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第121回 時空モノガタリ文学賞 【 捨てゼリフ 】

今回のテーマは【捨てゼリフ】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/12/19

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/10/24〜2016/11/21
投稿数 77 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今コンテストも面白い作品が多かったです。一番多かった内容は親子の確執を描いたものでした。それから文字通り「拾った」台詞といった切り口も幾つか見られました。捨て台詞というテーマから予想されるとおり、ややダークよりの内容が全体的に多かったですが、アプローチが多様であるため、読んでいて面白かったです。最終選考作品では、「捨てて捨ててそして捨てられ」は意外な結末が印象的で、他人を排除し続ければ結局は孤独が待つということについて考えさせられました。「私、心配しないので」は、漫画の「台詞」と、主人公の捨て台詞が面白く、いまどきのネタもちりばめられテンポも良く楽しめました。「あまりにもフクロウな捨てゼリフ」は、救急センターとフクロウという異質の組み合わせと、病院前の空間を生かした展開が吉岡さんらしいアプローチだったなと思います。「俺 インザケージ」も今回多かった親子の確執を発端とする話ですが、文章がしっかりしていて読みやすいのと、思い込みから解放されていく経過にほっとさせられました。もう一つの作品で入賞をされた戸松さんの「台詞の取捨選択」は、落ちている台詞という比較的多いアプローチでしたが、文字通りに実現される「台詞」によって夫婦の緊張感をコミカルに描いていて、オチには笑ってしまいました。「空乱裂破—もう痛みを感じられない、棘の生えた手のひらで」は、父親の放つ論理の不気味さが圧倒的で、しかし確実にこういう思考回路の人間は存在すると思えるリアリティもあり、凄みのある作品だと感じました。最終選考以外にも、印象的な作品は多くありました。ただ(これはいつものことでもあるのですが)同程度の印象の作品が並んだ場合、明らかな欠点が少ない方を、消去法的に選ぶことも多いです。ですので、テーマ性が薄い、説明不足(あるいは説明的すぎる)、全体的に言いたいことが判然としない、などの目立つ穴をなるべくなくす方向で工夫されると良いのではないでしょうか。完璧な作品というのもそうそうないので、ちょっとした違いが印象を左右することが多いと思います。また次回も内容の濃い昨品を期待しております。

入賞した作品

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捨て台詞を笑う者は捨て台詞に泣く、かもしれない

16/11/21 コメント:10件 光石七

 ある日の午後、丸跋交番に一人の青年が訪れた。
「落とし物を届けに来ました」
「どうぞ、こちらにお掛けください」
 新米警官の沢津はにこやかに椅子を勧めた。先輩の矢内は午前中の物損事故の書類を仕上げている。
「さっき、バイト帰りに拾ったんです」
 背中からリュックを下ろし、青年が話し出す。沢津は拾得物件預り書を用意し、机を挟んで青年と対座した。
「星印書店の脇の・・・

3

ぼくらの捨てゼリフ

16/11/16 コメント:3件 ウサバオウカ

帰り道にセリフが捨てられていた。その日は雨が降っていて、ぼくは大学から帰る途中だった。

ぼくは実家、しかもマンション暮らしなので、セリフなんてとても飼えない。ぼくは気の毒に思いながらも、家路を急ぐことにした。

しかし、彼はぼくが通り過ぎたところで、微かに鳴き声をあげた。思わず振り返ると、セリフはただただ静かにぼくを見ていた。美しい目だった。

ぼくは舌打ちを・・・

最終選考作品

7

私、心配しないので

16/11/18 コメント:10件 霜月秋旻

「なんか違うんだよなぁ、うん。なにかが違う」
 先生の仕事場を訪ねると、暗い部屋の中で、先生は机に向かって、頭を掻きむしりながら何かを考えている。
「何をそんなに悩んでおられるのですか?」
 私が尋ねると、先生は振り向いて笑顔を見せた。
「やあ志村くん。相変わらず美しいな。いやなに、次の連載会議に出す予定のさ、新作漫画の主人公の決め台詞を考えていたんだよ。しかしいいのが思い・・・

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【あまりにもフクロウな捨てゼリフ】

16/11/11 コメント:2件 吉岡幸一

 深夜、救急急患センター入り口横の駐輪場で僕は煙草を吸っていた。
 もうこれで何本目だろうか。携帯灰皿はすでに吸い殻でいっぱいになっている。
吸い殻を押し込みながら、新しい煙草に火をつけていると、入り口の自動ドアがひらいた。
 看護師に背中を押されながら年配の男が出てきた。男はかなり酔っぱらっているようだった。ろれつが回っていなかったが「覚えてろ。訴えてやる」と、もがきながら犬の・・・

10

空乱裂破――もう痛みを感じられない、棘の生えた手のひらで

16/10/24 コメント:9件 クナリ

 父親は、小学四年生の息子のハナタの頭をビーカーで殴ると、ついでに拳でも殴った。
「アッ、いたい」
「なぜお前は、痛い時に痛いと言う」
 そう言って、さらに強く、もう一度ビーカーで額を叩いた。ビーカーが割れた。ハナタはとうに頭から出血しているので、改めて皮膚が破れたかどうかは判然としない。
 ある日曜日の朝、安アパートの一室でのいつもの光景が進行していく。
 父親は小・・・

投稿済みの記事一覧

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あばよは二度は言わせない

16/11/21 コメント:1件 奈尚

「いよいよ貴様も年貢の納め時だな! 怪盗コウモリ」
 豪奢な屋敷のパーティルーム。その床がぱっくりと割れて、きらびやかな部屋の様子にそぐわない落とし穴を形成している。無様にも穴に落ちた怪盗を前に、刑事は高らかに笑った。
「神出鬼没、狙った獲物は逃がさないとうたわれたお前も、このカラクリ屋敷からは抜け出せなかったとみえる」
「フッ、せいぜい今のうちに喜んでおきたまえ」
 嘲笑・・・

