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第三十回 時空モノガタリ文学賞【新人】

今回のテーマは【新人】です。

恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2013/06/10

※注意!R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性のない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ ヒト・モノ・イキモノ
投稿期日 2013/04/22〜2013/05/20
投稿数 42 件
賞金 時空モノガタリ賞 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

10

へたれ新婚さん奮戦記

13/05/17 コメント:14件 草愛やし美

 新婚旅行から帰って、すぐ月曜日が来て相方が新居から会社へ出かけた。いよいよ本当の新婚生活が始まったのだ。相方の帰宅時間に合わせて夕飯を作る。初めての夕飯のメニューは、ハンバーグ、相方の大好きなメニューと聞いて決めていた。大きなハンバーグをこねこねしてハート型にまとめる。焼き加減や付け合せなど細心の注意を払いかなりの時間をかけて作った。
 焼いている間に、どんどんハンバーグは膨らみ、ハートな・・・

6

五月の空と燕とエール

13/05/16 コメント:11件 そらの珊瑚

 ゴールデンウィークが終わると、急に気温が上がり、ここ数日はまるで夏のような陽気だった。

 電車の中には、ゆるやかな冷房が入っているようだが、もあっとした空気が漂っている。嫌な冷や汗がじっとりと吹き出してくる。
 男は目をぎゅっとつぶり、耐えていた。ガタンガタンと揺れる振動が、おのれの腹と連動し、次第に大きくなる痛みに。入社して二ヶ月弱、他の新入社員が一人、また一人と契約をあげ・・・

9

紅葉さんと若葉ちゃん

13/05/16 コメント:20件 泡沫恋歌

 この会社に勤めて二十五年になる。夫婦なら銀婚式だが、私は結婚もしないで、この中堅商事会社でずっと働いている。若い子たちは私を『お局』といい、私より後に入社して管理職になった上司は、影で『ババア』と呼んでいるらしい。フン! 別に構わない。
 だけど二十五年も総務やってたら、いろいろ奴らの弱みを握ってるんだから甘く見ないことよ。

 不況のあおりで新規採用がなかったが、三年振りに我・・・

6

老いてもなお虎

13/04/25 コメント:9件 鹿児川 晴太朗

 相方の上原が、就職を機にアルバイトを辞めることになった。
 そして、その代わりに店長が連れてきたのは、どう見ても定年を過ぎた男性だった。




「前にも教えたと思うんですけど、弁当を温めるときはソースを外してくださいね」

「そうやったな、すまんすまん」

 口では謝罪を述べつつも、反省の色無しという具合に笑顔で応じる赤松さんを見てい・・・

最終選考作品

9

新しい人

13/05/20 コメント:17件 そらの珊瑚

 都会から電車を二つ乗り継いで、僕は君のいる郊外の施設へ向かっている。電車はとても正直だ。大体において時間通りに来るし、目的地を見失うことなく、連れていってくれる。嘘の欠片もない、正直者なのだ。

 そして僕はといえば、また今日も嘘をつくだろう。新しい人、として。

 結婚してから三十年。とうとう僕らは子供を授かることが出来なかった。
 不妊治療も何度かしたが、君の肉・・・

2

名探偵に憧れて

13/05/07 コメント:2件 トビウオ

 大門幸三は十七歳の時、修学旅行で訪れた京都の旅館で密室殺人に遭遇して以来、二十年の間に百四十六件の殺人と、十二件の強盗、二件の窃盗、そして一件の痴漢事件に【偶然】立ち会い、それら全ての事件を持ち前の閃きと推理力よって解決へ導いてきた。大門の本業は植木屋なのだが、しかし彼は世間からは日本一の名探偵と認識されていて、大門に憧れる少年少女やミステリマニアは星の数ほど存在していた。
 金沢賢太郎も・・・

4

コ・ロ・シ・テ・ア・ゲ・ル

13/05/06 コメント:7件 鮎風 遊

 白いビルと黒いビルの間に、巾六〇センチほどの犬走りがある。それは反対側の大通りへと通じている。そしてそこには少し違った世界がある。
 こんなことを知っているのは魔美(まみ)だけだった。

