じゃあサンタも知ってる?」
「ああ……まあ、知ってるかな」
「赤いお洋服を着て、夜中にこっそりおうちにや・・・

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あたしのサンタ

16/12/16 コメント:4件 待井小雨

 ミニスカワンピのサンタの衣裳に、ずっと憧れていたわ。クリスマスにケーキの売り子さんたちが着てるやつ。真っ赤なワンピースの裾がふわって広がるのがとっても可愛くて、あたしはずっと「いいなぁ」「あれが着たいなぁ」って思っていたの。
 だけどあたしは男の子だったから、スカートが穿きたいなんて言えなかった。それに、うちはクリスマスにパーティーをして浮かれられるような家庭じゃなかったから、ミニスカワン・・・

1

ヨハンの贈り物

16/12/16 コメント:0件 密家 圭

もうすぐクリスマスなので、ヨハンはツリーの準備を始めました。もみの木は庭に植えてあったので、それを柊やりんごの実で飾りつけました。夢中になっていたので、お母さんが帰ってくる頃には、飾りつけがすっかり出来上がっていました。
「まあ。一人でこんなに飾りつけをしたのね。きっとサンタさんから素敵なプレゼントが貰えるわ。」
お母さんは微笑み、ヨハンの小さなおでこにキスしながら言いました。・・・

0

6月24日に生まれて

16/12/16 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ

 俺の誕生日は6月24日。ムニョっとした日。ついこの間、俺は成人した。

 凡人が居るからこそ、非凡も存在する。
 陰と陽。
 正と邪。
 パッとサイデリア。
 世の中には対比構造が存在する。
 クリスマスシーズンと、非クリスマスシーズンも。

 クリスマスが増殖しだしたのは20年前。俺が物心つく前だ。
 最初は数日程度しかなかったクリス・・・

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マッチョなサンタと拳で語らう聖夜

16/12/16 コメント:0件 るうね

 上半身裸のサンタと、俺は対峙していた。
 人里離れた山中である。人目につく場所は避けたいとサンタが言ったので、ここまで足を伸ばした。
 サンタの構えに隙はない。両腕を上げて、前傾姿勢で静かにこちらを観察している。
 俺はサンタに対し半身を向けて、腰を落とした。
「こうしていると、よく分かるぜ。あんたが十年前に言った言葉の意味が」
「ほう。わしは何と言ったかね」

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パティシエとクリスマスケーキとプロポーズ

16/12/16 コメント:0件 かわ珠

 雪が重力に引かれて落ちる途中、風に吹かれて一度舞い上がって、また重力に従って落ちていく。まるで、桜の花びらのように。
 ああ、でも凍えるように寒いから、やっぱり今は冬なんだ。
 と、白い息を吐き出して思い出す。駅前のベンチに腰掛ける僕の身体は芯まで冷え切っている。
「クリスマスケーキ販売してまーす」
 駅の向かいのケーキ屋の前で、サンタクロースの帽子をかぶって、ベンチコー・・・

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8年目の聖夜

16/12/15 コメント:0件 白取よしひと

 海岸線は弧を描き、日本海を抉(えぐ)りながら西にのびて岬を築く。突端は一際高い丘となり、そこには白亜の灯台が立っている。しかし容赦なく横に薙いで来る雪で霞み、その姿を認められない。

 海鳥が雪に揉まれながら頭上で群れている。私はその悲鳴から逃れる様にアクセルを踏んだ。ワイパーに絡む湿った雪は、ヒーターの甲斐もなくフロントの両端に盛り上がり前方の視野を悪くする。私は亀のように首を伸ば・・・

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モノクロに射す灯

16/12/15 コメント:0件 ドーンヒル

 地上よりも、六百メートルほど天に近いビルでの作業を終えたのは、六時を少し過ぎた頃で、作り出された光が、星々の輝く大空を、黄色く染めていた。展望デッキには、クリスマスイブということもあって、多くの人が、スマートフォンを片手に談笑をしながら、思いを寄せていた。
 地上に降り立つと、大勢の人が、展望デッキへ向かうエレベーターを待っていた。一足早く、それも、一般人が入ることのない特等席で、一人、北・・・

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ブラックサンタにご用心!

