1. トップページ
  2. 第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】

第四回 時空モノガタリ文学賞【 傘 】

差し広げられた小さなモノガタリの世界。
【傘】にまつわるストーリーコンテストです。

午後の街をゆく。
頭上のどこか寂しい雨音にパリの調べを聞き、
精密な曲線を流れ落ちる滴に雲海の優しさを知り、
布から沁みこむ光に銀河の星々を想う。
私はひとりだ。

そんな【傘】にまつわる、
恋愛・ちょっといい話・伝説・不思議な話など、
小説・エッセイ等の散文であれば
スタイルは問いません。
体験や事実に基づく必要もありません。

時空モノガタリ賞発表日:2012/5/28
最多評価ポイント賞:評価システム変更完了まで休止させていただきます。

※注意!R18的な暴力表現・性描写はお控えください。
※二次創作品の投稿はご遠慮ください。
※「極端に短く創作性がない作品」「サイト運営上不適切な内容の作品」は削除対象となりますのでご了承ください。

ステータス 終了
コンテストカテゴリ ヒト・モノ・イキモノ
投稿期日 2012/04/16〜2012/05/14
投稿数 72 件
賞金 ◆時空モノガタリ賞(主催者賞)⇒ 5000円 ※複数受賞の場合あり
投稿上限文字数 2000
最大投稿数
総評

入賞した作品

0

ラルール・オローラ 〜生命の傘〜

12/05/12 コメント:0件 黒沢 文章

「もうすぐ月は三万六千個の隕石へと変貌します」
 耳を疑った。いきなり何の話だ?
「銀河テロリストの仕業です。今から四ヶ月程前に声明があったんです。『我々はこの天の川銀河内にある有人惑星、その内の一つの文明と生命体を壊滅させる』、ふざけやがってです」
 そう言い、妹は脚を抱えて座り込んだ。まるでふて腐れたように、膝の上に顎を乗せて。
「お前、何か変なもんでも食ったのか?」<・・・

0

応援グッズ

12/05/06 コメント:2件 智宇純子

「もしかしたら、明日、死んじゃうんじゃないかしら」

 少し薄暗くなってきた廊下を歩きながら、香織はそんなことをぼんやり思っていた。右手にはちょっと小ぶりの緑色のビニール傘。
 死んじゃう、というより、存在が消えてしまう?消滅してしまう?そんなイメージ。家族に不満があるのではない。世の中がつまらないわけではない。今日も親友の敏子と一緒に大笑いした一日だった。確かに、担任の小宮に眼・・・

0

幸運の傘

12/05/06 コメント:7件 寒竹泉美

 初めて来た土地で勝手が分からずうろうろしていると、空から白いものが次々と降ってきた。雪だろうか? と思って、男は足を止めた。でも、ここはずいぶん温かい土地だ。半袖でも充分なほどの陽気で、日が照っている。いくら異常気象が増えているとはいえ、こんな日に雪は降らないだろう。

 髪にくっついた白いものを摘み上げて、よくよく観察してみると、何かの植物の綿毛のようだった。しかし、見たことがない・・・

0

心の傘

12/04/19 コメント:0件 さとる

彼は毎日毎日、うんざりしていた。
上司に叱られ、同期に嫌みを言われ、時には有ること無いこと悪口を言われ続けていたのだ。
心無い言葉の雨は冷たく、彼の心を容赦なく冷やし、濡らしていった。
それでも、毎日生きていた。
けれど彼も人間だから、時に愚痴をこぼすこともある。
今日は彼の友人が、愚痴の嵐の犠牲者だ。
友人には悪いと思いながらも、愚痴は止まらない。
けれ・・・

0

まだ駄目だ

12/04/16 コメント:2件 松定 鴨汀

雨の夜の帰り道。
きみは一人ではない。
きみの傍にはたくましい男性が並んで歩いている。
きみはその男性の手をにぎり、そのぬくもりを感じでいる。

だが、駄目だ。まだ安心してはいけない。

きみのカーディガンの袖は2人分の傘からしたたる雨水をぴとりぴとりと吸い込んで、変色している。
しかし、彼はまだ気づかない。
会社であったこと、将来の夢、昨日見・・・

最終選考作品

0

因果応報

12/05/14 コメント:2件 T・F

 出来心だった。
 傘を忘れ、某大学の通称・部室棟で雨宿りしていた青年は、ある部室前に置かれていた傘に手を伸ばした。その部内で揃えたのだろう、一本だけが入る傘立てが色違いで複数並んでおり、彼が手にしようとしている黒い傘も、同色の傘立てに収まっていた。
 明日、必ず返しますから。ごめんなさい。
 そう心で誓い、傘立てからそれを引き出す。しかし誰かに手首を掴まれた。傘が落ちて、大きな・・・

0

12/05/13 コメント:0件 叔山冉

 陵平は傘をもっていなかった。
 今日は午後から雨が降ることは、朝、家を出る前にみた天気予報で知っていた。それなのに、陵平は傘をもってこなかった。
 体中に水滴が落ちてきた。陵平はたちどまって、黝い空を見あげた。細い線になった水が、貫く様にたくさんおちてくる。貌を濡らす。目を開けていられなくなる。
 陵平は貌を拭って、ふたたび歩きだした。帰り路である。家までは、五分とかからぬ。<・・・

