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  2. 第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】

第115回 時空モノガタリ文学賞 【幽霊 】

今回のテーマは【幽霊】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/09/26

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/08/01〜2016/08/29
投稿数 104 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

16

深夜ラヂオ

16/08/24 コメント:7件 石蕗亮

 暑苦しくて夜中に目が覚めた。
完全に目が覚めてしまってどうしようかと思ったが、ここでスマホの明りなんぞ目にした日には翌朝眼性疲労で鈍痛が起きるのは確定なので枕元のラヂオを手探りで点けた。
「ハーイ、リスナーのみなさん。今晩もうらめしや〜。
今日も丑三つ放送を聴いてくれてありがと〜。」
静かながらもややジャブの効いた単語を繰り出す放送が流れ、現在は夜中の2〜3時だと推測した・・・

10

深夜専門のタクシー

16/08/22 コメント:19件 泡沫恋歌

「びっくりしました! ヘッドライトに白い影が浮かび上がった時には、もう悲鳴をあげそうでした」
 一台のタクシーが思いがけない場所で客を拾った。 
「こんな時間に、あんな場所で……人が歩いてるなんて驚いた」
 真夜中のトンネルの中を人が歩いていたのだ。
「手を上げて、お客さんに呼び止められたけど……本当は乗車拒否しようかと思ったくらいですよ」
 タクシーが止まると、若い・・・

17

スウィジ・ゴースト・トラップス

16/08/20 コメント:7件 クナリ

 随分前にリフォームしたらしいそのアパートに引っ越してきたのは、僕が大学四年の時だった。住んだ人間が何人か蒸発している事故物件で、オンボロながら格安である。
 大学院へ進むことが既に決まっており、周りに比べれば少し弛緩した日々を送る中で、その事件は起きた。
 アパートの風呂場はユニットバスになっていたのだが、あちこち傷みがあり、洗濯物を干すための心張り棒を左右の壁にかますと、わずかに壁・・・

2

殺された記憶

16/08/10 コメント:4件 ひーろ

 僕は幽霊。誰かに殺された。
 実は、殺された時のショックで、ほとんどの記憶をなくしてしまった。僕を殺したのは誰なのか、何も覚えていない。殺される間際の恐怖の感覚だけは、いまだに鮮明に残っていて、僕を嫌な気分にさせる。
 僕を殺した憎き殺人鬼を見つけ出し、何とかしてやらないと気が済まない。呑気に成仏なんてできやしないというのに、それが誰なのか、さっぱり見当もつかないではないか。
・・・

16

女子力のない私と口数の多い幽霊

16/08/01 コメント:10件 クナリ

 高校二年生にして、私は霊にとり憑かれてしまった。
 私の斜め上辺りに浮いたり消えたりする霊の名前は、ユウヤといった。先月死んだばかりで享年は十四歳だと言う。
「ヨーコさんの部屋、物少ないね」
 うるさい。
「俺の姉ちゃんのが百倍女子力あるな」
 黙れ。
 私が男子バスケ部のマネージャにいそしんでいる間は、構ってもらえないせいでユウヤは姿を消したりする。
・・・

最終選考作品

5

サイレント・ガール、ロンリー・ボーイ

16/08/12 コメント:3件 泉 鳴巳

 遠方の大学になんとか合格した僕は、とあるアパートの一室を借りた。
 貧乏学生の例に漏れず、低賃金のアルバイトが収入源。そんな僕が借りた部屋は当然それなりだ。
 まあ屋根も壁もあるし、お湯だって出る。一万五千円で借りているのだから贅沢は言えない。
 ただ一つだけ、普通じゃないことがあった。
 
 そこには幽霊がいた。長い黒髪を垂らした、若い女性。
 初めて見たと・・・

4

ミスター・ノーネーム

16/08/10 コメント:6件 泉 鳴巳

 ――それを“心霊現象”の一言で片付けるには、あまりにも不可解な出来事だった。

 「とある看板写真に、およそ看板の内容にそぐわない謎の人物が写り込んでいる」、発端はそんな、ティーンたちによる他愛もない噂だった。
 驚きは九日しか続かないと言うが、“彼”の噂も有象無象の風聞と共に、すぐに風化してしまうだろうと思われた。
 ……しかし、そうはならなかった。
 看板や広告・・・

5

横取りされるぐらいなら……

16/08/06 コメント:7件 黒谷丹鵺

すぐうしろにいることはわかっていた。

――絶対にふりむいてはいけない。

美弥子の言葉を思い出し、私はうしろを見ないように気をつけて出窓を離れた。
もらった粗塩はキッチンのシンク下に仕舞ってある。

落ち着かなきゃ。

体の奥から恐怖が、尽きぬ泉のように湧きだしてくる。

ふらついて床に手をつき、立とうとしたが膝に力が入らなかった・・・

投稿済みの記事一覧

3

仏様に花束を

16/08/31 コメント:3件 南野モリコ

夕日を眺めるには少し早い時間、僕は屋上に上った。22階建ての病院は最上階が眺めのいいレストランで、昼間、屋上まで来る人は少ない。病室からここまでエレベーターに乗るだけなのに、息切れしている自分が情けなかった。

「K大学3年生の西村耕平君ね」
後ろから声がした。振り向くと、僕と同じ年くらいの女の子が立っていた。パジャマ姿であるということは入院中の患者だ。入院中にしては不似合いなサ・・・

1

デジタルゴーストパレード

16/08/30 コメント:2件 岸本真哉

死者の丘の入り口はたくさんの人で溢れ返っていた。
会場には普段通りに墓石が立ち並ぶだけで、まだ何も起こっていない。
開演まではあと5分。
僕はコンタクトレンズのAR機能をオフにした。
「こんなところにもいるんだね!?」
墓石の一つに腰を掛けた少年が驚きの声をあげた。
少年の視線の先に相手の姿は見えない。
AR機能をオンに戻す。
拡張された現実に白いワ・・・

1

暴力バカが理を聞く時

16/08/30 コメント:2件 むねすけ

討論が行われたが、
時間をかけた討論も、
結果は、
一人の男の暴力によって、
結果が覆される。

窓から生ぬるい風が吹き込む真夏の六畳間、
お茶も出されず、
蒸し風呂の部屋で、
幽霊はいるかいないか、
の討論。

結果、主催者の男を残して、
いない派が理論で優勢だったが、
夕刻に部屋が染まり、
お開きの時間が・・・

0

バックミラーがデビュー戦

16/08/30 コメント:0件 むねすけ

「バックミラー?」
薄暗い曇天、
小雨が眼鏡人だけに感づかれる分量で降っている夕方。
市民病院のタクシー乗り場は閑散としている。
お母さんと男の子。
「今日はバスで帰るのよ!!」
と、駆けてる子の背中に倹約の矢を刺すのだけど、
男の子はまだ六歳でバスとタクシーの区別が不完全。
開かれてしまったタクシーのドアにバツの悪そうなお母さん。

「・・・

1

幽霊の住処

16/08/30 コメント:0件 高橋螢参郎

 巨大な有機分解槽は暗闇の中バックライトに照らされて、撹拌機に為されるがまま水面を煌々と揺らめかせていた。
 分解層を満たす液体の正体は、炭素を筆頭に水素、酸素、窒素、リン、硫黄、フッ素、アンモニア、そしてマグネシウムを始めとするミネラル群が混ざり合ったものだ。これらは生命体を構成するものであり、当然生命維持には不可欠なものだった。多種多様な生物が地球上から死に絶えた今、有機物はかつての石油・・・

