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むねすけさん

ブログで創作をやっていましたが、誰にも相手にしてもらえないため、こちらに辿り着きました。 面白い物語、少しほっとしてもらえるようなお話を書きたいと思っています。

性別 男性
将来の夢 作家になりたいですが、 それが無理でも、何かの原案家とか、 自分の考えた物語が世に出ること。
座右の銘 我思う、故に我在り。

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新宿二丁目のママみたい

17/02/13 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:2件 むねすけ 閲覧数:973

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 カラオケBOX「ロバの耳」に四人の幸せな家族がやってくる。今日は東京の大学に通う長男も久方男前ぶら下げて家族に合流。千葉県在住の家族の絆は餅巾着のかんぴょうぐらいに固くほどけない。もしも、おでん中の餅巾着のかんぴょうをほどけるという人がいたら見せて欲しい。その動画を持って一緒にひと稼ぎしましょう。
 長男が東京の大学に通うために家族から離れて、初めての年末。堤下家恒例の忘年会がニギニギしくとり行われる。
 BOX内は堤下家の奏でる幸せな日常の音色でいっぱいいっぱい。
 テーブルの上は一人四品まで注文し放題で、これまたいっぱいいっぱい。ピザにから揚げ、ポテトにコーラ。父さんはスーパードライ、母さんはカシスミルク。
 堤下家の年末恒例イベントでは、一人ひとつ芸を用意しなければならない。
 事前の家族LINEにて、「ピコは駄目よ、ピコは」と、母のダメ出し。
「え〜ハロウィンで使った衣装残してあったのに」長男は鋭い母の第六感に楽ができない。「横着は駄目よ、本気だせ!」らしいです。
 長女の記念すべき芸の一発目は、六歳の時。スイミングの競泳水着姿でタイヤキ君を唄うというものだった。父さんは勿論ビデオでその姿を収め、長女が反抗するたびに再生して自分を慰めていたけど、長女が十四歳の時にそのビデオが堤下家から行方知れずになった。父も母も、長女が二十歳過ぎれば帰ってくるだろうと、親の愛で黙殺している。
 
 忘年会は、父さんの長渕剛で幕を開け、父母による息ぴったりのピンクレディーはデフォルト。和やかで和やかで、恒例の会話もしっくりと堤下家に寄り添って大丈夫。
「お父さん今年こそ訊いてよ」
 カラオケBOX「ロバの耳」の店名の由来のことです。なんでこんな名前にしたのか、堤下家に居座る七不思議の八個目。
「やだよ、お前の方がでっかいんだから、お前訊いてよ」  
「それいっつもゆーけどやめてよ、傷ついてるわよ」

 和やかで和やかで、長男のピエロメイクでのセカイノオワリ、長女の瞼に目を描いてのレディー・ガガ、母さんのアフロとサングラス井上陽水も上々のうけ具合。あまりにも順調すぎた。幸せ過ぎた。
 和やかさと家族の愛が、狭いカラオケBOXの飽和を越え、ブチンという音を立てて破綻する。
 
 タイミングはオオトリの父さんによる椎名林檎。
 真っ白純白のナース服に、真っ赤なルージュ。どこから調達してどこに隠していたのか点滴まで持ち込んで。
 母さんは笑い転げ、長女も「すね毛がきもい」と言いながらもご機嫌さん。だったのに。
 長男が言った言葉、「新宿二丁目のママみたい」が、楽しかった一家の忘年会をいけない方向に進ませる。
「お前は東京でそんな所に出入りしているのか?」
「ちょっとお父さん、まだ曲終わってないのに」
 マイクを通して、メロディーに乗らない親父の説教のトーンは怖い。母さんがさっととりなそうにも、もう父さんのスイッチは入ってしまった。
「夜の歌舞伎町なんてところは、人が一人二人消えても誰も気づかないところだろう」
「いや、別に俺が行ったってわけじゃなくて、ヤダな父さん。イメージじゃない。マツコとかミッツとかのさ」
「そうだよ、お父さん」
 説教スイッチの入ったお父さんの前で、三人はチーム一丸だけど、治まらない様子。
「お前な、オカマバーなんか行った日にはな、気が付きゃお前もオカマになっとんだ」
「お父さん、鏡見てからにしなさいよ」
「うるさい、茶化すんじゃない。高い仕送り捻出するのに俺はタバコ減らしてるんだぞ」

「オカマってそんな悪いことなの?」
「ちょっとキミカ」
 長渕信者のお父さんには悪いけど、長女の親友はボーイズラブマニアでジェンダーフリーを共に叫んでいるし、長男はサークルの先輩、男の娘風俗勤務のフクト君に迫られてキスまで許してしまったし。
「そうだよ、男に生まれても、女になって男に抱かれたけりゃ、そうすればいーんじゃん」
「うるさい、男の子は男らしく、女の子は女らしく、それが一番に決まってるだろう、お母さん、長渕いれて、西新宿の親父の唄」 
「古いんだよ、父さんは」
 残念だけど、母さんも自由を好む。
「三対一か、いつものことだ、お前たちは馬鹿ばっかりだ」

 父は椎名林檎。
 母は井上陽水。
 長男はセカオワのピエロ。
 長女は瞬きのたびにレディー・ガガ。
 傍目には楽しい家族のパーティーも、オカマを許容できない頭の古い親父と、今を自由叫んで生きる三人との口論に変容してしまった。
 会の終わりは母さんの山口百恵カッコ、マイクを置くパフォーマンス含む、が恒例なのだけど、今日はどうなりますやら。
   


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このストーリーに関するコメント

17/02/13 野原 豆

無言でコメント投稿押しちゃった(笑)ごめんなさい🙏

良いなぁ〜お父さん!石頭の様で実は・・・みたいなのが垣間見れて(笑)
日々積み重ねてきた結果が生み出す、親の心。
新宿二丁目も楽しい所だけれど(笑)親目線でみたら・・・(笑)気持ちわかるなぁ〜。どこから新宿が飛び出すかドキドキして読みましたが(笑)やられた!(笑)

17/02/13 むねすけ

びっけさん
コメントありがとうございます
できる限りあったかい物語を書きたくて
あったかい家族の話を書きました。
今回は笑ってもらえればという思いも強かったので、嬉しいです。
ありがとうございます。

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