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捨て台詞は拾っちゃダメ

16/11/21 コメント:0件 むねすけ

 美味しいと思ったことなかった
 美味しいと思ったことなかった
 美味しいと思ったことなかった

 これまでついぞ、「おはよー」の一言すらマスターしなかったオカメインコの太郎が繰り返す言葉。不良彼氏の単車のケツに乗っかって久美が去っていったあの夜。
 俺が男手で毎日お前のために料理を、とお涙頂戴で一件落着、お父さん私が間違ってたわで、飛びつかれるはずの胸は今もエンプテ・・・

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月末恒例

16/11/21 コメント:0件 OSM

 六十五を過ぎて耳が遠くなり認知症の症状も出始めた母さんに金をせびりに実家に足を運ぶ俺のクールな月末を紹介するぜ。

 実家に足を運ぶ日時は、父さんの給料日の翌日、朝八時から夕方五時までの間と決めている。その時間帯、父さんは仕事で自宅に不在だから、鬼の居ぬ間に洗濯をするというわけさ。
 母さんは耳が遠いから、インターフォンを鳴らしても中々出てこないが、根気強く連打していると、やが・・・

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明日へのマーチ

16/11/21 コメント:0件 むねすけ

 ぬく太の振り向き方は格好がいい。ベビーベッドの位置のせいらしい。本人、幼稚園の年長さんは毎日ブランコの二人乗りと給食のほうれん草の上手な隠し方で頭がパンパンのくせして、時折女子大生の私を打ち負かすほどの理路整然たる回答をくれる。
「左っ側は壁だったから、そっち向きたくないんだと思う」
 ぬく太、と呼ぶと呼んだ人間がアイツの左側面に立っていようと右振り向きの余韻のエネルギーで振り向くの・・・

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拾われゼリフ

16/11/21 コメント:0件 ケイジロウ

「こんな店、閉めちまえ!」
と、その客は捨てゼリフを吐いて店を出ていった。プラスチック製のレンゲがゆっくりと床に落ち、安っぽい音が小さな店内に響いた。
 オレは一瞬戸惑ったが、その捨てられたセリフを拾い、思いっきり投げ返してやろうと、調理場からカウンター席に飛び出した。その客は、引き戸をバタンッと開け、店を出ようとするところだった。が、オレはその客の醜い背中をただただ睨みつけることしか・・・

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エピローグ

16/11/21 コメント:0件 東屋千歳


「殺す……絶対に……お前を殺す……!」

 こちらに伸ばされた手が、力なく地面に落ちた。見開かれた両の目は閉じることなく一点を見つめている。そこに宿るのは怒りか、憎しみか……。

「助かったの……? 私たち……」

 はるかは燃えさかる炎の中で、不安げにこちらを見上げている。

「まだだ。早くここから逃げ出さないと」

 俺ははる・・・

4

意地っ張りなグッドモーニング

16/11/21 コメント:6件 冬垣ひなた

 ジリリリリリンッ!
「うるさいな、もっと静かに起こせ!」
 数矢様の言葉が、乱暴に私へと投げつけられます。
 けたたましく鳴る私のベルを止め、モサモサの髪を撫でながら、寝ぼけ眼の数矢様は部屋を出ました。7時13分起床、まずまずのタイムです。


 申し遅れました。
 私、目覚まし時計でございます。大量生産品のしがない身分ではありますが、数矢様の高校入学の・・・

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世にも怖い捨て台詞『末代まで呪ってやる』

16/11/21 コメント:4件 そらの珊瑚

暇だったので、怖いもの見たさにホラー映画のDVDを借り、家で一人で観た。

 その映画は、江戸時代の戯作者、河原屋霧丸の「黒ゐ七つ星」を原作にしたものだった。
 身に覚えのない罪を着せられ、切腹するしかなくなった下級武士が、介錯されて落ちた首が「末代まで呪ってやる」と捨て台詞を吐くシーンにぞっとした。
 自分を陥れた悪い上司の武士には、右頬にほくろが七つ並んでいて、宿命・・・

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妹からひとこと

16/11/21 コメント:0件 宮下 倖

 かすかな身じろぎと小さな欠伸に続いて、ふとんから抜け出す遠慮がちな気配がとなりで生まれた。こちらを窺うようなわずかな間があったけれど私は眠ったふりをする。淋しげな吐息を背中で聞いたときは少し胸が痛んだけれど、私は動かなかった。
 身支度をする密やかな空気の流れを全身で感じる。戸口に向かう足音が止まり、「薫、あとでね」という柔らかな声を残して部屋のドアが閉まる音がした。私はふとんの中でぎゅっ・・・

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強がりなクレーマー

16/11/21 コメント:0件 ぽんず

「もう二度と来るもんか。こんなスーパー」
って、昨日言ってたくせに。
私は生鮮食品を入れる小袋を作る手を止めて、レジに来たタマ子(と、パートの仲間内で呼ばれている)を、笑顔で迎え入れる。つもりだったが「いらっしゃいませ」の声が震えてしまった。
タマ子は有名なクレーマーで、目をつけられたのか、わざわざ私のレジを選んで入っては、訳の分からないクレームをつけてくる。娘の言葉を借りるなら・・・

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偏食者のカタストロフィー

16/11/21 コメント:7件 泡沫恋歌

「こんなまずい飯が食えるかっ!」
 テーブルの上に並べられた料理を見るなり、夫の口からそんな捨てセリフが吐き出される。そして家から出ていってしまった。行き先はどこかわかっている、ここから歩いて十五分先にある夫の実家に決まっている。
 そこへいけば、彼の母親が好きな料理ばかり並べて待っているのだ。