0

紅の花柄

12/04/25 コメント:0件 リアルコバ

 いつもの何気ない通勤経路である。判を押したような時間と線で引かれた如き順路、ただ違うのは毎日の感情の起伏であった。
 駅の階段を上りコンコースを望む頃、上からの視線にふと眼を合わせた。 自分より確実に若いと云う事とスーツの着こなしが崩れた私と同類と思しき男の視線が私の眼をえぐった。どうしてかは解らないがごく希に外せなくなる視線と出会う。それが女なら期待を込めた本能がウズくのだが、こと・・・

0

カラス

12/04/21 コメント:0件 

大粒の雨が降り注ぐ都会の午後。

私は、とある雑居ビルの屋上にいた。
何をするでもなく、ただぼんやりと通りを行き交う人々の姿を眺めていた。
雨の日にここから眺める景色は、この上なく美しい。
アスファルトの上を色とりどりの傘の列が右へ左へ流れていく。
まるで花が咲いているようだ。
晴れた日には決して見ることができない光景だ。
私はこの景色が好きだった。・・・

0

八重桜の雨が降る

12/04/20 コメント:0件 密家 圭

  一向に止む気配のない雨は、風も加わってますますひどくなっていた。傘で前が見えないので、自然に目線が足元へと下がる。お気に入りのスニーカーに泥がはねていて、憂鬱さが増した。
「この道も早く舗装すればいいのに」
 ぬかるんだ土のせいでぐちゃぐちゃと足音が立つのが嫌で、思わずそうぼやいた。
 小学生のころ、私たちはこのあたりを「こんこん山」と呼んでいた。小高い丘・・・

0

「ねえ、はいる?」

12/04/18 コメント:2件 松定 鴨汀

 GWもGWが名残惜しい時期もとうに過ぎ、私は会社という日常に戻っていた。
 今日も6時とは思えぬ強い日差しを浴びながら駅へと歩く。通勤地獄のスタートラインへと。

 駅が見えてきた。どんどん人が吸いこまれていく。数分後には自分もそのうちの一人かと憂鬱な気持ちになっていたものだから、ふいにかけられたその声に最初は気がつかなかった。

「ねえ、はいる?」

・・・

投稿済みの記事一覧

0

恐ろしい傘

12/05/14 コメント:1件 つばきとよたろう

 あれっと思った時には、嫌な気がしました。昼には雨が降っていました。傘を勢い良く差したんです。同じような黒い傘が沢山ありました。どれも一緒に見えますが、置いた場所は覚えていました。何だろうと思って、良く見ますと傘の黒布に穴が開いているようです。ああ、やられたと悔やみました。傘は買ったばかりで新品でした。傘立てに置いていたのを、誰かが間違えたのでしょう。まだ一度も使っていない傘でした。穴の開いた所が・・・

1

ホリエモンもだいたいこんな感じ。

12/05/14 コメント:0件 キアヌ・リーヴス功太

 ゴールデンウィークが過ぎ去ると、康介は大学に通う気をめっきりと失ってしまった。俗に言う五月病というやつか。はたまた病名を付けるのもおこがましいただの怠惰か。とにかく康介は外出もせずに日がな一日パソコンの画面と睨めっこをしている。
 しかし、このままではいけないことくらい康介にだってわかっている。康介は上京組であり、学費は英語教師をやっている父親が出してくれてはいるが、一人暮らしにかかる諸々・・・

1

雨の日に刻んだ音

12/05/14 コメント:2件 kou

外は雨が轟音を撒き散らし、店内の静けさとは対照的だった。
ようするに僕が経営しいているバーに客がいないということだ。
やれやれ、雨が降ると客足が絶える。僕の力量不足はここに露呈する。
だが、少なからず満足だった。
僕は、お酒が好きであり、音楽が好きだ。ただそれだけのためにこのバーを経営しているようなものだ。
客足が絶えるのは雨の日であり、それなりの天候であれば、それな・・・

0

みさとと雨傘

12/05/14 コメント:0件 モモノスケ

 雨音の心地よさに、みさとは思わず目を細めた。紺の布地に、白い水玉模様の、お気に入りの雨傘。その傘の上で、雨粒がぽつぽつと小気味よい音を立てている。彼女はそれに耳を傾けながら、今、ゆったりと歩いて高校へ向かっていた。
 傘はいつかの台風のせいで歪んだ形をしている。けれども彼女はそれを全く気にしていなかった。そればかりか、歪んだ形だからこそ、この傘に愛着を感じていた。もうずいぶんとこの傘を使い・・・

0

パラレル

12/05/13 コメント:2件 菖蒲まき

 どしゃぶり。暴風雨。ゲリラ豪雨。こういう天気をほかになんて言うんだっけ。コンビニの入口で呆然と考える。「行くしかないよな」と突入する覚悟を決め、傘立てのほうを見た。でも、ない。今絶対に必要なものがない。あったのはド派手な柄をした1本。ここまで派手なのは初めて見た。僕はコンビニの店内を振り返る。ラッキー、持ち主はいないようだ。他人の傘を持って行くときは、きっぱりとあっさりと。これは過去から倣った教・・・