「遅いぞ、さっさとコーヒー入れろよ!」
 時間通り出勤してきた魔美に、高木係長から居丈高な指図が飛んできた。
 魔美はこの雑誌社に入社してまだ二ヶ月、新人だ。従って、朝から不機嫌な・・・

2

期待の新人

13/05/02 コメント:1件 或虎

「爽やかな感じにしてください」

「はい」

 僕は今、床屋さんにいる。この後の面接に備え床屋で髪を切ってもらっている。刈りたての短い髪はきっと面接官に好印象を与えるに違いない!面接前に気合を入れておくべし――それにしても……眠い……結局2時間ほどしか寝ていないんだ……昨日……うとうと。

 *****

「……ぉ客さん……お客さん!」

7

前を向くライオン

13/04/22 コメント:10件 青海野 灰

黄金の鬣を靡かせて、太く逞しい前脚を岩にかけ、その獅子は唸る様な声で言う。

――これから初めて獲物を追うお前に、狩りの心得を教える。

はい。お願いします。

――まず我々は強くなどない。他の生命を奪わなくては生きることさえ適わない、血と肉の定めに縛られた、悲しい生き物だ。それを忘れるな。

はい。

――我々が奪い喰らおうとしている命・・・

投稿済みの記事一覧

3

使者からの言伝

13/05/20 コメント:0件 kou

 ずいぶん前に歯科医の主人が、歯に興味なんてないんだ、と私に言ったことがある。
「歯を朝から晩まで削り、虫歯を治療していくだろ。治療していくのは気持ちいいぜ。でも、歯が好きなわけじゃない」
 人間は日常に忙殺される。私が来たことで、忙殺された中で忘れていた彼の記憶が二時間後に蘇った。その時の彼は快活な表情を見せ、「ありがとな」と礼を述べられたが、もちろんその時は、そんな状態を予期してな・・・

2

後姿が掻き口説く

13/05/19 コメント:0件 四島トイ

 新入生の村井由香がいじめられているらしい、と感じたのは五月に入ってからだった。同じクラスの派手目な女子達が中心になって巧妙に「浮かせて」いるようだった。入学早々、ご苦労なことだ。女子の結束は恐ろしい。目の前の出来事にそう感想付けて、俺は己が男であることに少し安堵した。
 だからこそ、ある日の放課後、鍵のかかった技術情報室の前にぽつん、と立つ後姿に動揺した。
「何やってんだ」
 ・・・

2

新人

13/05/19 コメント:4件 さたけの

 ある日、夏の昼下がり。木々の間から漏れる光に満ちた縁側で、半袖、半ズボンの二人が、向い合って話し合っている。足を投げ出し、つま先だけ入れた靴をぶらぶらしながら腰を捻っているのがサトル。廊下に姿勢よく正座し、二人の間に置かれたA4用紙を厚い眼鏡越しに見つめているのがユウジである。その紙には、トーナメント表らしきものが書かれていた。
「じゃあ、次の試合はあっちの小学校で行われるのか」
「・・・

2

屈辱の初出勤

13/05/19 コメント:3件 汐月夜空

「失礼いたしますわ」
(ああ! もう腹が立つ! 屈辱! 屈辱!! 屈辱!!!)
 ミイは心の中で怒りを燃やしながら、目の前の客(断じてお客様とは呼ばない)のグラスになにやら名の知れたシャンパンを注ぐ。
 その顔には笑み。それも、揺らぐことのない極上の笑みが張り付いている、はずだ。
 しかし、それでも。
「チェンジで」
 ミイにとって本日三人目となる客から無慈悲な・・・

