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  2. 第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】

第八十三回 時空モノガタリ文学賞 【 時間ぎれ 】

今回のテーマは【時間ぎれ】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2015/06/29

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2015/05/04〜2015/06/01
投稿数 63 件
賞金 時空モノガタリ文学賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

9

未だ消えぬ影

15/06/01 コメント:11件 光石七

 中途採用者の歓迎会はそこそこ盛り上がった。あまり飲めない私もノリで二次会まで参加し、楽しく過ごせた。でも同僚たちと別れて一人になると、一気に心細さや不安が押し寄せてくる。仕事や歓迎会の間は忘れていられたけど、今日は……。さっき駅で見た時計は午後十一時前だった。あと一時間……。ついカウントダウンしてしまい、余計に心がざわつく。
(コーヒーでも飲んで落ち着こう)
帰り道の途中にある自販機・・・

3

路地裏のコーヒーとメロンソーダ

15/05/09 コメント:6件 クナリ

 五月の夜は、あのやかましい葉桜が見えなくなって、気分が良い。
 僕はスカート姿で、路地裏の自動販売機の紙コップに、安いコーヒーが注がれるのを見ていた。
 良い匂いがする。でも、苦いだけで美味しいわけじゃない。
 触れるまでは良い気持ち。似たもの同士だから、つい飲んでしまうのかもしれない。八十円のコーヒーとお友達。楽しいね。
 僕が紙コップを自販機から取り出すと、横にいたナ・・・

4

三十路目前グラビアアイドル

15/05/04 コメント:2件 夏川

 人生とは時間切れの連続だ。
 納期、待ち合わせ、締切、終電――誰もが時間切れを体験し、積み重ね、そしていつかは人生の時間切れを迎える。
 私も今、迫りくる時間切れと戦っている最中であった。





「ハァ……やっぱ厳しいよ、もう三十路目前だもん」

 真っ白な手帳片手にため息を吐くマネージャー。私は彼を奮い立たせようと肩を強めにたたく・・・

最終選考作品

6

タイムバンク

15/06/01 コメント:8件 泡沫恋歌

 今夜はこれからデートだ! 時間はたっぷりある。
 小腹がすいたのでカップ麺でも食べるとしよう。麺にお湯を注ぎ、きっちり3分間、柔らかすぎる麺は嫌いなので、いつも砂時計で時間を計る。
 さらさらと……砂が落ちて時を刻む。
 よし。そろそろいいだろう。カップ麺のフタを開けようとした瞬間。
『タイムオーバー!』誰かの声がした。
 一人暮らしの俺の部屋にいったい誰だ? 10・・・

6

双六 (すごろく)

15/05/31 コメント:7件 泡沫恋歌

 結婚というゴールを目指した、双六の駒はいつまで経っても進まない。

 大学時代から交際している恋人と足掛け十年にもなる。プロポーズの言葉を待っているのに彼から『結婚しよう』とは言ってくれない。
 もうすぐ私の誕生日、二十九歳と十一ヶ月と二十九日……後、二日で三十歳になる。
 時々デートして、一緒に食事して、週末には肌を温め合う関係を長く続けてきた。お互い縛り合わない自由な・・・

5

かもめ

15/05/29 コメント:7件 そらの珊瑚

 人はいつか死ぬ。
 それは全ての人間に平等に課された運命だが、持ち時間はひとりひとり違う。事故や病気で早世する者もいる。日本人男性の平均寿命を超えて八十五歳まで大きな病気もせずに生きてきた私は、幸運の部類かもしれない。
 おない年だった妻は、三年前に亡くなった。それを機に一人息子から、一緒に住まないかと再三言われるようになる。高齢の父親をひとりにしておくのは心配だというのは、表向きの・・・

2

予報士

15/05/19 コメント:2件 ゆい城 美雲

「妊娠したから、学校辞める」
端的に、かつシンプルに、夜子さんは呟いた。彼女の細っそりした指が弄ぶシガレットホルダーに、街灯の光が乱反射している。それに気を取られながら、私は手短かに、「そうなの」と言った。夜子さんは肩頬を吊り上げて、あんたのそういう興味なさそうなとこ、好きだよと言う。もう一度、そうなのを言いかけて、考え直して、「ありがとう」と呟く。そこで静寂が訪れて、虫が飛び込む街灯の光を・・・

