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  2. 第100回 時空モノガタリ文学賞 【 純文学 】

第100回 時空モノガタリ文学賞 【 純文学 】

今回のテーマは【純文学】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2016/02/29

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2016/01/04〜2016/02/01
投稿数 54 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

12

純文学と名付けた人をきっとこの先も知らずに生きていく

16/02/01 コメント:13件 そらの珊瑚

 私が書店員になった理由のひとつが、あの日々につながっている。

 新刊が店に届く。バックヤードで、その荷をほどく時、その本の著書のひとりが、もしかしたら君の名前ではないかと、目で探してしまう。大学を卒業したあと、本屋に就職して十年。それはもうくせのように身にしみついてしまったようだ。作家になりたいと君は言っていた。夢が叶われたとしても、本名で本を出すかどうかもわからないのに。
・・・

6

情報表示法の制定過程と純文学の危機

16/01/26 コメント:5件 橘 聰

 体に入る食べ物に何が入っているのか、安全かどうか、安全と言いきれないならどこまでが許容範囲なのか……。消費者意識の高まりとともに、そういった情報を得て可能な限り自身の手でリスク管理したいという要求が出てくるのは至極当然の流れであり、「食品表示法」という法律がかつて制定された。
 そして消費者意識は次の段階に入る。体が摂取するものの成分を知った後は心が摂取する様々な情報の成分を知りたくなった・・・

16

スーラ・スールの咲かないザクロ

16/01/09 コメント:16件 クナリ

 スーラ・スールという名前は、十五歳の冬に私が自分で付けた。
 綴りが簡単で、女らしいが男かもしれない名前。

 昨日自転車を置き忘れた通りに行くと、既になくなっていた。
 辺りを見回していたら、冬枯れの木が並ぶ路地に痩せた家が建っており、そのドアの脇に私の自転車が立てかけてあった。
 家は、随分うらぶれている。空き家かもしれない。
 私は鍵のかかっていないドア・・・

3

純文学の書き方

16/01/04 コメント:2件 みや

まず風景や行動の描写を出来るだけ長くしてみて下さい。そうですね、鳥居を抜ける恋人達のこの写真を見てただ単に「二人は鳥居を抜けた…」ではなく、「二人は熱い想いをそれぞれの胸に秘めて真っ赤な朱色の鳥居を加速する鼓動の早さと同じ速度で通り抜けた…」と表現してみては如何でしょうか?そうする事により恋人達の感情が温度となって読み手に伝わりますし、芸術的要素も加味されるのではないでしょうか?芸術的要素は純文学・・・

最終選考作品

14

狂人の私が捨てたもの

16/01/31 コメント:12件 草愛やし美

気が付いた時、私は一冊の本を抱きしめていた。その頃、私が執心だった文学書だ。船の難破によって打ち寄せられた浜辺にあっても私が落ち着くことができたのはこの本のお陰に相違ない。救命胴衣の下に着ている作業服の胸ポケットから引っ張り出したその本は表紙こそ海水でふやけていたが中はそうでもない。その紙束を私は大事そうに胸に抱く。ここはどこなのかなど私にとってどうでもよいことだ。白い砂浜に波が押し寄せる音だけの・・・

4

先生はお前らが大っ嫌いです

16/01/31 コメント:5件 高橋螢参郎

「……どうですか、先生」
 副部長の今井春香がせっつくように後ろから覗き込んでくるのを、俺は「まだ読めてないよ」と手で遮った。
 大体どうですか、も何もよう。こんな衆人環視の中で落ち着いて小説なんか読めるわけねえだろ。バカ。
 本音はそんなとこだったが、残念ながら俺はこれでも高校の先生だ。しかも形だけとは言えこの文芸部の顧問ときてる。となればあまり滅多な事は口に出して言えねえわけ・・・