3

宝石になるまでに

13/05/16 コメント:3件 ねじばな

僕がその小さな工場で働き始めたのは、一ヶ月と少し前。
トン、キン、カン、トン、キン、カン‥
そんな賑やかな音たちにも慣れてくる。耳当てをしているものの、この音はよく体に響くのであまり長い間この工場で働く人間は少ない。だからこそ、こんな学もない、大人と言うには少し早い僕でも働く事が出来たのだ。ここの人間は、そんな僕と境遇は似たり寄ったりであるらしく、僕について特に何を言う訳でもなかった。・・・

4

メリカ=ヘッセルの灯

13/05/16 コメント:6件 平塚ライジングバード

メリカ=ヘッセルは13歳。夜が嫌い。でも、今夜は特別。苦手なブロッコリーのスープも今日は笑顔で飲み干せるわ。「そろそろ、明かりをとりに行きなさい」 向かいに座っていた老婆が呟く。柱時計が鳴った。私は、一握りの干し肉とたっぷり水の入ったバケツを持ってドアを飛び出す。今日の夜は明るい。道の両端が火で照らされているから。私のために用意された光。迷わないように、怯えないようにと。それを一つ 一つ消していく・・・

6

籤に当たった新人

13/05/15 コメント:13件 草愛やし美

 毎日、妻は泣きあかしていた。一月前に夫が、死んでしまったのだ。朝になっても起きてこない夫を起こしに行った妻は、変わり果てた夫と遭遇した。急いで救急車を呼んだが、夫はすでにこと切れていた。通夜も葬式も、妻にとっては、嘘のように思え、泣き暮らす妻の姿は憐れだった。それでも、時間だけは、過ぎていった。ある晩、痩せ細った妻が、夫の遺影を見て泣いていると声がした。
「泣かないでくれよ」
「その・・・

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新人の過ち

13/05/15 コメント:2件 Mor

 夕日が降りていった。今日一日が終わる。世界は素晴らしいと思えるほどの光が雲の隙間からなだれ込んでくる。たくさんのグラデーションが氾濫しながら色形を変えて世界を照らしていた。窓辺の内側では西瓜割りをするみたいに棒で叩いたような音がしてその瞬間血がどろどろと流れていく。カラスが一声とびらの向こうで鳴いた。祐一は一度息を飲み、それから吐き出す。湿っぽい空気が喉に張り付く。まるで時間が止まってしまったか・・・

2

薬局の前でクスリと笑った話

13/05/15 コメント:4件 平塚ライジングバード

取引先へ顔合わせの挨拶に行った帰り道、急な腹痛に襲われた。すぐにトイレに駆け込んだが、解決しなかったため、舞台は取引先近くの病院、そして今処方箋薬局へと移っている。

「平塚様。」
受付の若い女性が僕の名前を呼ぶ。。
「本日のお薬の処方、6810円になります。」
「高っ!!」
率直な感想が思わず口に出た。
「申し訳ございません。もしよければ、当薬局では同じ・・・

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愛し合う二人だけの初恋。

13/05/14 コメント:0件 satuki

明日を願う男が一人、荒野に立っていた。
彼は白血病だ。
絶え間なく穴という穴から血を流し、空を見上げていた。

明日があれば…。

そうして男は砂の大地に倒れた。
死を見届けた者はどこにもいなかった。
彼にも愛していた女性はいたはずなのに。

空からトンビが降りてきた。
きっと彼を食べるためだろう。
目玉をくり抜き、腸を引きず・・・

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足元にある物

13/05/13 コメント:2件 雪都

ようやく仕事に慣れてきた。

明日の客数を記入した書類を厨房の冷蔵庫へ貼り付けて、私は一人呟く。
この職場へ晴れて入社して一ヶ月ちょっと。入社後初めてとなる大型連休で満室状態が続き、小さな宿泊施設はフル稼働していた。普段はフロント業務中心に仕事をしているが、何分人手が足りなくて客数は例年を大きく越えていた。
自然と残業が増え、仕事が増え、出来る事が増えた。仕事を覚えるのも、・・・