2

はい、お時間がきましたようで

15/05/05 コメント:6件 W・アーム・スープレックス

母の瑠奈が僕の茶碗に紅茶をついでくれた。
「レモン、ミルク?」
唇をつきだし加減に話す彼女は魅力にあふれていた。
「渡、あたしダイエット中だから、これ、あげる」
と姉の美依菜が焼きたてのクッキーの皿を、こちらにさしだした。
「ありがとう」
僕はさっそく、ブルベリージャムがたっぷりついたクッキーに手をのばした。彼女はコーヒーだけのむと、やわらかな衣服を舞いあがらせ・・・

投稿済みの記事一覧

8

阿弥陀籤を引いた男

15/06/01 コメント:9件 草愛やし美

 デジャブ? これって前にもあったか? カーステレオのCDをオンにする、大好きな曲が流れ出す。高速は今日は普段より流れているとスマホナビで調べて知っているから気が楽だ。家から隣県の取引先までは慣れた道だ。時間はまだまだある。新しく就任した部署の奴に会うため、今日は一日潰れそうだ。俺にとってはどうでもいいことだけど、会社には大事なこと。まあ、挨拶するだけで役目が終わるのだからあくせくして営業するより・・・

6

嫁はつらいよ

15/06/01 コメント:6件 そらの珊瑚

 自分で言うのもなんだけど、私はおおらかな方だと思う。少々のことなら、まあ、いっか、で済ませられるし、自分が我慢して丸く収まるなら、あえて波風は立てたくない性格だ。

 まして嫁という立場なら、なおさらだ。だけど、あれはあんまりな出来事だった。
 
 ◇

 正月に帰省した時のこと。
 二歳になったばかりの息子が、義母から、日本で一番有名な乳酸菌飲料をもら・・・

0

拒む魂、伸ばされる手は透明

15/06/01 コメント:0件 タック

(永遠を知る者、蒼穹の青さに、ただの関心もなく。期限の付いた者、蒼穹の青さに、思うは?――)

「――う、うう、う……、あ、あは、みんな、ごめんね、わ、わたし――」
「――お、お姉ちゃん、お姉ちゃん! ……ぐす、いやだ、いやだよぉ、ソフィアお姉ちゃぁん!」

――時が止まる、錯覚を覚えた。覚悟は、していたつもりだった。僕も、僕よりも幼い子供たちも。僕たちの性質はそうし・・・

0

新しい趣味ができました

15/06/01 コメント:0件 たっつみー2

 僕は歩きながら、駅前の大時計を見上げた。針は電車発車時刻の5分前を示している。
 今日は朝から目覚めがよかった。高校生活が始まって二カ月、こんな朝は初めてだ。元来、早起きは苦手なのだが、バスケ部の朝練習があるので、そうもいっていられない。だから、毎朝、目覚まし時計をセットする。なのに、朝になると故障するようで、鳴っていた記憶がない。いつもは、世界が揺れながら歪み、ぼやける視界に浮かび上がっ・・・

5

同窓会

15/06/01 コメント:5件 そらの珊瑚

実家に帰るのは久しぶりだった。在来線と新幹線を乗り継いで五時間という距離が遠いといえば遠かったし、取り立てて帰省する理由がなかったからだ。
 年老いた両親は兄夫婦と同居している。兄嫁は、たまに帰ってくる私をいつも歓待して特上の寿司などをわざわざとってくれる。自分が生まれ育った家だが、ここではもう私は客なのかなあと、何かにつけ、さみしく感じてしまう。今回は高校の同窓会に出席する為だったので、・・・

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眠ル魚

15/06/01 コメント:0件 みや

人間には時間が足りなかった。

一日24時間、ざっと考えると一般的な社会人であれば8時間働き8時間眠り8時間自由に過ごす事が出来るはず。
しかし自由になる時間は実質問題として8時間も無いのが現状。労働は割り当てられた8時間を優に超え、自由な時間を侵略していく。8時間の自由時間には食事や通勤も含まれているので、考えてみると一日に自由に過ごせる時間などほんの僅か…

労働・・・

0

15/05/31 コメント:0件 奇都 つき

 例えば誰かが、そう、例えば恋人や家族。そういう大切な存在が、変わってしまったら、どうなのだろう。僕が今言った「変わる」というのは、環境やら加齢やらでなる、「自分」というベースを残したままの変化ではない。そういうことは誰しも少なからずあるんじゃないか。
僕が言いたいのは、「外見がそのままで、中身が全くの別人になってしまったら」という事例だ。
 外見は一緒で、やることも一緒。だけど、その・・・

8

クマクマペンペンって何者!?