16/12/14 コメント:0件 ナマケモノ

 クリスマス。
 それは、救世主イエス・キリストがこの世に生まれた日。日本では、恋人たちが逢瀬を楽しむ日でもある。
 そんなカップルたちが賑わう街の一角で、爆発が起こった。



 爆炎が、夜空を照らしている。ビルを燃やすその炎を女性が宙に浮きながら見つめていた。
 彼女は、ミニスカートが際どい黒いサンタコスプレに身を包んでいる。長い足を組みながら、彼女は・・・

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大人課のサンタさん

16/12/14 コメント:0件 ナマケモノ

 どうして私のパパはサンタなんだろう。
 そんなことを思いながら、私は眼の前にあるショートケーキを見つめる。
 パパが買ってきてくれた、クリスマスケーキ。食べるのは私1人だから、丸いホールケーキではない。
 クリスマスイブの始まる前日に、パパはいつも私にたくさんのプレゼントを贈ってくれる。
 でも、クリスマスにパパはいない。仕事を終えて帰ってきたパパは、疲れ切って泥のように・・・

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俺の彼女は神を崇拝しすぎている

16/12/14 コメント:2件 ゆきどけのはる

 もう後何日かで年が暮れ、もう後何日かで今年が終わるこの寒い時期。俺の彼女は嬉しそうに寒空を見上げて、マフラーも手袋もコートも着ずに外を走り回るのだ。付き合った始めの年には驚いたものだが、もうかれこれ5年もいる。5回、この日を一緒にしてきた。驚きは薄れていったが、奇妙さを毎年感じずにはいられない。

「どうしてそんなに嬉しいんだい?」

 僕がそう尋ねるとまるで鳩が豆鉄砲を・・・

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厄日

16/12/14 コメント:0件 桜月 玖藍

クリスマスが何だ、と思う。
私は日本生まれ、両親も生粋の日本人、私も生粋の日本人だ。
日本人特有なのか知らないけれど、日本人は宗教観というものがてんでない。
それでも一応、多くが仏教徒なはずの日本人は、
何故か全く関係のないクリスマスに騒ぐ。

別に悪いことだとは思わないけれど、私はクリスマスが嫌いだった。
無駄にうるさい近隣の子供たち。
クリスマス・・・

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誕生日はクリスマス

16/12/14 コメント:0件 安城和城

「兄貴、宮河さんの誕生日ってどっちだっけ」
「どっちって?」
「二十四日か、二十五日か」
 子供たちが家で親からのプレゼントを開封し存分に遊んでいるに違いないクリスマス。その当日にもかかわらず見納め感漂う電飾に彩られたショッピングモール。そしてそのショッピングモール内の書店の一角。そこで、俺は双子の弟と、とある本の背表紙を見つめていた。

 事の発端は十二月の初旬。弟・・・

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あの子にサンタクロースは来てくれるかしら?

16/12/13 コメント:0件 ちほ

暖炉が赤々と燃える居間で、父は家族一人一人にクリスマスプレゼントを手渡していく。
「さて、末娘のサラのプレゼントは? エイダ叔母様から届いていたはずだが?」
 わたしは、そっぽを向いたまま答えた。
「わたし、早く見たくてイブの真夜中にプレゼントを持ち出したの。お母様に叱られ、怒りに駆られてプレゼントの靴の片方を川に捨てました」
 父は、わたしの頬を平手打ちした。
・・・

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やって来ない林

16/12/12 コメント:0件 ichi

「ク〜リスマスが今年も――」
「やって来ない」
「ク〜リスマスが――」
「やって来ない」
「歌わせてよぉ。ク〜リスマ――」
「だから、やって来ません。しつこい林」
「何でですかぁ? 二十八年間生きてきて、多分、いや絶対今年のクリスマスが一番幸せな日になるという確信があるのに、どうしてですかぁ? 先週、初めて恋人ができました。デートする約束もしています。それなのに・・・

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年に一度の優しい音色

16/12/12 コメント:0件 RN

 ここはどこだろう。気が付くと見知らぬ場所で僕は仰向けに寝ていた。むくっと起き上がり、辺りを見渡しても真っ暗闇で何も見えない。底知れぬ恐怖が襲い、体が震える。「おーい」と叫んでも誰も答えてくれない。怖い。僕は当てもなく我武者羅に走り出した。
 しばらく走っていると、天井から降り注ぐスポットライトの様な一筋の光が遠くに見えた。僕はその光に安心し、とにかくそこを目指した。光の近くまで行くとそこに・・・

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クリスマス・オブ・ザ・デッド

16/12/12 コメント:0件 かわ珠

「はぁ、はぁ、はぁっ……っくそ! 冗談じゃねえぞ!」
 クリスマスを2週間後に控え、イルミネーションに彩られた町中。その輝く町中に人は見当たらない。そのかわり、ゆっくりのそのそと歩くサンタクロースの群れ。恐らく、この小さな町に残された人は俺と、俺の隣で上がった息を整えている幼なじみのケンとアリスだけだ。俺たち以外の人間はみんなサンタクロースにされてしまった。
「……このまま私たち、サン・・・

