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第118回 時空モノガタリ文学賞 【タイムスリップ 】

今回のテーマは【タイムスリップ】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/11/07

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/09/12〜2016/10/10
投稿数 99 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評 今回は比較的投稿数が多かったですね。やはり定番であり、今も人気のテーマなのでしょう。今回一番多かったのは親しい人々に言い残した言葉を伝えるといった内容でした。これは感情的にはよくわかりますがなるべく他作品とかぶらないようにするのもやはり大事かと思います。一方で、凝った内容であるため、事実関係の説明がわかりにくくなったような作品もいくらか見受けられました。他の部分が良い場合も多いだけに、惜しいですね。今回はタイムパラドックスなど、そもそも矛盾が根本的に生じやすいテーマだけに、(多少はそういう部分が残ってしまうとしても)それをいかに最小限にし、説得力を持たせられるか、かつオリジナリティとわかりやすさを両立させられるかが一つの基準にはなったかと思います。最終選考作品の「離婚と幸せな家庭」「幸せの基準」「時空を超え出会った老人と男」「これが、最後の親孝行」は人生への洞察がとても光っていたと思います。コンテストのテーマとは別に、自分なりのテーマ性がしっかり描かれているとやはり印象が強くなります。「影踏み」「やってきた男」「先の話」はタイムスリップの特性を生かしたユーモア作品で、シンプルで切れ味のいいオチが楽しかったです。「ある意味再開」「百年後に会おう」はノスタルジックで他にない魅力が新鮮でした。特に後者はタイムスリップの扱い方がユニークで目立っていたと思います。「地獄時計」は無限ループのまさに地獄的世界が徹底していて、クナリさんらしい強烈な個性が魅力的でした。

入賞した作品

1

【繰り返される時と彼の笑い】

16/09/25 コメント:0件 吉岡 幸一

 この時間を繰り返すのは、もう何度目だろうか。
 午前八時、大学に行くためにアパートを出て、徒歩十分のJRの駅まで行って、電車に乗り込みドアが閉まった瞬間、彼はアパートの玄関ドアの前に立っていた。
 時計の針は午前八時を指したまま。電車に乗り込んだ瞬間、時間が巻き戻り彼はアパートにタイムスリップしていたのだ。
 アパートに入ろうにもドアは開かない。鍵は鍵穴にささらず、ドアは開くこ・・・

1

雨の匂いは遥か彼方に

16/09/21 コメント:0件 かわ珠

 傘を回すと、私はタイムスリップすることができた。
 時計回りで未来へ、反時計回りで過去へと。
 だから、雨の日はいつも傘をクルクルと回して遊んでいた。
 原理は不明。理論も理屈も理由もわからないけれども、傘を閉じれば、いつでも元の時代に帰ってこられたし、困ったことは一度もない。
 世の中に不思議なことの一つや二つ、あったって別にいいじゃないか。むしろ、過去や未来のいろんな・・・

2

願い

16/09/13 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

俺たちは、森の奥にみつけた小屋をめざして、じりじりと包囲のわを縮めていった。
これまで嫌というほどゲリラたちと死闘を繰りひろげ、あちこちにしかけられた地雷の恐怖にみんなはほとんど極限状態に達していた。こんなときだ、人間の本性が露わになるのは。
Kなどは、欲情に目を爛々ともえあがらせ、どこかに村の女が隠れていはしないかと、戦いよりもむしろそちらのほうに神経を傾けているようだった。おまけに・・・

最終選考作品

1

【離婚と幸せな家庭】

16/09/23 コメント:1件 吉岡 幸一

「もう一度やり直しませんか」
 家庭裁判所から出てきた彼に声をかけてきたのは杖をついた老人だった。黒いカシミアのロングコートを羽織り、黒い革の中折れ帽を被っている。背筋は伸びて、黒縁眼鏡の奥からのぞく瞳は透き通っている。
 裁判官だろうか。一瞬そう思ったが、すぐに首を振った。見知らぬ裁判官が裁判所の門の前で声をかけてくるなんてあり得ない。それにもう離婚は正式に決まったことだ。いまさらや・・・

1

幸せの基準

16/09/22 コメント:2件 つつい つつ

 島崎は家の権利書をサッと、取り上げる。七十を越えた老婆が愕然とした表情で島崎を見る。
「じゃあ、佐々木さん、一ヶ月以内にここ出て行く準備しといて下さいね」
「家まで失って、この先どうやって生きていったら……年金もないのに」と老婆は、おいおいと泣きじゃくる。
「準備出来たら連絡下さいね」
 島崎は泣き崩れる老婆に眉一つ動かさず一礼すると部下の水口と共に家を出た。

13

地獄時計

16/09/16 コメント:10件 クナリ

 肋骨の間に滑り込む、包丁の感覚で意識が飛びそうになる。
 分かっているのに防げないなんて。
 この激痛を、絶望感を、僕は何度味わえばいいのか。



 午前零時。
 僕の、中学校卒業式の日。
 部屋のベッドで目を覚ます。
 僕はたった今、約八時間後の未来からタイムスリップして来たばかりだ。
 僕の能力は、当日中であればその日の午前零時・・・

1

影踏み

16/09/15 コメント:0件 山盛りポテト

穏やかな昼下がり、ポカポカとした陽気とは裏腹に俺の心はどんよりと曇っていた。
原因はたったひとつ。俺がコツコツと貯めていた金庫の中の金がある日突然消えてしまったのだ。家一軒がたつような金額だ。
その金をあてに色んなところでローンを組んでいた俺は完全に首が回らなくなってしまった。
そして連日のように借金取りが家に押しかけるという有様だ。
「おーいいるんだろ!さっさと開けろよ!・・・

3

やってきた男

16/09/15 コメント:2件 蹴沢缶九郎

道を歩いていると、突然目の前に現れた見知らぬ男が、私を睨みつけて言った。

「おい、お前に言われた通り来てやったぞ」

しかし、そう言われた所で私はこんな男など知らない。

「すいませんが、どちら様ですか? 誰かと間違えているようですが…」

「いいや、確かにお前だ」

男からは怒りを抱いている様子が感じて取れた。私は自分の気づかぬ内に、・・・

2

時空を超え出会った老人と男

16/09/15 コメント:4件 ポテトチップス

 村井は腕時計で時間を確認した。午後5時30分ちょうど。ポケットからタバコを1本取り出し、火をつけて吸うと大きくむせた。
 赤く染まったタバコの先を見ながら、なんて粗悪品だとこの時代のタバコに雑言を浴びせる。もう一度煙を肺に吸い込むと、幾分体は抵抗力を持ったのかむせずにすんだ。
 村井は短くなったタバコを側溝に放り捨て、新しい1本にライターで火をつけた。煙を吸い込みながら空を見上げる。・・・

6

これが、最後の親孝行

16/09/14 コメント:9件 冬垣ひなた

 認知症を患った佐和子が、粥の入った椀を畳の上にぶちまける。茂は苛立たしくて仕方がなかった。
「ああ……う……」
「飯も一人で食えねえのかよ」
 茂の家は、ずっと母一人子一人だった。父親は、田舎娘の佐和子が身ごもるとあっさり捨てて逃げた。生まれた茂は、荒んだ幼少期を送り、家の借金を返済するため馬車馬のように働かされた。挙句の果てに勤めた会社は倒産し、60を目前にした茂に独身無職と・・・