15/05/31 コメント:7件 草愛やし美

 くそ、あんなにどならなくてもよさそうなものを、上司の狭井め! 明日のプレゼンの原稿提出が今朝の十時で時間ぎれだったなんて……、明日なんだから夕方でもかまわないだろう。書類に常務の判がいるんだったな。そうだよ狭山、お前が正しい、今朝が締切ってこと昨日言った、帰り際にわざわざ俺をつかまえて確認させたよ。わかっているさ、悪いのは俺だ。だけど、俺にも色々あったのさ。
 都合も何も考えずに予定はやっ・・・

5

アタシの消失≠スキゾフレニア

15/05/31 コメント:6件 冬垣ひなた

「玉ネギが、川に、飼ってる」
言葉のサラダと呼ばれる領域。
どうしよう?そこに辿り着いたら、きっとアタシは、アタシでなくなる。

病院の大部屋のベッドで、独りごとをこらえるアタシは改めて時計を確認する。時刻は麗しのミッドナイト。なのに、別のベッドからラジオが聞こえるのは何故?
まぁ、みんなは文句言わないけどね。
悪化と診断され、外出禁止の保護室入りは誰もが嫌う。・・・

0

君は太陽

15/05/31 コメント:0件 宵野遑

 夜明けまであと一時間ほどだろうか。
 どこまでも続く暗がりのなか、砂浜を撫でる波の音だけが静かに鳴り続けている。ここには僕以外、誰もいない。夏の余韻を孕んだ潮風がシャツの裾を揺らした。
 君のことが好きだ――。
 そんなふうにストレートな言葉で伝えるべきだったのだ。いや、言葉だけではなく、他にも問題があったのだろう。考えれば考えるほど、何もかもがいけなかったような気がしてくる。・・・

3

レントル・ザ・サンド

15/05/31 コメント:5件 夏日 純希

 レントルによって維持された脆弱な街。王室のベッドの上。さらりとしたシーツの肌触りを背に、レイは汗ばむ王を抱く。王の荒い呼吸がメトロノームのように響き、やがて緩やかに収束する。
 生臭い静寂。
 ことを終えた王は、力強い眼をレントルに向け、左腕でしなやかに王自身を包み、振るった右手から黄砂を放つ。砂が中空で細長いS字を描き、金魚鉢のようになったレントルの頂部から吸い込まれる。レントルは・・・

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life

15/05/31 コメント:0件 なる

人生においてすべての人が逃れられないもの、それが時間である。金持ちだろうと貧乏だろうと人生のタイムリミットから逃げ切るのは不可能なのだ。ここに人生のタイムリミットを今まさに迎えようとする男が居る。和田修平 1968年7月10日生まれ、23歳のとき一浪を経て二流大学を卒業し、24歳で中堅家電メーカーに就職。31歳で同じで職場で事務として働いていた智子と結婚。2年後に女の子、1年後に男の子と子宝にも恵・・・

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時間切れの先の、時間切れ

15/05/30 コメント:0件 村咲アリミエ

 そいつは、時間切れの先にいるんだね、と言った。その考え方は面白いと思った。終わりの先にいる。そして、彼はその時間を、日常的に過ごしたいのだそうで、私はそれに付き合っている。

「平和だよね、東京。同じ地球のどこかで何があろうとも、僕から見渡せる数メートルが平和だと、そんなのがまるで嘘みたいだ。そう思わないかい?」
 新宿東口の人混みを眺めながら、彼はため息をついた。ぎゅうぎゅう・・・

2

テストの時間

15/05/30 コメント:2件 くにさきたすく

「文章をよく読んで、答えを書いてくださいね。それでは始め」

 先生の合図で、子供たちは一斉にテスト用紙を裏返しました。
 たけし君は、テスト用紙を見てこう思いました。
「なあんだ。これなら楽勝だ」
 テスト用紙には『かけ算の答えをマスの中に書きましょう』とあります。
 問題はひとけたのかけ算。
 全部で20問ありました。
 1問につき5点です。

1

妹と、菓子パンと、10年目の謝罪

15/05/30 コメント:2件 よたか

かなり無理をし、勇祐が大学の法学部へ進学したのは、高2の時に付審判制度を知ったからだった。付審判が認められるのは1%もない。でも冤罪で射殺された父の事件を再調査できるかもしれない。勇祐は家計の足しにバイトを続け、奨学金を受けるため勉強をした。