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クリスマスに靴下を飾るわけ

16/12/12 コメント:0件 かめかめ

「ほっ?」

 新年のごちそうを食べていたサンタさんが、ぱたっとフォークを置きました。

「ほー、こりゃしまった。トナカイたちにクリスマスプレゼントをやるのを忘れていた」

 サンタさんは白いふわふわのおひげをひねりながら考えます。

「しかし、新年を過ぎてからクリスマスプレゼントをやるわけにはいかん。こりゃまいったな」

 窓から外を見・・・

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ひとりだけのクリスマス

16/12/11 コメント:0件 星屑野波

 クリスマスがやってきた。町は煌びやかなイルミネーションに彩られ、深緑と紅の飾りが玄関先を誇らしげにする。空はもう真黒で、オリオン座が綺麗に見える。北から吹いてくる風は肌を断つように冷たいが、アスファルトの上を歩く家族は温かそうだ。見えない温度が世界を温める日、十二月二十五日。
 クリスマス仕様の容器になったスターバックスコーヒーから湯気が上がり、青渕の眼鏡を曇らす。一人席からのぞくガラス越・・・

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聖なる夜の嘘つきさん

16/12/11 コメント:0件 つつい つつ

 わたしは自慢じゃないけど嘘なんてつかない。学校の先生にだって「穂奈美ちゃんは正直でよろしい」なんて言われるし、いつだって自分の思ったことをまっすぐ言う。だけど、今悩んでる。もうすぐクリスマスだっていうのに考えすぎて頭が痛い。わたしは正直なままでいいのかな。
 昨日の朝御飯の時もそうだった。わたしはママについ思ったことを言っちゃった。
「ねぇねぇ、今年もうちにはサンタさん来ないの?」<・・・

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夢のカフェテラス

16/12/11 コメント:0件 石衣あん子

クリスマスがゆっくりと落ちてきた。
薄明の底からおぼろげな青が顔を覗かせ、師走らしい寒さが体の芯を通り過ぎる。ひらひらと舞うように落ちてきたクリスマスに身を乗り出して掴まえた。今年もやって来たこの日に言い訳を探しながら..
活気付いた楽しい笑い声が響くクリスマスとはほど遠く、毎年静かにこの時が過ぎるのを待つ。
ただ今年は違う。差出人不明の味気ない茶封筒を手にした俺・・・

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祝う気ゼロ

16/12/11 コメント:4件 霜月秋旻

 雪は降り積もり、道路を白く覆う。冬は、いろんなものが覆われる時期だ。
 今日は十二月二十四日。世間の認識ではクリスマスイブ。しかしそれだけではない。今日は俺の、十四歳の誕生日だ。
 今夜は家族全員、家でパーティーをする予定だ。買い出しにいった母が、家に帰ってきた。買い物ついでに、近所のケーキ屋に予約していたケーキを取りにいってきたのだろう。俺の誕生日ケーキが入っているらしい、正方形の・・・

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聖夜の100ストーリーズ

16/12/11 コメント:0件 PineLeaf723

 息するように嘘をつく。それが私の生業だ。
 八歳の息子が『サンタはママなら、プレゼントいらない』と拙い嘘をつくので、プロの嘘を披露した。
「本物のサンタにお願いしたいのか。なら相応の手順を踏まないと」
「ママ、知ってるの?」
 コタツで背を丸める息子のユウが、すがるように見上げてきた。

 必要なのは百本の蝋燭。ちょうど毎年のケーキのおまけが大量に余っている。・・・

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クリスマスと腐れ縁

16/12/11 コメント:0件 深瀬 葵

 本日はクリスマスです。皆さんはいかがお過ごしですか? 私はいま夕飯を食べています。もちろんクリスマスの定番メニューであるクリスマスケーキとチキン……ではなくて近くのコンビニで購入したサンドイッチ。
 そして今は塾の冬季講習の空き時間。そう、クリスマスのおめでたい日でも塾は営業中。なので私は塾のフロント近くのベンチで周りにいる先生と小中高生の生徒の目線も気にせず、もしゃもしゃとサンドイッチを・・・

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休み希望は通らない

16/12/10 コメント:0件 入江弥彦

 シフトの提出を求めているくせに、休み希望が通らないなんてあんまりではないか。
「休み、だめなんですか?」
 意味がないとわかってはいたが、バイトリーダーに文句を垂れた。彼は作業していた手を止めて眉をひそめる。
「お前、クリスマスイブに休めると思ってたのか?」
 このバイトを始めて三年。年末は短期バイトを雇うくらい忙しいというのは理解していたが、どうしても休まなければいけな・・・

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サンタクロースからのハンドメイドマグカップ

16/12/10 コメント:2件 葵 ひとみ

 小生、猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチには妹のキョウコさんがいて、

今は京都でミシュランの料亭で修行をしていた亭主の経営する、

岡山県津山市にある京風料亭和氣屋にお嫁にいっている。

看板料理はまる鍋である、京都で食すると2人で2万円以上もするのだが、津山市では5000円程で食べられるのだ、今は衛生上、スッポンの生き血は飲めないのだが……

・・・

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Merry Christmas to you.