0

さよなら半径55センチ

12/05/13 コメント:1件 ひなたの

 こんな日に限って早いのね、と彼女は少し困ったように微笑んだ。
「君こそ、そんなに荷物を小さく出来るとは知らなかった」
 頑張ったのよ、と言う彼女に微笑みながら僕は手を差し出した。しかし、彼女は首を振る。
「一人で持てるわ。そのためにまとめてきたんだもの」
 その言葉が意味するところを僕は理解しているつもりだった。けれど、実際に口にされると、ぎゅっと胸が締め付けられる。誤魔・・・

0

恋恋傘

12/05/13 コメント:3件 猫田犬次郎

「人を好きになったことがないなんて、わたしには信じられませんよ」
 漆原さんはどこか諦めたような口調だった。
「本当だって。女の子のことを可愛いと思うこともあるし、もっと仲良くなりたいと思うこともある。でも恋っていうものがいまいちわからないんだよ」
 店内のBGMと会話の切れ間に、どしゃぶりの雨音が聞こえる。
「恋のない人生なんて」
「つまらない?」
「と、思う・・・

0

傘教育

12/05/13 コメント:0件 mokugyo

学校の教室。男の教師が黒板に『傘』という字を書いている。生徒の田上が一人、黒板を見ている。
「はい、皆さん黒板を見て下さい。この通り、傘という字は人が中に四人入ってますね。ひとつの傘の中に四人入れるということなのです。だから皆さん、傘は四人で一つです。くれぐれも独り占めしないように」
「先生、この大きさでは四人入れない上に、そもそも隕石を防げません。絶対体に当たります。というか、そも・・・

1

傘がない

12/05/13 コメント:0件 高橋螢参郎

雨が降り止まなくなり、幾年もの月日が流れていた。
少なくとも僕が産まれた時から、傘は当たり前に頭の上へ広がっていた。人々を雨から守ってくれる、街単位で設置された半透明なドーム状の屋根。それが、傘だった。
そして黒く厚い雲から落ちて来るのは化学物質の溶けた強酸の雨で、皮膚に直接触れれば肉をえぐる代物だ。
古くなった傘は破れ、いくつも穴が開き始めている。人々は日々狭まっていく傘の下で・・・

0

翡翠の雨滴

12/05/13 コメント:0件 アルペン

 終着駅で目を覚まし、ホームに出た時には既に雨だった。夕刻の曇り空は低くて暗い。ぱちぱちと雨滴を弾く音が耳を触る。
 階段を下りて、改札前の売店で傘を買った。五百円のビニール傘である。残された徒歩の距離を考えると、心もとない。細い取っ手と鞄を握って、人の少ない改札を抜けて、出口から空を覗く。雲塊が圧し固められたようなごつごつした空だ。そこから大小の滴が地面めがけて落ちて来る。
 自分は・・・

0

追想アンブレラ

12/05/12 コメント:0件 山田えみる(*´∀`*)

 自律人形アンブレラは今日も墓石の前に立っていた。
 雨粒の一滴たりとも主人の墓石にかけまいと、傘を差して立っていた。

 ※

 あれから何年経ったのか――、いまでも目覚めた日のことは憶えています。博士の作業台の上で目を開いたわたしは、生まれる前から規定されていたプログラムに従って、まずあなたに挨拶をしました。
「これが何かわかる?」
「レイン社製、筋繊・・・

0

日傘の下で微笑んで

12/05/10 コメント:1件 tahtaunwa

 記憶の中で、母は、いつも日傘を差している。僕が太陽の下を走り回っているのを微笑みながら見守っていた。
 その母と日傘は、同じ棺に入って燃やされて、煙になって天に昇っていった。以来、僕は空ばかり見上げて暮らすようになった。そんな僕の目を心配して、父はサングラスをくれた。
 サングラスをかけた小生意気な男の子は、日傘の女の人が歩いていくのを見るたびにあとについていった。母が戻ってきたのだ・・・

0

また逢う日まで、さようなら

12/05/09 コメント:0件 はなかぜ

 嫌な色の空だなあと思っていたら、……来た。ぽつりと一粒、むき出しの額に落ちてくる。雨だ。私は握りしめたままの傘をさそうと俯いて、ボタンに指をかける。その時だった。

 どおおぉぉぉん

 どこかで雷鳴が轟いた。途端に、額に落ちた一滴とは全く迫力の異なる雨が、私の全身に一気に襲いかかってきた。傘をさしている場合ではない。私は傘を握りしめたまま、背中の重いランドセルに振り回さ・・・

1

傘シンカ

12/05/09 コメント:0件 AIR田

 ぱらり、ぱらり。
 傘は傘に落ちる雨の音を聞く。
 ぱらり、ぱらり。
 傘は傘であることを忘れようとしていた。

 東京近郊に佇む古民家一歩手前の平屋の軒先に、一本の傘がある。持ち主の女性は、初めてのボーナスでブランド物の傘を購入したがその翌日、誰にも責めることの出来ない強風に吹かれ傘は骨の何本かを折ってしまい、早速使い物にならなくなってしまった。ブランド物の傘だっ・・・

0

雨色メモリア

12/05/08 コメント:1件 山田えみる(*´∀`*)