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先の話

16/09/13 コメント:0件 蹴沢缶九郎

夜、人気のない道を歩いていた青年にスーツ姿の男が声をかけた。

「こんばんは、君は川口君だよね」

「そうですが、あなたは誰ですか?」

「突然こんな事を言って信じてもらえないだろうが…、簡単に言うと、私はタイムマシンに乗り、未来の地球からやってきた者だ」

確かに何を言っているのかと思ったが、いたって真面目な口調の男に酔っぱらっている様子はなく、不・・・

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百年後に会おう

16/09/12 コメント:4件 Fujiki

 人生で一度だけ小説を書いたことがある。十六年前の二〇〇〇年、大学二年の夏休みを目一杯使って書いた。僕は文学青年だったわけではなく、読む本も新書や実用書ばかりだった。小説を書くのは後にも先にもこの一度きりになると思う。
 執筆のきっかけは、高校一年の時から五年越しで付き合っていたガールフレンドだった。名前は宮里遥夏。自他共に認める活字中毒者だった。常に文庫本を持ち歩き、空いた時間にはページに・・・

投稿済みの記事一覧

10

定められた人生よりも自分で決める人生故に

16/10/10 コメント:2件 石蕗亮

 逝く時は仰向けでお天道様を見ながら堂々としよう。
毒を呷った男はそう思いながら重く感じる我が身を捩るように動かした。
徐々に身体の自由が利かなくなり瞼さえも重くなった。
閉じた瞼越しに紅い視界を感じる。
その紅い世界が急に白く眩しくなってきた。
 あぁ、これが死というものか。
男は畏れることなく自身の最期を受容していた。
「これ、男よ。」
光から声・・・

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re-trip

16/10/10 コメント:0件 杉宮詩乃

「ショウくぅぅぅぅん……、眠いですー……」
「ほらほら起きろ、飛行機行っちまうぞ」
 白く薄ぼんやりとした地平線から、ぎらぎらした炉のように赤い太陽が覗く朝の五時。俺と唯奈は、人もまばらな空港にいた。
「ううぅぅぅ」
「引っ付くな歩け。とりあえずキャリーだけ手放すなよ」
 しなだれかかってくる唯奈を立たせ、彼女の肩掛けバッグを持ってやる。未だむにゃむにゃとよくわからな・・・

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カネゴンの貯金箱

16/10/10 コメント:1件 むねすけ

 時間を司る神様クロノスが今どこに隠れているか、とうとう私に情報が入った。やった、やった。それも私以外にまだ誰にも知れていない情報だという。日頃からパチンコの景品交換屋として便宜を計ってあげたおかげだ。情けは人のためならずってね、帰ってきたよ情け、利子で太ってお利口さんにも帰る家を間違えもせず。
 クロノスはドスケベだ、いつでも女の胸の中にいる。飛び出させるのは容易。隠れた女の胸の水を沸騰さ・・・

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学生街の喫茶店

16/10/10 コメント:0件 長月五郎

 グーグルのストリートビューでアメリカの街をさ迷っているのにも飽きた頃、不意に母校の大学を思い出した。さっそくクリックを何度か重ねると、パソコン画面に懐かしい風景が映し出された。見覚えのあるビルや店、看板。二十年は優に訪れていないので、全く変わってしまった場所もある。
 画面を進めて行くと、一つの路地が画面の隅に映った。あ、ここは、と思う。学生の頃、友人たちと一緒によく行った喫茶店が奥にあっ・・・

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あの日に……

16/10/10 コメント:0件 長月五郎

「会長の決意は固いのでもう何も申しません。お年ですから無理をなさらずに、それから歴史の大きな改変につながるような事はなさらぬように」
「うむ、わかっておる。さあ、早くスイッチを」
 ウィーンと言う機械音がすると同時に目の前が真っ暗になった。
 気付くと、私は道路に立っていた。目に見えるのは小さな自分の手、背中が重いのはランドセル。やった! 私は小学生の頃の自分の体に戻ったのだ。<・・・

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二個目の氷砂糖は味がない

16/10/10 コメント:0件 むねすけ

 映画は覚醒状態で見られる夢だと言う人がいましてね、それならと思いつきました。人間誰しもあの時の失敗をやり直せたらと考えるものです。しかし人間が想像できることは全て実現できるとはいきません。いえ、いくかいかないか未来は果てないものですので、断言することは恥を被らないために避けることにしますが、しかし、どうやら私たちの声のあるうちにタイムマシーンなる時空遊泳のおもちゃはできそうもないですからね。

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タイムレンジ

16/10/10 コメント:6件 泡沫恋歌

「ついにタイムマシンが完成したぞ!」

 H・G・ウェルズの古典的SF小説の時代から、言い続けられたそのベタな台詞を、今、口にする科学者がいる。
 彼は大和工科大学、工学部物理学研究室の室長、Dr.山田その人である。
 天才的頭脳をもつ科学者だといわれるが、いったいどんな研究をしているのか、その詳細は明らかではない――。
 Dr.山田研究室、このラボには博士と助手の佐・・・

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カトリセンコウ

16/10/10 コメント:0件 ケイジロウ

 秘書の駿介が、加奈子のために昼食のかき揚げ丼を運んで来た。トレーの上にはかき揚げ丼の他に、足りていない栄養を補うためのサプリメントが数種類載っていた。
「ありがとう」
加奈子の勤める某旅行会社の社員食堂には、その時、5,6人が、無菌の白い壁に向かってそれぞれ腰を下ろしていた。それぞれ何かを口に入れながら、それぞれの秘書と何か話をしていた。秘書と言っても人間ではない。ロボットである。そ・・・

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スリップキャット・レース

16/10/10 コメント:0件 キャプリス

 澄み渡った秋空のもとで第8回目のスリップキャット・レースの決勝が行われようとしていた。7年前に日本の片隅で細々と始まったこの催しも回を重ねるうちに参加者が増え、今年度は世界中の予選を勝ち抜いた5組がここ栃木県のツインリンク茂木に終結したのだ。

 登場順に場内アナウンスで紹介が始まった。
「ゼッケンナンバー1、ドイツ代表ジークリンデ。ブリーダーはヘルムート・シュタット。予選記録・・・

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命の光

16/10/10 コメント:5件 泡沫恋歌

 たまらなく居心地が悪かった。できれば走ってここから逃げ出したい。
 古くて陰気な産院の待合室、大きなお腹の妊婦が二人と癌険だろうか中年の女性がひとり、そして未婚の私だ。お腹の中には新しい命が宿っている、選択肢はひとつ、生むか、生まないか、今の私には産めない……今日は中絶の相談でここへやってきた。
 最初から分かっていた、彼が本気じゃないことを……上司の娘と付き合っているという噂だった・・・

