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第六十七回 時空モノガタリ文学賞【 秘密 】

今回のテーマは【秘密】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2014/11/17

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2014/09/22〜2014/10/20
投稿数 49 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

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夜な夜なかぐや姫

14/10/10 コメント:4件 村咲アリミエ

 俺は夜な夜な、近所の竹林の中をうろつくのが好きだ。目的もなく、週に二三回はうろつく。雨上がりの竹の香りは最高だし、晴れている日に空を見上げると、竹と竹の間から瞬く星が、言葉にできないほど美しい。
 そこで過ごす最高の時間のことを、俺は秘密にしている。誰だって、本当に大切なことは、胸に秘めているのだ。決して、我ながら変な趣味だと思っているわけではない。

 その日も、いつものよう・・・

8

スーパーハッカー五十嵐 誠司の完全なる世界

14/09/27 コメント:14件 夏日 純希

俺の名前は五十嵐 誠司。世界屈指のスーパーハッカー。27歳既婚。
決め台詞は「This is my perfect world(これが俺の完全なる世界だ)!」。

ただいまハッキング中である。え、何をって?
俺の生死にも関わる最重要機密情報。つまり、

 妻の日記である。

ハッキングとは、ネットワーク経由でするものというイメージのあんた。
甘・・・

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路地裏の、誰も聞こえない咳

14/09/26 コメント:14件 クナリ

『僕は、吃音だ。
けど、知的障害よりも生き易い、ということもない。
人は、目や耳の不具合には寛容な愛を示すが、発音の不自由は、甘えや、工夫の不足とみなす。
吃音持ちに「ゆっくりでいい、はっきりと話してごらん」と言うのは、盲目の人に「頑張って、よく見てごらん」と言うのと、同じだと言った人がいる。
僕もそう思う――』

一九六九年、ポーランドの少年、イギール・ポンセ・・・

最終選考作品

9

秘密のシータ

14/10/17 コメント:9件 草愛やし美

 あれ!? 公園のベンチで転寝していた僕の耳に奇妙な話し声が聞こえてきた。
「難しくはにゃい飼い主さんもきっと分ってくれるにゃん」
『ニャオ〜ン』
 ベンチの植え込みから三匹の猫が見える。何気なくその光景を見ていた僕は思わず跳ね起きた。
「えつ、今、猫が話した!?」 
 中にいる一匹の白猫が、確かに人間の言葉を話したのだ。僕の声に驚いた猫たちは一斉に逃げた──と思っ・・・

10

暴露

14/10/16 コメント:14件 そらの珊瑚

「ふたりだけの秘密だよ」

 神父様の言葉が頭の中でリフレインする。
 冷凍された私の部屋に投げ入れられて転がるフレイズ。それは宝石なのだろうか。
 私のことを「ドール」と神父様は呼ぶ。
 そうするとたちまち私は人形と化す。
 例えばあの日、崖から車ごと真っ逆さまに落ちていく恐怖や、両親は死にひとりだけ生き残ってしまった現実や、事故の後遺症というもので動かなくな・・・

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秘密の話をあなたと

14/10/15 コメント:4件 シンオカ

 この街の図書館が、イノルは大好きだ。
 学校が休みの日、イノルは開館時間の数分前には図書館に到着する。鞄を揺らして芝生を走り、図書館前で掃き掃除をしている司書さんに駆け寄る。司書さんは小柄なおばあさん。痩せた身体にエプロンをつけ、冬の朝のまっさらな雪そっくりの銀色の髪をきりりとお団子に結わえている。
「あら、アイノルドくん。おはようございます」
 声は穏やかで、皺を浮かべる表情・・・

9

幻の蝶々

14/10/12 コメント:11件 泡沫恋歌

 平凡な家庭のリビングに油彩画を飾る。
 マリ・タチバナという世界的に有名な画家の作品で、これが遺作となった。
 パリのアトリエで、この絵を描き上げ、絵筆を握ったまま眠るように彼女は死んでいた。外傷はなく自然死だと報道された。
 そして日本にいる私の元へ、この絵を届けて欲しいとメモが残されていた。マリ・タチバナのエージェントは方々手を尽くして、やっと私を探し出した。
 この・・・