 結婚して一年、夫とはうまくいっていない。
 主な原因は私の作った料理・・・

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アンゼリカの正体

16/11/21 コメント:4件 そらの珊瑚

 バースディケーキの上は綺麗に飾られた素敵な世界。
 いつもはジミィな醤油色に彩られたばあちゃんの食卓が、がぜん夢見がちな乙女色になるから不思議。
 ろうそくが十本。それが仏壇用のものだと知っているけど、それはそれでよしとする。
 白いくりいむからは甘い香りがしてきて、その上でツンとすましてる苺はまるでお姫様みたい。
 あたしの誕生日。永遠にこのまま砂糖の虜になるのも悪くな・・・

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懲りない男の宣戦布告

16/11/21 コメント:0件 火那

 今日は配膳の係だったか。

 ドンッと重量感とともにトレイに置かれた漫画でしか見ないような山盛りのご飯に納得したように頷いた。ついで置かれるおかず……今日は生姜焼きだ。味噌汁も全て増量仕様。周囲がそのボリュームに目を見張る中、俺は淡々と空いている席を探して受け取り場に背を向ける。強い視線を感じながら。
 「いただきます」
 両手を合わせて定番の一言。がつがつと食べ進める。・・・

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悔いる言葉

16/11/21 コメント:2件 野々小花

 着古した部屋着のまま、和樹は一人暮らしをしているアパートの部屋を出た。
 人目を避けるように、うつむき加減でコンビニへ向かう。他人の視線が気にりはじめたのは、仕事を辞めてからだ。
 大学卒業後、そこそこの企業に就職できた。配属された部署は忙しく、無理をしている自分に気づかなかった。
 ある日突然、ぷつりと糸は切れた。限界を超えてしまったのだ。
 無職になった自分は、周囲か・・・

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ぼくのお父さん

16/11/19 コメント:0件 かめかめ

 ぼくのお父さんは俳優です。テレビや映画に出ています。でも、友達はみんなお父さんをテレビで見たことがないと言います。それは仕方ないです。
 お父さんは時代劇にしか出ないのです。しかも主人公に切られる「切られ専門の大部屋役者」だそうです。ぼくはお父さんの仕事があまり好きではありません。
 ある日、仕事から帰ってきたお父さんがうれしそうに言いました。
「翔、今度の時代劇な、セリフがも・・・

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アニマルチェンジクラブ

16/11/19 コメント:0件 蹴沢缶九郎

『あなたも別の動物になってみませんか?』

なんともチープな謳い文句が書かれた、アニマルチェンジクラブの看板に見事心を掴まれた彼女が言った。

「ねえねえ、別の動物になれるんだって。面白そう、入ってみようよ」

そんな彼女の言葉に、彼氏はうんざりした様子で言う。

「ここはつまらないからやめておこう」

「入った事あるの?」

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他力本願

16/11/19 コメント:0件 志奈

「よお、また会ったな」

 そうオレは鼻で笑って呟いた。
 マスクと水中ゴーグルという完全防備。そして両手にハタキとハンディタイプの超吸引掃除機を力強く握りしめる。
 これで全ての準備は整った。
「いくぜ!」
 オレはポチっと機械に喝を入れ、作戦を開始した。
 高所の埃をハタキで落としながら、もう片方で吸い込むという神業。
 一人暮らしの狭い1DKの・・・

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拾い屋

16/11/19 コメント:0件 守谷一郎

 僕は拾い屋。人が吐いて捨てた台詞を集めるのが仕事だ。
 人は掃きだめ業者なんて揶揄するけれど、僕は存外この仕事が気に入っている。
 ここには貝塚のように言葉たちの残骸が積み重ねられていて、僕はひとつずつ拾いながらそれらにどんなエピソードが込められていたのか想像する。

 例えば、前に拾った台詞はよかった。ポケットのなかを探ってソレを取り出してみる。

   『・・・

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処刑前

16/11/19 コメント:0件 OSM

 捕獲した女戦士を我々がどのように処刑するか、お嬢さんはご存知かな。
 お嬢さんは恐らく、お嬢さんの想像力が描き出し得る中で最も凄惨な情景を思い描いただろうが、当たらずも遠からずと言ったところかな。せっかくの機会だ。少々語らせてもらうとしよう。
 我々はまず、彼女たちの体から片目と耳と鼻と四肢と乳房を切除する。そして仲間に無料で貸し出すのさ。貸し出した女戦士の穴という穴はご自由にお使い・・・

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カブ

16/11/19 コメント:0件 糸井翼

「カブね」
彼女のつぶやいた捨て台詞が忘れられない。だって、あまりに不可解じゃないか。
彼女とは、少しずつ仲良くなって、一年くらい経った。彼女の誕生日は十二月。ちょっと格好いいプレゼントをあげるぞ、と思って、詩を贈ることにした。前に自作の詩を彼女に褒められたことがあったからだ。文学研究部の僕は、その褒め言葉だけで、恋のスイッチが入ってしまったわけだ。笑うなよ。
彼女はフランスに留・・・

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あなたがくれた金色の

16/11/19 コメント:4件 待井小雨

 あの頃の兄には、私の姿が見えなかったのだと言う。私は三歳、兄は七歳。母が私を疎んじていた頃。

 母の怒り顔をよく憶えている。
「二度と触らないでッ!」
 幼い私の掌を力いっぱい振りほどき、母は捨てゼリフを吐いて背を向けた。振りほどかれた力のままに小さな私は転がる。
 頭や体をぶつけるのは日常の事だったので、一瞬だけ泣いて私はすぐにある物を探して床に這いつくばった。・・・