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女たちの咆哮

16/10/10 コメント:0件 宮下 倖


 女は俯いていた。細い肩が力なく落ち、時折小さく震えている。 

「親として無責任だとは思いますけどね、いつかこんな日がくるんじゃないかって考えてましたよ。自分の産んだ娘がわからないんです。あの子が何を考えてるのか、まったく理解できない。だからいつかこんな日が……娘が犯罪者と呼ばれる日がくるんじゃないかって、ねえ。そんなこと思うなんて酷い親ですよ。ええわかってます。……あれは小・・・

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不器用トラベラー

16/10/10 コメント:0件 宮下 倖


 タイムスリップなんて、そんないいのものじゃないよ。
 エリは顔をしかめて鼻の頭に皺をよせると、大仰に首を左右に振った。

「そうなのか? 考えるだけで楽しそうだけど」

 目を輝かせるタクに視線を向けたエリは、呆れ顔で肩を竦める。公園を吹き抜ける春風に目を細め、エリは買ったばかりのクレープに齧りついた。
 黙々と口を動かしている間タクがじっと見ているの・・・

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お楽しみはこれからだ

16/10/10 コメント:0件 高橋螢参郎

「おい、今すぐその女から離れるんだ!」
 何もない空間にぬっと開いた穴から現れたおっさんは、おれと彼女の姿を認めるなり大声でまくし立ててきた。
 大した超常現象っぷりだが、もう少しTPOってやつを弁えて欲しかった。おれはその時面倒くさい愛撫を一通り終え、まさに彼女とひとつになろうとしていたところだったのだ。
 彼女もシーツに産まれたままの裸身を包んで、ベッドの隅で脅えてしまってい・・・

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ずんだ餅のゆくえ

16/10/10 コメント:0件 PineLeaf723

 枝豆農家の人々が見守る中、マスク姿の青年二人が、ずんだ餅の詰まった段ボール箱を軽トラックに積み終えた。
 村長が声をかけた。
「高く買ってもらえて感謝しとるよ。師匠さんも弟子くんも、元気でな」
「これ、車の中で仲良く食べてちょうだい」
 村長夫人が青年たちにパック容器を手渡した。箱詰めで余った、ずんだ餅だ。
「短い間でしたが、お世話になりました」
「おばちゃん・・・

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覆水盆に返らず

16/10/10 コメント:3件 光石七

 学生時代に所属していたイベント企画サークルには伝統的な余興ネタがいくつかあり、コント『タイムマシン』もその一つだった。
 登場人物は博士と助手の二人で、遂にタイムマシンが完成したというところから話は始まる。完成に至るまでの苦労話をテンポよくやりとりし、グラスにジュースまたはビールを注ぎ、乾杯して共に一気飲みする。グラスを空にした後、さっそくタイムマシンを試してみようと一緒に五分前に戻る。す・・・

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俺の話をしよう

16/10/09 コメント:0件 ミラクル・ガイ

 けたたましいアラーム音で目が覚めた。時計は午前九時を指している。そうだ、羊の数を数えてみよう。寝る前に羊を数えた人間は世界にごまんとおれども朝目覚めたその瞬間に数え始めた人間は人類史上俺が初めてかもしれない。羊が一匹、羊が二匹・・・。十匹まで数えたところで、腹筋に思い切り力を入れベッドから勢い良く、恐ろしく洗練された美しさで、俺は飛び起きた。キッチンへ向かう。冷蔵庫から紙パックのアイスコーヒーを・・・

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16/10/09 コメント:0件 ハヤシ




 呼吸が苦しい。体が熱い。頭が重い。脳みその代わりに鉛でも埋め込まれたみたいだ。ノドがジンジンと痛む。冷たい空気が痛みに触れ、咳き込む。息が出来ない。いや、実際は出来ているのだろうが、もう吸っているのか吐いているのかさえ分からないほど痛みや熱や一向に止まることのない咳に振り回されていた。

 ベッドの上で縮こまりながら嵐が過ぎゆくのを待つ。耐えろ、耐えろ。永遠に・・・

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訳あり物件に穴吹時津風君がいた

16/10/09 コメント:0件 鮎風 遊

 少女を誘拐し、マンションに6ヶ月間監禁。
 今朝9時のことだった。私は琴音(ことね)ちゃんを連れて交番に向かうところ誘拐犯として逮捕されました。
 即座に身柄は拘束され、その後何時間もの取り調べを受け、すでに深夜となってしまいました。現在はやっと解放され、ただ今鉄格子の冷たい部屋の中です。
 もちろん私は犯人ではありません。
 しかし、なぜこんな顛末になってしまったのでし・・・

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記憶の年輪

16/10/09 コメント:0件 比些志

記憶には年輪があることがわかった。大脳皮質の裏側に年輪状のひだが見つかったのだ。そのひだを年代ごとに刺激すると特定の時代の記憶が脳内によみがえる。つまり外部から個人の特定の記憶をよみがえらせることが可能になった。とくに眠っている間にこの治療をおこなうと完全にその時代にタイムスリップした気分になる。
この画期的な発見は記憶喪失やアルツハイマーの治療、犯罪捜査などへ利用されはじめている。そし・・・

1

提灯小僧

16/10/09 コメント:1件 みんなのきのこむし

「いた」
 思わず小さい声で言った僕の左肩で、三毛猫のニャア太が頷いた。
 僕たちの視線の先では小雨の降りしきる二十三時の歩道を、顔一面を血のような赤に塗った長髪で和服の少年が、自分と周りを照らす大きな提灯を下げて淡い影を従え、足早にまっすぐ進んでいる。傘はさしていない。
 まばらな通行人たちはその様子を、今時流行らないストリート・パフォーマンスと思っているようで、少し驚く以上は・・・

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春の化け物

16/10/08 コメント:0件 待井小雨

 秋の早朝、日直すら登校してこない時間帯に榎本は教室に現れる。
「あ――おはよう、須田君」
 榎本は教室の戸を開けて、一瞬驚いた顔をする。独り言のように「わぁ、また来られた」と呟いた。
「榎本。おはよう」
「いつも早いね。誰も登校してないじゃない」
「そっちこそ」
 そう返すと、榎本は肩をすくめてみせる。
「僕はホラ、時間とか選べないから」
 そうい・・・

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受け入れる

16/10/08 コメント:0件 OSM

 捗らない執筆に嫌気が差し、ホフマンスタールは自宅を出てウィーンの街を歩き始めた。その時点では、時代は確かに十九世紀末だった。それがどういう訳か、歩いている最中に突然、何の前触れもなく、二十一世紀に切り替わった。
 その瞬間、自分は二十一世紀のウィーンにタイムスリップしたのだ、とホフマンスタールは悟った。その事実に疑いの余地はないように思われた。それ故に、現在自分が身を置く世界が本当に二十一・・・

