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水面 光さん

■ホームページ「水面文庫」 http://www.minamo-bunko.com/ 忙しい中でも身を粉にして執筆活動しております。ジャンルとしては現代ファンタジーが中心でございます。よろしくどうぞー

性別 男性
将来の夢 物書きでメシを食う
座右の銘 人の心は変わらないから自分が変われ

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ラブ・ランド

17/02/18 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 水面 光 閲覧数:544

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「ユウイチ、新車が来たよ!」床屋と文具屋が並んだ交差点を白い新車が初々しいウインカーの光を点滅させて曲がり、こちらへ向かってくるのを見て、母さんが教えてくれた。身体障害のあった伯母も屈託なくほほえんでいた。──どうにも体の倦怠感に耐えきれず、昼に横になったときに見た夢だった。もしも連中が他人を貶すことに始終ご執心だとしたら、私には貶し返してやるしか選択肢がない。「ハゲだと思ったぜ、しかも短足だし」「ほう、おめーはこの現実世界で他人を貶すことに命をかけてる正真正銘の低脳じゃねえか、しかも鏡を見たことがないようだな、おめーのつらはどう見ても負け犬だぜ」「精神病だってよ、だと思ったぜ、フツーじゃねえもんな」「オレがフツーじゃないんなら、おめーはもっとフツーじゃねえ、なぜなら、おめーは言い換えれば知恵遅れだからだ、精神病ってなたいてい心がとても優しい人がなる、その証拠に幻聴が他人を殺せと言ったとしても、そんな凶行に及ぶ前に自分を殺すだろう、おめーはその究極的に優しい心を知らねえから知恵遅れなんだ、ただ、別に知らなくていいぜ、知る必要はない、なぜなら、おめーみてえなおめでたい野郎は一生何も知らないほうが幸せになれるからだ、せいぜい幸せになれよ、おめーがピンチのときに泣きついてきたら足蹴にしてやるからな、ゆっとくが必ずピンチのときはくるぜ、オレは一切知らんからな」──「あの、あなたのことが好きです、結婚を前提につきあってください」「ほう、あんたみてえな上玉が下男に恋か? 撤回したほうがいいと思うぜ、なぜなら、オレはメスブタの手下とナニする気は微塵もないからだ、想像しただけで反吐が出る、失せな」「あなたが私と一緒になってくれるなら、あの人と縁を切ります、だから──」「おいおい、落ち着いたほうがいいと思うぜ、縁を切るってこたあ、仕事を失うってことだぜ? オレにはあんたを食わしていく余裕はねえ、第一あんたはオレのタイプじゃねえ、オレにだって選ぶ権利はあるんだ、それに無抵抗のオレをこけにしやがったメスブタの手下ってこたあ、あんたもメスブタでしかねえ、わかったらとっととオレの前から消えろ!」──「あんな人、雇ってくれるところあるの?」「お話中失礼、おっと、失礼なのは誰がどう考えてもあんただがね、たしかにオレには学歴も実績も何もない、だが、あんたにない世界で一番大切なものをオレは持ってる、教えてやろうか? たとえ親しい仲でも他人の悪口を言い合って盛り上がる誰がどう考えても世界一卑しい行為を絶対にしない自信を持ってる、あんたにコレを持てって言ってるんじゃない、言うだけ無駄だからな、じゃあ、なぜ教えてやったか? 勘違いするな、オレが気をつかうわけねえだろ、あんたらみてえな低脳のマネをしたらきっと胸がスカッとするだろうという希望的観測に基づいて実行してみたかっただけだぜ、案の定、自己嫌悪に陥ったがね、他人をそしると必ずそうなるオレの悪癖だ」──「たのむ、やめてくれ」「おい、よく考えろ、おまえは何も悪くない、はっきり謝ったのに、赦してもらえなかったばかりか、この世界でこれ以上ないってほどの最悪の罵り言葉を浴びせられたんだぞ? 死ぬほどの思いをして生還したのに死ねばよかったのにと言われたんだぞ? この意味がわかってんのかおまえ? おまえは心を殺された。メスブタがしきりと殺されると言っていた理由がわかるってもんだろ? つまり、メスブタはこの現実世界で殺されて当然のことを実行し続けているってことなんだよ! ──ふう、落ち着こうか、オレが言いたいのはおまえは殺されて当然のことを実行し続けているゴミクズを見ても何もしなかった、それはどういうことなんだろうなあ? 一つ仮説を言っておこう、おまえには度胸がないんじゃない、分別はつくし、常識は理解してるし、想像力もあるし、命を大切にしている──たぶんコレはまっとうな人間の能力だ、貶され、嘲笑され、ときにはパワハラを受け、差別され、自分がいくら暗鬱な気分にさせられようとも、自分が悪いと思い、そして自己嫌悪する──誰も褒めてくれないがたぶんコレはすこぶるまっとうな人間の能力だと思うぜ、これがもし病気のせいだとしたら、治す必要などない、おまえは病気になったことによって人間としてまっとうな心を手に入れた、誰にも恥じることはない──わかったな? わかったらとっととあの女性に告白しに行け! また陸上部の担任の先生に独りじゃ何もできんのかと言わせる気か? あの先生に会いに行かなくちゃなあ、おまえの強くなった姿を見てもらいに、そのためにも自分で自分の道を切り拓くんだ! ゆけ!」──私にはできなかった。夕方、あのスーパーに行き、あの女性のレジに並び、「ラブ」という牛乳を黙って買うことしか──。毎日買いに行った。ある日のこと、その女性が──。


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