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  2. 第四十九回 時空モノガタリ文学賞【 絶望 】

第四十九回 時空モノガタリ文学賞【 絶望 】

今回のテーマは【絶望】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2014/03/10

※同一投稿者からのコンテストページへの投稿作品数は2〜3作品程度とさせていただきます。
※R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ
投稿期日 2014/01/13〜2014/02/10
投稿数 56 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

9

【 閲覧注意 】全国不幸自慢大会

14/02/10 コメント:18件 泡沫恋歌

「みなさん、こんにちは。全国不幸自慢大会の時間でございます」
 市民会館の大ホール、観客席ほぼ満員である。
 七三に分けワックスで固めた頭に、今どき流行らない赤い蝶ネクタイ、黒いロイド眼鏡をかけたアナウンサーは胡散臭い男だ。
「では、本日の審査員をご紹介します。絶望の魔女と呼ばれる超辛口人生相談カウンセラーのクリスティーン・佐渡先生でーす!」
「ハーイ! クリスティーン・佐・・・

6

死ニゾコナイ

14/01/30 コメント:19件 そらの珊瑚

 寝室の窓の外で
 また今夜も
 切れかかった街灯が
 青白い点滅を繰り返す

 この世に未練があるのか
 ただ惚けてしまったのか
 それとも
 死ニユク前のあがきなのだろうか
 今夜も
 静寂であるべきはずの
 オレの
 夜を
 不規則という規則にのっとって
 あいつが邪魔をする

 寒空の下で

9

死神の憂鬱

14/01/19 コメント:12件 黒糖ロール

 ヘッドフォンを耳に押しつけ、大音量でロックを聴いていると、心が落ち着く。今もベッドにもぐりこみ、激しい音の波に自分を埋没させている。今頃、両親と妹は、テレビを見ながら夕食をとっているのだろう。
 プレイヤーの音量を上げた。ヴォーカルの絶叫が、階下の家族団欒の想像を少しは壊してくれる。
「あんた生きてる意味ないよね」
 友人の言葉がフラッシュバックする。「冗談きついなあ」と返しな・・・

6

草汁おばさん

14/01/13 コメント:12件 W・アーム・スープレックス

 草汁おばさんはきょうも、朝からドリンクの配達に飛び回っていた。
 バイクの荷台の冷凍バッグには、まだ半分以上の草汁が残っている。おばさんは放射能予防マスクのなかで大きく息をすいこむと、バイクのアクセルをグイと握りしめた。
 脳科学者たちが開発した草汁には、ひとを認知症にみちびく成分が含まれている。飲み続ければいずれ、認知症患者同様の物忘れに陥ることだろう。最終戦争のことも、放射能のこ・・・

最終選考作品

6

人形は踊らない

14/02/09 コメント:10件 光石七

 机と椅子があるだけの殺風景な部屋だった。黒髪の青年が一人、表情無く壁にもたれるように座り込んでいる。足音が近づいているが、青年には聞こえていないようだ。ドアが開いても振り向かず、眉一つ動かさない。赤毛の青年と年配の男が部屋に入ってきた。赤毛の青年が黒髪の青年に話しかける。
「シウ団長、ヒュリです。お医者様をお連れしました」
それでも黒髪の青年――シウは反応しない。
「ずっとこう・・・

9

モーツアルトは聞きたくない

14/02/07 コメント:19件 朔良

 うん。もう駄目だ。終わりにしよう。僕はモーツアルトにはなれない。

 再生の終わったDVDの静止画面を眺めながら、僕は眼鏡をはずして手の甲で目をこすった。
 終わりにすると決めたくせに未練がましく、「夏の演奏会、一緒にやらね?」と匠から渡された音楽ファイルを開く。
 流れてきたのは皮肉にもモーツアルトだった。

 モーツアルトを連弾とかどんな嫌がらせだ? と毒・・・

1

流浪の方舟

14/02/01 コメント:4件 湧田 束

 ある日、明け方までかかって中編小説を一本書き上げた後、俺はそのまま机に突っ伏して眠り込んでいた。しがない小説家の日常なんて、こんなものだろう。
 眠い目を擦りながら顔を上げると、時計の針はすでに朝の9時を回っていた。溜息混じりにノートパソコンの画面を閉じて立ち上がると、煙草に火を点けながらベランダのカーテンを開く。

