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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

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はるかなる高みへ

17/02/09 コンテスト(テーマ):第127回 時空モノガタリ文学賞 【 新宿 】 コメント:0件 霜月秋介 閲覧数:856

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 私には、住む家が無い。いや違う。家ならある。新宿中央公園敷地内に、私が自ら建てた立派な家がある。スーパーから貰ってきたダンボールと、ゴミ箱から漁った割り箸をガムテープを使って組み立てて作った家。今住んでる家はまだ、建ててから二日も経っていない新居だ。以前住んでいた家は二日前の雨風によって、あっけなく全壊してしまった。ちなみに今住んでいるのは十二軒目の新居だ。家を建てるのには、そりゃもう苦労したよ。昔から工作は苦手だったものだから。
 先日、私は五十歳の誕生日を迎えた。とは言っても祝ってくれる家族はいない。私がかつて立ち上げた会社は倒産し、妻は一年前に他界した。子供はいない。妻が遺した保険金を残った借金の返済にあて、私に残ったものはこのダンボールの家だけだ。日々、チラシ配りやティッシュ配りなどのバイトでかろうじて食いつないでいる。
 公園の傍に建つ東京都庁舎ビルは、いつも我々を見下ろしている。はるか高いところから、我々を哀れむかのように見下している。私はそのビルを見るたびに思うのだ。いつかこんな落ちぶれた生活から脱却し、あのビルのてっぺんのように、はるかなる高みまで登りつめてやる、這い上がってやると。みてろ、いまにあのビルから、この小さいダンボールの家を思いっきり見下してやる。その思いを胸に、私は毎日を必死に生きている。

 ある日、私のその野望を、我々ホームレスに時々食料を支給してくれる親切な女子高生に私は語った。すると、こんな答えが返ってきた。
「あの、知ってました?あの都庁舎ビル、四十五階に展望室あるんですよ。地上から二○二メートルの高さから、東京の景色が一望できるんです。無料で!」
「!!!」

 高いところからこのダンボールの家を見下ろすという野望は、その三十分後に達成された。そして私は、いまの生活のままでも別にいいかとさえ思った。息苦しい都心のなかにある新宿中央公園。あそこでのどかに暮らすのも別に悪くはないなと思った。


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