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SLEEP WALKER

16/08/30 コメント:0件 むねすけ

お払い箱ってなどんな箱かい、そいつは恐らく棺桶によく似た匂いがするだろうね。
生きてるうちは葬儀屋の下働きが冗談にも入りたがらない。
親方に命じられてのそのそのようやくだろうさ。
で下働きは思うんだろう、早いとこ偉くなりたいもんだと。
中から開けることのできない箱に放りこまれることが、
自力で這い出られない箱に入れられることが、どれだけの苦痛かなんて、
ぶち込む・・・

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盆、田舎にて

16/08/30 コメント:0件 杏花


墓地裏でアイスを食べる。ここは私と彼の昔からの避暑地。お盆の時はいくつになってもここに二人で集まって話していた。小さい頃は立ち上がっていっぱい遊んだけれど、もう立ち上がれないほど狭いから、朝からずっと体育座りしたり横になったりしている。

「今年何してたー?」
「えー……あ、お化け屋敷のバイト」
「何それヤバ」
「ヤバイっしょ?ただな、めっちゃブラック。給料ま・・・

1

夏の夜の夢

16/08/30 コメント:1件 天沈

仄暗い参道に、紅い提灯がぼうっと浮かぶ。週末になると開かれる縁日で、神社の境内は賑わいを見せていた。老若男女、行き交う人々は皆一様に楽し気で、こんな場所に一人佇む自分が惨めになる
「お兄さん、こんばんは」
……?僕に声を掛けたのだろうか
シャツの裾をくいと引かれて振り向くと、歳にして七つか八つの女の子がにこりと笑ってこちらを見上げていた
「今晩は。どうしたの?お母さん・・・

4

夏の花火とボクの糸

16/08/29 コメント:4件 そらの珊瑚

 自分が死んでたなんて、びっくりだ。
「つまり、坊やは幽霊」そう云った目の前のおばさんが、あははと笑う。ゲッ歯が黒い。虫歯か?
「ゆうれい、って、その、あの幽霊ですか? でもボク、足、あるし」
「ああ、その事? 幽霊に足がないって決めたのは生きてる連中。その方が怖いからね。幽霊は怖がってこそ面白いし、あたしたち幽霊は怖がらせてこそ、存在価値かあるってものよ」
――えっ。あた・・・

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妄想幽霊

16/08/29 コメント:0件 杏花


「ただいま」
「おかえり」
間髪入れずに返事をする彼は、幽霊だ。名前は優。私が名づけた。
「夕飯考えよっか」
「うん」
まるで同棲5年目のような、淡々とした落ち着く会話。彼は、気がついたらいつもそばに居た。365日ずっと傍にいるから、ずっと働いている親よりも近い存在な気がする。
「優、何食べたい?」
「煮物」
「いいよ、作ってあげる」
・・・

0

幽霊の笑顔

16/08/29 コメント:0件 ケイジロウ

 そろそろ洗わなくちゃな、と考えながら水色の作業着に着替えていると、先輩の坂本さんがいつものタイミングでロッカールームに入って来た。下を向いていた。右斜め下、左斜め下を交互に見ている。コンタクトレンズでも探しているかのように。ゆっくりと、幽霊みたいにこちらに向かってきた。坂本さんのロッカーは、僕の横なのである。頼りない左肩にかけられたショルダーバッグが、膝のあたりでブラブラと揺れていた。
「・・・

1

木村家の幽霊

16/08/29 コメント:0件 南野モリコ

私は木村家の幽霊。2階の勉強部屋に10年も棲みついている。私が出るようになってから、誰もこの部屋に入った人はいない。
「あ、幽霊、起きてる」
真下にあるダイニングで、弟が私の部屋を見上げている。「ヒロシ、やめなさい」。母がヒステリックな口調でたしなめている。
私は、21歳で幽霊になった。このババアに復讐するために。
霞という名前通り、私はどこにいても存在感の薄い暗い子供だっ・・・

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ひとめあなたに

16/08/29 コメント:0件 mati

私は理系の博士研究員いわゆるポスドクである。
父も製造メーカーの研究員だった。私も同じ道を進んだ。
そんなわたしは30も半ば過ぎたというのに未だに独身。そんな私を祖母は心配そうにみつめる。
「あなた、いいヒト居ないの?面倒見が良くて頼れる様なそんな男性が。ずっと独身のつもり?」
私は苦笑いをしながら車椅子を押した。祖母は高齢で老人介護施設に入っている。
私は暇を見つけ・・・

5

人は見た目と言動でしか判断しない

16/08/29 コメント:2件 にぽっくめいきんぐ

 たん、たん、たん、トッ。
 階段を3段下る。

 コンクリ打ちスペースの左側にはダイヤル鍵の集合郵便受け。雨で錆びたか、少し回転が悪い。引越やら区民便りやら、どうでも良いチラシが入っていた。

 出張帰りのキャリーバッグを引いた左手で、更にチラシを雑に掴み、奥に向かって階段を3段上がる。共用通路を10歩程。1階の紺色ドアに、ミッキーのキーホルダー付き鍵を右手で差し込・・・

2

たいへんよくできました

16/08/29 コメント:1件 宮下 倖


「はい。たいへんよくできました」

 問題集の余白に花丸をつけると、志穂ちゃんは「小学生じゃないんだから」とくすぐったそうに肩を竦めた。胸元で揺れる柔らかそうな細い髪を指にくるくると巻きつけている。

「次までに残りのページ解いてしまいなさいね。はい、じゃあ今日は終わり。お疲れさま」
「はぁい、涼子センセーありがとうございました」

 二時間枠の家・・・

1

永遠に覚ゆ

16/08/29 コメント:0件 佐々々木

 覚えていますか?
 私とあなたの家は近所で、小さい頃からよく遊んでいましたね。私はとてもやんちゃで、あなたは大人しい子供でした。小学生2年生のとき夜遅くに、といっても21時頃でしたが、近くの神社で肝試しをしましたね。神社までの暗く長い階段は確かに不気味ではありましたが、大して怖いものとは思えませんでした。幽霊なんていないよ、と言う私に対して、とても怯えていたあなたを覚えています。家に帰った・・・

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真夜中の刺客

16/08/28 コメント:0件 奇都 つき

 真夜中0時きっかり。私はレポートを書き上げ、腕を上げて伸びをした。これは、勝利のガッツポーズ。
「あぁ〜! やっと、やっと終わった!」
 長時間パソコンとにらめっこしていたツケの肩の重さも、締め切りを教授に拝み倒して1日伸ばしてもらったという重圧も、全てから解放され、許されたような気分だ。心なしか、伸ばした体も少し軽い気がした。
「見直しはもう諦める! さて……」
 伸び・・・

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絶望の金曜日に

16/08/28 コメント:0件 秋澤

仄暗い階段を上っていく。誰にも姿を見られたくなくて息をひそめた。4階のさらに上、色褪せたカラーコーンを避けて、埃臭く短い階段を数段あがる。鍵を差し込み冷たいノブに手を掛ければあっさりと開く。だだっ広い、薄汚い屋上。赤い夕陽がコンクリートを這う。赤色を遮るのは給水塔と私だけ。
「今日もいるんだね。」
「絶望の金曜日だもの。」
「うん、一週間の中で一番希望のあるふりをした絶望の曜日。・・・

