1. トップページ
  2. 第122回 時空モノガタリ文学賞 【 美術館 】

第122回 時空モノガタリ文学賞 【 美術館 】

今回のテーマは【美術館】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2017/01/02

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/11/07〜2016/12/05
投稿数 66 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今回はやや難しいテーマだったのかもしれませんね。美術館そのものに関する内容は比較的少なく、絵を介した人間関係を描いたもの、幻視的・エモーショナルな作風がやや多かった印象です。アイデアそのものはさほど悪くなくても、その後の展開が少し弱かったのが少し残念でした。他に気になったのは会話の部分です(これは今回に限ったことでもないのですが)。地の文は良くても、会話で損をしている作品が案外多いように思います。会話が単なる説明になってしまっている、あるいは日常の会話的すぎてあまり意味がない(と内容に照らして感じられる)ものがしばしば見受けられます。会話が苦手な理由としては、もしかしたら映画・ドラマ・漫画などの映像表現の影響もあるのかもしれませんね。映像的表現では、登場人物の表情などのビジュアルの要素により感情などを語っていく部分があるわけですが、一方小説やエッセイなどの文字表現では、それを全て文字や余白で表現するわけで、やはりそれなりの工夫が必要なのでしょう。2000字という制限の中では、会話の一つでも、ないがしろにしないで大切にした方が良いのではないでしょうか。最終選考以上の常連の作者はこのあたり、やはりしっかりしていますね。一次選考でも、ここが一つの基準になることは、よくあります。もう一つ気になったのは、作品のいくつかに、美術に関する記述に事実誤認と思われるところが見られたことです。もし、あまり詳しくない分野について書かれる場合は、それなりに下調べをすることも大事になってくるのではないでしょうか。今回最終選考作品の個別の感想としては、「蟻」は、ルソーの贋作というアイデアが良かったと思います。専門的な教育を受けたことがない素朴派の画家の場合、技巧的な作品よりも贋作を作るハードルは(素人目には)低そうですし、名前をもじった蟻を書き入れる顛末も、彼のキャラクターと合っていて良いと思います。「ゆめの家族の肖像」は、一人称のミスリード的な描き方で導かれるラストにインパクトがあり、家族や人間関係の難しさについて考えさせられました。「掃除婦と子供と秋の美術館」は、子供達・掃除婦・彫刻などが秋の美術館の静かな光景の一部分として溶け込んでいるようで、綺麗な作品だなと思います。「水曜日、12時まで」は、芸術的な才能を客観視する難しさと、死んでまでも絵画から離れられない人間の哀しさを感じました。「死を招く絵」は、集客のために、死を招く曰く付きの絵画さえ利用してしまう美術館と、それに引き寄せられる人々が、W.アーム.スープレックスさんらしい語り口で描かれていて印象的でした。「粉々の屑」は、石膏像の中の空洞を生かしている点と、美術館というテーマへの切り込み方、緻密な構成や論理展開に他の作品にはない独自性があり、さすがだと思いました。

入賞した作品

3

キャベツの値段

16/12/05 コメント:1件 ケイジロウ

 二人のおばさんがイスに腰を掛け、美術館にそぐわない音量で、今年のキャベツの値段について議論していた。おせんべいとお茶が彼女ら間においてありそうだったが、それらはなかった。僕はそのイスをあきらめて他のイスを探し求めた。
 腕時計を見ると、入場してからまだ30分しかたっていなかったが、僕はすでに重い疲労を感じていた。壁に掛かっている絵をなるべく見ないようにして、先ほどのキャベツの話に意識を集中・・・

1

小さな大望

16/12/05 コメント:0件 OSM

 初冬の午後、彼は最寄りのバス停から美術館行きのバスに乗り込んだ。無聊を慰めるのが目的だった。彼は美術品の鑑賞に興味がない。暇を潰す手段なら他にも山ほどあるにもかかわらず、何故美術館へ行くことにしたのか。それは彼自身にも分からなかった。
 バスには数名の乗客が乗っていた。彼らは皆、大望を胸に秘めているらしかった。
 senseを追いかけて何になるのだろう。彼は心中で苦々しく呟く。片端か・・・

8

わたしたちの秘密の約束

16/11/25 コメント:12件 糸白澪子

『怖い』というのが、ここ、美術館に来たアカリの抱く気持ちであった。

そもそも今朝起きたときからアカリは「今日はどこかいつもの日曜日とは違うな」と確信していた。まず、お母さんがそわそわしていた。妙にニヤニヤして、キレイな服を出し、アカリにもお気に入りのワンピースを着せてくれた。(このワンピースは、くるんと回るとスカートがふんわり広がり、『シンデレラ』のドレスとそっくりなのだ)さらに、お・・・

最終選考作品

4

16/12/05 コメント:6件 泡沫恋歌

 アンリ・ルソー(1844-1910)は、素朴派を代表するフランス人画家。夢想的で異国的な密林の情景などを描いたルソーの作品は、当初は稚拙だと嘲笑の的になっていたが、晩年には高く評価されて、現在では素朴派を代表する画家として人気がある。