16/12/10 コメント:4件 葵 ひとみ

 大阪の阿倍野に住んでいるフリーのカメラマンをしているキリトにはずっと片想いを寄せている女性ナオミがいる。

彼女は神戸市に在住していてRainbowsをプラット・フォームにしてLinaxなどで、
フリーのシステム・エンジニアをしながら女手一つで有名付属中等部2年生の愛娘アキさんを育てているのだ……

キリトが親友と岡山にある石泉寺に参詣した際に訪れた時の美味しいお蕎・・・

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花とビーグル

16/12/09 コメント:0件 結簾トラン

 クリスマスの朝、学校へ行く支度をしていると母親が、そういえばね、と何気ない調子で話し出した。
「寺町通の角のわんちゃん、今朝亡くなったみたいよ」
 そうなんだ、そんな年だったっけと僕は続けた。確か高校へ行く道すがらに何度かその家で犬を見かけていた。大きな犬ではなかった。詳しくないけれど、多分ビーグルってやつ。吠えもしない、大人しい犬だった。
「ううん、お隣の奥さんに聞いたんだけ・・・

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愛情泥棒

16/12/09 コメント:0件 飛鳥永久

小さい頃、良い子にしているとクリスマスの日にサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるって話を聞いて、お手伝いを積極的にした。
これなら来てくれるはずだって当日、期待を膨らませながら寝たけど朝起きたらプレゼントはなかった。

私は良い子じゃなかったから来なかったの? と、お母さんに泣きながら訴えると

「そんな事は無いよ。良い子だけどお母さんが家にはサンタさん来なくてい・・・

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今夜も夢を撒く

16/12/09 コメント:0件 伊崎

「師匠! 今年は僕も連れて行ってくれるんでしょう!?」
 いつもは宿で留守番ばかり。だが、今日は違う。
 荷造りをしている大きな背に向かって、僕は問いかけた。声には、期待が混じっている。そんな僕に振り向いて、皺くちゃの顔が柔らかく微笑んだ。
「そうだぞ。しっかり学ぶんだ、いいね?」
「はいっ!」
 僕の師匠は、毎年クリスマスになると、僕を連れて旅に出る。長い旅だ。ゴー・・・

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クリスマスイブの夜 少しにぎわうコンビニがある

16/12/09 コメント:4件 そらの珊瑚

 今夜、クリスマスイブにコンビニのバイトのシフトを入れたのは、特に用事がなかったからだ。二十代なら、それが寂しいと思っただろう。しかし三十も半ばを過ぎれば、それは例年通りの普通のクリスマスイブなので、不幸感は既に麻痺してる。年はとってみるものだ。
 そもそもクリスマスだからといって全ての人が幸せだとは限らない。レストランでデートしてるカップルが幸せそうに見えても、本当に幸せかどうかは分から・・・

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サンタクロース包囲網

16/12/09 コメント:0件 本宮晃樹

「ねえパパ」五歳になる娘がつぶらな瞳で問いかけてきた。「サンタさんはどこにいるの?」
 そんなものはいないと断言して科学合理主義の化身にしてしまうには、彼女はまだ幼すぎるだろう。「いいかい、サンタさんはよい子の心のなかにいるんだよ」
「ふうん」明らかに納得していないようす。「でもおかしいよ。それじゃあどうやってあたしはプレゼントをもらえばいいの?」
「ええと、そのう……」
・・・

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そうさ俺たち仲間だもん

16/12/07 コメント:0件 水沢洸

 その報せが届いたのは、クリスマスのことだった。
「田中が、女といただと?」
 そう問えば、耳に当てたスマホから慌てた声が返ってくる。
『そうなんです! これは一大事ですよね!?』
 確かに。もしそれが彼女なら一大事だ。
「詳細は?」
 あいつがモテるわけないし、たいした問題はないだろう。
 そう考え気楽に言ったのだが、
『それが……』
 と、・・・

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戦場でもクリスマスを

16/12/07 コメント:0件 糸井翼

今、俺は生きているのか、死んでいるのか。
蒸し暑い森の中をただひたすら歩いていた。隊からはぐれて一週間。このまま死ぬのかもしれない。いや、日本に帰るまでは死ぬわけにはいかないのだ。日本は今頃寒いんだろうか。この暑い森の中では信じられないことだが。
中国との戦争は混迷を極めていた。日本と中国がつまらない意地を張っているうちにこんなことになってしまった。国同士、政治家同士のいがみ合いで苦し・・・

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就活サンタ

16/12/05 コメント:2件 上村夏樹

「私、この仕事辞める。将来のことを考えると不安だし」
 ミニスカのサンタ服に身を包んだ彼女は、ビールジョッキに口をつけた。
 テーブルにジョッキを置く彼女。鼻の下に白い泡のヒゲができていて、なんだか滑稽に見えた。