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未来を見て来たよ

16/10/08 コメント:0件 かめかめ

「昨日、俺、タイムスリップしたんだよ」

「タイムスリップ? なんだそりゃ」

「時空をわたったんだ。未来へ」

「ふうん」

「あ! 信じてないな」

「まあ、いいから話せよ。続きはどうなるんだよ」

「俺は午前七時十五分に起きた。いつもその時間に目覚ましをセットしているんだ」

「ふんふん」

「昨・・・

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未来カレー

16/10/08 コメント:0件 ミラクル・ガイ

 昼休みが終わる頃、人のまばらになった大学食堂に工学部四年の山川は現れた。券売機に百円玉を3枚投入し「カレーM」の食券を買って受け渡し口まで歩いた。
 僕は食堂のカレーライスが好きだ。ここ数ヶ月ほぼ毎日昼ご飯に食べている。しかし好きと言ってもその味が好きなのではない。むしろこの食堂のカレーが、家庭のそれや外食チェーン店のそれに比べて著しく美味しくないということは、ほぼ毎日食べている僕はよく知・・・

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反転しても夢は続く

16/10/07 コメント:0件 さの。

 夢半ばにして、交通事故にあった。
真っ白い病室の中。けれど、僕には真っ黒な病室に見える。
花瓶に挿してある緑色の花。本当は橙色の花だ。
……ああ、本当に色が反転している。
 それでも、世界は普通に生きていけるものだ。
皆の青を赤と思えば良い。
けれど、僕にとっては違う。
「僕の夢は、航空操縦士だったんだ。」
過去形。もう、過去形だ。
色覚異常・・・

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宝石箱に秘められた想いと刻の交錯

16/10/07 コメント:0件 ちほ

 新年の祝いの鐘を聞きながら、寒さと飢えで少年は死にかけていた。彼の心は絶望だけだった。そこに、凍り付いた道を蹴飛ばす勢いで馬車が止まった。幼い少女が転がり落ちるように降り、少年の方へ駆けてきた。
「お母様、この子が欲しいわ。新年のお祝いに」
 8歳の浮浪児ジャックは、こうして6歳のメイソン家のアニーに拾われた。ジャックは、命の恩人である彼女をいつか自分のお嫁さんにし、恩返ししようと心・・・

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杉の木は見ていた

16/10/07 コメント:0件 奈尚

「神社の大杉、今月一杯で伐採されるらしいよ」
 幼なじみの七瀬がそう呟いた時には、一瞬、何のことを言っているのかわからなかった。
「根本に大きなうろのある、杉の木。小さい時、近くでよく遊んだでしょう」
 ああ、そういえば、あった。天まで突きそうな、神様のような大杉が。
 なんでも、あの杉は御神木として長く愛されてきたが、最近、根本や幹がもろくなってきてしまった。事故が起こら・・・

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未来から来たウルトラ母さん

16/10/07 コメント:0件 南野モリコ

母は自分を「ウルトラの母」と呼んだ。私はウルトラの母の娘、のぞみ16歳だ。2月の夜11時、お風呂に入ろうと寒い階段を下りると、母はキッチンで明日の朝食のパンを丸めていた。
「お母さんはウルトラの母だから、ホームベーカリーなんか要らないの」
母は料理に気合の入ったウルトラ主婦だった。パンも天然酵母を発酵させるところから始める。冬に酵母を発酵させるのはウルトラ級の難しさだと母は自慢した。母・・・

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誓い

16/10/07 コメント:2件 泉 鳴巳

『……末筆ではありますが、貴殿のご活躍を心よりお祈り申し上げます』
 流れるような動作で用紙を丸め、屑籠へ放り込む。これで通算百社目の不採用通知だ。
 大学を卒業して、もう二年。在学中から考えれば、三年近く就職活動を続けていることになる。近頃は焦燥感さえ覚えなくなってきた。
 僕はテーブルの上のスマホを取り、友美にメールを打った。
『また、ダメだったよ』
 友美とは大・・・

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リセット・ボタン

16/10/07 コメント:0件 キップル

「タカヒロさん、お気持ちに正直に。でも、私を選んでくれたら嬉しいですわ。」
「わ、私、タカヒロとずっと一緒にいたい!」

 僕は魔王を倒して世界を救うべく選ばれた勇者。これまで海を渡り、洞窟に潜り、数多くの魔物を退治し、世界中を旅してきた。その過程では父親を殺されたり、魔物に捕まって何年も投獄されたり、辛いこともたくさんあった。そんな僕だけど、これから結婚するんだ。相手はルドラス・・・

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レコード

16/10/07 コメント:0件 こんちゃん

このレコードを手にした時の事はよく覚えている。ドヴォルザークの新世界交響曲。
僕は当時、大学の管弦楽部にいた。でも、別に小さいころから何か楽器をやっていたわけでもない。
ただ、音楽が好きで、特にクラシック音楽が好きで、良く聞いていただけ。
大学に入って管弦楽部があると聞いて、思い切って門をたたいてみた。
理由は簡単。生の音が聞いてみたい。
ただそれだけで入ったんだ。<・・・

1

夢枕珈琲店

16/10/06 コメント:0件 午前4時のスープ

 夢枕珈琲店のいつもの席に座る。「なぜ」ばかりが巡る。
 なぜの答えなど見つからないまま、今日も「あなた」とここで会い、淹れ立ての珈琲を飲む。

 夢枕珈琲店は、トキオと初めて入った喫茶店だ。
 トキオは高校の同級生。性別はちがうけれどわたしたちは気の合う「友達」だった。
 高校を卒業して別々の大学へ。しばらくたってお互いの近況報告をかねて会おうということになった。<・・・

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サンクチュアリ

16/10/05 コメント:4件 そらの珊瑚

 私はしょっちゅう熱を出す子で小学校も休みがち。小学四年生になっても友達は幼なじみのカナだけだった。
 いつも汚れた服を着てて臭いと、カナは苛められていた。彼女は孤立していて、それは私も同じだった。学校は犬小屋で、私達は首輪をされた哀れでみすぼらしい犬。互いの匂いを確かめ合うようにしてひっそりと息をしていた。
 首輪をはずされた犬が束の間の自由を楽しむように、時折私達は放課後、こっそり・・・

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きっとそんな夜に

16/10/05 コメント:2件 小李ちさと

目が覚めて混乱した。景色がおかしい。私は大学の帰りで、バスに乗っていたはずだ。今だってバスには乗っているけど、使い慣れた路線バスじゃない。貸切バスで、走っているのは高速道路。隣は空席、周りに座っているのは同じサークルで活動しているよく知った人たち。何かのイベントの帰り?夢?何?
「あ、起きた?」
前の座席からひょいと顔がのぞいた。どきっとするのは片思いの相手だからか、事態について行けな・・・

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夢の中でタイムスリップ

16/10/04 コメント:0件 下山晃

僕は中高男子校で、野球一筋。6年間のうち、休みは数える程しかなかった。大学へは野球推薦で入ったものの、2年生の時に怪我をして、野球を辞めざるをえなくなった。そんなとき、ある女性と知り合う。名前は美結。「大学の講義で隣になった時、あまりにも暗い顔してるから思わず声をかけてもうたわ」と、あとになって美結から聞いた。講義で会うたびに話すようになり、飲みに行く仲になった。次第に美結を好きになっていき、野球・・・