 揺れるカーテンの向こうに映し出される窓の外の光景は、普段と・・・

7

明日、世界が

14/01/25 コメント:16件 朔良

 明日、世界が滅びたらいいのに。
 全部全部、無くなってしまえばいい。

 帰りの電車の中、筋を引いて流れていく灯りを睨みつけるように顔を歪めて、私はそう願った。

 たかが失恋。されど失恋。
 メガンテでもバルスでもなんでも、唱えられるもんだったら唱えたい。明日なんか永遠に来なきゃいい。

 ブブブ・ブブブ
 バッグに突っ込んだ携帯が震えた。・・・

9

くさりの歌

14/01/21 コメント:14件 クナリ

同級生の翔子がロザリオに祈りを捧げる格好も、随分板に付いて来た。
女子中学生が冬の夕暮れの公園で十字を切っているというのは、少々異様かもしれないが、これが彼女の習慣だった。

二人とも、自分の家が好きじゃない。
我が家の両親は子供を荷物としか思っていなかったし、翔子は父親が早世した後、ひっきりなしに男を家に連れ込む母親を心底軽蔑していた。
私達は共に、“可愛そうな子・・・

4

HELLO

14/01/19 コメント:12件 双六

結婚して丸一年。
新しい家に引っ越して半年。
仕事を終えて家に帰るも、玄関から伸びる廊下は洞窟のように暗い。
ゆったりくつろげるようにと買った大きなリビングソファに腰をおろすも、
今は両隣の隙間を感じるばかりで落ち着かない。
フローリングに薄いほこりの層ができていることに気づいてはいるが、
掃除しようという気にならない。
この家はひとりで住むには広すぎる。・・・

投稿済みの記事一覧

6

希望

14/02/10 コメント:13件 朔良

 断崖絶壁の淵をあなたはふらふらと歩いている。

 世界はどこまでも暗く黒く、存在するのはねっとりと濃度を持った暗闇だけ。絶え間なく吹きすさぶ刃の風に襤褸をはぎ取られそうになりながら、縋る杖もなくただ這うようにあなたは足を進める。底の抜けた靴さえいつしか失い、爪のはがれた裸の足は傷まみれで尖った小石を踏み抜いてももはや痛みすら感じない。泥だらけの頬、礫に打たれ腫れた瞼が垂れ下がった虚ろ・・・

2

独りモン同士

14/02/09 コメント:7件 欽ちゃん

人類は森林伐採を繰り返し、地表の砂漠化が進んだ。
その結果、行き場を失い絶滅する生物が後を絶えなかった。


小汚い木造のアパート。
一人暮らしのワンルーム。
取り柄のないおやじ。
年齢=彼女いない歴。

ワンカップをちびちびを啜りながら、するめをかじる。
噛めば噛むほど味が出る、するめが羨ましい。
一杯やりながら文句を言わないTV・・・

1

恋と狂気は紙一重

14/02/09 コメント:4件 ゆえ

いつからだろう。
二人で笑いあっていたはずなのに、気がついたら俺だけが笑顔で話をしてたのは。
繋いだ手からかえってくる力の強さがなくなったのは。
くだらない俺のダジャレを笑っていてくいれていたのに、「もういいから」と返すようになったのは。


その日は、本当だったら今度の連休に遊びに行く場所を決めるはずだった。
不動産屋で働く俺は百貨店に勤務する夏樹の事を・・・

9

絶望という名の乳母車

14/02/09 コメント:12件 草愛やし美

義母の車椅子を押す
空が俄かに曇り出し
ポツポツ雨が降ってくる
私は田んぼ道を
転がるように急ぎ
車椅子を押して走る

いつの間にか
車椅子だと思った握り棒は
乳母車のそれに変っている

そうだった
かあさん乳母車に似合うのは風車だよね
風車持ってくるから
待っていてかあさん

何度も同じ回想が繰り返さ・・・

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いつかの雨だれ

14/02/09 コメント:1件 お食事パンケーキ

薄暗い教室。遠い意識の中、コツコツコツとハイヒールの歩く音が響きわたる。その音はどんどん近づいてきて、僕の席を過ぎたあたりで止まった。「起きなさい」。僕は重い瞼をゆっくりと開け、そっと顔をあげた。先生は朗読の最中のようで、片手には教科書が握られていた。僕が自分の教科書に目を移すと、先生は納得したように席を離れていった。