 梅雨という季節はあまり好きにはなれません。
 いいところといえば苦手な体育が室内競技の卓球になることくらいで、洗濯物はなかなか乾きませんし、つい水溜まりに突っ込んでしまって靴下が濡れてしまうと、その日一日憂鬱になってしまいます。また、湿気のせいでもともと癖毛気味なわたしの髪はまとまる気配を見せません。ねぼすけなわたしはわざわざ早起きしてまで、ぴょこんと飛び跳ねる髪と格闘する毎日です。

0

気の合う友人

12/05/08 コメント:4件 リンメイ

 小学校の同窓会に出席した。
 僕は会場を見回す。だが、いない。彼女は来ていないようだ。
「よお、久しぶり」
 僕の肩を誰かが叩いた。振り返るとよく日に焼けた顔が白い歯を見せて笑っていた。
「……ひょっとして、田中か?」
「ああ。そうだよ」
 田中は小学校の時の親友だ。六年生の夏休み中に彼は転校してしまい、それ以来会っていなかった。
 いまでも時々思い出す・・・

0

小さな忘れ物

12/05/08 コメント:1件 ぽんず

「うちはこれで全部だよ」
駅事務員がそう言うと、作業服を着た若い男は改札口に置かれた大小様々な段ボール箱を駅前に止めてある軽トラックに手際よく積み込んだ。そして、すべての荷物を積み終えた男は、事務員に買い取り伝票を渡した。
「ありがとうございました」
男はそう言って、軽トラックに乗り込み、駅を後にした。
作業服を着た男の名は鏑木信也。鏑木リサイクルという会社の社員である。こ・・・

0

新しい世界

12/05/08 コメント:0件 そらよる

例えばその世界が全てだったとして、
それを開いたときに何が始まるのかなんて想像もできない。
けれどもその話を聞いたとき、君はきっと言うだろう。
抽象的で何も伝わらないと。

だけども全てを君に伝えたとして、
それを君が理解できるかと言えば答えはNOだ。
だからこそ僕はこうして君に伝えているのだけれど、
それでも君は顔を顰める。
はっきり言えと。・・・

0

甘い傘

12/05/07 コメント:0件 ケイ

 掌にちょこんと載った傘を見て、わたしは歓声をあげた。
「わあ、かわいい。先っちょがとんがってて、持つところがくるっとしてて」
「そうじゃろ。しかも、甘くておいしいよ」
 たばこ屋のお婆ちゃんは、皺だらけの顔をくしゃっと丸めると、隙間だらけの歯をのぞかせて優しく笑った。初めて見る傘の形をしたチョコレート。黄色地に青い水玉模様の包み紙が、きらきらと輝いている。わたしは嬉しさのあまり・・・

0

蛇の目の恐怖

12/05/07 コメント:0件 tahtaunwa

 降りやまない冷たい雨を、ただ見上げている。なのに何だかうれしい。うきうきしている。もうすぐママが迎えにきてくれるのが分かっているからだ。ママと一緒に相合傘で家に帰る。ただそれだけなのにうれしくてたまらないのだ。
 来た!ママだ。大きめの大人の傘を差して、手には小さめの傘を持っている。な〜んだ。相合傘じゃないのか。ぼくは、ちょっとがっかりした。
 大きな傘と小さな傘。ふたつ並んで歩きだ・・・

0

傘のバトン

12/05/07 コメント:0件 

 病院の帰り道に雨に降られて、シャッターが下りている本屋の軒先で、雨宿りをしていた。お兄ちゃんのお嫁さんに赤ちゃんが生まれると聞いてから、たびたび、病室を訪れるようになっていた。
 私はまだ高校生で受験も控えている。将来なりたいものややりたいことがあるわけではない。女子の中でも私はすこし浮いていて、転校生だったこともあって、みんなから話しかけられるということもなかったし、仲良しな女子がいるわ・・・

0

紫陽花と猫には傘がない

12/05/06 コメント:1件 

 雨の日の紫陽花は綺麗だと思う。通学路の歩道橋の下に咲く紫の花を見つめながら、信号が青に変わるのをいつも待っている。傘もささずに、僕は泣いていた。このまま家へ帰ってしまおうかと思っていたとき、紫陽花から、にゃあと声が聞こえて、猫が出てきた。
 昨日、学校で嫌なことがあった。教科書が机の中から、全部なくなっていた。下駄箱の上履きがなくなっていたのは、一昨日のことだ。そのまえは、黒板に、学校に来・・・

0

あの傘この傘

12/05/06 コメント:0件 根岸 迷

「あれ?ない」
容疑者一人目、岸井律子。
「宮ちゃん、朝、私ここに傘かけたよね?」
「透明傘なんだし、取られて当たり前」
「えーっ。じゃあじゃあ、宮ちゃん、傘いれて」
「やだ」
律子は濡れちゃうだの、風邪ひいちゃうだのなんのうるさくて宮河千寿は彼女を怒鳴った。
すると、律子はいきなりこんな提案をした。
「じゃあじゃあ、宮ちゃん、犯人見つけてよ。それで・・・