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旅人の告解

16/10/04 コメント:0件 ドーンヒル

 千九百九十九年十二月二十四日は、思考のタイムスリップを何百回繰り返しても、必ずたどり着く終着地である。人生の終焉をカウントダウンし始めて、まもなく十年が経とうとしている。社会から隔離された空間において、唯一の話し相手である定年間際の刑務官が与えた宿題の答えを見つけたのは、つい昨日のことである。
 午前八時十二分、山手線車内で殺傷事件発生。犯人は、ナイフを振りかざして、次々と乗客を切り付けた・・・

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空っぽ人間

16/10/04 コメント:2件 キップル

 深夜零時、人気のない冬の公園。小高い丘の上にある木の枝から一本のロープが垂れ下がっている。俺は、その先端に結ばれたボーリング玉ほどの大きさの輪を見つめたまま、十分か一時間か見当もつかぬほど固まっていた。今夜は冷え込みが激しい。にも関わらず、俺は夏のような薄着で部屋を出た。手足がかじかんで痛い。しかし、もうそんなことはどうだっていいのだ。俺はすべてを失った。俺はもうこれ以上生きていたくない。そして・・・

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18回目

16/10/03 コメント:0件 矢口慧

 新しい命が、眠っていた。
 真っ白で、清潔な病室。小さなベッドに、つい先刻まで狭い胎内でそうしていたように、新生児は手足を小さく丸めた姿勢で、夢すら知らないまどろみの中にいた。
 隣の寝台に母親の姿はなく、乳児は病室にたった一人、残されている。
 ふと、気付けば。
 四方を柵で覆われたベビーベッドの枕元に、少女が一人、立っていた。
 長い黒髪に、白いワンピース、花模・・・

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九才の闇

16/10/03 コメント:0件 たま

そのmailが届いたのはわたしの誕生日だった。
『お誕生日おめでとうございます。六十五才のあなたに素敵なプレゼントがあります。今すぐお電話ください。Keiko♪』
悪質な勧誘だと思ったけど、その日は朝から雨が降って退屈していた。
『あなたの記憶のなかにだけタイムスリップすることができます。』
Keiko♪はそういった。
未来にタイムスリップできない理由は記憶がないから・・・

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世界で一番美しい

16/10/03 コメント:0件 宮瀬晶汰

「おはようございます」
 無機質な声が部屋に響いた。しかし部屋の中にいた男はその声には反応せず、コンピュータを睨みつけながらキーボードを打ち込んでいる。
「朝食の準備が出来ました、旦那様」
 その様子を見てもなんとも思わないようで女はおぼんに乗せた朝食を手近な机の上に静かに置いた。
「それでは私はこれで失礼します」
「待ちたまえ」
 退出しようとしたところを呼び・・・

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バナナでスリップ

16/10/02 コメント:3件 そらの珊瑚

 僕はこの公園で暮らしているホームレス。最近新入りになったホームレスが隣にいる。そいつは見た感じ、僕と同じ五十才くらいだが、ちょっと頭がイカレているらしく自分は百年先の未来からやってきたタイムトラベラーだというんだ。
「厳密にいうと違うよ」
 彼はいつもバナナを食べている。角の八百屋で売り物にならなくなった廃棄するしかない黒いバナナをもらってくるらしい。
「はっ? 僕に言ってる?・・・

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本日は踊りたい気分

16/10/02 コメント:4件 奈尚

 六か月前に八十七歳の誕生日を迎えた。こんな高齢になる日が来るなんて、冗談みたいに思っていた矢先だった。
 五週間前に階段ですべって、右足首の骨を折った。思ったより骨がもろくなっていたらしい。
 四日前に医師の再診を受けた。元通りにくっつけるのは、やはり難しいそうだ。筋肉まで衰えないよう、欠かさずリハビリをしなさいと言われたが、正直あまり気が進まない。
 三時間前に、遠くに住む妹・・・

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矛盾の狭間

16/10/02 コメント:0件 空蝉

今でも時々思い出す、不思議な夢がある。
小学校低学年くらいの時の、ある晩に見たものなのだが。
その夢の中で私は、ただひたすら走っていた。
商店街を抜けて、人々の雑踏を駆け抜けた先に、一人で歩いている女性がいて。
幼い私はその女性を、思い切り突き飛ばすのだ。
どうしてそんなことをしたのかまでは、よく覚えていない。
まあ夢とは、大抵が支離滅裂で、記憶の曖昧さもそんな・・・

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一分後のオレ

16/10/01 コメント:0件 比些志

ある日からとつぜん、あいつはオレにはなしかけるようになった。あれはたしか強風にあおられて、点検中のマンホールに頭から落っこちそうになった時からだ。あいつはオレだが、いまのオレではなく、一分後のオレだという。あいつにはオレが見えるらしいが、おれにはあいつの姿は見えず、ただ声だけがきこえる。あいつはオレなのにいつもオレの悪口ばかりをいう。いつもドジばかりふんでいるオレもたしかに悪いが、それをあしざま・・・

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時をすべる雪だるま

16/10/01 コメント:0件 待井小雨

 中学二年の夏にいなくなったクラスメイトの事が、どうしても忘れられない。転校していった彼女を、僕は好きだったのだと思う。
 一年生の時からクラスと委員が同じ彼女とは、友人として良好な関係を築いていた。けれど饒舌な方でもなく、不器用で臆病な僕には、夏の陽のようにまばゆいばかりの彼女に想いを告げられなかった。
 窓ガラス越しの冬空を見上げて溜息を吐く。灰色の曇天には、いつの間にか白いものが・・・

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何度だって俺はーー。

16/10/01 コメント:4件 浅月庵

 ◇
「ごめんなさい。付き合うっていうのはちょっと……」
 
 ーー俺の真鍋ちゃんへの恋心はあえなく届かなかった。
 高校に入学して初めて真鍋ちゃんと出会い、一目惚れして、半年後に告白。この日まで俺が真鍋ちゃんと会話できたのは、指で数えられるほどの回数でしかなかった。向こうが俺のことを好きになってくれる要素、手応えもなにもないまま俺がガムシャラに突っ込んで、撃沈。当然の結果・・・

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緑と朱と白

16/10/01 コメント:0件 日向 葵

 母方の実家に来たのは祖母の葬式のためであった。片田舎の田園地帯に建つ木造の家はどこか哀愁を漂わせて、まるで空を独り占めしているような風体でそこに建っていた。しかし、母が他界してからというもの母方の縁者とは疎遠になっている。およそ数十年は訪れていないであろうその家は私にとって懐古に値するものではなかった。
 夏も過ぎようという頃にも関わらず、逝き遅れた蝉の喧しい声が煩わしさを煽る。特筆好意に・・・

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Another side of the world

16/10/01 コメント:0件 みや

契約書を目の前にしても無数の小さな文字の羅列は頭に入ってこなかったけれど、最後の”今なら十万円キャッシュバック中”の一文が目に飛び込んできて妙に可笑しい気持ちになる。一億円払って十万円返して貰う、何だか滑稽に思えた。それにタイムスリップが可能になった科学的な現代に於いても、紙の契約書がまだ活用されている事に俺は驚きを隠せない。紙をスキャンしてデータに保存しておく事は勿論言うまでも無い事なのだろうけ・・・