最近、夢を見る。何度も何度も、同じ夢を見る。真っ白な広い部屋の隅・・・

1

花嫁誘拐公社

14/02/09 コメント:4件 四島トイ

 結婚式場から花嫁が消えたときの絶望がわかるか、と社長は言った。
 駅前のカフェでパンケーキ食べ放題の新記録に挑戦していた時のことだ。
 コーヒーを飲む向かいの席の若い男。社長と呼ばれる詐欺師。同業者にして私の相棒。
「わかりません」
「佐藤。詐欺師には想像力が必要だ。そうだろ」
 メイプルシロップの独特な風味が口中に広がる。皿を積上げる私のお腹を心配するような店員の・・・

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ボイド

14/02/09 コメント:2件 AIR田

 女はヒステリックになった。
 理屈的な思考から、卑屈的な思考へ。
 自分を取り巻く世界は随分とシンプルになりました。
 情熱を注ぎ、あんなにも近かった、自分にとって大切な物が、ぼやけて遠くに見える。
 飛んでもいない虫の羽音が聞こえるような気がして、少し莫迦になりました。少し莫迦になりました。偉くなった分、少し莫迦になりました。
「臼田さん」
 自分を呼ぶ部下・・・

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命の距離

14/02/08 コメント:2件 サンジェルマン

 強い風が男の背中を押している。
男はただ立ち尽くしている。
空がいつもより近く、前を向けば地平線かもしればいが、
男は空を見上げている。
男はため息を付くが、その音も呼吸も風に流され誰の耳に届くことはない。
そこは街の中ではあるが、男の姿を見ているものはいない。
瞳からは涙が流れている。この瞬間においては悲しいわけでも、
辛いわけでもなく、男はただ涙を流・・・

1

拝啓、娘様。

14/02/08 コメント:5件 タック

一通目

――ひさしぶり、加奈ちゃん。ごめんなさいね。いろいろあって、しばらくおてがみをだすことができなかったの。さびしかったかな? そんなことないかな? 加奈ちゃんが、むこうでもげんきにやっているのなら、お母さんはそれがいちばんのしあわせです。加奈ちゃんのこと、だいすきだからね。これからはずっと、いっしょにいようね。
 いまから、加奈ちゃんのところにしゅっぱつします。加奈ちゃん・・・

10

パンドラの匣

14/02/06 コメント:4件 石蕗亮

 私は魔法使いの弟子である。
今度学校の文化祭で演劇をやることになった。
題目は『パンドラの匣』
魔法修行は一旦休んで師匠の喫茶店で台本に集中していた。
カウンターに座り自分の台詞を一生懸命暗記していると
「熱心だね。無理しないようにね。」と師匠が珈琲を差し入れてくれた。
「ありがとうございます。」と一旦台本を伏せて置くと早速珈琲を口に含んだ。
「ん、パン・・・

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天秤

14/02/05 コメント:2件 タック

――君が温さに浸っているとき
  どこかの誰かは明日に震えている。

――君が渇きを瞬時に癒すとき
  きっと、誰かの喉はひび割れている。

――それは、自然の摂理。世に与えられた無情の理。君が気に病むことではない。心を痛めることではない。

――君は盲目なだけ。提供された世界を、楽しんでいるというだけ。目を見開く必要はない。視野を広げる義務はない。・・・

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賞味期限はご都合で

14/02/05 コメント:8件 夜木 貉

 もうすぐ、今日という日が過去に溶ける時間だ。

 君から電話があったのは、そこから長針を一周くらい遡らせた時だった。
「今から行ってもいい?」
 と、問う台詞には十割に近い自信が滲んでいて。それは自分の願いが拒否されるだなんてまるで思ってもいないような、底抜けに明るい声だった。
「ケーキも二つ買ったんだ」
 こちらの応えを待たずして押し付けられた、酷く利己的な・・・

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絶望の二乗

14/02/05 コメント:12件 草愛やし美

 我が子が、亡くなった、保育所で……。事故!? 嘘よ、殺されたのだ。

 保育所から、その一報が入ったのは、私が職場で忙しく働いている時だった。オートメーションの食品の検品作業、無理に頼みこみ、長い産休を貰っていたがようやく戻ってきたばかりだった。
「お子さんの様子がおかしいので、今、救急車で病院へ運びました」
「どこ? どこの病院!?」