8

玻璃の中

16/01/27 コメント:7件 宮下 倖

 
 いつもの書店を出て、いつもの角を曲がったのに、ふと目を凝らすと見覚えのない路地が延びていた。月のない夜空はのっぺりと艶がなく、頼りない街灯の瞬きは奥の闇をいっそう濃くしている。おかしいなと訝しんだものの足を止めなかったのは、ほんの十数メートル先に白い提灯を下げた屋台がぼうっと浮かび上がっているのが見えたからだ。 

 おでん屋かラーメン屋か……。なんにせよ酒でも呑めるなら一・・・

22

罠尾軒の人々。

16/01/17 コメント:16件 滝沢朱音

 灰次郎は、今日も天秤棒をかつぐ。
 桶には「猫、買い〼(ます)」の札。にゃうにゃうと騒がしい蓋の隙間からは、かわいい手が交互にのぞく。年の瀬は仕入れ時だ。
 人目を避けて近づく着流し姿の男は、憔悴した顔をしていた。まだ若そうな三毛猫が、男の懐からちょこんと顔を出している。
「文猫(ふみねこ)ですか?」
 灰次郎が聞くと、男は首を横に振った。
「では、あ・・・

6

それは紙魚からはじまった

16/01/05 コメント:6件 W・アーム・スープレックス

本にくっついた紙魚の行動が変だった。
私は好奇心をそそられてそれまで読んでいた活字からその銀色の虫に視線を転じた。
ふいに紙魚は前進した。が2ミリほど行ったところで右にまがり、また数ミリ進んで左に折れたかと思うと、今度は反対方向に歩きだし、すぐまたたちどまった。それはまるで人が試行錯誤したあげく紆余曲折している姿に似ていた。一分ほどその場に静止していた紙魚は、やがて本のページから机の上・・・

投稿済みの記事一覧

6

花の顔

16/02/01 コメント:8件 冬垣ひなた

 ――文学は所謂煮こごりだ。味気もないゼラチンに優れた価値を与えるのは、美味い魚と煮汁、熱に冷たさに、料理人である。だが冷めた目で見れば煮こごりは添え物どころか、余り物に過ぎず、それを毎日の主食にする事は料理人ですら厭うであろう。煮こごりとなら死んでも構わないと云う奇天烈な料理人は居るまいが、その酔狂さこそ、文学者の本望なのだ。
                              (・・・

7

或る素人作家の話

16/02/01 コメント:16件 泡沫恋歌

 素人作家の泡沫廉太(ほうまつ れんた)は、小学校五年生の時に作文コンクールで最優秀賞を貰ったことがある。その時、校長先生が全校生徒の前で廉太の作文を読み上げて褒め称え、その記事は新聞にも載った。両親は大喜びして我が子を「神童」だと近所に自慢して回った。
 嫌々書いた宿題の作文で、こんなに評判になるとは思ってもみなかった、自分には《文章を書く才能》があるかもしれないと自信を深めた。この作文コ・・・

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音録りウロツキの子。

16/02/01 コメント:0件 むねすけ

 言の葉集め。

 私の仕事です。

 今日を生きる糧を得ている、じっとしかできない未来をつぶすための、大切なお仕事です。

 ボイスレコーダー片手に、ウロツキの子。

 うろつき回って、言葉を拾う。

 売れる言葉、売れない言葉。値の安い言葉、高い言葉。

 判断基準は一応持ってるつもりだけど、長年の勘ってやつもあるつもりだ・・・

0

足がないのにカランコロン。

16/02/01 コメント:0件 むねすけ

人生の賭場口に、サイコロを持って立つ。
ここまでの自分の走り込みでダイスの面の数に差が出る、しかしそれでも信じないといけないのは、
20面ダイスにだってイチもあればニもあるってことで。

合言葉は「視えないのに書くな、目なしの語り部は砂漠の宿屋にも雇ってもらえない」
「牡丹灯籠カランコローーン、足がないのにカランコロン?」
「ムクつけき浪人無粋の侍も、楊枝くわえ・・・