引き蘢っていた美弥も中学から登校していた。勇祐に教えられて興味を持って、目的の為に勉強する兄をみて覚悟を決めた。

勇祐は大学3年・・・

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散文の山と緑の瞳

15/05/29 コメント:2件 松山椋

僕は悩んでいた。
素人小説家(こういう言葉が存在していればの話だが。)として下手な小説を発表し始めてから半年、僕は悩んでいた。
『小説は読んでなきゃ書けない。』これが僕のモットーである。一篇の小説には十篇の要素が詰まっている。引き出しが空っぽの状態ではいいものは書けないのである。だが中にはいわゆる「天才」と呼ばれる人たちもいる。ゼロから面白いものを構築することができる人達が少数であれい・・・

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押しボタン旅行記

15/05/29 コメント:2件 alone

朝起きると右手の甲に変な数字が浮き上がっていた。
――35:10:21:17:38:13
擦ってみるが消えそうにはない。不思議に思いつつ見ていると、一番右の数字が刻々と変化していた。
13、12、11、……カウントダウンか?
もしや、とあることに気づき、まずは右端の数字がゼロになるのを待つ。
……02、01、00、59。そして右から二番目の数字が37になった。
・・・

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なつやすみ

15/05/28 コメント:1件 アキノ

帰省の間、誰かしらに出会うとは思っていたけれど、こんな所で会うなんて夢にも思っていなかった。


コンビニの帰り道、何年か振りに彼女に出会った。
あの頃と変わらないあどけない表情で、本当に久しぶりだね、と彼女は笑う。ノースリーブから覗く健康的な腕に、僕は思わずどきりとした。


「それ、何買ったの?」
視線でコンビニの袋を指しながら彼女は言う。

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死の時間

15/05/28 コメント:0件 堀田実

 狭山荘助は未だに人生の意味を見出せずにいた。それだけでなく彼は酒飲みでギャンブル好きで浪費も激しかった。30歳を過ぎても定職に就こうとしない彼はアルバイトでその生計を立てていたが、家賃を滞納することもしばしばあった。
 支払いが遅れる理由は様々なものがあったが、一番多いものはムダ遣いで財布にお札があると使ってしまいたい衝動に駆られるのであった。給料日までの一週間を塩飯だけで済ませなければな・・・

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約束

15/05/27 コメント:1件 山盛りポテト

私は傍若無人で人を信じられぬ王様から、友人の命を守るために三日後の日没までに村へ戻り、妹の結婚式を挙げさせねればならぬことになった。
「しかし参った、思わず啖呵を切ったはいいもののいざとなると命が惜しくてたまらない、なにより死が恐ろしい」
そうは思いながらも私が戻らねば最愛の友人が殺されてしまう。
私は重い足に精一杯力を込めて走り村へ戻った。
妹の結婚式を済ませ、眠りについ・・・

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あなたは誰を殺しますか

15/05/27 コメント:0件 たっつみー2

小さな神社に手を合わせる崇史の姿があった。
――娘を助けてください。
医者から告げられた余命は1カ月。
助けるには脳近くにできた腫瘍を摘出するしかないという。なのに、場所が悪くリスクが高いがゆえに、どの医者も手術を引き受けてはくれない。
もう時間が……だが神は沈黙し続けている。
「何故、五歳の娘がこんなに苦しまなきゃならないんだ。神様、俺と加奈の命をかえてくれ。加奈を・・・

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生死の時間

15/05/26 コメント:0件 レイチェル・ハジェンズ

 僕は自転車をこいだ。
 坂道を下った。

 ふと、自分の財布の中身を心配する。
 駅前の質屋のチラシがポストに入っており、指輪が大安売りだと書いてあったのを思い出す。
 きっと僕の財布でも足りるだろう。そんなやりとりがさっきから続いている。

 左手の薬指に指輪をはめる利紗の姿が目の裏に浮かびたい願望。



 利紗は、俺と一緒に・・・

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読書感想文の書き方

15/05/26 コメント:0件 くにさきたすく

 夏休み最後の夜。明日からまた学校です。

 小学二年生の健太君は、久しぶりにみんなと会えることに心を弾ませていました。
 しかし準備を整えていると、大変な事に気が付きました。宿題がまだ残っていたのです。
 読書感想文です。
 夏休みの最初に終えた計算ドリルの間に、真っ白な原稿用紙二枚が挟まっていました。
「大変だ!」
 叫んだところでどうにもなりません。・・・

