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第五十七回 【 私を愛したスパイ 】  PRIVATE:I’S賞

今回のテーマは【私を愛したスパイ】です。

◆本コンテストは選考選評は通常通り時空モノガタリ事務局が行います。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2014/06/30

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

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PRiVATE:I'sのシ−クレット・プロフィール

Rott(ロット)…vo、dance、alto sax
真ノ介(しんのすけ)…tenor sax、fluteにより、
2006年より始動。
映画のワンシーンを彷彿とさせるような、
色気漂う大人の娯楽がコンセプト。
ジャズ・ロック・映画音楽などの要素を含むサウンドは「夜の罠」
そこに歌うボーカルは「Tokyoの甘い溜め息」
ツインサックス、ダンスで魅せるライブは必見!

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ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2014/05/05〜2014/06/02
投稿数 40 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 
※複数受賞の場合あり
※副賞としてPRIVATE:I’Sの新譜「Your I's Only」CD
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

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Dying Message

14/05/30 コメント:9件 ナポレオン

学園祭の終わった夕暮れの教室。名残惜しそうに残っていたクラスメイト達は、少しずつ散る様にして学校から去って行った。僕はというと、一人窓際の席に座りオレンジから群青に変わる空をただぼーっと眺めている。否。にやける顔を教室の皆に見せまいと窓の方を向いているのだ。
「ケン君に大事なお話があるんです」
放課後、教室で待っていてくれと言ったのはクラスメイトのソラという女の子だった。彼女はいつも一・・・

4

デュアル・プリズム

14/05/26 コメント:2件 青海野 灰

私が辻先輩に声をかけたのは、十名程の部員がざわめく部内でもいつも一人でいる彼が一番話しかけやすそうであり、また、少し親近感を覚えたからだった。
彼はいつも文芸部室の窓際の陽だまりにパイプ椅子を置き、細長い足を組んで難しそうな本を静かに捲っていた。部室に舞う埃が秋の陽光を受けキラキラと光り、そこだけ時間がゆっくりと穏やかに流れているように見えた。
その視線の先の物語に向けられる、薄いフレ・・・

3

おいどんを慕ったスパイ

14/05/11 コメント:2件 aspeman

(なんでも、異国では間者のことを『すぱい』っちゅうらしか。
その『すぱい』っちゅうやつが、おいの命ばつけ狙うとるらしか。
たしかに征韓論を通すこつばできもはんで、薩摩のモンばひきつれて、薩摩に帰って来もしたからなぁ・・・
おいの周りには若いモンが集まって政府を目の敵にしちょる。
不穏な空気ば感じ取って、『すぱい』が送り込まれても不思議はなか・・・)


<・・・

最終選考作品

6

私を愛した【 す 】の付くものなぁに?

14/06/02 コメント:10件 泡沫恋歌

「なんじゃあーこりゃあ!?」
 自分の目を疑い、瞼を擦って、もう一度その文字を見なおした。
『スパイ急募』
 俺は今、ハローワークの中にあるパソコン求人検索ルームに居る。
 希望する条件をパソコンで検索してくださいと、職員に言われて、入力した条件に合致した職業が、まさかの『スパイ』だった。

 今朝、ボロアパートの六畳一間の部屋で寝ていたら、突然、大家のババアに・・・

5

Miniature garden

14/06/01 コメント:6件 光石七

 また転寝をしてしまった。揺り椅子で編み物をしていたのに、気付けば毛糸も針も手元に無く、体には毛布が掛けられている。
「奥様、妊娠中は眠いものですよ」
年配の侍女はこう言うけれど、あまりの眠気に病気ではないかと疑ってしまう。
 何やら屋敷が慌ただしい。侍女の一人に何があったのか聞いた。
「旦那様のご指示で荷造りをしております」
夫はしばらく屋敷に帰ってきていない。伝令・・・