 有名な絵画コレクターの遺品から未発表のアンリ・ルソーの絵が発見されたというニュースが世界中に報じられた。
 その絵は1908年にルソーが描い・・・

5

掃除婦と子供と秋の美術館

16/11/22 コメント:4件 KOUICHI YOSHIOKA

 美術館の入り口前を高齢の掃除婦が竹箒で掃いている。枯れ葉やチケットの切れ端を丁寧に一所に集めては肩をすくめている。よく晴れた午後とはいえ、秋も終わりに近づいてきて風が冷たい。美術館の周りをきれいにしていくほどに、掃除婦の軍手は汚れていく。小さな背中をより小さくしながら、どこかゆったりと働くその姿は、横に立つマイヨールの彫刻よりも美しかった。
 私を見かけるたびに掃除婦は軽く会釈した。話した・・・

5

水曜日、12時まで

16/11/17 コメント:6件 秋 ひのこ

 水曜日、12時までの入場無料。
 F市立美術館は、水曜日をそのように解放する。
 無名に近い地元作家が所蔵の大半となれば観光客は期待できず、訪れる者は年金受給の老人か、幼子を連れた母親グループ、或いはフリーターか無職あたりに限られるのだった。同じ顔ぶれが、同じ絵を見に、毎週やってくる。
 Hもそのひとりだ。
 46で職なし、夢なし、やることなし。なんと住所までない。だが、・・・

6

死を招く絵

16/11/15 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

その絵をみたものは、近日中に死ぬ。
―――そんな絵が、今回の美術展に展示されるという噂が、開催前から流れていた。ベルギーの画家の手になる十号たらずの作品で、『Rの肖像』の題名で、男の肖像を描いたものだった。ほかの画家たちの作品といっしょに展示され、その絵だけ特別に個室のなかに飾られることになっていた。
なぜそんな不吉な絵といっしょにするのかと言うと、理由は簡単で、ほかの画家たちの絵では・・・

9

粉々の屑

16/11/12 コメント:7件 クナリ

 来週に閉館を控えて展示物の多くを処分し、守衛にも暇を出した美術館のホールは、ひどく寂しく見えた。
「こんな時間に、何なの?」
と幼馴染のミヤが言う。
 夜の一時。女子中学生を連れ回していい時間ではない。男子中学生がふらついていていいわけでもないが。
「今までにも何度も忍びこんでる。お前を連れて来たのが初めてってだけだ」
「お父さんにばれたらどうするのよ」
 こ・・・

投稿済みの記事一覧

0

邂逅

16/12/05 コメント:0件 mio

気まぐれに降り出した雨がセルゲイのよれた上着にビシャビシャと打ちつけた。
ちぇ、ついてないぜ、と彼は小走りに雨をしのげる場所を探した。民家ばかりで、柵にはばまれて庇を借りることはできなかった。
柵があいている家があった。いや、家じゃない。彼は壁に小さな看板を見つけた。そこは古い洋館を改装した美術館だった。セルゲイは美術館に通うような趣味はなかったが、降りそそぐ雨に背中を押され、入・・・

0

未完成美術展

16/12/05 コメント:0件 沓屋南実

 駅からわりと近い場所に、その美術館はあった。「美和、若手芸術家たちの展覧会だそうよ」と言われても。母は、若手というところにアクセントを置いていた。私がヴァオイリニストを目指している、母はまだそう思っていた。 
 秋の初めのヴァイオリンコンクールの予選。いたたまれず、私は会場を飛び出した。ヴァイオリンは私を圧迫するモンスターになっていた。ひとりで私を育ててくれた母に、なかなかそう言えない。だ・・・

0

メープルシロップは雪の上で

16/12/05 コメント:0件 むねすけ

 男と女は雪の上で出会った。
 男は絵描き志望のメープルシロップ屋の三男で、女は何者でもなかった。

 男は家業を手伝うこともせず、両親、兄と兄嫁、そしてメープルシロップの甘さにぶら下がって毎日をイーゼルの上で過ごした。
 日々は落下であり、男は筆だけで落下に抗って、それでも時計の秒針も砂時計の砂もいっかなゆっくりになってくれずに。
 絵を描いている時だけ、男には何も・・・

0

ミロのヴィーナスのモデル

16/12/05 コメント:0件 欽ちゃん

美術館に勤務して30年
私が生きている間にこの日が来るとは想像もしていなかった
ルーヴル美術館からミロのヴィーナスが10日間限定で特別展示されることになったのだ
1964年に国立西洋美術館と京都市美術館に展示されて以来、52年ぶりの来日である
美術館には至極の作品をひと目見ようと開館の1時間前にも関わらず行列ができていた
開館時には6時間待ちになるだろう

0

盲目の画家

16/12/05 コメント:0件 きりこかぶ

足元に落ちたパンフレットを拾い、渡そうとしてハッとした。車椅子に乗った初老の男性は濃いサングラスをかけ、絵の方を向いたまま反応を示さない。
目が不自由なのか、いや、それだったら美術館に来るわけがない。
「有難うございます」
 奥様だろうか、介助の女性が笑顔でパンフレットを受け取り、男性の手に触らせた。男性は手でまさぐりパンフレットを握る、盲目であることは間違えなさそうだ。