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コウミョウな霊媒師

16/08/28 コメント:0件 関西出身だから標準語分からん太郎

「あ・・・」
 わたしは思わず声を漏らして立ち止まった。なんせ生身の人間とバッチリ目が合うなんて初めてだったから。
 相手のおじさんも出てきた家の前でじっとしたまま、こちらに目線を送り続けている。
 間違いない。おじさんにはわたしが見えている。
 数秒の沈黙の後、おじさんはその立ち姿に似合った堂々とした口調で
「お祓いの相談かい?」
と尋ねてきた。
 いき・・・

5

闇の掌

16/08/28 コメント:9件 冬垣ひなた

『お父さ……ん……私……』
「愛花……!」
 泣きじゃくる父親には見えない。見えないが、此処にいる。
 霊視を終え、仏壇に浮かぶ透き通る制服姿の少女の霊に手を合わせ、黒いワンピースに身を包み正座したレミは、労わるように父親へ語りかけた。
「大丈夫。お嬢さんは、お父様を恨んでなどいませんよ」
 声にならない声で、父親が両手の拳で畳を何度も叩いた。最愛の娘を失った傷はいつ・・・

1

からっぽの首輪

16/08/28 コメント:0件 まきのでら

 隣に住んでいる千枝おばあちゃんが歩いてくると、皆は怪訝な顔をして、ある人は苦い笑いを浮かべ、ある人は悲しげに目を伏せた。
 理由は簡単。千枝おばあちゃんはからっぽの首輪をひきずって歩いているからだ。
 首輪の中に犬はいない。
 おばあちゃんはタロという名前の犬を飼っていたのだが、ひと月前に死んでしまった。
 もともと認知症に罹っていたおばあちゃんは、そのショックで一気にボ・・・

0

踏切の観察日記

16/08/28 コメント:0件 東屋千歳

 僕はブログを書いている。
 毎日書いているわけじゃないけど、何かと身の回りで不思議なことが起こるものだから、それを日記にまとめている。

 今日は、家の近所にある踏切を観察に来た。ここには、過去に飛び込み自殺をしたという女性の霊が出ると噂されていた。だから、本当に幽霊が出るのかどうかを検証に来たのだった。
 元々霊感があるわけではないが『本物かどうか』と言うのは何となくわ・・・

2

小説の亡霊

16/08/28 コメント:2件 蹴沢缶九郎

「どうぞ椅子にお掛けください」

神妙な面持ちで診察室に入ってきた男に医者は促した。

「それで、今日はどうなされました」

「どうか、笑わずに聞いて頂きたいのですが…」

「笑いませんよ。患者さんの不安を取り除く為に我々医者がいるのです。安心してお話ください」

医者の言葉に幾分か気が楽になった男は語り出した。

「実は最近・・・

0

諸行無常

16/08/27 コメント:0件 ジロー

全日本幽霊協同組合に激震が走った。
「組合長!なぜ今なのですか!幽霊の数を削減するなんて!」
東日本代表の地縛霊が声を荒げた。
「落ち着いてくれ地縛霊君。幽霊界の進化のためなんだ。私だって末端の霊たちの事を思えばこのような事はしたくない。しかし、・・・時代の流れには抗えないのだよ。我々は甘んじてこれを受け入れなければならないんだ。わかってくれ。」
組合長の必死の訴えに西日本・・・

2

燃える霊魂

16/08/27 コメント:2件 橘 聰

 リング上で対峙する二人の大男。一人の表情は曲見の能面を模したマスクの下に隠れていてうかがい知れない。もう一人はマスクをしていない。二人の大男は逆水平チョップと前蹴りの応酬をしていた。肉を打つ音がジムに響く。
 信は呆然と二人を見ながら、ここに至るきっかけを思い出していた。


 坂崎信は祟られてしまった。おそらく、借金を苦にした男が妻子を道連れに心中するという事件が起きた・・・

0

曰く付きの画

16/08/27 コメント:0件 OSM

 思いの外、道が空いていたため、約束の時間よりも二十分も早く目的地に着いたが、時間を潰すために炎天下を歩き回るくらいならと思い、下村は上条邸の玄関のチャイムを鳴らした。
 やや間があってドアが開いた。応対に出た女性は、下村が想像していたよりもずっと若かった。妻は五十を過ぎていると上条春夫は言っていたが、二十代にしか見えない。
「奥様、初めまして。上条部長の部下の下村です。今日は例の画を・・・

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生きている人間は暇すぎて、死んだ人間に質問を投げかけてくるが、有益な答えを得られた例などは一度たりともない

16/08/27 コメント:0件 ちょっぺ〜@小説たまに弾き語り(愛している。世界中の誰よりも)

何日か前に死んでしまってから、私の一日は

宙に浮かんでいる時間がすごく長くなった。

基本的にはずっと浮かんでいる。

浮かんでいないように見えても実際にはずっと浮かんでいる。

地面に立っているように見えても、寝転んでいるように見えても、実際には私はずっと浮かんでいる。

生きている間は、それほど宙に浮かんでいたわけではなかった。

1

路傍の献花に

16/08/27 コメント:2件 日向 葵

 大学の先輩にドライブに誘われたのは暮れ泥む夏の夕方だった。先輩はバイト帰りの僕を待ち伏せて、嫌がる僕を半ば無理矢理愛車の中古車に押し込めた。自分勝手で周囲の空気をまるで読まない、人間性に問題を抱える先輩だが、彼の博学広才な様だけは人間として尊敬の念を抱かざるを得なかった。
「なぜ野郎二人で夜景を見に行かなければならないのですか」
「あそこの夜景はいつ見たって良いものだよ」
 噛・・・

1

秋風に囁いて

16/08/26 コメント:0件 くらげ

「久しぶり」
十年ぶりに帰ってきた街で、これまた十年ぶりに出会ったのはかつての恋人だった。
「なんで……」
「なんでって、地元だし?そらいるでしょ」
あの頃と全く同じ顔をして彼は笑う。
「そうじゃなくって……」
有り得ない。絶対有り得るわけがない。だって……

(私はあんたのお葬式の為に今日戻ってきたのよ!?)