5

安全剃刀あります

14/06/01 コメント:10件 そらの珊瑚

 日曜日の朝食は私たちにとっては昼食だ。怠惰な眠りというものを私たちは愛している。十年分ほどよくヘタったマットレスのダブルベッド。その上でぐうと私のオナカが鳴った。
「ぐうう……」夫のオナカが返事する。
「ねえ、もしかしてこの世から言葉というものがなくなっても、私たちだけは困らないかもしれないね」
 彼がぼんやり薄目を開ける。また変なこと言い出してと思っているに違いない。
・・・

6

スパイ135: 諜報員名『卑弥呼』

14/05/30 コメント:6件 草愛やし美

 乙姫子は、苦渋に満ちた表情でスペクテーの部屋をノックした。ここは、某海底数メートルに設置されているPKR基地(パクリの略)、ボスであるスペクテーは、部屋の奥にある豪華な椅子にふんぞり返り座っている。暗くてその顔は見えないが、無類の愛猫家であるスペクテー。相変わらず膝の上に愛猫を乗せている。現在、飼われているこの猫、真っ白な毛並はもちろんだが、瞳の色が左右違うオッドアイが素晴らしい。右眼は真紅のル・・・

6

さざ波

14/05/24 コメント:12件 そらの珊瑚

 この青い惑星の中で一番高い塔。その最上階にマザーは住んでいた。マザーはこの星の影の統治者であった。神と呼ぶものもいる。
 争いごとが好きな地上の民にほとほとマザーは手を焼き、幾人かのスパイを地に放し、戦争でこれ以上命が失われないよう指令を出した。
 非合法のスパイ活動は天使の顔だけではない。時には悪魔にもなる覚悟を必要とされる汚れ仕事だ。

「ただいま、もどりました」

3

コンクリートジャングル

14/05/20 コメント:3件 ぴーち姫

 屋上に着いた男はタイトに巻いてあったヨガマットを道路が見える位置に広げた。
 そして持ってきた大き目のケースを静かにそこへ置くと左右のロックを外す。

 ケースを開けると素早い動きでM40A3のバレルを取り出し銃把に取り付け手動ねじを締めつけた。
 つづいてカスタマイズしたスプレッサーをバレルの先にねじ込むとS&B製可変倍率スコープを慎重にスライドに滑り込ませロックを掛け・・・

4

リヴァイアサンの指先で ――ザジ・ウィンストンの方便――

14/05/19 コメント:7件 クナリ

『歌と水の街』は、大陸最大の芸能都市である。
立身と凋落が頻繁に氾濫する街の治安は、年々悪化していた。
街を統治する貴族院運営の歌劇団は私兵を構え、やがて公務を兼任する形で街を取り締まった。
が、既に腐敗した街の兵士の質は悪い。
彼らの市井での横暴への反発が、いつしか、革命兵と呼ばれる貴族院転覆を狙う反体制集団を生んだ。



街の中を縦横に走る水・・・

4

カプセル

14/05/13 コメント:5件 メラ

「なんと言ってもうちの高木くんは優秀だよ」
 増川社長がパーティーの席で私の事を自慢しながら褒める。私は日本でもトップ企業である「マスカワ・トータル・コミュニケーションズ」に入社して五年。社長秘書としてニ年。ようやく今の地位を築き上げた。
「増川さんは本当にスタッフに恵まれている。羨ましい」
 会社の規模としてはマスカワの半分に及ばないが、一応業界内の大手の「トヨトミ通信」の社長・・・

投稿済みの記事一覧

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クロアゲハ

14/06/02 コメント:0件 日向夏のまち

暁闇に包まれた、高層ビルの群生する街。蜘蛛の巣の様な道々を吹き抜けていく風が、不気味な声で啼いていた。
一際高いビルの、屋上。私は耳をすませる。
街を、ビルを、私を。呑み込むように昇り、包み、押し倒そうとする風が。
けれど力任せのそれは、冷たく怯えている様で。
追い打ちをかけるかのように、地に落とすが如き底冷えの通知音。
あぁ、まただ。