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ママはもう他人

16/11/17 コメント:0件 ゆみさき

「ママなんて大っ嫌い!!」

そう言って、勢いで家を出た。言った瞬間は確かに爽快。でも、数分後には後悔するのがいつものパターンだ。

暗い街を歩きながら、亜香里の目には涙が溢れていた。

母のことを嫌いなのは、事実である。だから、私は、正直に自分の気持ちを相手に伝えた。私がしたことは何も悪くないはずだ。しかし、気持ちを相手にストレートに伝えた自分が、どうしようも・・・

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    【捨てたつもりのセリフが】

16/11/17 コメント:4件 長玉




 「アタシ、カネモチと付き合っテ、サツタバ風呂でオボレ死ねたらマンゾクだナァ」

あの時の驚きは、一生わすれない。
飼ってる柴犬の《ゴロ》が、あたしに話しかけてきたんだ。
ゴロは床にねそべり、こうも言った。
「デキレバ、カネモチなうえにイケメンなカレシが、ホシイナァ」


「金持ちと付き合いたい」
「できれば、金持ちでイ・・・

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路上ミュージシャンは今日も叫ぶ

16/11/17 コメント:0件 霜月秋旻

 ロックとは、捨て台詞のようなものだ。相手の返答を求めず、ただひたすら自分の思いを音にのせて吐き捨てる。
 そして俺は、毎日路上で言葉を吐き捨てる。黒い革ジャンを身に纏い、ギター片手に、世の中に向かって叫びたいことを自分勝手に叫ぶ。
 親には頼らない。俺は有名なミュージシャンになる。俺の歌で、俺自身の力で生きていく。そう捨て台詞を吐いて、田舎から上京してきた。なにも成し得ずに帰るわけに・・・

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叫び

16/11/16 コメント:4件 日向 葵


 「気が付いたかい?」と夫が言った。 

 病院のベッドに横たわる私を、夫は優しい笑顔で包んでくれた。こんな笑顔はいつ以来だろうか。それは、もう思い出すことさえできない程に長く、遠い昔だった。 
 しかし、私はその想いを伝えることができない。私の喉からは、只々空気の漏れる音が出るばかりで、それが呼吸なのか、はたまた声を発しているのか、聞き手にはわからな・・・

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こぶとりじいさん

16/11/16 コメント:0件 欽ちゃん

むかしむかしあるところに、小太りのじいさんが住んでいました
小太りじいさんは口が悪いので村での好感度はとっても低いのでした

ある日、小太りじいさんは新たな都市開発のために山へ視察に行きました
その途中、かわいいうさぎがひょこっと出てきました
「こりゃかわいいうさぎだ。わしは不動産王だぞ」
小太りじいさんがうさぎを撫で回すと、うさぎは驚いて逃げていきました

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「覚えてろよ〜」

16/11/16 コメント:0件 チャイナ

渾身の力で叫んで僕は彼らに背を向けて逃げ出す。なぜそんな言葉を毎度言わねばならないのかはわからない。そういう伝統なのだ。声質もトーンもリズムも厳しく決められていて、習得するには長い時間がかかった。僕の父も、祖父も、その祖父の祖父の祖父も同じ悩みを抱えながらその伝統を守ってきたらしい。「覚えてろ」覚えておいて欲しいのは何だろう。今回の僕の敗北だろうか。だとしたら彼らは僕の今まで全部の敗北と、僕の父の・・・

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逃走列車

16/11/16 コメント:2件 PineLeaf723

 その長い列車は僕を迎えにくる。
 いつだって、どんな場所にだって。

 登校途中の混雑したバス停で、男が女に絡んでいた。
 僕は呼吸ができなくなった。無性に腹が立っていた。朝から泥酔する男にも、見て見ぬふりをする大人たちにも、それから……。
 低い遠雷のように、列車の近づく音が響き始める。僕はバス待ちの列を離れ、男に蹴りを入れた。ふいを突かれて転んだ酔っ払いに、もう・・・

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綺麗な夢に、さよならを

16/11/13 コメント:1件 汐月夜空

 私が見る世界と彼が見る世界は違う。
 憧れと諦めが淹れたてのカフェオレのように混じる、甘くて苦いその感情を、真紀は和樹と過ごした2年の間に感じない日はなかった。



 いつだって、私と彼は同じことを異なることと感じていた。例えば丘の展望台から、私が綺麗と言った夕暮れの山間を、彼は可能性だと言った。意味が分からない私が尋ねると、彼は右手を自分の顎に当て、少しの間目を・・・

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捨て身の覚悟

16/11/13 コメント:0件 雲鈍

目の前の男が、俺に向けて殺意をふるう。それは明確な刃の形を為していて、確実に俺の身体を切り刻む。それだけでも悲劇だったが、さらにそれを色濃くしているのは、その男が俺の親友である点だった。

「おい」

俺らは奴隷だった。広大な農園で働かされていた。同期に入った俺と、こいつと、その妹だった。俺らは年が近く、兄弟のように育った。お互いを助け合い、励ましあいながら今日まで生きてき・・・

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パリピポパーティー

16/11/13 コメント:0件 浅月庵

 “おまえら⬜︎⬜︎! 全員もれなく⬜︎⬜︎からな!!”