1

ズレる

14/10/08 コメント:2件 坂井K

 俺は朝起きると、いつものようにトイレに行った後、歯を磨きながら鏡に映った顔を見る。昨日の顔と違っている。そうか、今日はズレる日か。今回は髪型は同じだ。眉毛は太くなっている。二重まぶたは一緒だけれど、瞳の色がやや薄い。鼻の形は変わらないけど、鼻毛に白毛が混ざっている。昨日まで伸ばしていた髭が無くなり、顎の下方に大きな黒子。顔の黒子はこれで六つ目。半年前は無かったんだが。(このままじゃ顔が黒子で埋ま・・・

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sub Rosa

14/09/27 コメント:10件 橘瞬華

 先日、祖母が亡くなった。二度の大戦を経験しての大往生。棺の中の祖母は微笑みを浮かべているように見えた。その祖母が亡くなるほんの数日前に話してくれた秘密を、忘れない内に書き記そうと思う。

 おじいさんとは家が近所でねぇ、私の家とあの人の家では身分は違ったけど他に子供も居なかったからよく遊んだものさ。あの人は私より十ばかり年上で、今思えば子供の我が儘で振り回してばっかりだった。
・・・

投稿済みの記事一覧

2

死んだ『  』と生き続けた臆病

14/10/21 コメント:4件 タック

「なかなかいい出来だ」と彼は言った。「そうでもないさ」とコウジは答えた。それはひどく冷めた返答だったが、彼に気分を害した様子は見受けられなかった。「いやいや、いいと思うよ。不恰好だけど、それで十分だ」と眼鏡の縁を電灯の白光にきらめかせ、彼はコウジの作業を見守っていた。コウジは椅子に乗っていた。彼はその背後に立っていた。振り向くことなく、コウジは返答したのだった。自らの影に接するような、そんな態度で・・・

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朝焼け、密やかさの解法

14/10/21 コメント:0件 四島トイ

 夜明け前の交差点を身の丈五尺五寸の犬と並んで歩いていた。
 横断歩道の信号が明滅する。わたし達は歩みを止める。
 気づけば吐く息が白い。マフラーを巻き直す。出したばかりの学生服の皺を伸ばす。冬仕様のわたしを無言で大気に主張する。吸い込む空気が肺の内壁に染み込むようだ。
 わふ、と隣の犬が音を漏らす。横目で見やれば、息が白い。大きな体躯。黒く艶やかで豊な毛並み。蒸気機関のような鼓・・・

2

装着パニック! 水泳部男子!

14/10/20 コメント:4件 タック

「堺くん、何をしているのだ。早く着替えたまえよ。本番はもう、間近に迫っているのだぞ」
「あ、ああ。分かったよ、部長。今、着替えるから。ちょっとだけ待って」
――僕は、本当に焦っていた。自身の置かれた、比類なき状況にである。

ここは、水泳部のせまい部室。男子水泳部の面々が集まり、熱心に議論している場面である。水泳部は僕以外の全員が水着に着替え、あるイベントの出番を待っていた・・・

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歴密会・あきーnai.coi  密会への招待

14/10/20 コメント:10件 草愛やし美

「これって、怪しいよ」
「でもさ、行ってみようよ、イベントの一環だと思うんだ」
 大坂冬の陣、夏の陣から四百年、大阪では大阪城周辺で、イベントが繰り広げられている麦秋のとある日、逢坂高校の稲太朗は秋穂と城への道を急いでいる。秋穂はもう一度、携帯メルを食い入るように見た。
『歴史好きの善男善女諸氏、大坂城にて密会が執り行われる。このこと歴史好きの者のみへの秘密の誘いにて決して他言無・・・