3

夏至

15/05/26 コメント:6件 南野モリコ

 私は堀田里奈を海に沈めた。女の体は重力に従い、冷たい海に静かにゆっくりと沈んでいく。
 29歳の背が高くもなく低くもない平均的な「女の子」だ。本人は太っていると思っているだろうが、体型も平均的だろう。髪型は、今流行りのミディアム・ショートで控えめな茶色に染めている。
 堀田里奈は、グレーのスーツのまま、髪を乱しながら沈んでいった。顔は知らない。私は、堀田里奈に会ったことがないのだ。知・・・

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黒く 黒く 黒く

15/05/25 コメント:1件 かめかめ

 アリスは走る。
 深い森の中を。
 生い茂る枝葉に遮られ陽が射さない深い森を。
 
 アリスは走る。
 暗い森の奥へ。
 道もない下草に足を取られそうになりながら。

 アリスは走る。


 真紅のキノコがアリスに囁く。

「ハヤク シナイト テオクレニ ナルヨ」

 水玉のキノコがアリスに囁く。
<・・・

1

時過ぎてから

15/05/25 コメント:2件 塩漬けイワシ

大丈夫です。私は小鳥のままでいられます。

私はあの時まで、生きるために精一杯、耐え忍んでいました。
気付いていないでしょうが、
あなたは宇宙人でも見るかのように、未知への恐怖を顔に貼り付けていましたね。

あなたはあなたが生んだ私を、自分の複製だと。
きっと、そう思って期待していたのでしょう?
自分の信念はへその緒を通じて分け与えられたと思っていた・・・

1

高橋さん

15/05/24 コメント:2件 たっつみー2

 高橋という名は、佐藤や鈴木ほどではないにしても、ありふれた平凡な名字です。

 私たちの会社にいる高橋さん、彼も名前のようにどこにでもいる平凡なサラリーマンです。
 こんな言い方をすると、高橋という名前の人が平凡な人のように思われてしまいますが、勿論、そんなことはありません。高橋さんの中にも、有名な俳優、アイドル、政治家、オリンピック選手と、平凡とは掛け離れた方々が沢山いらっし・・・

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来る者拒まず

15/05/22 コメント:0件 蒼樹里緒

 石造りの大きな鳥居を、大勢の人間たちがくぐっていく。その手前の道をクルマとかいう機械がうるさく行き交い、神社の祭囃子も相まって、いろんな音が夕暮れの空気にまざり合っていた。
 鳥居の脇に佇むぼくの横を、人間たちは素通りする。ぼくの姿が視えるやつは、ごくまれだ。たとえば――いま道の向こう側にいる、浴衣を着た女の子、とか。
 隣の少年と楽しそうにしゃべっていた彼女の視線が、ふとこちらに向・・・

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黄昏る前に、はやく

15/05/22 コメント:0件 蒼樹里緒

 太陽が橙に色を変え、西の空に傾き始めた頃。どこからか、祭囃子の音が響いてきた。
 近所の神社の夏祭りは、先週の土日に盛況のうちに終わったのに。この町には神社がもう一箇所あるが、こっちにまで神輿は来ないはずだ。
 高校帰りの道で足を止め、僕はついその音に耳を傾けた。静かな住宅街にそれはだんだん近づいて大きくなるものの、周りの家からもほかに人が出てくる気配はない。ただ、あざやかな橙に照ら・・・

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長寿は脅威

15/05/21 コメント:0件 日谷 弥子

 赤毛のアンの話は大好きだった。
 そばかすだらけでちんくしゃの女の子が、自然の中を、素朴な人々の間を、思いのままに泳ぎ回って成長して行く話。ついでに素敵な男の子に愛されてしまう。私は簡単に彼女にすり替わって、素敵な夢を見た。でも、不可解なこともあった。
 なぜマシューとマリラは独身だったのだろう。彼らはアンを引き取り育てた、家族だ。でも夫婦じゃない。ふたりとも独身の、兄妹だ。
・・・

0

リアルの夢、夢のリアル

15/05/20 コメント:0件 有朱マナ

―君は誰? 
―内緒。
 二人のやり取りはいつも曖昧。誰と会っているかなんてわからない。だけど、会っている自覚はある。不思議な空間で、夢の中で。

 目覚ましの音が聞こえる。一日がスタート。そして今日も時間切れ。今日も彼女の名前を聞けなかった。彼女は誰なのか、僕には不明。
 毎日ではないが、夢を見る度に彼女が出てくる。白いレースのジャンバースカートを着た髪の長い女の子・・・