 慌てて駆けつけた病・・・

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死を望む我ら

14/02/04 コメント:2件 坂井K

「親父なんか死ねば良い」俺はずっとそう思って来た。俺がやつを嫌いになったのはいつからだろう? 以前から馬が合わなかったのは確かだが、殺したいほど嫌いになったのは……、そう、高校三年のときだった。酔っぱらって帰って来たやつが、俺に難癖をつけ、俺がキレて掴み合いになったときからだ。

「息子なんて死ねば良い」いつからか私はそう思うようになった。いつからそう思うようになったのだろう? 私だっ・・・

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絶望

14/02/03 コメント:10件 gokui

 あなたが私たちの中に住み着いたのはいつの頃でしょう。それは、あなたに
『希望』という名前を与えるよりもずっと昔のことだったはずです。まだ言葉
すらも存在していない遙か昔。
 あなたは不安が支配する時代にいつしか私たちの心に住み着いて、力を与え
続けてくれました。長い歴史の中で、どんなに傷ついてもあきらめずに生きて
こられたのは、あなたのおかげです。あなたがいなければ・・・

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BLANKEY JET CITY

14/02/03 コメント:18件 そらの珊瑚

 今日もまた昨日と同じ日常が始まる。いや昨日よりそれの憂鬱度は増し、だからといってそこから逃れることが出来ずにいる。

――人の身体の80%は水から出来ています。

――きれいな水を飲めばおのずと健康になるのです。

――反対に汚れた水を飲めば不健康になります。

――当社の高性能浄水器を使えば塩素、ダイオキシン等に汚染された水もきれいな水になるので・・・

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チキュウメツボウノヒ

14/02/02 コメント:2件 みや

2012年12月21日。
マヤ文明の予言によれば、この日地球は滅亡する。らしい。
地球滅亡?人類滅亡?世紀末?

マヤ文明以外にも似たような予言は以前にもあって、でも地球は滅亡していない。
マスコミは少し騒いでいるけれど、私達人類はその予言が当たると信じていない。
信じるどころかどうせ嘘でしょ、とさえイラつく。

地球なんて滅亡しない。地球は滅びる事・・・

2

「」

14/02/01 コメント:3件 辛楽



次に進もうとして踏み台に乗り、高い壁を乗り越えたらそこには何もなかった。
右を見る。壁。左を見る。壁。前を見る。壁。むろん後ろは、見ずとも壁。
すとんと落ちるように、必ず先があると信じて超えた壁には、登れそうな凹凸もない。

どうやって出る?
前に進む事も後ろに戻る事も許さない。
信じること、それは度を過ぎればこうして自分の足で地獄へ赴く暗示にな・・・

8

絶望がドアを叩く

14/01/31 コメント:14件 草愛やし美

 ベートーヴェンの交響曲第五番を知っている人は多いだろう。『運命』と名づけられたその交響曲の始まりは、運命が扉を叩く音を表しているという……。運命が、扉を叩く音とは、どんなものなのだろうか。突然、やってくるその音は、誰が叩くものなのか? 天命といわれるように、それは天空の采配の仕業か、あるいは生まれた時に、人の生き様は全て決まっていて扉を叩く時を待っているのだろうか。人は運命から逃れる術を知らない・・・

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デッドライン

14/01/31 コメント:2件 洞津タケシ


 真っ暗闇だ。
 夜なのか?
 いや、そもそも今は何時だ?
 僕はどこにいるんだ。
 何も見えない。
 何も聞こえない。
 一体全体、どうしてしまったんだ。
 体も動かないし、そう言えば暑いも寒いも感じない。
 わぁーっ!と、声を出そうとしてみたけれど、声もでない。
 さては金縛りではないだろうか。
 生まれてこの方、心霊現象やオ・・・

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永遠の絶望

14/01/29 コメント:1件 リアルコバ

《ちんちろり〜ん》『はい一の位は三です』
「よし32561963番ね、理由は失念っと  オッケーこれで終わりだよな」
 ひどく軽いノリでサイコロを振り、更にいい加減な声で物事を決めていく此処は、天界よろずの神の社務所である。まだ神社の与えられぬ若手の神たちが偶然の産物と云う幸不幸を割り振る場所である。
 ランダムに振られた番号は下界の人間一人一人に付けられた番号で、今日は年・・・

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絶望は産声とともに

14/01/29 コメント:7件 alone

ずっと母親の羊水のなかで眠っていたかった。
永遠に思える微睡み。現にそれは私にとって永久に続く営みだった。
眠り、揺られて、母親の温度を肌に直に感じた。
この永久は終わらないでほしいと思った。
この眠りから覚めたくはないと思った。
終わりなき眠りは私を満たした。羊水が身体の隅々にまで渡っているように、私のなかを安堵の睡眠が満たしていた。
目覚めたくない。それは切・・・