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腐りかけの肉

14/10/20 コメント:11件 草愛やし美

 俺は、このBOXを壊すと決めた。そう決めさせたのはあいつのせいだ。後のことなど知ったことではない。秘密は、それを知る者が少なければ少ないほど価値が上がる。秘密をばらしたのは他ならぬ奴自身、俺に責務はない。もちろん義理なんて洟からなかったさ。秘密を暴露した罪の深さを思い知れ。俺は、奴を仲間と考えていたが、奴には違っていたようだ。秘密を自ら暴露するとは……。
 秘密は腐りかけの肉だ。洒落た言い・・・

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月と星だけに

14/10/20 コメント:8件 夏日 純希

今ケイコが欲しいものは――だ。
こんな風に、ヘキルには好きな人の欲しいものがはっきりとわかった。ただ、それは便利だけど万能でもなかった。
チョコレートが、ひと時の幸せを運べても、虫歯を治せないのと同じように。

 ◇

「いってきまーす」

ヘキルは扉を閉めて外へ飛び出すと、秋をまとった朝の寒さが足元から上ってきた。「寒いし走ろっかな」思考と行動がリ・・・

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デジタルモグラ。

14/10/20 コメント:4件 滝沢朱音

――扉の向こうに立っていたのは、例年と違って若い女性だった。

『即日届けます。愛さえも――』
そんなCMで有名なネットスーパーでバイトを始めたのは、大学に入った年の夏。24時間対応をうたうその会社は、夜から早朝にかけての顧客サポートの時給が極めて高く、竜太は募集に飛びついた。
しかし、パソコンが趣味な上に人との直接の関わりが絶望的に苦手な彼にとって、この仕事はあまりにも水・・・

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Is he foolish?

14/10/20 コメント:11件 光石七

 朝、実津の目に最初に映るのは孫の秀也の寝顔だ。秀也は高校生になった今でも実津の隣の布団で休む。
(ゆうべはだいぶ遅かったけど……)
実津はいつも夜九時頃に床に就くが、秀也が部屋に入ってくる気配で一度目が覚める。昨夜は三時半を回っていた。秀也が遅くまで勉強することは時々あるが、さすがに遅すぎだ。
(夜はちゃんと寝ないと)
成績優秀なのは喜ばしいが、実津には孫の健康が第一であ・・・

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パイロットフォルム(騎士)

14/10/20 コメント:6件 黒糖ロール

 オッドは、晴れた空の下で寝そべっていた。両瞼越しに届く、ぬくもりの色を確かめる。風が心地よい。頬を撫でる草の柔らかな律動に心を添わせていると、想いから生じた波紋も、薄くなり、遠くなり、消えていく。
 頭の芯から、痺れるような眠気が滲んできた。同時に、降り注ぐ陽射しに呼応して、体の奥に押し込められた小さなしこりが震えを帯びはじめる。見ないふりをしていたものたち。意識は逃げ出そうとする。ただた・・・

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ハムスター(たち)

14/10/19 コメント:0件 雲原 拓

 「三秒ルールとその適切な運用については、古くから学者たちの議論の的となってきた。特に落とした場所による秒数の変化や、『落とす』という行為以外への適用など…」
 本を閉じて考える。私だったらこんな三秒ルールをつくるだろうか。
「三晩つづけてあの人のことを夢に見たら、告白しよう」
 
 でも三日連続で夢に見たとしても、告白なんて私からは絶対にできないわ、とも思う。今日だって、・・・

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お節介

14/10/18 コメント:4件 山中

 向かいのシートで酔い潰れている男を、私はじっと眺めていた。深夜0時の上り電車。この車両には、私と目の前にいる男しかいない。左右の車両を見渡し人の気配がないことを確認してから、静かに彼の側へと腰を下ろした。男のジャケットの内ポケットからは、黒い皮財布が頭を覗かせている。
 私はもう一度周囲を見渡し、ごめんなさい、と心の中で呟いた。そう呟いたのはこれで何度目だろう。そしてそっと財布に手をかける・・・