 ◇
 午後十一時。バイト終わり、俺はスクーターに乗って自宅へと向かっている。

 信号待ちの際に歩道へ目をやると、様々なモンスターたちが入り交じり、交流を深めている最中だった。
 今日は盛大・・・

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投げ捨てたボール

16/11/13 コメント:0件 霜月秋旻

 僕の家の近くに、川原がある。その川原には、テントを張って暮らしているおじちゃんがいる。
 僕はいつも夕暮れ時、部活が終わって学校から帰ると、そのおじちゃんとキャッチボールをしている。
「たくや、明日野球の試合なんだろう?どこ守るんだ?」
 おじちゃんがボールを投げ、僕はそれを左手のグローブでキャッチした。そして、おじちゃんにまた投げ返した。
「補欠だよ。試合に出してもらえ・・・

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東京、捨て『ゼリフ』の怪

16/11/11 コメント:0件 秋 ひのこ

 小学2年になる息子、朔太郎が小さなハコ型テレビを持って帰ってきた。子供の腕で抱えられるほど小さい、赤いブラウン管のテレビ。
 弘美はうんざりして開口一番、「なにそれ」と尋ねる。
「拾った」
「拾ったって、また?」
 口数が少なく感情表現も好奇心も乏しい長男は、何故か最近やたらと捨て犬だの捨て猫だの、瀕死のハトだのを拾ってくる。その度に「後始末」に奔走するのは結局母親の弘美・・・

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二郎の捨てゼリフ

16/11/11 コメント:0件 鮎風 遊

 人の本能的な思いは脳内の大脳辺緑系の旧皮質で、また情緒的な感情は古皮質で、さらに論理的な思考は新皮質で呼び起こされ、互いに絡み合う。そして扁桃体により制御され、その記憶は海馬によって管理される。つまり心はこのシステムから生まれ、進化する。
 しかし完璧なものではない。呼び起こしの僅かな時間ズレや脳組織の微細な瑕疵で、結果としてもう一つの心を持つ自分が脳内に生まれることがある。それは奇跡では・・・

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水分子のおよぼすバタフライ効果について

16/11/11 コメント:0件 本宮晃樹

 聞くに堪えない辛辣な言葉というのは、しばしば本人の意図しないまま反射的に飛び出るものだ。
 その日、非常に些細なきっかけ――たぶん使ったコップをそのまま戻すなとか買い出しを頼んでいた柔軟剤がいつものとちがっていたとか、そのたぐい――で勃発した恒例の夫婦げんかはいつになくヒートアップしていた。
 罵詈雑言が互いの頭上を飛び交い、いよいよボルテージが最高潮に達したそのとき、ほかでもないわ・・・

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いつか、捨てる日が来るまで

16/11/09 コメント:0件 密家 圭

同棲中に浮気されてただ出ていくなんて、惨めすぎる。だからせめて捨て台詞だけは美しくしたいと思った5分前。目の前の鏡を見て、呆然とした。
‥‥‥洋画の綺麗なヒロインみたいには出来なかった。真っ赤なルージュで鏡に書いた「別れましょう」の文字は、心霊番組の怨霊が吐く呪いの言葉みたいになってしまった。
失敗作が薄紅色になって排水溝へ流れていくのを眺めながら、何が駄目だったのか、これ・・・

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奇跡と共にお別れを

16/11/08 コメント:0件 空蝉

少し早足に近づく、冬の足音。
日当たりの良い、この公園では、今日も子どもたちが元気に駆け回っている。
まだ赤ん坊に毛が生えたくらいの、あどけない笑顔の幼子。
可愛らしい桃色の手袋で、クマのぬいぐるみを抱いていた。
その小さな手で抱えるには、少々大変そうなサイズであるが、それでも手を離さないのは。

「大事にしてるんだなあ。
きっとこれからも、ずっと一緒なの・・・

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忘却の音、耳を傾け

16/11/08 コメント:0件 秋 ひのこ

「『軍曹殿、用を足す方が大事であります』って、これだけじゃ状況が全くわかんねー」
 隣でADの新沢がケラケラ笑い、次のメールを覗き込む。
「あ、これなんかどうすかね。『お教室の先生の言葉です。<文字は心を映す。心は文字を描く>』」
「お題が難しかったかな。どれもズレてる」
 美里は自分のパソコンで同じ画面を眺めながらひとつ溜息を吐く。
 美里がディレクターを務めるラジ・・・

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上位の会話

16/11/08 コメント:0件 蹴沢缶九郎

ある競技で世界一位の男が、余裕綽々と言った。

「ああ、追われる身も辛いものだ」

その言葉を側で聞いていた世界二位の男が言う。

「安心してください。あなたの座はもうじき私が頂きますよ」

「楽しみにしているよ」

そんな二人のやり取りに、世界三位の男が加わる。

「お二人さん、俺の存在を忘れてもらっては困る。虎視眈々とあん・・・

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グダマ・モホホフ・アウィッチ族の習性

16/11/07 コメント:0件 つつい つつ

 今月の森の通信では、愛らしくてみんなに愛されるグダマ・モホホフ・アウィッチ族の興味深い一日を特集します。
 まずグダマ・モホホフ・アウィッチ族は朝日が昇ると、みんな果樹園に集まります。
「やあ、みんなおはよう。爽やかな朝だね」
「おはよう。今日も素晴らしい一日になりそうだね」
「今日も太陽が顔を出してくれたことに感謝だね」
 方々で明るく元気な挨拶が交わされると、何・・・

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【あまりにもありふれた捨てゼリフ】

16/11/07 コメント:0件 吉岡幸一

 救急急患センターの待合室には十数組の患者と付添人がいた。
 休日の深夜、一般の病院は開いていない。急に体調をくずした人達がここには集まってきていた。ここは内科と小児科が一緒になっている。多くの大人は付添できていた。夜になって体調をくずした子供、特に赤ん坊から幼児の数が多かった。
 親は心配そうに子供の肩を抱いたり、顔を覗きこみながら話しかけたりしている。子供はぐったりとして椅子に横た・・・

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顧問の先生、助けたい!