0

どしゃ降り、のち、少しだけ晴れ

12/05/04 コメント:4件 カシヨ

小松彩菜は窓ガラスに打ちつける雨がつたい落ちるのを眺めていた。始業時間はとうに過ぎている。
「おれ、好きな子ができたみたいだ」
ふいに隣から聞こえてきた声に、彼女は一瞬気づかないふりをしようとしたが、答えなければきっと男は話をやめない。
「あっそう」
顔をそらしたまま、短く言う。どうしてはっきり断定しないのか。語尾を曖昧にした相手の心理はわからないが、彩菜はそれ以上尋ねる気・・・

0

雨の精

12/05/04 コメント:0件 isoco

 カエルが私に向かって恨みごとを言う。
「わしの背中で遊ぶなんていい度胸だ。仕返ししてやる」
 魔法を食らえ、カエルは言うと、ゲッ、ゲッ、ゲッ、と空へ向かって三回鳴いた。とたんに雨の勢いが強くなった。いっきにザーザー振りだ。真夜中だからまぶしいはずがないのに目を細めないと空を見上げられない。前髪はもう張り付きはじめている。すべり台の上をすべる雨粒を見て、深夜の公園には雨が似合うな、と思・・・

0

濡れた傘に御用心

12/05/03 コメント:0件 tahtaunwa

 雨の人混みの何が嫌いかって、無神経に傘を振ってるやつほど嫌いなものはない。後ろを歩く人間の足を突き刺す勢いで傘の先を突き出してきやがる。思うに、そういうのは男より女に多い気がする。今、俺の目の前を歩いているこの女のように。
 危ね!またか。あやうく俺の脛に刺さるところだ。あの金属製の鋭利な尖端が当たったら間違いなく怪我するぞ。
 どんな女なんだよ。生意気な尻しやがって。確かにそそる曲・・・

0

最低限の幸運

12/05/03 コメント:0件 kakato

「これが、僕のラッキーアイテムです」
テレビの中で、男はそう言って青い小さな石を見せた。そいつは、その石のおかげで宝くじに当たったのだと話した。それが空き家で拾った物だと聞いて、ふと玄関の隅に置いてある傘の事を思い出した。それも一昨日、雨宿りに入った空き家で拾った物だったのだ。
――あんな安物のビニール傘に、そんな力があるわけ無いか。
苦笑しながら玄関へ行くと、それを掴んで外に出・・・

0

僕に縫いとめる。

12/05/03 コメント:2件 静砂

 鬱蒼と茂る樹木が、不規則に雨音を立てる。安物のビニール傘、透明の小間から見上げた空の隙間は、暗澹たるものだ。まだ、降り続くのだろう。
 君のメールが届いたのが30分前。また君が心にもなく、その癖、そうなったらそうなったで構わないとの分水嶺から、さようなら、だなんて言うものだから。

「濡れるよ」
 君は反応すら見せず、僕の横を歩く。手元からは一歩、遠い。既に半袖から覗く右・・・

0

雨のち晴れ

12/05/01 コメント:1件 

しとしと、しとしと。
雨の日が続くと憂鬱になる。

街には色とりどりの花が咲き乱れ、せわしなく動いている。
見下ろすにはいいと思う。
けれど見上げるのは。

「お待たせ―。帰ろ」
「うん」

1階に下り、傘を開いて外へ出る。

「止まないかなー」

そう言って見上げても見えるのは灰色の空と絶え間なく落ちてくる雨。<・・・

0

相合傘

12/05/01 コメント:0件 桐生和

くるくる、色とりどりの花が回っている。
子どもの頃は雨の日が好きだったのを思い出した。ところが今はあまり好きではない。子どもじみた遊びができる歳でもないので、卒業したと言えば聞こえが良いかもしれない。窓を伝う雨粒や音に感傷的になれるほど繊細でもない。
今日の天気予報では、雨が降ると言っていた。今は曇り空なので折り畳み傘を鞄に入れる。
結局は面倒くさいだけなのだ。
「行って来・・・

0

雨があふれるとき

12/05/01 コメント:0件 つばき

目の前の別世界にはばまれ階段を降りられずにいた。
僕と似たような境遇の人が五・六人ちらほら、無表情で携帯電話を見たり壁に貼ってある広告を見たりしているけど、みんなつかの間の休息に戸惑っているようだ。しかも僕だって自分のいらだちに気づいているのに余裕なふりをしている。
外に出た人はみんな溶けて消えてしまった。
僕は傘を忘れたわけじゃない。持ってきたけど盗まれたの!
いらだちを・・・

0

ボウフラ

12/05/01 コメント:4件 智宇純子

 記憶を辿りながら入り口の戸を静かにあける。香ばしいような甘い香りが、懐かしさと共に身体中をゆったり包み込んでくる。
「いらっしゃいませ。あら」
 芳江さんじゃないですか。と、奥から懐かしい顔が覗いた。街並みとは裏腹に、あまり変わっていない店の雰囲気にホッと胸を撫で下ろすと、芳江は迷わずカウンターの右から三番目に腰かけた。いつも座っていたこの場所。フィルターから落ちるコーヒーの音が雨音・・・

0

頬は朱に染まる

12/04/30 コメント:0件 赤居駒

 学校帰りに異変は起きた。学校を出た時は、雨など降っていなかったのだけれど、私が外を出た瞬間、しとしとと雨脚を次第に強めていった。忌々しい雨に舌打ちを打って、帰り道を馬のように駆けた。
 今日の天気予報では雨など降らないはずだったのに。所詮は予報なのかはたまた私が、お天道様に嫌われているのか。雨はせっかく整えた髪が乱れに乱れ、制服は泥と雨によって汚されていく。こんな事なら、折り畳みの傘を常備・・・

0

いつか相合傘で…

12/04/29 コメント:7件 ゆうか♪

しとしと しとしと
今日は雨降り
心が濡れて
泣いています
寒くて風邪を引きそうで

     しとしと しとしと
     まだ梅雨には早いのに
     心のなかに
     降り続く雨
     誰か傘を差しかけて…


ふと見上げたら
いのまにか頭上に
誰かの傘が…
そんな夢をみました
明・・・

0

クレイジー、アンダー・ザ・アンブレラ.