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故意に背く

14/10/18 コメント:0件 AIR田

 皆はね、頭の中で鳴っているピアノの音が大好きで、それが常識になればいいって、本当はそう思っているの。
 でも、嘘を吐いているの。
 ねぇ?心当たりありませんか?そんな気持ち。
 隣の芝生はとても真っ青で、私達の生活は不幸でかわいそうなシンデレラ。でも、ホントはとっても幸福なの。
 あぁ。それに気付かない。気付こうとしない。気付けない。くそったれないシンデレラ。
 あ・・・

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イマワナキ妹

14/10/17 コメント:0件 えのまりや

 おじいさまが、自分の弟たち、妹たちの話をしてくれた、唇に指を当て、誰にも話してはいけないよ、と。


 イマワナキ妹を探して、街にでた。
 急がねばならない、どうやら私はなにかに追われているようだ。きっと妹も追われている。やつらは、オノやナタを手に、襲いかかってくる。
 早く妹を探してやらなければ。
 暗闇のなか、背中の籠にたくさんの野菜を背負ったおばあさんと・・・

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秘密にしてね!

14/10/17 コメント:11件 泡沫恋歌

「秘密にしてね」という会話ほど、守秘義務の伴わない事案はない。
 女同士の会話で「秘密だけど……」と、これを使うと、あっという間に秘密は周知の件となる。冒頭に「秘密」を付ければ、「速やかにみんなに回せ!」と同じ意味になる。

 商事会社に勤める、早川聡美は勤続二十年のベテランOL、総務部主任の彼女はテキパキと仕事が早いという評判である。聡美は社内にアンテナを張って、職場の噂話や内・・・

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第3話 埋蔵金  魔九志夢(まくしむ)のアド・ミス物語

14/10/13 コメント:6件 鮎風 遊

 妖風魔九志夢(ようふうまくしむ)が小学3年生の時でした。ガキンチョ6人、海釣りに連れて行ってもらいました。その日は快晴、船はポンポンポンと煙をたなびかせ、1時間ほど走ったでしょうか、漁場へと着き、釣り糸を垂れました。そこはまさに入れ食いでした。
 だけどすぐにお腹が空いてきて、みんなフラフラ状態に。そんな時、まだ元気が残っていた安渡玲(あんどれ)が「おかしな島があるぞ!」と声を張り上げまし・・・

2

真夏の夜の。

14/10/13 コメント:4件 FRIDAY

 これは夢だということは、初めからわかっていた。
 死んだ人間が目の前にいて、それで夢じゃないなら何だという話だ。
 死人が生き返られるほど科学は発達していない。
 それがどれほど大切な誰かであっても。
 死んでしまえば、もうどうしようもない。
 それを覆しているのだから、これを夢と言わずして何と言おう。
「まあねえ」
 実のところ、何度も繰り返し見た夢で・・・

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鶴の恩返しを読んで、の感想

14/10/12 コメント:0件 myuzurin

 私は、日本の情緒というのがなんなのかなぁ、と思っていましたが、
鶴の恩返しを読んで、とても感動しました。昔話というのは、昔にあった
出来事を書いてある話だと思うのですが、もし今の時代にも鶴がいたら、
同じことはあるかなぁ、と考えました。きっと、ないだろうと思います。
今の時代は、自然が汚染されていて、少しずつリサイクルなど気をつけなければ
ならないことがたくさんあっ・・・

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八男の秘密

14/10/11 コメント:8件 そらの珊瑚

 一匹の黒々とした立派なごきぶりであった。朝のキッチンでみつけたものは。いつもなら何のためらいもなく殺虫剤を浴びせかけるところだったが、その日はしなかった。なぜならその朝のテレビ占いで【乙女座の人は一日一善!】と流れてきたからだ。