そう思う私の心を読んだか・・・

5

「うらめしい」のは人だけとは限らない……でも、限度ってもんが

16/08/26 コメント:2件 にぽっくめいきんぐ

 夜中に、ふと目が覚める。

 しまった。夏休みの宿題の、途中だった。
 明日から次の学期だというのに。

 あわててガバッと起き……やめた。
 いい、寝る。

 どうせ、頑張っても終わらないんだから。

 その時。

 学習机の上の、ノート。
 その上に、なにやら怪しげな気配を感じた。

 見ると、
・・・

0

見えるのが、矢印だけではなくなった、その理由

16/08/25 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ

 僕には幽霊が見える。

 元々、そんな能力は無かったんだ。

 1学年あたり200人は居る中学の副会長だ。3年生。

 そして、生徒会長が『見える』人。

「とある霊媒師の師匠から、力の出し方を教わった」

「師匠は、ベルゼバブを倒しに行くと告げて出かけたっきり、お会いしていない」

 ある夜、というか、文化祭の前々日の夜に・・・

0

だって僕は幽霊だから

16/08/24 コメント:0件 ねこち

深夜のキッチン。
僕は電気もつけずに立ちながら、そっと記憶を遡った。

僕は、いつも泣いていた。

僕ん中にある一番古い記憶も、泣いてる記憶だ。
『赤ちゃんの仕事は泣くことだ』なんて、世間一般じゃ言われてるだろ。
だから、赤ちゃんと数年しか違わない、こんときの僕は、少しぐらい泣いたって大目に見てもらえるだろうって思ったんだ。

泣いた。
・・・

15

レンタル幽霊

16/08/24 コメント:7件 石蕗亮

 お好みの幽霊貸し出します。

 そんな奇妙なチラシを見つけたのは文化祭の準備をしている時だった。
ものは試しにと早速記載の電話番号にかけてみた。
「あ、もしもし。チラシを見たんですが。」
 「お電話ありがとうございます。当社はお好みの幽霊を1体500円からレンタル致しております。1週間レンタルですと割引もございます。
どのような幽霊をご要望でしょうか?」

16

斜陽の陽炎

16/08/24 コメント:4件 石蕗亮

 怖いくらい青々とした空に西日の橙を彩った入道雲が浮かんでいる。

 盆に実家に帰省したものの、俺は別段することもなく誰かと会うあてもなく、子供の頃によく居り浸った駄菓子屋へと赴いた。
店構えは東を向き店内は西日の影を濃く落とし、その色は店の軒先まで延びていた。
昔のままの木造の駄菓子屋の風貌は今ではまるでお化け屋敷のようにも見えた。
ジュースを買い店の軒下のベンチの・・・

0

吾輩は幽霊である

16/08/23 コメント:0件 奇都 つき

 吾輩はヒトである。体はもう亡い。いわゆる幽霊というものになっているようだが、どこで死んだかもとんと見当がつかない。

 なんて文学作品の冒頭を借り、賢い人ぶって自分の様子を観察している。
 目の前には木製の箱に横たわる自分の死体。白装束が似合っていない。
 そして棺をのぞき込んでいる私はと言うと、20分ほど前に意識を取り戻したばかりであり、現状を把握しきっていない。だって・・・

2

繰り返すのか、それは永久に

16/08/23 コメント:0件 かめかめ

 私が死を選ばない理由はただひとつ。死後の世界が本当にあるのかどうか分からないからだ。死後の世界……。考えただけで吐き気がする。この苦しい世の中から消えてなくなりたいのに、死後の世界というものがあって、死んでも苦しみが続くなら死は救いになんかならない。私はただ消えてしまいたいだけなのに。
 産まれた時から人間に馴染めなかった。他人が近くにいるのが苦痛だった。私にとっての「他人」とは私以外の全・・・

1

ざわめきを乗せてバスは今日も走る

16/08/23 コメント:0件 前田沙耶子

乗客はいつも僕と数人のサラリーマンに学生、そしてその幽霊だけだった。大学3年生の僕が早朝と言ってもいい時間帯のバスに乗るのは火曜と金曜だけだったが、幽霊はいつでも必ず同じ座席に腰掛けていた。
見た目は50代前後の白髪混じりの男性で、夏でもスーツにコートにマフラー姿。乗客が彼をすり抜けて行ったのを初めて見たときは驚いたものである。しかし僕が何よりも異様だと思ったのは、彼が毎朝美味そうな匂いを漂・・・

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【最終バスが止まる最後のバス停】

16/08/23 コメント:0件 吉岡幸一

 山の上にある神社に向かう階段の下には鳥居があって、その横にはバス停があった。バス停は錆びだらけで、台座のコンクリートはひび割れて苔が生えていた。
 最終バスが止まる最後のバス停、いつもそこに男が立っていた。黒いスーツに黒いワイシャツ、白いネクタイをしめた三十前後の色白の男がバスの来るのをじっと待っていた。
 最後のバス停なのだから、男が乗ってくることはない。誰かがバスから降りて来るの・・・

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幽霊の恩返し

16/08/22 コメント:0件 alone

ピンポーン!
インターホンが鳴って確認しに行くと、画面には見知らぬ女が映っていた。
長い髪に白いワンピース。テレビなどでよく見る典型的な姿に、もしや幽霊では……という疑念が起こる。
無視しようか。でも、怒らせてしまうともっとヒドイことになってしまうかも。
恐るおそる応答ボタンに手を伸ばし、勇気を振り絞って押し込んだ。ピッという機械音に心臓が跳ね上がる。
スピーカーから・・・

0

なつの縛霊

16/08/22 コメント:0件 白取よしひと

 標高1,300mの山頂ロープウエイ駅は、夏の今もひんやりとした冷気に包まれている。辺りを見回すと頃よく雲海が広がり、ここに高さを譲る峰々の山頂だけがぽっこりとその頭を覗かせていた。それは白き海に島々が浮かぶが如くに見え、まるで僕たちは憧れの島に降り立った航海士の様に胸をときめかせる。
 気流だろうか。下界に敷かれたブナの原生林を覆う雲は、時として火山の噴煙にも似て湧き起こる。それは忽ち白色・・・

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もし幽霊を作れたなら

16/08/21 コメント:6件 奈尚

 やれやれ、またか。
 隣の実験室から盛大な爆発音が聞こえてきて、思索の時を邪魔された研究員のイースは深いため息をついた。
 毎日毎日、よくもまあ飽きないものだ。
 椅子に掛けてあった防塵・耐熱機能付きの白衣を身にまとい、部屋をのぞき込む。中では、体中すすだらけになったガトーが照れくさそうに頭をかいていた。
「ガトー。君は、僕の研究室を吹っ飛ばすつもりかい」
 呆れ声・・・

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夏の終わりは幽霊と

16/08/21 コメント:1件 せんさく

暑い、暑い、暑い暑い暑い。
8月も末。夏はもうすぐ終わるっていうのにどうしてこんなに暑いのか。
コップの水もものの数分で生ぬるくなってしまう暑さの中、ユウキは涼し気な顔をして座っている。

「お前、暑くないのか?」
「ん、そうだね。暑くない。」
なんて羨ましい。俺は額の汗を拭う。
動いてないのに汗が噴き出てくるなんて、この暑さは異常だ。

「そ・・・

1

明日になれば君と

16/08/20 コメント:0件 奈尚

「いやあ、ひどい揺れだったねえ」
「全くだ。魂消たよ」
 近所の住民達が、疲れた表情をしてぞろぞろと広場に集まってきた。皆着の身着のまま、枕やら本やらを抱きしめている。
 俺も、よれよれのパジャマ姿で所在なくそこに立っていた。腕にはいつの間に抱き上げたのか、飼い犬がすっぽり収まって不安そうにしている。
「ここは、もともと火山島だからな。地震が起きやすいんだ」
「電気の・・・

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宙に浮かぶ想いは蛍

16/08/20 コメント:4件 日向 葵

 夏の暑さに抗ってタオルケット一枚で眠るお寝坊さんなあなたを、私はそっと揺り動かす。あなたはそれに気付いたのか、それとも自然に目が覚めただけなのか、重い体をゆっくりと起こし始める。
 「ああ、もうこんな時間か…」
 「あなたはいつも起きるのが遅いから、その鳥の巣みたいな髪の毛を直す時間が無いのよ」
 隣では娘の香織が可愛い顔を枕に埋めて寝息を立てている。
 「香織を起こさな・・・

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Q 三十歳まで普通の大工だったのに、四十過ぎてから歴史的偉人になったのは誰でしょう?