0

正解

15/05/20 コメント:0件 つつい つつ

 吹奏楽部の部室から、そっとグラウンドを眺める。今日は卒業式だったから、みんな先生や後輩、友達同士で別れを惜しみあっている。少しため息をつく。
 部室のドアが開いて菜月が入ってきた。
「どうだった? 小泉君にちゃんと言えた?」
 私は黙ったまま首を横に振った。
「そっか……瑞希って、変に行動力あるからひょっとしたらちゃんと告白したかなって思ったけど」
「……」
・・・

1

賞味期限切れの恋

15/05/19 コメント:2件 梨子田 歩未

 
 ケンカはいつだって他愛無いことから始まる。
 
 日曜日の朝、久しぶりの何の予定もない休日に透は、ソファで寛いでいた。遅れて起きてきた有里沙が冷蔵庫を覗き、「ちょっと」と非難めいた声を上げた。
 有里沙は片手に大きいヨーグルトのカップを持ち、透の前に仁王立ちになった。
 有里沙は怒っている時ほど、声に抑揚がなくなり、冷たくなる。まだ、表情に怒りが出ている時は、怒・・・

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10秒前

15/05/18 コメント:0件 ゆえ

「・・・やべぇ!寝坊した!!」飛び起きて、支度をする。
いつも家を出る時間に目が覚めた。
洗面所に走り、顔を洗って歯を磨く。鏡に映る自分の顔を見て愕然とした。
今日は得意先を回るのに、目と心なしか右の頬が腫れている。
昨日、彼女のゆかりと明け方までお互い泣きながら喧嘩をした結果だろう。

ま、当のゆかりはソファーで寝ているが・・。
とっちらかった部屋には破・・・

2

白い部屋

15/05/18 コメント:3件 ぺなこ

 目を覚ますと、窓のない正方形の部屋にいた。真っ白な壁と、真っ白な床とに囲まれた、そう広くない部屋だ。天井からは白いカバーのペンダントライトが垂れさがっており、光源はそこしかない。ものを見るには十分な明るさだが、部屋のすべてを照らしきれるほどではなく、部屋の隅にはうっすら影がかかっているようにも思えた。目の前にはテーブルと、マネキンが三体。白くのっぺりしたマネキンがテーブルを囲んでいる。それぞれ服・・・

1

アンチゴッド、アンチヒーロー

15/05/17 コメント:1件 浅月庵

 バイト先に神さんって先輩がいて、その人に話の流れで過去のことを喋ったら苦笑。
「今さら悩むなよ少年!」
「この世に神もヒーローもいないんだって中学生ながらに悟りましたよ」
 神さんは煙草の煙を吐き出し、僕の目を見る。
「後悔してんのか」「えぇ、勿論」「もし過去に戻れたらどうする?」「あのクソ野郎たちに立ち向かいますよ!」
 神さんは灰皿に煙草を押し付け、一言。

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終電

15/05/16 コメント:0件 夏木蛍

 
 耳障りな沈黙が始まって1時間が経った。

隣にいる由紀が何を考えているのか、俺はわからなかった。
こんな時になってまで、由紀と初めて会った時のことだとか初めてデートに行った場所だとか、そんなことばかりがぐるぐると頭の中を駆けずり回る。

 由紀とは付き合って二年になる。
半年前、高校三年の夏休み。由紀と図書館に行った帰りだった。
「私、大阪の大・・・

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ワールドクロック

15/05/15 コメント:0件 Hanabi

その刹那、世界は俺だけのものとなる。
万物が停止した中で、俺だけが自由に動けるのだ。
この時間でできないことは何もない。
俺は時を止める能力を持っている。

この能力は悪魔から貰った。
といっても見た目は至って普通のサラリーマンといった感じだった。
そりゃあ、いかにも悪魔って風貌じゃ目立って仕方がないだろう。
だが、やつが俺に与えた力はあまりに人間離・・・

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人生の待ち時間

15/05/14 コメント:0件 梨子田 歩未

 人は、人生の三分の一を眠って過ごすという。それを知った近藤は、起きている時に無駄な時間を過ごしたくはないという思いに駆られた。
 近藤は『待ち時間』を最も無駄な時間だと考えた。

 遊園地や食べ物屋の大行列を見ると、近藤は吐き気がした。だが、まだこれはいい。行列が嫌ならば、並ばなければいい。
 だが、どうしても並ばなければならないときもある。
 