 中学校の教師となって三年。当初は生徒と心通いあえる教師になろう! と理想に燃えたものの、教師としての仕事の多さの前にいつしかそんなものは置き去りにされた・・・

1

秘密の涙

14/10/11 コメント:3件 亜子

「これ、わたしの宝物。特別に見せてあげるね。」そういってピンクの小箱を幼なじみの窈ちゃんに差し出した。窈ちゃんはたいして興味もなさそうにその箱を眺めている。
「それ、お前の宝物なの。」興味もなさそうに呟いた。わたしは少し残念に思いながら小箱の中身を教えてあげることにした。
「うん、これね、中には大切なものが入ってるの。」「ふーん。」
 しかし、窈ちゃんはやっぱり興味がない様子で機・・・

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猫の手お箸の秘密の理由

14/10/10 コメント:5件 シンオカ

 私のおばあちゃんは、ひとと違う世界を見ている。
 私が高校二年生のころ寝たきりになったおばあちゃんは、見えない誰かと談笑し、そこにない風景を懐かしげに眺めるようになった。いわゆる認知症だ。おばあちゃんの世界では、息子である私の父さんと、お嫁さんである母さんは十数年前の新婚さんのときの状態に、孫である私は小学生の状態に、それぞれなっていたらしい。ご近所さんや知り合い、平日のデイサービスのヘル・・・

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 誰にでもある秘密

14/10/09 コメント:0件 myuzurin

秘密にするほどの話でもないが、私は犯罪者である。
それから、子供が生まれ、奴の世話をするだけが仕事となった。
社会に組み込まれるには奴を使うしか無く、それが不満と言うならば私は首を括るしかないのである。

「いらっしゃいませ」
「これ、もっと安くなんないの?」
「これは・・・そうですね、店長に聞かないと」
「あんた、何歳なのよ。自分で決めなさいよ」
・・・

1

曖昧な情々

14/10/07 コメント:2件 小李ちさと

坂の上のこの高校には離れたところに建っている「C棟」があって、離れているけど渡り廊下で他の校舎と繋がっていて、坂の上でそんな建て方をすると、2階に玄関が出来る。
でもC棟には1階にも玄関があるし3階にも下駄箱があるから、何をしたいんだか分からない。高校ってものが何をしたいのか、いつも分からない。

1階に玄関があるのは俺たちの部室があるからで、おかげで絶好のサボりスポットになって・・・

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『 天使の秘密(和風編) 』

14/10/06 コメント:0件 myuzurin

私の仕事は、お年寄りの世話をすることです。それを不満に思ったり、低い仕事と見たことはありませんでしたし、もちろんお年寄りに関しても同じでした。それが今でも私を不思議がらせる出来事であり、私はその日、空気に潜む闇を見たのです。

お爺さんは、いつも笑顔でした。「有り難う」が口癖で、頑固なまでに我を通す以外に難は無く、私にとっては有難いお客様だったように思います。自宅に伺い年老いた老人の世・・・

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二つの戸籍を持つ男

14/10/06 コメント:7件 鮎風 遊

 人それぞれの人生には原点があるもの。そして歳を重ね、たとえそれが辛い場所にあるとしても、ふと訪ねてみたくなるものだ。サラリーマンの押木貴史もその一人と言える。
 振り返れば、うらみ/つらみ/ねたみ/そねみの四つの『み』が渦巻く出世競争の中で、貴史は業務に励み、やっと役員となれた。
 それでも最近思うのだった、もし杉村幸夫のままだったとしたら、こうはなってなかっただろうと。

1

正義の味方

14/10/04 コメント:1件 更地

 僕には誰にも言えない秘密がある。そう、僕はみんなの笑顔を守る正義の味方なのだ。
 とは言っても、いつも朝にテレビでしているようなカッコいいヒーローじゃない。ただみんなの笑顔を見るためにたくさん働く、そんなやつだ。僕は今のままで満足しているから目立ちたいとは思わない。みんなに褒められるのは恥ずかしいから、どうしても僕のしていることは周りに秘密じゃないといけない。
 僕は今までに色々な良・・・