16/08/19 コメント:0件 海見みみみ

 線を描く、描く、描く。線はいつしか絵になり、マンガになった。紙の上で繰り広げられるマンガという小宇宙。でも、
「これじゃダメだ」
 俺は自分で描いたマンガのネームを丸めてゴミ箱に投げた。また絶望へと一歩進んでいく。いくら描いても自分のマンガに納得できない、無限に続くような地獄。
 三十路まで後一年。もう残された時間は少ない。
 鏡を見ると、俺の目は死んでいた。
「も・・・

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我らが文芸部の抱える二、三の問題

16/08/19 コメント:0件 海見みみみ

 我らが文芸部には幽霊部員が多い。部長である私としては頭痛のタネだ。
「どうしたんですか難しい顔して」
「いや、ちょっとね」
 部員の一人、アカリちゃんが心配して声をかけてくる。その腕にはプリントアウトしたのであろう原稿を抱えていた。
「それ、新しい原稿でしょう? 見るよ」
「よろしくお願いします!」
 アカリちゃんから原稿を受け取り、一枚ずつ読んでいく。

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醤油屋マダム咲子

16/08/18 コメント:0件 白取よしひと

□咲子
何代も商いを続けてますとね。それは恐ろしい話も塵の様に積もりますわ。
ほほほ。ご興味がおありですか?それではこの大暖簾を潜ってごらんなさいな。
あれもこれも想いを吸い尽くした曰く付きのものばかりよ。
「まぁ。あんたこの世のもんじゃないね」
うちは醤油屋。冷やかしならどっかに散りな。

江戸時代からの老舗に嫁いだのは良いけれど、当主のお父様が亡く・・・

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幽霊のお説教

16/08/18 コメント:0件 寿ぴ

幽霊『(女がいるな。ちょっと脅かしてやるか…)』

幽霊『ばっ!』

女「……。…あなた、宇宙論的ニヒリズムって知ってる?」

幽霊『あ?宇宙?』

女「知らないの?有名な哲学的問題のはずだけど。大雑把に言うと、人は死んじゃうし、人類もそのうち絶滅するだろうし、いつか宇宙も滅びると言われているわ。それなのになぜ私たちは生きる意味があるのかしら。大金持・・・

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赤い傘と彼岸花

16/08/17 コメント:6件 デヴォン黒桃

 
「刑事さん、ドウカ聞いて下さい。アノ八月の半ばに起きたひき逃げ事件の犯人は私で御座います。ドウヤラ私は呪われて仕舞ったのか、頭がオカシク成って仕舞ったのか定かでは御座いませんが、居ても立っても居られなく成り、出頭した次第で御座います。アノ日は雨が降って居りまして、月は群雲が掛かっており、暗い夜で御座いました。言い訳しても致し方御座いませんが、視界が悪かったので御座います。ソコへ急に、赤い・・・

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紹介したい人がいるの

16/08/17 コメント:0件 *葉月*


『もしもしお父さん? 麻美だよ! 久しぶり!』

「あ、麻美!? 本当に麻美か!?」

死んだはずの俺の娘、古川麻美。

3年前、交通事故で亡くなったのだ。

なのに、何故電話がかかって来るのだ…

俺は、思わず腰を抜かしてしまった。

『もー、何でそんなに驚いてるの? 電話しただけでしょ?』

受話器から・・・

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幽霊惑星

16/08/16 コメント:0件 風富来人

 二〇一X年、アメリカ合衆国国防総省において、人類は二体の地球外生命体とのコンタクトに成功した。地球外生命体には名前があるが、人類には発音ができない名前なので、アダムとイブというニックネームが付けられた。アダムとイブは高度な知識を有しており、我々人類との会話は我々の言葉を使って話してくれた。
 アダムとイブの話によると、二体は「スター・ヒーラー」という、星の意識体を自らの身体に憑依させ、星の・・・

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ルームロンダリング

16/08/16 コメント:0件 山中

 1LDKのマンションの一室に住み始めてから、すでに二ヶ月以上が過ぎようとしていた。都心からやや離れた閑静な住宅街の中、最寄駅まで徒歩八分と条件は悪くない。
 築四十五年とはいえリフォーム済みなので古めかしさは感じないし、近隣とのトラブルがあるわけでもないが、この部屋では数カ月ほど前に人が一人死んでいる。いわゆる事故物件と呼ばれる部屋だ。

 こうした物件は借り手が付きにくい。入・・・

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じゃあ、死んでみますか?

16/08/15 コメント:4件 あずみの白馬

 3年付き合っていた彼と、連絡を取らなくなって1か月が過ぎた。
 私は30歳、26歳になる彼は大学の研究室にいて忙しく、1か月に一度ぐらいしか会えなかった。その不満をぶちまけたら、その日から連絡が途絶えた。
 
 私は今日も会社に行くために、いつも使っている小さな私鉄の駅にいた。
 彼と連絡が取れないのは辛い。お互い嫌いじゃ無い。縁りを戻そうかと何度も考えた。けれどまた同じ・・・

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冷やしうどん

16/08/14 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

盆休みを利用して、久しぶりに実家に帰ってきた。妻と、5歳になる娘をつれての帰郷だった。
しばらくみないうちに、父はめっきり老けていて、子供の頃は脅威だった頑固おやじの存在は、いまでは影をひそめていた。
母はまだ元気で、孫の福をみるなり思い余って、そんなことはしない人だったのに、みんなのみているまえで、力いっぱい抱きしめるのだった。
妻の美子は結婚まえまで接客業をしていたせいか、両・・・

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束縛金魚

16/08/14 コメント:0件 待井小雨

 金魚を食べた。
 誰もが寝静まる深夜にそっと、金魚鉢に手を浸す。捕らえた金魚をつるりと飲み込んだ。尾ひれが食道をくすぐり、余韻がいつまでも残った。

 翌日の夜、とんとんとん、とドアを叩くものがある。
 昔ながらの無駄に広くて古いこの家は、あちこち隙間があって風が通る。そのせいで部屋のドアが揺すられたのかと、気にせず読書を続けた。
 するとまた、とんとんとん――と音・・・

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束の間のノア

16/08/12 コメント:0件 待井小雨

 しっぽだけがゆらゆらと揺れていた。それは我が家の飼い猫、ミアのしっぽだ。もう大人猫で、走り回ったり飛び跳ねたりする事はあまりない。しっぽだって、名前を呼んでも億劫そうにゆっくりぱたん、ぱたん、と振るくらいしかしない猫だ。
 それが珍しく機敏にしっぽを動かしている。いつになく活発な動き(しっぽだけだが)に、僕は首を傾げる。
「何してるんだ、ミア」
 しかしミアはちらりと目を寄越す・・・

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一週間のすれ違い

16/08/12 コメント:0件 恵本とわも


肝試しに行ったのは、もう半年以上前だったはずだ。そのとき、幽霊を見るとちゃんと怖がったし、もちろん幽霊と友達になったりもしなかった。それなのに今、僕の部屋に幽霊が訪ねてきた。幽霊だと思ったのは、その青年の足が半分しかないからだった。足がないというのに、部屋の中をすいすいと泳ぐようにスムーズに移動する。幽霊でなければ何だというのだ。

