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泡沫恋歌さん

泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。

性別 女性
将来の夢 いろいろ有りますが、声優ソムリエになりたいかも。
座右の銘 楽しんで創作をすること。

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平行線

12/11/09 コンテスト(テーマ):第十八回 時空モノガタリ文学賞【 コーヒー 】 コメント:16件 泡沫恋歌 閲覧数:2327

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 世間では概ねコーヒー派と紅茶派に分かれている。
 我が家でも私はコーヒー派だが、旦那と娘はコーヒーをあまり飲まない。特に娘は紅茶派で輸入雑貨のお店で高い紅茶を買ってきては、あーだこーだと蘊蓄を垂れながらポットで紅茶を淹れて私にも飲ませてくれる。……だが、私は紅茶の味が分からない。
 それよりもお手軽なインスタントコーヒーの方が好きなのだ。一日平均三杯は飲んでいる。
 キッチンのテーブルで私がコーヒーを飲んでいると、
「よくそんな《ドブの水》みたいな色したものが飲めるわね」
 と、娘が嫌味を言う。
「あんたこそ《番茶の出涸らし》に高いお金出して買ってくるじゃない」
 負けじと私も言い返す。
「フンだ!」
 コーヒー派と紅茶派はかくして永遠の平行線を辿るのだ。

 ふと真夜中に目が覚めて、喉が渇いていたのでキッチンのドアを開けたら、話声が聴こえてきた。ドアを細めにして覗いてみたら……。
「あの子とは絶対に仲よくできないわ!」
「まあまあ落ち着いてください」
 キッチンのテーブルの上で握り拳くらいの小さな人物が二人いた。真っ黒な女の子と白い髭を生やしたお爺さんだ。いったい彼らは何者なのだ? 好奇心から私は覗き見を始めた。 
「だって、いつもバカにするんだもの」
「たとえば?」
「あたしが黒いから《ドブの水》って呼ぶのよ。失礼しちゃうわ!」
 あ! その台詞はどこかで聴いたような。
「この爺が程良い褐色にして進ぜましょう」
「フレッシュ爺や、お前だけがあたしの味方ね」
「シュガー男爵もおられますぞ」
「あの男はいろんな飲みものに甘い言葉を囁く浮気者よ!」
「爺は、カフェ姫様だけに忠誠を誓っております」
「おほほっ、嘘おっしゃい!」
 その時、ブラウンのレースを纏った何者か現れた。
「わたくし、イギリス生まれの由緒正しき紅茶ですわ」
「お前はティーお嬢様」
「まるで《ドブの水》みたいに黒いカフェ姫と嘘つきフレッシュ爺やの御二人、ご機嫌あそばせー」
 ティーお嬢様は気取った態度でお辞儀をした。
「ワシを嘘つき呼ばわりとは……」
「フレッシュは紅茶に垂らしてミルクティーに成りますわよ」
「そ、それは……」
「フレッシュはコーヒーだけじゃなくて紅茶にも使います。だけど、わたくしは爺やなんか居なくても、レモンやアップル、ローズとだってコラボ出来ますの。ブランディーを一滴垂らせば大人の味ですわ。おほほっ」
「なによ! あんたなんか《番茶の出涸らし》のくせして」
「フンだ!」
 カフェ姫と紅茶お嬢様はお互いソッポを向いた。
「シンプルなお茶が一番!」
 そこへ《緑茶》と書いたはっぴを着た男が現れた。
「ミルクや砂糖を入れて味を誤魔化すのは邪道だ!」
「あら、茶太郎。あんたの親戚の抹茶の君は牛乳さんと結婚して〔抹茶オーレ〕になったわよ。巷では大変な人気だそうよ。おほほっ」
「あんな奴はもう親戚じゃない! おいらは自分を偽らない生き方をする!」
 茶太郎が怒って紅茶お嬢様に言い返した。急にフレッシュ爺やが泣き出した。
「うわーん。ワシを許してくれ! みんなを騙しておったのじゃ」
「どうしたの爺や?」
「フレッシュミルクと名乗っておるが、ワシは植物性のミルクなんじゃあ。牛乳が入ってない偽者なのじゃあー」
「ええぇーーー!?」
 爺やのカミングアウトにみんな驚いた。
「こんな情けないワシはもう消えて無くなりたい……」
 そこへ二階から誰かが下りてくる足音がしたので、私はカーテンの陰に隠れた。うちの旦那だった、彼は勢いよく、キッチンのドアを開けると、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、大きめのコップに並々注いで、ゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる。
「プハーッ、やっぱ水が一番うまい!」
 そう叫ぶと彼は二階へ戻って行った。あまりに美味しそうに飲むものだから私も水を飲んでから寝た。

 朝、キッチンで紅茶を飲んでいた娘に昨夜の話をしたら、
「何? そのあんぱんマンみたいな展開は……。お母さん寝ぼけてたんじゃないの?」
 バカにされた。そうかも知れないなあー。コーヒーを飲むために私はお湯を沸かした。冷蔵庫を開けてフレッシュを探すがどこにも見当たらない。
「あれ? フレッシュがない」
「私も探したけどなかった。だからミルクなしで飲んでる」
 ブラックは苦手なので、私は牛乳をレンジでチンしてカフェオレにした。
「お母さんたら、いつも安物のフレッシュ買って来るでしょう? たまには生クリームを買ってきてよ」
 娘に文句を言われた。もしかしたら偽者のミルクとバレたのでフレッシュ爺さんは姿を消したのかも知れない。ふと、そんなことを思った。
「紅茶はお茶なんだからシンプルに飲めばー」
「コーヒーの底の見えない黒さが嫌い」