『差出人:M

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二人の秘密

14/06/02 コメント:0件 ゆえ

目が覚めた。
目の前には見慣れた天井が映る。
眼球を右に動かす。一目ぼれして買ったオレンジのカーテンが日差しを遮っている。
カーテンレールには、布でできたラックがかかっていて、一番上はこの前の休みに気に入って買ったCA4LAのハット、二段目はメガネ類、三段目にはポーター ビートショルダー バッグがおさまっている。
そのまま目線を下に下げると大きいコルクボードがあって、そこに・・・

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私こそが

14/06/02 コメント:0件 松定 鴨汀

 彼は私を愛していた。
 私も彼を愛していた。そして、彼を殺した。

 彼がこの国に来て、はじめてが私だったんだって。
 そんな些細なきっかけで、30年近くも付き合ってた。

 彼は人を殺す前、かならず私を必要とした。そんな時はわずかに、ほんのわずかに手が震えていたから、すぐにわかった。
 彼は人を殺した後も、かならず私に慰めを求めた。そんな時は、彼の身体・・・

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ポーの水車

14/06/02 コメント:6件 草愛やし美

 その人は、川縁に座り、腕を組んで物思いにふけっていた。川の水の色を見ているのだ。水の色の濁りに細心の注意を払っているのだ。汚れ具合によって、水車の回転を速める。この川は、未来へと流れるもの。だからこそ、澄んでいなければいけない。ポーの島は、川の中州にあった。島を囲む川には水鳥が群れ動物達も水を求めやって来る。いつ頃から、その島があったのか、そして、その島にいつから、この人が住み始めたのか、誰も知・・・

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どうして

14/06/01 コメント:0件 村咲アリミエ

 彼は褒められるべきなのだ。

 当たり前だ。
 彼は当たり前のことをした。当たり前に仕事をし、その報告をしに来ただけなのだ。
 私は彼を褒めるべきなのだ。
 分かっている、分かってはいるが、彼からその報告を受けて数秒、私は言葉を失ってしまった。嘘だろ、という言葉を慌てて飲み込んだ、そのとっさの判断に、頭の片隅で称賛をおくりながら、しかし頭の大部分は混乱していた。

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ふたつの世界

14/05/31 コメント:0件 たつみ

鬱蒼とした森にぽつんと建つ店がある。
古い振り子時計と懐中時計があるだけの小さな骨董店である。
カウンターには作務衣を着た男が座っている。高級スーツに身を包めば、恰幅のいい初老紳士といった感じの男は目を閉じ、腕を組んでいる。
カラン、と鐘が鳴り、木扉が開くと硬い声が――「ご無沙汰しております」
深々としたお辞儀に対し、男は「いっらしゃいませ」と笑み浮かべた。 
時計音・・・

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ブルーデイジーノート

14/05/31 コメント:7件 そらの珊瑚

 彼は諸国を旅するピアニストだった。それは世間の眼をごまかすための隠れ蓑だったのだが。
 
 通称ブルーデイジー。彼に会った人にその印象を尋ねれば、見事にそれはまちまちであった。
 若者であったという人もいれば壮年の紳士であったという人もいる。
 一致しているのはその指先から奏でられる音色の美しさだった。
 観客はたちまちその音楽に魅せられ、カクテルの酔いにまかせて饒・・・

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私を愛したスパイ

14/05/31 コメント:4件 タック

 彼は名をゲイルと申しました。碧色の瞳あざやかな、美貌の青年でございました。ジャーナリストとして日本の地を踏んだのは最近のこと。ですが自国とは異なるであろう環境の中、語学の堪能さと柔らかな物腰を長所に精力的な活動を展開、本国において、一定の基盤を築き上げたのでございます。その姿勢に方々はみな親近、確かな信頼が表れておりました。年若く華麗な外見、ましてや謙虚な態度、軋轢を生む要因は、贔屓目にも見当た・・・