僕は友人に、幽霊が訪ねてきたことを話し・・・

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幽霊だとは気づかない

16/08/11 コメント:2件 守谷一郎

夜勤をあけて四畳半の狭苦しいアパートに帰ってくると物の配置が換わっていた。というよりも散らかされていた。
最近、いつもだ。
脂ぎった顔を洗おうとして洗面台をみると洗顔料の蓋が空いたままになっている。
仕事に行く前に使う習慣はないし、むしろ朝帰りをしてから何かする気力など湧かない。片付けをしてから家をでるのが常だった。
そうすると、これは何者かに荒らされたと考えるのが自然だろ・・・

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幽霊の謎を追って

16/08/11 コメント:8件 あずみの白馬

「うちにスクープはいらないって言ってるでしょ!?」
 夏休み真っ盛りの登校日、安曇野高校新聞部、部長の西崎みはるが副部長の白井康永をしかっている。
「でもさ、信濃大町駅の幽霊、最近すごい噂になってるし、うちで真相つかんだらお手柄じゃない? 壁新聞コンクールも近いし」
「壁新聞コンクール? ああ、近藤先生が言ってたやつ?」
「そうそう。優勝したらさ、絶対注目度上がるって!」<・・・

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ウルトラプロチョイス

16/08/10 コメント:0件 本宮晃樹

 子どもにできる限りの恩恵を与えたいと思うことが、果たして倫理に悖るのだろうか? わたしはそうは思わない。
「孵化機のご希望はありますか?」医師はつまらなさそうにボールペンを弄んでいる。ルーチンワークにうんざりしていることを隠そうともしない。「なければ〈イヴ〉にしますが」
 ぞんざいにパンフレットを渡された。〈イヴ〉のほかにも〈アフロディテ〉やら〈アテネ〉やらがあるようだが、どれも幹細・・・

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鬼灯セラピスト

16/08/10 コメント:1件 黒猫千鶴

 チリン、と鈴の音が訊こえてくる。
 目をゆっくりと開けると、いつの間にか十字路に立っていた。辺りを見回しても誰もいない。
「ここは……」
 思い出そうと考えると、頭が痛む。何もない、誰もいない。考えるのをやめて、帰ろうとした、その時。
「おや?」
 突然の人の声に驚きつつも、勢いよく振り返る。そこには、一人の男性がいた。
「どうしたんですか、お嬢さん」
・・・

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墓前の誓い

16/08/10 コメント:2件 上村夏樹

 うだるような暑さが猛威を振るう夏の日。
 蝉しぐれが降り注ぐ中、私は墓前に立っていた。
 墓に彫られた「松田家」の文字を見ながら、たった一言。

「亡くなってから、どれくらいの時間が経ったんだろう……」

 墓前で漏らした声は、夏の空に溶けて消えた。



 不運な交通事故だった。
 事故の原因は相手の飲酒運転。青信号だったにもか・・・

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火事と喧嘩と江戸の華

16/08/10 コメント:2件 永春

 陰気、陰湿、陰鬱。そんな梅雨のようにじとりと重くて暗い印象は、全くない。からりと晴れた暑い夏の青く澄んだ空。そこに白く浮かんで見える、真昼の月という印象だった。

「すごいと噂の『火事』と『喧嘩』が見たくって、成仏できねェんだ」

 トキチと名乗る半透明の町民風の男は、微塵も恐怖を感じさせなかった。

「江戸の華って言うじゃねェか。そういや喧嘩の『嘩』は華って・・・

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幽霊心中

16/08/10 コメント:0件 じゅんこ


 雨に打たれていた。打たれながら、どうかそのまま僕も一緒に地面に叩きつけてくれと願った。
 あと一歩だ。あと一歩踏み出せば、僕は数秒の恐怖を代金に死ぬことができる。その代金は今までに十分すぎるほど「勇気」として蓄えてきた。フェンスをこえるまでは造作もなく出来た。なのに僕は、雨で足が滑っても大丈夫なようフェンスを両手で握りしめ、情けなく泣いている。
 入社して初めて、風邪を装って・・・

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ふとんおばけ

16/08/09 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 ぼく、はると。七月に五さいになった。
 ぼくは、いつも、おかあさんと、おとうさんと三人でならんでねる。
 きょうは、日曜日。
 おとうさんがおきたのに、おかあさんは、ふとんにくるまったまま。
 ぼくは、おとうさんと、あさごはんをたべた。
 おとうさんが、おかあさんをおこしにいった。
「うーん。なんだか、からだがだるいの。」
 おかあさんが、小さな声でいう・・・

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慈悲深き満月の下で

16/08/07 コメント:2件 黒谷丹鵺

メリッサは塔で暮らしている。
明るいうちは一番てっぺんの部屋にしかない窓から外を見て過ごし、夜は壊れかけた古いベッドで眠るだけの日々が、もうどれだけ続いていることだろう。
食事を運んでくるのは老いて耳が遠くなった下女で、固くなったパンと味の薄いスープばかりである。聖なる書物の適当なページを読んで祈ってから食べるのが習慣だった。
あまりにも長い間そうしてきたせいか、メリッサに不満は・・・

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当麻君はユウレイには、なれない

16/08/07 コメント:1件 六連 みどり


悩んでいた。
昔から、ずっと悩んでいたことがある。


「なんで、俺はユウレイになれないのだろう」


どこにいたって誰かに見られている。

俺、という存在を誰かが認識している。

それは、俺にとって不快で、都合の悪いことだった。

消えてしまいたい。
見られたくない。

そう願い続ける俺にとっ・・・

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幽霊面接

16/08/05 コメント:2件 夏川

 草木も眠る丑三つ時。
 とある崩れかけの洋館に彷徨える魂の悲痛な声が木霊する――




「お願いします! 俺スゲー頑張りますから! シフトもいっぱい入ります!」
「だからうちじゃ雇えないって言ってるでしょ。何度来られてもダメなものはダメなんだよ」
「そこをなんとか! 俺、死んだらここの幽霊になるって決めてたんスよ!」

 足の無い半透・・・

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虫の幽霊は愛する

16/08/05 コメント:0件 水面 光

私はそんなに眠いわけではなかったが、ネットの生放送を観るのは飽きたし、電気ストーブの電気代がもったいないし、何より寒いので、布団に入ることにした。電気敷毛布を稼働させているとはいえ、あったまるにはしばらく時間がかかりそうだ。しもやけだらけの足が冷たい。照明を消すにはまだあと服薬と口の手入れ、それからトイレにも行かねばならないのでつけたままにして、私は布団の中でじっとして目をつむっていた。その現象は・・・

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カタスミ

16/08/05 コメント:2件 浅月庵

 本当に怖いのは幽霊なんかじゃなく、生きてる人間だと思う。
 
 新橋青也は女の子を部屋に連れ帰ってきては殺す。

 刺殺、絞殺、撲殺、毒殺ーーお母さんの作る夕食みたいにバリエーション豊か。

 彼の殺害動機や幼少時の家庭環境もわからないけど、とにかく欲望のままに女の子を殺す。大体、10代か20代くらいの若い子ばかりだ。すべて一人暮らしの彼の家で行われる。