 株式会社ニコニコサンタ。それが俺と彼女が務めている会社の名前である。
 彼女は俺と同期入社のサンタだ。年は二十三歳。サンタ専門学校を卒業し、資格・・・

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セヴンスター

16/12/05 コメント:0件 奥村孝之


「先生って、煙草吸うんだ。意外。」

「吸わないよ。」

「ここに置いてあるじゃん。...セヴンスター?」

片付け忘れていたことを思い出し、動悸が早くなる。彼女は何も知らない。分かっているのに動揺を隠せない。

「ああ、それね。匂いが好きなの。先に火だけつけて、灰皿に置いておくのよ。」

「へぇ〜。どんな匂い?」

・・・

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不格好なサンタクロース

16/12/05 コメント:0件 空蝉

深々と冷え込んでいく、聖なる夜。
はしゃぐ子どもと、その小さな手に抱えられたプレゼント。
そして、それを優しい眼差しで見つめる父。
僕の肩を追い越して、雑踏の中に消えていった。
星も見えない空に一瞬だけ目をやって、閉店間際の喫茶店に、常連客の僕は足を踏み入れる。

「おや、いらっしゃいませ。」

肩の少し下まで伸ばした黒髪を、ふわりと揺らし、マスター・・・

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今年も嫁と!

16/12/05 コメント:2件 あずみの白馬

 クリスマスイブの夜、俺は仕事から帰って来て着替えると、早速買ってきたクリスマスグッズを取り出す。
 ケーキにシャンパン、フライドチキン、用意してくれた料理、そしてプレゼントがはいった箱をテーブルの上に並べる。パソコンのディスプレイを向かい側に設置。その画面にサンタコスの俺の嫁を映し出す。ケーキの上にキャンドルを立て、火を灯したらパーティー準備完了!

 これを撮影してSNSに投・・・

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ポインセチア

16/12/04 コメント:0件 みや

今年の九月に女手一つで私を育ててくれた母が胆管癌だと診断されてから、私は母が死ぬ事を頻繁に想像する様になった。幸い手術適応な状態なので、手術をすれば今すぐに死ぬ事は無く後何年かは生きられると医師は言う。けれど極度の怖がりの母は手術を受ける事を躊躇している。不安と恐怖で自分でもどうすればよいか診断から二カ月が経っても答えを出せないでいた。そんな母を見ていると母が死ぬという事が現実として押し寄せ常に私・・・

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クリスマスが誕生日!2

16/12/02 コメント:0件 夢の夢

杏は、徹夜で作ったマフラーを包んだ赤色のプレゼントを萌に渡した。

そして、萌から赤い包装紙のプレゼントをもらった。

「あれ?これ…」

萌が不思議そうに言った。

続けて杏が

「こんな事って有るんだね…!」

「「プレゼント一緒!」」

二人は、思わず爆笑した。

その理由は、杏が徹夜で作ったマフ・・・

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クリスマスが誕生日!

16/11/30 コメント:0件 夢の夢

クリスマスかぁ−…

町に行ったら、恋人一杯いるよね…

まぁ、非リアの私には関係無いけどっ!

そう、クリスマスに苛立ちを覚える少女は、宮間 杏

16歳だ。

 そして、杏が、苛立っていると

「どうしたの?大丈夫!?悩み事なら聞くよ?」

心配そうに杏の顔を覗く少女は、宮間 萌 16歳だ。

 そ・・・

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お父さん、大好き!

16/11/30 コメント:0件 ちほ

 白いセーターに紺色のズボンの小さな男の子が、パブ『ロビン』の飴色の階段の一番上に腰を下ろしていた。父親は『ロビン』の主人で、一階は大人達が酒を楽しむ場所なので子どもは二階の居住スペースから一階に降りてはいけないと厳しく教えていた。だから男の子は、階段の上で小さくなっていた。悲しそうな目で、賑やかな一階を見つめていた。下に行けないから悲しいのではなかった。もっと大きな理由があったのだが、父親には・・・

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【継母の毒】

16/11/30 コメント:0件 64GB

漆黒の闇の中をアロンとヘレウスが郊外へ向けて歩いていた。
迫害が続くローマでキリスト者は、毎年クリスマスの日を変えた。
ミサに集まった所を一網打尽にするのが皇帝のやり方であったからである。
「我々はあなた方と同じように生きていた」
見張りの男が闇から声をかけた。
「あなた方も我々と同じようになるだろう」
アロンが答えた。合言葉である。
「よく来た」
・・・

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文学少女のクリスマス

16/11/28 コメント:0件 ぽんすけ

街中には所々にイルミネーション。その光に吸いよせられた虫のようにカップルが集い、見つめ合っている。ユリはそのつがいの虫を無視して足早に歩く。
ユリはクリスマスツリーが恥ずかしげに点灯する焼鳥屋に入った。予約したアスカの名前を告げて個室に入る。運ばれてきたお通しのほうれん草を口に放り込んでとりあえずチューハイを注文した。
チューハイを運んできた店員は
「お連れ様がいらっ・・・