1

十文学

16/02/01 コメント:2件 にぽっくめいきんぐ


老人はベッドにいた。

彼は成功者であった。
代償は家族の不存在。

病室には来客が多い。
熱気と声があふれた。
面会時間を守れない。
度々医者に怒られた。
通販で時計を買った。
アラーム音は分かる。
針の音は聞こえない。

一年で来客は絶えた。
お世話ロボが残った。
一般人では買えない。
彼は・・・

1

我輩の愚痴である。名前は未だ無い。

16/02/01 コメント:2件 霜月秋介

 読者に媚びず、芸術性を重視したものを純文学と呼ぶらしいが、私には大衆文学とそれの境界線が見えない。わからない。
 そもそも私は文学については疎い方である。私は小説をあまり読まずに育った。というより小説に興味を抱けなかった。それが災いしてなのか、文章力も読解力も人に比べてさほど無い。それが最近になって興味を持ち始めている。
 明治の文豪、夏目漱石の本を何冊か読んでみた。そこで私は、いく・・・

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コタツの中で考えたこと

16/02/01 コメント:0件 ケイジロウ

 気が付いたらあたりは真っ暗で、パソコンの画面が僕の部屋で唯一の光源となっていた。
 どれくらい僕はパソコンに向かっていたのだろうか。寒い。コタツに下半身は入っているがコタツの電源は入っていなかった。コンセントすら入っていない。コンセントを入れるには一度コタツをでなくてはならず、それも面倒臭いのであきらめた。疲れているかもしれない。目を3秒ほど閉じると、一瞬平衡感覚がなくなった。やっぱり疲れ・・・

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純文学太郎

16/02/01 コメント:6件 しーぷ

 むかしむかし、ある川でおばあさんが洗濯のついでに水浴びをしていました。すると、こそこそ、こそこそと、辺りの茂みに村の男たちが集まってきました。目的はもちろん覗きなのだが、たった今水浴びをしているおばあさん、齢六十をとうに超えているのにまるで十代のような若さを持っていたのです。そう、美魔女なのです。

 おばあさんが川からあがると、どんぶらこっこ、どんぶらこっこと、侍もしくは大和撫子の・・・

1

純文学家のすき焼き

16/02/01 コメント:2件 そらの珊瑚

 父は頑固者だ。純文学以外、文学としては認めないという。何という一徹。何という石頭。その頭をとんかちで割ったら純文学という名の石が出てくるのぢゃなかろうか。長男はうっかりクスリと笑った。失笑というやつである。めざとい父はその瞬間を見逃さなかった。暇でもあった。純文学というジャンルが売れないという鬱屈もあった。そんなもろもろを投げつけるように長男に向かって声を荒げた。
「おまえは今、笑っただろ・・・

6

一妄想家のたまゆら純文学論もどき

16/02/01 コメント:10件 光石七

 少し肌寒い微風が黄金色のトンネルを揺らす。枝から離れた黄葉が力尽きた蝶のように舞い落ち、先に地面で眠る仲間たちの上に重なる。銀杏並木を歩きながら、ニャツミは物寂しさを秋のせいにしようと努めた。ニャオキとの結婚を控え、幸せなはずなのだ。一番辛い時に傍にいてくれたニャオキ。これからも変わらぬ愛で自分を守ると誓ってくれ、ニャツミもニャオキを信じている。なのに、何がこんなに不安なのだろう。
 前か・・・

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超ライトノベル盛衰記

16/02/01 コメント:0件 海音寺ジョー

「そのねー、ウチねー、あの人の本が好きだわ。なんてったっけ?名前」
「アレっしょ、蚊流葉墨屁太、カルハズミペータでしょ。アタイも読んでるんよ」
 約200文字。ラノベより、ケイタイ小説よりも薄くてチャラい究極の大衆小説、超ラノベという新たな金脈をほじくり当てた屁太先生は、いまや女子高生、女子中学生の大人気を博していた。
「登場人物も3人以上出てこないしねー」
「チョー字数少・・・