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新魔人転生

13/05/13 コメント:0件 satuki

あそこには誰も入ってこない。
興味半分、面白半分で入って行ったものは出てこない。

この洞には昔から悪いうわさが絶えなかった。
出てこられぬ、入っては戻れぬ。

僕がこの洞に迷い込んだのは、自分の家族の一人がおかしくなったからだ。
父は突然、「空が泣いている」と訴え始めた。
家族はそんな父を病院に隔離しようと考えて、父は突然暴れ始めた。
僕はそ・・・

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初めての旅で訪れた廃れた街の朝

13/05/12 コメント:0件 satuki

空を見る。
晴れている。
雲がある。
太陽がまぶしい。

しぶしぶ体を起こした僕は、今日が初めての野宿であることを思い出した。
昔は駅のホームとか映画館とかで夜を過ごす人のことを遠巻きから見ていたのに、今では自分がその内の一人になっている。

初めての夜は嫌なものではなかった。
季節は夏だし、野宿といっても廃墟のビルの屋上で、持っていた毛布を広・・・

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生まれたての人工知能

13/05/12 コメント:0件 satuki

 「生きているって嬉しいこと?」

 生きていて嬉しいと感じることは少ないね。

 「では、悲しいの?」

 辛いことだよ。

 「辛いのに何故生きているの?」

 生きているから。辞めるのはいつでも出来るから、しばらくは生きてみようと思うんだ。

 「人間って何?」

 生き物さ。難しく言えば、有機的な素材で出来・・・

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少年兵

13/05/11 コメント:3件 satuki

何人死んだか分からない。

死体の転がる荒野にただ一人、たった一人で立つ少年がいた。
僕が志願したのはこんな死体の山を見るためじゃない。祖国の繁栄と勝利を祈って引き金を引いた。
しかし、最後に弾丸を撃ち込んだのは、年端もいかない少女だった。
理由は単純明快。スパイだったのだ。敵軍の兵士と情報交換をしていた。

ただそれだけ。
たったそれだけ。
・・・

1

ワーカーホリック

13/05/09 コメント:2件 佐々木 貴咲

 空っぽの席を俺は見つめる。その席は今年入社した新入社員が座っているはずであるのだがその姿は何処にもない。

「田中、新人はどうした?」

 俺はその席の隣に座っていた田中に聞いた。田中は自分の作業が忙しいのかPCに顔を向けたままその問いに答えた。
「あー、今日も体調不良で休みだそうっすよ、もうかれこれ3日だし、もう来ないんじゃないっすか?」
「なんだと! まだ・・・

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不満を持つ新人妖怪

13/05/09 コメント:1件 satuki

 一人の女性が街の裏通りを使って帰宅中、不意に何者かの気配を感じ取った。
 振り向くとそこには誰もおらず、しかしやはり気配だけは確かにそこにある。恐る恐る手を伸ばしてみると、何もないはずの空間に、人間のような弾力を感じ取った。
 悲鳴を上げて逃げようとすると、それは慌てて手を握ってきた。そして、逃げないでくれと懇願してきた。
 「オイラは透明人間だ。見てもらいたくても誰にも見えな・・・

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母への手紙

13/05/07 コメント:4件 堀田実

−−−−−−−−
 母なんていうのは人間をこの世に送り出すための生物機械でしかない。父から放出された精子と母の胎内にある卵子が結びついて幾多の細胞分裂のあと徐々にそれが人として形成されていくだけなんだ。だってそうだろう。あんたはいつも言っていたじゃないか。
「物事を曲げずにそのままの姿を見なさい」
つまりそういうことだ。生物学的に俺の意見はなんら間違っちゃいない。むしろそれ以上の・・・

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はだかの涙

13/04/30 コメント:0件 おでん

 ねえあなた、どう思いますか?
 ここ最近、あの子の元気がないんですよ。
 勤めだしてまだ一ヶ月ですから、新しい環境に戸惑うのも無理ありませんけど。でも、毎日のように終電ぎりぎりまで働かせる会社ってどうなんですか。わたしはあなたと違って会社のことはよくわかりませんけど、ちょっと酷いなっていうのが正直な気持ちです。
 それにあの子、やっぱり大学に行きたかったのよ。口では「働くよ」っ・・・