0

神なき世界の大聖堂

16/12/05 コメント:0件 Fujiki

 そこに神はいなかった。それでも人は祈りを捧げに集まった。土地や財産が借金の担保になるように、信仰は彼らにとって人生の担保だった。
 死後も続く作者の名声と、人間の技が生み出した永遠の価値。そんな価値を信じて人は入場料を喜捨し、熱い視線を送る。信仰の対象は神の子キリストと聖人たる弟子たちではない。ましてやその背後に控える全能の神でもない。この世界の聖人は人間――偉大な作品を遺した巨匠たちだっ・・・

1

絵画閲覧お断り

16/12/05 コメント:2件 タック

美術館に入ろうとする私の足を止めたのは、一人の男だった。
その男はニコリとかすかに口角を上げると私のTシャツの右肩を抑え、その場に留まらせた。驚き、狼狽したものの、私は姿勢を正し、男に尋ねた。
「……あ、あの、なにか。私が、どうかしましたか」
「…………」
私の言葉にも男は苦く笑いをこぼし、圧力を弱めようとはしなかった。
その無言の制止に私は再度進もうと試みるも男の抵・・・

0

ジブン美術館

16/12/05 コメント:0件 せぷてい

 男は玄関の扉を開けたはずだった。
「ようこそ。ジブン美術館へ」 
 ふりむくと、受け付けと書かれたカウンターごしで、白髪の老人が立ち上がった。見知らぬ顔。自宅ではない内装。気がつくと、男がにぎっていたドアノブは消えてしまっていた。男はおそるおそる聞く。
「どなたですか」
「このたび、案内役を務めさせていただきます。分からないことなどございましたら、どうぞお気軽にお声掛けて・・・

2

描こう!人生美術館

16/12/05 コメント:4件 霜月秋介

 俺は今、自分が何を描きたいのか、それがわからない。
 二十歳で漫画家デビューし、今年で三年目。いままで二作、雑誌で連載をしたが、いずれも十週で打ち切りになった。人気が出なかったのは勿論のこと、自分でも描いてる途中で、創作意欲が無くなってしまった。自分がいままで描いてきた漫画を読み返してみると、たしかにつまらない。絵も話も平凡だ。これでよく、連載までこぎつけたものだと自分でも不思議に思う。行・・・

0

一粒のオリーブ

16/12/05 コメント:0件 石衣あん子

ただのサワダだった。どんな角度と距離からそれを確かめればいいか私なりに悩んだ。2つあるつむじからできたハート形の後頭部を。

一粒のマスカットを頭上に約10分が経とうとしている。いい加減声をかけようかと思うが後頭部が私を黙らせる。職場の後輩が馴れ馴れしく先輩である私を美術館に誘うなんて何を考えているのか。ただのマスカットじゃないか。鮮やかなグリーン色のマスカット。美しいが、ただの・・・

1

カシフカシ

16/12/05 コメント:0件 宮下 倖

 不可視の前に不可視がいる。それがぼくから見える日々の風景だった。 

 ぼくは美術館の看視員をしている。
 展示フロアを見廻せば、目立たない隅のほうに存在を沈めるように座る人がいることに気づくはずだ。それがぼくたち看視員である。
 お客さまが館内で声高に話したり、携帯電話を鳴らしたり、展示品に触ろうとしたりといったマナー違反に対し注意をするのが主な仕事だ。座っているだけの・・・

0

猫のいる風景展

16/12/05 コメント:0件 PineLeaf723

「売れる企画を出せ。チケットが売れ、図録が売れ、グッズが売れる企画を出せ」
 脱赤字の会議で館長がキレた。
「客の興味を惹き、クチコミを拡散させる企画を出せ。死に物狂いで。さもなくば倒産だ」

 倒産は困る。小さな美術館だが、この不景気に学芸員の勤め先は貴重だ。
「でも、企画といっても予算もないし……」
 ぼやきつつ私は外に出た。経費節約のため、落ち葉掃除だって・・・

0

裏側へ歩き出そう

16/12/04 コメント:0件 かめかめ

 望に美術館のバイトを紹介してくれたのは学芸員課程の教官だった。本気で課題に取り組む望を高く買ってくれたのだ。
「勉強になるよ」
 その一言が嬉しくて、内気でバイトなどしたことはなかった望だが何があっても頑張ろうと心に決めた。
 バイト初日、与えられた仕事は冬の県展の受付だった。美術館の嘱託職員の神崎さんと長机を並べて参加者の作品をじっと待つ。
「望さんは学芸員を目指してい・・・

0

サイン ミュージアム

16/12/04 コメント:0件 みや

今日も二十歳の僕は、このサインミュージアムと呼ばれている美術館に展示されている、芸能界やスポーツ界、文学やアート等ありとあらゆる分野から選ばれた才能に溢れるその世界の飛躍に貢献している素晴らしい人々の沢山のサインを一枚一枚丁寧に清掃道具で拭いていく。このサインミュージアムにサインが展示される事は素晴らしく名誉な事。僕は約一年程前からこの沢山のサインを毎日拭いているので、誰のサインが何処にあるかもす・・・