 例えば、・・・

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雉虎

15/05/13 コメント:0件 三条杏樹

「逃げろ」

掠れた声が聞こえた。弱々しく俺の背中を押して、促される。

「嫌だ」
どうして父さんを置いて、俺だけが逃げられようか。当たりからひっきりなしに聞こえてくる悲鳴や爆音が、腹に響いた。

咳き込む父さんの頬に額を寄せる。
迫る炎は怖くない。それよりも、ひとりで生きることの方が怖い。

泥水を飲んで、人の食べ物を盗んで生きてきた俺・・・

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毛のないメドゥーサ

15/05/11 コメント:0件 naruzo


 どんなに走ってもその距離は縮まらない。距離は広がり、時間ばかりが縮まっていく。
 時と距離は反比例。数学いや算数ぎらいの僕がこんなことを思うのもなんだが……。

 僕は走るのをやめた。歩いた。そして、歩くのもやめた。たまたまあったベンチに腰を下ろした。
 そのベンチにただボッーと時をやり過ごしていると、今にもエンストしそうなアイボリーの軽トラックが僕の目の前にとま・・・

3

大便が繋いだ絆

15/05/10 コメント:8件 るうね

 うんこがしたい。
 六時間目の途中から、俺は便意をもよおしていた。
 教壇では先生がなにやら鎌倉幕府の成立について語っているが、そんなことよりうんこがしたい。
 壇ノ浦の戦いだ? それがどうしたうんこがしたいんだ、俺は。
 時計を見ると、授業の終わりまであと十五分はある。
 ……やばい、改めて時間を確認したら、便意がよりいっそううんこがしたくなってきた。
 気・・・

0

生きている音

15/05/10 コメント:0件 青木灯

 粉塵が舞い、世界は大人しくその身を煙の中へと呑み込ませていく。人々が空を目指して乱立させたビル群も、あちらこちらで倒壊してしまっている。
 灰色の空には太陽は輝いておらず、朽ちた世界は濃い影を落とすばかりだ。瓦礫が散乱する街の中に人の姿は見えない。おそらくは避難施設や地下シェルターに身を潜めているのだろうが、突然起きた天災に対応できずに命を落とした人間の方が多い。
 天災に見舞われて・・・

2

僕のシンデレラは、あほかわいい

15/05/09 コメント:6件 るうね

「シンデレラってさ」
 真佐美が唐突に言った。
 GW。
 ゴールデンウィーク。
 出かける金も気力もない僕たちは、同棲している六畳一間のアパートでうだうだと気だるい午後を過ごしていた。
「ツッこみどころが多すぎると思わない?」
「なにさ、唐突に」
「唐突じゃないわよ。わたし、常日頃からそう思っていたの」
 思っていたから唐突じゃない、とはどんな理屈・・・

1

無茶苦茶ダイエット

15/05/09 コメント:2件 夏川

 小林直美28歳。
 彼女は今とても浮かれていた。彼氏のケンジから大事な話があるとの連絡を受けたのだ。
 周りは次々と結婚し、両親にも急かされていた。そのタイミングで「大事な話」ともなれば期待するなという方が無理であろう。
 だから彼女は部屋を掃除し、クッキーとマフィンを焼きながらその帰りをまだかまだかと待っていた。

 しかし部屋に入ってきたケンジが口にしたのは、直・・・

1

タイムリミットまで

15/05/07 コメント:2件 山田結貴

「はあ……はあ……はあ……」
 俺は走っていた。ただひたすらに、全速力で走っていた。
 タイムリミットまで、あとわずか。今日こそは、絶対に間に合わせなければ。
「うあっ……!」
 何としたことか。こんなところで転んでしまうとは。膝からは血が滴り、立ち上がることすらままならない。だが俺は、間に合わせなければならない。何としてでも、間に合わせなければならないのだ!
 もう・・・

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ガラス細工のロザリオ

15/05/07 コメント:0件 ちほ

 セロンは、ミッシュア大教会縁の小さな教会の、前から三列目の会衆席につき、組んだ手を額にあてていた。閉じられた目の奥に、輝く光が見えた。それは幸せの構図で、いつでも愛する人と共にいられた彼の記憶。幼い頃から一瞬なりとも忘れずにいた彼女への想い。二人で一緒に生きようと強く願えば、きっと運命は悪くない方向に動いてくれる。今は、ただ神にそう願う。
「……時間切れです、セロン様」
 この奇妙な・・・

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ギリギリまで生きたい

15/05/06 コメント:0件 高木・E・慎哉

坂上昂は、時間が終わるまで走り続けた。
もうすぐ、時間ぎれになる。
しかし、それでもゴールまで走りたかった。
君に会いたかったから!