12/04/29 コメント:0件 片手羽いえな

 なんとなく街を歩いていた。洋風石畳と洋風建物により欧州的な雰囲気を醸しだしているけどここ日本。しかもこういうお洒落な雰囲気はこの道一本だけで、ちょっと行けばくたびれたコンクリートが私の足元をお待ちしております。
 ただ、この道で雨に降られると、情緒を感じる。今もそうだ。街の色が綺麗にくすむ。しとしと優しい雨音もいいけれど、景色こそが私にとっては重要だ。好きだ。ケータイさえ忘れてなければ写メ・・・

0

雨と泥棒

12/04/29 コメント:1件 村上慧

 窓の向こうで雨が騒ぎ声を上げている。昼休みのたび男子生徒の声で賑わっている運動場も今ではまるで湿地帯だ。今朝は晴れてたのにね、と友人は外を見ながらぼやき、それから「置き傘しておけばよかった」と小さな声で付け足した。
 私は何があろうと置き傘をしないと心に決めていた。先月置き傘を盗まれたからだ。
 ビニール傘は盗まれやすいから、と当時友人は私にそう慰めの言葉をかけたが、私にとってはそう・・・

0

赤い雨傘

12/04/28 コメント:1件 涼代 花


降りしきる雨は、先ほどよりは大分小降りになってきた。
どんよりとした灰色の雲はまだ、隙間もなく陽を隠す。

5階のカフェから見える街には、色とりどりの傘の花が咲いていて、東京の人の多さにちょっとだけ笑えた。休日だというのに。いや、だからこそか。

コーヒー一杯で随分粘ったものだ。
でも、これぐらいなら少し濡れても大丈夫だろう。
天気予報を見ずに出か・・・

0

傘のきもち

12/04/28 コメント:0件 re-kowoods

パラパラ雨が降ったら
信号待ちの交差点は
色とりどりの傘で華模様になるわ
夜にはライトアップされてきれいよ
みんなの目と心がほころぶの
傘の代表として
ちょっと自慢で嬉しいわ

しとしと雨の時もいい感じよ
わたしの傘に寄り添う恋人たち
love love loveを上から目線で
ちょっと癪だけど微笑ましいわ

苦手なのは・・・

0

傘の神様

12/04/27 コメント:2件 

タケオはよく傘を失くす。

会社帰り、タケオはいつものように東西線に乗った。
仕事が忙しく、帰りはいつもクタクタだ。そのため、座席につくとものの何秒で眠りに落ちてしまう。
今日も例に漏れず、九段下駅の辺りで意識が途絶えた。

数十分後、タケオは車内アナウンスによって目を覚ました。

「ドアが閉まります。ご注意ください。」

眠気眼で駅の看・・・

0

心の傘

12/04/27 コメント:0件 虹色雅

あなたは、私の心の傘。
冷たい酸性雨から、私を守り、支えてくれる。


あなたがいなければ、私は、溶けて亡くなっていた。
あなたがいるから、世の中を、歩いてゆける。

愛しい私の傘。
私が、障がい者になり、途方にくれたとき、
あなたがいた。


あなたがいるから、私は、今日も、冷たい酸性雨から
逃れられる。

0

雨のバス停で

12/04/26 コメント:4件 ゆうか♪

 それはありきたりの出会いだった。
 ある日の夕刻、私がバス停でバスを待っていると突然雨が降り出した。
 空を見上げ、少し暗い気持ちになった時、突然頭上に傘が差し掛けられた。
「おやっ?」
 私の視線は一旦上へ、それから傘を伝わって持っている本人へ。
 見知らぬ男性だった。
 一瞬どう言ったものかと考えたが、やはりこれしかないと思って言葉を発した。
「あ、・・・

0

冷たい雨

12/04/25 コメント:0件 湯だまり

午後2時過ぎ。空を覆った灰色の雲からポツリ、ポツリと私に冷たい雨が落ちてきている。雲が太陽を覆っているせいだろう、私から見える山々や進んでいる小道の先は曇ったガラス越しに見るように白く霞んでいる。それは現実味を帯びていなくて、この日のこの世が幻想であるかのように思わせた。