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絵梨

14/05/29 コメント:0件 カシヨ

『私たち結婚しました』

 いわゆる”いい歳”になると、そう高らかに宣言することは気恥ずかしくて、千織は当初、ハガキを出すことをためらった。とはいえ、ウェディングドレス姿はめずらしく写真写りがいい。夫の聡の「きみの好きにしたらいいよ」という言葉に背を押され、結局作ることにした。
 アドレス帳を繰っているとき、ふと手が止まった。
 中島絵梨。
 今は確か、近藤姓だったは・・・

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スパイにはめたエンゲージ・リング

14/05/29 コメント:2件 j d sh n g y

この世界には愛が欠落したものたちがいる。
その存在はラブレスと呼ばれた。
彼らは一見普通の人間だ。
しかし愛を与えてもらえなかった、もしくは愛を奪われた怒りや哀しみが彼らを変貌させる。
その存在は人間たちに危害を加える。それを食い止め、ラブレスを回収、再生させる機関が、俺の勤める通称ラボ≠セ。

「ジーン、三分遅刻よ」

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ぼくはスパイだ、えっへんへん。

14/05/28 コメント:4件 ウはうどんのウ

 ぼくはスパイだ。
 えっへんえへへん。
 お空も飛べるよ。えっへんへん。

 ぼくはスパイだ。
 えっへんえへへん。
 海にも潜るよ。えっへんへん。

 ぼくはどこにもいけるんだ。
 空も海でもあの女子更衣室にでも。
 ぼくはどこでも行けるスパイ。
 ぼくはどこにでも行けるスパイさ。

 でもたまにはおうちに帰ってあげ・・・

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【 私的検証 】義経とその讒言者(ざんげんしゃ)

14/05/28 コメント:13件 泡沫恋歌

 梶原景時(かじわらのかげとき)という男、稀代の告げ口魔にして、讒言者(ざんげんしゃ)である。
 元々は平家に属していたが、治承四年、石橋山の合戦で大敗し逃走する源頼朝(みなもとのよりとも)を見逃し、命を救った縁から、鎌倉幕府で仕えることとなった。頼朝の信頼も厚く、景時は侍所所司として御家人の統制に当たっていた。

 平氏討伐の際、源義経(みなもとのよしつね)には梶原景時が軍奉行・・・

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その歌を、君に

14/05/27 コメント:0件 小李ちさと

君の歌が好きだったの。
そんなこと今更言ったって、きっと信じてもらえないけど。

最初は何とも思ってなかった。
才能のある新人に近づいて、仲良くなって、いい歌詞とかいい曲を盗んで、どこかに売ってしまう。
そういう仕事をするようになった理由はちょっと言いたくないけど、とにかく、それが私の仕事だった。スパイみたいでかっこいいじゃんって、上司は無邪気に笑っていたけど。

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ウチの初恋

14/05/25 コメント:3件 坂井K

 これからする話はな、女同士の内緒の話やから、お父さんたちには言うたらあかんで。あれは今から……60年も前のことになるかな。世界的に人口が減っとる今では信じられへんやろけど、当時は世界の人口が増え続けとってな、食糧不足が深刻になっとったんや。

 せやからな、世界的な研究機関は、こぞってその解決方法を研究しとった。その結果完成した技術が「融合」や。「融合」ていうのはな、二人の人間を溶か・・・

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牢獄の中で

14/05/25 コメント:0件 きまねこ

 ここは牢獄だ。
 ただ膝を抱えながら薄暗い闇の中に座り込み、私は自分の時間を無駄に浪費している。
 毎日同じ場所同じ体制でじっとしているせいか、ベッドのスポンジにはくっきりと座り跡がついていて、妙な落ちつきがそこにはあった。
 日光が届かないせいか、ここに入って一体どのくらいの時間が経ったのかもわからないし、特別知りたいとも思わない。
 この場所に来て私が思うことと言った・・・