君はもうこの世にいない?
関ケイコはずっと待っていた。
昂が来るまで待っていた。
しかし、もう時間がない。
時間ぎれギリギリまで待っていた。

この世の果てまで、昂は走っていた。
でも、それも・・・

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天智死す!

15/05/06 コメント:0件 沢藤南湘

 百済は、新羅軍に攻められ苦戦をし、日本に援軍を求めてきた。阿倍比羅夫は、二万七千の兵を率いて出発した。百済では、豊璋が福信と対立しこれを斬る事件を起こしたものの、日本国の援軍を得た百済復興軍は、百済南部に侵入した新羅軍を駆逐することに成功した。
 百済の再起に対して唐は増援の水軍七千の兵を派遣し、熊津江に沿って下り、陸軍と会合して日本国軍を挟撃した。比羅夫の援軍要請にこたえ、中大兄は、さら・・・

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命のバトンタッチ

15/05/05 コメント:0件 ポテトチップス

会社に警察から緊急の電話がかかってきたのは、終業間際の時間だった。
徳谷隆弘がその電話で告げられた病院に駆けつけたのは午後6時を少し過ぎた頃だった。
「愛里……」
緊急治療室で人工呼吸器をつけられた、今年成人式を迎えたばかりの一人娘は、頭に包帯を巻かれて、固く目を瞑っていた。
顔中に痛々しい傷跡が残る娘を茫然と見つめながら、徳谷は強く握った拳を小刻みに震わせていた。
・・・

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明日になったら

15/05/04 コメント:0件 夏木蛍

 「遼平くんっ!できた?」
俺の顔を覗き込むようにして、佐倉は笑った。
キッチンにたちこめるのは少しの熱気と甘い匂い。
「すごいよ遼平くん!今までで一番上手くできたねっ」
嬉しそうにはしゃぐ佐倉に俺は曖昧に返事をしながら目の前のチーズケーキを見つめた。
約一か月の間にどれだけの料理を作ってきたか、数えきれない。
今日だって、何が楽しくて男一人でケーキなんか焼かな・・・

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ゆうくんのミニカー

15/05/04 コメント:0件 こぐまじゅんこ

 九月十五日。満月のお月見の夜。
 ゆうくんは、今日、五歳の誕生日をむかえました。

「ゆうくん、お誕生日、おめでとう。誕生日プレゼントだよ。」
 お母さんと、お父さんが、リボンのかかった小さな箱をわたしてくれました。
 ゆうくんは、(何が入っているんだろう?)と、わくわくしました。
「ゆうくんが、大好きなものよ。」
 お母さんが、にっこり笑って言います。・・・

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タイムイズマネー

15/05/04 コメント:0件 横須賀 陽夏乃



 とある会社のフロアでのこと。
 ボクは資料室でまとめ終わった帳簿と報告書を持って部屋を出た。

「部長、資料ノ整理ガ終ワリマシタ」

 ボクは部長の座るデスクの前に直立し、見下ろすようにして告げた。

「はあ……。っと、次は……ああ、じゃあねえ」

 彼はおろおろと周囲を見回している。すると給湯室でため息をついている新人社員を・・・

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最期のメール

15/05/04 コメント:2件 山田猫介

 ある日僕のところへ、意外なところから電子メールが届いた。世界の全人類が、同じ日の同じ時刻に、同じ内容のメールを一斉に受け取ったのだ。それには、こう書かれていた。

 親愛なる人類のみなさんへ
 日頃はこの世界に居住していただき、ありがとうございます。私のことを、皆さんはご存じないでしょう。私は皆さんが住むこの世界の管理人で、昔から『神』という名で呼ばれてきた者です。
 本・・・

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誘拐

15/05/04 コメント:4件 るうね

『蓮沼真一だな』
「そうだが……誰なんだ、君は」
『誰でもいい。お前の息子は預かった。五体満足で返して欲しければ、三時間以内に一千万円用意しろ』
「な、なんだって?」
『三時間以内だぞ、分かったな?』
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
 プチッ。
 ツーツーツーツー。


「どうかされましたか」
「い、いえ」
「顔色がすぐれない・・・

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