16/11/06 コメント:2件 あずみの白馬

「私、やめます!」
 西崎みはるはビデオに目をやりながら、一年前の捨てゼリフを思い出していた。

 長野県北部にある安曇野高校、秋の文化祭を終えて、木々が真っ赤に色づいている。
 新聞部部長のみはると、副部長の白井康永は、体育館で行われた演劇のビデオを見ながら記事を書いている。
 生徒たちの熱演を見ながら「これを見ると、思い出すな……」と、みはるは康永に思い出話をはじ・・・

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新たな一歩

16/11/05 コメント:4件 浅月庵

 自分への周りからの印象は、なかなか覆すことが難しい。
 人を傷つけることしか興味のない、鬼のような漢。それが俺のキャラ。

 本当は学校帰りに仲間とお茶したり、カラオケで遊んだり、そういう青春の過ごし方を求めていたんだ。

 ーーそれなのに俺は、今日も人をぶん殴ってる。

 キミーと名乗る華奢な男。こいつが俺に喧嘩を吹っかけてくる頻度が一番高い。
・・・

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セルフクッキング食堂

16/11/05 コメント:2件 かつ丼

亮太は日曜日は下宿の傍の中華料理屋で昼飯を食べるのが習慣であった。大学のキャンパスに隣接したその食堂は安くて美味かったが、他の飯屋との競争もあってあまり混むことはなかった。店の名前はシルクロードといったかな。日曜日に朝飯を食べない亮太は決まって開店時間ちょうどの十一時に店に入ったから、たいてい彼がその日一番の客であった。そういうわけで、三十代とおぼしき店主とは顔見知りであったが、普段立ち入って話を・・・

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呪いの言葉

16/11/04 コメント:0件 j d sh n g y


「あなたはこの先きっと誰にも愛されることはないのよ」
神川唯はそう言って鈴木悟の元を離れていった。
その捨て台詞は、静かに彼の心に沈んだ。
あれから一週間、悟は鏡を見ることが多くなった。
それまで彼は自分の性格にそれほど問題を感じたことはあまりなかった。
しかし彼女の言葉は彼を震撼させた。
一度すべてを一つ一つ確認しな・・・

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呪いの言葉

16/11/04 コメント:0件 j d sh n g y


「あなたはこの先きっと誰にも愛されることはないのよ」
神川唯はそう言って鈴木悟の元を離れていった。
その捨て台詞は、静かに彼の心に沈んだ。
あれから一週間、悟は鏡を見ることが多くなった。
それまで彼は自分の性格にそれほど問題を感じたことはあまりなかった。
しかし彼女の言葉は彼を震撼させた。
一度すべてを一つ一つ確認しな・・・

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ココアの缶

16/11/04 コメント:0件 有色 彩

 走った。全力で。絶対に追いつきたかった。それ以外頭になかった。
 君に興味を持ちだしたのは大学に入って三年目。私にとっては遅すぎる出会いだった、と思う。ゼミで一緒のクラスになったのだが、そのときは特に何の印象も持っていなかった。ただ、このクラスは座席指定か、前の席になったら嫌だなあ、とそんなことしか思っていなかった。
 座席を決めるくじを全員引き終わり、決まった席に各々着いていく。そ・・・

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人生おみくじ‼

16/11/03 コメント:0件 みや

私はくじ運が悪い。
おみくじ、宝くじ、懸賞、近所の商店街の福引、年賀状の抽選、今迄生きてきた14年の人生の中で何かのくじに当たった試しが一度も無い。

おみくじは大体が凶。良い時で末吉。宝くじはお小遣いを貯めて奮発して10枚買ったらもれなく付いてくる300円のみ。懸賞は応募してもことごとくハズレ。近所の商店街の福引は決まって白玉。年賀状の抽選は切手シートすら当たった事が無い。

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アレハンドロによろしく

16/11/03 コメント:0件 佐川恭一

 私は幼稚園のときからいじめられ、小学校でもいじめられ続け、中学の二年生で不登校になりました。すごいいじめられ方だったので、これでもよくもった方である。「お前、よくやった方だよ。」そういってくれるのは、盟友アレハンドロです。アレハンドロはまことにこのようにいう。「おれがお前だったら、年少組のときにぶったおれてたぜ。」私にはそれがアレハンドロの優しさであるということがわかる。「ああ、そうだろうな。」・・・

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イザムαXZe星のまち人

16/11/02 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

イザムαXZe星はまっていた。1千万年、一億年、十億年―――最初は星のかけらにすぎなかったイザムαXZe星が、いまのように威風堂々とした惑星になるまでの時間を体験した彼に、そんな歳月など瞬く間の出来事にすぎなかった。
まてばまつほど期待はふくらんだ。彼は、歓迎のためのお膳立てをすることにした。まず、大気を生み出した。太陽の熱に蒸気となった大気が冷えて地上に雨をもたらす光景をみていると、頭のな・・・

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母の言葉

16/11/02 コメント:0件 新木しおり

「あんたなんか産まなければよかった」
 それは母が家を出ていく際に放った言葉だった。

 都内のアパレルショップに勤める私は、それなりにやりがいを持って仕事をしていた。接客が苦手だという知人は多かったが、私はそうは思わない。お客さんと関わり触れ合うことは、私の心を温かくした。私は毎日が楽しかった。輝いていた、と言ってもいいかもしれない。
 その日は初冬の寒さが肌を刺し、また・・・