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絶望を視る女

14/01/28 コメント:21件 そらの珊瑚

 牛込御門内五番町、青山播磨守主膳の屋敷。
「どうした、お菊、ないでは済まんぞ」
「お許しくださいませ」
「その皿は徳川様からの拝領の品。青山家の家宝であると存じておるな」
「はい、それはもう。確かに十枚、ここへ納めたはずです」
「ではあらためて、数えてみよ」
「一枚、二枚、三枚……九枚」

「カットォー! ルリちゃん、全然ダメ、ここは絶望の表情が・・・

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まだ、だいぶある

14/01/28 コメント:1件 五助

 遠いわけではない、険しいわけでもない。走るわけにも行かず、ゆっくりと歩くほど余裕があるわけでもない。夜の道を、急ぎ静かに歩いている。
 春になれば、この道すがら桜の花が咲き乱れる。夜の闇に浮かぶ白い花びらは、恐れとも美しさとも足を止め見いってしまう。今は冬、枝先に、つぼみを蓄えじっとしている。
 子供の笑い声が聞こえる。民家の一室から、テレビでも見ているのだろうか、それとも、学校で何・・・

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未完の曜変天目茶碗

14/01/27 コメント:14件 鮎風 遊

 癌を患い、やせ細った父。私は父を見舞うため帰郷した。母に支えられて寝室から出て来た父、私を手作りの茶室へと招き入れ、一服の茶を点ててくれた。
 私は茶道の作法を知らない。それでも漆黒の茶碗の中で、泡立つ鮮やかな青緑色の薄茶(うすちゃ)をゴクゴクと飲み干した。
「祐輔はまだまだはな垂れ小僧だなあ。だけどお前には、この茶碗での一気飲みが似合ってるようだ」
 侘び寂びの感性を持たない・・・

18

えのぐ

14/01/27 コメント:32件 泡沫恋歌

 男は暗い顔でパリの街を彷徨っていた。
 売れない画家の彼は、いつもセーヌ川の畔で観光客相手に似顔絵などを描き細々と生計を立てていた。恋人は踊り子で彼の絵のモデルだった。
 小さなアパートメントで二人は暮らしていたが、貧乏暮らしに愛想を尽かしたのか、ある日、恋人が居なくなった。男はパリ中を探し回ったが見つからなかった。。
 その上、彼女は金貸しから借金があった。残された彼の部屋に・・・

1

高齢者の町

14/01/26 コメント:4件 雨の国

 高齢者が増えたわたしの住んでいる市の方針で、優先席が増えた。
 スターバックスコーヒーにも優先席が設けられ、そこにはいつも新聞を読む老人がいた。見渡しても席は空いていない。なにせ半分以上が優先席なのだ。仕方なく外に出て歩きながら飲んだ。そんなこともあった。
 コンビニにも優先レジが設けられた。小銭を出すのに手間取るものだから、必然的に優先レジは老人が行列を成した。だから店舗側は優先レ・・・

2

ひととおり考えたこと

14/01/25 コメント:6件 いもあん

 彼女は悲しげに笑うと、背を向けて歩いて行ってしまった。
「ごめん」
 短い言葉が僕の底に深く沈んで、しばらく体を硬直させた。
 ずっと好きだった子に、振られた。
 中学に入ってほどなくして、彼女のやわらかな笑顔と優しさに触れてから、僕はすっかり彼女を好きになってしまった。しかし、気持ちを伝えることができないまま、月日だけが足早に過ぎ去っていってしまった。
 ただ彼女・・・

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謎の育毛剤

14/01/25 コメント:13件 yoshiki

 ――俺は悩んでいた。そして絶望していた。というのも最近めっきり髪の毛が薄くなったからだ。
 歳からしても俺はまだ三十代だというのに四十過ぎに見られる。まあ、つるっ禿げの祖父の古い写真を見るたびに悪い予感は以前からしていたのだが。
 女房などはあまり気にしなくていいと言うがそうはいかない。養毛、育毛剤の類はほとんど試してみたが、高価な割には効き目の薄いものばかりで、もう鬘か植毛しか手が・・・