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ある新人研修

13/04/28 コメント:7件 光石七

 講師が壇上で滔々と語っている。参加者たちは皆真剣な面持ちで聞いている。中には熱心にメモを取っている者もいる。
「相手の目を見て話しましょう。目を逸らしてはいけません。落ち着いた、誠実な印象を与えることが重要です。睨んでもいけません。ガンを飛ばしてしまっては、反抗的だと受け取られます。どんなに腹立たしくても、ぐっとこらえましょう」
講師の言葉に参加者たちは頷いた。講師は正面を向き、参加・・・

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オレは新人に嫉妬する

13/04/28 コメント:4件 光石七

「虎次郎、ご飯だよー」
マキの声を聞いてオレは駆け出した。お、マグロの刺身なんて珍しい。気が利くじゃねえか。
「たまには贅沢もいいでしょ?」
そうそう、安いキャットフードばっかじゃ飽きるっつーの。腹が減るから仕方なく食べてやるけどさ。
「虎次郎、なんでそんなにちまちま食べるかなー。時間かけ過ぎ」
余計なお世話だ。オレの勝手だろ。
 オレは虎次郎というマキに飼われ・・・

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新たな門出

13/04/28 コメント:5件 alone

私は八十歳を迎えた矢先、おまけに死も迎えてしまった。その呆気ない終わりに、自分でも驚いてしまうほどだ。
実際、いまだに目の前に横たわっている死体が自分であったとは思えない。実は私には双子の兄弟がおり、彼が死んでしまったのだ、とでも言われた方がまだ信じられるというものだ。しかし、目の前にあるのは完全に私の肉体であり、その傍らで私は魂だけとなっていた。
私は死体を残して外に出てみた。幽体と・・・

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New  Teeth。。。

13/04/27 コメント:0件 かめかめ

私はストレスに弱い。
ちょっとしたことで、ストレス性の病気になる。
膀胱炎だのヘルペスだの。自己免疫機能が狂う系の病気ばかり繰り返している。
そういうヤツらにはもう慣れた。
のだがひとつだけ、今までにどうにもこうにも困った病気がある。

顎関節症。
もともと、アゴでカクカク音がするな、という自覚はあったのだが。

異動してきた職場の上司が、驚く・・・

0

ランナー

13/04/27 コメント:1件 ポテトチップス

ポツポツと雨が降り出してきたようだ。
どこからか子供の泣き声も聞こえてくる。
先ほどから激しい睡魔が襲ってきて意識はしだいに深い深い闇の中に沈もうとしている。
なんとか目を開けて暗い部屋の中に目を向けると、テーブルの上に睡眠薬の入っていたビンと少し水が残っているコップが置いてある。
川岸昭一は手を伸ばしてコップに入っている水を飲もうとしたが、途中で手をだらりとフローリングの・・・

6

叶わぬ願い

13/04/27 コメント:9件 名無

 とある電気屋二階のケータイコーナー。ここでは日々熾烈な生き残り競争が行われている。
 この業界は入れ替わりが激しい。日々新しい機能を堂々と掲げる新人がやってきては、旧型は壁際へと追い込まれ、廃棄物扱いとなる。まだ入ったばかりの新顔は、どんどん売り上げを伸ばしていく。しかし、俺は生産され始めて半年の落ち目であり、いつまた新しい技術を持った新人が出てくるかとヒヤヒヤする毎日を送っている。置き場・・・

2

飛翔

13/04/27 コメント:2件 NOGAMI

 隣のコートの試合はすでに終わっていた。飛翔、と書かれた横断幕を、敗退した高校の1年生達が手すりから外している。こちらのコートの熱気と隣のコートの静けさ。緑色の仕切りネットを境にしてまるで違う空気の色。広い県立体育館が、今日はより一層広く思える。