0

はじめての美術館デート

16/12/04 コメント:1件 葵 ひとみ

 ナオトとユウコは初めて「詩の会」で出会った、
美術専門学校生のあまり裕福ではないナオトとお嬢様短期大学生のユウコはまだおつきあいはしていないが、今回が3度目のデートとなる。

ここ倉敷市の大原美術館のそばにあるカフェ「エル・グレコ」でついにナオトは勇気を出して胸に秘めた想いをユウコに伝えた……

「僕でよかったらおつきあいしてくれませんか?」とナオトはおそるおそる伝・・・

2

返花

16/12/03 コメント:2件 日向 葵

 教室に置かれた花瓶を、僕はあの時どうしただろうか。

 地方の小さな美術館で浮かんだその問いに、僕は答えることが出来なかった。僕の目の前には、真っ白な陶器の花瓶と、一枚の絵画がスポットライトに照らされて、薄暗い室内に浮かんでいた。


 彼女は絵を描いていた。光量を絞った薄暗い美術室に一人、彼女はいつも白いカンバスに筆を走らせていた。筆が揺れるのに呼応して、彼女の長・・・

2

永遠の蝶の樹

16/12/03 コメント:4件 待井小雨

 蝶をモチーフとした美術館の図録を見ています。蝶を偏愛し、固執し続けるお祖母様が集めた物を収蔵した美術館がもうすぐ完成するのです。

「これだけのはずはありません」
 図録を閉じて、お祖母様に言いました。
「それが全てですよ。他に何があるというの」
 お祖母様にそう返されました。
 蝶を描いた絵画や図案化した蝶の装飾品や着物など、幼い頃から身の回りは蝶の美術品に・・・

2

イノと小さな美術館

16/12/03 コメント:5件 冬垣ひなた

 
 やあ、君たち。
 画聖イノを知ってるかい?知らないとは言わせないよ。
 それじゃあ、彼が何故あの小さな美術館に籠るようになったのか。これも有名な話だ。


 赤毛で太っちょのイノが絵を始めたのは、7歳の時だった。
 折れたクレヨンで真剣に描き始めた天使の絵を見て、両親は目の色を変えたんだ。
 何故って、それはもう神々しく清らかな絵だったからね。・・・

0

それぞれの事情

16/12/02 コメント:0件 みんなのきのこむし


「これは封じ絵にゃ」
 警備の依頼を受けた山寺併設の美術館に着いて、狙われているという室町後期の妖怪画を見るなり、妖怪特捜員の相棒、猫又のニャア太は、ろくろ首の僕に言った。
「封じ絵といっても、江戸時代に流行った絵を使ったナゾナゾではにゃい」
「ああ、分かるよ。法力や呪力によって妖怪の魂を紙に封じ込めたものだ。絵のように見える」
 そこには日本三大妖怪の等身大封じ絵・・・

0

アドリブ美術館

16/12/02 コメント:0件 本宮晃樹

「あの、お一人ですか?」こんなもの俺でも描けると驕っているときにいきなり話しかけるやつがあるか。「よかったら一緒に回りません?」
 ひとつ断っておくが、俺に高尚な美術を理解できる素養があるだなんて思ってもらっては困る。そんなものはいっさいない。
 悪いがね姉ちゃん、友だちから賭けマージャンでかっぱらったチケットがたまたまこのくそいまいましい美術館のタダ券だったんだよ。「かまいませんよ」・・・

1

画家と踊り子

16/12/01 コメント:2件 野々小花

 町の中心に大きな美術館ができた。レンガ造りの真新しいその美術館には、世界各国の著名な画家たちの絵が飾られている。
 町のはずれに住む画家のドラントは、その絵の数々を一度も見ていない。今日食べるパンにも困る生活なのだ。入館料を払う余裕はない。
 代わりに、美術館の絵を描いている。噴水がある広場のベンチに腰掛け、そこから見える美術館の、外壁のレンガに這う蔦の葉を一枚ずつ丁寧にスケッチして・・・

1

想像の絵 真実の姿

16/11/30 コメント:0件 汐月夜空

「本日はご鑑賞していただき、ありがとうございます。ボクの個展はいかがでしたか?」
 酔った気まぐれで入った小さな個展。その出口前で柔和な笑顔で俺に話しかけたのは、地味な男だった。
 男はどこにでも居るスーツで眼鏡の若造という印象で、個展で見た絵と同じ――
「地味、の一言だった」
 俺がそう答えると、男は鳩が豆鉄砲を食ったような表情で俺を見つめて聞いた。
「そう、でした・・・