0

絶望

14/01/25 コメント:1件 山盛りポテト

「絶望かー」
と男が呟き、大きな伸びをすると、後ろに体を反りすぎたせいで椅子から転げ落ちてしまった。
深夜二時であった。・・・

2

14/01/23 コメント:2件 lie

迷い混んだ小さな道

誰もいない、誰も知らない

真っ暗でなにも見えない

怖くて、怖くて

どこかに逃げ込もうと思うけど

どこにも逃げ道はなくて

ただ、曖昧に進み出す

最初は、なんとなくだった

夢も現実も曖昧な自分を消したかった

だから、逃げ出した

戻れないことを知・・・

5

いのち

14/01/21 コメント:13件 笹峰霧子

 彼は生きることに絶望していたのか、それとも自分で決めた命の限界を見極め、それまで生きることができたことに満足していたのか。
 
 加奈子が病室に行ったとき、「自分は思うのだけど……」と話しを切り出した。
「もう生きていることもないと思うんだ」
そんなことないでしょ。元気になったらどこへでも連れてってあげるから。しっかり食べてもう一度元気になろうよ。
元気づけようとす・・・

3

作家志望

14/01/21 コメント:6件 こぐまじゅんこ

 私、小泉ようこは、自称童話作家である。
 月一回、童話教室に通い、仲間から批評を受け、先生のアドバイスをもらう。
 小さい頃から、本を読むのが好きで、大きくなったら、本にかかわることをしたいと、漠然と思っていた。

 童話を書くようになったのは、子どもも手をはなれ、趣味で書いていた詩とは違うジャンルにも挑戦してみたいと思ったからだ。
 童話を書き始めると、子ども心を・・・

0

不幸な老人

14/01/20 コメント:1件 t-99

嫌われることの多い人生でした。

物心ついたときから働いてきました。

人々のためになればと思い一生懸命働いてきたのです。

しかし、人々に感謝されることはただの一度もありませんでした。

それでも私はくさることなく働いてきたのです。

バブルの頃は本当によかった。

住むところ、働き口に困ることなんかありませんでした。

1

再会の愛撫

14/01/20 コメント:4件 タック

 絶望は、温かい。絶望には思考がある。生命力がある。欲望がある。人間の根幹がある。

 絶望している人間は死なない。そこにはまだ、生きたいという厳然とした意志が残されている。

――なあ、そう思わないか?
 
 闇の中、部屋の奥に問いかける。暗黒の対岸から返ってくるのは無言。薄弱な意識。無関心の怒涛。俺は抱えていた食器を握り締め、奥に向かい投げつける。食器の割れ・・・

1

コリウスが咲いている

14/01/20 コメント:4件 ミカリ

昔からお酒は嫌いじゃなかった。
むしろ好き、というか大好きだった。
特に大勢でわいわい飲むのが好きだった。私は夜ごと家を抜け出しては友達と飲んだくれた。飲んで馬鹿やってる時だけは、全部忘れていられるから。
「悠香」
柔らかい声が耳朶をくすぐる。幸せだ。私の脳内で再生される彼の声は、いつだって甘く優しく私の名前を呼ぶ。
てっきり幻聴だと思ったのに、振り向いた先には本物の・・・

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例えばの話…

14/01/19 コメント:1件 ナツ

例えば…
すごく綺麗なおねーさんが通りかかったとする。
彼女が不意に荷物を落とすんだね…
凄くありきたりだけど。

でさ、助けちゃうの。
落としましたよって、
取りにいけないだろうから、取ってきてあげますよって。


んで、この深い穴に降りて行くのね。
たまに「大丈夫ですかー?」って可愛い声で聞いてくれるの。
そして「・・・

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やがて訪れる闇

14/01/18 コメント:3件 t-99

 水曜日、午後9時28分、定刻通り停留所にバスは停車した。月明かりが薄ぼんやり辺りを照らしていた。小学三年生の桃花がステップをゆっくり降りてくる。迎えにきていた母親の美佐子のもとへ駆け寄る。私は遠目からそれを眺めていた。手をつなぎ住宅街へ、自宅までは十分たらずだ。私は車のエンジンを再びかけた。道は一方通行の狭い路地で街灯もまばらだった。ヘッドライトをつけず一定の間隔で後を追う。煙草から吐き出された・・・

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彼女達は駆けつける、彼の心が乾かぬうちに

14/01/18 コメント:1件 リードマン

それは、全身の熱血を吐き出してしまうかのような、心の底からの悲鳴であった。 なぜ? どうして? 本当に、訳が解らない。 誰か、オレを解ってくれるだろう誰かは、子の世界の何処にも、何時までだって、居はしないのだろうか? 苦悩の中島で悶え苦しみ大樹の枝の上原にて、一人涙する。 暗い、寒い、辛い、何よりもまず、寂しくて溜まらないのだ。会話がしたいんだ。誰か、私の心の仲にある聖杯を、産め尽くす母堂の言葉を・・・

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枯れた大樹の上で、オトコは眠る

14/01/18 コメント:2件 リードマン

空けましておめでとう!