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Mother side of the world

16/10/01 コメント:0件 みや

自分自身の身体の不調は、自分自身が一番良く分かっていた。これでも医療従事者の端くれなのだから。そしてその身体の不調が、大きな病のサインである事も分かっていた。手術や治療を施して少し寿命を引き延ばしても何の意味も無い。だから一年前に身体の異変に気付いた私は、病院へ行く前に保険会社に駆け込んだ。病が診断されてからでは保険に加入出来ないのだから。

「俺、看護師になりたい」
高校生にな・・・

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Father side of the world

16/10/01 コメント:0件 みや

19時頃に出張先の得意先周りを終えて宿泊先のビジネスホテルに到着したクタクタの僕は、早くホテルのベッドに潜り込みたくて仕方が無かったのだけれど、ホテルの前でウロウロしていた青年に声を掛けられた。
「あの…引っ手繰りに荷物を盗られてしまって…旅行中で…この辺りに交番はありますか」
不審な青年にそう言われて僕は戸惑ったけれど、無視する程僕は不親切な人間ではない。地元の人間ではないので交番が・・・

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バタフライ・エフェクト

16/10/01 コメント:3件 葵 ひとみ

 「し、しまった!?」

都内の清楚な住宅街で、一応、専業主婦をしている私、樋口加奈子は

重いまぶたをひろげて、

ハッと獲物を見つけた小鳥のようなスピードで可愛いスヌーピーの白黒の目覚まし時計を

眺めて言った。

いつものことだが、

私はもう5時間も寝坊をしてしまっていた。

非情な時計の針は私を取り残して・・・

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不自由なこの世界にSFを

16/09/28 コメント:0件 浅月庵

 きみはいつもなにもかもが自分の思い通りになると思ってるね。
 なにか困ったことがある度にぼくに泣きついてくるのは、そろそろやめにした方がいいよ。きみだって、もう良い大人なんだからさ。

「また仕事で失敗しちゃったよぉ。過去の自分をちょっと止めてくる」
 そう言ってきみは、唇をギュッと結ぶ。

「またきみは自分のミスを素直に認めない。いい加減にしたらどうだい」<・・・

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何度繰り返しても

16/09/28 コメント:1件 黒猫千鶴

 もし、時間を操る力を持っていたら、君ならどうする?
 過去に戻って、人生をやり直す? それとも未来に行って、自分がどうなるのか見ちゃう?
 そうだな、僕なら――

「世界を救うヒーローになりたいです!」

 堂々と宣言してやった。
 今は現代文の授業中。高校生になってまで、将来に何をやりたいかの作文を書く。そんな子どもっぽいことしてられるか、と周りは文句・・・

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時間旅行はいかがでしょうか

16/09/26 コメント:0件 直さらだ

 さめざめと泣くような雨を浴びながら、男がベンチに座った。傘は差していなかったが、男は雨を気にした素振りも見せずにベンチに座り続けた。
 男の脳裏には、幸せだったあの頃が蘇っていた。明るい妻の笑顔、怒られて泣きじゃくる息子、仕事は忙しかったが、それでも男は幸せだった。そう断言できた。
 男が白昼夢に耽っていると、不意に雨が遮られ男の顔に影が落ちた。男の隣に、真っ黒な傘を差した老人が座っ・・・

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タイムスリッ……

16/09/23 コメント:0件 かわ珠

 時間を超えて旅をするという人類共通の夢は、数百年前からずっと研究を重ねられてきていたのだが、それがついに完成を迎えることとなった。タイムマシーンが完成したのだ。とはいえ、開発したのは私ではない。しかし、無関係という訳でもない。タイムマシーンを生み出したのは天才にして変人にして天然だと名高いドクター・ヒイラギ。私はその助手を務めている。
 博士からのメールが届いたのは今朝のことだった。文面は・・・

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リンゴ一個分の無機質な人生

16/09/23 コメント:0件 alone

「検査の結果、心臓に原因があると考えられます」
医師は僕の胸部レントゲン画像を見ながら答えた。その面持ちは暗く険しい。
「治療にはどれくらいかかりますか?」
背筋が冷たくなる想いを振り払おうと、医師の言葉に希望を託す。しかし――
「残念ながら、我々に治すことはできません。現代医療では治療不可能です」
全身から力が抜けた。希望は呆気なく砕け散り、絶望に呑みこまれる。

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相対論的逢瀬

16/09/22 コメント:0件 本宮晃樹

 見るがいい、ちょうどシュバルツシルト半径ぶんだけ星の海が円形に切り取られているさまを! それだけじゃない。X線ジェットがその穴から何光年にもわたって噴出し、星ぼしを切り裂いている。帯域幅を変えて観測すれば、高エネルギーの奔流がほとばしっているのがわかる。ホーキング放射だ。
 直径二十キロもない取るに足りない穴なんか、宇宙からすればそこらをブラウン運動している塵埃以下の存在にちがいない。それ・・・

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拝啓 未来の死にたがりへ

16/09/22 コメント:0件 空蝉

左手に付けた腕時計の時間は、もうすぐ午後三時を示す。
風で靡く袖口から、傷だらけの手首が顔を出した。
もうすぐ取り壊される予定の、今は廃墟となった何かの会社のビル。
ひとつ、大きなため息を吐いて、私はそんなに背の高くない柵を乗り越える。
屋上から見下ろした、遠い地面。
そこを目掛けて、私はふらりと自分の体を投げ出した。
聞こえるはずのない、時計の秒針の音を聞いた・・・

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不思議な時計

16/09/21 コメント:2件 たっくん

 それは夏の夜の事だった。
「あれ? 時計止まってるな。そうか、もう一年くらい経つのか」
 お風呂から出てきたお父さんは、リビングの壁に掛けられた時計を見て言った。この時計はどんなにいい電池を入れても、安い電池を入れてもちょうど一年くらいで電池が切れる不思議な時計だ。
 去年の今頃に爺ちゃんが電池を取り替えてくれたけど、そんな爺ちゃんはもう居ない。替わりに弟のタケシが生まれた。皆・・・

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わたあめの記憶

16/09/21 コメント:0件 はっぱ

「お祭りなんて何年ぶりだろー」
「そうだねー…」
とある夏の日、わたしは高校の友達と夏祭りにきていた。
自分でいうのもなんだが、わたしはなかなかのお嬢様である。箱入りまではいかないけど、それなりに大きな豪邸で、それなりにお金があって、それなりに英才教育というものを受けてきた。そのため、こういうお祭りなどには全く縁がなく育ってきたのである。そんな私でも昔に1回だけ小さなお・・・

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エリの回想についての他愛もない考察

16/09/21 コメント:0件 しーた

 真っ暗な自室のベッドの上で、エリは静かに意識を取り戻した。実家から持ってきたお気に入りの掛け時計の針の音だけが部屋に響く。目を閉じ、身体をベッドに横たえたまま混濁した頭の中を整理して、
ーーああ、そうか。
 自分は知らぬ間に寝てしまったのだ、という解答にエリが辿り着くまでにそう時間はかからなかった。部屋に帰ってきたところまでは覚えているが、そこから先のことが思い出せない。仕事が忙しく・・・