3

庭先で本を焼く

16/02/01 コメント:6件 四島トイ

 叔父は庭先で火を焚いていた。
 いつもどおりの陰鬱な表情。生気の無い瞳に無精髭。綿の飛び出た半纏姿。腰掛けている空洞コンクリートブロックには赤茶けた泥と青緑色の苔。曇天模様の冬空の下、この世の不吉が服を着て居座っているかのようだ。
 わたしは嬉しくなって駆け寄った。
「笑うもんじゃないよ」
 隣に腰掛けると、橙色に照らされた顔を上げることなく叔父は呟いた。「お前はいつも俺・・・

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タラチネノ母ノ命ヲ一目見ン

16/01/31 コメント:2件 梨香

『サンフランシスコ行きの飛行機は霧の為、運航を停止しています』
 ラスベガス空港に着いた途端のアナウンスに、文彦は焦った。一刻も早く帰国したいのに、霧でサンフランシスコ空港がクローズしているのだ。
『サンフランシスコが駄目なら、ロサンゼルスで乗り換えたい』
 慣れない英語で、今日中に日本に帰らないといけないのだと空港カウンターに文句を付けたが、売り切れだと素っ気なく告げられる。<・・・

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散文の海へ。2016

16/01/31 コメント:11件 たま

 作家開高健がサイゴンの河岸の屋台で、熱いモツ粥をすすっていたのは1964年の雨季のころで、わたしはその翌年の夏、日本に生まれた。

「ぼく、わからないです。こんなくだらない人間の、くだらない感情が、どうして小説だといえるのですか?」
「うん、たしかにくだらないかもしれない。でも、丹青ならとおもってさ」
 それで、わたしは丹青に開高の『夏の闇』をプレゼントしたのだけれど、北・・・

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仮想現実上とある出来事

16/01/30 コメント:2件 内村うっちー

表面、


数日前、登録中の小説投稿サイトで突然メッセージが届く。

以前から親交ある女性から「相談です」と意味深タイトル。
自作品に何度も不快な感想を送られて困っているとの内容、
とりあえず特定ユーザブロック機能を使用する助言を行う。

しばらく様子見していたが「自分の活動報告」に当事者現れた模様。
自分は毎日ネタ話を文章練習垂れ流して・・・

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くそをくらえ

16/01/30 コメント:1件 かめかめ

 その文学賞に応募したのは三回。芥川賞作家が選者をつとめるその純文学の賞は「題材自由」とうたっている。私はとっておきのプロットを書き賞に臨んだ。
 一回目は二次予選突破。二回目は四次予選突破。私の文章はこの文学賞に向いているのだと自信を持って臨んだ三回目、予選落ちだった。屋根に上ったところで梯子を外された気持ちだった。
 モニタの前で次々に発表されていく名前を睨んだ。脳味噌をぎゅっとし・・・

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行く先

16/01/29 コメント:1件 橘瞬華

 一月二十九日。地は濡れそぼっており、澱んだ空気に吐き気がする。雪にでもなりそうな天気だ。洋靴に泥が付き、袴の裾に撥ねた。あなた、今日は何処へ行くんです、お仕事は、と追い駆けてくる妻を五月蝿い、家で物が書けるか、と振り切り何時もの道を辿った。くぐもった音と赤子の泣声が聞こえたが知ったことではない。
 家から程近い店の暖簾を潜ると奇妙な音が響く。店の中は薄暗く、一昔前にモダンだとか言って買い付・・・