0

不自由

16/11/30 コメント:0件 寺嶋みきこ

美術館。それは美的センスを持ち、独特な創造力を持った人々が訪れるそんなところ。当然、私のようにセンスがなく、犬を描けば周りからそれは猫だと言われる私が来るのには不自由な場所なのである。絵のこともよく知らない。このタッチが良いだの、この絵はあの時代背景に合ってるだのそんなの全く知らない。正直、興味もない。けれども私は週に1度この美術館に訪れる。「また会いましたね」そう。この笑顔の素敵な彼に会うため・・・

0

密かな楽しみ

16/11/30 コメント:0件 みんなのきのこむし


 私は毎夜の楽しみにネットのヤバい情報を漁っていた。
 妻と娘との夕食後、一時間ほど自分の部屋でパソコンに向かい、闇を垣間見る。
 性的倒錯、過激な政治主張、死体愛好……
 晩酌してからだと目眩がすることもある。しかしそれはそれで悪くない。
 もちろん家族はそのことを知らない。
 SEという仕事柄、パスワードを騙ることもある。
 しかし私程度に侵入される・・・

1

母の美術館

16/11/30 コメント:0件 suggino




 美術館へは、毎週日曜日に行くきまりになっていた。
 行く、とはいっても建物の中に入るわけではなかった。展覧会を見にいくのではない。ただ、「行く」のだ。美術館の建物は旧く、おごそかで立派だった。敷地は公園のように広かった。実際母はわたしを公園で遊ばせるかわりに、美術館へ連れて行ったのだった。
 まだモネもドガもルノワールも知らないころだった。物心がついてから小学・・・

2

私と山の美術館

16/11/27 コメント:4件 あずみの白馬

 私、彩(あや)は、高校生の頃から絵を書き始めて、もう10年以上たち、アラサー女子と言われる歳になっていた。

 個展を開いても、来てくれるのは友達だけ。世間の評価とは無縁で、自分の絵に納得が行かなくなってきた。
 そんなある日、訳もなく、旅に出ることにした。

 東京を発ち、夜行バスで西へと向かう。翌朝、バスは出雲大社に到着。あまり眠れなかったが、神様が年に一度集ま・・・

0

刹那桜花

16/11/27 コメント:0件 ▷てと

クソつまらなくなった。この世界に存在する全てのものに腹が立ち、死にたいわけではないが生きていくのが面倒だった。あれだけ好きだったサッカーが今となっては邪魔で仕方ない。ただ理由はそれだけでないことに自分が1番分かっている。両親ともに厳しい自分の家はタバコ、飲酒はもちろん、門限までも厳しかった。周りがぐれはじめてきても自分は一切波に乗れなかった。そんな自分が情けなくて家で暴れることも多々あった。丁度妹・・・

0

美術館殺人事件 ──刑事:百目鬼 学(どうめき がく)──第25話

16/11/26 コメント:0件 鮎風 遊

 時節は芸術の秋、美術館では欧州名画展が開催され、連日賑わっている。中でも大作『シシィ、レマン湖のほとりで』が人気を博し、その前で入場者が押し合いへし合いの状況だ。
 シシィはオーストリア皇后・エリザベートの愛称。1898年旅先で無政府主義者・ルケーニに刺殺された。人たちはこの絵からレマン湖に至るまでのその数奇な人生に思いを馳せるのだった。
 一方別館では画家の登竜門、新人コンクールで・・・

0

美術館の楽しみ方

16/11/25 コメント:0件 糸井翼

美術館に来て、こんなに気分が悪いのは初めてじゃないかしら。

私は美術館が好きだ。とは言っても、美術とか芸術とかはよくわからない。有名な絵を見ても、何が良くて何が良くないのか、全く理解できない。じゃあなんで美術館が好きなんだ、って言われそうだけど、それは、静かだから。すごく静かな中で作品をぼんやりして見ていると、自分を見つめなおすことができるの。友達にはあまり理解してもらえない・・・

3

ロイド美術館のEエリア

16/11/22 コメント:0件 ちほ

 マニラのロイド美術館の館長をしている私は、奇妙な質問を数人の客から受けた。
『Eエリアは、いつまで工事中ですか?』
  ◇
「お待ちください、館長!」
 受付係が追いかけてくる。私は足音も高くEエリアに向かう。学芸員が両腕を広げて通せんぼしてきた。私は彼女を軽く突き飛ばし、さらに進む。Eエリアの入口で、体の大きな守衛が立ちはだかっていた。彼が胸に下げている警笛を鳴らすと、・・・

1

西暦二五五五年

16/11/22 コメント:2件 鞍馬 楽

 門前払いされたのだ。

 藪から棒に、公衆の面前で。

 それがとても悔しかったので、本日わたしは柄にもなく厚化粧をして、一時間もかけて髪を梳かして、とっておきのドレスを纏って、いちばん派手なヒールを履いて、再びこの場所にやってきた。

「ようこそ、いらっしゃいませ」

 受付では、この世のものとは思えないほどきらびやかな衣装に身を包んだ従業員が、・・・

0

価値観

16/11/21 コメント:0件 蹴沢缶九郎

美術館の壁に飾られた一枚の絵がある。

赤や青、白や黒といった様々な色が織り混ぜられ、あらゆる直線や曲線が交差し、おおよそ形を成していない。「これを描くのに一ヶ月かかりました」と言われればそんな気もするし、「目をつぶり見ないで描いた」と言われれば信じるかもしれない。見ようによっては芸術にも見えるし、ただの落書きの様にも見えるそんな絵。

ある人は、「この絵には数十億の価値が・・・

1

ノーキリスト!