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【光の樹】

16/11/28 コメント:0件 吉岡幸一

 商業ビルに四方を囲まれた公園の中心に今年もクリスマスツリーが飾られた。「光の樹」と名付けられたそのツリーの周りの木々も煌びやかなイルミネーションで満たされ、公園中がこの時期だけクリスマス気分を味わいたい人びとであふれていた。
 光の樹は高さ八メートルある二等辺三角形のオブジェで、様々な色の光を放つ幾何学的な装飾物が多数つけられていた。
今年も青年は光の樹の前に立っていた。毎年十二月一・・・

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こっち!

16/11/28 コメント:0件 水面 光

暗く冷酷な雨音に混じって明るくあたたかいカエルの鳴き声が聞こえた。子供の頃、いやと言うほど聴いていた、とてもなつかしい声。私の父方の実家はいわゆる兼業農家で、家の周りは田んぼに囲まれていた。この冬の時期になぜカエルの声が──? どこかで初雪が降ったらしいがこの辺りは雨はまだ雨のままだった。今も聞こえる、雨音に混じってゲコゲコと鳴くカエルの声が。クリスマスまであと1ヶ月足らずというこの時期に降る雨は・・・

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女嫌いをわずらってみた――えっせえのようなもの

16/11/27 コメント:4件 クナリ

 小生、中学から高校くらいにかけて、女嫌いを患ったことがある。
 特別ドラマチックなトラウマなどはなく、色々細かいことの積み重ねなのだが、クリスマスで思い出したことがあるので、小生の女嫌いのしょうもない種のひとつをご笑覧いただければ幸いである。

 小生、埼玉のある高校で、一人の女子、Nさんと出会った。それなりに気が合い、クラスも違ったが、頻繁に会うようになる。
 頻繁に会・・・

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山に振動を響かせサンタがやって来た

16/11/27 コメント:0件 ポテトチップス

 岩に積もった雪で足が滑りそうになった。光一は後ろを振り向き、小学校が冬休みに入ったばかりの輝彦に、「気をつけろ!」と言った。
 輝彦は、父親に無理やり連れられて登山させられていることに、朝から機嫌が悪かった。
 来年の1月1日付けで、光一は東京に単身赴任することが決まっている。その前に、1人息子と登山に挑戦してみたいと光一は思っていた。
 光一は腕時計に目を向け、
「早朝・・・

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少年とサンタクロース

16/11/27 コメント:0件 蹴沢缶九郎

夜、寝ていた健太少年は物音で目を覚ました。音のする方に目をやると、そこに赤い服の立派な白ひげを蓄えた、優しそうな老人が立っている。健太少年は、その老人がサンタクロースである事を一目で確信した。

「おじいさんはサンタさんでしょ?」

「おやおや、見られてしまったね。その通り、私はサンタクロースだよ。メリークリスマス」

「やったー!! サンタさんだ!!」
・・・

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彼女

16/11/25 コメント:0件 猫野まち

 街は煌びやかなイルミネーションと響き渡るクリスマスソングで賑わっていた。
 街を行く幸せそうな恋人たちを横目に僕は走る。
 白い吐息はやがて空気に混じり、溶けた。
 ―おまえはひとりなのか。
 ―かわいそうに。
 ―うらやましいだろう。
 目は口ほどに物を言う、というのはこのことか。冷たい視線が凍える体に突き刺さる。
 違う。僕にだって待っているひとがい・・・

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あなたの出番

16/11/25 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

「あなた、ぼちぼち出番の時がやってきましたわよ」
妻が、ぬいものの手をとめて、老眼鏡ごしにベッドに横たわる夫に声をかけた。
このところ、横になっている時間の多い夫だった。真っ白な頭に顎鬚は昔とかわらないが、精細を欠いた顔は重たげに弛み、運動不足が祟ってメタボの体は、毎年の健康診断ではみなひっかかるほどだった。
「今年はもう、やめようと思っている」
彼は毎年、同じことをいった・・・

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聖書の内容を思い出そうと頑張ってはみた

16/11/24 コメント:0件 血文字の雁木麻里子

こんな寒い日にお客さんとは珍しい。とりあえず中に入って暖を取るといい。何か温かい飲み物を用意しよう。それから美味しいワインとチーズを。なんと言っても今日はクリスマスだ。

クリスマス……知らない?
まあそういうこともあるだろう。
もっとも、僕も詳しくはないんだけどね。元々は外国の行事で、日本語では確か、降誕祭、と訳していた。キリストの降誕をお祝いする祭日、を意味するのじゃあ・・・