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読みたい人

16/01/29 コメント:0件 月村千秋

 中学二年の冬、ストーブに近い窓際の席で僕は小説を読んでいた。クラスメイトの男子は年中無休でサッカーをしている。わざわざ手袋してまでサッカーしなくても、と僕は思うのだけど、彼らにとって昼休みに身体を動かさないのは罪悪らしい。
「なに読んでんの? そんなことしてないで遊ぼうぜ」
 無邪気に肩を叩いてくる男子がいた。
 はじめの質問は必要なのかな、と首を傾げていると、男子の一人が僕の・・・

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思いを伝える物質

16/01/29 コメント:3件 橘 聰

20××年9月11日 赤川竜平
 一人の物書きとして、一度くらいは純文学に挑戦してみたいと思うのだが、いざ取り掛かるとなるとどうしたものか分からない。私小説とは似て非なる純文学。美、芸術性をひたすら追求すること……。文学における芸術性とは何だ?

20××年9月20日 赤川竜平
 どうも、文学という枠組みに囚われてはいけないように思う。まず「芸術性」の何たるかを吟味した後、・・・

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私の生きる意味、生きる力

16/01/27 コメント:0件 Fue

自分は何の為に生きているのか、そもそも生きる意味などあるのか。つい最近私はこれについてよく考えていたが、これは多くの人が人生に一度や二度は考えることであろうと思う。
先日私は好きな人に振られた。正確に言えば振られたのではなく、彼女が別の人とのお付き合いを初めてしまったわけであるが、彼女を自分が愛せないことに変わりはない。そして私はその時ふと思ったのだ、これから何の為に生きればよいのか、と・・・

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16/01/27 コメント:3件 土井 留

 夏の盛りであった。
 実務的な打ち合わせが始まると、寛には全く居場所がなくなった。編集者は、それに気づいて気遣わしげな視線を投げかけたが、肝心の晶子は、相変わらず眼前の資料に見入っていた。
「ちょっと庭に出てくるよ。」
「あら、早く帰っていらしてね。」
 寛が呼びかけると、晶子は資料から顔を上げて明るく微笑んだ。夫への愛にあふれた笑顔であったが、それがかえって辛かった。仕・・・

5

純文学賞

16/01/24 コメント:3件 林一

「今年の純文学賞は面白い結果になったな」

「ああ。ダブル受賞した又吉さんと羽田さんは、どっちも初受賞だったしな。特に又吉さんは、処女作でいきなりの受賞だもんな」

「羽田さんの方も、4回目の純文学賞候補にして初の受賞だから、嬉しかっただろうな」

「最近の純文学賞は、受賞者がマンネリ化してきてつまんなかったからな」

「常連の受賞者ばっかりだったも・・・

0

道の先

16/01/23 コメント:1件 憂苦トウヤ

いつからだろう。
僕はいつから『僕』になったのだろう。
僕はいつから『夢』を見失ったのだろう。
僕はいつから『道』を歩くのをやめたのだろう。
物語の始まりは高校生だった。
まだ自分のことを俺と言っていた。俺という言葉はその人の自信の表れだと僕は思ってる。つまりは、高校生の自分はまだ自分に『自信』を持てたのだろう。
あの時は何もかもが輝いていた。何をしても成功する・・・

1

あの空の向こうに愛があるなら

16/01/23 コメント:4件 高木・E・慎哉

「サービスしまっせ〜!お客様〜」

君と出会えた奇跡は幻のようだった!

なぜなら、美しさの中に君が笑っていたから!

僕はとても幸運だった。

君と出会えてよかった!