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湖畔の笛

14/05/21 コメント:7件 黒糖ロール

 笛を吹きながら、ずいぶん歩いてきた。森の樹木の影が濃さを増し、立ち昇ってきた霧状の闇が視界を覆いはじめている。
 幼い従者たちは無言のまま、私の後をついてくる。背後から聞こえるたくさんの足音は、私の裏側を蠢く憎悪が軋み合う音のようだ。
 ハーメルンの町から遠く離れた湖まで、あと少しで辿り着く。子どもたちは笛の音に導かれ、湖に体を沈めることになる。湖面の下、死で濁った瞳で漆黒の底を見つ・・・

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天上の妖精

14/05/20 コメント:11件 鮎風 遊

「星が煌めいているわ。ここでも宇宙が近くに見えるのね」
 陸がオフィスビルの屋上で何気なく夜空を眺めていると、背後からさりげなく囁かれた。だが、あまりにも唐突で、心臓がドキンと打つ。その驚きを隠し、陸が振り返ると、そこにはスラリと背の高い女が立っていた。

 最近世界は緊迫状態が続いている。陸は国家機密機関に勤める情報部員。昼夜を問わず情報収集に追われ、今夜も徹夜になりそうだ。そ・・・

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『認証済みアカウント』になる方法。

14/05/19 コメント:6件 滝沢朱音

俺の名を騙ってツイートしているアカウントがあると知ったのは、全国ツアーに出る三日前。
連日のリハーサルで疲れ気味の俺は、スタッフが渡すスマホ画面を不機嫌に見つめた。

――
蓮音@lennon***
ロックバンド・アイリーンのギターやってます。
――

「何これ、もろ俺じゃん。プロフ写真まで」
「公式の認証済みアカウントのマークもないんですが、・・・

3

真赤のチューリップ

14/05/19 コメント:1件 糸白澪子

こんな事をクラスの皆が知ったら、きっと彼奴らは侮蔑と優越感の目で私を見るに違いない。ひそひそひそ。今にも耳障りな声が聞こえてきそうだ。
耳の奥で聞こえる声を振り払うように私はベッドから起き上がった。隣で大きく鼾をかくオジサンを尻目にパンツとブラを着ける。制服のシャツを着たときにオジサンが目を覚まして、
「あ、もう帰るの?」
なんて聞いてきたもんだから、
「明日、学校あるから・・・

2

知られざる最悪に最高な英雄

14/05/18 コメント:1件 FRIDAY

 時刻は深夜を回っている。
 バーカウンターに男が一人で座っていた。他にはマスターがグラスを拭いているだけで、店内に客は男だけだ。
 男は前に置かれたグラスに手を付けるでもなく、頬杖をついて中空を眺めていた。
 入店してからずっとそうしている。
 と、緩やかに店内に流れていたジャズに、他の音が混ざった。
 戸の押し開けられる音と、誰かの入ってくる足音だ。
 マス・・・

1

恋人はスパイ

14/05/17 コメント:0件 yoshiki

 ――優奈(ゆな)が好きになった、付き合い始めて四か月になる祐二は、自分はスパイだと言う。もちろん彼女がそんな冗談みたいな話を本気で信じてしまったわけではないが、祐二は本気な顔をしてそのことを誰にも知られないように、夜更けの公園でこっそりと優奈にカミングアウトした。祐二は、人影がないのを何度も確認した末、ぼそりと優奈に向かってこう言った。
「俺は諜報員なんだ。秘密工作員さ。俗ないい方をすれば・・・

3

天空の城 ── 刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)

14/05/11 コメント:6件 鮎風 遊

 晩秋の晴れた早朝、円山川に霧が立つ。それは但馬の山あいに立ち込め、藍白色の雲海となる。
 竹田城はそれを天へと突き破り、宙に浮かぶ。まさに天空の城だ。
 その風景を眺望できるポイントが城と対峙する立雲峡。そこからは、まさに幻想的な情景を目にすることができる。
 京田一郎は崖の上から望遠レンズで、これから現出する夢幻の窮まりを撮ろうとカメラを構えてる。
 そんな時だった。雲・・・