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結婚

16/11/01 コメント:0件 黒縁

純白のドレスを着たこの女。
黒のタキシードを着たこの男。

俺は今日、幼馴染の思井 遥(おもい はるか)と。
私は今日、幼馴染の一途 叶(いちず きょう)と。


結婚する。


「遥!おめでとう!」
「おめでとう!」
「叶ーーおめでとうーー!!」
「幸せになれよ!!」

飛び交う友人達からの祝福の言葉。

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一過

16/10/31 コメント:0件 ゆうけんぐんばい

 番号札3番のかた、という声が聞こえた。手札を確認してから、そちらを見る。カウンターの上に並ぶピーポくんの最後尾にひょっこりと顔がある。五十路ほどの女が顔を出し、こちらを見ている。
 平日の朝、客は俺しかいない。女に通帳と印鑑、そして今しがた別のカウンターで書いた用紙を差し出す。キャッシュカードはありますかと訊かれ、ありませんと答えた。
 「Eco通帳に切り替えておりますね?」
・・・

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ノーベル賞は、、、ボブ・ディラン

16/10/31 コメント:0件 かつ丼

亮太は村上春樹のファンで、彼の著作は全部読んでいた。世界中のハルキストの例に漏れず、毎年十月になると、亮太は期待と不安が混じった複雑な気持ちになる。なぜなら村上春樹は毎年のようにノーベル文学賞の候補になりながら落選することを繰り返しているのだから。そして今年もノーベル文学賞の発表をリアルタイムで見ようと、パソコンの前で、ノーベル財団のウェブサイトの実況中継をオンにして待っていた。亮太はこんなことを・・・

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はるくんとうめぼし

16/10/30 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 はるくんは、三さい。
 おいしいものがだいすきです。あまいおかしはもちろん、つけものもすきです。
 カレーライスには、ふくしんづけ。
 カツ丼には、きいろいたくあん。
 はるくんは、パクパクおいしそうに食べちゃいます。
 
 おかあさんが、
「はるくん、おばあちゃんが、うめぼしをおくってくれたよ。食べてみる?」
と、びんに入った赤いうめぼしをひとつ・・・

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Cute brother

16/10/30 コメント:2件 かわ珠

 私の弟はたぶん、世界で一番かわいい。
 クリクリとした綺麗な二重の目はとても愛らしくて、小動物のよう。鼻筋はピンと真っ直ぐ伸びていて、唇の大きさは少し控えめ。眉は少し下がり目でとても優しげな印象を彼に添える。髪は少し天然パーマ気味で全体的に緩やかなウェーブがかかっている。そのクセっ毛を気にしているのも愛らしい。
「おねいちゃん」
 と、彼は私を呼ぶ。「おねえちゃん」ではなく「お・・・

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名もなき話

16/10/30 コメント:0件 ミラクル・ガイ

 「出る杭は打たれる!出る杭は打たれる!」そう連呼しながら男は己の性器を勇ましく上下にしごいていた。絶頂に至るまでの数分間、途中「朱に交われば赤くなる!」に代わることもあったが、しかし9割方の時間男は「出る杭は打たれる」をシャウトし続けた。一呼吸着いてから、畳の上、無作為に散った己の精液たちを見下ろすと「火のない所に煙は立たぬ」と言い満足げに微笑んだ。それからおもむろに部屋を出て台所へ向かい蛇口を・・・

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すぐ戻る

16/10/29 コメント:0件 三風党

「アイシャルリターン」
 千九百四十二年三月十二日、彼はマニラ湾から魚雷艇で脱出した。
「今に見ていろ」
 両の拳を強く握り、歯を食いしばった。
 目は赤く充血している。鬼気迫る様相であった。
「俺は必ず戻ってくるからな」

 そして彼は戻ってきた。
 人生は波の如し。誰しもが高い時には天井知らずと思い、低い時には地の底を思う。
 しかし、大抵・・・

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孤独なアイデアマン

16/10/29 コメント:0件 かつ丼

青木は社内でちょっと変わった存在だった。その理由は青木本人も彼の同僚も良く理解していた。彼の所属する研究開発部門が提案する新しいアイデアは殆ど全て彼が考え出しているからである。もちろん全部が全部成功するわけではなかったが、半分以上は製品化に繋がっている。そして彼のアイデアはかなりユニークなものが多く、製品化された場合、競合が全くない状態であった。例えば、リニア中央新幹線に使われているテクノロジーの・・・

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捨て台詞を聞きたくて

16/10/29 コメント:0件 せんさく


「覚えてろ!」

戦いの終わりに君はいつもそう言う。
そう言って踵を返し去って行く。

君と僕はもう幾度となく戦いを繰り返した。
君は幾度となく同じ捨て台詞を吐き、僕は幾度となくそれを聞いた。
僕はいつもトドメをささなかった。

でも、それも今日でおしまいだ。

お互い満身創痍で、今ではなぜここまでして戦っているのかわからな・・・

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サムシング・グレート

16/10/29 コメント:0件 比些志

地球侵略をねらうマリモ型宇宙人にとらえられたヒネタ博士は、自宅の地下室の中でイスにしばられたまま、何時間も尋問を受け続けた。
「この尋問もそろそろ終わりだ。オマエら人類は明日滅亡し、この星は我々のものになる。さあ、最後にいいのこすことはないかね?」
博士はなにもいわず、ただ首を小さくよこにふった。
「………つくづくオマエらほどおもしろい生命体はない。これほど未熟でひ弱な意思と体・・・

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絶望のふち

16/10/28 コメント:2件 こぐまじゅんこ

す てられた子猫のように
て のぬくもりを求めている男の子。
ぜ つぼうのふちに立っている
り ュックサックをおろし
ふ −っと ためいき
を つく
は きだしたいことは
い っぱいあるけれど
て きとうな言葉がみつからない
も うすぐ日が暮れる
す てゼリフをはいたら す
っ きりするかな?
き っと なにも かわらない