今私は湿った小道を進んでいると言ったが、一体何を目的とし、どこに進んでいるのかは全く分からない。進んでいると・・・

0

からかさ小僧

12/04/25 コメント:2件 泥舟

「傘っていうのは、なんなんだろうね」
傘デザイナーの橋下氏は、ご機嫌伺いに訪れた私に問いかけた。
挨拶もそこそこに、唐突な問いかけに固まった私に構うことなく、橋下氏は言葉を続けた。
「例えば、『はし』って言葉があるだろう。何かの本で読んだのだが、同音異義語の漢字がいろいろあるよね。試しにパソコンで入力すると、俺の名前の『橋』だろ、端っこの『端』、食事の時の『箸』、梯子の『梯』、く・・・

0

レイトショー

12/04/25 コメント:0件 新倉真

 折からの強い雨。僕はずぶ濡れになった。
 映画を見ようと家を出たまでは良かったが、天気は気象庁を見限って、突如、僕等の街に大雨を降らせた。僕はバス停からの道則、長めのジョギングを強要された。
 バッグを頭に乗せて、逃げるようにこの映画館に飛び込む。
 濡れネズミ参上。割り切って、そのくらい言えれば大したものだろう。でも、僕のキャラじゃない。それどころでもない。シャツが肌に張り付・・・

1

雨に傘、

12/04/24 コメント:2件 南リンゴ

 こうやって、傘を差して雨の降る中を歩いていると、世界はあまりにも静かで暗くて、おぼろげだ。あまりの儚さに、ふと、この世じゃない別の世界を歩いているような気がする。生きているかぎり負わなければならない苦しみや悲しみが、嘘のように思える。
 安物の透明なビニール傘は、何となく身を覆うという感じがせず、落ち着かない気分にさせるのだろう。
 電柱にくくり付けられた白黒の看板をたどっていくと、・・・

1

青空の向こうに

12/04/22 コメント:0件 kou

スケジュール帳を確認しながら内藤はコーヒーを飲んだ。
税理士になって二年、今年二十九歳の内藤は忙しかった。
本人としては、ゆったりと自分のペースで事を運びたかったが、時代がそうさせるのか、悩み多き企業が多いのか、内藤のスケジェール帳は、びっしりと埋まっていた。
「胃潰瘍になるかも」
内藤は女性事務員につぶやいた。
「ストレス溜まってるんですか?」
女性事務員は毎・・・

0

初めまして、傘です

12/04/22 コメント:1件 漣 一二三

 「行ってきまーす!」
その声と共に僕は勢いよく外に連れ出された。
6月半ばの空は曇っていた。
まだ雨は降っていないが、今にも降り出しそうなじめじめとした日だ。
梅雨は嫌いだ、正確には雨の日が大嫌いだ……。
 「おはよー」
いつもの時間にいつもの待ち合わせ場所に行くといつものメンバーがいた。
そしていつもの決闘が始まるのだ。
 「我が太刀を受けて見よ・・・

0

すばらしき防弾傘

12/04/22 コメント:2件 ぬるたん

 短いサイレンが鳴り響くと、皆が一斉にビルの壁に駆け寄って素早く傘を拡げるのも日常の光景になってしまった。最初の頃こそどこの小学生が傘をさし遅れてケガをしただの、直撃弾を受けた老人が転倒して骨を折っただのというニュースが流れていたが、もうそんなことは話題にもならない。話題にしたところで誰かに文句が言えるわけでもなく、これといった防御策があるわけでもないからだ。どんな天災もわれわれにはただ慣れること・・・

0

Rain drops

12/04/22 コメント:3件 新倉真

車窓の外。ぽつりぽつりと傘を差した人が行き交う。
ぽつり、ぽつり。
雨粒が車窓にへばり付き、街頭やネオンに感応して、星の無い空に光を添えた。
昔と少しも変わる事のない風景は、無自覚なままに思い出を呼び起こしていた。
彼女といた日々……。
傘の花が街並を彩るこの季節。
 僕は嫌でも思い出してしまう。 

「―――る?ねえ、健」
 僕は夢想を止め、・・・

0

アンブレラカフェ

12/04/22 コメント:2件 汐月夜空

カランカラン、と透き通る鈴の音と鼻をくすぐるコーヒーの香りがいつものように迎えてくれた。
いらっしゃいませ、と正面カウンターの向こうから穏やかな声がかかる。彼はこのアンブレラカフェ『雫』のマスター。二十五歳と若く、初見のお客からアルバイトと間違われるのが悩みの少し変わった男だ。モンブランのような色の抜けた髪、精緻に整った顔、『雫』の金色のロゴが左胸に映えるコーヒー色のエプロン、モデルのように・・・

0

私と私の事象 -手紙 篇-

12/04/21 コメント:2件 ジョゼ

握りしめた傘の柄の部分から雫が流れる。
目的地付近に近づき、目をやった瞬間に自分の瞳孔が開くのがわかった。


色を失った日常。全ての始まりはきっとあのひとと別れた後からだろうか。すぐに引きずらなくなると思っていたが、いっこうに気持ちが正常には戻らずその事に対してまでも不安で気を病んだ。仕事もべつに大して楽しくなかったが、嫌でもなく毎日同じ事を繰り返す。友人は居たが家に帰る・・・

0

ふられた女にふる雨は

12/04/21 コメント:2件 デーオ

 いまいましい雨だ。意地でも止むまいとでも思っているように、降り続ける。
 この雨が振られた私に優しく涙をさそう筈、本当は泣いてしまうシチュエーションなのに、悔しさがいつまでもおさまらない。

