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林一さん

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電動自転車

17/02/19 コンテスト(テーマ):第128回 時空モノガタリ文学賞 【 自転車 】 コメント:0件 林一 閲覧数:595

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 長年愛用していたママチャリが壊れてしまった。かごが大きくて買い物に便利な、お気に入りのママチャリだったのに。
 車を持っていない俺にとって、自転車がなくなるのは死活問題だ。俺は慌てて近くのホームセンターまで走った。
 一万円くらいで買える安いママチャリをと思っていたが、ここで俺はこいつと運命的な出会いを果たす。
「十万円!」
 こいつの値段を見た瞬間、俺は思わず声に出してしまった。よく見てみると、そこには電動自転車との文字が。何でも、電気の力でペダルを漕ぐのをアシストしてくれるらしい。
 それにしても、十万は高過ぎるだろ。その時の俺はまだ、そう思っていた。
 試乗可能と書いてあったため、俺は冷やかしでこいつに乗ってみることにした。
 サドルの高さを合わせ、サドルにまたがり、最初の一漕ぎをした瞬間、俺は何者かに後ろを押されるような感覚に襲われた。それこそが、電気の力だった。
 ペダルが軽い。ギアを最大まで上げても、ペダルは軽いまま。上り坂でも、立ち漕ぎせずにすいすいと登れる。何だこの自転車は。初めて乗る電動自転車に、俺はとてつもない衝撃を受けた。
 気がつくと俺は、カードでこいつを購入していた。
 十万円があれば、前から欲しかったパソコンが買える。格安ツアーを探せば海外旅行にだって行ける。行きつけのラーメン屋のチャーシュー麺を百杯食えるし、カップ麺なら千杯食える。それでも俺は、こいつを買ったことに微塵の後悔もなかった。

 こいつと出会ってから初めての休日。俺は目的地も決めずにこいつとの二人旅を楽しんでいた。
 この日は風が強かった。今まで乗っていたママチャリなら、まともに進めずに苦労しただろう。だが、こいつとなら大丈夫。向かい風にあおられながらゆっくりと進む普通の自転車に乗る人達を尻目に、俺は軽快にペダルを漕ぎながらその人達を置き去りにする。ああかわいそう。君達も電動自転車にしたらいいのに。
 気持ち良くこいつに乗っているうちに、周りが見たことのない景色になっていた。どうやら四駅も離れた町まできていたらしい。ママチャリ時代の俺なら考えられなかったな。きっとくたくたになっていたはずだ。でも、今の俺はまだ全然疲れていない。こいつのおかげだ。
 こいつのおかげで俺は、こんなにも自分の世界を広げることができた。俺はこいつとなら、どこまででも行けそうな気がする。

 それから数分後、充電が切れた。


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