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ナイトオーバー

16/08/04 コメント:7件 滝井渚

もうお休みでしょうか。そろそろ私もやすみますね。良い夢を。―――もう死んでしまった言葉

 駅の伝言板には『あなたは死んでしまったのですか。世界が終ってしまったことも知らずに。夜の天使より。』と書いてあった。その言葉に続き電話番号も。僕は書かれた伝言をぼんやりと眺めていた。
 僕は売れない小説家だ。今年で二十四歳になった。学生時代をこの京都で過ごした。
人々が過ぎる禁煙の構・・・

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すずめのチュンコ

16/08/04 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 村のはずれに、おじいさんとおばあさんがくらしていました。
 おばあさんは、編み物がすきで、カーディガンやセーターなどを編んでいました。
 ふたりは、とてもなかよしでした。
 だけど、去年、おじいさんが、病気でなくなってから、おばあさんは、笑わなくなりました。、
 今でも、おばあさんは、毎日窓辺で、編み物をしながら、
「あーあ、わたしも、あの鳥のように空をとべたら、お・・・

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死ぬ気で生きて!!幽霊からのメッセージ

16/08/03 コメント:2件 天野ゆうり

「何やってるんだろ、私」
夏の暑い日、中学最後の夏休みにぼんやりぼやきながら学校から帰る私、灯利(あかり)。
『そうねー、8月最後の出校日に、ほとんど友達の答え丸写しだもんね。これじゃ、受験が思いやられるわ……』
「だよねーー……て、ん?!」
『ん?!』
そこにいたのは見ず知らずの女の子。しかも若干顔色が悪く透けている。……足は、あるけども……どう見ても普通の人じゃな・・・

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ありふれた言い訳

16/08/03 コメント:0件 つつい つつ

 東京駅を出て、もう三時間以上経つ。津本香里は隣に座る恋人の泉野愁(しゅう)の存在は気にしながらも、まだひと言も言葉を交わしていなかった。
 愁と付き合って一年以上になる。香里は愁のことが誰より大切で、ずっと一緒にいたいと願っていた。そして、一ヶ月前、香里の三十歳の誕生日、ついに愁からプロポーズされた。これからも幸せな毎日が続くと思えたその時、それは突然始まった。
 香里がプロポーズを・・・

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ハッピーバースデー、「さようなら」

16/08/03 コメント:2件 夜門シヨ

 ある日曜日の昼下がり。
 とある町の隅にある寂れた公園に、一人の上品そうな服を着た物静かな少年がブランコに揺られながら座っていた。時々チラチラ、そわそわと周りを見渡している。
 そんな公園に、ある一つの足音が近づいてくる。その足音が大きくなるにつれて少年は顔をほころばせていく。

「桃李!」
「拓海君!」

 現れたのは鼻に絆創膏を付けたいかにも活発そう・・・

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ねえ、泣かないで

16/08/03 コメント:0件 Rook

 毎年のように八月のこの時期になると妻を泣かせてしまう自分は、いったいどうしたらいいのだろうか。悔しくて、堪らない。
 「ねえ、泣かないでよ」
 そっと後ろから呟いてみても、彼女には聞こえないのか知らんぷりだ。
 この日になると、愛娘に隠れるようにそっと涙を流す彼女を見ていられなかった。

 我が家は3年前のあの日からすっかり変わってしまった。
 やっとハイハイ・・・

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御会式の夜

16/08/02 コメント:0件 たんぽぽ3085

御会式は、享和・文化文政の頃から日蓮上人の忌日を中心とした、
毎年10月16日から18日に行われている伝統行事。
和紙の花を一面に付けた大きな万灯を掲げて、
町内ごとに、各々の調子で団扇太鼓を叩きながら、鬼子母神まで練り歩く。 
冴子は幼年期を雑司ヶ谷の、鬼子母神にほど近い所で過ごしたから、
毎年のようにこの熱狂的な行進を目にしてきた。
近所の子どもたちと一緒・・・

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二〇〇二年の夏は、まるで幽霊のように

16/08/02 コメント:0件 しーた

 二〇〇二年の夏の、ある日曜日のこと。その日は雲一つない晴れた日で、僕は駅前の広場にいた。何故そこにいたのか、何をしていたのかはあまり覚えていない。友達と待ち合わせをしていたような気もするし、散歩の途中だったような気もする。駅前の様子もぼんやりとしか覚えていないが、人はそれなりにいたと思う。
 そんな日曜日の昼下がり、唐突に僕の視界に、ある一人の女性が飛び込んできた。その女性は真っ白なサマー・・・

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幽霊になってみた

16/08/02 コメント:1件 海見みみみ

 あのピーケーでゴールを決めていたら、僕らの高校は全国大会に出場していた。
 でも現実はあまりに非情だ。僕はゴールを外し、全国大会への夢は一瞬にして断たれてしまった。僕がシュートを一回失敗しただけで。
 チームメイト達は『気にする事はない』と言ってくれた。でも彼らが心の中でどう思っているのかはわからない。気づくと僕の耳には『お前のせいで全国大会に行けなかった』という心の声が聞こえてきた・・・

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【水の家】

16/08/02 コメント:3件 吉岡幸一

 昨夜から降りだした雨は二十四時間たった午後十時を過ぎても降り続いていた。台風はまさに町を直撃していた。あと一時間もしないうちに台風の目に入るだろうと、NHKラジオは紳士的な口調で繰り返している。
 川沿いに一人で暮らす老人は気が気でなかった。ちょうど十年前にやってきた季節外れの春の台風のとき、川が氾濫し、床上浸水を経験したからだ。そのとき隣の木造家屋は倒壊し、家の下敷きになった老婦人が亡・・・

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奇妙な夢

16/08/02 コメント:0件 蹴沢缶九郎

それはとても奇妙で不気味な夢だった。突然男の目の前に現れた禍々しい影が言ったのだ。

「私はお前の暮らす土地に昔から住み着いている悪霊だ。お前に恨みはないが、お前を呪い殺すとする」

男はそんな事をされてはたまらないと、悪霊に懇願し抗議した。

「何故そのような事をするのです!? やめてください!! 酷すぎるじゃありませんか!? 理不尽だ!! あんまりだ!! 」・・・

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のっぺらぼう

16/08/02 コメント:0件 林一

「その女が振り向くと、そこには目も鼻も口も付いていない、ツルンとしたな顔が……」
「キャー!」
「もう、ユキはほんとに怖がりね。今時、のっぺらぼうの話なんかでこんなに怖がる人いないわよ」
「だって、顔がない人間なんて想像しただけで怖いじゃない」
「まあそうだけどさあ」
「怖い話はもうやめようよ」
「じゃあ気分を変えて、恋愛の話でもしよっか。最近どうなの?」

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霊力増強剤

16/08/01 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

いやな時代ね。
お苑は憮然として表情をゆがめた。
ここは老舗の造り酒屋だった。
お苑は、三代前の主の娘で、もちろんいまはこの世の人間ではない。店ではたらく杜氏を好きになってしまい、一人娘を裕福な同業者のところに嫁がせるつもりでいた親は、生木を割くようにふたりを別れさせたあげく、杜氏にはべつの女を嫁がせた。お苑の怒りは、男がその女とあっさりいっしょになってしまったことだった。