1

秘密にして

14/10/04 コメント:1件 三条杏樹

好きなひとが黒髪がいい、と言ったから。君は明るかった髪色を暗くした。

「黒すぎて、青くなるのも嫌だったの」

光にあたると少し赤がかかるその髪を、梳くように撫でてあげた。
これも特権。

好きな彼の話をする君は頬が染まって愛らしい。可愛い、というと恥ずかしそうに俯くのが好きで、わざと言っていた。

彼が冷たい、と泣きそうな声で電話をしてきて、・・・

2

モノワスレヤ

14/10/03 コメント:3件 かめかめ

《あなたのことわすれます》

 首からプラカードを提げたおさげ髪の娘が一人、橋のまん中に立っている。
 橋を行く人々は興味なさげに娘の前を通り過ぎる。車に座り引かれいく紳士。パラソルを開いた淑女。飯椀をかかえた乞食。本をかかえた文士。エトセトラエトセトラ。
 娘は立っている。忘れるべき《あなた》を求めて。



「なあ、なあ! こんなことしても、あん・・・

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秘密屋

14/10/03 コメント:2件 メラ

「僕、ある男を殺したんです」
 一見真面目そうな、某進学校に通う高校二年生は、私から目を逸らしたまま告白した。
 私は何も言わず、その学生を観察していた。
「いや、直接何かしたわけじゃなんです。ただ、イジメっていうか、からかっていたら、ソイツ、自殺しちゃって・・・」
「遺書とかで君の名前を出しているなら、それはもうどうにもならないと思う」
 私は正直にそう言ったが、学・・・

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逃れられない

14/10/02 コメント:2件 藍田佳季

 あと数分で、この部屋に刑事がくる。おそらくは一人。最終確認だと言っていた。
 つまり、これさえ乗り越えれば嫌な他人に干渉されることがなくなる。
 最後まで真実を隠し通すつもりだ。けど、一つだけ問題がある。
 同居している彼だ。
 彼には今回の件について、断片的にではあるが知っている。
 
 その「断片的な内容」を一部でも話されては台無しになる。

・・・

2

家族の法則

14/10/01 コメント:4件 みや

ぼくがお父さんの本当の子供じゃないっていう噂は、あっという間に一年二組のクラス中に広まった。噂、じゃなくて本当の事なんだけれど…

ぼくのお父さんはぼくが四歳の時にぼくのお母さんと再婚した人。ぼくは本当のお父さんがどんな人なのか知らないけれど、多分本当のお父さんよりも、今のお父さんは本当のお父さんだと思う。優しくて面白くて頼りになるお父さん。休みの日には一緒に遊んでくれるし、サッカーだ・・・

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母一人

14/09/30 コメント:0件 五助

 誰にでも隠し事というものはあります。後ろめたいことや、ごまかしたいこと、何でも無いことまで隠したくなりますな。
 たまたま、若い女性に名刺をいただいても、ポケットに入れておくわけにはいけません。財布に入れておくのも物騒です。車も案外見つかるものです。そういう時は、将棋の駒が入っている木箱の中に入れておくんです。あんなもん女房触りませんからね。将棋盤の前で木箱を開けて、めくり、こいつは銀だ。・・・

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言い伝え

14/09/30 コメント:0件 坂井K

 この世界を支える一本の大きな柱、御柱。その柱を守ること。誰の手にも触れさせないこと。――それが、モリヒト一族の代々の役目である。

 その日も朝起きると、コタロウと弟のタクミは、いつものように御柱を囲んだ壁を点検した後、壁の内側にある見張り小屋に入った。「お早う」「お早うございます」夜番のヨシユキが、眠そうな顔で挨拶する。「ユタカくんはどうしたの?」「小便ですよ。そう言って出て行きま・・・

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聖羅の夢

14/09/30 コメント:1件 笹峰霧子

 一樹は自分の胸の内を誰かに話したくて仕方がなかった。聖羅と高原へドライブした帰りに立ち寄った道の駅で、「誰か知ってる人に会わないかな」とぽつりと呟き聖羅を驚かせたことがある。
 あれからふたりは行く先々でも顔見知りの誰にも会わず、ドライブを楽しんでいた。
人目に付かぬ場所を選んで出かけはしたものの、そのことが一樹にはちょっと物足りなく思えた。