「愛してくれてありがとう」

そう言って、君は去っていった…。

僕は天才だった。

なのに、小説一つ書けなかった。

・・・

1

椅子の下の暗がり

16/01/19 コメント:2件 土井 留

 小説家は、編集者に執筆に没頭したいと言ってホテルに部屋をとり、それきり帰って来なかった。
 
 被害者は坂本千里、二十七歳、クラブホステス。一月十四日午前五時四十分頃、県道三号で頭から血を流して倒れているところを発見された。第一発見者は近所に住む山田忠、六十二歳。通報で駆けつけた救急隊が被害者の死亡を確認した。死亡推定時刻は午前零時から三時頃。
 被害者の後頭部に陥没があること・・・

0

渾身

16/01/18 コメント:0件 鬼風神GO

 目の前には満月ならぬ、元カノの、どでかい横顔があった。誰もが知っているむぎ焼酎の看板だった。
 深夜とはいえ場所は池袋なので、地べたに座っている俺は当然だが、通行人からは奇異の目で見られている。
 まだ喉に、吐いた後の違和感がある。つばを近くの茂みに吐いた。青白い顔をしている俺を見て、露骨に嫌な顔をしていたタクシーの運転手の表情を思い出す。
 無意識に口をぬぐうと血がついた。加・・・

0

階段のその先

16/01/16 コメント:0件 れいぃ

 登り切るのはどうしてもいやだった。到着したところでどうなるのか、何も知らされていない。一説には無になると言われているが、それだって地上での噂に過ぎなかった。ホトリユキオは、七十八年五か月三日の地上生活を終えて、今、引き返せない階段を上らされているのだが、後にしてきた地上への未練がなみなみと胸にある。
 妻のマツコがデイサービスにいそいそと出かけていくたび若返っているように見えるのは浮気のせ・・・

0

乖離と付着

16/01/16 コメント:0件 夢森空間

親愛なる○○様へ 一片の偽り無き尊敬心を以て


 返信有難うございました。また筆をとります。(すみません。右奥歯の痛みがもう既に私の頬を這いずり、耳を通り抜け、こめかみを刺激し、理性までをも蝕み始めているのです。なので手短に記し、いつもより早々と筆を置かせて頂きます。どうか御寛恕願います)

 夜も更けました。もう皆休んでいます。外の大気は澄み切り、香しい薫りに満ち・・・

2

下巻を読む男

16/01/15 コメント:1件 前田沙耶子

僕は三十七歳で、そのときボーイング747のシートに座っていた。飛行機はハンブルク空港に向かっている。ドイツは初めてだ。やれやれ、土産は何にしようかと僕は思った。
春樹を読むのは初めてだった。海外出張のため何時間も飛行機に乗らなくてはならないがこれと言ってやるべき仕事もなかったので、その時間を読書と睡眠に費やそうと考えていたのだが、そのために買っておいた本を自宅に忘れてきてしまったのだ。村上龍・・・

7

紙の中を泳ぐ魚

16/01/12 コメント:9件 じゅんこ





 わたくしは、所謂《本の虫》です。
 現代では、ビブリオマニア、と言った方が良いイメージを持たれるかもしれませんが、いいのです。こっちの方がしっくりくる気がします。

 昔から読書に勤しみ、様々なジャンルを読破してきましたが、その中でも特に好んで読んでいたのは梶井基次郎でした。初めて読んだのは傑作『檸檬』。文章全体を統括して流れる頽廃的かつ清澄な空・・・

2

枸橘

16/01/11 コメント:2件 泉 鳴巳

 正体の分からぬ不穏な影が私の中で蠢いていた。
 窓の外に夜の灯がぼんやりと浮かび上がるのを横目に、蒲団の中で身を捩る。
 学も身寄りも無く、全身で齧りついている職さえもいつ切られるか。明日が見えない。焦燥、不安、嫌悪――そう云う感情が綯い交ぜになった汚泥が、心に堆積していく。
 身体は澱のように溜まっていく感情とともに次第に動かなくなる。そしてこのまま都会の片隅の汚い部屋で、何・・・

0

猫の鏡餅

16/01/11 コメント:0件 梨香

「シロ、明けましておめでとう」

 大晦日から、お正月にと年越しの瞬間を真っ白な猫はコタツの中で過ごした。旦那さんが、コタツから引っ張り出して、新年の挨拶をしてくれたが、寝ていたのを起こされて機嫌は悪い。