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寂しい

16/11/25 コメント:0件 チャイナ

「お前は失敗作だ。俺と母さんは子育てに失敗した。」

 聖夜に放たれたこの一言からオレとオレにまとわりつく寂しさの永遠に続く戦いが始まる。そいつに気づいたのはこの時が初めてで、オレは死んでもそいつと仲良くしたいとは思えなかった。

 畳の上でオレと親父は立って向かい合っている。身長はほぼ同じ。力はオレの方が強い。世界が一番めでたい日にこんなクソみてぇな事を息子に向かって言う・・・

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若きサンタクロース

16/11/24 コメント:0件 深海映

「わぁ、サンタさんだ!」

 それはクリスマスイブの夜だった。ユイは目の前にいる、赤い服を着て白いひげの白人男性に目を輝かせた。
 ニコニコしながらクリスマスプレゼントをユイに渡すサンタクロース。

「わあ、ありがとう!」

 お礼を言ったユイだったが、ふと、サンタに疑いの目を向けた。

「ねえ、あなた、本物のサンタクロースなの?」

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君のサンタでいたいから

16/11/24 コメント:1件 秋 ひのこ

「今年はね、レゴにしたの。人気あるんだって、小学生に」
 真弓が嬉しそうに大きな包みを見せてきた。青い包装紙に黄色いリボン。去年は戦隊ものの人形だった。一昨年は、確かトラックのおもちゃ。
 買い物は真弓に任せ、英一は夜中にそれを枕元に置きに行く。何度やっても、この瞬間こそ父親の醍醐味だとしみじみ思う。
「ケイちゃん、気に入ってくれるかな」
 真弓は目を細めて包みをそっと紙袋・・・

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相互的終点

16/11/24 コメント:0件 ▷てと

「私さ、楽しいと悲しくなるんだ。」 目の前の彼女はそういった。「だから今すっごい悲しい。」 雪華が舞うクリスマスの夜に傍から見たら彼女、彼氏という位置関係に留まっている自分たちがこんなに形容しづらい雰囲気を醸し出しているのはおかしな話だろう。「喜ぶべきですか?」 「もちろん。」満足そうに微笑む彼女が霞む。「私たちが今過ごしてるこの時間は二度と再現できないって考えたことない?なんていうかな、その同じ・・・

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叶わぬ恋をあなたの胸で

16/11/23 コメント:0件 浅月庵

 ◇
 彼は白い雪の降るなか、白い息を吐き、白い歯を見せ、手を振った。
 私もそれにつられて手を振り、名残惜しさを振り払うようにして背を向ける。
 私の小さくなる姿に彼はまだ、視線を送っているのだろうか。

 ◇
 私は別に、彼のことなんて好きじゃなかった。
 たまたま同じクラスで、話と気が合い、でもそれは恋心とは無関係な気持ちだ。生きている間には私に届か・・・

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聖夜の奇跡は白が似合う

16/11/23 コメント:0件 かわ珠

 今日の天気は曇りのち雨。夕方ごろから雨脚は徐々に強くなってくるでしょう。と、気象予報士は告げた。
 12月24日。
 クリスマスイブ。けれども、私の住むこの地域はあまり雪の降る地域ではない。冬のシーズンに雪は三回降るかどうか。それも、大体は一月や二月の特に冷え込んだ日にしか降らない。私の記憶にある限り、この街のクリスマスに雪が降ったことはない。
 昼も過ぎて、空を見上げると、確・・・

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ネズミーランド

16/11/22 コメント:0件 チャイナ

『そんなに本が好きなら、本と結婚すればいいよ。』
彼女の声が頭に響く。ついさっき聞いた言葉なのにもう懐かしさを感じる。

 僕は夜を支配する鼠を見ている。二本の足で立ち、輝く衣装を纏い、人間と同じ言葉で歌う鼠を。その姿と声で多くの人々を惹きつけてやまない鼠を。空に伸びる塔の上に立ち、流れる音楽に合わせて踊っている。塔は大きな池の中心に聳え立っている。十二月の空気は暗く、冷たい。だ・・・

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サイレントナイト

16/11/22 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

いさおは窓の外のベランダのわずかなスペースに、妻と二人で小さなツリーをたてた。
妻が手製のモールや雪代わりの綿、ボール紙で作った星を無心で飾りつけているのをみた彼は、楽しかった子供のころを思いだして、ほほえましい気持ちになった。
「よく材料がみつかったね」
いまはもうどこも店はあけていないはずだった。彼も昨日街にでたが、スーパーもコンビニもシャッターがおりていたし、なかには無残に・・・

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聖夜の酒宴

16/11/21 コメント:0件 比些志

ここに来てもう二年になる。その夜、オレはダムの建設現場の仲間たちと宿舎の居間にいた。缶ビールとさきいかを手に、荒くれ男だけが集うわびしいクリスマスイブ。

となりに座っている初老の小男が頼みもしないのに新しい缶をあけ、笑顔をすりよせながらオレのグラスにビールをそそいだ。半年ほどまえにこの現場に来た男だが、笑うと恵比寿様のように目が垂れて愛嬌がある。どうやらオレに好意を持っているらし・・・