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「あの人」が伝えてくれた

16/09/20 コメント:3件 あずみの白馬

「お付き合いするって難しいな……」
 2020年の松の内も過ぎた頃、20代後半にして彼氏いない歴=年齢となってしまった黒川そらは、出会いを求めて合コンに行ったが、一次会が終わってそのまま帰って来てしまった。
 何より自分に自信が持てなかった。化粧しても地味で、どこに行っても目立たないしと、ネガティヴばかり考えてしまう。
「あの人、どうしているかな……」
 そらは数年前の出会・・・

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七年前の約束

16/09/20 コメント:0件 かわ珠

「ただいま」
 と、彼女は言って微笑んだ。
「おかえり」
 と言って、僕は戸惑った。
 僕にとっては気まずい沈黙。彼女はこの沈黙をどう受け止めているのだろうか。その表情を正面から見る勇気は僕にはない。
 正直言って、彼女には帰ってきてほしくはなかった。
 七年。
 七年だ。その時はあまりに長く、変化が起こるのは当然のことだ。
 この七年の間に、僕は就・・・

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待ち人

16/09/20 コメント:0件 ナフナン

「いっしょに入ろう」
 子どもたち数人が一直線に並ぶ列の真ん中で、娘が桃色の傘をぱっと開いて、にっこり微笑んだ。目の前の男の子は嬉しそうにはにかみ、二人はバスが到着するまでの間小さな恋人同士のように会話を弾ませていた。
 雨が降っていれば、手元の傘を優雅に広げて男の頭上にかざすことができるのに。奈保子は雨を流すまいと必死に踏ん張っているようなどんよりと暗い曇り空を恨めしそうに睨みつけた・・・

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タイムスリップ防止用瞬間接着剤

16/09/19 コメント:1件 W・アーム・スープレックス

いまでは百均の店でも手に入るらしい。
時空間が崩れだしてからというもの、いたるところでタイムスリップがおこるようになり、これをとめたいと望む人々の願いがこの商品を産みだしたのだろう。
ドンタなんかは例外で、はやく自分にもその瞬間が訪れないものかと、わくわくしてまちわびていた。
ドンタはこれまで、多くの知り合いたちがタイムスリップによっていきなり自分の眼前からきえてなくなるのを目撃・・・

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初恋

16/09/19 コメント:0件 かわ珠

 彼の唇が私の唇に触れた瞬間、魔法は解けた。
 それは別に比喩なんかじゃなく、本当に私の魔法は失われたのだ。そして、私は長く、長く、長かったこの人生を終える。

 ――あぁ、こんな結末も悪くない。


    ※    ※    ※


 かつて、空想の産物とされた魔女は実在するということを、私は自らの魔法をもって認識させられた。
 自ら・・・

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僕の名前は

16/09/18 コメント:0件 siakata

 僕は今、楽園にいる。
 どうやらタイムマシンに乗って、遠い過去、人類誕生以前に来てしまったらしい。
 生活用具はタイムマシンに積まれていたし、狩猟の心得も多少あるので食べ物にも困っていない。
 ただ、タイムスリップのショックか僕は自分のことを何も覚えていない。元いた時代のことはわかるのだが、自分に関することだけは一切覚えていない。
 元の時代のことを思い浮かべる。
・・・

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26世紀

16/09/18 コメント:0件 れいちぇるかるふーる

 目を開くと美和がいた
 美和ではない
 美和は500年前死んでいる
 美和の子
 りかの子れいか
 れいかの子でエミカ
 そう
 これはエミカなのだ

 今は26世紀
 さらに長寿になった人類は、生体部品の交換で平均寿命は三百年
 だから曾孫(ひまご)のエミカに会える
 私の病も26世紀の技術でケロッと治った
 美和は・・・

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我が家 -恋しい思い出-

16/09/18 コメント:0件 てんとう虫

未来には何でもある。
病気治るようになり宇宙にも簡単に民間人でもお金で行ける。
街も良くなりすごく快適。
でも、博物館や資料館の瓦屋根の家や虫のいる辺鄙な街に住みたがる人びと出て来た。
病気がちで20才まで生きれないといわれていた吉田秋は小さな銀色の20種類色ペンのようなもの持っていた。
昔でいうとスマホを押して渡されたデータペンにいれる。
行きたい場所跡地へ行・・・

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我が家 -恋しい思い出-

16/09/18 コメント:0件 てんとう虫

未来には何でもある。
病気治るようになり宇宙にも簡単に民間人でもお金で行ける。
街も良くなりすごく快適。
でも、博物館や資料館の瓦屋根の家や虫のいる辺鄙な街に住みたがる人びと出て来た。
病気がちで20才まで生きれないといわれていた吉田秋は小さな銀色の20種類色ペンのようなもの持っていた。
昔でいうとスマホを押して渡されたデータペンにいれる。
行きたい場所跡地へ行・・・

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我が家 -恋しい思い出-

16/09/18 コメント:0件 てんとう虫

未来には何でもある。
病気治るようになり宇宙にも簡単に民間人でもお金で行ける。
街も良くなりすごく快適。
でも、博物館や資料館の瓦屋根の家や虫のいる辺鄙な街に住みたがる人びと出て来た。
病気がちで20才まで生きれないといわれていた吉田秋は小さな銀色の20種類色ペンのようなもの持っていた。
昔でいうとスマホを押して渡されたデータペンにいれる。
行きたい場所跡地へ行・・・

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彼女のタイムスリップ

16/09/18 コメント:2件 杏花

「2月19日に戻していただけませんか」
「また浮気ですか」

少し変な空気が流れた後、喫茶店のマスター風の男が立ち上がりどうぞ、と言って個室へと案内する。これから私は約半年前の2月19日に戻る。彼氏、コウタの浮気の証拠を持ってくるために。

「ササノさん、女性一名」
「あら、ユウちゃーん、また浮気されたのー?今度はどんな女?」
「中学の同級生だってさ!」<・・・

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嘘八百

16/09/17 コメント:2件 デヴォン黒桃

「ハイハイ、其処らをお歩きの殿方お嬢様、坊っちゃん嬢ちゃん寄っといで、摩訶不思議也、蛇女、愛らしいお顔ダケレドモ、身体は大蛇で床を這いずる、奇妙な蛇女、一目見て行っては如何でしょう? お代は帰りで結構ヨ、嘘マヤカシだったら鼻で笑って頂戴」

 見世物小屋の呼び込みが、調子良く口上を述べている。
 ソコへ死に場を探して、酒瓶片手にウロチョロしておる男。

「ドウセ死んだ・・・

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先輩! 未練を晴らして下さい!