16/11/19 コメント:0件 若早称平

 その男は今にも血の涙を流しそうなくらい恨みのこもった目で俺を見ていた。彼の足下には異国人の姿を描いた銅板。なぜそれを踏めぬのだろう? 俺は衣の襟を正しながら理解の出来ない彼の行動に眉をひそめた。
「呪ってやる!」
 唾を飛ばす勢いで俺をののしる彼に心の中で「それは八つ当たりだ」と呟く。俺も御上の命令でやっていることで彼がどうなろうと俺のせいではない。
「呪ってやる! 末代まで呪・・・

1

マキとフゴー

16/11/19 コメント:0件 秋 ひのこ

――理想の「家」は。
「理想っていうか、夢はぁ、自分の家にびじゅつかんを作ること。エヘ」
 「一風変わっている」「ネジが1本抜けている」「夢見る夢子ちゃん」と評されるマキが、バラエティ番組で口にした言葉である。
 知恵も教養も何もないが、百年にひとりの美女、と謳われるほど突出した美貌と体型を生まれ持ち、気がつけばスカウトされ、勝手にメディアから「おばか美女」ともてはやされて今に至・・・

1

  【俺だけの、ナンバー・ワン】

16/11/18 コメント:2件 長玉




 俺とナナミは、同じ町に住み、同じ中学を出て、同じ高校を出て、同じ美大を出て、同じ《彫刻家》の道に進んだライバルだった。
俺がナナミを追い抜き、ナナミが俺を抜き返すデッド・ヒートをくりかえす内に、ふたり仲良くこの業界の頂点まで来てしまった。
美術の世界では、残念なことに《勝敗》を数字で表せるモノサシがない。
だから、最近の俺とナナミの競争は決着がつかない。・・・

0

和樹と新しいデート

16/11/17 コメント:0件 ゆみさき

「はー?美術館?面倒くせぇよ...」

と、言うと和樹はまた携帯に目を戻した。

「やーだ!やーだ!行こうよぉ」

私は後ろから大げさに和樹の肩を前後に揺らした。

「でた。ザ文化人っぽい女子。」

「は??でた。ザゲーム大好き系男子。」

和樹との付き合いは、かれこれ4年になる。遊園地、映画館、水族館まで楽しい系のテーマパー・・・

1

アンテナ

16/11/17 コメント:0件 チャイナ

年におよそ一度、弟と美術館に行く。頭の良さそうな人が高い評価をつけている美術館を選ぶ。入ってすぐ隣の壁に歪な穴が空いていて、床には「深淵」と書かれたプレートが置いてあるような所だ。僕らには芸術はわからない。だからこそ確かにいい物である事を僕らは求める。学割が効くとなお良い。

美術館にはセンスが良すぎて僕らには変に見える格好の人がたくさんいる。僕らはそこの住民を二種類に分類している。水・・・

1

好奇心の少女

16/11/16 コメント:0件 かわ珠

 夜の美術館の警備員。
 それが僕の仕事だった。とはいえ、僕は所詮バイトだし、しかも働き始めたのは先月のド新人だ。
 このバイトを始めた理由は至極単純で、時給がいい、というその一言に尽きる。それに……こう言うと少し、笑われるかもしれないけれども、夜になると展示物が動き出すあのコメディ映画が好きで、警備員という職業そのものに憧れを抱いていたのだ。
 もちろん、夜に展示物が動き出すな・・・

0

波動鑑定士

16/11/15 コメント:0件 うたさん

その美術館は海が見える丘にあった。正面玄関は麓からの長いエスカレーターの果て、眺望は素晴らしかった。しかし真の玄関は3fと呼ばれるシークレットの入り口だ。黒潮に守られた原初の森を長い時間をかけて、リムジンは進んだ。曲線を描く道路は時折二股に分かれ、一度でも間違えば、元の市街地や、近隣のn市に運ばれてしまう。しかもuターンのまったく効かない崖を幾つもくぐり、無事に出れるのは翌日の昼。捜索願いの出され・・・

0

横たわるアヤラ夫人

16/11/14 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

絵の中から、まるで人が液体になって人間のかたちのまま流れ落ちるかのように、アヤラ夫人は壁を伝って、床の上におりたった。寝台の上に、横たわっていたそのままに、身にはなにもまとっていなかった。
彼女は床から、ゆっくりたちあがった。その顔には、不安と、そしてそれ以上に期待感が色濃くはりついている。夫人はあたりをみまわした。そこには壁の絵を取り囲むようにして、数人の男女がたっていた。
しかし、・・・