「多分いつかは洋介の耳に入・・・

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クマ蝉

14/09/26 コメント:2件 島中充


クマ蝉がうるさかった。 プールからこども達の甲高い歓声が木々の茂みを通りぬけ聞えていた。真夏の正午 スカートのまま はだしになり 十才の女の子が公園の桜の木に登り始めた。息を殺し桜の木が枝分かれしている所までのぼり 気付かれないように手をのばした。 素早く一気に指で抑え込んだ。 クマ蝉がギュギュウと鳴いた。 枝々から一斉に悲鳴を上げながら 尿をまき散らし たくさんの蝉が四方八方へ飛んで行っ・・・

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ニーチャの秘密

14/09/23 コメント:2件 W・アーム・スープレックス

 ドライブのあと、井出公夫に部屋に誘われ、私は思うところがあって、うなずいた。
 最近の彼、どこか変だった。気持ちの上で、私から離れていくような印象がした。
「ニーチャがあいたがってるよ」
 ニーチャというのは、彼が飼っている雌猿の名前だった。本当はニーチェにしたかったのだが、あまりに御大層すぎて、一字だけ変えたのだという。
 マンションの彼の部屋にあがると、ニーチャは廊下・・・

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かかあ天下

14/09/23 コメント:0件 ポテトチップス

時計の針が深夜0時を少し過ぎた。玄関のチャイムが鳴り、恭子はいつものようにドアを開けて主人である武彦を迎えた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
洗面所で手を洗い終えた武彦がキッチンのテーブルの椅子に座ると同時に、いつもと同じように冷やした瓶ビールとグラスを武彦が座るテーブルの前に置いた。
冷やした瓶ビールを美味そうに喉に流し込み、空のグラスをテーブルに置くと、すかさず恭子・・・

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ノンちゃんの◯◯◯さん

14/09/23 コメント:6件 J-POP

今日、ノンちゃんのお母さんが逝きました。
お母さんは焼かれて、灰になってしまったのです。
ノンちゃんは、小さい頃からずっとお母さんと暮らしてきました。

お母さんと一緒に暮らした街を一望できるこの小高い丘に登り、ノンちゃんは空を見上げました。
空は高く、どこまでも澄み切った青色が広がっています。


ーーーーーーーーー

『 ノンちゃん・・・

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ひみつの飲物

14/09/22 コメント:2件 こぐまじゅんこ

 やすくんは、三才です。
 毎日、保育園に行っています。
 保育園では、ゆみ先生や、おともだちとなかよくあそびます。
 ときどき、おもちゃのとりあいになったり、砂場でころんだりします。
 保育園はたのしいけど、保育園がおやすみの日は、もっとたのしいです。

 おとうさんと、おかあさんが、やすくんをデパートにつれて行ってくれたり、ゆうえんちにつれて行ってくれるから・・・

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叔父さんの話

14/09/22 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 僕がまだ小さかったころに、叔父さんがこんな話をしてくれた。叔父さんは絵描きで、会社勤めの僕の父親とちがい、ずいぶん気ままな暮らしをしていて、平日でもなんでも気がむいたら僕の家をたずねてきた。
 そのときも、叔父さんはふらりと家にやってきた。読書中だった僕は、本より叔父さんを相手にしているほうが楽しかったので、居間に顔をだした、
 お母さんはこの叔父さんが苦手で、お茶とようかんを出すと・・・

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さよなら。大輔。

14/09/22 コメント:6件 かめかめ

 私には兄がいる。
 兄はうまれたときから死んでいる。

 私がものごころついたころにはすでに、家にぶよぶよした腐った赤ん坊のようなものがいた。そのことを母に話すと泣き崩れた。それはきっと私の兄の大輔だという。
 流れた赤ん坊。生まれなかった肉塊。
 私はそのぶよぶよを「大輔」とよびはじめた。なぜかそれ以来、大輔は私と共に育ちはじめた。
 初めは弟ができたみたい・・・

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