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サンドウィッチマンのクリスマス

16/11/21 コメント:0件 ポテトチップス

 丸い綺麗な月が出ていた。風はさほど強くは無いが、寒風が衣服を重ね着していても体に堪えた。
 青島は駅前の広場で、サンドウィッチマンの格好でただ立っていた。何度か激しく咳き込む。このところ咳を頻繁にするようなった。
 駅前を歩く若いカップルらは、幸せそうに手を固く繋いで歩く。まるで12月24日のクリスマスイブは、自分達のための記念日であるかのごとく、みな幸せそうに微笑みながら青島の前を・・・

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僕がサンタになった日

16/11/21 コメント:0件 くらげ

「いつかあなたも、誰かのサンタクロースになるのよ」
 そう母が言ったのは、クリスマスの夜にトイレに行きたくなって目が覚めてプレゼントを置きに来た父と鉢合わせしてしまった次の日のことだった。
「どういう意味……?」
 サンタクロースがいなかったことと、父と母が自分を騙していたんだということに酷くショックを受けた僕は、翌朝渡されたプレゼントの包み紙を開けることなく泣きじゃくっていた。・・・

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クリスマスのよるに

16/11/21 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 はるくんは、三さい。
 クリスマスをたのしみにしています。
 カレンダーをみて、おかあさんにききます。
「いつ、サンタさん、くるの?」
 おかあさんは、カレンダーのさいごの一枚をみながら、
「きょうがここだから、あと一回ねたらくるよ。」
と、こたえます。
「2と4のところ?」
 はるくんは、なんどもきいています。
 おかあさんは、はるくんにい・・・

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自分勝手な杭

16/11/21 コメント:0件 浅月庵

「先生、あ〜ん」私はナイフで切り分けたローストチキンを先生の口元へ運ぶが、顔を背けられる。「どうしたんですか。食べてください」
「まず、この体勢をどうにかさせてくれ」
「そんなこと言って、逃げるつもりでしょ」
「違う。僕は成瀬と、落ち着いた状態で話がしたいんだ」
「じゃあその後、私と二日間、一緒に過ごしてくれますか?」
 この質問には、嘘でもイエスと言わない。
・・・

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メリー・メリー・クリスマス

16/11/21 コメント:0件 新木しおり

「はい、これ。クリスマスプレゼント」
 夜景の見えるレストランの、窓際の席。俺は正面に座る恋人の里香に、綺麗にラッピングされた長細い箱を手渡した。「ありがとう」と里香は嬉しそうに箱を受け取る。
「ネックレス?」
「そう。ごめんな、ありきたりで」
「ううん。すごく嬉しい。ありがとう、俊ちゃん」
 彼女は箱を丁寧にバッグに仕舞い、次いでバッグの脇にあった紙袋を俺に差し出し・・・

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果てしなく続く黒き大河の白き一滴

16/11/21 コメント:10件 クナリ

 クリスマスの思い出、というものがない。
 私の父は乳製品の配送業に就いていて、年中忙しかったようなのだが、特にクリスマス近くになるとお客の無理な追加注文に忙殺されて、まともに家に帰って来なかった。
 三年前、私が小学五年生の時に両親は離婚した。自分でも意外なことに、私は父について行きたいと泣いた。
 特別父を慕っていたわけではない。今思えば寂しさに加え、ろくに家にいないので謎の・・・

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クリスマスの海

16/11/21 コメント:0件 文月めぐ

 真冬なのにしっとりと汗を吸い込んだ胴着は、ずっしりと重い。世間はクリスマス一色というのに武道場は練習を終えた剣道部部員の疲れた表情で埋め尽くされている。しかし女子更衣室に一歩踏み込めば話は別。女子部員たちの会話には「クリスマス」があちこちにあふれている。
「クリスマスなのに午前は部活だし、午後はバイトでつぶれる」
「ケーキ屋さんでバイトなら稼ぎ時だもんね。しゃあないじゃん」
・・・

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聖餐たる冬の夢

16/11/21 コメント:0件 蒼樹里緒

 厳かなピアノの伴奏や、聖歌隊の歌声が、教会の高い天井に吸い上げられるようにして響きました。自分の声もその中にまじっているのが、なんだかいつも不思議です。歌うたびに、私は本当にここにいてもいいのだろうかと、少しだけ迷ってしまうのでした。
 司祭様の指揮の御手がきゅっとまるくなって、私も口を噤みます。礼拝堂に集まった人たちの拍手の波が、またべつの音楽となって奏でられるようでした。最後まで聴いて・・・

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