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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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とらわれる。

17/02/13 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:873

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「地縛霊になるなら、どこでがいい?」
 そんな問いかけに、
「前提が嫌なんだけど」
 冷たい言葉が返ってきた。
「気持ちはわかるんだけど、心理テストだから! お遊びだから!」
 空気読んで。
 昼休みの教室、四人でお弁当を食べながらの会話。なんか面白い話ないの? とか言うから、なんとなくネットで見つけた心理テストを提示したらこの扱いよ。
「あたしねー、三浦くんの家!」
 きゃぴっとハルナが答える。ノリのいいギャルは嫌いじゃないよ!
「死んでもずぅっと、三浦くんを見つめるの」
 うんうん、ハルナは三浦くん大好きだもんね。
「ストーカーかよ」
 エミカは本当空気読めないね! クールぶるのもいい加減にしてね!
「えー、だって合法的に着替えも見つめられるし、一緒に寝てもバレないよ?」
「カノジョ、連れてくるかもよ。居るでしょ彼、美人のカノジョさんが」
 エミカの一言にハルナがかたまった。
「ユキは?!」
 空気に耐えきれず、残ったひとりに話をふる。
「えー、うーん、新宿とか渋谷とかそういう大きな駅がいいな」
「なんで?」
「人がたくさんいると、寂しくないじゃない? 見てて飽きないし」
「人がたくさんいるから、寂しくなるんじゃないの?」
 エミカは何かにつけてケチをつけないと死んじゃうのかな?
「人がいるのに誰も話しかけてくれないし相手をしてくれないから寂しいんでしょうが」
「んー? でも、海の底に一人ぼっちとかより楽しそうじゃない」 
 ユキは大人の対応でエミカを交わす。
 なんとなく微妙な空気になってしまう。エミカのせいだ。
 心理テストの答えは、いま一番行きたいところとかそんなんで、
「きゃー、当たってるー」
 三浦くん大好きなハルナがはしゃいでくれたおかげで救われた。

 そんな話があったのが二週間前で。
「なんでぇ」
 ハルナが目の前でわんわん泣いている。うまく事態が呑み込めない私は、彼女の背中をひたすら撫でる。
「バカなんじゃないのっ」
 エミカが怒ったような声をあげる。思わずいつものようにわずかに不満げな顔でエミカを見上げたら、
「なんで、相談とかなんもなかったの! 友達なのにっ!」
 言いながらぼろぼろ泣いている。
 泣くか怒るかどっちかにしなよ。空気読みなって。

 ユキが死んだ。
 自殺だったらしい。
 自分に電車に飛び込んで。
 ここから一時間以上遠い新宿駅で、わざわざ。
 家がゴタゴタしてるの、結構酷いことになってたの、はじめて知った。

「大体、なんでそんな他人様に迷惑かける方法を!」
 エミカがまだ怒ってる。素直に悲しみなよ。
「私のせいだね」
 新宿って聞いた時から思ってた。
「私があんな心理テスト出すから」
「そんなの関係ないでしょ!」
「でも……」
「あんた、どれだけあの子に影響力があるつもりでいるの?! 私の方が仲いいんだから!」
 慰めてくれてるのか、自慢なんだかわからないことをエミカが言う。
「だけどでも」
 私は意味の無い言葉を呟きながら、ようやく泣けた。
 くうきをよんで。

 あれから二十年近く経って。
 未だに新宿に降りると気にしてしまう。
 ユキがいるんじゃないかって。
 そのへんの隅で行き交う人々を眺めてるんじゃないかって。
 空気を読んむことしかできなくって、大人になっても空笑いしかできない私を責めるんじゃないかって。
 自分本位なことを考えている。


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