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空き家の壁の佐藤さん

16/08/01 コメント:3件 クナリ

 いわゆる高度経済成長期、父の仕事の都合で転校の多かった私だけど、小学六年生の時に引っ越した海の近い町での孤立ぶりは特にひどかった。
「皆に早く溶け込まないといかんよね」と様々なクラスの係を押し付けられ、「忙しそうだから邪魔せんように」という理由でクラスメイトは誰も私に話しかけなかった。けれど、家族に相談もできなかった。
 ある日、帰り道で一軒の空き家を見つけた。
 庭から中に入・・・

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カンボジアからの挑戦

16/08/01 コメント:0件 ポテトチップス

 布団から起き上がると、テーブルの上に1万円札が1枚置いてあった。タカはその金を見て、あのババア、男の所に行ったから、しばらく家に帰って来ないなとせいせいした。
 歯と顔を洗い、いつも履いているジーンズとTシャツに着替えると、1万円札をポケットに詰め込んで家を出た。外は満月で明るい。
 いつもの公園に着くと、学ランを乱して着こなしているミツルが、ベンチに座ってタバコをふかしながら、タカ・・・

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僕がユーレイになったワケ

16/08/01 コメント:0件 泉 鳴巳

「人類は、既に滅亡しているわ」
 八月三十一日、アブラゼミからヒグラシへと主役が移った夕方のこと。
 僕が暮らす安アパートの一室に突如現れた彼女は、明日の天気の話をするような調子で告げた。

 いったい何が起きているんだ。彼女はどうして突然ここへ現れた? 疑問は後から後から湧いてくるが、大騒ぎするタイミングを逸してしまった僕は何も言えず、説教をされている子どものように大人し・・・

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君に贈るギフト

16/08/01 コメント:0件 みや

なけなしの貯金を叩いて、小さなダイヤの指輪を彼は購入した。そしてその小さなダイヤの指輪を、今夜彼女に渡す為に高級レストランもリザーブしてある。彼女は喜んでくれるだろうか、指輪を?彼女は受け入れてくれるだろうか、プロポーズを?

高級レストランに先に到着した彼は予約席に若いボーイに案内された。フカフカの座り心地のとても良い椅子に座りながら彼は彼女に想いを馳せた。

彼女は現れ・・・

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君といた夏は・・・

16/08/01 コメント:0件 リアルコバ

あの年の夏、受験を控えた僕は予備校の夏期講習に悶々としていた。
(今年だけ、今年だけ我慢すればバラ色の学生生活が・・・)
里見恭子に出会ったのは、八月の最初の月曜日だった。

(あれ?あんな娘いたかなぁ・・・)
それはいかにも理系っぽい知的で芯の強そうな鼻筋、今まであまり接点のないタイプに大人の女性を感じたものだ。
『ねぇ同じクラスだよねぇ、俺、立花義彦、君は?・・・

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スマホ幽霊ゲーム

16/08/01 コメント:0件 あすにゃん

「封印表、どの程度埋まった?」
 永沢まどかは、となりの谷崎誠司のスマホをのぞきこんだ。
 泡を食ってスマホを隠す誠司に、まどかは笑った。まだ誠司のスマホ封印表は、一個も埋まっていなかったのだ。

 夏休み。星形の五芒星を使って妖怪を封印する位置ゲームが流行っていた。高校一年生のまどかは、クラスメイトの誠司に誘われて仕方なくはじめたが、今では逆に、まどかのほうがハマっ・・・

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Les Baux-de-Provence―死者の街――

16/08/01 コメント:2件 葵 ひとみ

 ここは南フランスのレ・ボー=ド=プロヴァンス(Les Baux-de-Provence)、

ダンテの地獄編のような景観(けいかん)が広がっている別名「死者の街」です――


ここにはエリザベス女王をはじめとするヨーロッパの貴族から、

成功したハリウッドの俳優まで人生の一生に一度は訪れるという伝説の5つ星のホテル

があるのですが、数年前に・・・

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いつでも傍に

16/08/01 コメント:0件 ちほ

 花開く春も入道雲が沸き立つ夏も木の葉の舞う秋もしんしんと寒い冬も、いつも一緒に暮らしていたい。それが二人の願いだった。しかし、長い人生を幸せに生きてきた彼らにも、不安はいつも胸の横にそっと居座っていた。それは、ときに妻の心を食い破ろうとするかのように痛みを運んできた。それに耐えかね、妻は愛する夫に尋ねた。
「あなたがいなくなったら、わたしはどうしたらいいの?」
 夫はいつだって答えた・・・

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71年後のナイン

16/08/01 コメント:0件 ポテトチップス

 銀蔵は薄っすらとした意識で天井を見つめていた。開けている目からは、もう光しか感じられなく、今は昼なのかどうかさへ分からなかった。遠くなる耳に妻や息子夫婦、それに今年高校生になる孫の声が小さく聞えた。
 俺の命はついに尽きるのか。死んだらきっと、1人であの世に行き、光があるのか無いのか分からない世界で、輪廻の時が来るまで、じっと膝を抱えて孤独に待つのだろうかと思った。
 誰かが銀蔵の手・・・

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涙の止め方を忘れた女-幽霊-

16/08/01 コメント:0件 蒼樹里緒

 あるところに、涙の止め方を忘れた女がいた。女は、嬉しいときも悲しいときも悔しいときも、ひたすらに泣き続けていた。
 ある夜、女はトンネルの入口を歩んでいた。街灯の光が仄かに闇を照らす中で、一人分の足音だけが反響する。生暖かい夏の風が、女の短い黒髪や、同色のワンピースを撫ぜていった。
 やがて、中ほどまで進んだ時。ひゅう、とやけに冷えた風が吹き抜けた。女の肌が粟立つ。
「驚いた。・・・

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クリトルリトル

16/08/01 コメント:0件 笛地静恵

 女の子たちは、この異様な世界で生きのびるために、何らかの特殊能力を持っています。あたしはクリトルリトルに高温に熱した槍をつきさしました。愛好さんの弓矢が爆発しました。
 隊列を組んで進行していきました。
 遠征隊の総勢は五名です。もっと人数が欲しかったのです。が、学校の防御も必要です。危険に満ちた世界です。学校の桜の下の木の墓標は、五柱に増えていました。
 あたしたちも、もう小・・・

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ありがとう大作戦

16/08/01 コメント:0件 Fujiki

 霊感があって得することは、ほとんどありません。血まみれで体の一部が欠損している幽霊は見ていて気持ちのいいものではないですし、トイレや浴室に幽霊がいると虚ろな視線が気になって服を脱ぐのにも落ち着きません。特にこの島では先の戦争で熾烈な地上戦があったせいで、幽霊の人口過密が深刻です。総死者数二十四万余、島民だけでも当時の人口の四分の一が死んだわけですから、文字通り石を投げれば幽霊に当たります。

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遠いトルコの小石の物語

16/08/01 コメント:4件 葵 ひとみ

 ここに一つのラピスラズリの色と群青色を混ぜたような色のトルコの小石があります。


  遙か遠い昔の御話です――

 ある国の少女と、その国と敵対する国の少年が恋をしてしまいました。

いつも、二人で秘密で会うのは、森林の木漏れ日の中の、

滝を裏側から眺められる「裏見の滝」の洞窟の中です。

少女と少年はいつも滝のせせらぎを聞き・・・

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