 コーヒー派と紅茶派は、今日も平行線のまんまだ。


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このストーリーに関するコメント

12/11/09 メラ

こんにちは。拝読しました。
微笑ましい光景が浮びました。面白かったです。関西では「フレッシュ」って言うのが一般的なのですか?関東は「コーヒー・フレッシュ」もしくはそのまま「ミルク」と言いますね。でも、この話には「フレッシュ」というネーミングのおじいさんがいい味を出していると思いました。

12/11/09 こぐまじゅんこ

泡沫恋歌さま。

拝読しました。
とても面白かったです。
私は、ひとりで飲むときはコーヒー。
息子とは紅茶を一緒に飲みます。
結構、どちらも好きです。

12/11/09 草愛やし美

泡沫恋歌さん、拝読しました。
相容れることができない、平行線上にある二人、なるほど、この対比は面白いですね。
コーヒー派と紅茶派っていますね。私は絶対コーヒーですが、あの琥珀色好きなんだけど……確かに見方によってはドブの水かもですね(笑)
フレッシュじいさん切らしてしまったのか、それともいなくなってしまったのか? 私はコーヒーはブラックだけど、紅茶飲むんだったら、ミルクティーなので困りますね、どうしましょう。(爆)

12/11/10 泡沫恋歌

メラさん、コメントありがとうございます。

関西ではだいたいフレッシュと呼んでいると思います。
「ミルク」を強調するために、フレッシュミルクと書きましたが一般的な呼び方ではないかも知れません。

結局、このフレッシュ爺やはいろいろ嘘をついていたようですね(笑)

12/11/10 泡沫恋歌

こぐまじゅんこ 様
読んで頂き、コメントまでありがとうございます。

我が家では私だけがコーヒー派です。
娘は紅茶が好きで、インスタントコーヒーばかり飲んでる私をバカにします(笑)

文中の「ドブの水」というのは実際にうちの娘がそう言いました。
トンデモナイ娘です( ・_・)ノ☆(*_ _)ばしぃ!! ← うちの娘

12/11/10 泡沫恋歌

草藍さん、コメントありがとうございます。

私らの年代はコーヒー派が多いですよね。
最近の若い子たちはあまりコーヒーを嗜好しないみたいです。
他にいろいろ飲みものも増えてるし、選択肢が多いからね。

私らの時代はコーヒーだって贅沢品でした。
玉子やバナナだって・・・子どもの頃、食べられなかったので
これらのものが今でも私は好きです(笑)

12/11/13 そらの珊瑚

恋歌さん、拝読しました。

コミカルでアニメチックな真夜中のキッチンの会話がとても楽しかったです。
コーヒーメーカーに置きっぱなしにしてしまったコーヒーは
まさに「ドブの水」になります。
いくらコーヒー好きの私でも、あれは飲めない代物です(笑い)

12/11/13 泡沫恋歌

珊瑚さん、コメントありがとうございます。

普通にインスタントコーヒーを飲んでるだけで「ドブの水」って
娘が言うんですよ。
失礼しちゃうわ。
「ドブの水」というと、とあるサイトを思い出してします(笑)

コーヒーは創作する時には必要アイテムの一つです。

12/11/14 くまちゃん

平行線の家族は多いと思いますよ。
私も紅茶派です。ただし外に出れば専門店で珈琲です。どちらもストレートです。


12/11/17 石蕗亮

はじめまして、泡沫さん。拝読いたしました。
お茶の精霊って居そうですね。爺やのカミングアウトもびっくりですが、水が一番うまい、の一言も重いですね(笑。
怪異好きの私としてはとても好きなお話しでした。

12/11/18 泡沫恋歌

くまちゃん、コメントありがとうございます。

くまちゃんは紅茶派だったんですか?
我が家は私以外は紅茶派で、私はマイノリティです。

「ドブの水」と蔑まされながら頑張ってます(笑)

12/11/18 泡沫恋歌

石蕗亮 様。

初めまして、泡沫恋歌(うたかた れんか)と申します。
作品を読んで頂き、コメントまでありがとうございます。

コーヒー派と紅茶派をケンカさせるために妖精さんたちに登場してもらいました。
「水が一番うまい!」
どうも軍配はミネラルウォーターに上がったようですね(笑)

今後とも、どうぞよろしくお願いします。

12/11/19 ドーナツ

コーヒー派と紅茶派、確かに平行線だ って拝読して始めて気がつきました。
同感動感。家の長男も、娘さんと同じですよ。
シュガー男爵、これ名前すごく気に入ってしまった。
楽しいおはなし ありがとう。

12/11/21 泡沫恋歌

ポカさん、コメントありがとうございます。

最近の若い子はあんまりコーヒー飲まなくなったよね。
私らの頃はデートの場所、喫茶店=コーヒーだったけど
今はスポーツドリンクやら清涼飲料水やらいろいろあるから・・・。

でも、豆から曳いて淹れたコーヒーの香りは格別だと思うよ。

12/12/09 石蕗亮

泡沫恋歌 さま
夜喉が渇いて目が覚めてアイスティーを飲んでこの話を思い出しました。
私の中では紅茶は水代わりかもしれません。
珈琲はやっぱり別格ですねぇ。飲むのに若干の気合が入るのは作品作りに珈琲が同席するからかもしれません。

13/01/07 泡沫恋歌

石蕗亮 様。

再度のコメントありがとうございます。

そうですよね。
やっぱりコーヒーって本気で味わおうと思ったら気合が要りますよ。

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