皆にお知らせします。今度の新年会ではテーブルロールプレイングゲームを開催致します。皆が全員主人公、目標は、恒久的世界平和の実現、もしくは、戦争のなくならい世界の実現です。どのように振る舞うのかは皆さん次第、因みにオレは人類が辛く苦しむ様々を見て魂の底辺から喜ぶような悪訳を演じる予定です。味方に付くもよし、的に廻るもよし、とにかく全員で楽しみましょう、皆がどん・・・

1

小さな希望

14/01/18 コメント:2件 lie

夜はやがて明ける。
嫌なこともなにもかも
朝の光が消してくれる。
本当にそうだろうか。
なら、俺の気持ちも消せるだろう。
この黒く浅はかでやましい気持ちも
全てを消し去りたいと願う気持ちも
消せるのだろう。

小さな希望を見つけた。
本当に小さな希望だ。
まだ産まれたばかりの小さな希望。
汚れも知らぬ美しい瞳。
世を慈・・・

2

翡翠の味

14/01/16 コメント:4件 

結局、私はあの人のなんでもなかったのか、とさつきは電車の窓に映る喪服姿の自分を見て思う。どこにでもいる平凡で能力もなければ美しくもない、かろうじて若いだけのなんの取り柄もない女。それでも、あの人はほんの少しでも、そんな自分を愛してくれているのだと信じていた。誰にも言えない関係だったけれど。
 さつき、とベッドの上でだけ私を下の名前で呼ぶ声を覚えている。もう、それだけで十分だったのに。

10

その手の中で

14/01/16 コメント:8件 メラ

 歓喜、という言葉がぴったりだったと思います。あなたにとってあの日、あの瞬間の歓喜といったら、私も見ていて涙が出るほどでした。いえ、歓喜の瞬間だけではなく、あなたが積み重ねてきた努力。耐え忍んだ日々。私は遠くから見守っていました。だからあなたの感じた喜びの大きさは、計り知れないものでしょう。
 あなたは女性の私から見てもうっとりするくらいの美貌に溢れ、やさしく、目標に向かって健気に努力すると・・・

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あ〜カミ様

14/01/13 コメント:1件 ポテトチップス

洗顔後、東野裕也は鏡にうつる自分を不思議な感じて見つめた。目鼻立ちのハッキリした面立ちで、まるで二枚目俳優でも通じる顔。しかし目線を少し上に向けると、二枚目俳優からお笑い芸人のような腑抜けた顔に様変わりしてしまう。
学生時代は女性からアプローチを受けることが多かった東野だが、最近では街を歩いていると、育毛シャンプーの試供品を配っている女性からアプローチを受けることが度々あった。
鏡の中・・・

1

干上がった国

14/01/13 コメント:4件 かめかめ

 と、その時、ポツリ、と地面に黒いシミが落ちた。
 誰からとなく、空を仰ぐ。

 数十年、乾ききったままだった空が、みるみる黒く染まる。

 ポツリ、ポツリ。
 一粒、一粒、落ちてきた水滴はすぐに水の束になり、人々の上に降りそそいだ。

「雨だ!」

「雨が降ったぞ!これで助かる!」

 空に向かい喜びを撒き散らす人々の足元、・・・

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「正義」のヒーロー

14/01/13 コメント:4件 るうね

 強くなりたくはないかい、と
 その男はユウキにそう声をかけてきた。
 病院の廊下でだった。夏のある日。蝉が鳴いていた。
 その時、ユウキは恋人の見舞いに来た帰りだった。恋人は目が見えない。見えなくなった。世界征服をたくらむ悪の組織の陰謀に巻き込まれたのだ。
 ユウキは傍にいながら、何もしてやれなかった。護ることが、できなかった。
 だから、ユウキは男の誘いに乗った。・・・

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