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何度も現れる白髪に白髭の男

16/10/28 コメント:0件 ポテトチップス

 玄関ドアが開く音がした。壁時計を見ると深夜2時を少し過ぎていた。
 京子は椅子から立ち上がり玄関に向かうと、玄関横の階段を上がろうとするタクミの背中に向かって怒鳴った。
「アンタ! 何時だと思ってるのよ!」
「うるせー!」
 幼少期は動物にも優しく接する、心優しい子供だった。中学を卒業し高校に入学してから、タクミは不良仲間と遊ぶようになった。
 高校2年生になったタ・・・

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最後のお勤め

16/10/27 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

居酒屋の、くすんだ壁を背にして二人の男たちが、すでに目のふちをあかく染めて、ビールを飲み交わしていた。
二人は会社は別でも、さる週刊誌の記者たちで、たまにこうしてのみながら情報交換をしていた。いつもいつも、これといったネタがあるわけではない。今夜もその口で、二人がおでんの出汁をほめたり、若い女性客を品定めするのにもあきてきたころ、体格の大きいほうが、ふいに思いだしたように、
「天才スリ・・・

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ちっぽけなプライド――

16/10/27 コメント:6件 葵 ひとみ

 小生、猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチがまだ無名だった頃の御話である――


小生はハード・オンリーのスタッフからJAZZ喫茶のスタッフまで、

いわゆる、フリーターをしながら空いた時間は猫多川賞を目指して、
日々、純文学の小説を執筆していた――

ニャンキチがJAZZ喫茶のスタッフとハード・オンリーのスタッフをしていたことには理由がある。

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硝子の天才

16/10/26 コメント:0件 かわ珠

 後半25分、0対0で試合は膠着状態。
 審判が笛を吹き、試合を中断する。タッチラインには高宮がウォーミングアップを終えて立っている。交代はいつも通り俺だ。悔しいが、こいつが入ればチームは間違いなく勝てるだろう。念願の全国大会まであと一勝。この采配はきっと正しい。それでも、俺はこの交代に納得はできない。
 けれども、監督の采配は絶対だ。審判に促されながら、俺は渋々タッチラインへと向かう・・・

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二度と来るか、アホ!

16/10/26 コメント:0件 水面 光

女はいくつになってもゴシップ好き。私は噂話をされたからと言って気に病むような人間ではない。「またか」と少々残念な気分にはなってしまうが。だが、考えようによってはそれも人生のお楽しみの一つだ。自分が変わればいいだけのこと。私が本当に残念に思うのは常に機嫌が悪く、たちも悪い、他人のことを慮れない連中の存在だ。それも考えようによってはどうでもいいことだ。特に客商売ではそんなことをいちいち気にしていたので・・・

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貴方の気紛れが起こらなければ、また明日

16/10/25 コメント:0件 かわ珠

「もう、別れよう」
 そう吐き捨てるように言い放ち、私の返事も聞かずに、彼は私に背を向けて歩き出した。その背中は昨日見た彼の背中とまったく同じものだった。少し猫背気味で丸く、優しげな後ろ姿。
 彼の『もう別れよう』という言葉を私は今日までにいったい何度聞いてきたことだろう。そして、これから何度聞くことになるのだろう。私は願う。何度だっていい。何回だって、その言葉を聞かせて欲しい、と。<・・・

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さみしがりヒールズ

16/10/25 コメント:0件 結簾トラン

「今度会ったら覚えてろ!」
「今日のところは見逃してやる!」
「これで勝ったと思うなよ!」

 寂しがりである。まごうとこなき、寂しがりやの台詞である。
 彼ら悪役、ヒールたちの頭に「ヒーロー若しくはヒロインが綺麗さっぱり自分のことを忘れ去ってしまう」という観念は存在していない。もし万が一、ヒーロー若しくはヒロインがうっかり忘れ去ってしまったらさて、ヒールズはどうする・・・

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今日のところは

16/10/24 コメント:0件 みんなのきのこむし


「今日のところはこれで勘弁してやる。次は容赦しねぇぞ」
 小鬼は泣きそうな表情で飛んで逃げ、妖怪特捜員のニャア太と僕を引き離すと、よくある捨て台詞を吐いた。
 ろくろ首の僕は頭部を身体から飛ばして追跡しようとする。
猫又のニャア太が止めた。
「もういいにゃ。あいつは当分悪さをできにゃい。」
「そうだね。かなり叩いた」
 小鬼は大した妖怪ではなく、人知・・・

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悪役は俺の得意とするところ

16/10/24 コメント:1件 蒼樹里緒

 街灯の光しか射さない路地裏で、一人の青年に暴漢たちが殴り倒されていく。そのあまりの強さに、暴漢のリーダーがビビった。
「ちくしょう、憶えてろよ!」
 ありきたりな捨て台詞を喚くのは、間違いなく自分の声だ。
 ――あ、今日だったのか。
 小さいラーメン屋のカウンター席で、晩飯の味噌ラーメンを食いながら、俺は店内のテレビをちらっと見やる。土曜夜九時から放送の学園ドラマ。主演は・・・

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光は漆黒の闇の中から――

16/10/24 コメント:5件 葵 ひとみ

 私の名前はサヤカ、施設で育った私には、生まれつき両親がいなかった。

今日もモニターごしの世界で欺瞞に充ち満ちた世界がエンドロールなしで続いている


お金のない私は、道化師のように、15歳の頃から神奈川の川崎の路上で相棒である施設からもらってきたお古のギターと歌い続けてきた。
それが、ハンパな人たちや水商売の人たちの心の琴線に触れていつも無数の人だかりがで・・・

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