『にゃん! 酔ってるにゃん』

 旦那さんは、真っ白な猫に頬ずりするが、お酒臭い。猫は鼻をしかめて旦那さんから顔を遠ざける。

「シロ、お前にも・・・

0

吾輩は……である

16/01/10 コメント:0件 あすにゃん

「吾輩は……である」
 わたしは植山 千代子。純文学者である。 
 ピコという猫のほかに、パコ、マコ、エイコ、サダコといった、五匹の猫を飼っている。
 今日のように、題材があるのにうまく料理できないときなどは、一番可愛いピコを構ってやると、気分転換になるのだ。編集者の持ってきた松林などという人間などはどうでもいい。自分の恋愛経験を書いている方がよほど筆が進むのだが、仕事なのだか・・・

4

フィクションを好まない君へ

16/01/10 コメント:4件 守谷一郎

グッド・バイ株式会社 代表取締役 城之崎直哉 様

 前略
 やあ、直哉君。この前はモニターとしてご招待頂きありがとう。君が開発したVRシステム『Φ(ファイ)』はなかなかに画期的な発明だった。物語に没入するとはまさにこのことを言うのだね。まさか生きている間に、自分が小説の登場人物になれるなんて夢にも思ってなかったよ。
 それもミステリやファンタジーじゃなくて、近現代の純文学・・・

1

乱舞

16/01/09 コメント:0件 國分


 凛とした抒情の紡ぎ。女はひたすらにそれをしたためていた。

 ふと手が止まった。言葉に詰まった。おぼろげに庭先を眺めると、再び筆を走らせた。春霞にぼやける樺桜が、表現の手がかりとなったのだ。女の着想は、自然の恵みであった。

 言葉の流れの糸口は、春風に乗る花びらのように気まぐれに現れるのであった。それに出くわし振り向けば、そこには美しい表現の花が咲き誇っていた。・・・

2

純文学的な、余りに、エンターティメント的な

16/01/08 コメント:4件 W・アーム・スープレックス

直木龍之介は考えこんだ。
自分の書く小説ははたして純文学なのか。それとも大衆文学なのか。いったいこの線引きはどこでつけるのだろう。
自分ではいっぱし純文学を書いているつもりなのだが、よくよく考えてみるとそのちがいが判然としなかった。まるで上半身が大衆小説作家で下半身が純文学作家であるかのようななんとも中途半端な心境だった。人からきかれたときは一応、『もの書き』ですと無難に答える自分だっ・・・

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田舎学者の夢、暴走の末

16/01/08 コメント:0件 seika

 田舎学者、廣策にとって戸舞賛歌は中央の出版界に輝く巨星だった。戸舞家は大きな門扉と広々とした庭がある。門を入るとすでにクラシック音楽が流れている。そして戸舞賛歌の書斎に入る。中央の文壇で燦然と輝く戸舞賛歌が艶のある声で
「やぁ。」
と迎え入れてくれる・・・。廣策にとって戸舞賛歌は憧れの人であり、また自分よりもはるか雲の上に存在している輝く星だった。廣策はいつかは自分も戸舞賛歌と同じと・・・

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太宰、三島なんか読みたくない

16/01/07 コメント:6件 つつい つつ

 勉強机に座って、便箋を取り出す。手紙なんて書くの初めてだから、なんて書き出したらいいのかわからない。とりあえず、日菜子ちゃんの好きなラノベの感想でも書こうかな。
 そもそもなんで手紙なんて書くことになったのかというと、冬休みに田舎のじいちゃん家に帰ったら日菜子ちゃんに再会したからだ。日菜子ちゃんは、じいちゃん家の近所に住んでいる同じ年の女の子で小学校に入るくらいまでは田舎に行くたびに遊んで・・・