1

【私の白いディオニュソス】

16/11/14 コメント:3件 KOUICHI YOSHIOKA

 地方の美術館で私は監視員をしている。監視員というのは、展示室の隅に黙って座って、来館者が展示物を手で触ったり、落書きをしたり、携帯電話の使用や飲食などのルール違反をしないか監視している仕事である。仕事といっても私の場合はボランティアであるが。
 この美術館は山の上にあるので交通が不便であるし、私が担当する常設展示室も有名な作家の作品もないので、平日休日に係らず来館者は少なかった。一日に数人・・・

2

魔法の絵画

16/11/14 コメント:4件 上村夏樹

 その絵画のタイトルの下には、奇妙な注意書きがあった。

※絵画の中に入れます。心臓の弱い方はご注意ください。

 絵画の中に入れたら、心臓が強い人でも注意が必要だと思うのは俺だけだろうか。


 ここは都内の美術館。
 大学の友人から美術展のチケットを譲り受けた俺は、春休み最終日の今日、この場所にやってきた。
 友人曰く「面白い絵画があるから・・・

1

嫌な奴ランキング

16/11/13 コメント:0件 つつい つつ

 そういえば女子を泣かせたことあったな。

 平日の昼間から美術館に入ったのは絵に興味があったわけではなく、時間を潰したかったからだ。営業で得意先回りをしている時、急に二、三時間空いてので、ファミレスかパチンコでも行くかとも思ったが、たまたま貰った美術館の招待券が財布に入ってることを思い出し行くことにした。
 美術館に入ると、平日のせいか人はまばらだった。説明書きを読むと並べられ・・・

1

雨と迷い家、それと彼女

16/11/13 コメント:0件 雲鈍

雨が降っていた。台風一過の油断をついてのこの雨。まだ夏は遠く、しとしとと降る雨は確実に私の身体を濡らし、体温を奪っていく。当初の目的はどこへやら。私は意気地をなくして、雨宿りできる場所を探して彷徨い歩いていた。ここは山道から外れた深い森の中。左手にもつ携帯に、かろうじて電波はあるが、バッテリーはあと数パーセントしかない。


見かけは、バロック式の洋館である。「展示を行ってます」・・・

0

赤毛の女と少年

16/11/12 コメント:0件 比些志

少年は私が守衛をつとめる美術館に毎日やってくる。
そして、立ったまま、だまってモディリアーニの赤毛の女の絵を見ていた。
私はなんどか声をかけたが、少年は言葉少なに返事をするだけで、決して笑顔は見せなかった。
それでも私は短い会話を通じて、少年の母親がその絵を好きだったことを知った。女のやせ細った顔が、病床の母親に似ているともいっていた。母親は一ヶ月前にガンでなくな・・・

0

桜風 両国浮世絵乱舞の図

16/11/12 コメント:0件 白取よしひと

 時は寛永。ひらひらと辻に舞うのは瓦版。我先にと人は群がり話題は蔦屋で持ち切りだ。

「見出しは蔦谷重三郎。おまけに杵屋お初の挿絵を拝めるってぇんだから買わねえ手はねぇってもんだ」  

 通称蔦重は破天荒で贔屓が多い。耕書堂って大層な店構えた指折りの版元だが、つい先だっても春画でお咎めを受けたばかりらしい。江戸っ子は俗な話や色気にめっぽう弱い。蔦重は次から次へと新作奇作を・・・

0

絵を描くということ

16/11/09 コメント:0件 新木しおり

「朝比奈くん、これからちょっと美術館へ行かないかい」
 美術室で部活動をしていた僕に、学級担任兼美術部顧問の落合先生がそう声を掛けた。僕は絵を描いていた手を止め、彼のほうを見る。
「美術館というと、市内のあの小さな美術館ですか」
 問うと、先生はこくりと頷いた。
「小さいと言っても、それなりに見る価値はある。どうかな。車は私が出すから」
 僕はしばし逡巡した後、「ええ・・・

0

鮮やかなキャンバスの舞台に

16/11/09 コメント:0件 蒼樹里緒

 父が仕事の取引先の人からもらったという美術展の特別優待券が二枚、私の手元に来た。
「俺は暇がないから、友達でも誘って行ってこい」
 そう気さくに言われて、せっかくだから大学の友人と二人で足を運ぶことにした。
 美術館というのは不思議なもので、小さな子ども以外は本当に幅広い年齢の人々が集まる場所だ。平日でも多いのは、やっぱり高齢者や私たちのような学生だけれど。熱心な人は、もう何回・・・

0

雪山美術館

16/11/09 コメント:0件 白取よしひと

「浩二。私もう1本滑って来るわ」
 僕は何か飲んで来るよと板を突き立て数歩いて振り返ると、和美はリフトに向けてスケーティングをしていた。強烈な逆光の中、徐々に遠ざかる和美の姿は僕らの状況を象徴するかに見えて、僕はレストハウスの階段へ脱力感と共に腰を降ろした。

