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にぽっくめいきんぐさん

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次は数年後

17/02/13 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:0件 にぽっくめいきんぐ 閲覧数:643

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 幹事長はモード系で決めてきた。痩せチビに上下で10万は似合っていないが、半ズボンは小学生のようで良かった。「私大から徒歩5分のアパートに熱帯魚と住んでる」等の自慢を聞き流しながら、話を振り、飲み物も注ぐ。親からの仕送りだろう?
 新歓コンパにやって来た入会見込みの1年生は、今日は2人。色白無口な理学科の男の子と、愛想の良い国文学科の男の子。「ウインド」は、体育会系でもヤリサーでもない小規模テニスサークルだった。練習もそこそこに、アフターと称しファミレスで喋る健全系。
 あたしは近くの女子大に通う貧乏な2年生で、ウインドには「他大生歓迎(特に女性)」と言う条件で入った。

 新歓は20時頃に終わり、2次会の話が出たので、「帰るね。寮まで歩いてみたくて」と抜けようとした。痩せチビモード系の幹事長が「1人歩きは危ないよ」と心配したが「大丈夫です」と笑顔で歩き出す。ロフトに寄って、雑貨をチラ見したかったのだ。
「歩くの好きなんですか?」
 1年の、国文学科の男の子がついてきた。
「まぁね」
「僕もです。家も先輩の寮と近いですし、一緒に歩きます」と笑う後輩に抗しきれず、本当に歩く羽目になった。
 察せ。国語が得意ならさ。1人で物色したかったんだよ。
 サークル存続には新入生が肝なので笑顔で対応。西口の飲み屋から、ガード下を潜って東口に。紀伊國屋を突っ切って目白通りを上る。本屋も寄りたかったなあ。察せ。
 目白駅近くの寮まで、徒歩で約1時間半。「あたしに気があるのか?」と予想するのが自然だと思うが、後輩の国文くんは「彼女へのプレゼント、服とかでいいんでしょうかね?」と来たもんだ。
「……相手の好みもあるし、彼女さんと一緒に選んだほうが、楽しくて良いかもね」
 しかし内心は、
(知らねーよ。こんだけ歩かせて、あたしには何の興味も無いんかい!)
 ……物は言いよう、ってこういうものだ。
 アルタ前のフルーツ屋でメロンバーを奢ってもらったから、報酬無しではない。裸電球と薄暗い道と、背中越しのネオン街。

 26の時は、5人目の彼氏と別れて寂しかった。女友達と一緒に行ったのが「アホカラ」。コマ劇があった辺りのカラオケボックスを貸し切った、参加者100人超えの大規模オフで、部屋の出入りが自由。
 男の子は部屋を外から覗き、女の子が居れば雪崩の如く入ってきて、部屋は寿司詰めに。たまらず女の子が部屋を移動すると、男もこぞって部屋移動。空白部屋が誕生する。とにかく横に来たがるので、ロック系の曲が歌えず辟易した。

 28からの4年間は地獄だった。とある試験を受ける羽目に。塾のある代々木から40位のおっさん達と新宿まで飲みに出た。日本酒がウリの「八徳」。「相対的には」若いと、お酌して回る。升酒にしろよ面倒だから。
 千鳥足で店外に。お疲れ様でしたと駅へ向かう。大学生の浮かれ集団が8人位で固まり、前を歩いていた。おせえよ邪魔だよと思いつつ、奴らの背中にラケットケースを見て刺し殺されたような気分になる。駅までの10分に、そんな地雷があちこちに埋まっていた。マインスイーパ、こと警官! 未成年が酒飲んでますよ!

 30の秋。塾の同期、みーこがついに合格した。東口奥のラブホを6人で貸し切っての女子会だったが、そこでみーこは号泣。結婚予定だった彼氏に振られたらしい。「合格するまで言い出せなかったけど、好きな人ができた」のだそうだ。大学卒業したての女の子で、フェスで意気投合したんだと。
 帰りがけ、目つきの鋭い兄ちゃんがホストクラブを誘ってきたから、みーこの代わりに追っ払った。あたしらに触ると血の雨が降るぜ!

 32の春に仕事を辞めてしまった。新宿駅は1日の乗降客数が世界一だそうだが、知らない人が沢山居ると、よけいに寂しいものだ。人との繋がりが在ってこそ都会は楽しかったが、みんな消えた。育児やら、留学やら、失職やら。

 時は過ぎ、40。通り過ぎるだけ。
 四谷にみーこが住んでいる。「ウインド」でメロンバーを奢ってくれた、行間を読めない国文君とくっついた。

 駅の雑踏は映画のように見えた。この中に、あたしもいたのに。

 若い集団に対しては、バリアーを展開した。あたしの左手の先にある、小さな手。
 すぐ、おぶれーと言う息子。旦那は地元で見つけた。そして地元に置いてきた。平日は仕事がある。
 旦那が好きな「龍が如く」を、超リアルな画像で見ているようだった。

 自分の環境次第で、ここは違う顔を見せるんだなーとか思いながら、息子と歩く。
 今のあたしに、新宿は必要ない。

 嘘だ。伊勢丹4階のタイ料理店「チョンパー」があたしを呼んでる。汁ビーフンの4種の味付けが面白いのだ。
 辛いものばかりで、息子にはまだ早い。そこにあたしが現れるのは、しばらく先になりそうだった。


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