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ポテトヘッドの死

16/01/06 コメント:0件 Fujiki

 ここ二、三年ばかり、何をするにもやる気が起こらない。
 頼まれていた原稿は締め切りに間に合わず、返信が必要なメールも返すあてのない債務のように溜まっている。先日は卒業した教え子と会う予定だったのに風邪だと嘘をついてキャンセルしてしまった。以前ゼミで卒論指導を担当したその学生は現在アメリカの大学でスタインベックについての博士論文を書いている。彼が島に帰ってくるのは十年ぶりだった。
 大・・・

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K氏の境界

16/01/06 コメント:2件 土井 留

 ただ一つの絶対的な何かを持つ人は、公正無私の聖人となるか、あるいは一切の原則性を欠いた悪魔となるかのいずれかだろう。なぜなら、その人にとっては、絶対の価値を置くただ一つを除いて、全ては等しく無価値だからである。そういう人は、老若男女美醜貴賤の区別なく、あらゆる人に平等に接することができる一方、眼前で幼児が飢え死にしても、それを眺めて優雅に茶を飲むことができるだろう。
 K氏はそのような人で・・・

4

桜の木の下に

16/01/04 コメント:6件 睦月 希結

 修との出会いは僕が居酒屋で独り安酒を飲んでいた時に声を掛けられたことからだ。
僕は今 修の家で原稿用紙に目を通している。修の小説が出来上がったら僕に感想を聞くのが最近の彼ブームだ。
が、正直に言って純文学と言うジャンルに興味が無い。それどころか「面白い」のか「つまらない」のかも判らない。と、修には口が裂けても言えないけど。
まるで速読を習得したかのように、見せ掛けの斜め読みを駆・・・

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強制読書のロマンロラン

16/01/04 コメント:0件 seika

ようやく私にも人並みに友達が出来た。放課後同じクラスのYやKと一緒に週刊セブンティーンを見ながらキャピキャピと話をしている時が一番楽しかった。Kは学校にGジャンを持ってきて放課後はおっていた。
「ねぇGジャン羽織らせてっ。」
と私が頼むと
「うんいいよ。」
とわたしの肩に掛けてくれた。GジャンにはまだKのぬくもりが残っていた。
しかし家に帰って来ると、家の中はクラシッ・・・

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漱石の『それから』にこじつけ自分の不倫を正当化する男のこと

16/01/04 コメント:0件 ちほ

陽が落ちる直前の燃えるような朱色が、小さな窓の片側からさっと入り込んで、ただでさえ疲れているというのに私の心を苛立たせる。いっそのこと今夜は、この狭い第二書庫で寝てしまおうか。古い机に山積みにされた純文学の本を、一冊一冊丁寧に本棚に収めていく。脚立の上り下りを延々と繰り返す作業は、単純で退屈なものだ。高校三年生の私は、大学受験の緊張から解放されると、ありがちな『学生生活の残された無目的の日々の退・・・

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師忘

16/01/04 コメント:4件 ヤマザキ

作家・三木行純がこの世を去ったのは十二月の暮れの頃であった。
末期がんだった。年の瀬を越す前に冷たくなった行純は、その作家人生においても寒い冬を越せる日は訪れぬままだった。
行純は生来の偏屈者で人付き合いの少ない男だった。生涯を独身のまま逝った。
そこだけは往年の大作家たちと通じてはいたが、困ったことに筆は伴わなかった。
そんなわけで彼の死を心から悼んだ者は片手で足りるほ・・・

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文學の純情(内田百閧ノ)

16/01/04 コメント:0件 笛地静恵



留学僧の文學は 首都長安にすまえども ひとりの友もそばになし 遣唐使船ときならぬ 嵐にあいて沈没し 仲間たちみな遭難す かれひとりのみ生き残る 黄色い風のふきすさぶ 往来の影さみしくて ためいきばかり ついている 天にむかいてそりかえる 異国のいらかみあげたり 



そのとき文のたよりあり 日本の僧に興味あり いちどあそびにこられては 異国の姫は十八歳・・・

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