 和美と付き合って3年を過ぎた。僕らは美大の同期だ。学生の頃は夢を語っていればそれで良かった。僕は、学生時代コンテスト入・・・

0

夢を見るアンドロイド

16/11/08 コメント:0件 かわ珠

 かつて、私は月に恋をした。
 月。そう、空に浮かんで優しい光であたりを照らす、あの月だ。この地球には地上を照らす二つの大きな光源があった。言わずもがな、太陽と月だ。太陽の光はギラギラと刺すようで、私には少し力強すぎる。けれども、月の光は優しくて、包み込むようにあたりを照らすのが心地よかった。太陽か月、どちらか片方を恋人に選んでいいと言われれば、私は迷わず月を選ぶだろう。それくらいには月のこ・・・

0

抗った証

16/11/08 コメント:0件 水面 光

「えっ、なんで笑うんですか?」──自分には生きる意味も価値もないと思っている老いた男がやっとかけがえのない希望を見い出しかけたその矢先に、若い女からこの敵意あるフレーズを1万回リピートで聴かされたとしたら、どうなると思う? 少なくとも、面白くて、楽しくて、笑ったんじゃないよ、お嬢さん。あえて言えば、「自嘲」だよ。もしもそれを心底理解していてそう言ったのなら、「私ゼッタイ嫌われたわ」とか微塵も思っち・・・

1

はるくんは天才画家

16/11/08 コメント:2件 こぐまじゅんこ

 はるくんは、三さいになったばかり。
 毎日、保育園にかよっています。お迎えには、おばあちゃんがきてくれます。
 夕方、おばあちゃんが、
「はるくーん。」
といって、迎えにきてくれると、はるくんはうれしくて、おばあちゃんにとびつきます。
 おかあさんが、しごとから帰ってくるまで、はるくんは、おばあちゃんとあそびます。
 きょうは、おばあちゃんが、色画用紙を買って・・・

2

星空の絵

16/11/08 コメント:0件 深海映

 この春、私は結婚をすることになった。彼は非常に明るく社交的な人で、周りのみんなは、内気で家にこもりがちな私とは正反対のタイプだねって言う。そんな彼と付き合うことになった決め手は、彼の家に飾ってあった一枚の絵だった。

 どこまでも青く果てしない星空の絵。その絵は、私の部屋に飾ってあるのと全く同じだった。
 
 私がその絵と出合ったのは、近所の美術館だった。
 たまた・・・

0

ピカソ展

16/11/07 コメント:0件 佐川恭一

 私は芸術というやつはくそくらえ。そのように思う人間です。それは私が芸術に心を洗われたとか救われたとかいう感覚をもったことがないからで、そんなことをいっているやつは大体詐欺師である。そういっておいたほうがゆたかな精神の持ち主にみえるからいっているだけです。反吐がでる。事実、この芸術のどこがどういいのか、ときいてみたときに、しっかりと答えられる人間はすくない。なんとなくとか、ただいいと思ったとか、す・・・

0

1943年の雪深い村にあった美術館

16/11/07 コメント:0件 ポテトチップス

 昨夜から降りだした大雪は村全体をさらに雪化粧にし、この雪深い村に暮らす多くの者が、ため息を吐きながら朝から雪かきをしていた。
 大吉が家の前の雪かきをしていると、教科書などを風呂敷に包み、それを背中に背負って歩く、自分とさほど年の違わない少年が、近くの国民学校高等科に通うため、前の道を歩いて行く。
 大吉はその後姿を、羨ましげな気持ちで見つめた。
「早く雪かき終わらせ!」

0

館の国のクラリーサ

16/11/07 コメント:0件 結簾トラン

 クラリーサは今日も件の館の前で仁王立ちしていた。ふん。こんなの、ただの容れ物じゃないの。
一昨日から此処へ、パリから侵略者が来ているらしい。あらあら、御苦労なこと。高い高い天井から洒落た青い旗が垂れる。ふうん、花の都ですって。だけどそんな肩書きに怯むクラリーサではないのだ。
 大理石の段々を悠然と上り(幅が広いので一段に二歩必要だ)、慣れた手付きで特設展示場への通行証を掲げる。半券を・・・

0

黒い絵

16/11/07 コメント:0件 かつ丼

オクラホマ州アードモアは寂しい街である。オクラホマシティへは北へ百マイル、ダラスへもやはり南へ百マイル、どちらへも近くて便利などと地元の連中は言うが、東海岸の大都市から移り住んできたばかりのショーンには悪い冗談にしか思えなかった。ではなぜ彼はそんな街にわざわざやってきたのか。彼はフリーランスで、IT関連の有能な技術者であり、顧客もたくさんついていた。仕事の性格上、受注、連絡、成果品の発送等はネット・・・

0

観る目

16/11/07 コメント:0件 蹴沢缶九郎

とある美術館の壁に飾られた一枚の絵を前に、三人の評論家達がもっともらしい顔つきで語っている。

「この抽象画は大変素晴らしい。特にこの直線の力強さ、描き手の真っ直ぐな信念が伝わってくる」

その言葉を聞いた別の評論家が頷いて言った。

「まったく同感です。そして力強さだけでなく、曲線の繊細さ。描き手の心の優しさが表れています」

また別の評論家は、<・・・

ログイン