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君を待つ永い夜

14/05/10 コメント:0件 小李ちさと

「一輝、どうして」
私の問いに、一輝が足を止めた。ロングヘアの女が綺麗に顔をしかめる。
「答える必要あるー?早く戻らないと、怒られるの私なんですけどー」
「……戻りたかったんだ」
私の前に立つ一輝はそう言って、小さく笑った。
「もう一回、千影に会いたかった。そのためにはスパイになるしかなかったんだ。僕を攫った憎い奴らに、大事な故郷の仲間を売るしか、ね」
「あら、・・・

3

おとうさんのカルボナーラ

14/05/07 コメント:2件 こぐまじゅんこ

 あずきちゃんは、五歳です。
 あずきちゃんのおとうさんは、イタリア料理店のコックさんです。
 とびきりおいしいスパゲッティを作ります。
 あずきちゃんは、おとうさんのカルボナーラがだいすきです。

 ある日、お店に、真っ黒なサングラスをかけて、背広にネクタイをしめたおじさんがやってきました。
 あずきちゃんは、お店にきて、カルボナーラを食べていました。サングラ・・・

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まほろば

14/05/06 コメント:0件 みや

女王はここからの眺めをたいそう気に入っていた。
目に眩しい緑と優しい風に包まれたこの庭を愛していた。

クナ国との戦は苦戦を余儀無くされており、ここへ攻め込まれるのも最早時間の問題だった。やがて緑は焼かれ、建物は崩壊し、人々の真っ赤な血が大地を染めるだろうー

女王は戦を辞めたかったが、辞め方を解らないでいた。
白旗を上げるには自分の命を奪われるしか道は無いと信・・・

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夢が覚めるまで

14/05/05 コメント:0件 ナツ

「あちらのお客様からです…」
バーテンダーは私にそう言いながら紫色のカクテルを差し出した。クラシックが静かに鳴るこの店には私以外に数名の客がいたが、1人を覗いて皆、連れがいた。だから私はそのカクテルの送り主をすぐに見つけた。
軽く会釈をするとニコリと笑う、二十代後半と言った所だろうか?彼は私に近づいてきた。
「それ、そこまできつくないですよ?」
私は正直、飲むのをためらって・・・

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それでも会いたい君に…

14/05/05 コメント:0件 ポテトチップス

5月に入り仙台駐屯地内の正面道路の両脇で満開に咲きほこっていた桜は、樹の下のアスファルトの地面をピンクに染める日が続いた。
夕方5時にラッパの音で国旗が降りるのを敬礼で締めくくり、今日1日の任務も平時に終わった。
「小野寺、国分町で一杯飲まないか?」上松勝也が口角を上げて言ってきた。
上松は小野寺よりも1歳年上だが、幹部候補生として幹部になるための教育を受けた同期で気心の知れた同・・・

1

指令

14/05/05 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

 湯呑の日本酒を、余さずのみほしたはずがつい、白いステテコの上に一滴、ぽとりと落ちた。
「ちぇっ、もったいない」夏雄は、スルメのあしをしがみながら、話の続きをはじめた。
「やっぱり007はなんといっても、ショーン・コネリーだろ」
 横から妻の武子が、炊き上がったばかりの白米をかきまわしていたしゃもじを、ばかにしたようにふった。
「お父さん、また古めかしいこといいだしたわね。・・・

2

皮膚

14/05/05 コメント:2件 かめかめ

ざわざわざわざわ。
ざわざわざわざわざわざわ。
ざわざわざわざわ。
ざわざわざわざわざわざわざわ。
ざわざわ。

音がする。
私の腕の中。
私の腹の中。
私の脳の中。

ざわざわざわざわ。
ざわざわざわざわざわざわ。

皮膚の下を這いまわる音がする。
長いヤツだ。
長くてイヤなヤツだ。

ざ・・・

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