「ごめん! あなたとずうっと付き合って行く自信が無いんです。ボクにはもったいなさ過ぎます。あなたなら、ボクよりずうっといい男が見つかりますよ」

 ボクだってぇ、あの顔で、あの・・・

0

活字のラビリンス

12/04/20 コメント:1件 左足の小指

雨も降ってないのに、大きな白い傘をさしてる奴が目の前を歩いている。
傘には「怪獣VS改造人間」とか「来月発売DVD」とか「宣伝に使用中の着ぐるみをさわらないで下さい」
とか書かれている。
(さわるもんか!暑いな・・)
ペットボトルを取り出し、蓋をはずすと、僕の手からペットボトルが消えた!
正確に言うと、前を歩いている奴の手・・だと思う物が伸びてきて盗った!
「お・・・

0

grand parasol

12/04/19 コメント:0件 新倉真

じめっとした感触。
水気を含んだワイシャツとスラックスが肌に纏わり付く。
和也はシャツの胸辺りを摘んで、気食の悪い肌触りを引き剥がす。
間もなく、駅の構内から出る頃だ。手にした傘のホックを外して、ばらんばらんと手元で回す。出るなり、両手に持ち直して開くと彼の広い肩幅よりさらに広い一画が、彼の占有の場となる。和也が歩く。目の前に人がこちらに来る。避け合って、そのまま歩く。
当・・・

0

ロマンの買い手

12/04/18 コメント:2件 汐月夜空

「……思うんだけどさあ」
がらりと引き戸を開けて居酒屋から出たところでナオキが口を開いた。
えー、なに? とミキも続いて暖簾をくぐり、やや肌寒い湿り気を帯びた空気に身をさらした。店先の光に困ったような様子で頬をかくナオキの姿が照らされて、続いてざあざあと雨の音が耳に注がれる。
久しぶりに降る肺の奥まで匂い立つような強い雨だ。天気予報を信じて傘を持って来て良かった。お気に入りの水色・・・

0

あいあい傘

12/04/18 コメント:0件 W・アーム・スープレックス

改札口を出て、しばらく歩いたところで、いきなりザアッときた。

駅にもどるには遅すぎた。とっさにサワ子はもよりの家の軒下に張りついた。

雨はいっそう激しくなった。子供のころなら、こうしていると、家の人が雨宿りに戸を開けてくれた。世知辛い現代、サワ子が背にした玄関はいつまでも固く閉ざされている。

傘をさした人々が、目の前を通りすぎてゆくのを、ひがみっぽい気持ち・・・

0

めぐる

12/04/18 コメント:0件 オレンジスパイス

一昨日の夜中から降り続いていた雨がやっと止んだ。

テレビのニュースではまもなく上がると伝えていたが、二人の娘が小学校に行く頃はまだ降っていた。
ほらほら遅れる、急いでと娘達を追い立てる。
ただの朝でさえ慌ただしいのに、長靴のある日の玄関は大混乱だ。

「お母さん、二年生になったら大きい傘買ってよね」

次女は恨めしそうに私を見上げる。やっと一年生に・・・

0

きっと、忘れられない

12/04/17 コメント:2件 かめかめ

(姫の傘だ…!!)



16歳の誕生日プレゼントに貰った傘を見て、心の中で叫んだ。

ほんとは大声で叫びだしたいくらい嬉しかったのだが、そーゆーキャラではないので、心の中でだけ欣喜雀躍としていた。




「姫 100%」と言う少女マンガが大好きだった。
主人公の姫という名前の女の子は、北海道の原野で父親と二人きりで暮らして・・・

0

85センチメートルの先で

12/04/17 コメント:0件 八子 棗

 頭上で跳ねる雨音。雨粒は黒い布を伝って、視界の隅を途絶えることなく垂れていく。
 ここの所、良く雨が降る。梅雨にはまだ早いが、あの生ぬるくじめっとした空気に似た風を毎日吸っているような気がした。そのせいだろうか。大学の裏門と駅まで13分の距離が、最近はやけに遠く感じられる。
 いや、実際に時間がかかっているのかもしれない。今もまだ、駅までの帰り道は半分以上あるはずなのに、ジャケットの・・・

0

小雨の日に

12/04/16 コメント:0件 かめかめ

中学2年の夏から、学校に行けなくなった。


朝起きて家を出るところまでは、何ともないのだが、

バスに乗ろうとすると、ぐぐうっと胸を押されたような圧迫感がして、吐き気がして頭痛がして、家にもどって寝る日々が続いていた。

上手くバスに乗れた日も、乗り換えのバス停で、どうしても次のバスに乗れずに、近くの商業ビルの非常階段で一日座り込んでいることが多か・・・

1

佳奈子の傘、琴子の手

12/04/16 コメント:0件 ゆひ

雨の日、琴子が窓に顔を張り付けている。

彼女は外に行きたいのだ。
その仕草は、佳奈子と同じで、
私は少し不思議な気持ちになる。

「おかあさん、おさんぽ、いきたい」

その口調も佳奈子とそっくりなものだから、
思わず、琴子のことを「佳奈子」と呼んでしまいそうになる。
間違わないように気を付けながら、
「琴子も雨が好きなんだねぇ」<・・・

ログイン