16/09/16 コメント:2件 あずみの白馬

「優希先輩、好きです……」
 みはるは心の中で何度もその言葉をつぶやいた。けれど言いだすことはできず、卒業して東京の大学へ行く彼を心の中で見送った。
 想いを伝えられなかった寂しさからか、彼女は思わず新聞部の後輩二人にそのことを話してしまった。あんなことをするとは思いもよらず。

 ***

 一週間後の安曇野高校新聞部、部室には何やら怪しげな電子機器が取り付け・・・

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クイックセーブ、クイックロード

16/09/15 コメント:2件 六連 みどり




「こっちにすればよかった〜」

昔から、不思議だった。
どっちか迷って後悔するなら、後悔しない方を選びなおせばいいのに……。

「騙された、あの時に戻りたい」

戻ればいいのに、なんでしないのだろうか。
戻るのなんて簡単じゃないか。
その疑問の答えを知ったのは、中学の時だった。

高校二年、文化祭まで二週間<・・・

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もういいよ

16/09/14 コメント:0件 林一

 神社の境内に、小学生の少年が2人いた。
「雄介の奴、遅いなあ」
「どうせまた寄り道でもしてるんだろ。先に遊んでようぜ健二」
「うん。じゃあ達也の好きなかくれんぼでもするか」
「別に好きじゃねえよ。まあいいや。じゃんけんで負けた方が鬼な」
 じゃんけんの結果、達也が鬼となった。
「それじゃあ100数えろよ」
「普通10だろ。まあいいや。数えるぞ。1、2、3・・・

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輪廻を巡って

16/09/14 コメント:0件 勿忘草

どうしてこんなにも君の手は温かいんだろう。
君と手を取り合う時いつもそう思う。
君は決まっていつも
「心が優しい人ほど手が冷たいんだよ。だって貴方はとても優しい人だもん」
そう言っていつも微笑んでくれたよね。
僕は君のその優しい笑顔が大好きだった。
「今では君の方が冷たくなってしまったなぁ」
吐息混じりにつぶやく僕はかじかんだ手を強く握った。
大きな・・・

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むかし話

16/09/14 コメント:0件 こぐまじゅんこ

タヌキは むかし

イぬ だったって

ムクドリが言う

スカンクは むかし

リスだったんだよ

ッて ムクドリが言う

プププ うそでしょう?

しんじられない

てんでに バカにしたけれど

みんな だれも それがうそだって証明できない

たイムマシンが あったらなぁ

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16/09/13 コメント:0件 蹴沢缶九郎

強欲な男がタイムマシンに乗って、遥か昔の時代にやってきた。その時代の生物で一儲けを企てていた男は、麻酔銃を使い、手当たり次第に生物を撃っては捕まえていく。

最後に一匹の猿を捕獲し、男は元いた時代へと帰っていった。しかし男が捕獲した猿は、麻酔銃に撃たれたショックと変化した環境に適応する事が出来ず、日に日に衰弱していく。

猿の様子を見ていた男は、

「こいつが死・・・

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クロノスの鉄槌

16/09/12 コメント:0件 海見みみみ

「ついに完成したぞ!」
 私は念願だったタイムマシンの開発に成功した。これさえあれば過去でも未来でも自由に行き放題だ。
 しかし奇妙な話がある。実は私より先にタイムマシンを開発したという報告を何件か受けていたのだが、その開発者達がみなタイムマシンと共に行方不明になってしまったというのだ。
 おかげで後発である私の方が最初にタイムマシンを開発した事になった。本当に奇妙な話だ。

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未来の大先生!?

16/09/12 コメント:0件 海見みみみ

『葵ほむら』そう自身のペンネームが書かれた小説の原稿を印刷しながら、青井修二はため息をつく。
 修二は今まで小説の賞にたくさん投稿をした。しかし結果は全て落選。このまま一生デビューできなかったらどうしよう。その時は、いっその事死ぬか。修二に死の影がちらつく。
 そんな風に、修二が暗い気持ちでいっぱいになっている時、その声は響いた。

「へぇー、この時代はこうやって小説を書い・・・

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未来からの、ちょっと不思議な侵入者

16/09/12 コメント:2件 ニコロ

「……つまり君は、自分は未来人だと主張するんだね」
「ええそうです。驚きます?」
「いやあんまり……もう驚き尽してしまったからね」
「そうでしょうね。にしても、あんなに大声をだすなんて……こちらまでびっくりしてしまいましたよ」
「仕方ないじゃないか!だって、家に帰ったら見知らぬ扇風機がいきなり喋り出すなんて、誰がそんなこと考える?」
「この時代の人からしたら、あり得な・・・

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赤い涙

16/09/12 コメント:0件 蒼樹里緒

 時空保護管理局の任務以外で、ほかの時代へ行くのは初めてだ。高知県出身の同僚の一人が、坂本龍馬の大ファンなんだという。
 夕刻の京都の町並みは、冬の冷気をほんわかとした家々の灯りや人々の賑わいで打ち消しているようにも思えた。薄暗い路地裏を、足音を忍ばせて進む。同僚の男と僕に左右から挟まれ、若い女性リーダーが歩いていた。腕時計型端末で、小さな立体映像の地図を映し出し、辺りの地形や道筋を確認して・・・

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何があっても君を愛し続ける

16/09/12 コメント:0件 海見みみみ

「私、五十歳年上の人と結婚させられるの」
 そうイトハから告げられた時、ジローは言葉を失いかけた。
「五十歳年上って、僕達より? それはノルンの決めた事なのか」
「そうなの。だからきっと逆らえない」
 イトハの瞳から涙がこぼれる。ジローは耐えきれず、イトハをギュッと抱きしめた。

 就職、結婚、進路、政治、裁判、その他もろもろの決めるのに煩わしい物事。それらを人・・・

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未来を変える喫茶ソワレ

16/09/12 コメント:8件 葵 ひとみ

6月13日、私、小原侑子17歳、岡山市に在住、くらしき美術大学付属高校2年生。
私は自宅のリビングで両親とトーストの朝食をとっていた……
テーブルの右手の横にはスマホを長期修理にだしていて代替機がある。
心の中では両親に、「逝ってきます」と思いながら、「行ってきます」と侑子は言った。
山陽本線を岡山駅から倉敷駅を経由して新倉敷駅まで乗って、そこで下車して小高い丘の上にある高・・・

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アイ・クローズド

16/09/12 コメント:0件 水面 光

「待ってたよ」──夜道を歩いていた。コオロギの鳴く声と風が耳を切る音、自分の足が湿ったアスファルトに置かれたときの砂利の音、たまに小石を蹴ってそれが転がっていく音。そうだ、あの声も聞こえる。子供たちの遊び騒ぐきゃっきゃいう声。風呂にでも入ってるのかな? まるで狭い車道でスピードを上げるくそいまいましい車のように走り去っていく音たち。待ってくれ!──「待ってた?」呉服屋の裏の薄暗い殺風景な──ペイン・・・

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猫多川賞受賞作家マタタビニャンキチ誕生秘話

16/09/12 コメント:2件 葵 ひとみ

 赤色の時代に真っ赤な火山のマグマから泣きながら小生は生まれた。


その後、小生は……


橙(だいだい)色の時代にタイムスリップ……生まれて初めて、よく熟れた橙(だいだい)の果実を美味しくほおばった。


黄色の時代にタイムスリップ……黄色い三日月を見上げてその可憐な美しさに感動した。


緑色の時代にタイムスリップ……緑・・・

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