 「そろそろ出すから、ウォーミングアップしとけよ」


 数分前にコーチは確かにそう言った。だがオレはベンチに座・・・

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珍説 蜘蛛の糸

13/04/25 コメント:9件 yoshiki

 これはまだお釈迦様が天上界に赴任されたばかりの、新人であられた頃の物語です。
 あるとき、お釈迦様は平和すぎる極楽が無性に退屈で、大きな蓮池の周りをぶらぶらと歩いておられました。そして極楽界の景色をだいぶ長い間眺めておいででしたが、それにも飽きてしまわれました。そのうちに、ふと蓮池の隙間から下界をご覧になりますと、浅黒い顔のカンダタという悪人が地獄で苦しんでいるではありませんか。
 ・・・

2

意地

13/04/25 コメント:2件 熊と塩

 埼玉県警察捜査一課、通称【殺人課】──こんな呼び方に違和感を覚えない奴が居るのだろうか? いや、居るだろうな。
 ロボットに基本的人権が与えられたのが2015年。以来、人間の命が奪われても殺人、ロボットが破壊されても殺人。失われたら二度と戻らない生命と、技術的に復元が可能だがしないだけのデータが同じ扱い。馬鹿馬鹿しい話だ、笑える。
 だが笑ってばかりではいられない。当然ながら15年以・・・

0

ピエロでピエロじゃないピエロ

13/04/24 コメント:0件 がたにゃん

もう2年の月日が経っていた。
あれ程君を好きになり一緒に過ごした日々から3年も経っていた。
何故僕から離れてしまったかわからない。
ただ一言君は言った。
「幼馴染に戻ろう」
その一言が僕を今でも縛り続ける。
突き放されるわけでもなくちょうどいい距離にいてくれってことだとその時は分かった。
余りのショックで頭が混乱していてもわかった。
離れたくはない・・・

1

葬式

13/04/23 コメント:2件 堀田実

 あの日以来違う人間になっているのだと思った。以前の”ボク”という過去の人間であったなら、わざと悲しい表情をしないといけないと思っていたし、もし涙が込み上げて来ないなら懸命に渋面を作って「お気の毒に」と言っていたことだろう。しかし今は笑っている。いかにも幸せそうに生きていることに感謝しているみたいに。
 まるで何事もなく過ぎ去る昼や夜や一週間が当たり前のように過ぎ去っていくみたいに自然にその・・・

8

フロム アトモスフィア ―開戦の日―

13/04/22 コメント:9件 クナリ

早朝の格納庫で僕が一人、自分の乗る戦闘機を見ていたら、背後から声がかかった。
「お前か。今度入隊した、スドリの息子ってのは」
シャッタを開けながら言って来たのは、ここの基地の整備長だった。
「ええ」
「エースの息子だ。期待されてるぜ」
「僕が産まれた時には、父はパイロットを辞していました」
半開きのシャッタから、曙光が僕らの足元を照らす。
「親父は、有名人・・・

2

新人

13/04/22 コメント:3件 W・アーム・スープレックス

 このままかれらといっしょにいても、いいんだけど………
 ザトは、仄暗い闇の中に肩を並べる沈黙のかれらをながめた。
 けれども、なにかがちがう。
 それは、なんだろう。
「ザト、どうする?」
 隣りのミコも、いまだに決心がつきかねない顔つきだった。
 彼女とは、これまでにも、この集団を出るかどうか、なんども話しあってきた。
「悪い連中じゃないんだけど………・・・

3

新人ママさん

13/04/22 コメント:4件 こぐまじゅんこ

 私、橋田みえは、ただ今、初めての育児に奮闘中。
 新人ママなのだ。

 私は、ひとりっ子だから、弟や妹の世話をしたこともなければ、お姉さんの赤ちゃんを抱っこするなんてことも、絶対にあるはずもなく、本当に自分で産んだ我が子を抱っこしたのが、赤ちゃん初抱っこのときだったのだ。

 四月の末、無事、出産したけれど、その後の赤ちゃんの扱いに慣れなくて、いつまでも
おっ・・・

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